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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B05B |
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管理番号 | 1309045 |
審判番号 | 不服2014-4665 |
総通号数 | 194 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-11 |
確定日 | 2015-12-24 |
事件の表示 | 特願2009-508233「コーティング設備およびコーティング設備の作動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日国際公開、WO2007/131660、平成21年10月22日国内公表、特表2009-536872〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2007年5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年5月12日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月11日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成21年1月13日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文が提出され、平成24年1月13日付けで拒絶理由が通知され、同年4月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月25日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成25年4月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月15日付けで同年4月26日付け手続補正書でした補正を却下する補正の却下の決定がされるとともに同日付けで拒絶査定がされ、平成26年3月11日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成27年1月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成27年5月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし54に係る発明は、平成27年5月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成26年3月11日に提出された手続補正書により補正された明細書及び平成21年1月13日に提出された図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし54に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 コーティング設備であって、 複数のコーティング対象(1)を、前記コーティング設備を通して順次搬送する搬送経路(2,12)と、 前記コーティング対象(1)を処理する複数の処理ステーション(13?17,18?22,23?27)と、 を含み、 前記搬送経路(2,12)は複数の並列分岐(5?9,30?33,35?37,54?57)に分岐しており、 前記処理ステーション(13?17,18?22,23?27)の少なくとも1つが、それぞれの並列分岐に配置されており、 前記搬送経路に到達する前記コーティング対象は、前記搬送経路(2,12)の分岐する前の部分に配置されており前記コーティング対象を識別する中央読取点により、工程定義パラメーターに従って、前記搬送経路の並列分岐の間で分配され、 前記工程定義パラメーターは、 a)コートされる前記コーティング対象の種類、 b)要求されるコーティングの質、 c)塗装されるコーティング剤の爆発の危険性および/または火災の危険性、および/または、 d)コーティング剤特有の塗装パラメーター、 を含む、 ことを特徴とするコーティング設備。」 第3 引用文献の記載等 1 引用文献の記載 当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開平5-146724号公報(以下、「引用文献」という。)には、「塗装設備」に関して、図面とともに概ね次の記載(以下、順に、「記載1a」ないし「記載1c」という。)がある。 1a 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、塗装ブースと、この塗装ブースを縦貫するワーク搬送用コンベヤとを備えた塗装設備の改良に関する。」(段落【0001】) 1b 「【0009】図1において、塗装ブース10の入り口部位および出口部位には、それぞれ分岐ゾーン20および集合ゾーン30が設けられている。オーバーヘッドコンベヤ40は、上記分岐ゾーン20で2つの経路41および42に分岐されている。個々の分岐経路41および42は、それぞれ塗装ブース10の一方の内側壁11および他方の内側壁12に沿って配設されており、それらの終端は上記集合ゾーン30において集合されている。 【0010】図1のA-A断面図である図2に示すように、上記オーバーヘッドコンベヤ40は、上部ガイドレール43と下部ガイドレール44を備え、上部ガイドレール43は図示していない駆動チェーンに連結された走行体45を、また下部ガイドレール44はハンガー46が垂下されたフリー走行体47をそれぞれ走行可能に支障している。 【0011】上記走行体45は、上記駆動チェーンに所定の間隔で取付けられており、この駆動チェーンより与えられる駆動力により上部ガイドレール43に沿って移動する。そして、この走行体45は、図示していないカムドッグを上記フリー走行体47に係合させることによって、該走行体47と一体移動する。 【0012】オーバーヘッドコンベヤ40の分岐点P1および集合点P2には、それぞれ移乗機構48および49が設けられている。移乗機構48は、分岐点P1に到達した上記フリー走行体47を、流体圧シリンダ等のアクチュエータの作動によって分岐経路41および42に選択的に移乗させる作用をなす。また、移乗機構49は、各分岐経路41,42を介して集合点P2に到達した上記フリー走行体47を集合点P2よりも下流の部位に移乗させる作用をなす。なお、移乗機構48および49の構成は公知であるので、その詳細についての説明は省略する。 【0013】塗装ブース10内には、自動塗装機50が分岐経路41および42間に位置する態様で配設されている。この自動塗装機50は、互いに異なる色彩の塗料を吹付ける塗装ガン51および52を備え、塗装ガン51は分岐経路41側に、また塗装ガン52は分岐経路42側にそれぞれ向けられている。」(段落【0009】ないし【0013】) 1c 「【0015】以下、この実施例の作用について説明する。上記オーバーヘッドコンベヤ40の分岐点P1には、例えば赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aが順次搬入され、ついで白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bが順次搬入される。つまり塗装色を基準とするロッド単位でワークが搬入される。 【0016】一群のワーク70Aの先頭に位置するワークが分岐ゾーン20の直前の位置に到達すると、該位置に設けられた図示していない経路選択バルブが作業員により操作され、これにより移乗機構48が分岐経路42を選択する。また、上記位置に設けられた図示していない塗装ガン作動スイッチが作業員により操作されて、自動塗装機50における白色塗装用塗装ガン52が起動される。 【0017】この結果、分岐点P1に到達したワーク70Aは、分岐経路42に移乗して塗装ブース10内を移動する。そして、塗装ガン52の側近を通過する間に白色の吹付け塗装が施され、その後、塗装作業員80が携帯する塗装ガン90によって塗り残し箇所の吹付け塗装が施される。 【0018】塗装ブース10内にも、図示していない塗装ガン作動スイッチが設けられており、塗装作業員80は一群のワーク70Aの最後尾に位置するワークが自動塗装機50を通過した時点で上記スイッチを操作して、塗装ガン52の吹付け動作を停止させる。 【0019】ところで、上記一群のワーク70Aの最後尾に位置するワークが分岐点P1に到達した時点では、赤色の塗装を施すべき一群のワーク70Bの先頭に位置するワークが分岐ゾーン20の直前の位置に到達している。この時点においては、分岐ゾーン20の近傍に位置する作業員により上記経路選択バルブが操作されて、分岐経路41が選択される。また、上記塗装ガン作動スイッチが操作されて、自動塗装機50における赤色塗装用塗装ガン51が起動される。 【0020】このような操作が行われると、分岐点P1に到達したワーク70Bは分岐経路42に移乗して塗装ブース10内を移動し、その移動中に塗装ガン51よび携帯塗装ガン90による白色の吹付け塗装が施される。なお、塗装作業員80は、一群のワーク70Bの最後尾に位置するワークが自動塗装機50を通過した時点で塗装ガン51の吹付け動作を停止させる。 【0021】かくして、この実施例によれば、コンベヤ40の分岐点P1に到達したワーク70を移乗手段48によって塗装色に対応した分岐経路に移乗させ、その分岐経路で所定の色の塗装をワーク70に施すことができる。したがって、異色の塗装を施す一群のワーク70A,70B間に色替え準備のための間隔を設ける必要がなく、これによって生産性が著しく向上する。 【0022】上記実施例では、塗装ブース10外の作業員によって移乗手段48を手動で切替え操作し、また、該作業員および塗装ブース10内の作業員80によって自動塗装機50を手動で操作しているが、これらを自動制御することも当然可能である。その場合、例えば、一群のワーク70Aおよび70Bの先頭に位置するワーク吊下用ハンガー46に塗装色を指定する標識をそれぞれ付設するとともに、該標識を読み取るための標識検出センサを分岐ゾーン20の直前位置に設け、該センサの出力信号に基づいて移乗手段48の経路選択用アクチュエータを制御する。また、吹付けガン51,52の直前位置にワーク検出用のセンサをそれぞれ設け、これらのセンサのオン信号に基づいて吹付けガン51,52を選択起動させるとともに、該各センサのオフ信号に基づいて吹付けガン51,52の吹付け動作を選択停止させる。なお、吹付けガン51,52の選択起動を上記標識検出センサの出力信号に基づいて行うことも可能である。 【0023】上記実施例では、2つの分岐経路41,42を設けているが、3以上の分岐経路を設けることも可能であり、その場合には、個々の分岐経路にワークを選択的に移乗させる機能を移乗手段48に持たせるとともに、それらの分岐経路に対応した専用の吹付けガンを設置する必要がある。」(段落【0015】ないし【0023】) 2 引用文献の記載事項 記載1aないし1c及び図面の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていると認める(以下、順に、「記載事項2a」ないし「記載事項2f」という。)。 2a 記載1aの「塗装設備の改良に関する。」(段落【0009】)及び図面によると、引用文献には、塗装設備が記載されている。 2b 記載1aの「ワーク搬送用コンベヤとを備えた塗装設備の改良に関する。」(段落【0001】)、記載1bの「図1において、塗装ブース10の入り口部位および出口部位には、それぞれ分岐ゾーン20および集合ゾーン30が設けられている。オーバーヘッドコンベヤ40は、上記分岐ゾーン20で2つの経路41および42に分岐されている。」(段落【0009】)及び記載1cの「上記オーバーヘッドコンベヤ40の分岐点P1には、例えば赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aが順次搬入され、ついで白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bが順次搬入される。」(段落【0015】)並びに図面を記載事項2aとあわせてみると、引用文献には、塗装設備が、赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aと白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bを、塗装設備を通して順次搬送する分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベア40を含むことが記載されている。 2c 記載1cの「この結果、分岐点P1に到達したワーク70Aは、分岐経路42に移乗して塗装ブース10内を移動する。そして、塗装ガン52の側近を通過する間に白色(当審注:「白色」は「赤色」の誤記である。)の吹付け塗装が施され、その後、塗装作業員80が携帯する塗装ガン90によって塗り残し箇所の吹付け塗装が施される。」(段落【0017】)及び「このような操作が行われると、分岐点P1に到達したワーク70Bは分岐経路42に移乗して塗装ブース10内を移動し、その移動中に塗装ガン51よび携帯塗装ガン90による白色の吹付け塗装が施される。」(段落【0020】)並びに図面を記載事項2a及び2bとあわせてみると、引用文献には、塗装設備が、赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aと白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bを塗装する塗装ガン52と塗装ガン51を含むことが記載されている。 2d 記載1bの「図1において、塗装ブース10の入り口部位および出口部位には、それぞれ分岐ゾーン20および集合ゾーン30が設けられている。オーバーヘッドコンベヤ40は、上記分岐ゾーン20で2つの経路41および42に分岐されている。」(段落【0009】)及び「塗装ガン51は分岐経路41側に、また塗装ガン52は分岐経路42側にそれぞれ向けられている。」(段落【0013】)並びに図面を記載事項2aないし2cとあわせてみると、引用文献には、分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベヤ40は2つの分岐経路41および42に分岐していることが記載されている。 2e 記載1bの「塗装ブース10内には、自動塗装機50が分岐経路41および42間に位置する態様で配設されている。この自動塗装機50は、互いに異なる色彩の塗料を吹付ける塗装ガン51および52を備え、塗装ガン51は分岐経路41側に、また塗装ガン52は分岐経路42側にそれぞれ向けられている。」(段落【0013】)及び図面を記載事項2aないし2dとあわせてみると、引用文献には、塗装ガン52と塗装ガン51の内、塗装ガン52が分岐経路42に、塗装ガン51が分岐経路41に配置されていることが記載されている。 2f 記載1cの「上記オーバーヘッドコンベヤ40の分岐点P1には、例えば赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aが順次搬入され、ついで白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bが順次搬入される。」(段落【0015】)、「一群のワーク70Aの先頭に位置するワークが分岐ゾーン20の直前の位置に到達すると、該位置に設けられた図示していない経路選択バルブが作業員により操作され、これにより移乗機構48が分岐経路42を選択する。」(段落【0016】)、「ところで、上記一群のワーク70Aの最後尾に位置するワークが分岐点P1に到達した時点では、赤色の塗装を施すべき一群のワーク70Bの先頭に位置するワークが分岐ゾーン20の直前の位置に到達している。この時点においては、分岐ゾーン20の近傍に位置する作業員により上記経路選択バルブが操作されて、分岐経路41が選択される。」(段落【0019】)、「かくして、この実施例によれば、コンベヤ40の分岐点P1に到達したワーク70を移乗手段48によって塗装色に対応した分岐経路に移乗させ、その分岐経路で所定の色の塗装をワーク70に施すことができる。」(段落【0021】)及び「上記実施例では、塗装ブース10外の作業員によって移乗手段48を手動で切替え操作し、また、該作業員および塗装ブース10内の作業員80によって自動塗装機50を手動で操作しているが、これらを自動制御することも当然可能である。その場合、例えば、一群のワーク70Aおよび70Bの先頭に位置するワーク吊下用ハンガー46に塗装色を指定する標識をそれぞれ付設するとともに、該標識を読み取るための標識検出センサを分岐ゾーン20の直前位置に設け、該センサの出力信号に基づいて移乗手段48の経路選択用アクチュエータを制御する。」(段落【0022】)並びに図面を記載事項2aないし2eとあわせてみると、引用文献には、分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベヤ40に搬入される赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aと白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bは、分岐ゾーン20の直前位置に設けられており塗装色を指定する標識を読み取る標識検出センサにより、指定された塗装色に対応して、分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベヤ40の2つの分岐経路41および42を選択して移乗されることが記載されている。 3 引用発明 記載1aないし1c、記載事項2aないし2f及び図面の記載を整理すると、引用文献には、次の発明が記載されていると認める(以下、「引用発明」という。)。 「塗装設備であって、 赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aと白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bを、前記塗装設備を通して順次搬送する分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベヤ40と、 前記赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aと白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bを塗装する塗装ガン52と塗装ガン51と、 を含み、 前記分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベア40は2つの分岐経路41および42に分岐しており、 前記塗装ガン52と塗装ガン51の内、塗装ガン52が分岐経路42に、塗装ガン51が分岐経路41に配置されており、 前記分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベア40に搬入される赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aと白色の塗装を施すべきN個のワーク70Bは、分岐ゾーン20の直前位置に設けられており塗装色を指定する標識を読み取る標識検出センサにより、指定された塗装色に対応して、分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベア40の2つの分岐経路41および42を選択して移乗される塗装設備。」 第4 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明における「塗装設備」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「コーティング設備」に相当し、以下、同様に、「赤色の塗装を施すべきM個のワーク70Aと白色の塗装を施すべきN個のワーク70B」は「複数のコーティング対象(1)」に、「分岐ゾーン20の上流側のオーバーヘッドコンベヤ40と集合ゾーン30の下流側のオーバーヘッドコンベヤ40」は「搬送経路(2,12)」に、「塗装する」は「処理する」に、「塗装ガン52と塗装ガン51」は「複数の処理ステーション(13?17,18?22,23?27)」に、それぞれ、相当する。 また、本願発明における「複数の並列分岐(5?9,30?33,35?37,54?57)」は、平成21年1月13日に提出された明細書の翻訳文の段落【0012】の「さらに、本発明の文脈で用いられる”搬送経路の並列分岐”という用語は、各分枝が、幾何学的な意味で互いに平行に向かい合うという正確な幾何学的意味に限定されない。むしろ、この用語は、搬送経路の各分岐でコーティング対象の並列処理が可能であることだけを意味している。」という記載によると、コーティング対象の並列処理が可能な複数の分岐のことと説明されているところ、引用発明における「2つの分岐経路41および42」においては、分岐経路41におけるワーク70Bの塗装と分岐経路42におけるワーク70Aの塗装を並列して行うことが可能であるから、引用発明における「2つの分岐経路41および42」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「複数の並列分岐(5?9,30?33,35?37,54?57)」に相当する。 さらに、引用発明における「前記塗装ガン52と塗装ガン51の内、塗装ガン52が分岐経路42に、塗装ガン51が分岐経路41に配置されており」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、「前記処理ステーション(13?17,18?22,23?27)の少なくとも1つが、それぞれの並列分岐に配置されており」に相当し、以下、同様に、「搬入される」は「到達する」に、「分岐ゾーン20の直前位置に設けられており」は「前記搬送経路(2,12)の分岐する前の部分に配置されており」に、「塗装色を指定する標識を読み取る標識検出センサ」は「前記コーティング対象を識別する中央読取点」に、それぞれ、相当する。 さらにまた、引用発明における「指定された塗装色」は、塗装工程を定義するものであり、「工程定義パラメータ」といえるから、引用発明における「指定された塗装色」は、本願発明における「a)コートされる前記コーティング対象の種類、 b)要求されるコーティングの質、 c)塗装されるコーティング剤の爆発の危険性および/または火災の危険性、および/または、 d)コーティング剤特有の塗装パラメーター」を含む「工程定義パラメータ」と、「工程定義パラメータ」という限りにおいて一致する。 さらにまた、引用発明における「対応して」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「従って」に相当し、以下、同様に、「2つの分岐経路41および42を選択して移乗され」は「並列分岐の間で分配され」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。 「コーティング設備であって、 複数のコーティング対象を、前記コーティング設備を通して順次搬送する搬送経路と、 前記コーティング対象を処理する複数の処理ステーションと、 を含み、 前記搬送経路は複数の並列分岐に分岐しており、 前記処理ステーションの少なくとも1つが、それぞれの並列分岐に配置されており、 前記搬送経路に到達する前記コーティング対象は、前記搬送経路の分岐する前の部分に配置されており前記コーティング対象を識別する中央読取点により、工程定義パラメーターに従って、前記搬送経路の並列分岐の間で分配されるコーティング設備。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点> 「工程定義パラメータ」に関して、本願発明においては、「a)コートされる前記コーティング対象の種類、 b)要求されるコーティングの質、 c)塗装されるコーティング剤の爆発の危険性および/または火災の危険性、および/または、 d)コーティング剤特有の塗装パラメーター」を含む「工程定義パラメータ」であるのに対して、引用発明においては、「指定された塗装色」である点(以下、「相違点」という。)。 第5 相違点に対する判断 そこで、相違点について、以下に検討する。 本願発明における「コーティング剤特有の塗装パラメーター」に関して、平成21年1月13日提出の明細書の翻訳文の段落【0067】に「搬送経路の異なる並列分岐の間にコーティング対象を分配するときに、コーティング剤特有の塗装パラメーターが考慮されてもよい。」と記載されているのみで、「コーティング剤特有の塗装パラメーター」が、具体的にどのようなものか明らかではないが、一般に、塗料が水性であるか油性であるか又どのような条件で硬化するものかという塗料固有の特性は、「コーティング剤特有の塗装パラメーター」であるといえる。 他方、塗料が水性であるか油性であるか又どのような条件で硬化するものかという塗料固有の特性に基づく塗装条件に応じて、塗装ラインを選択することは周知(必要であれば、下記1を参照。以下、「周知技術」という。)である。 したがって、引用発明において、周知技術を適用し、「工程定義パラメータ」として、「指定された塗装色」に代えて、塗料が水性であるか油性であるか又どのような条件で硬化するものかという塗料固有の特性等の「コーティング剤特有の塗装パラメーター」を採用することによって、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明及び周知技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。 1 特開平4-227885号公報の記載 本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開平4-227885号公報には、「塗装方法および塗装装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。)。 ・「【0010】 【発明が解決しようとする課題】ところで、最近では、ワ-ク例えば自動車ボディに対する塗装を行なう場合に、要求される塗装条件が種々相違することが多くなっている。例えば、用いられる塗料そのものの相違(例えば油性塗料と水性塗料)、塗料の塗布回数の相違(例えば1回塗りと2回塗り)、塗料の膜厚の相違、色分けの相違(例えば1色塗りと2色塗り分け)、ワ-クの回転必要性の有無の相違等、要求される塗装条件が極めて多岐に渡る傾向にある。 【0012】このように、要求される塗装条件の種類が多くなってくると、1つの塗装ラインでは対応し切れず、複数の塗装ライン用意する必要がある。このような複数の塗装ラインの必要性はまた、同じ塗装条件であったとしても、大量生産する際の要求からも必要となる。」(段落【0010】及び【0012】) ・「【0054】以上のような構成において、被塗物としてのワ-クWは、ラインMBL上を搬送台車Dによって搬送されて第1移載装置J1に到達され、この第1移載装置J1によって共通ラインKLに移載される。共通ラインKLに移載されたワ-クWは、1つのワ-クW毎に要求される塗装条件等に応じて分類されて、第1?第3の3つのラインのうちいずれか1つのラインに供給される。 【0056】第1?第3の各塗装ラインCL1?CL3を流れた後のワ-クWは、合流部Y1あるいYはY2を経て、共通ラインKLを利用して第2移載装置J2へと搬送され、この第2移載装置によって、共通ラインKLから再び乾燥用ラインMBLへと移載される。第2移載装置J2によって乾燥用ラインMBLへと移載されたワ-クWは、本乾燥炉MBで本乾燥すなわち最終的は焼付乾燥が行なわれることになる。 【0058】表1には、各塗装ラインCL1?CL3で行なわれる塗装条件を示してある。 【0059】 【表1】 」(段落【0054】ないし【0059】) 第6 むすび 上記第5のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-07-22 |
結審通知日 | 2015-07-28 |
審決日 | 2015-08-11 |
出願番号 | 特願2009-508233(P2009-508233) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 篠原 将之 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
槙原 進 加藤 友也 |
発明の名称 | コーティング設備およびコーティング設備の作動方法 |
代理人 | 森川 泰司 |
代理人 | 木村 満 |
代理人 | 毛受 隆典 |