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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1308110
審判番号 不服2014-13473  
総通号数 193 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-10 
確定日 2015-11-25 
事件の表示 特願2012-517916「スペクトルセンシング中の送信機静穏化」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月 6日国際公開、WO2011/003056、平成24年12月13日国内公表、特表2012-532515〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、2010年7月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年7月2日、米国、2009年7月17日、米国、2010年1月15日、米国、2010年3月2日、米国、2010年7月1日、米国)を国際出願日とする特願2012-517916号であって、平成24年2月22日付けで手続補正がなされ、平成25年4月18日付けで拒絶理由が通知され、平成25年10月22日付けで手続補正がなされ、平成26年3月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年7月10日に拒絶査定不服審判がされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


2.平成26年7月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年7月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]

2-1.本件補正の目的

平成26年7月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、

「スペクトルセンシングのための方法であって、
通信デバイスによってジオロケーション情報を取得し、
外部データベースにこのジオロケーション情報を提供し、
前記外部データベースからのスペクトルの利用可能なチャネルのセットを受信することであって、この利用可能なチャネルのセットが前記ジオロケーション情報によって示されるロケーションにおいて利用可能なチャネルである受信すること、
少なくとも1つの時間間隔中に、通信デバイスからのデータを送信することを控えることと、
チャネルの第1のグループに関連する検出された信号の品質に基づいて、チャネルの前記第1のグループに1つまたは複数の品質値を割り当てることと、
チャネルの前記第1のグループに割り当てられた前記品質値に基づいて、チャネルの第2のグループを選択することと、ここで、チャネルの前記第2のグループがチャネルの前記第1のグループのサブセットを備える、
前記少なくとも1つの時間間隔中に、前記スペクトルの前記利用可能なチャネルのセットの任意のチャネルが使用のために利用可能であるかどうかを検出することと、
前記スペクトル中の少なくとも1つの利用可能なチャネルを識別することと、
前記通信デバイスによって前記少なくとも1つの利用可能なチャネルの意図的使用を示すデータを前記外部データベースに送信することと、
を備える方法。」(以下「補正前発明」という。)

から

「スペクトルセンシングのための方法であって、
通信デバイスによってジオロケーション情報を取得し、
前記通信デバイスによって外部データベースにこのジオロケーション情報を提供し、
前記通信デバイスによって前記外部データベースからのスペクトルの利用可能なチャネルのセットを受信することと、この利用可能なチャネルのセットが前記ジオロケーション情報によって示されるロケーションにおいて利用可能なチャネルである受信すること、
少なくとも1つの時間間隔中に、通信デバイスからのデータを送信することを控えることと、
前記通信デバイスによってチャネルの第1のグループに関連する検出された信号の品質に基づいて、前記利用可能なチャネルのセットのチャネルの前記第1のグループに1つまたは複数の品質値を割り当てることと、
前記通信デバイスによってチャネルの前記第1のグループに割り当てられた前記品質値に基づいて、チャネルの第2のグループを選択することと、ここで、チャネルの前記第2のグループがチャネルの前記第1のグループのサブセットを備える、
前記少なくとも1つの時間間隔中に、前記スペクトルの前記利用可能なチャネルの前記第2のグループの任意のチャネルが前記通信デバイスによって使用のために利用可能であるかどうかを検出することと、
前記通信デバイスによって前記スペクトル中の少なくとも1つの利用可能なチャネルを識別することと、
前記通信デバイスによって前記少なくとも1つの利用可能なチャネルの意図的使用を示すデータを前記外部データベースに送信することと、
を備える方法。」(以下「本願補正発明」という。)

と補正された。

上記補正は、補正前発明において「ジオロケーション情報を提供」「利用可能なチャネルのセットを受信」「品質値を割り当て」「第2のグループを選択」「利用可能であるかどうかを検出」「利用可能なチャネルを識別」を行う主体が「通信デバイス」であることに限定するものであり、「品質値を割り当て」る対象の「チャネル」が「利用可能なチャネルのセットのチャネル」であることに限定するものであるから、本件補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例記載の発明

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成19年11月15日に頒布された特開2007-300419号公報(以下「引用例1」という。)には、

「【0057】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態(実施例3)について説明する。
【0058】
図11は、実施例3に係るシステムの概略構成を示す図である。本実施例は、テレビジョン放送(TV放送)と無線を用いたローカルエリアネットワーク(W-LAN)がTV放送用の周波数帯域を共用する場合である。TV放送アンテナ201は、あるエリアに対して、いくつかの周波数帯域を用いて、放送信号を送信する。このとき、放送対象となる地域における無線情報DB202には、現在行っている放送の周波数帯域、放送局の位置、放送電波の到達範囲などの情報が記憶されている。
【0059】
民家218、228では、TV放送アンテナ201から送信された信号をTV受信アンテナ213、223により受信する。TV受信アンテナ223は屋外に設置されている。TV214、224は民家218、228内にあるW-LANのアクセスポイント(AP)215、225と無線または有線を介して、情報の共有ができるものであるとする。よって、このTV214、224は、無線LANアクセスポイントと通信可能であると共に、TV放送を受信する機能を備えたTV放送テレビ受信機能付き無線機である。TV214、224は、TV214、224が現在受信している周波数帯域の情報をAP215、225と共有できる。またAP215、225は無線情報DB202とも、無線または有線を介して情報の共有ができる。AP215、225は無線チャネル利用状況検出装置を備えていて、無線チャネルの利用状況を自ら検出でき、また、TVの受信状況や屋内の通信状況を把握するホームサーバとしても動作する。
【0060】
無線送受信機216、217、226、227(以下、ST216,217,226,227)はW-LANのステーション(ST)として動作し、ST216,217はAP215と、ST226,227はAP225と通信を行う、あるいはST同士で通信を行う。TV213、214はそれぞれ受信アンテナ218、223の位置を把握しており、その位置情報をAP215、225にそれぞれ通知できる。受信アンテナ218、223の位置を把握する方法としては、TVアンテナは通常固定されているため、アンテナの初期設置時にTVに対して位置情報の登録を行うという方法が考えられる。また、ST216、217、226、227は、それぞれ自己の位置を把握する機能を有しており、その位置情報をAP215、AP225に通知できる。AP215、225も同様に、自己の位置を把握する機能を有する。位置情報を把握する機能としては、たとえばGPSを用いた位置情報把握機能が考えられる。
【0061】
図12は、アクセスポイントAP225,215の概略構成を示す図である。AP215はAP225と同様の構成であるため説明を省略する。AP225は、ST226,227、無線情報DB202、TV224とそれぞれ通信可能である。インターフェース2251,2252は、それぞれ無線情報DB202、TV224からの信号を入力するインターフェースである。無線通信送受信部2253は、設定した通信チャネルを用いて送信すべき信号を変調すると共に、受信した信号を復調する。AP225はさらに、ST226,227から供給される無線チャネルの利用状況の情報に基づき、空き状態の無線チャネルを認識する空きチャネル認識部2254,無線情報DB202から受け取った情報と空きチャネル認識部2254からの情報を整理してデータベース部2255に登録する情報登録部2256、通信チャネル選択部2257、上位レイヤからの指令に基づき、各種のコマンドを生成するコマンド生成部2258を備えている。」

「【0063】
図14にAP215,225内部のDB情報及びDB202情報の更新を行うためのシステム全体としての処理フローを示す。AP215,225は、まず、無線チャネル利用状況検出の開始時間および測定する無線チャネルを決定する(ステップS1401)。たとえば、AP215,225は、1ミリ秒に1回の頻度で、ある周波数帯域について管下の端末(例えばST217)に無線チャネル利用状況を検出させることを決定する。また、別の帯域については、ST216に無線チャネル利用状況を検出させることを決定する。さらに、その他の帯域については、AP215,225が自ら無線チャネル利用状況を検出する。ここでは、順番に対象とするすべての周波数領域について検出を行うこととする。また、1回の検出で、対象とするすべての周波数領域について検出することも考えられる。
【0064】
無線チャネル利用状況検出の開始時間および測定する無線チャネルを決定したあと、実際に無線チャネル利用状況を測定する(ステップS1402)。ここでは、AP215,225が、管下の端末STに対して周波数状況の測定を行うように要求する。測定を要求されたSTは指定された周波数領域において、無線チャネル利用状況の測定を行う。ここで無線チャネル利用状況の測定とは、指定された無線チャネルの信号を受信し、その受信電力を計算して雑音レベルであれば、干渉が存在ないと判断し、雑音レベルより大きな受信電力であれば、干渉が存在する、つまり、他の端末およびTV放送により電波が使用されていると判断する。たとえば、受信電力は存在するものの、その電力が信号として復調・復号できるレベルより低い電力を、雑音レベルと定義し、これより低い電力を受信した場合は電波が使用されていないと判断する。干渉の有無を測定したSTは管轄されているAPに対して位置情報および測定結果を通知する。また、AP215,225は、無線受信機能を持つため、自ら無線チャネル利用状況を検出することもできる。
【0065】
無線チャネル利用状況の測定が終了し、結果が各APに通知されると、APは、自ら測定した無線チャネル利用状況に関する情報、STから通知された情報、DB202からの情報を用いてDB情報の更新を行う(ステップS1403)。」

「【0072】
図17に戻り、TV放送に関するDB202は、TV放送の送信情報の他に、その地域におけるTVの受信情報および干渉情報も扱う。たとえば、DB202はTV放送局(アンテナ)201に対して、現在送信を行っている無線チャネル利用状況の情報を要求する(ステップS1205)。要求に応じてTV放送局201は、無線チャネル利用状況の情報をDB202に通知する(ステップS1206)。
【0073】
さらに、DB202はその地域にあるAP内部のデータベースに対して定期的に情報の通知要求を発行し(ステップS1207,S1209)、それぞれから情報を受け取る(ステップS1208,S1210)。ここでは、APにおけるTV受信中の情報および、検出した干渉に関する情報に位置情報を付加した情報を、DB202に対して通知している。このように、地域DB202が情報要求を発行し、要求を受けたAPが情報を通知する方法のほかに、APにおいてDB202の内容が更新されたことをトリガとして、地域DB202に対して情報を通知する方法も考えられる。
【0074】
図18は、DB202が保有している情報で、ある位置における周波数帯の利用状況の情報とその情報を取得した情報ソースを表している。上述したような情報収集を行うことで、DB202では、図18のように各位置における各周波数(無線チャネル)の利用状況を把握できる。」

「【0078】
図21は、DB情報を用いた通信を行う際に発生するメッセージのやり取りに関する例を示すシーケンス図である。ここではST226とST227がアドホックモードで通信を行う場合を例に示す。
【0079】
最初に、ST226に通信を開始する要求が発生した場合、ST226は、AP225に対して通信開始要求のメッセージを送信する(ステップS1601)。このとき、アドホックモードで他のSTと通信を行いたい場合は通信したい相手の識別番号などの情報を含む。図21の場合はST227と通信を行いたいという要求であるので、ST227の識別番号をAP225に対して通知する。なお、この識別番号は、ネットワークが形成されたとき(電源投入時など)や、定期的な更新を通じて、あらかじめAP225が管轄するSTの識別情報は知っているものとする。また、このとき同時に、ST226の位置情報もAP225に対して通知する。AP225に対してこれらの情報を通知する際には、予め定められた通知専用無線チャネルを用いて通信を行っても良いし、予め定められた制御専用無線チャネルを用いてAP225に対して情報を通知する無線チャネルを伝えても良い。また、干渉測定を行った上で、干渉が存在しない任意の無線チャネルを用いて通知を行っても良い。
【0080】
ST226がST227と通信を開始したいという要求を受け取ったAP225は、まず、ST227に対してST227の位置を確認するために位置情報要求を発行する(ステップS1602)。ST227はAP225に対して、現在ST227が存在する位置情報を通知する(ステップS1603)。その後AP225は、その地域の干渉情報を持つDB202に対して、無線チャネル利用状況を要求する(ステップS1604)。DB202は要求に応じて最新の情報を提供する(ステップS1605)。このとき、AP225はST226の位置情報および、ST227を参照してDB202に位置情報を通知し、DB202はST226およびST227の周辺に関する無線チャネル利用状況を提供することで、通信するべき情報量を削減できる。なお、ここで周辺とは、位置情報を参照し、ST226およびST227の送信電力およびアンテナ指向性を考慮して、ST226やST227が信号を送信することにより、既存の通信に影響を及ぼす範囲を示す。
【0081】
以上のような処理を行うと、AP225にあるDB225Aでは前述した図15に示すような情報が得られる。これらの情報は幾つかの属性に分けられる。例えば、TV224が受信している無線チャネル、TV放送局101が送信している無線チャネル、他の端末が通信を行っている無線チャネル、使用しているシステムは不明だが干渉が存在する無線チャネル、干渉が存在しない無線チャネルなどの属性に分割して整理できる。
【0082】
図21に戻り、AP225は、ST226の位置情報、ST227の位置情報、DB220から得たチャネルの利用状況を用いて、後述する図22に示す方法で通信帯域を決定し、ST226およびST227に対して通信チャネルを通知する(ステップS1606)。ST226とST227は通知された通信帯域(通信チャネル)を用いて所望の通信を行う(ステップS1607)。例えば、ST226は通知された無線チャネルを用いてプリアンブルを送信し、ST227はST226の送信するプリアンブルを受信してACKを返す。ST226ではACKを受信すると、送信したいデータの送信を開始する。このときAP225ではDBにST226とST227が通信中であることを登録しておく。通信中である無線チャネルをAP225が把握することで、新たに通信を行いたい要求が発生した場合に、ST226とST227行っている通信を阻害することを防ぐ。」

図11は下記のとおりである。


図18は下記のとおりである。


の記載があるから、引用例1には、

「無線情報DB202には、現在行っている放送の周波数帯域、放送局の位置、放送電波の到達範囲などの情報が記憶されており、
民家228では、TV放送アンテナ201から送信された信号をTV受信アンテナ223により受信し、TV224は民家228内にあるW-LANのAP225と無線または有線を介して、情報の共有ができるものであり、AP225は無線情報DB202とも、無線または有線を介して情報の共有ができ、AP225は無線チャネル利用状況検出装置を備えていて、無線チャネルの利用状況を自ら検出でき、また、TVの受信状況や屋内の通信状況を把握するホームサーバとしても動作し、
無線送受信機226、227はW-LANのSTとして動作し、ST226,227はAP225と通信を行う、あるいはST同士で通信を行い、
AP225は、自己の位置を把握する機能を有し、
AP225は、ST226,227、無線情報DB202、TV224とそれぞれ通信可能であり、無線通信送受信部2253は、設定した通信チャネルを用いて送信すべき信号を変調すると共に、受信した信号を復調し、さらに、ST226,227から供給される無線チャネルの利用状況の情報に基づき、空き状態の無線チャネルを認識する空きチャネル認識部2254,無線情報DB202から受け取った情報と空きチャネル認識部2254からの情報を整理してデータベース部2255に登録する情報登録部2256、通信チャネル選択部2257、上位レイヤからの指令に基づき、各種のコマンドを生成するコマンド生成部2258を備え、
AP225は、無線チャネル利用状況検出の開始時間および測定する無線チャネルを決定し、順番に対象とするすべての周波数領域について検出を行い、
無線チャネル利用状況検出の開始時間および測定する無線チャネルを決定したあと、実際に無線チャネル利用状況を測定し、
AP225が、管下の端末STに対して周波数状況の測定を行うように要求し、測定を要求されたSTは指定された周波数領域において、指定された無線チャネルの信号を受信し、その受信電力を計算して雑音レベルであれば、干渉が存在ないと判断し、雑音レベルより大きな受信電力であれば、干渉が存在する、つまり、他の端末およびTV放送により電波が使用されていると判断し、受信電力は存在するものの、その電力が信号として復調・復号できるレベルより低い電力を、雑音レベルと定義し、これより低い電力を受信した場合は電波が使用されていないと判断し、干渉の有無を測定したSTは管轄されているAPに対して位置情報および測定結果を通知するが、AP225は、自ら無線チャネル利用状況を検出することもでき、
APは、自ら測定した無線チャネル利用状況に関する情報、STから通知された情報、DB202からの情報を用いてDB情報の更新を行い、
DB202はその地域にあるAP内部のデータベースに対して定期的に情報の通知要求を発行し、それぞれから情報を受け取り、地域DB202が情報要求を発行し、要求を受けたAPが情報を通知する方法のほかに、APにおいてDB202の内容が更新されたことをトリガとして、地域DB202に対して情報を通知する方法も考えられ、
DB202では、各位置における各無線チャネルの利用状況を把握でき、
DB情報を用いた通信を行う際、ST226とST227がアドホックモードで通信を行う場合は、
ST226は、AP225に対して通信開始要求のメッセージを送信し、ST226がST227と通信を開始したいという要求を受け取ったAP225は、まず、ST227に対してST227の位置を確認するために位置情報要求を発行し、ST227はAP225に対して、現在ST227が存在する位置情報を通知し、AP225はST226の位置情報および、ST227を参照してDB202に位置情報を通知し、DB202はST226およびST227の周辺に関する無線チャネル利用状況を提供し、
AP225は、ST226の位置情報、ST227の位置情報、DB220から得たチャネルの利用状況を用いて、通信帯域を決定し、ST226およびST227に対して通信チャネルを通知し、ST226とST227は通知された通信チャネルを用いて所望の通信を行い、このときAP225ではDBにST226とST227が通信中であることを登録しておく、
方法。」

の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。)

2-3.本願補正発明と引用発明の対比

引用発明の「AP」は、「通信」を行う「装置」であるから、「通信デバイス」であるといえる。
引用発明の「無線情報DB202」は「APの外部」に存在するDBであるから、「外部データベース」であるといえる。

引用発明のAPは、「自己の位置を把握する機能」を有しているから、「通信デバイスによってジオロケーション情報を取得」しているといえる。
引用発明の「DB202」はAPの外部のDBであって、「各位置における各無線チャネルの利用状況を把握」しており、かつ、順番に対象とするすべての周波数領域についてAPが検出を行っているから、DBには、「対象とするすべての」、すなわち、APが「利用可能な」周波数領域についての「無線チャネルの利用状況」が把握されているといえる。また、APが位置情報を通知することにより、DB202は、通知された位置周辺の無線チャネル利用状況をAP225に提供するから、APは「前記外部データベースからのスペクトルの利用可能なチャネルのセットを受信」しており、「この利用可能なチャネルのセットが前記ジオロケーション情報によって示されるロケーションにおいて利用可能なチャネルである」といえる。

引用発明における「無線チャネルの利用状況」を測定する際には、指定された無線チャネルの信号を受信し、その受信電力を計算しており、無線チャネル利用状況は、AP自らが検出することもできる。
ここで、「受信電力」は「品質値」であるから、引用発明は、「通信デバイスによってチャネルの第1のグループに関連する検出された信号の品質に基づいて、前記利用可能なチャネルのセットのチャネルの前記第1のグループに1つまたは複数の品質値を割り当て」ているといえる。

また引用発明は、周波数状況の測定をして受信電力を計算して雑音レベルより大きな受信電力であるか低い電力であるかによって、電波が使用されているか使用されていないかを判断して、通信チャネルを決定しており、決定された通信チャネルは、電波が使用されていないチャネル、すなわち測定したチャネルのサブセットである。
ここで、「電波が使用されているか使用されていないかを判断」することは、「使用のために利用可能であるかどうかを検出」することである。
そうすると、引用発明は、「通信デバイスによってチャネルの前記第1のグループに割り当てられた前記品質値に基づいて、チャネルの第2のグループを選択することと、ここで、チャネルの前記第2のグループがチャネルの前記第1のグループのサブセット」を備えるとともに、「前記スペクトルの前記利用可能なチャネルの前記第2のグループの任意のチャネルが使用のために利用可能であるかどうかを検出」して「通信デバイスによって前記スペクトル中の少なくとも1つの利用可能なチャネルを識別」しているといえる。

引用発明のAP225は、DBにST226とST227が通信中であることを登録しており、DB202が保有している情報である図18を参照すれば、状況として「CR通信中」であることが登録されているから、APが通信中であることを登録するDBとして、外部DBが含まれていることは明らかである。
そうすると、引用発明は、「通信デバイスによって前記少なくとも1つの利用可能なチャネルの意図的使用を示すデータを前記外部データベースに送信」しているといえる。

したがって、本願補正発明と引用発明は、

「スペクトルセンシングのための方法であって、
通信デバイスによってジオロケーション情報を取得し、
前記通信デバイスによって外部データベースにこのジオロケーション情報を提供し、
前記通信デバイスによって前記外部データベースからのスペクトルの利用可能なチャネルのセットを受信することと、この利用可能なチャネルのセットが前記ジオロケーション情報によって示されるロケーションにおいて利用可能なチャネルである受信すること、
前記通信デバイスによってチャネルの第1のグループに関連する検出された信号の品質に基づいて、前記利用可能なチャネルのセットのチャネルの前記第1のグループに1つまたは複数の品質値を割り当てることと、
前記通信デバイスによってチャネルの前記第1のグループに割り当てられた前記品質値に基づいて、チャネルの第2のグループを選択することと、ここで、チャネルの前記第2のグループがチャネルの前記第1のグループのサブセットを備える、
前記スペクトルの前記利用可能なチャネルの前記第2のグループの任意のチャネルが使用のために利用可能であるかどうかを検出することと、
前記通信デバイスによって前記スペクトル中の少なくとも1つの利用可能なチャネルを識別することと、
前記通信デバイスによって前記少なくとも1つの利用可能なチャネルの意図的使用を示すデータを前記外部データベースに送信することと、
を備える方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

本願補正発明は、「少なくとも1つの時間間隔中に、通信デバイスからのデータを送信することを控える」とともに、チャネルが利用可能であるかどうかの検出を「少なくとも1つの時間間隔中」に行っているのに対し、引用発明では記載が無い点。

相違点2

利用可能なチャネルが使用される対象装置として、本願補正発明は「前記通信デバイス」であるのに対し、引用発明では、「ST226」及び「ST227」であるから、「他の通信デバイス」である点。


2-4.相違点についての検討

相違点1について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成14年8月27日に頒布された特表2002-527995号公報(以下「引用例2」という。)には、

「【0022】
図3は、本発明に基づく代表的な手法を例示した図である。この手法では、基地局とその対応無線端末機との間での電気通信データ及び制御情報の送信における休止期間をMACプロトコルが与えると共に、自動周波数割当アルゴリズムをサポートするのに必要とされる干渉測定を基地局がその休止期間中に行うことができる。始めに、ステップ305に示すように、3つの制御変数PAUSE、RESTART、SYNCH1をそれぞれn、m、xに等しい値に設定する。ここで、値n及びxは、例えば、一定のMACフレームの個数を表すものとすることができる。一方、値mは、時間間隔の個数を表し、例えば、それぞれの時間間隔が一個のMACフレームに係る時間間隔に対応するものとすることができる。制御変数PAUSE、RESTART及びSYNCH1が初期化されると、ステップ310により、基地局は、最新のMACフレームの下り線部分において、次のn個のMACフレーム後に基地局と対応無線端末機が休止状態になる(すなわち、すべての送信を停止(halt)する)ことを知らせる制御メッセージを送信する。その後、ステップ315に示すように制御変数PAUSEを1だけディクレメントし、そして、判断ステップ320により、制御変数PAUSEがゼロに等しいかどうかについて判断を行う。制御変数PAUSEが未だゼロに等しくなければ、判断ステップ320からのNO経路(NO path)に従い、基地局は、次のMACフレームにおいて別の制御メッセージを報知する。ここでの制御メッセージは、次のn-1個のデータ・フレーム後に基地局と対応無線端末機が休止状態になり、基地局が必要な干渉測定を行うことができるようにすることを知らせる。これを制御変数PAUSEがゼロに等しくなるまで(すなわち、n個のMACフレーム後まで)続けることは理解できるであろう。」

の記載があるから、

「自動周波数割当アルゴリズムをサポートするのに必要とされる干渉測定を基地局がその休止期間中に行う」

ことが引用例2に記載されている。

引用発明において無線チャネル利用状況を検出する際に行う干渉の有無の測定を引用例2に記載されるように休止期間中に行うことは容易である。
また、「休止期間」は通信デバイスからのデータを送信することを控える所定の時間間隔である。
上記によれば、引用発明において、「少なくとも1つの時間間隔中に、通信デバイスからのデータを送信することを控え」て、チャネルが利用可能であるかどうかの検出を「少なくとも1つの時間間隔中」に行うようにすることは容易に想到しうることである。

相違点2について

引用発明は、ST226とST227の間の通信の場合の動作であるが、ST226,227はAP225と通信を行う場合もあり、また、AP225がホームサーバとしても動作するのであるから、TV218が受信したTV番組を、AP225からST226やST227へ送信する場合もあることは明らかである。
そうすると、引用発明において、利用可能なチャネルが使用される対象装置としてAPすなわち「前記通信デバイス」とすることは容易に想到しうることである。

そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

2-5.むすび

したがって、本願補正発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3.本願発明について

3-1.本願発明

平成26年7月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年10月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「スペクトルセンシングのための方法であって、
通信デバイスによってジオロケーション情報を取得し、
外部データベースにこのジオロケーション情報を提供し、
前記外部データベースからのスペクトルの利用可能なチャネルのセットを受信することであって、この利用可能なチャネルのセットが前記ジオロケーション情報によって示されるロケーションにおいて利用可能なチャネルである受信すること、
少なくとも1つの時間間隔中に、通信デバイスからのデータを送信することを控えることと、
チャネルの第1のグループに関連する検出された信号の品質に基づいて、チャネルの前記第1のグループに1つまたは複数の品質値を割り当てることと、
チャネルの前記第1のグループに割り当てられた前記品質値に基づいて、チャネルの第2のグループを選択することと、ここで、チャネルの前記第2のグループがチャネルの前記第1のグループのサブセットを備える、
前記少なくとも1つの時間間隔中に、前記スペクトルの前記利用可能なチャネルのセットの任意のチャネルが使用のために利用可能であるかどうかを検出することと、
前記スペクトル中の少なくとも1つの利用可能なチャネルを識別することと、
前記通信デバイスによって前記少なくとも1つの利用可能なチャネルの意図的使用を示すデータを前記外部データベースに送信することと、
を備える方法。」

3-2.引用例記載の発明

引用発明は、「3-1.引用例記載の発明」に記載したとおりである。

3-3.本願発明と引用発明の対比と検討

本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明において、「ジオロケーション情報を提供」「利用可能なチャネルのセットを受信」「品質値を割り当て」「第2のグループを選択」「利用可能であるかどうかを検出」「利用可能なチャネルを識別」を行う主体が「通信デバイス」であることに限定せず、「品質値を割り当て」る対象の「チャネル」が「利用可能なチャネルのセットのチャネル」であることに限定しないものである。

そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに構成要件を限定した本願補正発明が、前記2-4.に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.まとめ

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-24 
結審通知日 2015-06-30 
審決日 2015-07-15 
出願番号 特願2012-517916(P2012-517916)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 久松 和之
吉田 隆之
発明の名称 スペクトルセンシング中の送信機静穏化  
代理人 峰 隆司  
代理人 砂川 克  
代理人 井関 守三  
代理人 堀内 美保子  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  

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