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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01J
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G01J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01J
管理番号 1308098
審判番号 不服2014-7201  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-17 
確定日 2015-11-25 
事件の表示 特願2012-170300「赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置と検証方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日出願公開、特開2013- 33046〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年11月28日に出願された特願2006-320354号の一部を平成24年7月31日に新たな特許出願としたものであって、平成24年8月20日に手続補正書が提出され、平成25年4月30日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年8月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月11日付けで拒絶の査定がなされ、同拒絶査定の謄本は、同月17日に請求人に送達された。
これに対し、平成26年4月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年4月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成26年4月17日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするとともに、合わせて明細書の記載について全文にわたって補正をするものであり、本件補正は、特許請求の範囲及び明細書の記載を次のとおり変更する補正事項を含むものである。
(1)特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置において、焦平面アレー製造工程と赤外線熱影像アレーモジュールの焦平面アレーの光電流均一度を検証するモジュールを包含し、該モジュールの検証内容は、
該焦平面アレー製造工程で形成される該焦平面アレーの各アレーユニットの光電流均一度のライン幅誤差が10%より小さく、該焦平面アレーの応答スペクトルにおける総光電流の均一度が75%より大きいことの検証を包含することを特徴とする赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置。」
(2)明細書段落【0007】
「すなわちその赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置と検証方法は、熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性の検証に用いられる検証モジュールを含み、先ずエピタキシャルパラメーターの校正を行い、検証合格後、赤外線センサ製造工程と温度差の測定検証を行い、実際にエピタキシャルは導熱接着絶縁テストを完成し、金線により同軸導線或いは低ノイズ信号線を導出し、低温変温と変圧を経て、暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトル、探知検査度校正を測定し、この検証合格後は、焦平面アレー製造工程とその光電均一度の検証を行い、・・・」
(3)明細書段落【0008】
「請求項1の発明は、赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置において、焦平面アレー製造工程と赤外線熱影像アレーモジュールの焦平面アレーの光電流均一度を検証するモジュールを包含し、該モジュールの検証内容は、該焦平面アレー製造工程で形成される該焦平面アレーの各アレーユニットの光電流均一度のライン幅誤差が10%より小さく、該焦平面アレーの応答スペクトルにおける総光電流の均一度が75%より大きいことの検証を包含することを特徴とする赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置としている。・・・」
(4)明細書段落【0012】
「上記検証に合格後、赤外線センサ製造工程と温度差の測定検証20を行う。
実際にエピタキシャルは導熱接着剤の粘着テスト絶縁を完成し、金ワイヤーにより同軸導線或いは低ノイズ信号線を経て導出し、低温変温と変圧測定暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトラル、探知検知度校正を経て、該検証に合格後、焦平面アレー製造工程及びその光電均一度検証30を行う。不合格であれば、熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性検証10に戻り再び検証を行う。」
(5)明細書段落【0018】
「分子ビームエピタキシャル法、金属有機CVD法、或いは高温拡散炉(HTDO)エピタキシャル拡散機台により設計赤外線センサ構造を成長させる前においては、先ず材料積層率、サイクル構造完全性、構造結晶品質、極性とドーピング濃度などのエピタキシャルパラメーター校正を行う必要がある。上記は赤外線センサモジュール構造のエピタキシャル構造設計のプロセス、エピタキシャルパラメーター検証と赤外線センサ構造である。
この後、同一片の赤外線センサエピタキシャル片の一部分(約チップ総面積の1/4?1/5)を切り取り、赤外線センサ製造工程と温度差の測定検証20を行い、主に実際エピタキシャル完成赤外線センサ構造と設計部品構造間の光電特性と品質の差異を確認する。」
(6)明細書段落【0019】
「赤外線センサ製造工程中において、フォトマスク実体部品製造工程ライン幅は誤差<10%で、温度差の測定検証を行う時には、10?300Kにおける操作温度誤差は<15%で、得られるスペクトラム形態の均一度は>80%で、調整される適当なエッチング液(弱PH値酸液を含む:過酸化水素:消イオン水=2?5:1?2:5?20)である。エッチング示度は階層構造の構造層上層において生じる電子-電ホール層間の厚み(約1?10μm)で、目的は側向漏電流を防止することである。もし平面式(Planar-type)定義部品区域製造工程であるなら、高温拡散P-極(拡散深度は0.5?5μm)において用い、さらに表面研磨方式(1?5μm粒径の酸化アルミニウム:消イオン水=1:2?5)により、0.25?2μmにまで研磨し、最適なP-極区域を形成する。非部品区域はI-真性層可阻止側向溢散(Lateral Spreading)電流で、光電流局限を部品主構造層から接触電極区に流し、最大の量子効率を達成する。」
(7)明細書段落【0029】
「・・・20 赤外線センサ製造工程と温度差の測定検証・・・」
(下線は補正箇所を示す。)

2 新規事項の追加についての検討
上記1の各補正事項が、本願の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内でされたものであるか否かについて検討する。
なお、本願の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲について、それぞれ「当初明細書」及び「当初請求の範囲」といい、これら全体について「当初明細書等」という。

(1)本件補正により追加された「該焦平面アレーの応答スペクトルにおける総光電流の均一度」について
ア 当初明細書等においては、当初請求の範囲の請求項1に「光スペクトル反応中総光電流均一度は75%より大きい」と記載され、当初明細書の段落【0008】において同じ記載がされている他は、段落【0023】に「さらに、焦平面アレー製造工程を直接行い、各単位探知検査ユニットの均一度ライン幅誤差は<10%で、スペクトル反応中の総光電流均一度は>75%で、製造プロセス使用の原単乙型パラメーターは主にアレー製作を行う。」と記載されているのみであり、当該記載から、当初明細書等に記載されている「光スペクトル反応中総光電流均一度」が具体的にどのようなものかは把握できないものの、ここでの「光スペクトル反応中総光電流均一度」が「焦平面アレー」の「応答スペクトル」における「総光電流の均一度」であることは読み取れない。
イ 以上のことからすれば、当初明細書等において記載されていた「光スペクトル反応中総高電流均一度」に関する記載からは、少なくとも「焦平面アレーの応答スペクトル」における「総光電流均一度」を読み取れないのであるから、本件補正により追加された「焦平面アレーの応答スペクトルにおける総光電流均一度」を追加する補正事項は、当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではないというべきである。
(2)本件補正により追加された「温度差の測定検証」について
ア 上記1(2)ないし(7)の補正事項中において補正された「温度差の測定検証」は、本件補正前の平成25年8月14日提出の手続補正書による補正後の明細書及び当初明細書に記載されていた「変温光電測定検証」及び「変温光電量測定検証」を「温度差の測定検証」としたものであるところ、当初明細書及び当初請求の範囲には、「温度差の測定検証」について何らの記載もない。
(ア)当初明細書の「変温光電測定検証」に関する記載について
当初明細書の「変温光電測定検証」に関する記載は、その段落【0007】に「すなわちその赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置と検証方法は、熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性の検証に用いられる検証モジュールを含み、先ずエピタキシャルパラメーターの校正を行い、検証合格後、単乙型赤外線センサ製造工程と変温光電量測定検証を行い、実際にエピタキシャルは導熱接着絶縁テストを完成し、金線により同軸導線或いは低ノイズ信号線を導出し、低温変温と変圧を経て、暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトル、探知検査度校正を測定し、この検証合格後は、焦平面アレー製造工程とその光電均一度の検証を行い、・・・」との記載が存在する他は、段落【0009】に「・・・合格後は単乙型赤外線センサ製造工程と変温光電量測定検証を行い、これによりエピタキシャルは赤外線センサの低温変温と変圧測定校正を完成する。・・・」、段落【0012】に「上記検証に合格後、単乙型赤外線センサ製造工程と変温光電測定検証20を行う。実際にエピタキシャルは導熱接着剤の粘着テスト絶縁を完成し、金ワイヤーにより同軸導線或いは低ノイズ信号線を経て導出し、低温変温と変圧測定暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトラル、探知検知度校正を経て、該検証に合格後、焦平面アレー製造工程及びその光電均一度検証30を行う。不合格であれば、熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性検証10に戻り再び検証を行う。」と記載され、段落【0018】に「・・・この後、同一片の赤外線センサエピタキシャル片の一部分(約チップ総面積の1/4?1/5)を切り取り、単乙型赤外線センサ製造工程と変温光電測定検証20を行い、主に実際エピタキシャル完成赤外線センサ構造と設計部品構造間の光電特性と品質の差異を確認する。」と記載され、さらに、段落【0019】に「単乙型赤外線センサ製造工程中において、フォトマスク実体部品製造工程ライン幅は誤差<10%で、変温光電測定検証を行う時には、10?300Kにおける操作温度誤差は<15%で、得られるスペクトラム形態の均一度は>80%で、調整される適当なエッチング水溶剤(弱PH値酸液を含む:過酸化水素:消イオン水=2?5:1?2:5?20)である。エッチング示度は部品層構造層上層においT生じる電子-電ホール層間の厚み(約1?10μm)で、目的は側向漏電流を防止することである。もし平面式(Planar-type)定義部品区域製造工程であるなら、高温拡散P-極(拡散深度は0.5?5μm)において用い、さらに表面研磨方式(1?5μm粒径の酸化アルミニウム:消イオン水=1:2?5)により、0.25?2μmにまで研磨し、最適な極区域を形成する。非部品区域はI-本質層可阻止側向溢散(Lateral Spreading)電流で、光電流局限を部品主構造層から接触電極区に流し、最大の量子効率を達成する。」、段落【0022】に「単乙型赤外線センサ構造を完成後、導熱接着剤によりテスト絶縁ベース(酸化アルミニウムキャリアベースなど)上に接着し、金線上下信号端を引き出し、循環式液体ヘリウム低温変温真空チャンバー中に入れ、さらに端子pin信号線をフィードスルー(feedthrough)インターフェースより同軸導線或いは低ノイズ信号線を通して導出し、低温変温と変圧測定を経由し、暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトラル(FTIRスペクトル分析器により、入射光源、フーリエスペクトル転換を行い、吸収スペクトル分布を得る。低ノイズ電流拡大器:電圧を設定、信号感知度と増益拡大を行う)、探知検査度校正(黒体放射源、FTIR光源強度の校正、フェーズロック拡大器、シンクロ調変光電流転換制御電圧信号読み取り)を行い、以上光電物理パラメーター測定と検証を経た後、もし信号ノイズ比、光反応ウェーブバンド、反応度、探知検査度、暗電流、暗微分電気抵抗などの定めた赤外線センサ規格に符合するなら、同片感知エピタキシャルの3/4?4/5のチップ面積はアレー型を使用するフォトマスクである。」、段落【0029】に「・・・20 単乙型赤外線センサ製造工程と変温光電測定検証・・・」と記載されているのみである。(下線は当審により付加した。)
(イ)上記(ア)において摘示した記載を総合しても、上記段落【0007】の記載からは「変温光電量測定検証」に「実際にエピタキシャルは導熱接着絶縁テストを完成し、金線により同軸導線或いは低ノイズ信号線を導出し、低温変温と変圧を経て、暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトル、探知検査度校正を測定」する内容が含まれるであろうことが推認され、その他の段落【0008】、【0009】、【0012】、【0018】、【0019】及び【0022】の記載から「変温光電測定検証」が、少なくとも、「温度」を変化させて、「光電」に関する測定を行うことを含む検証であることが一応理解できるのみである。
そして、この理解は、段落【0007】における記載と矛盾するものではない。
なお、その他、温度に関する記載として、当初明細書の段落【0026】に「・・・温度を検証を待つ赤外線熱影像アレーモジュールの適当温度操作範囲に設定する。この操作温度は絶対カスパリアン温度40?300Kである。温度がこの設定温度に安定し、少なくとも15分後、偏圧確立モジュール512により、外付けモジュール操作偏圧の調整を行い、赤外線センサに跨ぎ接続する偏圧絶対値、10MV?4V間に転換する。調整信号読み出し集積回路内積分時間を10μsecから32msec間に対応調整する。信号転換阻害拡大と補償504及び緩衝増益機能506の機能端は、後級拡大と補偏回路に基づき定める。以上の重要調整パラメーターはすべて影像検知モジュール感知単調中段温区背景に調整され、元の影像信号は表示モニタにおいてグレーレベルである。」と記載され、段落【0028】には、「・・・低温操作の焦平面アレー環境制冷器制御温度は40?150K±0.5Kで、封入内部真空圧力は10E-5?5E-2torrである。両点均一度影像品質補償後のその影像画面均一度は>98%で、EPAモジュール探知検査ユニット操作率は>95%で、最後に一組の影像モジュール雛形60を完成する。」と記載されているものの、当該記載も、上記の解釈を左右するものでもない。
イ 本件補正後の「温度差の測定検証」の技術的意義について
「温度差の測定検証」は、本件補正後の段落【0007】の「赤外線センサ製造工程と温度差の測定検証を行い、実際にエピタキシャルは導熱接着絶縁テストを完成し、金線により同軸導線或いは低ノイズ信号線を導出し、低温変温と変圧を経て、暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトル、探知検査度校正を測定し、」との記載からは、「温度差の測定検証」に「実際にエピタキシャルは導熱接着絶縁テストを完成し、金線により同軸導線或いは低ノイズ信号線を導出し、低温変温と変圧を経て、暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトル、探知検査度校正を測定」することが含まれるものと推認される。
すなわち、本件補正により追加された「温度差の測定検証」は、少なくとも「温度差」を「測定」することが含まれる「検証」を意味するものと一応解されるものである。
ウ 本件補正により追加された「温度差の測定検証」が当初明細書及び当初請求の範囲に記載されたものか否かについて
上記で説示したように、当初明細書及び当初請求の範囲には、「温度差の測定検証」については何ら記載されていない。
そして、本件補正は「変温光電測定検証」及び「変温光電量測定検証」を「温度差の測定検証」とするものであるところ、上記アで説示したように、当初明細書の「変温光電測定検証」及び「変温光電量測定検証」には、少なくとも「温度を変化」させて「光電」に関する測定をすることが含まれるものと解されるのに対して、本件補正後の明細書に記載の「温度差の測定検証」は、上記イで説示したように、少なくとも「温度差」を測定することが含まれものと解されるのであるから、本件補正後の「温度差の測定検証」が、当初明細書に記載の「変温光電測定検証」と同じ検証を意味するものと解することはできないし、「温度差の測定検証」が、「変温光電測定検証」及び「変温光電測定量検証」から自明なものであるということもできない。
エ 小括
以上のとおりであるから、「温度差の測定検証」を追加する本件補正は、当初明細書及び当初請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものとはいえない。
(3)新規事項の追加についての検討のまとめ
上記(1)及び(2)において検討したように、本件補正により請求の範囲及び明細書には、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明な事項といえない事項が追加されるものとなっており、これらの事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものではない。

3 特許請求の範囲についての補正事項の目的についての検討
特許請求の範囲についてする補正事項が、平成18年法律第55号附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項の各号に列挙されるいずれかの目的に該当するものであるか否かについて検討する。
上記1(1)の補正事項は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「焦平面アレーの光スペクトル反応中の総光電流均一度」を、「焦平面アレーの光スペクトル反応中の総光電流均一度」と補正するものである。
この補正後の「焦平面アレーの光スペクトル反応中の総光電流均一度」の意味する内容は、明細書の記載を参酌したとしても、明細書(本件補正後のもの)には、当該語句に関して、上記1(3)の補正事項において摘示した記載の他は、段落【0023】において「さらに、焦平面アレー製造工程を直接行い、各単位探知検査ユニットの均一度ライン幅誤差は<10%で、スペクトル反応中の総光電流均一度は>75%で、製造プロセス使用の原単一型パラメーターは主にアレー製作を行う。スペクトル反応中の総光電流均一度は>75%で、製造プロセス使用の原単一型パラメータは主にアレー製作を行う。」と記載されているのみであるから、これらの記載を参酌しても、当該「焦平面アレーの光スペクトル反応中の総光電流均一度」について、焦平面アレー」の「光スペクトル反応」や、ここでの「総光電流均一度」がどのようなパラメータであるのかが具体的に理解することはできない。
してみると、本件補正事項(1)は、当該補正により、明瞭でないと指摘された発明特定事項を明瞭とするものであると評価することはできないから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第4号に規定する「明りょうでない記載の釈明」に該当するものとはいえない。
そして、当該補正が、同項第1ないし3号に該当するものでないことは明らかである。
してみると、請求項1の記載に「該焦平面アレーの応答スペクトルにおける総光電流の均一度」を追加する補正事項(1)は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項のいずれを目的とするものにも該当しないものである。

4 補正の却下の決定についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
上記第2の補正の却下の決定のとおり、本件補正は却下されことから、本審決において判断する対象となる本願の特許請求の範囲は、平成25年8月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2であり、本願の明細書は、同補正書により補正された明細書である。
また、平成24年8月20日に提出された手続補正書により、第1図ないし第6図の図面が追加されている。

第4 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成25年4月30日付けの拒絶理由通知書により通知された理由であり、そのうちの理由2及び理由3の概要は次のとおりである。(なお、原査定の理由1(特許法第29条第2項違反)は省略した。)
1 原査定の理由2(特許法第36条第6項第2号違反)
原査定の拒絶の理由2は、本願は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないということであり、その指摘事項は次のとおりである。
「 1.請求項1
(1)「赤外線熱影像アレー」と「焦平面アレー」との異同が不明である。
(2)「その」が「赤外線熱影像アレーモジュール」と「焦平面アレー製造工程」とのどちらを示しているのか明確でない。
(3)以下の語句は、日本語として妥当でない技術用語であるから、その意味内容が不明である。
「光電均一度」「単位検知検査ユニット均一度」「光スペクトル反応中総光電流均一度」
(4)「単位検知検査ユニット」と「焦平面アレー」または「赤外線熱影像アレー」との関係が不明である。

2.請求項2:「表面」が何の表面であるのか明確でない。

よって、請求項1,2に係る発明は明確でない。」

2 原査定の理由3(特許法第17条の2第3項違反)
原査定の拒絶の理由の理由3は、平成24年8月20日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものであって、その指摘事項は、次のとおりである。
(1)前記手続補正によって追加された図1?図6は、いずれも本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から、当業者にとって自明なものでない。

第5 請求人の応答内容について
請求人は、上記拒絶理由についての応答として、平成25年8月14日に提出の意見書で次のように主張している。
1 原査定の理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
(1)本願の請求項1の「赤外線熱影像アレー」と「焦平面アレー」との異同が不明であると指摘されている。これについて、本願の明細書の段落【0012】の以下の記載を参照されたい。「上記検証に合格後、単一型赤外線センサ製造工程と変温光電測定検証20を行う。実際にエピタキシャルは導熱接着剤の粘着テスト絶縁を完成し、金ワイヤーにより同軸導線或いは低ノイズ信号線を経て導出し、低温変温と変圧測定暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトラル、探知検知度校正を経て、該検証に合格後、焦平面アレー製造工程及びその光電均一度検証30を行う。不合格であれば、熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性検証10に戻り再び検証を行う。合格後は、該焦平面アレー製造工程及びその光電均一度検証30を行い、設定に符号した赤外線センサ規格により、焦平面アレー製造工程を行う。プロセスは使用する単一型パラメーターによりアレー政策を行う。この後、テスト区域を選定し、暗電流均一度テストを行う。続いて、選定テスト区域は暗電流均一度のテストを行い、該検証に合格後は焦平面アレーと信号読み出し集積回路接着と研磨製造工程検証40を行う。不合格であれば、熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性検証10に戻り再び検証を行う。」と記載されているので、これを参照されたい。
(2)本願の請求項1中の、「その」が「赤外線熱影像アレーモジュール」と「焦平面アレー製造工程」とのどちらを示しているのか明確でない及び本願の請求項1中の、「光電均一度」「単位検知検査ユニット均一度」「光スペクトル反応中総光電流均一度」が不明確であると指摘されている。
これについては、本願の段落【0015】の、「合格後は、熱影像アレーモジュール雛形完成60を続けて行い、インジウム柱接着方式を利用し、焦平面感知アレーと接合する。各アレーユニット内の光電流を積分キャパシタ1020信号に保存し、これにより行414と列416多重器は、順番に信号出力端を経てセンサー緩衝板モジュール524に送られ、影像処理システム内において影像信号の処理を行い、熱影像アレーモジュール雛形を完成する60。」との記載、及び、本願の段落【0028】の、「次に本発明の立体図である図6に示すように、影像調整プロセスの完成後に、赤外線熱影像アレーモジュールの製作中において、焦平面感知アレーの焦平面アレーと信号読み出し集積回路モジュールが検知モジュール背面接光区804により赤外線光信号802を受け取ることができることを確認し、信号読み出し集積回路の読み取り回路チップ808は信号読み出し集積回路上の光電流入力端806により、インジウム柱接合方式と感知アレーの焦平面アレー接合により、各アレーユニット内の光電流が積分キャパシタ1020に保存する信号は、列810と行多重器812により、順番に信号出力端814を経てセンサー緩衝板モジュール524と影像表示処理回路モジュール526内に送られ、影像信号処理などのプロセスを行う。」との記載を参照されたい。
以上の記載から、焦平面アレーの各アレーユニットは光電流を受け取れることが分かる。
(4)本願の請求項1中の、「単位検知検査ユニット」と「焦平面アレー」または「赤外線熱影像アレー」との関係が不明であると指摘されているので、これに対して、本願の請求項1を以下のように補正した。
「赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置において、焦平面アレー製造工程と赤外線熱影像アレーモジュールの焦平面アレーの光電流均一度を検証するモジュールを包含し、該モジュールの検証内容は、該焦平面アレー製造工程で形成される該焦平面アレーの各アレーユニットの光電流均一度のライン幅誤差が10%より小さく、該焦平面アレーの光スペクトル反応中の総光電流均一度が75%より大きいことの検証を包含することを特徴とする赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置。」
(5)本願の請求項2に関して、「表面」が何の表面であるのか明確でないと指摘されている。
これについては、本願明細書の段落【0023】に以下のように記載されている。
「焦平面アレー製造工程を直接行い、各単位探知検査ユニットの均一度ライン幅誤差は<10%で、スペクトル反応中の総光電流均一度は>75%で、製造プロセス使用の原単一型パラメーターは主にアレー製作を行う。最後に部品テスト区に暗電流均一度テスト13を加え、もし低エネルギーギャップ感知材料を利用し製造する感知アレーが、アンチモン化インジウム、水銀カドミウムアンチモンであるなら、感知アレー表面において、プラズマ、紫外線補助VD、或いは過熱真空積層などの方式により酸化シリコン或いは窒化シリコンなどの鈍化膜(passivation layer)(厚みは50?300nm)、或いは回転塗布方式皮膜重合物層(厚みは0.5?3μm)をアレー層上に成長させる必要がある。主要な目的は表面が外界の湿気或いは汚染物の滲み出しを受け、表面の雑湿エネルギーステートが増加し側向暗電流を形成し、感知品質に影響を及ぼすことを防止することである。」
請求項2を以下のように補正した。
「請求項1記載の検証装置において、該焦平面アレーの表面が外界の水分湿気や汚染物質の滲み出しを受けることを防止する皮膜重合物層を包含することを特徴とする検証装置。」

2 原査定の理由3(特許法第17条の2第3項違反)について
(1)2012年8月20日付けでした手続補正で追加された図1?図6は、いずれも本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から、当業者にとって自明なものでないとされている。
I.符号の補正:
本願の図2の記載によると、インジウム柱に接続された部品は焦平面アレーとされ、該焦平面アレーにおける、許可出力P-MOSFETトランジスター1012、出力及びリセット切り換えP-MOSFETトランジスター1014、赤外線センサ偏圧調整P-MOSFETトランジスター1016、許可リセットP-MOSFETトランジスター1018及び積分キャパシタ1020の接続関係について明確にするため、図2を補正した。
図3についても、焦平面アレーの包含するものを、許可出力P-MOSFETトランジスター1012、出力及びリセット切り換えP-MOSFETトランジスター1014、赤外線センサ偏圧調整P-MOSFETトランジスター1016、許可リセットP-MOSFETトランジスター1018及び積分キャパシタ1020と補正した。
図2、3、5のブロック図は並びに明細書の文字に対応していないため、対応する補正を行なった。

第6 当審の判断
1 原査定の理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
(1)請求項1についての検討
ア 請求項1の記載
平成25年8月14日提出の手続補正書により補正された請求項1は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置において、焦平面アレー製造工程と赤外線熱影像アレーモジュールの焦平面アレーの光電流均一度を検証するモジュールを包含し、該モジュールの検証内容は、
該焦平面アレー製造工程で形成される該焦平面アレーの各アレーユニットの光電流均一度のライン幅誤差が10%より小さく、該焦平面アレーの光スペクトル反応中の総光電流均一度が75%より大きいことの検証を包含することを特徴とする赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置。」
イ 検討
請求項1の記載において、次の点が明確でない。
(ア)「光スペクトル反応中の総光電流均一度」は日本語として妥当でない技術用語であってその意味内容が不明である。
この点については、上記第2の2(1)3で検討したとおりである(なお、ここでの「光スペクトル反応中の総光電流均一度」が「焦平面アレーの」ものであることが当初明細書等に記載されているとはいえない。)
(イ)請求項1の「該焦平面アレー製造工程で形成される該焦平面アレーの各アレーユニットの光電流均一度のライン幅誤差が10%より小さく、」の「誤差」は「ライン幅」と「光電流均一度」のいずれについての誤差であるのかが明確でない。
なお、原査定においては指摘がされていないが、「赤外線熱影像アレー」と「焦平面アレー」との異同について検討するに、請求項1には、請求項1に係る発明が「赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置」であること、「焦平面アレー」が「赤外線熱影像アレーモジュール」のアレーであることが特定されているものの、これらの記載から、赤外線熱影像アレーと焦平面アレーが同じものであるのか、異なるものであるのかは依然として不明であるし、その点は発明の詳細な説明の記載を参酌しても明らかでない。
(2)原査定の理由2についての検討の小括
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1及び請求項1を引用する請求項2に係る発明は、原査定の理由で指摘したとおり明確でなく、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 原査定の理由3(特許法第17条の2第3項違反)について
(1)平成24年8月20日に提出された手続補正書による手続補正について
平成24年8月20日に提出された手続補正書による補正の内容は、図1ないし図6を追加するものであり、当該追加された図面のうち、図2及び図3は以下のとおりである。

ア 図2



イ 図3


(2)平成25年8月14日に提出された手続補正書による手続補正について
平成25年8月14日に提出された手続補正書による補正の内容は、図2,図3及び図5を変更するとともに、明細書の段落【0029】の記載中の「1012 可能をP-MOSFETトランジスターに出力 1014 P-MOSFETトランジスター切り換えを出力及び再び設置 1016 赤外線センサを調整しP-MOSFETトランジスターを偏圧 1018 可能をP-MOSFETトランジスターに再び設置」との記載を「1012 許可出力P-MOSFETトランジスタ 1024 出力及びリセット切り換えP-MOSFETトランジスタ 1016 赤外線センサ偏圧調整P-MOSFETトランジスタ 1018 許可リセットP-MOSFETトランジスタ」にする補正をその一部に含むものであり、当該変更された図面のうち図2及び図3は以下のとおりである。

ア 図2


イ 図3


(3)検討
ア 本件当初明細書及び当初請求の範囲の記載された事項
本件当初明細書には次の記載がある。
(ア)「【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の赤外線熱影像アレーモジュールのフローチャートである。
【図2】本発明の赤外線熱影像アレーモジュールの構造図である。
【図3】本発明の赤外線熱影像アレーモジュールの構造図である。
【図4】本発明の赤外線熱影像アレーモジュールの平面図である。
【図5】本発明の赤外線熱影像アレーモジュールのブロックチャートである。
【図6】本発明の赤外線熱影像アレーモジュールの立体図である。」
(イ)「 【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の赤外線熱影像アレーモジュールのフローチャートである図1に示すように、本発明は熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性検証10を含み、先にエピタキシャルパラメーターの校正を行い、感知波長帯は近、中、遠赤外線を利用し波長帯を吸収する。
検知モジュール赤外線貫通基板102は検知モジュールの品質の優劣を選択し、即波長帯を受け取る赤外線の貫通率に影響を及ぼす。
ボトムヘビードープコンタクト層104において、赤外線は半導体と導電金属オームの接触品質に影響を及ぼす。
赤外線吸収層106(活性層)は、赤外線の影響光導電利得、量子効率を吸収する。
本質層108(空乏層)は、赤外線の厚みと真性濃度を吸収し、量子効率と赤外線センサの暗電流値に影響を及ぼす。
エネルギーバリヤブロッキング層110は、赤外線センサのインピーダンスに影響を及ぼし、高注入光電流効率、赤外線センサ暗電流値、操作温度下活性化能値に符号させる。
トップヘビードープコンタクト層112は、オームコンタクト特性と光電子流出力の効率に影響を及ぼす。」
(ウ)「【0013】
合格後は、該焦平面アレーと信号読み出し集積回路接着と研磨製造工程検証40を行い、感知アレーモジュールが光電信号の転換を行う便のため平面検知モジュールと信号読み出し集積回路間にインジウム接合を行う。
行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大418し、積分キャパシタ1020に保存し、感知した信号/ノイズ比(S/N比)を注入ユニット412に入力する。
該注入ユニット412は積分キャパシタ1020に電荷信号を注入し、出力端に出力する。
アンプモジュールユニット、信号増益拡大。
行414と列416多重選択器ユニットは感知ユニット一順序をピックアップする。
クロック生成制御ユニット420は、主クロック426により読み取りと信号積分時間を制御し、該検証に合格後は、影像統合テスト(光機システムを含む)検証50を行う。不合格の場合には焦平面アレー製造工程及びその光電均一度検証30に戻り再び検証を行う。」
(エ)「【0016】
本発明の構造図である図1、2に示すように、本発明の熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性検証10は、設計のパラメーターに基づき、必要な熱影像アレーモジュール中の赤外線赤外線センサ構造を規格定義する。そのエピタキシャルと高温拡散設備は、分子ビームエピタキシャル法(Molecular Beam Epitaxy, MBE)、金属有機CVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition, MOCVD)、或いは高温拡散炉(HTDO)を最適部品構造の製造方式とする。もし赤外線吸収層106を量子井(Quantum Well)、量子ドット( Quantum Dot)感知構造操作などの量子閉じ込め構造として設計するなら、分子ビームエピタキシャル法或いは金属有機CVD法の方式のエピタキシャルに偏る。」
(オ)「【0017】
反対に、もし基体型(Bulk Type)P-N、P-I-N形態を主とする感知構造であるなら、常に分子ビームエピタキシャル法或いは金属有機CVD法によりMをNとI層に成長させた後、さらに高温拡散炉を利用しP層を拡散する。使用基板はシリコン(Si)などの四族、GaAs、Inpなどの三五族で、その感知材料、サイクル構造と厚みはそれぞれSi/SizGel-z(z=0.1?0.5,10?40nm/1?10nm,10?50サイクル)、AlxGal-xAs/GaAs(x=0.1?0.5,10?40nm/1?10nm,10?50サイクル)、AlxGal- xAs/InyGal-yAs/GaAs(x=0.1?0.5,y=0.1?0.3,10?40nm/1?5nm/1?10nm,10?50サイクル)で、基体型感知材料はInSb、MCT、Inpで、I-本質層(厚み:0?5μm)のP-I-N構造を有し、P極はHTDO拡散方式を利用し形成し、P極拡散材料はZnAs化合物、Zn、Cdで、深度:1?3μmである。」
(カ)「【0018】
分子ビームエピタキシャル法、金属有機CVD法、或いは高温拡散炉(HTDO)エピタキシャル拡散機台により設計赤外線センサ構造を成長させる前においては、先ず材料積層率、サイクル構造完全性、構造結晶品質、極性とドーピング濃度などのエピタキシャルパラメーター校正を行う必要がある。上記は赤外線センサモジュール構造のエピタキシャル構造設計のプロセス、エピタキシャルパラメーター検証と赤外線センサ構造である。
この後、同一片の赤外線センサエピタキシャル片の一部分(約チップ総面積の1/4?1/5)を切り取り、単乙型赤外線センサ製造工程と変温光電測定検証20を行い、主に実際エピタキシャル完成赤外線センサ構造と設計部品構造間の光電特性と品質の差異を確認する。」
(キ)「【0019】
単乙型赤外線センサ製造工程中において、フォトマスク実体部品製造工程ライン幅は誤差<10%で、変温光電測定検証を行う時には、10?300Kにおける操作温度誤差は<15%で、得られるスペクトラム形態の均一度は>80%で、調整される適当なエッチング水溶剤(弱PH値酸液を含む:過酸化水素:消イオン水=2?5:1?2:5?20)である。エッチング示度は部品層構造層上層においT生じる電子-電ホール層間の厚み(約1?10μm)で、目的は側向漏電流を防止することである。もし平面式(Planar-type)定義部品区域製造工程であるなら、高温拡散P-極(拡散深度は0.5?5μm)において用い、さらに表面研磨方式(1?5μm粒径の酸化アルミニウム:消イオン水=1:2?5)により、0.25?2μmにまで研磨し、最適なP極区域を形成する。非部品区域はI-本質層可阻止側向溢散(Lateral Spreading)電流で、光電流局限を部品主構造層から接触電極区に流し、最大の量子効率を達成する。
【0020】
続いて、プラズマCVD(Plasma Enhance Chemical Vapor Deposition,PECVD)法(基板温度は300?500℃)、光化学積層法(Plasma Vapor Deposition,PVD)(基板温度は80?200℃)、イオンスパッタリング(一般にHe、Arイオン鈍性気体を使用する)、或いは熱蒸着メッキ法を選択し、酸化シリコン(SiOx)或いは窒化シリコン(SiNx)を成長させる。赤外線センサの表面絶縁被覆層116とし、厚みは50?300nmで、さらに化学イオン乾式法(Reactive Ion Etching,RIE)S類は湿式エッチング法(フッ化水素:消イオン水,Buffer HF:DI water=1?5:20)により、半導体接触金属区を定義し、この類の赤外線センサ上114と下1010電極区が使用する接触金属材質が、もしN型ならパラジウム(Pd)1?20nm/クロム(Cr)1?20nm/金 ゲルマニウム合金(Au/Ge)50?300nm/金(Au)50?300nmで、P型ならパラジウム(Pd)1?20nm/クロム(Cr)1?20nm/金ベリリウム合金(Au/Be)或いは亜鉛(Zn)50?300nm/金(Au)50?300nmで、熱蒸着、電子銃加温蒸着、或いはイオンスパッタリングを使用し金属電極を製造する。
【0021】
迅速退火(Rapid Thermal Annealing,RTA)製造工程は最適な半導体と金属間のオームコンタクトを形成する。加温安定温度と時間はそれぞれ350?500℃、15?60secで、加温温度斜率は100?200℃/ secである。もしプラットフォーム式(Mesa)赤外線センサ区域製造工程により定義するなら、フォトマスクリソグラフを利用しエッチング区を定義する他に、エッチング区域深度はボトムヘビードープ極性区厚みの1/3?1/2を超過しなければならない。その他の製造工程は平面式と同様である。
量子井赤外線センサ構造製造工程においては、プラットフォーム式定義赤外線センサ区域製造工程の後にサイクル性光柵構造を追加しなければならない。その構造は1次元棒状或いは2次元方形或いは菱形形態で、光柵間距離と高度は1?5μmと10?500nm間のエッチング方法とプラットフォーム式感知定義区域製造工程方式と同様である。以上は単乙型赤外線センサ製造工程の主要なステップで、その目的はこの製造工程パラメーターを使用し作られた後、焦平面アレー構造製作の参考パラメーターとすることである。
【0022】
単乙型赤外線センサ構造を完成後、導熱接着剤によりテスト絶縁ベース(酸化アルミニウムキャリアベースなど)上に接着し、金線上下信号端を引き出し、循環式液体ヘリウム低温変温真空チャンバー中に入れ、さらに端子pin信号線をフィードスルー(feedthrough)インターフェースより同軸導線或いは低ノイズ信号線を通して導出し、低温変温と変圧測定を経由し、暗電流、暗電気抵抗、反応スペクトラル(FTIRスペクトル分析器により、入射光源、フーリエスペクトル転換を行い、吸収スペクトル分布を得る。低ノイズ電流拡大器:電圧を設定、信号感知度と増益拡大を行う)、探知検査度校正(黒体放射源、FTIR光源強度の校正、フェーズロック拡大器、シンクロ調変光電流転換制御電圧信号読み取り)を行い、以上光電物理パラメーター測定と検証を経た後、もし信号ノイズ比、光反応ウェーブバンド、反応度、探知検査度、暗電流、暗微分電気抵抗などの定めた赤外線センサ規格に符合するなら、同片感知エピタキシャルの3/4?4/5のチップ面積はアレー型を使用するフォトマスクである。」
(ク)「【0023】
さらに、焦平面アレー製造工程を直接行い、各単位探知検査ユニットの均一度ライン幅誤差は<10%で、スペクトル反応中の総光電流均一度は>75%で、製造プロセス使用の原単乙型パラメーターは主にアレー製作を行う。最後に部品テスト区に暗電流均一度テスト13を加え、もし低エネルギーギャップ感知材料を利用し製造する感知アレーが、アンチモン化インジウム、水銀カドミウムアンチモンであるなら、感知アレー表面において、プラズマ、紫外線補助VD、或いは過熱真空積層などの方式により酸化シリコン或いは窒化シリコンなどの鈍化膜(passivation layer)(厚みは50?300nm)、或いは回転塗布方式皮膜重合物層(厚みは0.5?3μm)をアレー層上に成長させる必要がある。主要な目的は表面が外界の湿気或いは汚染物の滲み出しを受け、表面の雑湿エネルギーステートが増加し側向暗電流を形成し、感知品質に影響を及ぼすことを防止することである。 」
(ケ)「【0024】
次に本発明の構造図である図3に示すように、上下金属電極端上に成長したインジウム柱118(高度は3?12μmで、底部面積は金属電極区より小さい)は、圧応力と平板加温方式(温度は90?200℃)を利用し、インジウム柱118の溶融点に近く達する瞬間に、信号読み出し集積回路はインジウム接合(Indium bonding)を行う。続いて、接着剤注入固化工程(Polymer重合物質など)を行い、完璧な焦平面アレーと信号読み出し集積回路構造を完成する。図中において、一組のnxn画素数内の焦平面アレーと信号読み出し集積回路単乙構造ユニットを表示する。信号読み出し集積回路の主要な機能は、光電信号ピックアップ転換で、その構造は各画素ユニットが一組の緩衝、直接注入、ゲート極調変、キャパシタ抵抗転換拡大式注入ピックアップ信号積分ユニットに対応することである。よって、焦平面アレー感知ユニット構造と信号読み出し集積化井戸モジュール間のサポート度を利用し、研磨により起きたシェアストレス累積を適度に釈放する。」
(コ)「【0025】
接着剤注入工程時には、先ず赤外線センサアレーと信号読み出し集積回路が結合した焦平面アレーモジュール間の接着剤を充填する必要のない部分をフォトマスクにより保護し、重合物(Polymer)を重合接着剤液中に入れる。気泡が赤外線センサアレーと信号読み出し集積回路チップの境界位置から出て来なくなればそれで良い。挟み取り出した後に、培養品中に入れ、防湿箱中で陰干しする。少なくとも8?12時間後に、再びアセトンとトリクロルメタンなどの有機溶液により、元々は焦平面アレーモジュールチップ上に固着していた保護フォトマスクと残存接着剤を除去する。」
(サ)「最後に、図4に合わせて示すように、単乙型感知チップに類似し、先ず導熱接着剤により68或いは84ピンのチップベース上に固着する。ベース上のボンディングピン連結方式は焦平面アレーと信号読み出し集積回路内のトンネル出力端点70、偏圧と電源端点72、クロック端点74、チップ温度感知ダイオード出力端点76と出力モジュール端点78である。上記各端点はそれぞれ感知転換出力信号、電源信号、クロック及びシンクロ駆動入力出力I/O信号、テストダイオード信号と操作温度検査測定信号である。」
(シ)「【0026】
本発明のブロックチャートである図5に示すように、完成後は低温真空冷却可能チャンバー502に入れ、先ずクロック生成モジュール510により、クロック駆動プロセスを行う。目的は焦平面アレーモジュール508に正常な作業状態を提供し、出力信号を正常な作業モードに維持することである。この時、デジタルスコープを利用し、センサー緩衝板モジュール(Sensor Buffer Board)524内の影像アナログ出力端を切り取り、その要求出力信号規格を確認する。この前に、室温下での焦平面アレーと信号読み出し集積回路接合抵抗値信号画面をテストし、初歩の接合状況を理解する。さらに、温度を検証を待つ赤外線熱影像アレーモジュールの適当温度操作範囲に設定する。この操作温度は絶対カスパリアン温度40?300Kである。温度がこの設定温度に安定し、少なくとも15分後、偏圧確立モジュール512により、外付けモジュール操作偏圧の調整を行い、赤外線センサに跨ぎ接続する偏圧絶対値、10MV?4V間に転換する。調整信号読み出し集積回路内積分時間を10μsecから32msec間に対応調整する。信号転換阻害拡大と補償504及び緩衝増益機能506の機能端は、後級拡大と補偏回路に基づき定める。以上の重要調整パラメーターはすべて影像検知モジュール感知単調中段温区背景に調整され、元の影像信号は表示モニタにおいてグレーレベルである。
【0027】
同時に、スコープにより継続し影像出力端信号をモニタし、温度変化に対して比較的大きな動態値を表示する。この影像表示処理回路モジュール(Video Processing Module)526中には、アナログデジタル転換回路514、出力影像データ信号処理と制御回路516、プログラマブルクロック生成回路518、プログラマブルパワーサプライ回路520を設計し、主クロックもVME bus伝送キーを経てコンピュータに供給され、制御指令全体と影像信号出力構造もRS232インターフェースにより、ホストコンピュータ中の制御プロセッサー522のBit I/Fインターフェースカードに連結され指令(Command)とI/O機能を行う。続いて、さらに赤外線光学レンズを検知モジュール前焦距離位置(F#は1.5?3.5)に装置し、熱影像統合テスト(光機システムを含む)50はパラメーターの微調整を行う。最後に低温と高温区の2点の影像信号線性補償を行い、その動態影像の均一度を校正する。」
(ス)「【0028】
次に本発明の立体図である図6に示すように、影像調整プロセスの完成後に、赤外線熱影像アレーモジュールの製作中において、焦平面感知アレーの焦平面アレーと信号読み出し集積回路モジュールが検知モジュール背面接光区804により赤外線光信号802を受け取ることができることを確認し、信号読み出し集積回路の読み取り回路チップ808は信号読み出し集積回路上の光電流入力端806により、インジウム柱接合方式と感知アレーの焦平面アレー接合により、各アレーユニット内の光電流が積分キャパシタ1020に保存する信号は、列810と行多重器812により、順番に信号出力端814を経てセンサー緩衝板モジュール524と影像表示処理回路モジュール526内に送られ、影像信号処理などのプロセスを行う。
低温操作の焦平面アレー環境制冷器制御温度は40?150K±0.5Kで、封入内部真空圧力は10E-5?5E-2torrである。両点均一度影像品質補償後のその影像画面均一度は>98%で、EPAモジュール探知検査ユニット操作率は>95%で、最後に一組の影像モジュール雛形60を完成する。」
(セ)「【符号の説明】
【0029】
10 熱影像モジュール規格設計、エピタキシャルと光学物性検証
20 単乙型赤外線センサ製造工程と変温光電測定検証
30 焦平面アレー製造工程及びその光電均一度検証
40 焦平面アレーと信号読み出し集積回路接着と研磨製造工程検証
50 影像統合テスト(光機システムを含む)検証
60 熱影像アレーモジュール雛形完成
102 検知モジュール赤外線貫通基板
104 ボトムヘビードープコンタクト層
106 赤外線吸収層
108 本質層
110 エネルギーバリヤブロッキング層
112 トップヘビードープコンタクト層
114 上電極区
116 赤外線センサ表面絶縁被覆層
118 インジウム柱
1010 下電極区
1012 可能をP-MOSFETトランジスターに出力
1014 P-MOSFETトランジスター切り換えを出力及び再び設置
1016 赤外線センサを調整しP-MOSFETトランジスターを偏圧
1018 可能をP-MOSFETトランジスターに再び設置
1020 積分キャパシタ
1022 可能端点を選択
1024 偏圧を端点に注入
1026 端点を再び設置
1028 負端端点
1030 信号出力端
412 注入ユニット
414 行多重器
416 列多重器
418 行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大
420 クロック生成制御ユニット
424 線クロック
426 主クロック
428 行選択ポート
2110 列ポートを再び設置する
2111 列選択ポート
2112 列ポートを再び設置する
2113 Aトンネル出力端
2114 Bトンネル出力端
70 トンネル出力端点
72 偏圧と電源端点
74 クロック端点
76 チップ温度感知ダイオード出力端点
78 出力モジュール端点
502 低温真空冷却可能チャンバー
504 信号転換阻害拡大と補償
506 緩衝増益機能
508 焦平面アレーモジュール
510 クロック生成モジュール
512 偏圧確立モジュール
526 影像表示処理回路モジュール
514 アナログデジタル転換回路
516 出力影像データ信号処理と制御回路
518 プログラマブルクロック生成回路
520 プログラマブルパワーサプライ回路
522 制御プロセッサー
524 センサー緩衝板モジュール
802 赤外線光信号
804 検知モジュール背面接光区
806 信号読み出し集積回路上の光電流入力端
808 信号読み出し集積回路の読み取り回路チップ
810 列多重器(多重通信装置)
812 行多重器
814 信号出力端 」
イ 図2を追加し変更する補正についての検討
(ア)図2について
上記補正により追加し変更された図2からは、「インジウム柱(118)」に回路図で示されている読み出し回路が接続されている様が看取でき、インジウム柱(118)に接続されるFET(1016)の他端にコンデンサ(1020)が接続されることや、それらとFET(1016)、(1018)、(1014)、端子(1022)、(1024)、(1026)、(1028)とがそれぞれ図示のように接続されているものを特定することができる。
また、当該図面からは、回路図に接続されているものの構造として「感知モジュール赤外線貫通基板(検知モジュール赤外線貫通基板)」、「底端高ドーピング接触層(ボトムヘビーコンタクト層)」、「赤外線吸収層」、「本質層」、「能障阻害層(エネルギーバリヤブロッキング層)」、「上電極区」、「インジウム柱」の順番で積層されている構造を特定することができる。
(イ)図2から看取できる回路図について
当初明細書には、インジウム柱(118)に接続されている回路に関しては、上記ア(ウ)において「感知アレーモジュールが光電信号の転換を行う便のため平面検知モジュールと信号読み出し集積回路間にインジウム接合を行う」こと、「行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大418し、積分キャパシタ1020に保存し、感知した信号/ノイズ比(S/N比)を注入ユニット412に入力する」こと、「該注入ユニット412は積分キャパシタ1020に電荷信号を注入し、出力端に出力する」こと、「アンプモジュールユニット、信号増益拡大」、「行414と列416多重選択器ユニット」は「感知ユニット一順序をピックアップする」こと、が記載され、さらに、同ア(セ)には、「1012 可能をP-MOSFETトランジスターに出力 1014 P-MOSFETトランジスター切り換えを出力及び再び設置 1016 赤外線センサを調整しP-MOSFETトランジスターを偏圧 1018 可能をP-MOSFETトランジスターに再び設置 1020 積分キャパシタ 1022 可能端点を選択 1024 偏圧を端点に注入 1026 端点を再び設置 1028 負端端点 1030 信号出力端」との記載があるのみである。
以上の記載から、
a 回路が積分キャパシタ1020を有すること、当該積分キャパシタが感知した信号を保存するものであること
b 「積分キャパシタの信号」は「出力端から出力される」のであって、積分キャパシタが出力端に接続されているであろうこと
c 符合の説明から回路には、「4つのP-MOSFET」と、端点が存在すること
が読み取れる。
しかしながら、上記ア(セ)の「1012」、「1014」、「1016」及び「1018」の符合の説明は、それぞれ動作を記載していることから、これらの符合で説明されているものが、回路要素、すなわちトランジスタのことであるのか、例えば制御フロー等を示すフローチャートを説明するものであるのかなどは判別できない。
また、当初請求の範囲においても、「4つのP-MOSFET」が図2に示されているような接続関係をもつことについては記載されていない。
してみると、図2において看取できる回路図で示される回路は、当初明細書等に記載されているものとはいえず、また、当初明細書等の記載から自明な事項であるということもできない。
(ウ)接続される「赤外線熱影像アレイモジュールの構造」について
当初明細書において、上記ア(ケ)に「上下金属電極端」上に「成長したインジウム柱118」があること、その底部面積は「金属電極区より小さい」ことが記載されており、そのほかには、同ア(セ)において「102 検知モジュール赤外線貫通基板 104 ボトムヘビードープコンタクト層 106 赤外線吸収層 108 本質層 110 エネルギーバリヤブロッキング層 112 トップヘビードープコンタクト層 114 上電極区 116 赤外線センサ表面絶縁被覆層 118 インジウム柱 1010 下電極区」との符合の説明がされている。
しかしながら、これらの記載から、「回路図に接続される赤外線熱影像アレイモジュールの構造」が、図2に示されるように「感知モジュール赤外線貫通基板(検知モジュール赤外線貫通基板」、「底端高ドーピング接触層(ボトムヘビーコンタクト層)」、「赤外線吸収層」、「本質層」、「能障阻害層(エネルギーバリヤブロッキング層)」、「上電極区」、「インジウム柱」の順番で積層された構造であることや、「感知部品表面絶縁被覆層」が、図2に示されるように「赤外線吸収層」、「本質層」、「能障阻害層(エネルギーバリヤブロッキング層)」、「上電極区」を覆う態様のものであることまでが記載されているということはできない。
また、当初請求の範囲においてもそのような点は記載されていない。
してみると、図2において看取できる「赤外線熱影像アレイモジュールの構造」は、当初明細書等に記載されているものとはいえず、また、当初明細書等の記載から自明な事項であるということもできない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、図2を追加して変更する補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものではない。
ウ 図3を追加し変更する補正についての検討
(ア)上記補正により追加し変更された図3からは、「行多重器(414)」と「行サンプルを保持し回路ユニットを拡大(418)」と「列多重器(416)」と「クロック生成制御ユニット(420)」と「端子(4010)、(4022)、(4030)、FET(4012)、(4014)、(4016)、(4018)、ダイオード及びコンデンサ(4020)からなる回路であって、端子(4010)、ダイオード、FET(4016)及びコンデンサ(4020)が直列に接続されているほか、それらとその他のFETや端子がそれぞれ図示のように接続されている回路」(補正により変更された図3においては、端子(1010)、(1022)、(1030)、FET(1012)、(1014)、(1016)、(1018)、ダイオード及びコンデンサ(1020))とを備え、「クロック制御ユニット」には「影像画面クロック」、「線クロック(424)」及び「主クロック(426)」が接続され、「行多重器」と「行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大」が「行選択ポート(428)」及び「列ポートを再び設置する(2110)」で接続され、「行多重器」と「回路」が「Aトンネル出力端(2113)」、「Bトンネル出力端(2114)」で接続されており、「列多重器」と「回路」が「列選択ポート(2111)」と「列ポートを再び設置する(2112)」で接続されている装置の構造を特定することができる。
(イ)これに対して、当初明細書には、上記ア(ウ)における「行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大418し、積分キャパシタ1020に保存し、感知した信号/ノイズ比(S/N比)を注入ユニット412に入力する」こととの記載から、積分キャパシタの存在や注入ユニットの存在は読み取れるものの、「行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大418」との記載によって、そのような機能を実施する手段であって、図3の「回路」や「行多重器」に接続されているものが存在していることが記載されているとはいえない。
そして、同ア(ウ)にさらに「該注入ユニット412は積分キャパシタ1020に電荷信号を注入し、出力端に出力する。アンプモジュールユニット、信号増益拡大。行414と列416多重選択器ユニットは感知ユニット一順序をピックアップする。クロック生成制御ユニット420は、主クロック426により読み取りと信号積分時間を制御し、該検証に合格後は、影像統合テスト(光機システムを含む)検証50を行う。」との記載からは、「積分キャパシタ1020の電荷信号が出力端に出力されること」、「行414」と「列416」を選択する多重選択器ユニットが存在し、それが感知ユニットをピックアップすること、クロック生成制御ユニット420が存在することは読み取れるものの、「行414と列416多重選択器ユニット」が、図3に示されているような接続関係の「行多重器」と「列多重器」により構成されるものであることまでが記載されているということはできない。
また、上記ア(ケ)に「信号読み出し集積回路の主要な機能は、光電信号ピックアップ転換で、その構造は各画素ユニットが一組の緩衝、直接注入、ゲート極調変、キャパシタ抵抗転換拡大式注入ピックアップ信号積分ユニットに対応することである」との記載はあるものの、それにより図3に示されている具体的構成が読み取れるものではない。
そして、上記ア(セ)の符合の説明の「412 注入ユニット 414 行多重器 416 列多重器 418 行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大 420 クロック生成制御ユニット 424 線クロック 426 主クロック 428 行選択ポート 2110 列ポートを再び設置する 2111 列選択ポート 2112 列ポートを再び設置する 2113 Aトンネル出力端 2114 Bトンネル出力端」との記載を見ても、「行サンプルを保持し、回路ユニットを拡大418」との記載によって、「418」が、そのような機能を実施する手段であって、図3の「回路」や「行多重器」に接続されているものであることが直ちに理解できるものでもなく、同様に「2110 列ポートを再び設置する」や「2112 列ポートを再び設置する」は、作用を意味する語句であることから、これから、直ちに、図3で示されているように、回路との接続線で示されると理解できるものでもない。
さらに、当初請求の範囲においてもこれらの点については記載されていない。
なお、当初明細書等には、図3の「端子(4010)、(4022)、(4030)、FET(4012)、(4014)、(4016)、(4018)、ダイオード及びコンデンサ(4020)からなる回路であって、端子(4010)、ダイオード、FET(4016)及びコンデンサ(4020)が直列に接続されているほか、それらとその他のFETや端子がそれぞれ図示のように接続されている回路」(補正により変更された図3においては、端子(1010)、(1022)、(1030)、FET(1012)、(1014)、(1016)、(1018)、ダイオード及びコンデンサ(1020))についてはコンデンサを含め記載も示唆もされていない。
(ウ)以上のとおりであるから、図3を追加し変更する補正は、当初明細書等に記載した範囲内でするものではない。
エ 平成25年8月14日提出の手続補正書による段落【0029】に係る補正事項
平成25年8月14日に提出された手続補正書により、明細書の段落【0029】の「1012 可能をP-MOSFETトランジスターに出力 1014 P-MOSFETトランジスター切り換えを出力及び再び設置 1016 赤外線センサを調整しP-MOSFETトランジスターを偏圧 1018 可能をP-MOSFETトランジスターに再び設置」との記載を「1012 許可出力P-MOSFETトランジスタ 1024 出力及びリセット切り換えP-MOSFETトランジスタ 1016 赤外線センサ偏圧調整P-MOSFETトランジスタ 1018 許可リセットP-MOSFETトランジスタ」と補正しているが、当初明細書の記載のみから、それらの符合で示されるものが「回路要素」であるとは、直ちに理解することはできず、また、当初明細書等の記載において、本件出願に係る発明における「回路」が、補正により追加変更された図面を参酌することなく理解できるものではない。
してみると、上記手続補正書による段落【0029】の補正は、当初明細書等に記載した範囲内でするものではない。
(4)原査定の理由3についての検討の小括
以上のとおりであるから、平成24年8月20日提出の手続補正書及び平成25年8月14日提出の手続補正書による補正は、上記(3)で検討したように、当初明細書等に記載した範囲内でするものではなく、これらの事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。
したがって、これらの補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第7 まとめ
以上のとおりであるから、本願は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面についてした補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、同法49条第1号に該当し拒絶すべきものであり、また、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法49条第4号に該当し拒絶すべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-29 
結審通知日 2015-06-30 
審決日 2015-07-14 
出願番号 特願2012-170300(P2012-170300)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G01J)
P 1 8・ 55- Z (G01J)
P 1 8・ 537- Z (G01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 尾崎 淳史
三崎 仁
発明の名称 赤外線熱影像アレーモジュールの検証装置と検証方法  
代理人 あいわ特許業務法人  

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