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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1309459
審判番号 不服2014-10638  
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-04 
確定日 2016-01-06 
事件の表示 特願2012-144782「残差生成方法及び装置、並びに復元画面生成方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-209965〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2006年4月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2005年4月18日 米国)を国際出願日とする特願2008-506386号の一部を平成24年6月27日に新たな出願としたものであって、平成26年1月22日に拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月4日に拒絶査定不服審判が請求され、請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年6月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年1月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3を削除し、請求項4ないし請求項6を新たな請求項1ないし請求項3とするものであって、請求項4に記載された、

「【請求項4】
動画像復号化装置により実行される復元画面生成方法において、
前記動画像復号化装置が、動画像符号化装置から伝送された1ビットフラグに基づき、所定の色空間を構成する色成分のそれぞれに独立して適用される第1の予測モード及び前記所定の色空間を構成する全ての色成分の一律に適用される第2の予測モードのうちの何れか一つによって予測画面を生成するステップと、
前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき復元画面を生成するステップとを含み、
前記フラグは前記第1の予測モード及び前記第2の予測モードのうちの何れか一つを表す、
ことを特徴とする復元画面生成方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、平成26年6月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】
A 動画像復号化装置により実行される復元画面生成方法において、
B 前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、符号化のために使用された色空間に関連する情報を取得するステップと、
C 前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、第1の予測モード及び第2の予測モードのうちの何れか一つを表す1ビットフラグをチェックするステップと、
D 前記動画像復号化装置が、前記色空間に関連する情報及び前記1ビットフラグに基づき、前記色空間を構成する色成分のそれぞれに独立して適用される前記第1の予測モード及び前記色空間を構成する全ての色成分に一律に適用される前記第2の予測モードのうちの何れか一つによって予測画面を生成するステップと、
E 前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき復元画面を生成するステップと、を含む、
F ことを特徴とする復元画面生成方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(下線は、審判請求人が補正箇所に付したものである。また、AないしFの記号は、説明のために当審にて付与したものであり、以下構成要件A、構成要件Bなどと称することにする。)

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、
本願発明に記載された「色空間」に関し、「前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、符号化のために使用された色空間に関連する情報を取得するステップ」により取得された「色空間に関連する情報」により「色空間」が特定されるものであることを限定し、
また、本願発明に記載された「1ビットフラグ」に関し、「前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、第1の予測モード及び第2の予測モードのうちの何れか一つを表す1ビットフラグをチェックするステップ」を記載することにより、「1ビットフラグ」が特定されるものであることを限定し、
そして、「予測画面を生成するステップ」に関し、「前記色空間に関連する情報及び前記1ビットフラグに基づき」予測画面を生成する構成に限定して特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用例及び周知例
(2-1)引用例の記載
原審の拒絶理由に引用された、特開2004-222027号公報(以下、「引用例」という。)には「画像符号化装置および方法、ならびに画像復号化装置および方法」として図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インタレース画像をフレーム内圧縮によって符号化する画像符号化装置および方法、ならびに復号化する画像復号化装置および方法に関するものである。」

イ.「【0002】
【従来の技術】
従来の代表的な画像符号化方式には、DCT(Discrete Cosine Transform)をベースとして、静止画を主に符号化するJPEG方式(Joint Photographic Coding Experts Group)、動画像に対してフレーム内符号化のみを行うDV方式(Digital Video)、動画像のフレーム間相関を利用したMPEG方式(Moving Picture image coding Experts Group)がある。
【0003】
JPEG方式を用いてインタレース画像を符号化するときには、通常、図5の(a)に示すように2つのフィールド画像を1ラインごとに並べてフレーム化してからフレーム画像として符号化を行う。DV方式では、基本的にJPEG方式と同様に、2つのフィールド画像を1ラインごとに並べてフレーム化してからフレーム画像として符号化を行う。しかし、画像の動きが大きい場合、演算単位である8×8画素のブロック単位で図5の(b)
に示すように、2つのフィールド(フィールド0、フィールド1)に分離し、フィールド0とフィールド1を加算した4×8画素のフィールド加算データ、フィールド0とフィールド1を減算した4×8画素のフィールド差分データを8×8画素ブロックの上下に配置し、それぞれに4×8DCTを行う。
【0004】
MPEG方式では、JPEG方式と同様に、2つのフィールド画像を1ラインごとに並べてフレーム化してからフレーム画像として符号化を行う。または、16×16画素のマクロブロックごとにフィールド分離し、フィールド0の2個の8×8画素ブロック、フィールド1の2個の8×8画素ブロックそれぞれに8×8DCTを行う。
【0005】
また、最新の符号化方式として、ウェーブレット変換をベースとしたJPEG2000(ISO/IEC 15444-1)方式が規格化されている。この方式は、JPEG方式と同様に静止画を対象とした符号化方式であり、インタレース画像を符号化するときには、通常、JPEG方式と同様に2つのフィールド画像を1ラインごとに並べてフレーム化してからフレーム画像として符号化を行う。また、インタレース画像を分離し、各フィールドを1フレームの上と下にそれぞれ配置して符号化を行うものもある(例えば特許文献1参照)。」

ウ.「【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1において、101は入力画像、102は入力画像101を2つのフィールド画像に分離するフィールド分離部、103はフィールド分離部102により2つに分離されたフィールド画像の輝度、色差成分それぞれの画素毎の差分を計算する差分計算部、104はフィールド分離部102、差分計算部103より出力された画像をJPEG2000規格で符号化を行う符号化部、105はJPEG2000規格に準拠したビットストリームである。
【0022】
本実施の形態では、JPEG2000方式を符号化する場合を例として説明する。JPEG2000方式では、JPEG方式、DV方式やMPEG方式と異なり、1?16384個のコンポーネントを個別に符号化することが許されている。JPEG方式、DV方式やMPEG方式では、輝度成分(Y)と色差成分(U、V)の3コンポーネント入力を想定しており、規格上これより多くのコンポーネントを取り扱うことはできない。
【0023】
以下、図面を参照して、本実施の形態の画像符号化装置の動作を説明する。フィールド分離部102は2つのフィールド画像を合成した入力画像101を、図5のように2つのフィールド画像に分離する。分離された2つのフィールド画像のうち、トップフィールド画像を参照フィールド画像、ボトムフィールド画像を対象フィールド画像とする。差分計算部103は、対象フィールド画像と参照フィールド画像の輝度、色差成分それぞれの各画素ごとに差分を計算して、フィールド差分画像を生成する。符号化部104は、コンポーネント0を参照フィールド画像の輝度成分(Y0)、コンポーネント1を参照フィールド画像の色差成分(U0)、コンポーネント2を参照フィールド画像の色差成分(V0)、コンポーネント3をフィールド差分画像の差分輝度成分(ΔY=Y1-Y0)、コンポーネント4をフィールド差分画像の差分色差成分(ΔU=U1-U0)、コンポーネント5をフィールド差分画像の差分色差成分(ΔV=V1-V0)とした6コンポーネントのフレーム画像として符号化を行い、JPEG2000規格に準拠したビットストリーム10
5を生成する。ここで、Y1、U1、V1はそれぞれ対象フィールド画像の輝度成分、色差成分である。
【0024】
以上のように本発明の画像符号化装置および方法によれば、フィールド画像を分離し、別コンポーネントとして符号化を行うことで、櫛状の画像のずれによる符号化効率の低下を抑えることが可能となる。また、フィールド差分を用いることで動きの少ない部分のデータ量を低減することが可能となり、符号化効率を向上できる。
【0025】
なお、以上の説明では、各フィールド画像が輝度と色差成分あわせて3コンポーネントを想定しているが、それ以外のコンポーネント数、例えばグレイスケールのように輝度成分の1コンポーネントしかない場合でも同様に構成することが可能である。」

エ.「【0026】
(実施の形態2)
JPEG2000方式のベースはフレーム内符号化であり、フレーム間相関を使っていない。本実施の形態では、JPEG2000方式にフィールド間相関を用いて符号化を行う場合の画像符号化装置を説明する。本実施の形態では、説明を簡単にするため、入力画像は輝度成分のみが含まれているものとする。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態2の画像符号化装置の構成を示すブロック図である。図2において、実施の形態1と同一の構成要素に関しては、同符号を付し、説明を省略する。
【0028】
図2において、201は対象フィールド画像の各画素ごとに参照フィールド画像に対する動きベクトルを検出する動き検出部、202は参照フィールド画像を各画素単位で求められた動きベクトル分だけ補償した補償フィールド画像を生成する動き補償部である。
【0029】
フィールド分離部102は、2つのフィールド画像を合成した入力画像101を、2つのフィールド画像に分離する。分離された2つのフィールド画像のうち、トップフィールド画像を参照フィールド画像、ボトムフィールド画像を対象フィールド画像とする。動き検出部201は、対象フィールド画像の各画素ごとに参照フィールド画像に対する動きベクトルを1画素精度で求める。この動きベクトルは、水平方向と垂直方向の2つの成分で表現される。動き補償部202は、参照フィールド画像を各画素単位で求められた動きベクトル分だけ補償した補償フィールド画像を生成する。差分計算部103は、対象フィールド画像と補償フィールド画像の各画素ごとに差分を計算して、フィールド差分画像を生成する。符号化部104は、コンポーネント0を参照フィールド画像(Y0)、コンポーネント1をフィールド差分画像(ΔY)、コンポーネント2を各画素の動きベクトルの水平方向成分、コンポーネント3を各画素の動きベクトルの垂直方向成分とした4コンポーネントのフレーム画像として符号化を行い、JPEG2000規格に準拠したビットストリーム105を生成する。
【0030】
以上のように本発明の画像符号化装置および方法によれば、フィールド画像を分離し、かつ、各画素ごとの動きベクトルを求め、それぞれを別コンポーネントとして符号化を行うので、フィールド画像間の動きが大きい時もフィールド差分画像の高周波成分を抑えることが可能となる。このときの動きベクトルの値は、動きがない場合は0となり、動きがある場合も動いている物体のエリアでベクトル値がほぼ一定になるため画像データを符号化する時と比べて符号化効率の向上が期待できる。
【0031】
なお、本実施の形態では、入力画像のコンポーネントを輝度成分のみの1コンポーネントとしたが、色差成分がある場合は、それぞれの色差成分の各画素ごとに動きベクトルを求めて、参照フィールド画像の3コンポーネント、フィールド差分画像の3コンポーネント、各成分ごとの動きベクトルの6コンポーネントのあわせて12コンポーネントを入力と
する構成も可能である。
【0032】
また、輝度成分で求めた動きベクトルを色差成分にも用いて動き補償を行い、動きベクトルのコンポーネント数を削減し、参照フィールド画像の3コンポーネント、フィールド差分画像の3コンポーネント、輝度成分の動きベクトルの2コンポーネントのあわせて8コンポーネントを入力とする構成も可能である。
【0033】
また、入力画像のカラーフォーマットが4:4:4でない場合、例えば4:2:2の場合、色差成分の画素数は輝度成分の画素数に対し、水平方向の画素数が半分になるので、輝度成分の動きベクトルの水平方向成分を1/2とした動きベクトルを用いて動き補償することが可能である。また、他のカラーフォーマットでも同様に輝度と色差のサンプル数の比率に応じて動きベクトルの値を変更することで動き補償することが可能である。
【0034】
また、動きベクトルの精度を半画素単位として動き検出と動き補償を行うことが可能である。この場合、色差成分はMPEG方式と同様の動き補償を行うことが可能である。
【0035】
また、動き検出と動き補償を各画素ごとに行うのではなく、対象フィールド画像を任意の画素サイズの矩形領域に区切り、その矩形領域ごとに動きベクトルの検出と動き補償を行うことが可能である。例えば、対象フィールド画像の輝度成分を8×8画素ブロックに分割し、それぞれのブロックごとに参照フィールド画像に対する動きベクトルを求め、各ブロックごとに動き補償を行う。このとき、カラーフォーマットが4:2:2であれば、色差成分のブロックを8×4画素ブロックとして、輝度成分の動きベクトルを利用して動き補償を行うことが可能である。また、他のカラーフォーマットでも同様に輝度と色差のサンプル数の比率に応じて色差成分のブロックサイズ、または動きベクトルの値を変更することで動き補償することが可能である。
【0036】
また、実施の形態1および実施の形態2において、JPEG2000規格のシンタックスでは、コンポーネント番号とその成分の対応を取るためのパラメータが用意されていないが、コメントを記述するCOMパラメータに各コンポーネントに含まれる成分情報を記述することで、コンポーネント番号とその成分の対応をとることが可能である。」

オ.「【0049】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4における画像復号化装置の構成を示すブロック図である。
【0050】
図4において、401はJPEG2000方式準拠のビットストリーム、402はビットストリーム401のヘッダ情報を解析して、その情報に従ってコンポーネントデータを生成する復号化部、403は復号化部402のヘッダ解析結果に従って、各コンポーネントの成分が何であるかを判定する検出部、404は検出部403の判定結果に従って、参照フィールド画像を動きベクトルで動き補償し、補償フィールド画像を生成する動き補償部、405はフィールド差分画像と補償フィールド画像を加算し、対象フィールド画像を生成する加算部、406は参照フィールド画像と対象フィールド画像を1ラインごとに交互に並べることでフレーム化し、合成画像を生成するフィールド合成部、407は合成画像である。
【0051】
本実施の形態では、説明を簡単にするため、JPEG2000方式で復号化し、ビットストリーム中には輝度成分と動きベクトルのみが符号化されている場合を説明する。
【0052】
復号化部402は入力されたビットストリーム401のヘッダ情報を解析して、その情報に従ってコンポーネントデータを生成する。検出部403は、復号化部402のヘッダ解析結果に従って、各コンポーネントの成分が何であるかを判定する。例えば、コンポーネント数が4個ある場合、コンポーネント0には参照フィールド画像の輝度成分が、コンポーネント1にはフィールド差分画像の差分輝度成分が、コンポーネント2と3には動きベクトルが格納されていると判定する。動き補償部404は、検出部403の判定結果に従って、参照フィールド画像を動きベクトルで動き補償し、補償フィールド画像を生成する。加算部405は、フィールド差分画像と補償フィールド画像を加算し、対象フィールド画像を生成する。フィールド合成部406は、参照フィールド画像と対象フィールド画像を1ラインごとに交互に並べることでフレーム化し、合成画像407を生成する。
【0053】
なお、本実施の形態では、入力ビットストリーム401のコンポーネントを輝度成分と動きベクトルのみとしたが、色差成分、色差成分の動きベクトルがコンポーネントとして含まれている場合も同様に構成することが可能である。
【0054】
また、動きベクトルは、各画素ごとに求められたものでも、任意の画素サイズの矩形領域に対して求められたものでも同様に構成することが可能である。
【0055】
また、検出部403は、コンポーネント数だけではなく、COMパラメータやその他のヘッダ情報に記述された成分情報に従って、各コンポーネントの成分を判定し、その判定結果に従って動き補償部404は動き補償を行うことが可能である。」

(2-2)引用発明
(i)上記ア.?オ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して引用例の記載事項を検討する。
まず、上記イ.にあるように、引用例には、画像復号化装置における画像復号化方法について記載がある。そして、画像復号化装置における画像復号化方法の詳細は、上記オ.の(実施の形態4)に記載されている。そして、前記(実施の形態4)の画像復号化装置に入力される符号化ビットストリームは、上記エ.に記載された(実施の形態2)の画像符号化装置からのものである場合を含んでおり、さらに、前記(実施の形態2)の画像符号化装置は上記ウ.の(実施の形態1)の画像復号化装置の構成を基本としている。
そこで、(実施の形態1)の画像復号化装置を基本とする(実施の形態2)の画像復号化装置で符号化されたビットストリームが入力された(実施の形態4)の画像復号化装置における画像復号化方法の技術事項について検討する。

(ii)上記エ.には、JPEG2000方式による画像符号化装置が記載されている。
上記画像符号化装置は、特に段落【0029】に記載されるように、1フレームを2つのフィールド画像に分離し、「トップフィールド画像を参照フィールド画像、ボトムフィールド画像を対象フィールド画像」対象フィールド画像に対する参照画像動きベクトルを求め、参照フィールド画像を動きベクトル分だけ補償した補償フィールド画像を生成し、対象フィールド画像と補償フィールド画像の差分を計算して、フィールド差分画像を生成し、符号化するものである。
このような、引用例記載のJPEG2000方式の画像符号化装置が、動画像を符号化する装置であることは、上記「フレーム」、「フィールド」、「動き」等の記載から明らかである。そして、この画像符号化装置で符号化されたビットストリームが入力される上記オ.記載の画像復号化装置が、動画像を復号化する装置であることも明らかであることから、上記(i)での検討事項も含めれば、引用例には、『動画像を復号化する画像復号化装置における画像復号化方法』が記載されているといえる。

(iii)上記エ.の段落【0026】,【0029】には、入力画像が輝度成分のみを含む場合に、対象フィールド画像と補償フィールド画像の差分を計算して、輝度成分における動きベクトルの水平方向成分及び垂直方向成分の2コンポーネントを得る構成が記載されている。さらに、段落【0031】には、入力画像が輝度成分に加え、色差成分を有する場合について記載があり、符号化部に「参照フィールド画像の3コンポーネント、フィールド差分画像の3コンポーネント、各成分ごとの動きベクトルの6コンポーネントのあわせて12コンポーネントを入力とする構成」が示されている。ここで、上記エ.に記載の(実施の形態2)の構成の基本である(実施の形態1)に係る上記ウ.の段落【0022】ないし【0023】の記載によれば、色差成分はU,Vの2コンポーネントである。このことから、上記「各成分ごとの動きベクトルの6コンポーネント」は、3成分(輝度成分と2つの色差成分)のそれぞれの動きベクトルの水平方向成分及び垂直方向成分からなるものであるといえる。
また、段落【0035】には、上記動きベクトルの検出と補償を一定大きさの画素ブロック(カラーフォーマットが4:4:4の場合8×8画素ブロック、4:2:2の場合8×4画素ブロック)ごとに行うことが記載されている。
したがって、段落【0031】,【0035】によれば、引用例には、『同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償により画像符号化を行う構成』が記載されている。

一方、段落【0032】には、「輝度成分で求めた動きベクトルを色差成分にも用いて動き補償を行い、動きベクトルのコンポーネント数を削減し、参照フィールド画像の3コンポーネント、フィールド差分画像の3コンポーネント、輝度成分の動きベクトルの2コンポーネントのあわせて8コンポーネントを入力とする構成」が示されている。すなわち、輝度成分で求めた動きベクトルを2つの色差成分にも共通に用いることにより「輝度成分の動きベクトルの2コンポーネント」のみを符号化部に入力するようにしている。
したがって、段落【0032】,【0035】によれば、引用例には、『矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用いて画像符号化を行う構成』が記載されている。

(iv)上記エ.の段落【0036】には、画像符号化装置に係る記載として「コメントを記述するCOMパラメータに各コンポーネントに含まれる成分情報を記述することで、コンポーネント番号とその成分の対応をとることが可能」と記載され、上記オ.の段落【0055】には、画像復号化装置に係る記載として「検出部403は、コンポーネント数だけではなく、COMパラメータやその他のヘッダ情報に記述された成分情報に従って、各コンポーネントの成分を判定し、その判定結果に従って動き補償部404は動き補償を行うことが可能」と記載されている。
ここで、上記(iii)に記載したように、画像符号化装置が『同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償により画像符号化を行う構成』、及び、『矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用いて画像符号化を行う構成』の2つの画像符号化構成を有するとき、画像符号化装置において、コメントを記述するCOMパラメータに成分情報を記述することにより、上記2つの画像符号化構成のうち何れかの構成によるビットストリームが画像復号化装置に入力されたのかを『判定』し、『判定結果に従って』『画像を復号化する』ことが、引用例には記載されているといえる。

(v)上記(i)ないし(iv)によれば、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。なお、下記aないしdの記号は、説明のために当審にて付与したものであり、以下構成要件a、構成要件bなどと称することにする。

(引用発明)
「a 動画像を復号化する画像復号化装置における画像復号化方法において、
b 前記画像復号化装置が、画像符号化装置から入力された、同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償により画像符号化を行う構成によるものかを表す、または、矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用いて画像符号化を行う構成によるものかを表すCOMパラメータを判定し、
c 前記画像復号化装置が、前記COMパラメータの判定結果に従って、同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償により画像符号化を行う構成に基づいた復号化、または、矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用いて画像符号化を行う構成に基づいた復号化の何れかにより画像を復号化する
d 画像復号化方法。」

(2-3)周知例の記載
Woo-Shik Kim et.al.,Color Format Extension,Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG & ITU-T VCEG (ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 and ITU-T SG16 Q.6) Document:JVT-H018,2003年5月,pp.1-14,URL:http://wftp3.itu.int/av-arch/jvt-site/2003_05_Geneva/JVT-H018.doc(以下、「周知例」という。)には以下の事項が記載されている。

カ.「1.Introduction
This proposal introduces a new coding technology that supports 4:4:4 format in YCbCr, XYZ and RGB color space while maintaining core technologies of the existing JVT codec. The proposed codec supports YCbCr and XYZ format by extending the 4:2:0 format while treating CbCr components as dependent luminance components. In other words, the full resolution CbCr components use the same mode as the luminance component does while the mode decision is executed using Luma component only including motion estimation. Green and Y components are treated as Luma in RGB and XYZ space respectively. For RGB coding we increased the coding efficiency greatly by applying DPCM coding to the residual images of R and B color components using the G component residual as a predictor. It works well for both the intra and the inter cases. To maintain the decoder compatibility we add a flag to signal the DPCM coding of residual images since only the RGB coding uses this mode among the 4:4:4 formats. The results show the comparable coding efficiency as that of the proposed YCbCr 4:4:4 format. So it can avoid the possible information loss due to the color space conversion while maintaining the coding efficiency. This makes the proposed JVT codec a good candidate for applications that require the high fidelity of colors such as digital cinema, digital archives, surveillance and so on.」(1頁「1. Introduction」の項の記載)

(当審邦訳)
「1.はじめに
本提案は、既存のJVT符号化のコア技術を維持したままでYCbCr,XYZ及びRGBの色空間における4:4:4フォーマットをサポートする新しい符号化技術を導入する。その提案される符号化は、輝度成分にCbCr成分が依存するとして扱う4:2:0フォーマットを拡張したYCbCr及びXYZフォーマットをサポートする。言い換えるならば、動きの推定を唯一含んでいるルーマ成分を用いてモード決定が行われている間じゅう、フル解像度のCbCr成分は輝度成分と同じモードを使用する。緑とYはそれぞれRGBとXYZ空間においてルーマ成分として扱われる。RGB符号化において、予測因子としてのG成分残差を用いたR及びB成分の残差画像にDPCM符号化を適用することにより、大幅に符号化効率を増加させている。これは、イントラ及びインターの場合の両方に適している。RGB符号化のみが4:4:4フォーマットのうちでこのモードを使用しているため、復号化の互換性を維持するために我々は残差画像のDPCM符号化を知らせるためのフラグを追加している。結果は、提案されたYCbCrフォーマットの符号化効率と同等の符号化効率を示した。符号化効率を維持しながら色空間を変換するための情報損失は可能かぎり回避することができる。これは、提案されたJVT符号化を、デジタルシネマ、デジタルアーカイブ、監視などの色の高忠実度を必要とするアプリケーションに適した候補にする。」

キ.「2.1.1. Subclause: 7.3.2.1 Sequence parameter set RBSP syntax
seq_parameter_set_rbsp() C Descriptor
(中略)
color_space 0 ue(v)
(以下略)」
(1?2頁「2.1.1. Subclause: 7.3.2.1 Sequence parameter set RBSP syntax」の項の記載、当審注:罫線を省略した)

ク.「2.2.1. Subclause: 7.4.2.1 Sequence parameter set RBSP semantics
color_space is the color space as specified in the Table V-1. If it is set to 1, the component representing green color is coded in the same way as the luminance component and the blue and red components are coded in the same way as the chrominance components. That is, the green component shall be treated as the Y component, the blue component shall be as the Cb component, and the red component shall be as the Cr component. If it is set to 2, the Y component is coded in the same way as the luminance component and the X and Z components are coded in the same way as the chrominance components. That is, the Y component shall be treated as the Y component, the X component shall be as the Cb component, and the Z component shall be as the Cr component. When color_space is not present, it shall be inferred to be 0.


chroma_format is the chrominance format as specified in the Table V-2. When chroma_format is not present, it shall be inferred to be 1.

」(6頁「2.2.1. Subclause: 7.4.2.1 Sequence parameter set RBSP semantics」の項の記載)

(当審邦訳)
「2.2.1. 項:7.4.2.1 シーケンスパラメータセットRBSPのセマンテック
color_spaceは表V-1に明示された色空間である。これが1に設定されている場合は、緑色を表す成分は、輝度成分と同じ方法で符号化され、青色及び赤色の成分は色差成分と同じ方法で符号化される。そこでは、緑成分がY成分として、青色成分がCb成分として、赤色成分がCr成分として扱われるだろう。これが2に設定されている場合は、Y成分は輝度成分と同じ方法で符号化され、X及びZ成分は色差成分と同じ方法で符号化される。そこでは、Y成分がY成分として、X成分がCb成分として、Z成分がCr成分として扱われるだろう。color_spaceが存在しない場合は、0であると推測されるだろう。
(Table V-1)省略
chroma_formatは表V-2に明示される色差フォーマットである。chroma_formatが存在しない場合は、1であると推測されるだろう。
(Table V-2)省略 」

(2-4)周知例記載の技術事項
周知例は、JVT符号化、すなわち、動画像符号化・復号化の規格であるMPEGについての提案文書である。
上記カ.に記載されているように、周知例には、YCbCr,XYZ及びRGBの各色空間を用いることのできる符号化に関して記載があり、上記キ.に記載のようにシーケンスパラメータセットのシンタックスとして色空間(color_space)の項目が設けられており、上記ク.には、色空間の項目のフラグ(Table V-1 参照)により、どのような色空間において符号化が行われたのかを復号側に示すことができることが記載されている。

したがって、周知例には、以下の周知の技術事項が開示されている。

(周知例の技術事項)
「複数種の色空間における動画像の符号化を行う符号側から、どのような色空間で符号化されたのかを示すフラグを復号側に示す技術。」

(3)対比
(3-1)補正後の発明の構成要件Aと引用発明の構成要件aとの対比
引用発明の「動画像を復号化する画像復号化装置」は、明らかに補正後の発明の「動画像復号化装置」に相当する。そして、画像復号化装置における復号化により、符号化された「動画像」は「復元」され、フレーム画像(合成画像)、すなわち1フレームの画面になるから、引用発明には補正後の発明のように「復元画面」を生成する方法が記載されているといえる。
したがって、引用発明の構成要件a「動画像を復号化する画像復号化装置における画像復号化方法において、」は、補正後の発明の構成要件A「動画像復号化装置により実行される復元画面生成方法において、」に相当する。

(3-2)補正後の発明の構成要件Bについて
補正後の発明の構成要件Bの「前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、符号化のために使用された色空間に関連する情報を取得するステップと、」については、引用発明には記載がない。

(3-3)補正後の発明の構成要件CないしEと引用発明の構成要件b,cとの対比
(3-3-1)
引用発明の「画像符号化装置」は、明らかに補正後の発明の「動画像符号化装置」に相当する。
また、引用発明の「COMパラメータ」はコメントが記述されるようなパラメータであって、補正後の発明の「1ビットフラグ」とは相違するものの、両者は「特定情報」である点で共通する。
また、引用発明の「伝送され」、「判定」と補正後の発明の「入力され」、「チェック」はそれぞれ同義である。

(3-3-2)
引用発明では構成要件b,cに記載のとおり2種類の符号化・復号化がなされている。
1種類目は、「同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償により画像符号化」したことを画像復号装置においてCOMパラメータにより判定し、「同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償により画像符号化を行う構成に基づいた復号化」がなされるものである。このように、引用発明の画像符号化装置及び画像復号化装置では、「同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償」を用いる、言わば『第1のモード』の符号化及び復号化がなされているといえる。
ここで、引用発明の「輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償」に関し、「輝度成分と2つの色差成分」が本願の構成要件Dにおける「色空間を構成する色成分」に相当することは明らかであり、また、「それぞれで求めた動きベクトルと動き補償」は、「輝度成分と2つの色差成分」のそれぞれの復号に際し「独立して適用」されることになる。
以上のことから、引用発明の構成要件cのうち「同じ大きさの矩形領域ごとに輝度成分と2つの色差成分のそれぞれで求めた動きベクトルと動き補償により画像符号化を行う構成に基づいた復号化」は、補正後の発明の構成要件Dのうち「前記色空間を構成する色成分のそれぞれに独立して適用される前記第1の予測モード」と、「前記色空間を構成する色成分のそれぞれに独立して適用される前記第1のモード」である点で共通している。

(3-3-3)
同様に2種類目は、「矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用いて画像符号化」したことを画像復号装置においてCOMパラメータにより判定し、「矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用いて画像符号化を行う構成に基づいた復号化」がなされるものである。このように、引用発明の画像符号化装置及び画像復号化装置では、「矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用い」る、言わば『第2のモード』の符号化及び復号化がなされているといえる。
ここで、引用発明の「矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用い」ることは、「輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償」を「輝度成分と2つの色差成分」、すなわち「全ての色成分」の復号に際し「一律に適用」することになる。
以上のことから、引用発明の構成要件cのうち「矩形領域ごとに輝度成分で求めた動きベクトルと動き補償を2つの色差成分に共通に用いて画像符号化を行う構成に基づいた復号化」は、補正後の発明の構成要件Dのうち「色空間を構成する全ての色成分に一律に適用される前記第2の予測モード」と、「色空間を構成する全ての色成分に一律に適用される前記第2のモード」である点で共通している。

(3-3-4)
上記(3-3-1)ないし(3-3-3)により、
引用発明の構成要件bと補正後の発明の構成要件Cは、「前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、第1のモード及び第2のモードのうちの何れか一つを表す特定情報をチェックするステップと、」で共通し、
引用発明の構成要件cと補正後の発明の構成要件D、Eは、「前記動画像復号化装置が、前記特定情報に基づき、前記色空間を構成する色成分のそれぞれに独立して適用される前記第1のモード及び前記色空間を構成する全ての色成分に一律に適用される前記第2のモードのうちの何れか一つによって復元画面を生成するステップと、」で共通している。

しかしながら、補正後の発明では、「色空間に関連する情報」を復元画面を生成するために用いているのに対し、引用発明では、「色空間に関連する情報」を復元画面を生成するために用いていない点で相違している。
また、補正後の発明では、「第1の予測モード」、「第2の予測モード」を「予測画面を生成」するために用い、「前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき」復元画像を生成しているが、引用発明では予測画面を用いて復元画像を生成しないため、「第1モード」、「第2モード」はそれぞれ「予測モード」でなく、また、「予測画面を生成」し、「前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき」復元画像を生成していない点で相違する。

(3-4)補正後の発明の構成要件Fと引用発明の構成要件dとの対比
上記(3-1)において対比したとおり、引用発明の「画像復号化方法」は、補正後の発明の「復元画面生成方法」に相当する。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「動画像復号化装置により実行される復元画面生成方法において、
前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、第1のモード及び第2のモードのうちの何れか一つを表す特定情報をチェックするステップと、
前記動画像復号化装置が、前記特定情報に基づき、前記色空間を構成する色成分のそれぞれに独立して適用される前記第1のモード及び前記色空間を構成する全ての色成分に一律に適用される前記第2のモードのうちの何れか一つによって復元画面を生成するステップと、を含む、
復元画面生成方法。」

(相違点)
(相違点1)
補正後の発明は、「前記動画像復号化装置が、前記動画像符号化装置から伝送され、符号化のために使用された色空間に関連する情報を取得するステップ」を有しており、「前記色空間に関連する情報」を復元画面を生成するために用いているのに対し、引用発明では、そのような「色空間に関連する情報」について記載がない点。
(相違点2)
「第1モード」、「第2モード」に関し、補正後の発明では、「第1の予測モード」、「第2の予測モード」であり、当該「第1の予測モード」、「第2の予測モード」のうち何れか一つによって「予測画面を生成」し、「前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき」復元画面を生成するのに対し、引用発明での各モードは、「予測モード」でないため、「予測画面を生成」し、「前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき」復元画面を生成していない点。
(相違点3)
「特定情報」に関し、補正後の発明では、「1ビットフラグ」であるのに対し、引用発明では、「COMパラメータ」である点。

(4) 当審の判断
まず、上記(相違点2)について判断する。
引用発明の画像符号化装置及び画像復号化装置は、動画像の符号化、復号化を行うものであるが、上記「(2-1)引用例の記載」の摘記事項のオ.に記載のようにJPEG2000方式の動画像符号化、復号化に基づくものであり、動きベクトルと動き補償を用いるものの、「予測画面を生成」し、「前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき」復元画面を生成するものではない。
一方、上記「(2-1)引用例の記載」の摘記事項のイ.に記載のように、動画像符号化、復号化の代表的な方式にMPEG方式(Moving Picture image coding Experts Group)があり、そのMPEG方式が動きベクトルと動き補償を用いるものであって、「予測画面を生成」し、「前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき」復元画面を生成する方式であることは、当該動画像符号化、復号化分野の技術常識にすぎない。
ここで、引用発明の動画像符号化装置、動画像復号化装置に上記MPEG方式に基づくものを採用することは当業者が容易に為し得ることであり、そのように為せば、引用発明の「第1モード」、「第2モード」は「第1の予測モード」、「第2の予測モード」となり、当該「第1の予測モード」、「第2の予測モード」のうち何れか一つによって「予測画面を生成」し、「前記動画像復号化装置が、前記予測画面に基づき」復元画面を生成することになる。
したがって、相違点2は格別なものでない。

ついで、上記(相違点1)について判断する。
引用発明は、輝度成分(Y)と2つの色差成分(U,V)の色空間における動画像の符号化、復号化に係るものであるが、上記「(2-4)周知例記載の技術事項」において記載したように、「複数種の色空間における動画像の符号化を行う符号側から、どのような色空間で符号化されたのかを示すフラグを復号側に示す技術。」は周知の技術である。
ここで、上記相違点2において検討したとおり、動画像符号化装置、動画像復号化装置に上記MPEG方式に基づくものを採用することは当業者が容易に為し得ることであるから、引用発明の輝度成分(Y)と2つの色差成分(U,V)の色空間における符号化を、上記周知の技術を適用して、他の色空間(RGB等)における符号化も行い、その色空間に関する情報を符号化装置から復号化装置に送り、復号化装置で取得し、予測モードを示す情報との2つの情報から復元画面を生成するようにすることは当業者が適宜為し得ることである。
したがって、相違点1も格別なものでない。

最後に、上記(相違点3)について判断する。
引用発明では、2つのモードをCOMパラメータを判定することでチェックしている。
ここで、引用例には、段落【0036】や【0055】等に記載されるように、コメントを記述するCOMパラメータに記述された成分情報に従い、各コンポーネントの成分を判定し、その判定結果に従って得られる動きベクトルから動き補償を行うことが記載されている。
すなわち、引用例では、COMパラメータに12コンポーネント(第1のモード)、8コンポーネント(第2のモード)の成分情報を記述し、その成分情報から2つのモードを判定しているものであるが、当業者であれば、符号側及び復号側の両方で、12コンポーネントの場合のコンポーネント番号とその成分との対応、及び、8コンポーネントの場合のコンポーネント番号とその成分との対応をそれぞれ既知のものとして、2つのモードを2状態を取れる「1ビットフラグ」を用いて判定することを容易に想到し得るものである。
したがって、相違点3も格別なものでない。

そして、補正後の発明に関する作用・効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の「(2)引用例と周知例」及び「(3)対比」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は補正後の発明から、本件補正に係る構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、補正後の発明から本件補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-29 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-24 
出願番号 特願2012-144782(P2012-144782)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
藤井 浩
発明の名称 残差生成方法及び装置、並びに復元画面生成方法及び装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
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