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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C09K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
管理番号 1308555
審判番号 無効2013-800201  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-10-29 
確定日 2015-11-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5217262号発明「液晶組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.本件特許特許5217262号(請求項の数4)に係る特許出願(特願2007-157594号)は、平成19年6月14日の出願であって、平成20年12月25日に出願公開(特開2008-308581号)され、平成25年1月31日に特許をすべき旨の査定がされ、同年3月15日にその特許権の設定の登録がされたものである。

2.本件特許無効審判事件における手続の経緯は次のとおりである。
(1)請求人は、本件特許(全請求項)に対し、平成25年10月29日に本件特許無効審判を請求した。
審判長は、特許法第134条第1項の規定に基づき、被請求人に対しこの審判請求書の副本を送達し、答弁書の提出を求めた。
(2)被請求人は、平成26年1月21日に審判事件答弁書(以下、「第1答弁書」という。)及び訂正請求書を、さらに、同年2月7日に当該訂正請求書についての手続補正書を提出した。(以下、この手続補正書により補正された訂正請求書を「第1訂正請求書」という。)
(3)請求人は、同年4月30日に審判事件弁駁書を、さらに、同年5月9日に同書面の誤記を訂正する上申書を提出した。(以下、この上申書により補正された審判事件弁駁書を「第1弁駁書」という。)
この第1弁駁書は実質的に審判請求書の請求の理由を補正するものであり、その補正は請求の理由の要旨を変更するものと認められるところ、審判長は、特許法第131条の2第2項の規定により、同年6月10日付けでその補正を許可する旨の決定をするとともに、同法第134条第2項本文の規定に基づき、被請求人に対し第1弁駁書の副本を送達し、答弁書の提出を求めた。
(4)被請求人は同年7月14日に審判事件答弁書及び訂正請求書(以下、それぞれ「第2答弁書」及び「第2訂正請求書」という。)を提出した。
(5)請求人は同年9月26日に審判事件弁駁書(以下、「第2弁駁書」という。)を提出した。
(6)審判長は、両当事者に対し、同年10月29日付けで審理事項通知書を送付したところ、請求人、被請求人とも同年11月25日に、口頭審理陳述要領書を提出した。
(7)同年12月9日に、請求人代理人及び被請求人代理人の出頭のもと、第1回口頭審理が開催された。
審判長は、この口頭審理の最後に、本件特許無効審判の事件が審決をするのに熟した旨宣するとともに、以降、本件特許無効審判は書面審理によるものとする旨通知した(第1回口頭審理調書参照)。
(8)審判長は、両当事者に、平成27年1月26日付けで審決の予告をした。
(9)被請求人は同年3月25日に訂正請求書及び審判事件答弁書(以下、それぞれ「第3訂正請求書」及び「第3答弁書」という。)を提出した。
(10)請求人は同年5月22日に審判事件弁駁書(以下、「第3弁駁書」という。)を提出した。
(11)審判長は、両当事者に、同年6月22日付けで審理の終結を通知した。


第2 訂正請求について
本件特許無効審判事件において、被請求人は、特許法第134条の2第1項本文の規定に基づき、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「特許明細書」及び「訂正前特許請求の範囲」という。)の訂正を3度請求しているところ、同条第6項の規定により、先にした第1訂正請求書及び第2訂正請求書に係る訂正の請求はいずれも取り下げられたものとみなされる。したがって、第3訂正請求書により請求した訂正(以下、「本件訂正」という)についてのみ以下検討する。

1.訂正の内容
第3訂正請求書に係る訂正の請求は、特許明細書及び訂正前特許請求の範囲を、第3訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲(以下、それぞれ単に「訂正明細書」及び「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって、本件訂正は具体的には下記訂正事項1及び2からなるものである。

訂正事項1:
訂正前特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに訂正するもの。
第一成分として構造式(1)、

で表される化合物を25?50%含有し、ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、静電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物であって、
第二成分として一般式(2-4)及び一般式(2-6)

(式中、R^(1)?R^(2)はそれぞれ独立して炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表し、この基は被置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-により置き換えられてもよい。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。

訂正事項2:
訂正前特許請求の範囲の請求項2を次のとおりに訂正するもの。
第一成分として構造式(1)、

で表される化合物を25?50%含有し、ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、静電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物であって、
第二成分として一般式(4)

(式中、R^(5)?R^(6)はそれぞれ独立して炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表し、この基は被置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-により置き換えられても良く、
B^(6)?B^(7)はそれぞれ独立して
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は-N-に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(6)?L^(7)はそれぞれ独立して単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-COO-、-OCH_(2)-、CH_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-又は-C≡C-を表し、
q及びrはそれぞれ独立して0、1又は2を表し、q+rはそれぞれ独立して0、1、2又は3を表し、
X^(6)?X^(7)はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。

ここで、訂正事項1は、概略次の訂正事項からなるものである。
(ア)第二成分として一般式(2-4)及び一般式(2-6)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することを追加する訂正

また、訂正事項2は、概略次の訂正事項からなるものである。
(イ)請求項1の記載を引用する記載から引用しないものとする訂正
(ウ)第二成分を一般式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物に限定する訂正

2.検討
(1)特許法第134条の2第1項ただし書について
ア.訂正事項1
訂正事項(ア)は、第一成分に加えて、さらに第二成分を特定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

イ.訂正事項2
訂正事項(イ)は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項(ウ)は、第二成分の選択肢を減らす訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。

ウ.まとめ
そうすると、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。

(2)特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項について
ア.訂正事項1
訂正事項(ア):本願発明に係るネマチック液晶組成物が、第一成分に加えて、さらに第二成分として一般式(2-4)又は一般式(2-6)で表される化合物を含有することは、特許明細書の段落0014?0021に記載され、そして実施例1(同段落0027?0029)に具体的に記載されているものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。

イ.訂正事項2
訂正事項(イ)は、引用形式を独立形式に書き直しただけのものである。
訂正事項(ウ):第二成分としての一般式(4)で表される化合物は、特許明細書の段落0014?0019及び0021?0022に記載され、そして実施例1(同段落0027?0029)に具体的に記載されているものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。

ウ.まとめ
そうすると、本件訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項について
ア.訂正事項1
訂正事項1は、上記(1)アで述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ.訂正事項2
訂正事項(イ)は、上記(1)イで述べたとおり、引用形式請求項を独立形式請求項に書き直しただけのものであって、このことによっては特許請求の範囲は何ら拡張ないし変更されるものではない。
訂正事項(ウ)は、上記(1)イで述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲は拡張ないし変更されるものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.まとめ
そうすると、本件訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3.むすび
本件訂正は、全て特許無効審判の請求がされた請求項に係るものであって、上記したとおり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合しているので、第3訂正請求書に係る訂正の請求を認める。

なお、請求人も、第3弁駁書で、本件訂正の是非について争っていない。


第3 本件特許に係る発明
上記第2で検討したとおり、第3訂正請求書による訂正の請求は認められるものであるので、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1?4」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4(以下、それぞれ、単に「請求項1?4」ということがある。)にそれぞれ記載される事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
第一成分として構造式(1)、

で表される化合物を25?50%含有し、ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、静電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物であって、
第二成分として一般式(2-4)及び一般式(2-6)

(式中、R^(1)?R^(2)はそれぞれ独立して炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表し、この基は被置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-により置き換えられてもよい。) で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。

【請求項2】
第一成分として構造式(1)、

で表される化合物を25?50%含有し、ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、静電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物であって、
第二成分として一般式(4)

(式中、R^(5)?R^(6)はそれぞれ独立して炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表し、この基は被置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-により置き換えられても良く、
B^(6)?B^(7)はそれぞれ独立して
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH2基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は-N-に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(6)?L^(7)はそれぞれ独立して単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-COO-、-OCH_(2)-、CH_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-又は-C≡C-を表し、
q及びrはそれぞれ独立して0、1又は2を表し、q+rはそれぞれ独立して0、1、2又は3を表し、
X^(6)?X^(7)はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。

【請求項3】
請求項1又は2に記載のネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子。

【請求項4】
請求項1又は2に記載のネマチック液晶組成物を用いたアクティブマトリックス液晶表示素子。


第4 請求人の主張
1.請求人は、「特許第5217262号発明の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めるところ、請求人の主張する本件特許を無効とする理由は、審判請求書、第1?第3弁駁書及び口頭審理陳述要領書並びに第1回口頭審理における請求人の陳述のとおり、次の点にある。

(1)無効理由1
本件特許発明1?4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は同項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び明細書の発明の詳細な説明には、一般式(2)の1で表される化合物に関して記載不備があるから、本件特許に係る特許出願は特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件特許は同条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

(3)無効理由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4には、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度の測定方法に関して記載不備があるから、本件特許に係る特許出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件特許は同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、その特許は無効とすべきものである。

なお、審判請求書における次の無効理由の主張については、請求人の陳述要領書及び第1回口頭審理における請求人の陳述により撤回されている。
(i)本件特許発明1?4は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。(同法第123条第1項第2号)
(ii)一般式(2)と一般式(2)の1とが重複していることから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1には記載不備があり、本件特許に係る特許出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。(同法第123条第1項第4号)

≪証拠方法≫
○審判請求書に添付
甲第1号証:国際公開第2007/017180号(2007年2月15日国際公開)
甲第1号証の2:特表2009-504814号公報〔甲第1号証の翻訳文〕
甲第2号証:2013年10月17日付け実験報告書(作成者:メラニエ クラーゼン-メマー博士)〔翻訳文付き〕
甲第3号証:特開2007-92033号公報(平成19年4月12日公開)
甲第4号証:特開2005-290349号公報(平成17年10月20日公開)
○平成26年4月30日付け審判事件弁駁書に添付
甲第5号証:国際公開第2006/002952号(2006年1月12日国際公開)
甲第5号証の2:特表2008-505235号公報〔甲第5号証の翻訳文〕
甲第6号証:特開2003-119466号公報(平成15年4月23日公開)
甲第7号証:特開2003-327965号公報(平成15年11月19日公開)
○陳述要領書に添付
甲第8号証:2014年10月24日付け実験報告書(作成者:ハラルド ヒルシュマン博士)〔翻訳文付き〕
以下、上記各甲号証について、甲1、甲2、……ということがある。

被請求人は、第1回口頭審理において、甲1及び甲1の2、甲2?4、甲5及び甲5の2、並びに甲6?8の成立を認めている。


第5 被請求人の主張
被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め(平成26年1月21日付け答弁書)、請求人が主張する特許を無効とする理由に対し反論をしている。

≪証拠方法≫
○陳述要領書に添付
乙第1号証:マグローヒル 科学技術用語大辞典 第3版、日刊工業新聞社、1996年9月30日、71頁右欄、「示差熱分析 differential thermal analysis」の項
以下、乙第1号証について、乙1ということがある。

請求人は、第1回口頭審理において、乙1の成立を認めている。


第6 当審の判断
1.無効理由1について
(1)本件特許発明1
ア.請求人は、口頭審理陳述要領書において、本件特許発明1は、当業者が、甲1に記載された発明に基づいて、又は甲1並びに甲3及び甲5?7に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものである旨主張していたが、第3弁駁書では、本件訂正を踏まえて、当業者が、本件特許発明1は、甲1及び甲7に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。

イ.甲1の記載事項
甲1は、上記したとおり国際公開第2007/017180号であり、2007年2月15日に国際公開されたものであるから、本件特許に係る特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものに該当する。
甲1には、次の記載がある。(なお、甲1はドイツ語により記載されているところ、その記載事項の日本語訳及び摘示箇所は、その翻訳文として請求人が提出した特表2009-504814号公報(甲1の2)の記載及び段落番号によるものとする。)
(ア)「【請求項1】
極性化合物の混合物を基礎とする負の誘電異方性を有する液晶媒体であって、媒体に基づいて30重量%以上の量で式Iの化合物を少なくとも1種類含む液晶媒体。

(式中、
R^(11)は、4個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCF_(3)によって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH_(2)基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-O-、-S-、

-C≡C-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
R^(12)は、5個までの炭素原子を有するアルケニル基を表し、該基は置換されていないか、CNまたはCF_(3)によって1置換されているか、またはハロゲンによって少なくとも1置換されており、ただし加えて、これらの基の中の1個以上のCH_(2)基は、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-O-、-S-、

-C≡C-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよい。)」(特許請求の範囲)

(イ)「本発明の混合物は、70℃以上の透明点と共に非常に広い範囲でネマチック相を示し、非常に好ましい値の容量閾値、比較的高い値の保持率および同時に-30℃および-40℃において非常に良好な低温安定性を示し、非常に低い回転粘度および短い応答時間を有する。本発明の混合物、特に30重量%以上の

を含むものは、回転粘度γ1の改良に加え、弾性率K_(33)の上昇が応答時間の改良に寄与している事実によって区別される。」(段落0027?0028)

(ウ)「【発明を実施するための最良の形態】
本発明の混合物の好ましい実施形態の幾つかを以下に示す。
……
i)補助式I1?I9から選択される少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。

……
本発明の特に好ましい媒体は、以下の式の化合物を含み、

好ましくは30?60重量%の量、特には35?60重量%の量で、および/または以下の式の化合物を含み、

好ましくは30?40重量%の量、特には35?40重量%の量である。」(段落0029?0047)

(エ)「本発明の液晶媒体は、好ましくは20℃以下?70℃以上まででネマチック相を有し、特に好ましくは30℃以下?80℃以上、非常に特に好ましくは40℃以下?90℃以上である。《審決注:文意及び甲1全体の記載等からみて、「20℃以下」、「30℃以下」及び「40℃以下」は、それぞれ「-20℃以下」、「-30℃以下」及び「-40℃以下」の誤記と解される。》
ここで用語「ネマチック相を有する」は、一方でスメクチック相および結晶化が対応する温度の低温で確認されないことを意味し、他方でネマチック相から加熱しても透明化しないことを意味する。低温における検査は対応する温度において流動粘度計により行われ、電気光学的用途に対応する層厚みを有する試験用セルに少なくとも100時間保存して検査される。
対応する試験用セル中における-20℃での保存安定性が1000時間以上の場合、媒体はこの温度において安定であると言われる。-30℃および-40℃の温度において、対応する時間は、それぞれ500時間および250時間である。高温においては、毛細管注での従来法により、透明点が測定される。
……
本発明の液晶混合物は、-0.5?-8.0《審決注:甲1の2の「-0.5?-0.8」は誤訳である。》、特には-3.0?-6.0のΔεを有し、ただしΔεは誘電異方性を表す。……
液晶混合物中における複屈折率Δnの値は一般に0.07および0.16の間であり、好ましくは0.08および0.12の間である。」(段落0101?0106)

(オ)「式Iの化合物に加え、本発明の混合物は、好ましくは以下に示す1種類以上の化合物を含む。
以下の略称を使用する(n、mおよびzは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6である)。
……

……

……

……

……

……

……

……」(段落0139?0149)

(カ)「【実施例】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。上および下において、
V0は20℃における容量閾電圧(V)を表し、
Δnは20℃および589nmで測定される光学異方性を表し、
Δεは20℃および1kHzでの誘電異方性を表し、
……
LTSは試験セル中で決定される低温安定性(ネマチック相)を表す。
……
<混合物例>
<例1>

<例2>

……
<例4>

<例5>

<例6>

<例7>

<例8>

」(段落0161?0169)

ウ.甲1に記載された発明
甲1には、摘示(ア)?(エ)の記載からみて、
「極性化合物の混合物を基礎とする負の誘電異方性を有する液晶媒体であって、媒体に基づいて30?60重量%の量で以下の式の化合物

を含み、70℃以上の透明点と共に非常に広い範囲でネマチック相を示し、非常に好ましい値の容量閾値、比較的高い値の保持率および同時に-30℃および-40℃において非常に良好な低温安定性を示し、-3.0?-6.0の誘電異方性Δε及び0.08および0.12の間の複屈折率Δnを有する液晶媒体。」
の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

エ.対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「液晶媒体」は非常に広い範囲でネマチック相を示すものであるから、本件特許発明1における「ネマチック液晶組成物]に相当する。
甲1発明における以下の化合物(なお、摘示(オ)に記載された略称で示せばCC-3-V)

は、本件特許発明1の第一成分としての構造式(1)

で表される化合物(実施例での表記は0d1-Cy-Cy-3)とは表記の仕方が異なるだけで、同一の化合物である。
甲1発明における「-3.0?-6.0の誘電異方性Δε」及び「0.08および0.12の間の複屈折率Δn」は、それぞれ本件特許発明1における「誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0」及び「屈折率異方性Δnが0.05?0.15」である数値範囲に完全に包含されるものである。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「第一成分として構造式(1)、

で表される化合物を含有し、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物」
である点で一致し、次の点で相違するものといえる。

相違点1:
本件特許発明1では、第一成分としての構造式(1)で表される化合物を25?50%含有することが特定されているが、甲1発明では、当該化合物を30?60重量%の量で含むと特定されている点

相違点2:
本件特許発明1では、「第二成分として一般式(2-4)及び一般式(2-6)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有」すると特定されているが〔一般式(2-4)及び一般式(2-6)は省略〕、甲1発明では一般式(2-4)及び一般式(2-6)で表される化合物に相当する成分について特定されていない点

相違点3:
本件特許発明1では、「ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃」であると特定されているが、甲1発明では「ネマチック-アイソトロピック転移温度」について特定されていない点

相違点4:
本件特許発明1では、「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃」であると特定されているが、甲1発明では「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」について特定されていない点

オ.判断
まず、相違点2について検討する。
甲7は、上記したとおり、特開2003-327965号公報であり、平成15年11月19日に公開されたものであるから、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に該当する。
甲7には次の記載がある。
A.「【請求項1】 ネマティック液晶媒体であって、
a)1種又は2種以上の式Iで表される誘電的に負の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分A):

(式中、
R^(11)およびR^(12)は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1?7個を有するアルキル基、炭素原子1?7個を有するアルコキシ基、もしくは炭素原子2?7個を有するアルコキシアルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基であり、

であり、
Z^(11)およびZ^(12)は、それぞれ相互に独立し、-CH_(2)-CH_(2)-、-CH_(2)-CF_(2)-、-CF_(2)-CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-、CF_(2)O-または単結合であり、およびnは、0または1であり、
ただし、

である場合、第三のフェニル環中に存在する1個または2個以上のH原子はF原子により置き換えられていてもよい);および
b)成分Aとは相違しているもう1種の誘電的に負の液晶成分(成分B);および任意に、
c)誘電的にニュートラルの液晶成分(成分C);および任意に、
d)誘電的に正の液晶成分(成分D);
を含有することを特徴とする、ネマティック液晶媒体。
【請求項2】 式IIおよび式III:

(各式中、
R^(21)、R^(22)、R^(31)およびR^(32)は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1?7個を有するアルキル基またはアルコキシ基、もしくは炭素原子2?7個を有するアルコキシアルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基であり、
Z^(21)、Z^(22)、Z^(31)およびZ^(32)は、それぞれ相互に独立し、-CH_(2)-CH_(2)-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-または単結合であり、
mは、0または1であり、および

である)で表される化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物を包含する成分Bを含有することを特徴とする液晶媒体。
【請求項3】 1種又は2種以上の請求項2に記載の式IIで表される化合物を含有することを特徴とする、請求項1および2のいずれか記載の液晶媒体。」(特許請求の範囲)

B.「本発明は、液晶ディスプレイ、特にアクティブマトリックスアドレス液晶ディスプレイ(AMD類またはAMLCD類)に関し、特に薄膜トランジスター(TFT類)またはバリスター類を備えたアクティブマトリックスを使用する液晶ディスプレイに関する。本発明はまた、このタイプのディスプレイに使用するための液晶媒体に関する。」(段落0001)

C.「成分Bは好ましくは、式IIおよび式IIIで表される化合物からなる群から選択される1種または2種以上の化合物から主としてなり、特に好ましくは実質的に完全になり、非常に特に好ましくはほとんど完全になる。式IIで表される化合物は、式II-1?II-5、好ましくは式II-1?II-3からなる群から選択すると好ましい:

各式中、R^(21)およびR^(22)は、式IIにかかわる上記定義のとおりであり、およびR^(21)は、好ましくは炭素原子1?7個を有するn-アルキル基、炭素原子1?7個を有するn-アルコキシ基または炭素原子2?7個を有するアルケニルオキシ基であり、R^(22)は、好ましくは炭素原子1?7個を有するn-アルキル基または炭素原子2?7個を有するアルケニルオキシ基であり、また式I-1および式I-2《審決注:式II-1および式II-2の誤記と認められる。》においてはまた、炭素原子1?7個を有するn-アルキル基であることができ、mは、0または1である。」(段落0055?0057)

ここで、上記摘示Aの請求項2、3における式IIで表される化合物は、本件特許発明2の一般式(2-4)又は一般式(2-6)で表される化合物を包含するものであり、当該化合物が液晶組成物の成分として使用されることも記載されている(摘示A?C)。
しかしながら、甲1及び甲7には、本件特許発明1の構造式(1)で表される化合物と一般式(2-4)又は一般式(2-6)(甲7の一般式II)で表される化合物とを組み合わせてネマチック液晶組成物として用いることについては記載されておらず、その動機付けとなるものも見当たらない。また、このような組み合わせは技術常識といえるものでもない。
そして、本件特許発明1はこの組み合わせにより、「ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物」が得られるものであるが、甲1及び甲7には、この点についての記載も示唆もない。

なお、甲3、5及び6には、一般式(2-4)又は(2-6)に該当する液晶化合物は記載も示唆もされていないことから、「一般式(2-4)及び一般式(2-6)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物」をネマチック液晶組成物の成分として使用する動機付けはない。

カ.請求人の主張について
請求人は、第3弁駁書において、
「甲第7号証は、負の誘電異方性を有する液晶媒体を記載した文献であり、その成分として式II?1?II?5から選ばれる化合物が好ましいことが記載されている。この中で、式II-2(m=1のとき)は、本件一般式(2-6)に対応し、式II-4(m=1のとき)は、本件一般式(2-4)に対応する。すなわち、甲第7号証には、式II-1?II-5の化合物が、負の誘電異方性を有する液晶媒体に含有される化合物として、いずれも共通の性質を備える化合物であることが示唆されている。
従って、甲第7号証の式II-1の化合物と共に、あるいは式II-1の化合物に代えて、式II-2の化合物または式II-4の化合物を使用する動機付けが示されている。
ここで、式II-1の化合物は、甲第1号証の請求項1《審決注:請求項2の誤記と認める。》の式IIA:

に、また実施例において、CY-n-(O)m、CCY-n-(O)mに対応する化合物である。
……
そうすると、甲1発明において、甲第1号証の実施例でも使用されているCY-n-(O)m、CCY-n-(O)m等の化合物の一部を、甲第7号証に記載された式II-2または式II-4の化合物に変更し、本件発明1とすることは当業者が容易に想到しうることである。」
と主張している。
しかしながら、甲1の実施例(摘示(オ)及び(カ)参照)で使用されているCY-n-(O)m、CCY-n-(O)mはあくまでも甲1の請求項2の式IIAの化合物(摘示していない)として液晶組成物中に含有されるものと解されるものの、甲1において、式IIAの化合物が負の誘電異方性を有する液晶媒体であることを理由として液晶組成物中に含有させるものであることは一切示されていない。
また、甲7の式II-3の化合物(摘示C参照)は、甲1では式IIAとは無関係の式Z-4(段落0082?0088:摘示せず)で示されるものであり、式II-1の代替物とすることは甲1においては想定されていない。
そうすると、甲1の実施例におけるCY-n-(O)m、CCY-n-(O)mが甲7の式II-1の化合物に対応するものであるとしても、甲7の式II-2や式II-4の化合物は甲1の式IIAには包含されないものであり、また、甲1においては、記載も示唆もされていない化合物であるから、甲7の式II-1の化合物に加えて、又はそれに代えて式II-2や式II-4の化合物を採用する動機付けは見いだせない。

キ.まとめ
そうすると、本件特許発明1は、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1及び甲3?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2)本件特許発明2
ア.請求人は、本件特許発明2は、当業者が、甲1及び甲4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。(請求人の口頭新地陳述要領書及び第3弁駁書参照)

イ.甲1に記載された発明
甲1については、上記(1)イに記載したとおりであり、摘示(ア)?(カ)の記載がある。また、同ウで認定したとおりの甲1発明が記載されている。

ウ.対比
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、
「第一成分として構造式(1)、

で表される化合物を含有し、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物」
である点で一致し、次の点で相違するものといえる。

相違点1':
本件特許発明2では、第一成分としての構造式(1)で表される化合物を25?50%含有することが特定されているが、甲1発明では、当該化合物を30?60重量%の量で含むと特定されている点

相違点2':
本件特許発明2では、「第二成分として一般式(4)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有する」と特定されているが《一般式(4)は省略》、甲1発明では一般式(4)に相当する化合物について特定されていない点

相違点3':
本件特許発明2では、「ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃」であると特定されているが、甲1発明では「ネマチック-アイソトロピック転移温度」について特定されていない点

相違点4':
本件特許発明2では、「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃」であると特定されているが、甲1発明では「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」について特定されていない点

エ.判断
まず、相違点2'について検討する。
甲4は、上記したとおり、特開2005-290349号公報であり、平成17年10月20日に公開されたものであるから、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に該当する。
甲4には次の記載がある。
a.「【請求項1】
一対の基板に液晶を狭持した構造を有し、少なくとも配向制御層、透明電極及び偏光板を備えた液晶表示素子において、前記の液晶が少なくとも一種の、一般式(A)

(式中、W^(1)及びW^(2)はそれぞれ独立的にフッ素原子、塩素原子、……を表す。)で表される部分構造を有する液晶化合物を含有し、誘電率異方性が負であることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
W^(1)及びW^(2)がフッ素原子を表す請求項1記載の液晶表示素子。
【請求項3】
一般式(1)

(式中、R^(1)及びR^(2)は各々独立的に水素原子、炭素数1から12のアルキル基又は炭素数2から12のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は酸素原子又は硫黄原子に置換されても良く、又、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、
A^(1)、A^(2)、A^(3)及びA^(4)はそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個のCH_(2)基は酸素原子又は硫黄原子に置換されても良い。)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は窒素原子に置換されても良い。)、……を表し、これらの基中に存在する水素原子は-CN又はハロゲンで置換されていても良く、
Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)及びZ^(4)はそれぞれ独立的に-CH_(2)CH_(2)-、……、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、……、-(CH_(2))_(4)-、……、-C≡C-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-COO-、-OCO-、……又は単結合を表し、A^(1)、A^(2)、A^(3)、A^(4)、Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)及びZ^(4)が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、
a、b、c及びdはそれぞれ独立的に0又は1を表し、
W^(1)及びW^(2)はそれぞれ独立的にフッ素原子、塩素原子、……を表す。)で表される化合物。
【請求項4】
一般式(1)において、R^(1)及びR^(2)がそれぞれ独立的に炭素数1から7のアルキル基又は炭素数2から7のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のCH_(2)基は酸素原子により置換されても良い。)を表し、W^(1)及びW^(2)がフッ素原子を表す請求項3記載の化合物。
【請求項5】
一般式(1)において、A^(1)、A^(2)、A^(3)及びA^(4)がそれぞれ独立的に、トランス-1,4-シクロへキシレン基、1個又は2個以上のフッ素原子に置換されても良い1,4-フェニレン基……を表す請求項1記載の化合物。
【請求項6】
一般式(1)において、Z^(1)、Z^(2) 、Z^(3)及びZ^(4)がそれぞれ独立的に-CH_(2)CH_(2)-、……、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-C≡C-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-又は単結合を表す請求項3記載の化合物。
【請求項7】
一般式(1)において、a、b、c及びdの合計が1又は2を表す請求項3記載の化合物。
【請求項8】
一般式(1)において、R^(1)及びR^(2)がそれぞれ独立的に炭素数1から7のアルキル基又は炭素数2から7のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のCH_(2)基は酸素原子により置換されても良い。)を表し、W^(1)及びW^(2)がフッ素原子-を表し、A^(1)、A^(2)、A^(3)及びA^(4)がそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロへキシレン基、1個又は2個以上のフッ素原子に置換されても良い1,4-フェニレン基……を表し、Z^(1)、Z^(2) 、Z^(3)及びZ^(4)がそれぞれ独立的に-CH_(2)CH_(2)-、……、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-C≡C-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-又は単結合を表し、a、b、c及びdの合計が1又は2を表す請求項3記載の化合物。
【請求項9】
一般式(1)において、R^(1)及びR^(2)がそれぞれ独立的に炭素数1から7のアルキル基、炭素数2から7のアルケニル基又は炭素数1から7のアルコキシ基を表し、A^(1)、A^(2)、A^(3)及びA^(4)がそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表し、Z^(1)、Z^(2) 、Z^(3)及びZ^(4)がそれぞれ独立的に-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-又は単結合を表し、W^(1)及びW^(2)がフッ素原子を表し、a、b、c及びdの合計が1又は2を表す請求項3記載の化合物。
【請求項10】
一般式(1)において、A^(1)、A^(2)、A^(3)及びA^(4)がそれぞれ独立的にトランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表す請求項9記載の化合物。
【請求項11】
請求項1から10記載の化合物を1種以上含有する液晶組成物。」(特許請求の範囲)

b.「【技術分野】
本発明はクロマン誘導体及びこれを用いた液晶組成物、さらにこれを用いた液晶表示素子に関する。」(段落0001)

c.「【発明の効果】
本発明のクロマン誘導体は、誘電率異方性が負であってその絶対値が大きく、屈折率の異方性が小さい特徴を有する。当該化合物を構成部材とする液晶組成物及び液晶表示素子は、垂直配向方式、IPS等の液晶表示素子として有用である。」(段落0014)

ここで、上記摘示aの請求項3?10における一般式(1)で表される化合物は、本件特許発明2の一般式(4)で表される化合物を包含するものであり、当該化合物が液晶組成物の成分として使用されることも記載されている(摘示aの請求項1、2及び11並びに摘示b及びc)。
しかしながら、甲1及び甲4には、本件特許発明2の構造式(1)で表される化合物と一般式(4)(甲4の一般式(1))で表される化合物とを組み合わせて液晶組成物として用いることについては記載されておらず、その動機付けとなるものも見当たらない。また、このような組み合わせは技術常識といえるものでもない。
そして、本件特許発明2はこの組み合わせにより、「ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物」が得られるものであるが、甲1及び甲4には、この点についての記載も示唆もない。

オ.まとめ
そうすると、本件特許発明2は、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。


(3)本件特許発明3及び4
本件特許発明3及び4はいずれも本件特許発明1又は2を引用するものであり、本件特許発明1又は2の全ての特徴を含むものであって、前述のとおり、本館特許発明1及び2はいずれも当業者が容易に発明をすることができたものということができないのであるから、本件特許発明3及び4も同様に当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(4)無効理由1のまとめ
以上のとおりであるから、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

2.無効理由2について
無効理由2は、第2訂正請求書により請求した訂正に係る請求項1における一般式(2)の1についての記載不備に関するものである。
しかしながら、第3訂正請求書に係る訂正の請求により第2訂正請求書に係る訂正の請求は取り下げられたものとみなされ、そして、上記第3で示したとおり、本件特許発明1(請求項1)には、「一般式(2)の1」に係る記載はない。
そうすると、請求項1に無効理由2に係る記載不備はなく、請求項1に係る特許が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものということはできない。

3.無効理由3について
(1)本件特許の特許請求の範囲の記載を踏まえると、無効理由3は、請求項1及び2に「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が、-80℃?-20℃であり」と特定されているにもかかわらず、訂正明細書には、「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」の測定方法が記載されていないから、当業者は液晶組成物の当該転移温度を確定することができず、請求項1?4に係る発明が明確ではない、というものである。

(2)ところで、この無効理由3については、審判請求書では主張されておらず、被請求人が、第1答弁書で、甲2について、
「「クリスタル-ネマチック転移温度」、又は、「スメクチック-ネマチック転移温度」についての測定条件、或いは測定試料の製造・入手方法等、当該測定に関する客観的な具体的事実が不明、曖昧である」ため、「そこに記載された実験及び実験値は、いわゆる「真正な追試」に基づくものとは言えず、信憑性がなく、証拠力のないものである。」(7頁4?7行及び8頁10?12行)
と主張したことに対し、請求人が、第1弁駁書において、甲2における「クリスタル-ネマチック転移温度」の測定方法を説明した上で、
「尚、もし被請求人が上記測定方法について異議を唱えるならば、本件特許の明細書においても、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度の測定方法について全く具体的な説明がないのであるから、本件明細書に記載不備があることを、自ら認めることになる。」(25頁15?18行)
と予備的に主張していた点を、第2弁駁書で無効理由として主張したものである(14頁7-4(2))。
これに対し、被請求人は、口頭審理陳述要領書で、
「相転移温度が示差熱分析等により測定し得ることは当業者に周知の技術液事項であり(例えば、乙第1号証)、また、請求人が提出した甲第2号証にも、特段、相転移温度の測定方法の記載がなされていないとおり、本技術分野での常套手段でもある」として、第1答弁書での「「真正な追試」に基づくものではない」旨の主張を撤回している。すなわち、被請求人は、第1弁駁書で説明された甲2の「クリスタル-ネマチック転移温度」の測定方法について異議を唱えていない。

(3)このような状況をもとに、無効理由3について検討する。
まず、被請求人が、第1答弁書での甲2に関する「「真正な追試」に基づくものではない」旨の主張を、口頭審理陳述要領書で撤回したことから、請求人の予備的主張としての無効理由3は、その根拠を失ったものといえる。
すなわち、請求人は、第1弁駁書で、甲2に「「クリスタル-ネマチック転移温度」、又は、「スメクチック-ネマチック転移温度」についての測定条件、或いは測定試料の製造・入手方法等、当該測定に関する客観的な具体的事実」がないことについての被請求人の主張を、「言いがかりにすぎない」として、主位的には問題にはならない旨主張しているとおりである。
そもそも、「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」は液晶組成物の基本的な性質の一つであると言え、その測定方法は、当業者に周知の事項であると解される。そうすると、訂正明細書に当該転移温度の測定方法について記載がないとしても、当業者は周知の測定方法を採用して当該転移温度を測定できるのであるから、当該記載の欠缺が第三者に不測の不利益を及ぼすことにはならない。
したがって、訂正明細書に「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」の測定方法について説明がないことをもって、請求項1及び2に記載された「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」が明確ではないということはできない。

(4)なお、「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」の測定方法が当業者に周知の事項であることは、両当事者の次の主張・立証からも明らかである。
ア.請求人は、審判請求書では、本件発明に係る「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」の測定方法が特許明細書中に記載がないことを何ら問題にすることなく、甲2において、特段、「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」の測定方法について示すことなく、甲1の実施例の液晶混合物の「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」を測定したとして、その測定温度を報告していること。(請求人も、審判請求時には「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」の測定方法は特段明示するまでもない周知技術と理解していたことの証左となる。)
イ.被請求人も、口頭審理陳述要領書において、請求人が第1弁駁書で述べた甲2における「クリスタル-ネマチック転移温度の測定(-20℃未満の場合の測定方法)」を何ら争うことなく、「クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度」の測定方法は、本技術分野の常套手段である旨主張していること。

(5)したがって、請求項1?4に無効理由3に係る記載不備はなく、請求項1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものということはできない。
なお、上記趣旨の判断を示した審決の予告に対し、請求人は第3弁駁書にて何ら異議を唱えていない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、平成27年3月25日付け訂正請求書に係る訂正の請求は認め、当該訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明についての特許は、いずれも無効理由1?3によっては無効とすることができない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第64条本文の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な誘電率異方性が負のネマチック晶組成物、これを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示品質が優れていることから、アクティブマトリクス形液晶表示装置が携帯端末、液晶テレビ、プロジェクタ、コンピューター等の市場に出されている。アクティブマトリクス表示方式は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)あるいはMIM(メタル・インシュレータ・メタル)等が使われており、この方式には高電圧保持率であることが重要視されている。また、更に広い視角特性を得るためにVA、IPS、OCBモードと組み合わせたTFT表示やより明るい表示を得るためにECBモードの反射型が提案されている。この様な表示素子に対応するために、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
ツイステッドネマチック液晶表示素子(TN-LCD)やスーパーツイステッドネマチック液晶表示素子(STN-LCD)においては、表示の応答速度を高速化させるために低粘性化された液晶組成物への要望が強くなっている。また低温領域から高温領域まで広い動作温度範囲を可能にするためにネマチック温度範囲の広い液晶組成物が要求されている。
【0004】
低粘性液晶組成物は、Δn値の小さいシクロヘキサン環で構成されたビシクロヘキサン誘導体等の含有率を大きくすることで得ることができる。しかし、これらの化合物はスメクチック性が高く、ビシクロヘキサン系化合物の含有率を大きくした場合、ネマチック相下限温度(T-n)を低くすることが困難であり、広いネマチック温度範囲を有する液晶組成物を得ることが困難であった。
【0005】
比較的低粘性である液晶組成物は既に知られており、好ましい化合物の具体例が開示されている(特許文献3)。またビシクロヘキサン誘導体とフェニルビシクロヘキサン誘導体を組み合わせた屈折率異方性の小さい液晶組成物も既に知られており、好ましい化合物の具体例が開示されている(特許文献4)。しかしながら、これら組成物の粘性は十分に低いものではなかった。又、ビニル、プロピルビシクロヘキサンを用いた液晶組成物についても既に開示されている(特許文献5参照)。しかし、当該引用文献において記載される液晶組成物は誘電率異方性が正のものであり、性質の全く異なる誘電率異方性が負の液晶組成物に関する開示は全くない。
一方、誘電率異方性が負の液晶材料として、以下のような2,3-ジフルオロフェニレン骨格を有する液晶化合物(特許文献6及び7参照)が開示されている。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R及びR’は炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシ基を表す。)しかし、当該引用文献に記載される化合物のみで構成される誘電率異方性が負の液晶組成物は、液晶テレビ等の高速応答が要求される液晶組成物においては十分に低い粘性を実現するに至っていない。
以上のことから、液晶相温度範囲が広く、粘性が低い誘電率異方性が負の液晶組成物を得ることは困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平2-233626号公報
【特許文献2】特公表4-501575号公報
【特許文献3】特許第2882577号公報(32頁の例28)
【特許文献4】特開平10-259377(17頁の例A?D)
【特許文献5】特開2006-328399号
【特許文献6】特開昭60-199840号
【特許文献7】特開平2-4725号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、液晶相温度範囲が広く、粘性が低く、誘電率異方性が負のアクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物を提供すること、また、この液晶組成物を使用した動作温度範囲が広いアクティブマトリクス型液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、第一成分として構造式(1)、
【0011】
【化2】

で表される化合物を20?65%含有し、ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0であることを特徴とするアクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物及び当該液晶組成物を構成部材とする液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶化合物の組み合わせによって、非常に粘性が低く、低温で安定したネマチック相を持ち、液晶相温度範囲が広く、広い範囲で屈折率異方性(Δn=0.05?0.15)を調整でき、かつ信頼性に優れたアクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物が得られた。この組成物を用いることにより、動作温度範囲が広いアクティブマトリクス型液晶表示素子が提供され、反射または半透過モード等の液晶ディスプレイとして非常に実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本願発明における液晶組成物において、第一成分として構造式(1)で表される化合物の含有率は20?65%であるが、25?50質量%の範囲であることが好ましい。
【0014】
組成物の物性値を調整するために第二成分としてとして一般式(2)、一般式(3)及び一般式(4)
【0015】
【化3】

(式中、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立して炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表し、この基は非置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-により置き換えられても良く、
B^(1)?B^(7)はそれぞれ独立して
(a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は-N-に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)?L^(7)はそれぞれ独立して単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-COO-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-又は-C≡C-を表し、
m、n、o、p、q及びrはそれぞれ独立して0、1又は2を表し、m+nは0、1又は2を表し、o+p、及びq+rはそれぞれ独立して0、1、2又は3を表し、
X^(1)?X^(7)はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。)で表される化合物からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することが好ましい。これらの化合物を含有する場合、1種?15種が好ましく、3種?10種がより好ましく、5種?10種がさらに好ましい。又、これらの化合物からなる群の含有率は、20?70質量%の範囲であることが好まく、30?60質量%の範囲であることがより好ましい。
【0016】
一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)において、R^(1)?R^(6)は炭素数1?10のアルキル基又は炭素数2?10のアルケニル基、炭素数2?10のアルキル基中に存在する1個のCH_(2)基が-O-により置き換えられたものが好ましく、未置換の直鎖状炭素数1?8のアルキル基又は炭素数2?8のアルケニル基、炭素数2?8のアルキル基中に存在する1個のCH_(2)基が-O-により置き換えられたものがより好ましく、アルケニル基では以下の式(a)?(e)の構造がさらに好ましい。
【0017】
【化4】

(構造式は右端で環に連結しているものとする。)
【0018】
B^(1)?B^(7)はトランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基が好ましく、1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基がより好ましいL^(1)?L^(7)は、単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-COO-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-又は-C≡C-であるが、-CH_(2)CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、又は単結合が好ましく、-CH_(2)CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-又は単結合がより好ましく、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-又は単結合が特に好ましい。
【0019】
m、n、o、p、q及びrはそれぞれ独立して0、1又は2を表し、m+nは0、1又は2を表し、o+p及びq+rはそれぞれ独立して0、1、2又は3を表すが、m+nは1が好ましくo+p及びq+rは2が好ましい。X^(1)?X^(7)はそれぞれ独立してH、F又はClを表すが、-H又は-Fが好ましい。
さらに詳述すると、一般式(2)の具体的な構造として以下の化合物が好ましい。
【0020】
【化5】

(式中R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立して、炭素数1?15のアルキル基、アルコキシル基、炭素数2?15のアルケニル基又は炭素数2?15のアルケニルオキシ基を表す。)
一般式(3)の具体的な構造として以下の一般式で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化6】

(式中R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して、炭素数1?15のアルキル基、アルコキシル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表す。)
一般式(4)の具体的な構造として以下の一般式で表される化合物が好ましい。
【0022】
【化7】

(式中R^(5)及びR^(6)はそれぞれ独立して、炭素数1?15のアルキル基、アルコキシル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表す。)
【0023】
本発明において、ネマチック相-等方性液体相転移温度(T_(N-I))は70℃以上であることがより好ましい。固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度(T_(→N))は-20℃以下であることが好ましい。25℃における誘電率異方性(Δε)が-2.0?-8.0であることが好ましく、-3.0?-5.0であることがより好ましい。25℃における屈折率異方性(Δn)が0.08?0.13であることが好ましい。
【0024】
上記ネマチック液晶組成物は、液晶表示素子に有用であり、特にアクティブマトリクス駆動用液晶表示素子に有用であり、反射モードまたは半透過モード用液晶表示素子に用いることができる。
本発明のネマテチック液晶組成物は、上記の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。
【実施例】
【0025】
以下に挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下のおよび比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
T_(N-I) :ネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)を液晶相上限温度とする
T_(→N) :固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度(℃)を液晶相下限温度
とする。
Δε :誘電率異方性
Δn :屈折率異方性
η :粘性
HR :70℃での保持率(%)(セル厚3.5μmのVA-LCDに注入し、5V印加、フレームタイム16.7ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印加電圧との比を%で表した値。)
化合物記載に下記の略号を使用する。
末端のn(数字) C_(n)H_(2n+1)-
-2- -CH_(2)CH_(2)-
-1O- -CH_(2)O-
-O1- -OCH_(2)-
-On -OC_(n)H_(2n+1)
ndm- C_(n)H_(2n+1)-C=C-(CH_(2))_(m-1)-
【0026】
【化8】

【0027】
(実施例1?2)液晶組成物の調整
以下に示すネマチック液晶組成物(No.1)及び(No.2)を調整しその物性値を測定し、その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
1?2のネマチック液晶組成物(No.1)?(No.2)特性は、ネマチック相-等方性液体相転移温度(T_(N-I))、固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度(T_(→N))、誘電率異方性(Δε)、屈折率異方性(Δn)全ての特性において所望の値を示した。また粘性も低く、パネルの応答速度も良好であり、さらに電圧保持率の値も良好であり、高い信頼性を示した。
【0030】
(比較例1?2)液晶組成物の調整
比較例として以下に示すネマチック液晶組成物(R1)?(R2)を調整しその物性値を測定し、その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
比較例1?比較例2は第一成分を含まないものだが、実施例と比較して粘性が高いものであった。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として構造式(1)
【化1】

で表される化合物を25?50%含有し、ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物であって、
第二成分として一般式(2-4)及び一般式(2-6)
【化2】

(式中、R^(1)?R^(2)はそれぞれ独立して炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表し、この基は非置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-により置き換えられてもよい。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。
【請求項2】
第一成分として構造式(1)、
【化1】

で表される化合物を25?50%含有し、ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが-2.0?-8.0であるネマチック液晶組成物であって、
第二成分として一般式(4)
【化3】

(式中、R^(5)?R^(6)はそれぞれ独立して炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表し、この基は非置換であるか、あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン基を有しており、そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基はそれぞれ独立してO原子が相互に直接結合しないものとして-O-、-S-、-CO-により置き換えられても良く、
B^(6)?B^(7)はそれぞれ独立して
(a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は-N-に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(6)?L^(7)はそれぞれ独立して単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-COO-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)O-又は-C≡C-を表し、
q及びrはそれぞれ独立して0、1又は2を表し、q+rはそれぞれ独立して0、1、2又は3を表し、
X^(6)?X^(7)はそれぞれ独立してH、F又はClを表す。)で表される化合物からなる群より選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のネマチック液晶組成物を用いたアクティブマトリックス液晶表示素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2015-06-22 
結審通知日 2015-06-24 
審決日 2015-07-09 
出願番号 特願2007-157594(P2007-157594)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (C09K)
P 1 113・ 536- YAA (C09K)
P 1 113・ 121- YAA (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 邦久  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 橋本 栄和
菅野 芳男
登録日 2013-03-15 
登録番号 特許第5217262号(P5217262)
発明の名称 液晶組成物  
代理人 城戸 博兒  
代理人 小野 暁子  
代理人 池田 正人  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 伊藤 克博  
代理人 城戸 博兒  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 阿部 寛  
代理人 阿部 寛  
代理人 池田 正人  

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