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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1308762
審判番号 不服2014-10267  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-03 
確定日 2015-12-17 
事件の表示 特願2011-534199「振動発電機」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日国際公開、WO2011/040265〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2010年9月17日(優先権主張2009年9月29日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月24日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成26年3月4日)、これに対し、平成26年6月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年3月6日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年3月10日)、これに対し、平成27年5月7日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により平成27年5月20日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年5月26日)、これに対し、平成27年7月27日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.平成27年7月27日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年7月27日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
非磁性体にて形成される非磁性筒ケースと、
前記非磁性筒ケースの外周面に捲回された電磁誘導コイルと、
前記非磁性筒ケース内にその長手方向に往復移動可能に配設され、当該移動方向に着磁された永久磁石と、
前記永久磁石の移動方向における一端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて固着された第1の磁気漏洩防止用磁石と、
前記永久磁石の移動方向における他端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて固着された第2の磁気漏洩防止用磁石と、
を有し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石、第2の磁気漏洩防止用磁石及び前記永久磁石の前記移動方向と直交する方向の断面の外縁形状は円形状であり、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径及び第2の磁気漏洩防止用磁石の断面半径を、前記永久磁石の断面半径と略同一にし、
前記永久磁石の前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、前記永久磁石の断面半径の4倍よりも小さく設定し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の厚さを、前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径の25%?90%に設定し、
前記第2の磁気漏洩防止用磁石の厚さを、前記第2の磁気漏洩防止用磁石の断面半径の25%?90%に設定することを特徴とする振動発電機。
【請求項2】
前記振動発電機は、磁性体の正負接点金具を有する電池収容ケースに収容されて使用され、
前記非磁性筒ケースを収納する外被ケースと、
前記外被ケースの長手方向の端部に設けられ、前記電磁誘導コイルに生じた電流を前記接点金具に導電させる電極部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動発電機。
【請求項3】
前記永久磁石の移動により、前記電磁誘導コイルに生じた電流を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電流を蓄電する蓄電手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の振動発電機。
【請求項4】
前記整流回路及び前記蓄電手段を前記非磁性筒ケースの端部の外側に設けたことを特徴とする請求項3に記載の振動発電機。
【請求項5】
非磁性体にて形成される非磁性筒ケースと、
前記非磁性筒ケースの外周面に捲回された電磁誘導コイルと、
前記非磁性筒ケース内にその長手方向に往復移動可能に配設され、当該移動方向に着磁された永久磁石と、
前記永久磁石の移動方向における一端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて固着された第1の磁気漏洩防止用磁石と、
前記永久磁石の移動により、前記電磁誘導コイルに生じた電流を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電流を蓄電する蓄電手段とを、有し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の前記移動方向と直交する方向の断面の外縁形状は円形状であり、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径を、前記永久磁石の断面半径と略同一にし、
前記永久磁石の前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、前記永久磁石の断面半径の4倍よりも小さく設定し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の厚さを、前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径の25%?90%に設定し、
前記永久磁石の移動方向における他端側に位置する非磁性筒ケースの端部の外側に、前記整流回路及び前記蓄電手段を設けたことを特徴とする振動発電機。」

これに対し、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
非磁性体にて形成される非磁性筒ケースと、
前記非磁性筒ケースの外周面に捲回された電磁誘導コイルと、
前記非磁性筒ケース内にその長手方向に往復移動可能に配設され、当該移動方向に着磁された永久磁石と、
前記永久磁石の移動方向における一端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて固着された第1の磁気漏洩防止用磁石と、
前記永久磁石の移動方向における他端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて固着された第2の磁気漏洩防止用磁石と、
を有し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石、第2の磁気漏洩防止用磁石及び前記永久磁石の前記移動方向と直交する方向の断面の外縁形状は円形状であり、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径及び第2の磁気漏洩防止用磁石の断面半径を、前記永久磁石の断面半径と略同一にし、
前記永久磁石の前記断面における前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、前記断面における前記非磁性筒ケースの前記移動方向における長さよりも小さく設定し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の厚さを、前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径の25%?90%に設定し、
前記第2の磁気漏洩防止用磁石の厚さを、前記第2の磁気漏洩防止用磁石の断面半径の25%?90%に設定することを特徴とする振動発電機。
【請求項2】
前記振動発電機は、磁性体の正負接点金具を有する電池収容ケースに収容されて使用され、
前記非磁性筒ケースを収納する外被ケースと、
前記外被ケースの長手方向の端部に設けられ、前記電磁誘導コイルに生じた電流を前記接点金具に導電させる電極部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動発電機。
【請求項3】
前記永久磁石の移動により、前記電磁誘導コイルに生じた電流を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電流を蓄電する蓄電手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の振動発電機。
【請求項4】
前記整流回路及び前記蓄電手段を前記非磁性筒ケースの端部の外側に設けたことを特徴とする請求項3に記載の振動発電機。
【請求項5】
非磁性体にて形成される非磁性筒ケースと、
前記非磁性筒ケースの外周面に捲回された電磁誘導コイルと、
前記非磁性筒ケース内にその長手方向に往復移動可能に配設され、当該移動方向に着磁された永久磁石と、
前記永久磁石の移動方向における一端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて固着された第1の磁気漏洩防止用磁石と、
前記永久磁石の移動により、前記電磁誘導コイルに生じた電流を整流する整流回路と、
前記整流回路により整流された電流を蓄電する蓄電手段とを、有し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の前記移動方向と直交する方向の断面の外縁形状は円形状であり、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径を、前記永久磁石の断面半径と略同一にし、
前記永久磁石の前記断面における前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、断面における前記非磁性筒ケースの前記移動方向における長さよりも小さく設定し、
前記第1の磁気漏洩防止用磁石の厚さを、前記第1の磁気漏洩防止用磁石の断面半径の25%?90%に設定し、
前記永久磁石の移動方向における他端側に位置する非磁性筒ケースの端部の外側に、前記整流回路及び前記蓄電手段を設けたことを特徴とする振動発電機。」


(2-1)新規事項について
本件補正後の請求項1には、「前記永久磁石の前記断面における前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、前記断面における前記非磁性筒ケースの前記移動方向における長さよりも小さく設定」と記載されているから、本件補正後の請求項1に記載された永久磁石は、移動方向の厚さが永久磁石の断面半径よりも大きく非磁性筒ケースの移動方向における長さよりも僅かでも小さければ、如何なる長さでも良いこととなる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

当初明細書等には、
a「非磁性体にて形成される非磁性筒ケースと、
前記非磁性筒ケースの外周面に捲回された電磁誘導コイルと、
前記非磁性筒ケース内にその長手方向に往復移動可能に配設され、当該移動方向に着磁された永久磁石と、
前記永久磁石の移動方向における一端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて設けられた第1の磁気漏洩防止用磁石と、
を有することを特徴とする振動発電機。」(【請求項1】)

b「上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、非磁性体にて形成される非磁性筒ケースと、前記非磁性筒ケースの外周面に捲回された電磁誘導コイルと、前記非磁性筒ケース内にその長手方向に往復移動可能に配設され、当該移動方向に着磁された永久磁石と、前記永久磁石の移動方向における一端に、前記永久磁石と同極が対向する向きにて設けられた第1の磁気漏洩防止用磁石と、を有することを特徴とする。」(【0007】)

c「請求項1に記載の発明によると、永久磁石の端面から永久磁石の移動方向に放射される磁力線が第1の磁気漏洩防止用磁石から放射される磁力線によって永久磁石の移動方向と直交する方向に曲げられる。また、第1の磁気漏洩防止磁石の端面から永久磁石の移動方向に放射される磁力線が、永久磁石と第1の磁気漏洩防止磁石との境界面付近の強い磁場に引き寄せられるため、移動方向の磁力線の磁束密度が減少する。このため、永久磁石の磁性体への吸着が防止される。すなわち、永久磁石の磁力線が移動方向に延びることを抑え、確実に発電することが可能となる。また、本発明の振動発電機の永久磁石の端面から放射される磁力線の磁束密度を減少させることが可能となるので、永久磁石の移動方向に電気機器又は電子機器が配置される状況では、永久磁石の磁気漏洩による電気機器又は電子機器の動作不良を回避し、機器の誤動作を防止することができる。」(【0014】)

d「非磁性筒ケース1内には、永久磁石3が非磁性筒ケース1の長手方向に往復移動可能に配設されている。永久磁石3は、前記移動方向に着磁されている。第1の実施形態では、永久磁石3の移動方向の両端に、第1の磁気漏洩防止用磁石4と第2の磁気漏洩防止用磁石5とが固着されている。両磁石4、5は、永久磁石3と同極が対向するように配置されている。この構造による効果は後で詳細に説明する。永久磁石3の両端への第1の磁気漏洩防止用磁石4及び第2の磁気漏洩防止用磁石5の固着構造には、ネジ止め、接着、又は金具による固定が含まれる。永久磁石3が非磁性筒ケース1内を往復移動すると、電磁誘導コイル2に、誘導電流が生じる。本実施形態では、永久磁石3、第1の磁気漏洩防止用磁石4、及び第2の磁気漏洩防止用磁石5は円柱形状であり、これら磁石の横断面の外縁形状は円形状である。」(【0024】)

e「次に図4を用いて、磁気漏洩防止用磁石4の厚さを変化させた場合に、永久磁石3及び磁気漏洩防止用磁石4から放射される磁力線について説明する。ここで、磁気漏洩防止磁石4の厚さは、永久磁石3の移動方向における寸法である。なお、図4の例では、永久磁石3と磁気漏洩防止用磁石4は、同種の磁石である。永久磁石3の移動方向と直交する方向におけるこれら磁石の横断面の外縁形状は円形状である。また、永久磁石3と磁気漏洩防止用磁石4とは、同一半径であり、その半径は2mmである。なお、図4では、永久磁石3及び磁気漏洩防止用磁石4の移動方向を矢印にて示す。
図4の(A)に示されるように、磁気漏洩防止用磁石4を設けない場合には、前述したように、永久磁石3の端面から永久磁石3の移動方向へ磁力線が漏洩してしまう。
図4の(C)に示されるように、磁気漏洩防止用磁石4の厚さが3.0mmの場合には、磁気漏洩防止用磁石4の磁力が強すぎる。このため、磁気漏洩防止用磁石4の端面から永久磁石3の移動方向に磁力線が放射されてしまう。
図4の(B)に示されるように、磁気漏洩防止用磁石4の厚さが1.0mmの場合には、磁気漏洩防止用磁石4の磁力が適度であり、永久磁石3の端面から永久磁石3の移動方向へ磁力線が漏洩することなく、磁気漏洩防止用磁石4の端面から永久磁石3の移動方向に磁力線が殆ど放射されることが無い。」(【0028】)

f「(第2の実施形態)
以下、第1の実施形態の振動型発電機20と異なる点について、第2の実施形態の振動型発電機30を説明する。第1の実施形態の振動型発電機20では、永久磁石3の両端に、それぞれ、第1の磁気漏洩防止用磁石4及び第2の磁気漏洩防止用磁石5を設けているが、第2の実施形態の振動型発電機30では、永久磁石3の一端のみに第1の磁気漏洩防止用磁石4を設けている。図6に示される実施形態では、整流蓄電部10は非磁性筒ケース1の一端の外側に配設されている。このため、非磁性筒ケース1の一側端と+電極6との距離aが離れ、結果として、永久磁石3の一端と接点金具61との距離も離れる。前記距離aが十分な場合には、整流蓄電部10が配設されている側に磁気漏洩防止用磁石を設けなくても、永久磁石3が接点金具61に吸着されることがない。このように、前記距離aが十分に離れている場合には、整流蓄電部10と反対側の永久磁石3の一端のみに第1の漏洩防止用磁石4を設けるだけで、永久磁石3の接点金具61、62への固着を防止することが可能となる。」(【0031】)

g「(総括)
以上説明した本発明の技術的思想は、電池型でない振動発電機にも適用可能なことは言うまでもない。本発明の技術的思想によれば、振動型発電機の永久磁石の端面から放射される磁力線の磁束密度を減少させることが可能となるので、永久磁石の磁気漏洩による電気機器又は電子機器の動作不良を回避することができる。以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う振動発電機もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。つまり、本発明のように、非磁性筒ケース、電磁誘導コイル、永久磁石で構成され、その永久磁石の移動方向側の両端の少なくとも一端に、磁性金属の接点金具などの磁性体が配置されるような構成であれば何でも適用可能である。例えば、非磁性筒ケース又は永久磁石の断面形状を、円形に限らず、楕円形、又は四角形等の多角形にしても差し支えない。」(【0032】)

h 図1、図6には、非磁性筒ケースの永久磁石移動方向中央部にコイルを捲回固定することが記載されている。

と記載されているにすぎず、本願は、永久磁石の移動方向端部に磁気漏洩防止用磁石を固着することが前提であるので、永久磁石の移動方向の厚さが非磁性筒ケースの移動方向における長さよりも僅かに小さいだけでは、永久磁石の移動方向端部に磁気漏洩防止用磁石を固着すれば非磁性筒ケースに収納することができないから、永久磁石が移動方向の厚さが永久磁石の断面半径よりも大きく非磁性筒ケースの移動方向における長さよりも僅かでも小さければ如何なる長さでも良いことは、図面を参照しても記載も示唆もない。
上述のように、本件補正は新規事項の追加に該当するが、仮に、当該記載が、永久磁石に第1及び第2の磁気漏洩防止用磁石を加えた厚さが、断面における非磁性筒ケースの移動方向における長さよりも僅かでも小さければ如何なる長さでも良いことを意味するものとして更に検討する。本願は、永久磁石及び第1及び第2の磁気漏洩防止用磁石が、非磁性筒ケース内を移動して、磁束が非磁性筒ケースの永久磁石移動方向中央部に捲回固定されたコイルを横切ることにより発電するから、例えば、非磁性筒ケースの長さが10cm、永久磁石及び第1及び第2の磁気漏洩防止用磁石の合計長さが9.8cmでは、振動が殆ど発生しないので主磁束が殆どコイルを横切らず、十分な発電ができないから、この様な振動発電機を想定しているとは考えられないので、永久磁石に第1及び第2の磁気漏洩防止用磁石を加えた厚さが、断面における非磁性筒ケースの移動方向における長さよりも僅かでも小さければ如何なる長さでも良いことは、図面を参照しても記載も示唆もない。

したがって、永久磁石は、移動方向の厚さが永久磁石の断面半径よりも大きく非磁性筒ケースの移動方向における長さよりも僅かでも小さければ、如何なる長さでも良いことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
なお、請求項5も同様である。


(2-2)目的要件について
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。

本件補正前後の請求項数は5であり、本件補正前後の請求項2-4は従属項であってその記載は同じであり、本件補正前後の請求項1、5は何れも独立項であるから、本件補正前の請求項1は本件補正後の請求項1に、一応対応する。

永久磁石の移動方向の厚さに関し、本件補正前の請求項1は「前記永久磁石の前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、前記永久磁石の断面半径の4倍よりも小さく設定し」ていたものが、本件補正後の請求項1は「前記永久磁石の前記断面における前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、前記断面における前記非磁性筒ケースの前記移動方向における長さよりも小さく設定し」ている。これは、永久磁石の移動方向の厚さは、本件補正前の請求項1は、最長でも永久磁石の断面半径の4倍よりも小さかったものが、本件補正後の請求項1は、非磁性筒ケースの移動方向における長さよりも小さければ良いこととなり、永久磁石の断面半径の4倍以上のものが含まれることとなり、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しないから、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。なお、請求項5も同様である。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。


(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第17条の2第5項第2号の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、「2.[理由](1)」に記載した平成27年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(1)当審の最後の拒絶の理由
当審で平成27年5月20日付で通知した最後の拒絶の理由I、IIの概要は以下のとおりである。
「I 平成27年5月7日付でした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1には、「前記永久磁石の前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、前記永久磁石の断面半径の4倍よりも小さく設定し」と記載されており、永久磁石の移動方向の厚さは、永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、永久磁石の断面半径の4倍よりも小さいこととなる。

そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。

願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書には、永久磁石の移動方向の厚さと、永久磁石の断面半径との寸法関係について記載は無い。願書に最初に添付した図面の図1、3、4、6には、永久磁石の断面図が記載されてはいるが、永久磁石の移動方向の厚さと、永久磁石の断面半径との寸法関係について記載は無い。
請求人は、審判請求書において、『「前記永久磁石の前記移動方向の厚さを、前記永久磁石の断面半径よりも大きく設定し、」との限定を追加する補正を行っております。この補正は、例えば、出願当初の本願明細書における、図1,3,4,6,7などに基づくものであり』と主張し、平成27年5月7日付意見書において、「(B)永久磁石の移動方向の厚さが、永久磁石の断面半径の4倍よりも小さいことを限定。」、「上記(B)の補正は、出願当初の本願明細書における、図1,3,4,6などを根拠とします。」と主張し、請求項1の当該補正は図面を根拠とするとしている。
しかし、願書に添付される図面は設計図ではないことを勘案すれば、図1、3、4、6の永久磁石の断面図に基づく当該補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。なお、請求項5も同様である。


II この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)永久磁石の移動方向の厚さは、永久磁石の断面半径よりも大きく、且つ、永久磁石の断面半径の4倍よりも小さいことは、発明の詳細な説明に実質的に開示されておらず、出願時の技術常識に照らしても、本件補正後の請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、本件補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。なお、請求項5も同様である。」


(2)最後の拒絶の理由についての判断
(ア)理由Iについて
平成27年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、5に記載された事項は、審判請求書、平成27年5月7日付意見書を参照しても、平成27年5月20日付の最後の拒絶の理由Iに示したとおり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。
したがって、平成27年5月7日付でした手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(イ)理由IIについて
平成27年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、5の記載は、審判請求書、平成27年5月7日付意見書を参照しても、平成27年5月20日付の最後の拒絶の理由IIに示したとおり、出願時の技術常識に照らしても、平成27年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、5に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、平成27年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
したがって、平成27年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、5の記載は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


4.むすび
したがって、平成27年5月7日付でした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、平成27年5月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、5の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-18 
結審通知日 2015-09-24 
審決日 2015-10-30 
出願番号 特願2011-534199(P2011-534199)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (H02K)
P 1 8・ 572- WZ (H02K)
P 1 8・ 537- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 振動発電機  

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