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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23G
管理番号 1309078
審判番号 不服2014-20120  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-06 
確定日 2015-12-24 
事件の表示 特願2010-161300「クレープ菓子の製造方法,クレープ菓子,および包材」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開,特開2011- 45362〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概略
本願は,平成22年7月16日(優先権主張平成21年7月31日)の出願であって,平成26年1月24日付けで拒絶の理由が通知され,平成26年4月1日付けで意見書の提出及び手続補正がなされたが,平成26年7月1日付けで拒絶の査定がなされた。これに対し,平成26年10月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされた。

第2 平成26年10月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成26年10月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
平成26年10月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
クレープ用の生地の半分の領域又は生地全体に,ストライプ状,網状,波状,およびドット状から選択される1以上の形状で具材を載せる第1載置工程と,
前記第1載置工程で載せた具材を挟むように前記生地を折りたたむ折りたたみ工程と,
前記折りたたみ工程によって露出した生地全体に,ストライプ状,網状,波状,およびドット状から選択される1以上の形状で具材を載せる第2載置工程と,
第2載置工程で載せた具材を,前記生地を折りたたむ,前記生地を巻く,またはこれらを組み合わせることによって前記生地で包む包容工程と,
を有するクレープ菓子の製造方法。」
と補正された(なお,下線は,本件補正により補正された箇所を示す。)。
上記補正は,まず,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「生地」が「クレーム用」であると記載されていたものを,「クレープ用」であるとするもので,これは,特許法17条の2第5項3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2載置工程」に関し,具材を載せる範囲を「生地全体」と限定するとともに,「包容工程」に関し,「第2載置工程で載せた具材を,前記生地を折りたたむ,前記生地を巻く,またはこれらを組み合わせることによって前記生地で包む」と包容の仕方を限定するもので,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,これは,特許法17条の2第5項2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

2 引用文献に記載された事項
(1) 原査定の拒絶の理由に示された引用文献1であり,本願優先日前に頒布された刊行物である,特開2006-81479号公報には,「クレープ菓子」に関し,以下の事項が記載されている。
ア 「略円板状をなす生地(10)の略1/2周の区画の少なくとも周縁(10c)付近に沿って具材(11)を載置し,
この具材(11)の載置区画の生地(10a)面に,具材(11)を載置していない区画の生地(10b)面を折り重ねて略半円状に形成すると共に,
この半円状体を,略円板状の生地(10)における半径(R)が母線方向(B)となるように略円錐状に巻回させて形成したことを特徴とするクレープ菓子。」(【請求項1】)
イ 「このように,従来形態のクレープ菓子では,生地の食感は外周部分のみから感じ取っており,この生地が厚くなったり重なったりして外周部が厚くなってしまう傾向にあり,柔らかな生地の食感を表現することが困難であった。
また,クレープ生地自体には配置する具材の味を引き立たせるため,余り濃厚な味を付けることはなく,どちらかと言うと裏方的な存在であった。そのため,このクレープ生地が厚くなると最初にクレープ生地を噛み込んだ時点では口のなかで生地の存在が大きく,食味の稀薄なものとなる傾向にあった。生地と具材がバランス良く混ざってクレープ特有の味を口の中で感じるのはある程度噛み込んだ後からであった。趣向品であるお菓子では,口に入れた早い時期からクレープ全体,さらには具材,トッピングとうまく混ざった食感と食味を創作することも求められる。しかし,上記した従来の巻き方や具材の配置では,そのズレが大きく,口の中でクレープ全体がバランスして混合して生じる特有の食感を感じる時間が短くなってしまうと言う欠点があった。」(【0003】)
ウ 「本願発明の特徴は,生地間に具材を挟むことで,複数層の生地と具材からなる新たな食感を提供することにある。生地で具材を挟んでから生地の中心を頂点として巻回することで,複数層の生地と具材からなるクレープ菓子が提供され,口に入れた早い時期からクレープ菓子全体,さらには具材,トッピングとうまく混ざった食感と食味が味わえることとなる。」(【0006】)
エ 「2つ折りして半円状とした生地間に具材を挟み,巻回して略円錐状としたことにより,生地と具材からなる複数層の渦巻き構造による新たな食感の新鮮さを提供することができる。従って,口に入れた早い時期からクレープ菓子全体,すなわち,生地,具材,トッピングとうまく混ざった食感と食味を提供することが可能となる。」(【0009】)
オ 「生地10の奥側区画10a(図面上における生地の上半分)には,具材11としてのペースト物11aを周縁10cに沿って連続的に載置する。また,奥側区画10aの内側部分には,ペースト物11aを半径方向あるいは放射方向に連続的または非連続的に載置する(図2)。
生地10の奥側区画10aに具材11を載置した後,生地10の手前側区画10b(図面上における生地の下半分)を,周縁10c同士が揃うように奥側区画10aに折り重ねて半円状とする(図3)。続いて,半円状となった生地10における半径Rが母線方向Bとなるように略円錐状に巻回していくと(図4,図5),中心10dを頂点とする略円錐状のクレープ菓子1となる。クレープ菓子1の底面10eには,生地10と具材11からなる複数層の渦巻き構造が露出することとなる。」(【0012】,【0013】,図1?5)
カ 「実施例では,具材11を奥側区画にのみ載置しているが,奥側と手前側の双方に具材11を載置することもできる。」(【0014】)
キ 上記の記載及び図面の記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「クレープ菓子1の生地10の奥側区画10a又は奥側区画10a及び手前側区画10bに,具材11としてのペースト物11aを周縁10cに沿って連続的に載置し,内側部分には,ペースト物11aを半径方向あるいは放射方向に連続的または非連続的に載置する工程と,
生地10に具材11を載置した後,生地10の手前側区画10bを,周縁10c同士が揃うように奥側区画10aに折り重ねて半円状とする工程と,
半円状となった生地10における半径Rが母線方向Bとなるように略円錐状に巻回していく工程と,
を有するクレープ菓子1の製造方法。」

(2) 原査定の拒絶の理由に示された引用文献2であり,本願優先日前に頒布された刊行物である,登録実用新案3087625号公報には,「クレープ生地及びクレープ」に関し,以下の事項が図面とともに記載されている。
ア 「図2には,前記生地20にトッピングを施す様子が示されている。まず,同図(A)に示すように,生地20を中央で半分に折る。そして,同図(B)に示すように,半月状に折った生地20の略中央部にトッピング26を施す。・・・そして,ナイフ18などでトッピング26の両脇に切れ込み28を入れ,その切れ込み28に従ってトッピング26を覆うように生地20を扇形に畳む。このようにして,同図(C)に示すクレープ30が出来上がる。」(【0013】,【図2】)

3 対比及び判断
(1) 引用発明における,「具材11としてのペースト物11aを周縁10cに沿って連続的に載置し,内側部分には,ペースト物11aを半径方向あるいは放射方向に連続的または非連続的に載置する」点は,引用文献1の図2,図6において見て取れる様相に照らしても,具材11をストライプ状に載置しているということができるから,引用発明の「・・・載置する工程」は,本願補正発明の「第1載置工程」に相当する。。
また,引用発明の「・・・折り重ねて半円状とする工程」は,その工程内容に照らして本願補正発明の「折りたたみ工程」に相当する。
そして,引用発明においては,半円状となった生地10に具材を載置していないから,「・・・略円錐状に巻回していく工程」は,具材を包容する工程ではない。
そうすると,本願補正発明と引用発明との一致点,相違点は次のとおりである。
(一致点)
「クレープ用の生地の半分の領域又は生地全体に,ストライプ状,網状,波状,およびドット状から選択される1以上の形状で具材を載せる第1載置工程と,
前記第1載置工程で載せた具材を挟むように前記生地を折りたたむ折りたたみ工程と,
を有するクレープ菓子の製造方法。」である点
(相違点)
本願補正発明は,さらに「前記折りたたみ工程によって露出した生地全体に,ストライプ状,網状,波状,およびドット状から選択される1以上の形状で具材を載せる第2載置工程」と,「第2載置工程で載せた具材を,前記生地を折りたたむ,前記生地を巻く,またはこれらを組み合わせることによって前記生地で包む包容工程」とを有するのに対し,引用発明においては,そのような特定はない点

(2) 上記相違点について検討する。
ア 引用文献2には,クレープ用の生地を半分に折った後,折った生地の略中央部に具材を配置し,この具材を覆うように生地を畳む点が記載されている(前記2(2))。
一般的に具材の種類や量を多くすることは好まれるが,その観点から,引用発明において,さらに具材を配置しようとすることは容易である。クレープ菓子を作る際,生地に対して具材をどのように載置するか等,クレープ菓子全体における具材や生地の配置に関し創意工夫することは,具材の種類や量,生地の質,種類,厚みなどに応じて通常行われており,当業者が適宜になし得るところ,引用発明は,口の中でクレープ菓子全体がバランスよく混合した食感,食味を味わうことを,希求しているものであるから(前記2(1)【0003】,【0006】),さらに具材を配置する場合に,採用される具材の種類や量,生地の種類や厚みなどに応じて,クレープ菓子全体における具材や生地の配置のバランスを適宜図るべきことは当然である。
そして,生地を折りたたんだ後に露出した生地に具材を配置すること,生地全体に具材を配置することは,クレープ菓子全体からみて具材が偏在せず,全体のバランスを図るとした引用発明の趣旨に沿うものといえ,合理的な選択肢であることは明らかである。
また,引用文献1には,クレープ生地が厚くなると最初にクレープ生地を噛み込んだ時点では口の中で生地の存在が大きく,食味の稀薄なものとなることが指摘されている(前記2(2)【0003】)。生地の厚みよっては,内側の生地と生地が直接重なる部分においても,同様にバランスが悪くなること,その部分に具材を配置することが好適であることは,当業者であれば容易に理解できる。
さらに,クレープ生地と具材とを交互に配したミルクレープや,生地と具材を巻いたロールケーキが知られていることに照らしても,クレープ菓子全体のバランスを考慮して,「生地10の奥側区画10a又は奥側区画10a及び手前側区画10bに,・・・載置する工程」と同様,生地を折りたたんだ後に露出した生地全体に具材を配置することは,当業者にとって格別困難なことではない。
そもそも,具材をどのように載置するかは,当業者が適宜に決定し得ることであるから,そうすると,引用文献2に記載された事項を参酌すれば,引用発明において上記相違点に係る本願補正発明の特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたものである。
本願補正発明の奏する効果をみても,引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測し得る範囲内のものであって,格別ではない。
イ なお,引用発明における,「具材11としてのペースト物11aを周縁10cに沿って連続的に載置し,内側部分には,ペースト物11aを半径方向あるいは放射方向に連続的または非連続的に載置する」点が,明確に具材11をストライプ状に載置しているということができず,仮にこの点で相違するとしても,クレープ菓子全体のバランスを考慮して,当業者が適宜なし得ることである。
ウ 請求人は,「本願発明の第1載置工程では生地の半分の領域又は生地全体に具材を載せ,載せた具材を挟むようにして生地を折りたたみ,第2載置工程では前記折りたたみによって露出した生地全体に具材を載せ,この具材を生地で包みようにしてクレープ菓子に仕上げているので,生地と生地との間には必ず具材が存在することになり,生地と生地とが直接重なる部分がほとんどなくなるため,食感に優れたクレープ菓子に仕上げることができる。」,「引用文献1に記載されたクレープ菓子では・・・生地と生地とが直接重なる部分が生じることになり・・・,また引用文献2に記載されたクレープ菓子にあっても・・・半円状に折った生地と生地とが直接重なる部分が必ず生じることになる。」,「このように,本願発明の製造方法で作られたクレープ菓子は,生地と生地との間には必ず具材が存在し,生地と生地とが直接重なる部分がなくなる点で,引用文献1及び引用文献2に記載された製造方法で作られたクレープ菓子とは明らかに異なっており,この構成上の相違により生じる食感の違いも明らかである。」,「上述した本願発明の構成は,引用文献1及び引用文献2に記載された発明から示唆されるものではなく,またクレープ菓子の食感も本願発明に特有のものであることから,引用文献1に記載の発明に,引用文献2に記載の発明を適用したとしても,本願発明の構成が当業者にとって容易に想到し得るものではなく,本願発明が進歩性を有することは明らかである。」と主張している。
しかし,既に述べたように,引用発明において,生地を折りたたんだ後に露出した生地全体に具材を配置することは,当業者が容易に想到できたものである。引用文献1にクレープ生地が厚くなると最初にクレープ生地を噛み込んだ時点では口の中で生地の存在が大きく,食味の稀薄なものとなることが指摘されていることからして(【0003】),生地と生地とが直接重なる部分がなくなることによる食感は,引用発明から十分に予測可能である。また,当業者はミルクレープやロールケーキの食感を熟知していることに照らしても,引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測できることである。
よって,請求人の主張は,採用することができない。
エ 以上を総合すると,本願補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3) 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,前記のとおり却下されたので,本願の請求項1?請求項5に係る発明は,平成26月4月1日付けの手続補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものであるが,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】
クレーム用の生地の半分の領域又は生地全体に,ストライプ状,網状,波状,およびドット状から選択される1以上の形状で具材を載せる第1載置工程と,
前記第1載置工程で載せた具材を挟むように前記生地を折りたたむ折りたたみ工程と,
前記折りたたみ工程によって露出した生地に,ストライプ状,網状,波状,およびドット状から選択される1以上の形状で具材を載せる第2載置工程と,
第2載置工程で載せた具材を前記生地で包む包容工程と,
を有するクレープ菓子の製造方法。」
なお,請求項1に記載された「クレーム用の生地」とは「クレープ用の生地」の誤記であるとして,以下検討する。

2 引用文献に記載された事項
引用文献に記載された事項は,前記第2・2のとおりである。

3 対比及び判断
本願補正発明は,「第2載置工程」に関し具材を載せる範囲を「生地全体」と限定し,「包容工程」に関し「第2載置工程で載せた具材を,前記生地を折りたたむ,前記生地を巻く,またはこれらを組み合わせることによって前記生地で包む」と包容の仕方を限定していたのに対し,本願発明は,これら具材を載せる範囲や包容の仕方を具体的に特定せずに拡張したものである(前記第2・1)。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項をすべて含み,さらに発明を特定するために必要な事項を減縮したものに相当する本願補正発明が,前記第2・3で検討したとおり,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明に対し拡張した事項を有する本願発明が,同様の理由により,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであることは明らかである。

4 以上のとおり,本願発明(請求項1に係る発明)は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
そして,本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができない以上,本願の請求項2?請求項5に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-05 
結審通知日 2015-10-13 
審決日 2015-10-27 
出願番号 特願2010-161300(P2010-161300)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23G)
P 1 8・ 121- Z (A23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川合 理恵小石 真弓  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 窪田 治彦
山崎 勝司
発明の名称 クレープ菓子の製造方法、クレープ菓子、および包材  

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