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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
管理番号 1310140
審判番号 不服2014-955  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-20 
確定日 2016-01-18 
事件の表示 特願2010-522383「潤滑油の内燃機関への使用」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月 5日国際公開、WO2009/027496、平成22年12月 2日国内公表、特表2010-537035〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、特許法第184条の3第1項の規定により、2008年 8月29日(パリ条約による優先権主張:2007年 8月31日 欧州特許庁(EP))の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成22年 3月30日 翻訳文提出
平成23年 8月26日 出願審査請求
平成25年 3月21日付け 拒絶理由通知
平成25年 8月28日 意見書・手続補正書
平成25年 9月17日付け 拒絶査定
平成26年 1月20日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成26年 1月24日付け 審査前置移管
平成26年 2月 6日付け 前置報告書
平成26年 2月 7日付け 審査前置解除
平成26年12月15日付け 拒絶理由通知
平成27年 4月16日 意見書・手続補正書・誤訳訂正書

第2 当審の拒絶理由の概要
当審において平成26年12月15日付けで通知した,特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に関する拒絶の理由の概要は,要すれば以下のとおりである。
「明細書の実施例1に記載の基油及び潤滑油が,請求項1?8に対応するものであることが明らかでなく,該実施例1は請求項1?8係る発明に対応するものとはいえず,また発明の詳細な説明全体の記載及び技術常識に基づいても,請求項1?8に特定された事項により,本願発明の課題の解決がされ,所期の効果を奏することができると当業者が技術的な合理性をもって認識できるものとはいえないから,請求項1?8に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものとすることができないし,また本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとすることはできない。」

第3 当審の判断
1.特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
ア 本願発明
本願請求項1に係る発明は,次のとおりである。
「再生可能なディーゼル粒子トラップを備えたディーゼルエンジンに,再生頻度を減少させるために、パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、かつ炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し、nは15?40)の一連のイソパラフィンを含有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油を含む潤滑油を使用する方法であって、
前記基油は100℃での動粘度が3?25mm^(2)/sであり,
前記潤滑油は、100℃での動粘度が5.0mm^(2)/s(cSt)を超え、ASTM D5293による-15℃での冷時始動疑似動力学粘度が9500mPas(cP)未満であり,ASTM D4684による-20℃での小型回転粘度試験値が60000mPas(cP)未満であり,かつ前記エンジンが燃料によって操作される、
前記方法。」(以下,「本願発明」という。)
すなわち、本願発明は、
「再生可能なディーゼル粒子トラップを備えたディーゼルエンジンに,再生頻度を減少させるために」、
基油としては、
「パラフィン含有量が80重量%を超え,飽和物含有量が98重量%を超え、かつ炭素原子数がn,n+1,n+2,n+3及びn+4(但し,nは15?40)の一連のイソパラフィンを含有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油」(以下、「基油要件A」という。)であって、
「前記基油は100℃での動粘度が3?25mm^(2)/s」(以下、「基油要件B」という。)
という性質を備えた基油を使用し、
そして、潤滑油としては,上記基油を含むものであって、さらに、
「100℃での動粘度が5.0mm^(2)/s(cSt)を超え、」(以下、「潤滑油要件A」という。)
「ASTM D5293による-15℃での冷時始動疑似動力学粘度が9500mPas(cP)未満であり」(以下,「潤滑油要件B」という。)
「ASTM D4684による-20℃での小型回転粘度試験値が60000mPas(cP)未満」(以下,「潤滑油要件C」という。)
という性質を備えるものを使用する旨特定されているものである。
以上の事項を踏まえて,本願明細書及び図面の記載を検討する。
イ 実施例の記載
通常は、発明の実証例や技術的な裏付けが記載されている明細書の実施例の記載について、まず最初に検討する。
実施例の記載は以下のとおりである。
「【実施例】
【0043】
実施例1
背合わせ試験を用いた実験において,ユーロ4ディーゼルエンジン搭載メルセデスC級乗用車を,GTL基油(油A)又は鉱物水素化蝋(hydrowax)系グループIII基油(油B)のいずれかとブレンドした同等の5W-40エンジンクランクケース潤滑油配合物で走行させた。各車は,車対車(car-to-car)効果を考慮して,A-B-A又はB-A-Bの順序の潤滑油で走行させた。複数のディーゼル粒子トラップ(DPT)を、その上流の熱電対及び下流の熱電対の複数対でモニターした。
【0044】
ディーゼル粒子トラップの再生頻度は、トラップを横断する温度差スパイクにより排気システム内の背圧ピークとしてモニターした。トラップの再生頻度は、10,000マイルの油排出間隔(ODI)の間中、ダータロガーにより連続的にモニターした。
【0045】
燃料組成物
2種の自動車用ガス油組成物を製造した。フィッシャー・トロプシュ自動車用ガス油(F-T AGO)ブレンドで、R655潤滑性向上剤及びSTADIS 450帯電防止剤を250mg/kg含むベース燃料(S040990)からなる。従来の自動車用ガス油(鉱物AGO)は、ヨーロッパEN590規格に適合する50ppm硫黄燃料である。燃料コードはDK1703である。両燃料の組成を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
ガス油燃料F1はEP-A-0583836に記載の方法と同様にして、2段階水素化転化法により製造したフィッシャー・トロプシュ(FT)(SMDS)合成生成物である。比較用燃料は、従来の鉱油誘導低硫黄自動車用ガス油である。
【0048】
潤滑油
2種の潤滑油組成物を使用した。この試験の目的のため、基油はグループIII基油とした。
2種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油(BO1及びBO2)は,マレーシア(Bintulu,マレーシア)のシェルMDSで得られた水素化異性化フィッシャー・トロプシュ蝋から接触脱蝋して得られた基油である。
【0049】
比較のため、水素化蝋供給原料(燃料水素化分解器塔底蝋)スレートから誘導した2種の鉱物誘導基油(BO3及びBO4)を使用した。これらの基油は、SK Corporation,Ulsan,韓国からYuBaseグループIII基油(YuBaseは商標)として市販されている。BO1及びBO2もBO3及びBO4も市販の添加剤パッケージを含む潤滑油に配合した。これらの配合物は,現在の商用5W-40 APICH4 Low SAPSディーゼルエンジン油をベースとする(表2参照)。フィッシャー・トロプシュブレンドは,100℃での動粘度及び-30℃でのコールドクランク粘度(VdCCS)がYuBaseブレンドと同等であった。表3は配合物の特性を示す。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

以上に示した潤滑油組成物及び燃料組成物を使用して、それぞれ自動車用ユーロ4エンジンを操作した(表4)。
(以下、省略)」
ウ 実施例の記載の検討
以上の実施例の記載について、そこで使用されている基油及び潤滑油が、上記した本願発明に係る基油要件A及びB並びに潤滑油要件A?Cを備えることが記載されているといえるか否かを、順次検討する。
ウ-1 基油要件A及びBについて
基油要件A、すなわち
「パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、かつ炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し,nは15?40)の一連のイソパラフィンを含有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油」
については、実施例で使用されているフィッシャー・トロプシュ誘導基油である「BO1」及び「BO2」が、これら要件に対応する性状であることを窺わせる記載は上記実施例の記載の中に見いだせず、本願発明に対応する基油であるとは確認し得ないものである。
また,段落【0048】には、「BO1」及び「BO2」に関し、
「2種のフィッシャー・トロプシュ誘導基油(BO1及びBO2)は、マレーシア(Bintulu,マレーシア)のシェルMDSで得られた水素化異性化フィッシャー・トロプシュ蝋から接触脱蝋して得られた基油である。」
との記載がなされているが、例えば、ここでいうマレーシアで製造される基油が、上記基油要件Aを備えることが当業者にとって明らかなことであったのならばともかく、そのような事情も見当たらない。
(例えば,先に記載した当審で通知した拒絶理由通知書で引用した刊行物A(国際公開第2006/136593号)には、「フィッシャー・トロプシュからAPIグループIII基油を製造する方法も知られているが、Shell社のみがShell MDSマレーシア Sdn Ehdから得られた蝋状ラフィネート生成物を溶剤脱蝋して,実際に工業的規模でこのような基油を製造している。」(明細書第1頁第25行?第2頁2行)との記載がなされていて、ここでいう「APIグループIII基油」が飽和含有物が90重量%を超えるものであることが知られていたことを参酌したとしても、本願明細書の「BO1」及び「BO2」が,基油要件Aに該当する性状を備えていたとまでは解し得ないものである。)
次に、基油要件B、すなわち、
「前記基油は100℃での動粘度が3?25mm^(2)/s」
については、段落【0050】の表2において、「VK100」(100℃の動粘度を意味するものと解釈される。以下,同じ。)が、「BO1」については「5mm^(2)/s」(表2の単位の記載は誤記と認められる。以下、同じ。)、「BO2」については「8mm^(2)/s」である旨の記載があり、この点は本願発明に対応するものであることが確認できるものである。
ウ-2 潤滑油要件A?Cについて
潤滑油要件A、すなわち
「100℃での動粘度が5.0mm^(2)/s(cSt)を超え」
については、段落【0051】の表3において、「VK100」が「13.99cSt」である旨の記載がなされていて、この点は本願発明に対応するものといえる。
また、潤滑油要件B、すなわち
「ASTM D5293による-15℃での冷時始動疑似動力学粘度が9500mPas(cP)未満であり」
については、段落【0051】の表3に、「ASTM D-5293」による動力学粘度と理解される数値が記載されているものの、その値は「-30℃」とされていて、本願発明に係る潤滑油要件Bとは温度において異なるものである。しかしながら、通常粘度は温度が高くなるとともに、その数値は上昇するものと解されるので、「-30℃で6573cP」ならば「-15℃で9500cP未満」に該当するものといえ、この点も本願発明に一応対応するものと解釈することができる。
そして、潤滑油要件C、すなわち
「ASTM D4684による-20℃での小型回転粘度試験値が60000mPas(cP)未満」
については、段落【0049】には、
「BO1及びBO2もBO3及びBO4も市販の添加剤パッケージを含む潤滑油に配合した。これらの配合物は、現在の商用5W-40 APICH4 Low SAPSディーゼルエンジン油をベースとする(表2参照)。フィッシャー・トロプシュブレンドは,100℃での動粘度及び-30℃でのコールドクランク粘度(VdCCS)がYuBaseブレンドと同等であった。表3は配合物の特性を示す。」
という、BO1及びBO2を用いた潤滑油が5W-40に適合する旨の記載がなされていて、上記潤滑油要件Cが「5W」の規格に適合する基準に相当する要件であることが周知であったとしても、例えば,一般に、フィッシャー・トロプシュ誘導基油は,ASTM D4684による粘度規格に適合させるのが困難であった(例えば、当審で通知した拒絶理由通知書で引用した刊行物Gの【0009】及び【0017】参照。)ことを考慮すると、具体的なデータ等の提示がなく、単なる定性的な上記記載のみでは,当業者をして、BO1及びBO2がこの要件を満たすものであることを理解させるには十分なものとはいえない。
したがって、潤滑油要件Cについても、本願明細書の実施例で使用されている潤滑油がこの要件を満たすものであることが明らかにされていたとすることはできないものである。
ウ-3 実施例の記載の検討のまとめ
以上、整理すると、本願発明で特定されている基油要件A及びB並びに潤滑油要件A?Cのうち、本願明細書の実施例の記載において、そこで使用されている基油及び潤滑油に関して、備えることが示されている要件は、基油要件A及びBのうちの要件B、並びに、滑油要件A?Cのうちの要件A及びBのみであって、基油要件A及び潤滑油要件Cについては具備することが示されているとはいえないものである。
エ 明細書及び図面の記載の検討
そこで、明細書及び図面の全範囲を対象にして、実施例において、確認され得ない要件を中心として、さらに検討することとする。
エ-1 まず、基油要件A、すなわち
「パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し、nは15?40)の一連のイソパラフィンを含有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油」
について検討する。
これらに関連する記載は、以下のとおりであり、この他には見当たらない。
(a)「【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
したがって、本発明は、再生可能なディーゼル粒子トラップを備えたディーゼルエンジンに、パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、かつ炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し、nは15?40)の一連のイソパラフィンを含有する基油を含む潤滑油を使用する方法に関する。」
(b)「【0016】
潤滑油は、パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、かつ炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4の連続系列のイソパラフィンを含有する基油を含む。基油は、パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、かつ炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し,nは15?40)の連続系列のイソパラフィンを含有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油が好ましい。基油又は基材(i)中の炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し、nは15?40)であるイソパラフィンの系列中の連続系列の含有量及び存在は、フィールド脱着/フィールドイオン化(FD/FI)技法により測定できる。この技法では、まず基油サンプルを、この測定法に記載されるように、移動相としてヘキサン(測定法に記載)の代りにペンタンを用いた他は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法IP368/01を利用して、極性(芳香族)相と非極性(飽和物)相とに分離する。次に、フィールド脱着/フィールドイオン化(FD/FI)インターフェースを備えたFinnigan MAT90質量分析計を用いて飽和物フラクション及び芳香族フラクションを分析する。なお、FI(“ソフト”イオン化技術)は、このような炭化水素種の炭素数及び水素欠陥を測定するのに使用される。質量分析での化合物種の分類は、形成された特徴的なイオンにより決定され、普通、“z数”で分類される。この分類は全ての炭化水素種について一般式C_(n)H_(2n+z)で示される。飽和物相は芳香族相とは別に分析されるので,同じ化学量論又はn数を有する他の異なる(シクロ)-パラフィンの含有量を測定することが可能である。分光分析計の結果は,市販のソフトウエア(Sierra Analytics LLC,3453 Dragoo Park Drive,Modesto,Calif.GA95350 USAから入手できるpoly 32)を用いて処理し,各炭化水素種の相対割合を測定する。」
(c)「【0041】
本発明は更に,ディーゼル粒子トラップを備えたディーゼルエンジンを、パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、かつ(i)炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し、nは15?40)の一連のイソパラフィンを含有する基油又は基材を含む潤滑油組成物で潤滑する工程を含む前記ディーゼルエンジンの操作方法に関する。」
エ-2 上記(a)?(c)の記載を見ても、単に、基油要件Aに言及したのみか、或いは、主として測定方法について説明したに止まるものであって、例えば、実施例で使用されている基油が、基油要件Aを備える旨の記載はなされていない。
エ-3 また、潤滑油要件Cについては、明細書を通して直接言及した記載は見当たらず、上記したように実施例において「現在の商用5W-40・・・ディーゼルエンジン油をベースとする」(段落【0049】)といった記載があるに止まり、かかる記載にしても、実施例で使用した潤滑油が潤滑油要件Cを満たすものであることを、当業者に対して明確に示しているとは言い難いものであることは、上記したとおりである。
エ-4 さらに、明細書及び図面の全記載並びに技術常識をも含めて検討したとしても、実施例で使用された基油及び潤滑油が本願発明で特定されたものに対応するものであるとか、或いは、本願発明で特定された基油や潤滑油を使用すれば、「再生可能なディーゼル粒子トラップを備えたディーゼルエンジンに対して、再生頻度を減少させる」という作用効果が得られるといったことが,当業者にとって自明のことであるとすることができない。
オ 小括
したがって、本願明細書及び図面の記載は、本願発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものとすることができないので,特許法第36条第4第1号に規定する要件を満たしているものとすることができない。

2.特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 本願発明
本願請求項1に係る発明、すなわち本願発明を再掲する。
「【請求項1】
再生可能なディーゼル粒子トラップを備えたディーゼルエンジンに、再生頻度を減少させるために、パラフィン含有量が80重量%を超え、飽和物含有量が98重量%を超え、かつ炭素原子数がn、n+1、n+2、n+3及びn+4(但し,nは15?40)の一連のイソパラフィンを含有するフィッシャー・トロプシュ誘導基油を含む潤滑油を使用する方法であって、
前記基油は100℃での動粘度が3?25mm^(2)/sであり、
前記潤滑油は、100℃での動粘度が5.0mm^(2)/s(cSt)を超え、ASTM D5293による-15℃での冷時始動疑似動力学粘度が9500mPas(cP)未満であり、ASTM D4684による-20℃での小型回転粘度試験値が60000mPas(cP)未満であり、かつ前記エンジンが燃料によって操作される、
前記方法。」(以下,「本願発明」という。)
イ 明細書の記載要件
特許法第36条第6項第1号の規定によれば、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることとの要件に適合するものでなければならない。すなわち、特許請求の範囲に発明として記載して特許を受けるためには、明細書の発明の詳細な説明に、当該発明の課題が解決できることを当業者において認識できるように記載しなければならないというべきである。
そして、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そのような観点に立って、以下本願について検討する。
ウ 本願明細書の記載の検討
本願発明の課題は,明細書【0008】の記載から見て、
「ディーゼル粒子トラップの再生頻度が著しく減少し、その結果、NOx放出物が減少するばかりでなく、燃費も低下する」技術の提供にあると解せられる。
そこで、このような課題について、本願発明によって解決できることが、当業者にとって認識されるように、明細書及び図面の記載がなされているといえるか否かについて検討する。
明細書【0043】?【0055】及び【図1】?【図3】の記載を見ると、そこで使用された潤滑油を使用することにより、ディーゼル粒子トラップの再生頻度が減少し、牽いては燃費も向上する旨記載されているとはいえるものの、上記「1.」の「イ?エ」に記載したように,実施例で使用された潤滑油が、本願発明で特定された潤滑油に対応するものであることが、明細書に記載されているとはいえないので、本願明細書の【0043】?【0055】及び【図1】?【図3】の記載を根拠に、本願発明により、上記課題が解決できることが、当業者に認識されるように明細書に記載されているとすることができない。また、明細書及び図面の全記載並びに技術常識を参酌しても、本願発明で特定された潤滑油を使用することにより、上記課題が解決できることが当業者にとって認識されることであるとすることもできない。
したがって、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものとすることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしているものとすることができないし、また、同条第6項第1号に規定する要件を満たしているものとすることもできないので、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-25 
結審通知日 2015-08-26 
審決日 2015-09-08 
出願番号 特願2010-522383(P2010-522383)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C10M)
P 1 8・ 536- WZ (C10M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 康彰  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 菅野 芳男
日比野 隆治
発明の名称 潤滑油の内燃機関への使用  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 沖本 一暁  
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