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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1308084 |
審判番号 | 不服2013-24030 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-06 |
確定日 | 2015-11-25 |
事件の表示 | 特願2010-514795「組成物、光学部品、光学部品を含むシステム、デバイス、および他の製品」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月31日国際公開、WO2009/002512、平成22年10月14日国内公表、特表2010-532910〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2008年 6月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年 6月25日、米国、2007年 6月26日、米国、2007年 7月12日、米国、2007年 7月18日、米国、2007年 9月12日、米国、2007年 9月19日、米国、2007年12月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年 6月22日に手続補正書が提出され、平成24年 4月25日付けで拒絶理由が通知され、同年11月 7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年 7月29日付けで拒絶査定され、これを不服として、同年12月 6日に審判請求と同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 平成25年12月 6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、平成24年11月 7日提出の手続補正書により補正された本件補正前(以下「本件補正前」という。)の特許請求の範囲を補正するものであり、そのうち、請求項12についての補正は、本件補正前の請求項13において、本件補正前の請求項6を削除したことに伴う項番整理をして新たな請求項12とすると共に、本件補正前の請求項13を以下のように補正しようとするものである。 本件補正前の請求項13 「【請求項13】 量子閉じ込め半導体ナノ粒子、ルミネセントではない散乱体およびホスト材料で構成される組成物を含む導波管部品を含み、組成物は、ホスト材料の重量に基づいて約0.001?約15重量パーセントの量子閉じ込め半導体ナノ粒子を含み、該散乱体は、ホスト材料中の量子閉じ込め半導体ナノ粒子を励起するために使用される励起光の吸収パス長を延長し、及び該ナノ粒子によってダウンコンバートされた光の取り出しを補助するものである、光学部品。」 本件補正後の請求項12 「【請求項12】 フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子、ルミネセントではない散乱体およびホスト材料で構成される組成物を含む導波管部品を含み、組成物は、ホスト材料の重量に基づいて約0.001?約15重量パーセントのフォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子を含み、ここで、フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子は、光を吸収して異なる波長の光を再放出し、 該散乱体は、ホスト材料中のフォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子を励起するために使用される励起光の吸収パス長を延長し、及び該ナノ粒子によってダウンコンバートされた光の取り出しを補助するものである、光学部品。」 (なお、下線は、補正に関連する箇所を示し、当審で付加したものである。) 2 補正の目的の適否及び新規事項の有無 本件補正の内容(補正事項)は、量子閉じ込め半導体ナノ粒子が、「フォトルミネセントである」こと及び「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子は、光を吸収して異なる波長の光を再放出」するものであることを本願の出願当初明細書の【0050】「量子閉じ込め半導体ナノ粒子は電子およびホールを閉じ込めることが可能であり、光を吸収して異なる波長の光を再放出するフォトルミネセンス特性を有する。・・(略)・・」との記載に基づいて、限定的に減縮したものである。 したがって、上記補正事項は出願当初明細書に記載された事項の範囲内においてなされた補正であり、また、本件補正前の請求項13に記載された発明と本件補正後の請求項12に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たし、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、以下、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすか)について、請求項12に係る発明について検討する。 3 独立特許要件を満たすか否かの検討 (1)本願補正発明 本件補正後の請求項12に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記1において記載された「本件補正後の請求項12」のとおりである。 (2)原査定の拒絶の理由の概要と引用文献の表示 ア 拒絶査定の概要 「この出願については、平成24年4月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。・・(略)・・ また、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、ナノ粒子や散乱体を請求項1で特定された範囲の濃度とすることに格別の意味は認められない。 ・・(略)・・ 他の請求項については、上記拒絶理由通知書で示した理由を参照されたい。・・(略)・・」 イ 平成24年4月25日付け拒絶理由通知書に記載された拒絶の理由の概要 「理由3 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・・(略)・・ ・請求項1乃至31 ・引用文献1乃至8 備考: <請求項1、2、5、6> ・・(略)・・ 引用文献3の段落【0001】照明、ディスプレイ、【0009】、【0100】、【0122】半導体ナノ粒子には、「導光板内に波長変換をする半導体ナノ粒子を含有させた光源」の発明(発明3)が、・・(略)・・当該発明において、半導体ナノ粒子の濃度を最適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮である。・・(略)・・ <請求項4> 引用文献3の段落【0123】には、均一な光を放出するために導光板中に拡散剤を含有させることが記載されている。・・(略)・・ <請求項14乃至31> 請求項1乃至13の箇所で示した理由を参照。・・(略)・・」 なお、本件補正後の請求項12は、拒絶査定で特定された請求項である本件補正前の請求項13を補正したものであり、本件補正前の請求項13は、平成23年 6月22日提出の手続補正書により補正され、上記拒絶の理由において特定された請求項14である。 (3)引用刊行物の記載事項 ア 原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-73202号公報(以下「刊行物1」という。)には、「発光装置」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (なお、下線は、当審で付加したものである。以下同様。) (刊1ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、照明器具、ディスプレイ、液晶のバックライトなどに用いられる発光素子及び蛍光物質を用いた発光装置に関する。特に、レーザーダイオード及び蛍光物質を用いた白色系に発光する発光装置に関する。」 (刊1イ)「【課題を解決するための手段】 【0008】・・(略)・・ 【0009】 本発明は、光源と、前記光源からの光を伝達する導光板と、を有する発光装置であって、前記光源は第1の発光素子と、前記第1の発光素子が持つ発光ピーク波長よりも長波長側に発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を有し、前記導光板は、前記第1の発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光を発する蛍光物質を有し、少なくとも前記第2の発光素子からの光及び前記蛍光物質からの光が混合されて外部に放出される発光装置に関する。・・(略)・・ 【0014】 前記蛍光物質は、蛍光体の他、量子ドットを使用することができる。 ・・(略)・・ 【0026】 前記導光板は、前記拡散材をほぼ均一に分散することが好ましい。」 (刊1ウ)「【発明の効果】 【0028】・・(略)・・ 【0034】 前記蛍光物質は、量子ドットを使用することができる。量子ドット(ナノ粒子)は、同一物質であるにもかかわらず、粒子の大きさから、入射波長により発光波長が異なるという性質を有するものである。よって、粒子サイズを変えることによってのみ色調を変換できるため、極めて有用である。 ・・(略)・・ 【0039】 前記導光板は、前記蛍光物質が含有されているものも使用することができる。これにより蛍光物質を導光板に被着する工程を省くことができる。また、蛍光物質を含む膜が導光板より剥がれることを防止することができる。また、導光板に蛍光物質を均一に含有することができるため、色むらを防止することができる。 ・・(略)・・ 【0042】 前記導光板は、拡散材が含有されているものも使用することができる。これにより導光板から放出される光を均一にすることができる。 ・・(略)・・ 【0047】 前記導光板は、前記拡散材をほぼ均一に分散してもよい。これにより光源からの光を分散することができ、光を取り出す面から均一に光を取り出すことができる。」 (刊1エ)「【0096】 <導光板> 導光板200は、点光源100である第1の発光素子101、第2の発光素子102からの光を外部に導き、分散光源とするためのものである。 【0097】 導光板200の光取り出し面200aは、略矩形の他、略正方形、略多角形、略円形、略楕円形など種々の形状をとることができる。導光板200は、略直方体とすることできる他、光源100の入射側側面200bを広く、反対側の側面200bを狭くするように設けることが好ましい。これにより入射された光を光取り出し面200a側に効率よく取り出すためである。 ・・(略)・・ 【0099】 導光板200の材料として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、ガラスなどを用いることができる。・・(略)・・ 【0100】 導光板200は、第1の発光素子101からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光を発する蛍光物質400を有する。ここで「蛍光物質を有し」とは、蛍光物質を導光板に含有させることの他、蛍光物質を含有する被膜を導光板に被着させること、接着剤等を介して蛍光物質を導光板に被着させることなどをいう。第1の実施の形態では、蛍光物質400を含有した被膜を導光板200に被着させている。これにより導光板200の製造が容易で、かつ、光劣化に強い樹脂を製造することができる。また、加熱して成型する導光板も使用することができる。その一方、導光板200は、光取り出し面の表面に蛍光物質400を塗布することもできる。また、導光板200内部に蛍光物質400を混入して成型することもできる。このとき導光板200内部に均一に蛍光物質400を配置する他、蛍光物質400を沈降させて光取り出し面200a若しくは底面200bに蛍光物質400を配置することもできる。」 (刊1オ)「【0104】 <蛍光物質> 蛍光物質400は、第1の発光素子101が持つ発光ピーク波長よりも長波長側に発光ピーク波長を持つものを使用することができる。これにより効率よく発光させることができる。 【0105】 また、蛍光物質400は、第1の発光素子101が持つ発光ピーク波長と第2の発光素子102が持つ発光ピーク波長との間に発光ピーク波長を持つものも使用することができる。これにより第1の発光素子101からの光によって主として蛍光物質400の光を調整することができるため、蛍光物質400からの光と第2の発光素子102との光の混色を容易に調整することができる。また、蛍光物質400の光の吸収は、第2の発光素子の発光ピーク波長よりも短波長側にあり、ほとんど波長変換されず反射されるため、蛍光物質400が光拡散作用を持つと考えられる。 【0106】 蛍光物質400は、導光板200内部に混入させて導光板200を形成してもよい。蛍光物質400は導光板200中に均一に分散されている構成を採ることができるほか、蛍光物質400の粒子の比重により導光板200中に沈降若しくは浮上させ光取り出し面200a若しくは底面200b側に配置させる構成を採ることもできる。・・(略)・・ 【0122】 そのほか、蛍光物質として量子ドット(ナノ粒子)を使用することもできる。量子ドット(ナノ粒子)は、粒子サイズによって発光色が異なるナノサイズの粒子である。例えば、ナノサイズのセレン化カドミウム粒子(CdSe)などの粒子ドットを用いることもできる。これは粒径が大きくなるに従って長波長側の光を放出するものである。例えば、平均粒径2.4nmでは青色、2.8nmでは緑色、3.4nmでは黄色、3.8nmでは橙色、4.2nmでは赤色である。」 (刊1カ)「【0123】 <拡散材> 更に、導光板200中に拡散剤を含有させても良い。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等が好適に用いられる。これによって光源100から入射された光が分散して、光取り出し面200aから均一な光が放出される。」 (刊1キ)【図1】、【図2】、及び【図13】には、発光装置において、平板状の導光板の外部にある光源からの光を、導光板の側面から入射させて、導光板の上面、即ち光源からの光の入射面とは異なる面から光を出射させることが図示されている。 上記記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「第1の発光素子と、前記第1の発光素子が持つ発光ピーク波長よりも長波長側に発光ピーク波長を持つ第2の発光素子と、を有する光源及び導光板を用いて、導光板に対して光源からの光の入射面とは異なる面から光を出射させる発光装置に用いる前記導光板であって、 前記導光板は、前記第1の発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光を発する蛍光物質を含有し、少なくとも前記第2の発光素子からの光及び前記蛍光物質からの光が混合されて外部に放出させ、 前記導光板の材料として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、ガラスなどを用い、 前記蛍光物質は、第1の発光素子が持つ発光ピーク波長よりも長波長側に発光ピーク波長を持つものであり、第1の発光素子が持つ発光ピーク波長と第2の発光素子が持つ発光ピーク波長との間に発光ピーク波長を持つものであって、導光板内部に混入させて導光板中に均一に分散され、平均粒径2.4nmでは青色、2.8nmでは緑色、3.4nmでは黄色、3.8nmでは橙色、4.2nmでは赤色である粒子サイズによって発光色が異なるナノサイズのセレン化カドミウム粒子(CdSe)などの粒子ドットである量子ドット(ナノ粒子)を使用し、 前記導光板中には、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等の拡散剤を含有させて、前記拡散材をほぼ均一に分散し、これにより光源からの光を分散させたものである、 導光板。」 イ 原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である国際公開第2006/120895号(以下「周知例1」という。)には、「色変換材料組成物及びこれを含む色変換媒体」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (周1ア)「[0002] 蛍光材料を用いて光源から発せられる光の波長を変換する色変換材料組成物を使用した色変換基板は、電子ディスプレイ分野をはじめとした様々な分野で応用されている。色変換基板を使用した発光装置では、単色光の光源(例えば、青色光)から、複数色の光を発生させることができる。 [0003] 色変換材料組成物に使用する蛍光材料としては、主に有機蛍光体及び無機蛍光体がある。 有機蛍光体としては、蛍光染料、蛍光顔料が検討され、無機蛍光体としては、金属酸化物、硫化物等に遷移金属イオンをドープしたもの、金属カルコゲナイドに遷移金属イオンをドープしたもの、半導体のバンドギャップを利用した半導体ナノクリスタル蛍光体が検討されている。」 (周1イ)「[0004] 上記のなかで、半導体ナノクリスタル蛍光体は、半導体を超微粒子化(?10nm径)して、電子の閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異な吸発光特性を発現するものである。半導体ナノクリスタル蛍光体は無機材料であるため、以下のような特徴を有する。 (a)熱や光に対し安定である(高耐久性)。 (b)濃度消光がない。 (c)高い蛍光量子収率を有する(デバイスの高効率化)。 (d)超微粒子のため光散乱しない(高コントラスト)。 (e)同一材料であるが粒子サイズを変えることにより、任意の波長にシャープな蛍光を発するように調整できる(豊富な色揃え、高効率化)。」 (周1ウ)「[0020] 2.半導体ナノクスタル蛍光体 半導体ナノクスタルの材料としては、長周期型周期表のIV族元素、IIa族元素?VIb族元素の化合物、IIIa族元素?Vb族元素の化合物、IIIb族元素?Vb族元素の化合物からなる結晶を挙げることができる。 具体的には、Si、Ge、MgS、ZnS、MgSe、ZnSe、AlP、GaP、AlAs、GaAs、CdS、CdSe、InP、InAs、GaSb、AlSb、ZnTe、CdTe、InSb等の結晶、及びこれらの元素又は化合物からなる混晶結晶を挙げることができる。 [0021] 好ましくは、AlP、GaP、Si、ZnSe、AlAs、GaAs、CdS、InP、ZnTe、AlSb、CdTe、CdSeを挙げることができ、なかでも、直接遷移型半導体である、ZnSe、CdSe、GaAs、CdS、InP、ZnTe、CdTeが、発光効率が高いという点で、特に好ましい。 ここで、所望の蛍光を得るためには、半導体ナノクスタルの種類及び粒径にて調整するが、半導体ナノクリスタル蛍光体を製造する際に、吸収、蛍光を測定することで制御するのが容易である。」 (周1エ)「[0030]本発明の色変換材料組成物全体における光透過性マトリクス材料の配合量は、20重量%?99重量%であることが好ましく、40重量%?99重量%であることが特に好ましい。 また、半導体ナノクスタル蛍光体の色変換材料組成物全体におけるの配合量は、0.1重量%?60重量%であることが好ましく、0.1重量%?40重量%であることが特に好ましい。 また、有機蛍光色素の色変換材料組成物全体におけるの配合量は、0.1重量%?10重量%であることが好ましく、0.1重量%?2重量%であることが特に好ましい。 ・・(略)・・ [0032] B.色変換膜・色変換積層膜 本発明の色変換膜は、上述した色変換材料組成物を常法により成膜したものである。 また、色変換積層膜は、第1の光透過性マトリクス材料と、第1の波長範囲の光を吸収する半導体ナノクリスタル蛍光体とを含む第1の色変換膜と、第2の光透過性マトリクス材料と、第2の波長範囲の光を吸収する有機蛍光色素とを含む第2の色変換膜とを、積層したものである。 本発明の色変換膜及び色変換積層膜は、両者とも、半導体ナノクリスタル蛍光体と有機蛍光色素の両者を含んでおり、上述した本発明の効果を得ることができる。 [0033] 色変換積層膜において、第1の色変換膜の半導体ナノクリスタル蛍光体と光透過性マトリクス材料の混合比(半導体ナノクリスタル蛍光体/光透過性マトリクス材料:重量比)は、半導体ナノクリスタル蛍光体の比重、粒径によって異なるが、好ましくは1/20?4/6、より好ましくは1/9?3/7である。混合比が1/20より小さくなると、半導体ナノクリスタル蛍光体が十分、発光素子の光を吸収できず、変換性能が低下したり、変換後の色度が悪くなるおそれがある。尚、発光素子の光を吸収させるため、膜厚を大きくすると、熱による応力発生等により、発光装置の機械的な安定性が低下したり、色変換基板の平坦化が困難となり、発光素子と色変換基板との距離に不整合が生じ、発光装置の視野角特性等の視認性に悪影響を及ぼすため好ましくない。 一方、混合比が4/6を超えると、粒径制御して安定に分散させることが困難になったり、屈折率が大きくなって、光取り出し効率が悪くなったり、パターン加工が困難となるおそれがある。」 (当審注:上記に記載されている「半導体ナノクスタル蛍光体」は、何れも「半導体ナノクリスタル蛍光体」の誤記であることは明らかであるので、周知例1の記載を引用する際には、以下「半導体ナノクリスタル蛍光体」の表記に統一する。) ウ 原査定の拒絶の理由で引用文献5として引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2007-103513号公報(以下「周知例2」という。)には、「発光装置」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (周2ア)「【0017】 本発明の発光装置を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の発光装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1によれば、本発明の発光装置は、電極1が形成された基板2と、基板2上に設けられている発光素子3と、基板2上に発光素子3を覆うように形成されており、励起光を可視光に変換する波長変換層4と、光を反射する反射部材6とを備えており、前記励起光のうちの一部と可視光とを共に出力することによって、白色光を出力する。 ・・(略)・・ 【0022】 波長変換層4は、平均粒子径が10nm以下、好ましくは2nm?5nmの半導体超微粒子5を含有している。このような半導体超微粒子5(蛍光体粒子)を用いれば、波長変換層4中の光散乱が減少するため、半導体超微粒子5全体に励起光が照射されやすくなり、励起光の利用効率が向上して、発光効率が向上する。さらに、波長変換層4中において半導体超微粒子5を均一に分散させることができるため、半導体超微粒子5による光散乱の発生を抑制し、発光のばらつきの発生を抑えて、均一な発光が得られる。」 (周2イ)「【0036】 上記波長変換層4を作製するには、まず、黄色蛍光体5aおよび赤色蛍光体5bをマトリックス樹脂の未硬化物に混合する。マトリックス樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂、珪素-酸素結合を主体とする高分子樹脂(シリコーン樹脂など)が透過率の点で好適である。 【0037】・・(略)・・ 【0038】 次に、黄色蛍光体5a、赤色蛍光体5bおよびマトリックス樹脂の未硬化物の混合物を、シート状に成形する。成形方法としては、例えば、ドクターブレード法やダイコーター法、押し出し法、スピンコート法、ディップ法などのシート成形ができる成形法が挙げられ、特にドクターブレード法やダイコーター法を用いれば、生産性を向上することができる。なお、黄色蛍光体5aおよび赤色蛍光体5bをシート中で均一に分散させるには、製造条件を最適化することが好ましく、例えば、マトリクス樹脂としてジメチルシリコーン樹脂を用い、黄色蛍光体5a、赤色蛍光体5bを樹脂中に混合させ、マトリクス樹脂の粘度を1?5Pa・s、マトリクス樹脂の硬化温度を130?170℃に設定し、1?5時間放置することが好ましい。 【0039】 黄色蛍光体5aおよび赤色蛍光体5bを上記樹脂中に添加する場合の添加量は、発光素子の発光強度、発光素子の大きさ、波長変換層4の膜厚を考慮して決定すればよいが、波長変換層4の総量に対して、黄色蛍光体5aを1?10重量%、赤色蛍光体5bを1?10重量%添加することが好ましい。 (周2ウ)「【0052】 次に、ジメチルシリコーン骨格からなるシリコーン樹脂に、上記方法で合成した半導体超微粒子(黄色蛍光体5aおよび赤色蛍光体5b)を、それぞれ表1の条件で分散混合し、蛍光体含有樹脂ペーストを作製した。なお、蛍光体含有樹脂ペーストは、シリコーン樹脂100重量部に対して、黄色蛍光体5aを5重量部、赤色蛍光体5bを5重量部添加して作製した。 ・・(略)・・ 」 (4)対比 ア 本願補正発明と引用発明との対比 (ア)本願補正発明における「導波管部品」に関して、本願の出願当初明細書には、次の記載がある。 「【0135】 複数の光源を含むある実施形態において、個々の光源はそれぞれ、他の光源それぞれによって放出された光と同じであるまたは異なる波長を有する光を放出することが可能である。」 「【0163】 ある実施形態において、ディスプレイは、本発明による光学部品および光学部品に結合された光源を含む。光源の例は、ELランプ、TFELランプ、LED、蛍光ランプ、高圧放電ランプ、タングステン・ハロゲン・ランプ、レーザ、および上述のいずれのアレイも含むが、これらに限定されない。ある実施形態において、光学部品は、裏面照射(バックライト)、前面照射(フロントライト)、エッジ照射(エッジライト)されるか、または表示画像もしくはインディシアを生成するために、光源からの光が光学部品を通じて方向付けられる他の構成を備えている。本開示によって考慮される本発明のある態様および実施形態において、量子閉じ込め半導体ナノ粒子は半導体ナノ結晶で構成され、半導体ナノ結晶の少なくとも一部はこの表面に付着された1個以上のリガンドを含む。 【0168】 ある実施形態において、光学部品は上面もしくは下面、または発光デバイス、ディスプレイ、別の種類の照明デバイスもしくはユニット、導波管などの他の部品であり得る。」 「【0172】 図1および図2は、本発明による光学部品および光源を含むシステムのある実施形態の例の概略図を与える。 【0173】 図示した例において、光学部品は導波管部品1と、導波管部品の主表面に配置された半導体ナノ結晶で構成される層とを含む。ある実施形態において、量子閉じ込め半導体ナノ粒子(好ましくは、半導体ナノ結晶)で構成される層は、量子閉じ込め半導体ナノ粒子が分散されているホスト材料を場合によりさらに含むことが可能である。このような分散は均一または不均一であることが可能である。図示した例において、光源は、導波管部品の縁に当接することによって導波管部品に光学的に結合される。・・(略)・・」 また、【図2】には、図に付した番号の説明として 「1)光源 2)導波管部品の中に分散されたまたは埋め込まれた量子閉じ込め半導体ナノ粒子を含む導波管部品」 との記載がある。 上記各記載から、本願補正発明における「導波管部品」のその実施の態様として「異なる波長の複数の光源」からの光を用いること、また、用途として、「光学部品は、裏面照射(バックライト)、前面照射(フロントライト)、エッジ照射(エッジライト)されるか、または表示画像もしくはインディシアを生成するために、光源からの光が光学部品を通じて方向付けられる他の構成を備えている」ことが示されており、一般に、ディスプレイ等において、表示画像を生成するためのバックライト等は、管状の形状に限定されずに矩形の発光面からなるものであり、本願補正発明における「導波管部品」が、管状の形状を有するものに限定されないことは、上記記載から明らかである。 また、「光学部品」は、本願の図2を参照すれば、光源からの光を所定の方向に放射する部材であって、量子閉じ込め半導体が導波管部品の中に分散されているものであることがその一実施の形態であることも明らかである。 したがって、引用発明の「導光板」は、「光源からの光を伝達」し、「外部に放出させ」るものであるから、本願補正発明における「導波管部品」及び「光学部品」に相当する。 (イ)引用発明の「粒子サイズによって発光色が異なるナノサイズのセレン化カドミウム粒子(CdSe)などの粒子ドットである量子ドット(ナノ粒子)」である「蛍光物質」は、「第1の発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光を発する蛍光物質」である。 ここで、セレン化カドミウム粒子(CdSe)などの量子ドット(ナノ粒子)は、セレン化カドミウム粒子(CdSe)等の半導体を超微粒子化して、電子の閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異な吸発光特性発現する半導体ナノクリスタル蛍光体として周知(例えば、周知例1の[0004]、[0020]、[0021]等の記載、周知例2の【0022】、【0052】及び【0056】の表1の実施例1等の記載)のものである。 一方、本願補正発明の「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子」は、「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子は、光を吸収して異なる波長の光を再放出」するものであって、本願の出願当初明細書の記載によれば、「【0050】 量子閉じ込め半導体ナノ粒子は電子およびホールを閉じ込めることが可能であり、光を吸収して異なる波長の光を再放出するフォトルミネセンス特性を有する。量子閉じ込め半導体ナノ粒子から放出された光の色特徴は、量子閉じ込め半導体ナノ粒子のサイズ、および量子閉じ込め半導体ナノ粒子の化学組成によって変わる。」ものであり、上記周知の半導体ナノクリスタル蛍光体と同様のものである。 してみると、引用発明の「第1の発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光を発する蛍光物質」であって、「粒子サイズによって発光色が異なるナノサイズのセレン化カドミウム粒子(CdSe)などの粒子ドットである量子ドット(ナノ粒子)」である「蛍光物質」は、本願補正発明の「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子」であって、「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子は、光を吸収して異なる波長の光を再放出」するものに相当する。 (ウ)引用発明の「チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等の拡散剤」は、ルミネセントではない材料であることは明らかであり、本願補正発明の「ルミネセントではない散乱体」に相当する。 また、周知例1の記載事項(周1イ)に「半導体ナノクリスタル蛍光体は、半導体を超微粒子化(?10nm径)」、「(d)超微粒子のため光散乱しない(高コントラスト)。」と記載されているように、可視光波長よりも極めて小さい粒径の粒子は、光散乱をしない或いは殆どしないものとして周知であるから、引用発明の「平均粒径2.4nmでは青色、2.8nmでは緑色、3.4nmでは黄色、3.8nmでは橙色、4.2nmでは赤色である粒子サイズによって発光色が異なるナノサイズのセレン化カドミウム粒子(CdSe)などの粒子ドットである量子ドット(ナノ粒子)」は、本願補正発明の散乱体には該当しない。 なお、本願の出願当初明細書の【0033】には、「・・(略)・・散乱粒子の好ましい例は、TiO_(2)、SiO_(2)、BaTiO_(3)、BaSO_(4)、およびZnOを含むが、これらに限定されない。・・(略)・・好ましくは、散乱体はルミネセントではない。」として、引用発明の拡散剤と同一の物質が例示されている。 (エ)引用発明の「導光板の材料として」の「アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、ガラスなど」は、本願補正発明の「ホスト材料」に相当する。 (オ)上記(ア)?(エ)から、引用発明の「アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、ガラスなどを用い」て「導光板の材料とし」、「導光板内部に混入させて導光板中に均一に分散され、粒子サイズによって発光色が異なるナノサイズのセレン化カドミウム粒子(CdSe)などの粒子ドットである量子ドット(ナノ粒子)を使用」した「蛍光物質」及び「チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等の拡散剤」を「含有させ」た「導光板」は、本願補正発明の「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子、ルミネセントではない散乱体およびホスト材料で構成される組成物を含む導波管部品」に相当する。 イ 一致点及び相違点 上記「ア(ア)」?「ア(オ)」から、本願補正発明と引用発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。 (ア) 一致点 「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子、ルミネセントではない散乱体およびホスト材料で構成される組成物を含む導波管部品を含み、ここで、フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子は、光を吸収して異なる波長の光を再放出する、 光学部品。」 (イ) 相違点 *相違点1 「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子」の含有量について、本願補正発明では「ホスト材料の重量に基づいて約0.001?約15重量パーセントのフォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子を含」んでいるのに対して、引用発明には、そのような含有量に関する特定がなされていない点。 *相違点2 ルミネセントではない散乱体の機能として、本願補正発明では、「散乱体は、ホスト材料中のフォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子を励起するために使用される励起光の吸収パス長を延長し、及び該ナノ粒子によってダウンコンバートされた光の取り出しを補助するものである」と特定されているのに対して、引用発明の「拡散剤」は「導光板中に」「拡散材をほぼ均一に分散し、これにより光源からの光を分散させたもの」であるものの、上記本願補正発明の散乱体としての機能が記載されていない点。 (5) 相違点の判断 ア 相違点1について (ア)周知例1には、「電子ディスプレイ分野」(記載事項(周1ア))等に用いられる蛍光材料を用いて光源から発せられる光の波長を変換する色変換材料組成物を使用した色変換基板において、「半導体ナノクリスタル蛍光体の色変換材料組成物全体におけるの配合量は、0.1重量%?60重量%であることが好ましく、0.1重量%?40重量%であることが特に好ましい。」こと、また、光源からの光を吸収して色変換した光を発光させ、それを次の層に送ることから導波路としての機能を有するものと認められる色変換積層膜において、「第1の色変換膜の半導体ナノクリスタル蛍光体と光透過性マトリクス材料の混合比(半導体ナノクリスタル蛍光体/光透過性マトリクス材料:重量比)は、半導体ナノクリスタル蛍光体の比重、粒径によって異なるが、好ましくは1/20?4/6、より好ましくは1/9?3/7である。混合比が1/20より小さくなると、半導体ナノクリスタル蛍光体が十分、発光素子の光を吸収できず、変換性能が低下したり、変換後の色度が悪くなるおそれがある。」旨説明(記載事項(周1エ)されている。 (イ)また、周知例2には、発光素子からの光を励起光として、当該励起光を可視光に変換する波長変換層と、そこから変換された可視光を出力することが記載事項(周2ア)に記載されており、当該波長変換層は、発光素子からの光を波長変換した後に外部へ出力することから、導光路としての機能を有していると認められるところ、当該波長変換層は、「平均粒子径が10nm以下、好ましくは2nm?5nmの半導体超微粒子5である蛍光体」(記載事項(周2ア))とマトリクス樹脂とを含有し(記載事項(周2イ))、当該波長変換層の総量に対して蛍光体層の添加量として2?20重量%(黄色蛍光体5aを1?10重量%及び赤色蛍光体5bを1?10重量%の合計量)を添加すること(記載事項(周2イ)、具体的な実施例として、表1に記載された実施例1には、蛍光体として「CdSe」を用いて、「シリコーン樹脂100重量部に対して、黄色蛍光体5aを5重量部、赤色蛍光体5bを5重量部添加」することが記載されている。 (ウ)したがって、光源からの光を受けてマトリクス中の半導体ナノクリスタル蛍光体(半導体超微粒子)により波長変換した光を光源側とは異なる側に放出する部材(導波用の部品の一種と認識し得る部材)において、半導体ナノクリスタル蛍光体(半導体超微粒子)の含有量を2?20重量%(0.1重量%?40重量%)程度とすることは周知の事項であると言える。 (エ)また、含有量の設定に当たって、周知例1には、「半導体ナノクリスタル蛍光体の比重、粒径によって異な」るものであり、「半導体ナノクリスタル蛍光体が十分、発光素子の光を吸収できず、変換性能が低下したり、変換後の色度が悪くなるおそれが内程度の量を含有させる必要がある」こと、また含有量が多すぎると「粒径制御して安定に分散させることが困難になったり、屈折率が大きくなって、光取り出し効率が悪くなったり、パターン加工が困難となるおそれがある」旨説明されており、周知例2には、「発光素子の発光強度、発光素子の大きさ、波長変換層4の膜厚を考慮して決定すればよい」ことが記載されている。 (オ)そして、引用発明における「導光板」は、導光板中に均一に分散された量子ドット(ナノ粒子)によって、導光板外部にある第1の発光素子の発光光の一部を吸収し、異なる波長の光を発して光源からの光の入射面とは異なる面に、光を出射させるものである。 また、導光板中には「拡散剤を含有させ」ているものであるが、「拡散剤」は光源からの光を導光板中に「均一に分散」させ、「これにより光源からの光を分散させ」るものであり、導光板の側面から入射された光源からの光を、導光板中に均一に分散された量子ドット(ナノ粒子)全体に照射・吸収させようとする剤であることは明らかである。 (カ)なお、本願の出願当初明細書には、上記数値範囲を設定する根拠について具体的な説明がなされておらず、単に数値範囲が記載されているにすぎず、その上限及び下限を設定したことにより、その上限及び下限を境として格別な効果を有する旨の記載は認められず、また、自明なものでもない。 (キ)してみると、引用発明において、「発光素子の発光強度」、「導光板の材料」、「拡散剤」の量、「量子ドット(ナノ粒子)」及び必要とする発光波長の成分等に応じて、適宜、周知例1及び2に記載されている上記周知の含有量である2?20重量%(0.1重量%?40重量%)程度の含有量から、量子ドット(ナノ粒子)」の導光板中における混入量を設定し、その量を相違点1に係る「ホスト材料の重量に基づいて約0.001?約15重量パーセント」とすることは、当業者ならば容易に想到し得た事項である。 イ 相違点2について (ア)引用発明の「導光板中には、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等の拡散剤を含有させて、前記拡散材をほぼ均一に分散し、これにより光源からの光を分散させたものである」とされている拡散剤は、拡散剤が導光板中に均一に分散されることで、光源からの光を分散させるもの、即ち、導光板中において光を均一に分散させるものであり、特定の波長の光のみを分散させるものではなく、第1の発光素子からの発光光である励起光を含む導光板中の全ての光を導光板内において均一に分散をさせようとするものであることは当業者にとって明らかである。 また、当該拡散剤によって、導光板中で光を均一に分散させることで、導光板中に均一に分散している量子ドット(ナノ粒子)に均一に光を向かわせようとしていること、また、導光板中における光を出射面方向に均一に出射させるようにしていることも当業者にとって明らかであるか、当業者ならば、その様に機能していると容易に想到し得た事項である。 (イ)そして、導光板中に均一に分散された量子ドット(ナノ粒子)は、「第1の発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光を発する」ものであるから、「第1の発光素子からの光」は、「量子ドット(ナノ粒子)」が異なる波長の光を発することができるように、「量子ドット(ナノ粒子)」を励起するための光であることも明らかである。 してみると、拡散剤は、第1の発光素子からの発光光である励起光を含む導光板中の全ての光を導光板内において均一に分散をさせようとするものであることから、励起光の吸収パス長を延長しているものである。 (ウ)また、「量子ドット(ナノ粒子)」が発する異なる波長の光は、「第1の発光素子が持つ発光ピーク波長よりも長波長側に発光ピーク波長を持つものであ」るから、当該異なる波長の光は、第1の発光素子の光が「ダウンコンバート」された光である。 そして、上記拡散剤は、上記(ア)のように、導光板中における光を出射面方向に均一に出射させるようにしていることも当業者にとって明らかであるから、「ナノ粒子によってダウンコンバートされた光の取り出しを補助」しているものでもある。 (エ)加えて、本願補正発明の「散乱体は、ホスト材料中のフォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子を励起するために使用される励起光の吸収パス長を延長し、及び該ナノ粒子によってダウンコンバートされた光の取り出しを補助するものである」との点に関し、本願の出願当初明細書には、【0033】の「本開示によって考慮される本発明の実施形態および態様で使用することが可能である散乱体(本明細書では光散乱粒子とも呼ばれる。)の例は、限定されることなく、金属または金属酸化物粒子、気泡、ならびにガラスおよびポリマービーズ(中実または中空)を含む。他の散乱体は、当業者によってただちに識別可能である。ある実施形態において、散乱体は球形状を有する。散乱粒子の好ましい例は、TiO_(2)、SiO_(2)、BaTiO_(3)、BaSO_(4)、およびZnOを含むが、これらに限定されない。ホスト材料と非反応性である、およびホスト材料における励起光の吸収パス長を延長することが可能である他の材料の粒子が使用可能である。さらに、ダウンコンバートされた光の取り出しを補助する散乱体が使用され得る。この散乱体は、吸収パス長を延長するのに使用されるのと散乱体と同じでも、同じでなくてもよい。ある実施形態において、散乱体は高屈折率(例えばTiO_(2)、BaSO_(4)など)または低屈折率(気泡)を有し得る。好ましくは、散乱体はルミネセントではない。」との記載が認められるのみであり、他に具体的な説明は認められない。 そして、引用発明の「導光板中には、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等の拡散剤を含有させて、前記拡散材をほぼ均一に分散し、これにより光源からの光を分散させたものである」とされている拡散剤は、上記出願当初明細書において「散乱粒子の好ましい例は、TiO_(2)、SiO_(2)、BaTiO_(3)」と同材料である。 (オ)したがって、引用発明の拡散剤は、「散乱体は、ホスト材料中のフォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子を励起するために使用される励起光の吸収パス長を延長し、及び該ナノ粒子によってダウンコンバートされた光の取り出しを補助するものである」との機能を実質的に有しているか、少なくともその様名機能を発揮するように配置することは当業者にとって容易に想到し得た事項である。 ウ そして、相違点1及び2に係る各構成を採用することにより、本願補正発明が格別顕著な効果を奏するものとは認められず、また、相違点1及び2に係る構成に基づく相乗的な効果も見いだせない。 (6) まとめ 以上のとおり、引用発明において、上記相違点1、2に係る本願補正発明の構成を採用することは、周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものであり、本願補正発明は、刊行物1に記載された引用発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 補正の却下の決定の結論 したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1 上記「第2 補正の却下の決定」での検討のとおり、平成25年12月 6日に提出された手続補正書による本件補正は却下されたので、本願の請求項1?27に係る発明は、本件補正前の請求項1?27に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由]1」に本件補正前の請求項13として記載されたとおりである。 2 引用刊行物の記載事項 刊行物1の記載事項及び周知例1、2の記載事項については、前記「第2 3 (3)」のとおりである。 3 対比・判断 上記「第2 1」及び「第2 2」で検討したように、本願補正発明は、本件補正前の請求項13に係る発明に、量子閉じ込め半導体ナノ粒子が、「フォトルミネセントである」こと及び「フォトルミネセントである量子閉じ込め半導体ナノ粒子は、光を吸収して異なる波長の光を再放出」するものであるとの各構成を追加したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをさらに限定したものである本願補正発明が、上記「第2 3」において検討したとおり、刊行物1に記載された引用発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 結言 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知例1、2に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-24 |
結審通知日 | 2015-06-30 |
審決日 | 2015-07-13 |
出願番号 | 特願2010-514795(P2010-514795) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中山 佳美 |
特許庁審判長 |
西村 仁志 |
特許庁審判官 |
藤原 敬士 清水 康司 |
発明の名称 | 組成物、光学部品、光学部品を含むシステム、デバイス、および他の製品 |
代理人 | 特許業務法人川口國際特許事務所 |