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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1308336 |
審判番号 | 不服2014-24359 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-11-28 |
確定日 | 2015-12-04 |
事件の表示 | 特願2012-550617「メモリダンプ機能を有する情報処理装置、メモリダンプ方法、およびメモリダンププログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月 5日国際公開、WO2012/090290〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下「本願」と記す。)は、2010年12月27日を国際出願日とする出願であって、平成25年6月25日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、同年7月4日付けで審査請求がなされると共に、同日付けで手続補正書が提出され、同年11月5日付けで拒絶理由通知(同年11月12日発送)がなされ、平成26年1月14日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、同年3月18日付けで拒絶理由通知(同年3月25日発送)がなされ、同年5月26日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、同年8月27日付けで上記平成26年5月26日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年9月2日謄本送達)がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(同年9月2日謄本送達)がなされたものである。 これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許すべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成26年11月28日付けで審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年12月25日付けで特許法第164条第3項に定める報告がなされ、平成27年3月2日付けで上申書が提出された。 第2 平成26年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年11月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成26年11月28日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は、平成26年1月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載 「【請求項1】 オペレーティングシステムを実行する情報処理装置であって、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当てるメモリ管理部と、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止する停止処理部と、 前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てるマッピング処理部と、 前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動する再起動処理部と、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すメモリダンプ処理部と、 を備えることを特徴とする情報処理装置。 【請求項2】 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに組み込むメモリ組み込み処理部をさらに備え、 前記マッピング処理部は、前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルが使用していた前記第1のメモリ領域以外の前記第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項3】 前記マッピング処理部は、前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルが使用していた前記第1のメモリ領域以外の前記第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記メモリダンプ処理部は、再起動した前記オペレーティングシステムとは異なる他のオペレーティングシステムで実行されることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項4】 前記マッピング処理部は、前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、前記オペレーティングシステムの停止前に前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域以外の前記第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記メモリダンプ処理部は、再起動した前記オペレーティングシステムとは異なる他のオペレーティングシステムで実行されることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項5】 オペレーティングシステムを実行する情報処理装置のメモリダンプ方法であって、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当て、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止し、 停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動し、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すことを特徴とするメモリダンプ方法。 【請求項6】 オペレーティングシステムを実行する情報処理装置に、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当て、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止し、 停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動し、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すことを実行させるメモリダンププログラム」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「本件補正前の請求項」という。) を、 「【請求項1】 オペレーティングシステムを実行する情報処理装置であって、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当てるメモリ管理部と、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止する停止処理部と、 前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように、前記第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てるマッピング処理部と、 前記カーネルまたは前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すことなく前記第1のメモリ領域に残し、前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動する再起動処理部と、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すメモリダンプ処理部と、 を備えることを特徴とする情報処理装置。 【請求項2】 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに組み込むメモリ組み込み処理部をさらに備え、 前記マッピング処理部は、前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルが使用していた前記第1のメモリ領域以外の前記第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項3】 前記マッピング処理部は、前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルが使用していた前記第1のメモリ領域以外の前記第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記メモリダンプ処理部は、再起動した前記オペレーティングシステムとは異なる他のオペレーティングシステムで実行されることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項4】 前記マッピング処理部は、前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、前記オペレーティングシステムの停止前に前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域以外の前記第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記メモリダンプ処理部は、再起動した前記オペレーティングシステムとは異なる他のオペレーティングシステムで実行されることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。 【請求項5】 オペレーティングシステムを実行する情報処理装置のメモリダンプ方法であって、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当て、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止し、 停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように、前記第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記カーネルまたは前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すことなく前記第1のメモリ領域に残し、前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動し、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すことを特徴とするメモリダンプ方法。 【請求項6】 オペレーティングシステムを実行する情報処理装置に、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当て、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止し、 停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように、前記第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て、 前記カーネルまたは前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すことなく前記第1のメモリ領域に残し、前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動し、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すことを実行させるメモリダンププログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「本件補正後の請求項」という。なお、下線は、補正箇所を示すものとして、請求人が付与したものである。) に補正するものである。 そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。 また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。 2 目的要件 本件補正(審判請求時の補正)が、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものに限られるものであるかについて、以下に検討する。 (1)本件補正前の請求項と、本件補正後の請求項とを比較すると、本件補正後の請求項1,5,6はそれぞれ,本件補正前の請求項1,5,6に対応することは明らかである。 (2)本件補正後の請求項1,5,6に係る補正は、下記の補正事項よりなるものである。 <補正事項> 本件補正前の請求項1,5,6の「第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て」との記載を、本件補正後の請求項1,5,6の「第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように、前記第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当て」との記載に限定するとともに、請求項1,5,6の「オペレーティングシステムを再起動」する際に「前記カーネルまたは前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すことなく前記第1のメモリ領域に残し、」との記載に限定することを目的とするものであり、本件補正によっても、補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。 (3)したがって、上記補正事項は限定的減縮を目的とするものであり,本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると言えることから、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。 3 独立特許要件 以上のように、本件補正は、限定的減縮を目的とする上記補正事項を含むものである。そこで、限定的減縮を目的として補正された本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記平成26年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「オペレーティングシステムを実行する情報処理装置であって、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当てるメモリ管理部と、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止する停止処理部と、 前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように、前記第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てるマッピング処理部と、 前記カーネルまたは前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すことなく前記第1のメモリ領域に残し、前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動する再起動処理部と、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すメモリダンプ処理部と、 を備えることを特徴とする情報処理装置。」 (2)引用例 (2-1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明 ア 本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原審の拒絶査定の理由である上記平成26年3月18日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2005-122334号公報(平成17年5月12日出願公開、以下、「引用例1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) A 「【請求項15】 第1のOSを実行する第1の仮想計算機と第2のOSを実行する第2の仮想計算機を動作させる少なくとも1つのプロセッサと、前記第1の仮想計算機と前記第2の仮想計算機の各々に割り当てられる第1のメモリ領域と第2のメモリ領域を有するメモリであって、前記第1のメモリ領域からのマッピングを管理する第1のページテーブルと前記第2のメモリ領域からのマッピングを管理する第2のページテーブルと前記第1のページテーブルと前記第2のページテーブルを管理するハイパバイザを格納するメモリと、補助記憶装置を有する仮想計算機システムにおいて、 前記第2のOSは、前記第2のメモリ領域においてダンプ処理領域を設定し、前記ダンプ処理用領域の仮想アドレスを前記ハイパバイザに通知する通信手段と、前記第2のメモリ領域に格納する情報を前記補助記憶装置にダンプするダンプ手段を備え、 前記ハイパバイザは、前記第1のOSに発生する障害を検出する障害検出用手段と、前記メモリに第3のメモリ領域を設定し、前記第3のメモリ領域と前記メモリとのマッピング情報を管理する第3のページテーブルを生成し、前記第1のOSを再起動するメモリ退避手段を備え、 前記ハイパバイザは、前記第1のメモリ領域において前記第1のページテーブルに基づいて前記ダンプ対象領域の実アドレスを取得し、前記ダンプ処理用領域の仮想アドレスを前記通信手段より取得し、前記第2のページテーブルに基づいて前記ダンプ処理用領域の実アドレスを取得し、該取得した前記ダンプ処理用領域の実アドレスを前記取得したダンプ対象領域の実アドレスに変換し、 前記第2のOSは、前記変換されたダンプ対象領域の実アドレスに基づいて前記ダンプ手段を用いて前記ダンプ対象領域に格納する情報を前記補助記憶装置にダンプすることを特徴とする仮想計算機システム。」 B 「【0010】 物理計算機100は、プロセッサ104とホストメモリ105(物理メモリ)を備えている。物理計算機100上でハイパバイザ101と呼ばれる制御プログラム(以下、ハイパバイザという)が動作する。ハイパバイザ101により構築される仮想計算機102aと102b(以下、仮想計算機102という)が物理計算機100上で動作する。ホストメモリ105の領域がハイパバイザ101により分割され、仮想計算機102に対してゲストメモリ106aと106b(以下、ゲストメモリ106という)として割り当てられる。仮想計算機102aと102b上でオペレーティングシステム103a、103b(以下、OS103という)がそれぞれ動作する。」 C 「【0039】 ページテーブル302は、ゲストメモリ106上のアドレス(以下、ゲスト実アドレスという)がホストメモリ105上のアドレス(以下、ホスト実アドレスという)へのマッピングをページ単位で管理するテーブルである。」 D 「【0059】 また、OS103aは障害発生時にファームウェアのサービス関数を呼び出してシステムのリセットを実行する場合がある。この場合は、OS103aがサービス関数を呼び出すときに、障害が発生したことを表すフラグを引数として渡させるようにする。ハイパバイザ101は、OS103によるサービス関数の呼び出しをインタセプトし、引数の値から障害が発生したか否かを検出することができる。ハイパバイザ101は、仮想計算機102を起動する際に、ファームウェアコードが含まれるゲスト実ページアドレスに対してページテーブル302の対応するエントリのホストCビットを1に設定する。よって、OS103がファームウェアのサービス関数を呼び出すと割り込みが発生するため、ハイパバイザ101はサービス関数の呼び出しをインタセプトすることができる。」 E 「【0070】 ステップ1202では、あらかじめ用意されたホストメモリ105上の空き領域にゲストメモリ106がマッピングされるように新たなページテーブル302を作成する。このとき、障害発生時に使用していたもとのページテーブル302(以下、ページテーブル302'という)は、後述のメモリダンプ処理に利用するために保存する。 ・・・(中略)・・・ 【0072】 ステップ1204では、ステップ1202で作成したページテーブル302を用いて仮想計算機102を再起動する。」 イ ここで,上記引用例1に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Bの「物理計算機100上でハイパバイザ101と呼ばれる制御プログラム(以下、ハイパバイザという)が動作する。ハイパバイザ101により構築される仮想計算機102aと102b(以下、仮想計算機102という)が物理計算機100上で動作する。」及び「仮想計算機102aと102b上でオペレーティングシステム103a、103b(以下、OS103という)がそれぞれ動作する。」より、引用例1には「オペレーティングシステムを実行する計算機」が記載されていると解される。 (イ)上記Bの「物理計算機100は、プロセッサ104とホストメモリ105(物理メモリ)を備えている。」、「ホストメモリ105の領域がハイパバイザ101により分割され、仮想計算機102に対してゲストメモリ106aと106b(以下、ゲストメモリ106という)として割り当てられる。」、「仮想計算機102aと102b上でオペレーティングシステム103a、103b(以下、OS103という)がそれぞれ動作する。」及び上記Cの「ページテーブル302は、ゲストメモリ106上のアドレス(以下、ゲスト実アドレスという)がホストメモリ105上のアドレス(以下、ホスト実アドレスという)へのマッピングをページ単位で管理するテーブルである。」より、物理メモリのアドレス領域がページテーブルを用いて仮想計算機のゲストメモリとして割り当てられ、仮想計算機上で動作するオペレーティングシステムがゲストメモリを使用することは明らかであるから、引用例1には「物理メモリのアドレス領域にオペレーティングシステムが使用するゲストメモリをページテーブルを用いて割り当て」る手段が記載されていると解される。 (ウ)上記Aの「第1のOSに発生する障害を検出する障害検出用手段」及び上記Dの「OS103aは障害発生時にファームウェアのサービス関数を呼び出してシステムのリセットを実行する場合がある。・・・ハイパバイザ101は、OS103によるサービス関数の呼び出しをインタセプトし、引数の値から障害が発生したか否かを検出することができる。」との記載より、OSが障害を検出した場合にシステムのリセットを実行し、これをハイパバイザがインタセプトして障害の発生を検出することが記載されていることから、引用例1には「オペレーティングシステムが障害を検出した場合に、システムをリセットする手段」が記載されていると解される。 (エ)上記Eの「ホストメモリ105上の空き領域にゲストメモリ106がマッピングされるように新たなページテーブル302を作成する。このとき、障害発生時に使用していたもとのページテーブル302(以下、ページテーブル302'という)は、後述のメモリダンプ処理に利用するために保存する。」及び「ステップ1202で作成したページテーブル302を用いて仮想計算機102を再起動する。」より、引用例1には「障害発生時に使用していたページテーブルをメモリダンプ処理に利用するために保存し、ホストメモリの空き領域を再起動する計算機に割り当てるために新たなページテーブルを作成するマッピング手段」が記載されていると解される。 (オ)上記(エ)より、再起動する計算機に割り当てるホストメモリの空き領域は、障害発生時に使用していたメモリ領域とは異なることは明らかであり、障害発生時に使用していたメモリ領域はページテーブルを保存することにより残されることになるから、引用例1には「障害発生時に使用していたメモリ領域を前記ページテーブルを保存することにより残し、当該メモリ領域とは異なる空き領域を用いて計算機を再起動する手段」が記載されていると解される。 (カ)上記Aの「前記第2のOSは、前記変換されたダンプ対象領域の実アドレスに基づいて前記ダンプ手段を用いて前記ダンプ対象領域に格納する情報を前記補助記憶装置にダンプする」より、引用例1には「ダンプ対象領域に格納する情報を補助記憶装置にダンプする」手段が記載されていると解される。 ウ 以上、(ア)乃至(カ)で指摘した事項から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「オペレーティングシステムを実行する計算機において、 物理メモリのアドレス領域にオペレーティングシステムが使用するゲストメモリをページテーブルを用いて割り当てる手段と、 オペレーティングシステムが障害を検出した場合に、システムをリセットする手段と、 障害発生時に使用していたページテーブルをメモリダンプ処理に利用するために保存し、ホストメモリの空き領域を再起動する計算機に割り当てるために新たなページテーブルを作成するマッピング手段と、 障害発生時に使用していたメモリ領域を前記ページテーブルを保存することにより残し、当該メモリ領域とは異なる空き領域を用いて計算機を再起動する手段と、 ダンプ対象領域に格納する情報を補助記憶装置にダンプする手段と、 を備えることを特徴とする計算機。」 (2-2)引用例2に記載されている技術的事項 ア 本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原審の拒絶査定の理由である上記平成26年3月18日付けの拒絶理由通知において引用された、「安井卓、カーネル・メモリー管理、日経Linux、日経BP社、2004年01月08日、第6巻、第1号、pp.123-130」(以下、「引用例2」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。 G 「カーネル仮想空間は仮想メモリー・アドレス0xc0000000から始まり、そこに物理メモリー・アドレス0x00000000からの物理メモリーがマッピングされます(図2)。」(第124頁右欄第19-23行) (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「オペレーティングシステムを実行する計算機」は、本件補正発明の「オペレーティングシステムを実行する情報処理装置」に相当するものである。 (イ)引用発明の「物理メモリのアドレス領域にオペレーティングシステムが使用するゲストメモリをページテーブルを用いて割り当てる手段」は、本件補正発明の「メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当てるメモリ管理部」と「オペレーティングシステムが使用するメモリを割り当てる手段」を有する点において共通するものである。(相違点については後述する。) (ウ)引用発明の「オペレーティングシステムが障害を検出した場合に、システムをリセットする手段」は、本件補正発明の「前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止する停止処理部」と「エラーを検出する手段」を有する点において共通するものである。(相違点については後述する。) (エ)引用発明の「障害発生時に使用していたページテーブルをメモリダンプ処理に利用するために保存し、ホストメモリの空き領域を再起動する計算機に割り当てるために新たなページテーブルを作成するマッピング手段」は、障害発生時にオペレーティングシステムが使用していたメモリ領域をメモリダンプ処理を利用するために(上書きされないように)ページテーブルを保存し、再起動するオペレーティングシステムには新たなページテーブルを用いて別のメモリ領域を割り当てることに他ならない。よって、引用発明の「マッピング手段」は本件補正発明の「オペレーティングシステムのカーネルが使用していた第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように、前記第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てるマッピング処理部」に相当するものと認められる。 (オ)上記(エ)より、引用発明において、メモリダンプ処理は再起動後に行われていることから、障害発生時にオペレーティングシステムが使用していたメモリ領域を他の記憶領域に書き出していないことは明らかである。よって、引用発明の「障害発生時に使用していたメモリ領域を前記ページテーブルを保存することにより残し、当該メモリ領域とは異なる空き領域を用いて計算機を再起動する手段」は、本件補正発明の「前記カーネルが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すことなく前記第1のメモリ領域に残し、前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動する再起動処理部」に相当するものと認められる。 (カ)引用発明の「ダンプ対象領域に格納する情報を補助記憶装置にダンプする手段」は、上記(エ)よりオペレーティングシステムの再起動後に行われるものであるから、本件補正発明の「オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すメモリダンプ処理部」に相当するものである。 イ 以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。 (一致点) オペレーティングシステムを実行する情報処理装置において、 オペレーティングシステムが使用するメモリを割り当てる手段と、 エラーを検出する手段と、 オペレーティングシステムのカーネルが使用していた第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように、前記第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てるマッピング処理部と、 前記カーネルが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すことなく前記第1のメモリ領域に残し、前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動する再起動処理部と、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すメモリダンプ処理部と、 を備えることを特徴とする情報処理装置。」 (相違点1) 本件補正発明では「メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから」メモリを割り当てるのに対し、引用発明にはメモリを割り当てる際のアドレス順に関する言及がない点。 (相違点2) 本件補正発明は「オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、オペレーティングシステムを停止する停止処理部」を有するのに対し、引用発明には「オペレーティングシステムが障害を検出した場合に、システムをリセットする手段」である点。 (4)当審の判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について カーネルが使用するメモリを物理メモリの先頭アドレスから割り当てることは、上記(2-2)において示した引用例2に記載されているように周知技術にすぎず、当該周知技術を引用発明に適用することは当業者ならば容易になし得たものである。 イ 相違点2について 引用発明には「オペレーティングシステムが障害を検出した場合に、システムをリセットする」との記載があるが、上記Eに「OS103aは障害発生時にファームウェアのサービス関数を呼び出してシステムのリセットを実行する場合がある。・・・ハイパバイザ101は、OS103によるサービス関数の呼び出しをインタセプトし、引数の値から障害が発生したか否かを検出することができる。」との記載があり、OSが障害を検出した場合にシステムのリセットを行うためにファームウェアのサービス関数を呼び出していることから、ここでOS自体の処理は実質的に停止され、ファームウェアのサービス関数の呼び出しをインタセプトしたハイパバイザへと処理が移ることが示唆されている。 してみると、上記相違点2は格別のものではない。 ウ 小括 上記で検討したごとく、相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり、そして、この相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって、本件補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)平成27年3月2日付け上申書について 請求人は平成27年3月2日付け上申書において、「本願の第4の実施の形態に基づいて、第1のメモリ領域をオペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた領域に限定的に減縮する」ものとした補正案を提示している。 しかしながら、上述のとおり、審査官が通知した拒絶理由が解消されていない以上、上申書の補正案を参酌することはできない。 仮に、補正案のように限定した場合であっても、引用例1にはハイパバイザとOSとの通信用ページをゲストメモリ上に設けるとの記載があり(段落【0065】-【0080】等を参照のこと)、当該通信用ページは補正案の「オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域」に相当するものであるから、補正案の発明は、依然として当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)むすび 本件補正は、上記「3 独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求の成否について 1 本願発明の認定 平成26年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年1月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「オペレーティングシステムを実行する情報処理装置であって、 メモリの一番小さいまたは一番大きいリアルアドレスから前記オペレーティングシステムのカーネルが使用するメモリを割り当てるメモリ管理部と、 前記オペレーティングシステムがエラーを検出した場合に、前記オペレーティングシステムを停止する停止処理部と、 前記停止処理部により停止された前記オペレーティングシステムに対して、停止前の前記オペレーティングシステムのカーネルまたは前記オペレーティングシステムの停止前に前記オペレーティングシステムを制御するハイパーバイザが使用していた第1のメモリ領域以外の第2のメモリ領域を前記オペレーティングシステムに割当てるマッピング処理部と、 前記第2のメモリ領域を使用領域として、前記オペレーティングシステムを再起動する再起動処理部と、 前記オペレーティングシステムを再起動した後、前記第1のメモリ領域のデータを読み出して、該データをダンプファイルに書き出すメモリダンプ処理部と、 を備えることを特徴とする情報処理装置。」 2 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された、引用発明は、前記「第2 平成26年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記「第2 平成26年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明の 「第1のメモリ領域が前記オペレーティングシステムが再起動される場合に上書きされないように」及び 「前記カーネルまたは前記ハイパーバイザが使用していた前記第1のメモリ領域に記憶されたデータを他の記憶領域に書き出すこと無く前記第1のメモリ領域に残し」 との特定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記「第2 平成26年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」乃至「(4)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-09-30 |
結審通知日 | 2015-10-06 |
審決日 | 2015-10-20 |
出願番号 | 特願2012-550617(P2012-550617) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多胡 滋 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
石井 茂和 浜岸 広明 |
発明の名称 | メモリダンプ機能を有する情報処理装置、メモリダンプ方法、およびメモリダンププログラム |
代理人 | 大菅 義之 |
代理人 | ▲徳▼永 民雄 |