ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1310247 |
審判番号 | 不服2015-411 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-08 |
確定日 | 2016-01-21 |
事件の表示 | 特願2010-293683号「ランプ及び照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年7月26日出願公開、特開2012-142406号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年12月28日の出願であって、平成26年4月3日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年5月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年7月15日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成26年9月18日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年10月28日付けで、補正の却下の決定により平成26年9月18日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、同査定の謄本は平成26年11月11日に請求人に送達された。 これに対して、平成27年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正書が提出された。 第2 平成27年1月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年1月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 平成27年1月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1?9の記載は、次のとおり補正された。 なお、下線部は補正箇所を示す。 「 【請求項1】 管状の筐体と、 基板と前記基板に実装された半導体発光素子とを有し、前記筐体の内部に設けられた発光モジュールと、 放熱板とを備え、 前記基板と放熱板とは接合されており、 前記筐体の内面には、少なくとも2つの凹部が形成され、 前記基板の両端部は、前記2つの凹部内に保持され、 前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい ランプ。 【請求項2】 前記放熱板の両端部は、前記基板の前記両端部と共に前記2つの凹部に保持されており、 前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みと前記放熱板の前記両端部の各々の厚みとの合計よりも大きい 請求項1に記載のランプ。 【請求項3】 前記基板は、樹脂基板であり、 前記放熱板は、金属板である 請求項1又は2に記載のランプ。 【請求項4】 前記筐体は、管状の第1筐体と、前記第1筐体の内部に設けられた管状の第2筐体とを有し、 前記2つの凹部は、前記第2筐体の内面に形成され、 前記発光モジュールは、前記第2筐体の内部に設けられる 請求項1?3のいずれか1項に記載のランプ。 【請求項5】 前記第2筐体は、前記第1筐体と嵌合する 請求項4に記載のランプ。 【請求項6】 前記凹部は、前記筐体の内面に並んで形成された2つの凸部から形成され、 前記基板の両端部のそれぞれと前記放熱板の両端部のそれぞれとは、前記2つの凸部で狭持される 請求項2に記載のランプ。 【請求項7】 前記筐体は、管軸方向に沿って分割された第1筐体及び第2筐体から構成され、 前記2つの凸部の一方は、前記第1筐体に形成され、前記2つの凸部の他方は、前記第2筐体に形成される 請求項6に記載のランプ。 【請求項8】 前記2つの凸部は、前記半導体発光素子からの光の1/2ビーム角の外側に位置する 請求項6に記載のランプ。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか1項に記載のランプを備える 照明装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、平成26年5月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9の記載は次のとおりである。(なお、平成26年9月18日付けの手続補正は、補正の却下の決定により却下されている。) 「 【請求項1】 管状の筐体と、 基板と前記基板に実装された半導体発光素子とを有し、前記筐体の内部に設けられた発光モジュールと、 放熱板とを備え、 前記基板と放熱板とは接合されており、 前記筐体の内面には、少なくとも2つの凹部が形成され、 前記基板の両端部は、前記2つの凹部内に保持される ランプ。 【請求項2】 前記放熱板の両端部は、前記基板の両端部と共に前記2つの凹部に保持される 請求項1に記載のランプ。 【請求項3】 前記基板は、樹脂基板又はセラミック基板であり、 前記放熱板は、金属板である 請求項1又は2に記載のランプ。 【請求項4】 前記筐体は、管状の第1筐体と、前記第1筐体の内部に設けられた管状の第2筐体とを有し、 前記2つの凹部は、前記第2筐体の内面に形成され、 前記発光モジュールは、前記第2筐体の内部に設けられる 請求項1?3のいずれか1項に記載のランプ。 【請求項5】 前記第2筐体は、前記第1筐体と嵌合する 請求項4に記載のランプ。 【請求項6】 前記凹部は、前記筐体の内面に並んで形成された2つの凸部から形成され、 前記基板の両端部のそれぞれと前記放熱板の両端部のそれぞれとは、前記2つの凸部で狭持される 請求項2に記載のランプ。 【請求項7】 前記筐体は、管軸方向に沿って分割された第1筐体及び第2筐体から構成され、 前記2つの凸部の一方は、前記第1筐体に形成され、前記2つの凸部の他方は、前記第2筐体に形成される 請求項6に記載のランプ。 【請求項8】 前記2つの凸部は、前記半導体発光素子からの光の1/2ビーム角の外側に位置する 請求項6に記載のランプ。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか1項に記載のランプを備える 照明装置。」 2.新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否 (1)新規事項の追加の有無 ア 本件補正後の請求項1の記載について (ア)本件補正後の請求項1には、「前記基板と放熱板とは接合されており」(以下、「記載事項A」という。)及び「前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい」(以下、「記載事項B」という。)と記載されているところ、記載事項Aを前提として、記載事項をBを特定しているといえる。 (イ)本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)において、記載事項Aに関連した記載は、段落【0053】?【0064】及び図6に認められるところ、基板301の端部と共に放熱板500の端部も凹部410に保持され、「凹部410及び凹部420の幅は、基板301の厚み及び放熱板500の厚みの合計より大きい(あるいは合計と略等しい)」(以下、「記載事項C」という。)ものが、記載されている。 (ウ)記載事項Aを前提とした記載事項Bと、記載事項Aに関連して基板の端部と共に放熱板の端部も凹部に保持されることを前提とした記載事項Cとは、技術的に明らかに別意であるし、当初明細書等には、記載事項Bで足りるという記載も示唆もない。 (エ)そうすると、本件補正後の請求項1に記載の、記載事項Aを前提とした記載事項Bの特定は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 イ 補足(請求人の主張について) (ア)審判請求書において請求人は、「このように、本願発明によれば、優れた放熱性と容易な組み立て性との両立を図ることができるという格別の効果が得られます([0044]?[0051])。 しかも、本願発明は、「前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい」という構成を備えます。この構成により、基板の両端部が凹部に挿入された状態で、基板垂直方向において凹部と基板の両端端との間に隙間を設けることができます。これにより、基板が厚み方向に熱膨張することによって凹部が破損してしまうことを抑制できるとともに、基板の厚みの製造ばらつきを隙間によって吸収できる、という格別の作用効果を奏することができます。」と主張している。 (イ)この主張は、本件補正後の請求項1の記載事項Aを前提とした記載事項Bは、記載事項A(基板と放熱板とは接合されており)を前提とした、「2つの凹部には、基板の両端部だけが保持されているもの」(以下、「事項D」という。)を包含しているから、格別の作用効果を奏することができる旨の主張とも解される。 (ウ)ここで、当初明細書等における記載事項Aに関連した記載の内容は、上記ア(イ)で述べたとおりであって、その記載箇所に、記載事項Aを前提とした事項Dは、記載されていない。 また、当初明細書等のそれ以外の記載箇所においても、記載事項Aを前提とした事項Dは、記載されていないし、当初明細書等の発明が解決しようとする課題、作用効果及び特許請求の範囲等を含めた全体の記載を参酌してみても、記載事項Aを前提とした事項Dが自明であるという根拠もない。 (エ)さらに、審判請求書において請求人は、「このように、本願発明によれば、優れた放熱性と容易な組み立て性との両立を図ることができるという格別の効果が得られます([0044]?[0051])。」と主張しているが、当初明細書の段落【0044】?【0051】には、「放熱」については何ら記載されていないし、「[0044]?[0051]」が、「[0054]?[0061]」の誤記であったとしても、それは、記載事項Aを前提とした記載事項Cの効果を述べているに留まり、記載事項Aを前提とした事項Dの効果について言及しているとはいえない。 (オ)したがって、請求人の上記主張は採用できない。 ウ 新規事項の有無についてのまとめ 上記ア及びイで述べたとおり、記載事項Aを前提とした記載事項Bは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないから、請求項1において、記載事項A(前記基板と放熱板とは接合されており)を前提とした記載事項B(前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい)と補正した、本件補正は、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものとはいえない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)補正の目的の適否 上記(1)で述べたとおり、本件補正は、記載事項Aを前提とした記載事項B(新たな技術的事項)を含むものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号[特許請求の範囲の減縮]を目的とするものでない。 さらに、本件補正が、特許法第17条の2第5項第1号[請求項の削除]、特許法第17条の2第5項第3号[誤記の訂正]、特許法第17条の2第5項第4号[明りょうでない記載の釈明]を目的とするものでないことも明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件 上記2.(1)及び(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び特許法第17条の2第5項の規定に該当しないが、仮に、本件補正が、記載事項Aを前提とした記載事項Cを意味するものであり、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであり(特許法第17条の2第3項の規定に該当し)、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの(特許法第17条の2第5項第2号)に該当するとした場合、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.本願補正発明 本願補正発明は、上記1.(1)の請求項1に記載したとおりのものである。 3-2.特許法第29条第1項第3号(新規性)について (1)刊行物に記載の事項及び発明 ア 刊行物に記載の事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2010-165647号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1a) 「【0039】 支持体21は、固体発光素子26を、基板22を介して支持(保持)するものであり、筐体3の中空構造内に配置される。照明装置1における、固体発光素子26の位置を規定する役割を担う。あわせて、固体発光素子26の駆動ロスとして発生する熱の処理にも利用される。この熱の処理については、後ほど詳しく述べるが、このことに対応するため、熱伝導率の高い材料(例えば金属であり、発明者らは加工の容易性、比重等を鑑みアルミニウムを採用)により構成する。 【0040】 基板22は、固体発光素子26が実装される基板である。支持体21同様、固体発光素子26の駆動ロスとして発生する熱の処理にも利用される。 【0041】 放熱に利用するため、基板22の固体発光素子26が実装される面の裏面は、支持体21と密着配置される。このようにすることにより、固体発光素子26の駆動ロスとして発生した熱は、基板22を介して支持体21に効率よく伝熱されることになる。 【0042】 ここで、基板22の材質であるが、上記のように固体発光素子26の駆動ロスとして発生した熱の伝熱に供されるため、熱伝導率の高い材料により構成することが好ましい。例えば、金属基板、チッ化アルミニウム基板、アルミナセラミック基板等は熱伝導率の高い基板であり、本目的に好適であるといえる。 【0043】 ただし、基板22は、上記基板と比較して、熱伝導率の低い基板であるガラスエポキシ基板により構成したとしても、十分に本目的に使用可能であることは、発明者らの試験で明らかとなっている。したがって、基板22をガラスエポキシ基板により構成してもよい。また、ガラスエポキシ基板とすることはコストの削減につながるというメリットもある。」 (1b) 「【0049】 固体発光素子26は、例えばLEDであり、発明者らは、照明装置1を照明用途に使用することを鑑み投入電力が1WクラスのハイパワーLEDを採用した。また、採用した前記ハイパワーLEDは表面実装型である。電極の面積が大きく、それ故基板22との接する面積が大きくなり、その駆動ロスとして発生した熱の効果的な放熱を実現できるものである。」 (1c) 「【0103】 (実施の形態2) 以下、本発明の実施の形態2に係る照明装置101について、図面を参照しながら詳細に説明する。 【0104】 図8は、照明装置101の外観を示す平面図である。図9は、図8におけるB1方向から見た照明装置101の平面図である。図10Aは、図9におけるB5-B6面の構造を示す端面図である。 【0105】 照明装置101が、照明装置1と異なる点は、筐体3が筐体103に変更される点のみである。その他の構成要素については、照明装置1と同一の符号を付し、説明を省略する。 【0106】 筐体103には、筐体3に設けられていた支持プレート31a、31bに変わり、支持プレート131a、131bが設けられる。 【0107】 この、支持プレート131a、131bも、支持プレート31a、31b同様に、筐体103の内壁面、かつ固体発光素子26の発光方向の両側面に設けられ、筐体103の長手方向(X方向)に沿って筐体103と一体に形成される。 【0108】 そしてやはり、支持プレート32a、32bとの間に支持体21を嵌合配置することで、筐体103と支持体21との密着配置を実現している。 【0109】 さらに、支持プレート131a、131bには、基板22を、支持体21を介して、支持プレート32a、32bとの間に嵌合配置できるよう段が設けられている。 【0110】 このように基板22を嵌合配置することで、支持体21からの基板22の浮き上がり(剥がれ)を防止できるという効果がある。 【0111】 ここで、支持体21と基板22とは、接着剤等により密着配置の上、固定している。したがって、通常であれば、支持体21からの基板22の浮き上がりは想定されない。したがって、支持プレート131a、131bによる基板22の嵌合配置は万が一に備えたものではあるが、このように構成することにより、もし支持体21からの基板22の浮き上がりが発生した場合にも、照明装置101の放熱性を維持できるという効果がある。」 イ 刊行物に記載された発明 (ア)刊行物の図10Aを参照すると、基板22に固体発光素子26が実装されていることが、明らかである。 (イ)刊行物の図10Aを参照すると、筐体103の内面には、一側に支持プレート131aと支持プレート32aとにより凹部が形成され、他側に支持プレート131bと支持プレート32bとにより凹部が形成されていることが、明らかである。 (ウ)刊行物の図10Aから、上記凹部内に、基板22と支持板21とが保持されていることが、明らかである。 (エ)上記(ア)?(ウ)の事項、上記ア(1a)?(1c)の記載事項及び刊行物の図10Aの記載事項から、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「筐体103と、 基板22と前記基板22に実装された固体発光素子26とを有し、前記筐体103の内部に設けられた固体発光素子26が実装された基板22と、 支持体21とを備え、 前記基板22と支持体21とは接着剤等により密着配置されており、 前記筐体103の内面には、一側に支持プレート131aと支持プレート32aとにより凹部が形成され、他側に支持プレート131bと支持プレート32bとにより凹部が形成され、 前記基板22及び前記支持体21の両端部は、前記各凹部内に保持される照明装置101。」 (2)対比 ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「筐体103」は、刊行物の図10Aから、明らかに「管状」であり、本願補正発明の「管状の筐体」に相当する。 (イ)引用発明の「基板22」は、本願補正発明の「基板」に相当する。また、引用発明の「固体発光素子26」は、刊行物の「固体発光素子26は、例えばLEDであり」(上記(1)ア(1b)の記載事項を参照)という記載に照らして、本願補正発明の「半導体発光素子」に相当する。 そうすると、引用発明の「固体発光素子26が実装された基板22」は、基板22(基板)と前記基板22(基板)に実装された固体発光素子26(半導体発光素子)とを有しているので、本願補正発明の「発光モジュール」に相当する。 (ウ)引用発明の「支持体21」は、上記(1)ア(1a)の記載事項を参照すると、放熱機能を有しているから、本願補正発明の「放熱板」に相当する。 引用発明の「接着剤等により密着配置」は、本願補正発明の「接合」に相当する。 そうすると、引用発明の「基板22と支持体21とは接着剤等により密着配置されており」は、本願補正発明の「基板と放熱板とは接合されており」に相当する。 (オ)引用発明の「前記筐体103の内面には、一側に支持プレート131aと支持プレート32aとにより凹部が形成され、他側に支持プレート131bと支持プレート32bとにより凹部が形成され」は、本願補正発明の「前記筐体の内面には、少なくとも2つの凹部が形成され」に相当する。 (カ)引用発明の「照明装置101」は、本願補正発明の「ランプ」に相当する。 イ 以上より、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「管状の筐体と、 基板と前記基板に実装された半導体発光素子とを有し、前記筐体の内部に設けられた発光モジュールと、 放熱板とを備え、 前記基板と放熱板とは接合されており、 前記筐体の内面には、少なくとも2つの凹部が形成される ランプ。」 <相違点> 本願補正発明では、「前記基板の両端部は、前記2つの凹部内に保持され、前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい」のに対して、引用発明では、「前記基板22及び前記支持体21の両端部は、前記各凹部内に保持される」点。 (3)判断 以下、相違点について検討する。 (ア)独立特許要件を検討する前提として、3.の冒頭で述べたとおり、本願補正発明は、記載事項Aを前提とした記載事項C(凹部410の幅は、基板301の厚み及び放熱板500の厚みの合計より大きい(あるいは合計と略等しい))を意味する。 (イ)引用発明では、「前記基板22及び前記支持体21の両端部は、前記各凹部内に保持される」ことから、基板の両端部は、2つの凹部内に保持されているといえる。 (ウ)引用発明において、凹部の幅は、上記(イ)で述べた保持を可能とする幅、すなわち、基板22と支持体21との厚みの合計より大きい(あるいは合計と略等しい)幅であることは自明である。 (エ)そうすると、上記相違点は、実質的には相違点とはいえず、一致点であるといえる。 (4)小括 したがって、本願補正発明は、本願の出願前に頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-3.特許法第29条の2(拡大先願)について (1)先願明細書等に記載の事項及び発明 ア 先願明細書等に記載の事項 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた、特開2009-191059号(特開2011-44306号)の特許出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。 (1A) 「【0022】 (支持基板の構成) LED照明灯1の支持基板50は、図2及び図3(a)に示すように、パイプ部材10の長手方向に延在する金属プレートからなる。この支持基板50の幅方向両側端部は、パイプ部材10の凹部11の開口端面に係合する縁部係合面51と、凹部11の内面に当接する縁部当接面52とが長手方向に沿って形成された段部形状をなしている。支持基板50のLED基板載置面とは反対側の裏面には、長手方向に延在する一対の補強リブ53,53のそれぞれが突設されている。支持基板50としては、例えば幅18mm程度、厚さ2mm程度のものが用いられる。」 (1B) 「【0023】 支持基板50の材質としては、例えば鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの熱伝導性の優れた金属材料を使用することが好適である。この支持基板50が熱伝導性の良い材料で形成されることで、放熱部材としての機能を有する。LED41からの熱はLED基板40及び絶縁シート42を介して支持基板50に伝熱され、LED41及びその周辺部に熱が蓄積することを防止することができる。温度変化に伴って、パイプ部材10と支持基板50との間に伸縮量の差が発生したとしても、パイプ部材10の長手方向の両側端部は、ジョイント部材30の充填凹部34内に充填材35を介して伸縮自在に取り付けられているので、パイプ部材10と支持基板50との相対位置の変化を抑えることができる。」 (1C) 「【0024】 (LED基板の構成) 支持基板50には、図2及び図3(a)に示すように、絶縁シート42を介してパイプ部材10の長手方向に延在するLED基板40がビス43により締付固定されており、このLED基板40、絶縁シート42、及び支持基板50がユニット化されている。LED基板40の材質は、例えばガラス基材(例えば、FR-4等)又はエポキシ系・ポリエステル系コンポジット基材(例えば、CEM-3等)の材料からなる。」 イ 先願発明 (ア)先願明細書等の図2及び図3を参照すると、LED基板40にLED41が実装されていることが、明らかである。 (イ)上記(ア)の事項、上記ア(1A)?(1C)の記載事項及び先願明細書等の図1?3の記載事項から、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。 「パイプ部材10と、 LED基板40と前記LED基板40に実装されたLED41とを有し、前記パイプ部材10の内部に設けられたLED41が実装されたLED基板40と、 支持基板50とを備え、 前記LED基板40と支持基板50とは絶縁シート42を介してビス43により締結固定されており、 前記パイプ部材10の内面には、2つの凹部11,11が形成され、 前記LED基板40及び前記支持基板50の両端部は、前記2つの凹部11,11内に保持される LED照明灯1。」 (2)対比 ア 本願補正発明と先願発明とを対比する。 (ア)先願発明の「パイプ部材10」は、本願補正発明の「管状の筐体」に相当する。 (イ)先願発明の「LED基板40」及び「LED41」は、それぞれ、本願補正発明の「基板」及び「半導体発光素子」に相当する。 そうすると、先願発明の「LED41が実装されたLED基板40」は、LED基板40(基板)と前記LED基板40(基板)に実装されたLED41(半導体発光素子)とを有しているので、本願補正発明の「発光モジュール」に相当する。 (ウ)先願発明の「支持基板50」は、上記(1)ア(1B)の記載事項を参照すると、放熱部材としての機能を有しているから、本願補正発明の「放熱板」に相当する。 (エ)先願発明の「前記パイプ部材10の内面には、2つの凹部11,11が形成され」は、本願補正発明の「前記筐体の内面には、少なくとも2つの凹部が形成され」に相当する。 (オ)先願発明の「LED照明灯1」は、本願補正発明の「ランプ」に相当する。 イ 以上より、本願補正発明と先願発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「管状の筐体と、 基板と前記基板に実装された半導体発光素子とを有し、前記筐体の内部に設けられた発光モジュールと、 放熱板とを備え、 前記筐体の内面には、少なくとも2つの凹部が形成される ランプ。」 <相違点1> 本願補正発明では、「前記基板と放熱板とは接合されて」いるのに対して、先願発明では、「前記LED基板40と支持基板50とは絶縁シート42を介してビス43により締結固定されて」いる点。 <相違点2> 本願補正発明では、「前記基板の両端部は、前記2つの凹部内に保持され、前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい」のに対して、先願発明では、「前記LED基板40及び前記支持基板50の両端部は、前記2つの凹部11,11内に保持される」点。 (3)判断 以下、相違点について検討する。 ア <相違点1について> (ア)「接合」は、「つぎあわすこと」(株式会社岩波書店広辞苑第6版)を意味し、板と板とが接合されていることは、板同士がつぎあわされていれば足りるものと解させれる。そうすると、先願発明の「前記LED基板40と支持基板50とは絶縁シート42を介してビス43により締結固定されて」いることは、LED基板40と支持基板50とがつぎあわされていることが明らかであるから LED基板40と支持基板50とが絶縁シート42を介して接合されているといえる。 (イ)そうすると、先願発明の「前記LED基板40と支持基板50とは絶縁シート42を介してビス43により締結固定されて」いることは、LED基板40と支持基板50とが接合されているといえるから、本願補正発明の「前記基板と放熱板とは接合されて」いることに相当するといえる。 (ウ)本願補正発明の「接合」が、基板と放熱板とを直接接合することを意味しているとしても、板部材同士を直接接合することも、シートのような何らかの部材を介して板部材同士を接合することも、いずれも、かかる技術分野においては例示するまでもない周知技術であって、先願発明の「前記LED基板40と支持基板50とは絶縁シート42を介してビス43により締結固定されて」いること(間接的に接合されていること)を、本願補正発明の「前記基板と放熱板とは接合されて」いること(直接接合されていること)とすることは、単なる周知技術の置換にすぎず、それらに構成上の相違があったとしても、その相違は設計上の微差にすぎない。 (エ)したがって、上記相違点1は、実質的には相違点とはいえず、一致点であるといえる。 イ <相違点2について> (ア)独立特許要件を検討する前提として、3.の冒頭で述べたとおり、本願補正発明は、記載事項Aを前提とした記載事項C(凹部410の幅は、基板301の厚み及び放熱板500の厚みの合計より大きい(合計と略等しい))を意味する。 (イ)先願発明では、「前記LED基板40及び前記支持基板50の両端部は、前記2つの凹部11,11内に保持される」ことから、基板の両端部は、2つの凹部内に保持されているといえる。 (ウ)先願発明において、凹部の幅は、上記(イ)で述べた保持を可能とする幅、すなわち、LED基板40と支持基板50との厚みの合計より大きい(あるいは合計と略等しい)幅であることは自明である。 (エ)そうすると、上記相違点2は、実質的には相違点とはいえず、一致点であるといえる。 (4)小括 したがって、本願補正発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明(先願発明)と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成27年1月8日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成26年5月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2 1.(2)の請求項1に記載のとおりのものである。 2.特許法第29条第1項第3号(新規性)について (1)刊行物に記載の事項及び発明 ア 刊行物に記載の事項 刊行物の記載事項は、上記第2 3.3-2.(1)アに示したとおりである。 イ 刊行物に記載された発明 刊行物に記載された発明は、上記第2 3.3-2.(1)イに示した「引用発明」のとおりである。 (2)対比・判断 ア 本願発明と引用発明とを対比する。 本願発明は、本願補正発明から、「前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい」という限定事項を、省いたものである。 イ そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2 3.3-2.(3)で述べたとおり、引用発明と同一の発明と判断できるから、本願発明も同様の理由により引用発明と同一の発明といえる。 (3)小括 本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 3.特許法第29条の2(拡大先願)について (1)先願明細書等に記載の事項及び発明 ア 先願明細書等に記載の事項 先願明細書等の記載事項は、上記第2 3.3-3.(1)アに示したとおりである。 イ 先願発明 先願発明は、上記第2 3.3-3.(1)イに示した「先願発明」のとおりである。 (2)対比・判断 ア 本願発明と先願発明とを対比する。 本願発明は、本願補正発明から、「前記2つの凹部の各々の幅は、前記基板の前記両端部の各々の厚みよりも大きい」という限定事項を、省いたものである。 イ そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2 3.3-3.(3)で述べたとおり、先願発明と同一の発明と判断できるから、本願発明も同様の理由により先願発明と同一の発明といえる。 (3)小括 本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明(先願発明)と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明(先願発明)と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-17 |
結審通知日 | 2015-11-24 |
審決日 | 2015-12-08 |
出願番号 | 特願2010-293683(P2010-293683) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) P 1 8・ 57- Z (H01L) P 1 8・ 113- Z (H01L) P 1 8・ 161- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 良隆 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 一ノ瀬 覚 |
発明の名称 | ランプ及び照明装置 |
代理人 | 新居 広守 |
代理人 | 道坂 伸一 |
代理人 | 寺谷 英作 |