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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1310378
審判番号 不服2015-13634  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-17 
確定日 2016-01-25 
事件の表示 特願2015- 6937「回転角度測定装置及び回転角度測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日出願公開、特開2015- 92189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年2月12日を国際出願日とする特願2013-558688号の一部を、平成27年1月16日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願(特願2015-6937号)としたものである。
平成27年3月24日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「補正1」という。)がなされ、同年4月16日付け(送達日:同年同月20日)で拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年7月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。


第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のとおり補正するものである。

(本件補正前)
「【請求項1】
回転を一定範囲内とした支持基準体と、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体との相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段と、
を備える回転角度測定装置。
【請求項2】
前記相対角度検出手段は、前記回転体の回転に伴って周期的に発生する周期誤差の発生周期よりも小さな回転角度毎に前記回転体の相対的な回転角度を検出する請求項1に記載の回転角度測定装置。
【請求項3】
前記レーザ干渉式角度補正判断手段は、前記相対角度検出手段による相対的な回転角度の検出と同時に前記支持基準体の角度補正を判断する請求項1又は2に記載の回転角度測定装置。
【請求項4】
前記相対角度検出手段は、ロータリエンコーダである請求項1?3のいずれか1項に記載の回転角度測定装置。
【請求項5】
回転を一定範囲内とした支持基準体に対し全周回転自在に軸支された回転体の相対的な回転角度を検出する相対角度検出ステップと、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断ステップと、
を含む回転角度測定方法。
【請求項6】
前記相対角度検出ステップは、前記回転体の回転に伴って周期的に発生する周期誤差の発生周期よりも小さな回転角度毎に前記回転体の相対的な回転角度を検出する請求項5に記載の回転角度測定方法。
【請求項7】
前記レーザ干渉式角度補正判断ステップは、前記相対角度検出ステップによる相対的な回転角度の検出と同時に前記支持基準体の角度補正を判断する請求項5又は6に記載の回転角度測定方法。」

(本件補正後)
「【請求項1】
回転を一定範囲内とした支持基準体と、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体との相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段と、
を備える回転角度測定装置。
【請求項2】
前記相対角度検出手段は、前記回転体の回転に伴って周期的に発生する周期誤差の発生周期よりも小さな回転角度毎に前記回転体の相対的な回転角度を検出する請求項1に記載の回転角度測定装置。
【請求項3】
前記相対角度検出手段は、ロータリエンコーダである請求項1又は2に記載の回転角度測定装置。
【請求項4】
回転を一定範囲内とした支持基準体に対し全周回転自在に軸支された回転体の相対的な回転角度を検出する相対角度検出ステップと、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断ステップと、
を含む回転角度測定方法。
【請求項5】
前記相対角度検出ステップは、前記回転体の回転に伴って周期的に発生する周期誤差の発生周期よりも小さな回転角度毎に前記回転体の相対的な回転角度を検出する請求項4に記載の回転角度測定方法。」
(下線は補正箇所。)

(1)本件補正は、本件補正前の請求項3及び7を削除するものであって、請求項の削除を目的とするものに該当する。

(2)本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段」を、「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段」と限定し、また、本件補正前の請求項5に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断ステップ」を、「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断ステップ」と限定し、請求項4とするものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2 独立特許要件
(1)分割要件
本願は、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(分割出願)であるとされているから、まず、本願が適法に分割されたものであるか否かを検討する。

ア 特許出願の分割は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とするものであるから、以下の(要件1)及び(要件3)が満たされる必要がある。また、分割出願が原出願の時にしたものとみなされるという特許出願の分割の効果を考慮すると、以下の(要件2)も満たされる必要がある。ただし、原出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)について補正をすることができる時期に特許出願の分割がなされた場合は、(要件2)が満たされれば、(要件3)も満たされることとする。
(参考:特許・実用新案審査基準 第VI部第1章第1節「2.2 特許出願の分割の実体的要件」)

(要件1) 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。
(要件2) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
(要件3) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。

イ 本願についてみると、特許出願の分割がなされたのは、原出願(特願2013-558688号)の特許をすべき旨の査定の謄本送達日(平成26年12月18日)から30日以内である平成27年1月16日であって、原出願の明細書等について補正をすることができる時期ではないため、上記(要件2)とは別に上記(要件3)が満たされなければならないから、まず、(要件3)が満たされているか否かを検討する。

(ア)本件補正後の請求項1に記載された「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段」、及び本件補正後の請求項4に記載された「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断ステップ」等に関して、審判請求人は審判請求書の「4.本願発明が特許されるべき理由」「(1)分割要件について」において、以下のように主張している。

「まず、本願の親出願は、審査官が指摘するとおり補正されており、本願の親出願の分割直前の明細書等には、本願の親出願の出願当初の明細書等の[0075]-[0077]、[0091]、[0107]、図7-9、12、特に、ステップS28,ステップS54、には対応する記載がないことは認める。
しかしながら、平成27年3月24日付け意見書にて主張したとおり、本願の親出願の分割直前の明細書の段落[0038]、[0044]-[0083]、図1、図3-7には、請求項1に記載の「レーザ干渉式角度補正判断手段」に相当する構成として、レーザ干渉ユニット40及びデータ処理部62が記載されている。
すなわち、レーザ干渉ユニット40は、エンコーダ軸22(回転体に相当)及びエンコーダ本体26(支持基準体に相当)に接触しない位置を基準として、エンコーダ本体26の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、この2つのレーザ光の光路長差から、データ処理部62は、エンコーダ本体26が回転しているか否かを判断することによって、エンコーダ本体26に対するエンコーダ軸22の回転角度の角度補正の判断を行っている。
したがって、本願発明1-5は、本願の親出願の分割直前の明細書等に明確に記載されており、本願は分割要件を満たさないという拒絶査定における上記認定は妥当性を著しく欠くものである。」

(イ)確かに、原出願の分割直前の明細書等の段落【0038】、【0044】?【0083】、【図1】、【図3】?【図7】には、「レーザ干渉ユニット40」及び「データ処理部62」が記載され、また、「データ処理部62」の「回転角度補正部68」が、「ステップS26で算出されたエンコーダ本体26の回転角度θ2に基づき、ステップS22で算出されたエンコーダ軸22の回転角度θ1を補正する(ステップS30)。具体的には、エンコーダ軸22の回転角度θ1にエンコーダ本体26の回転角度θ2を加算することにより、エンコーダ軸22の軸偏心に起因する偏心誤差が取り除かれた補正後の回転角度θ1´を算出する」(段落【0075】)ことが記載されていると認められる。
しかしながら、原出願の分割直前の明細書等には、エンコーダ軸22の回転角度θ1にエンコーダ本体26の回転角度θ2を加算するにあたり、「支持基準体が回転しているか否かを判断する」、「回転角度の角度補正を判断する」、「レーザ干渉式角度補正判断手段」、及び「レーザ干渉式角度補正判断ステップ」という記載はないし、原出願の出願当初の明細書等に記載されていたステップS28、ステップS54に関する記載はない。また、原出願の分割直前の明細書等の段落【0075】、【0091】、【図7】、【図9】等によれば、エンコーダ軸の回転角度θ1を算出するステップ(S22・S48)及びエンコーダ本体の回転角度θ2を算出するステップ(S26・S52)から回転角度θ1を補正するステップ(S30・S56)までの間に「判断」、すなわち、基準などに従い、判定を下すことを行っているとは認められない。さらに、原出願の分割直前の明細書等に、「レーザ干渉ユニット40」及び「データ処理部62」が記載されているからといって、「レーザ干渉ユニット40」及び「データ処理部62」が、「支持基準体が回転しているか否かを判断する」及び「回転角度の角度補正を判断する」ということまで記載されているということにはならない。
そうすると、原出願の分割直前の明細書等には、本件補正後の請求項1に記載された「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段」、及び本件補正後の請求項4に記載された「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断ステップ」が記載されていると認められない。

(ウ)そして、「レーザ干渉式角度補正判断手段」が「前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断する」ことにより、回転角度の角度補正を行わなくてもよい場合ができ、処理を簡略化できる、という技術的意義があると認められる。
また、「レーザ干渉式角度補正判断ステップ」で「前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断する」ことにより、回転角度の角度補正を行わなくてもよい場合ができ、処理を簡略化できる、という技術的意義があると認められる。
よって、本件補正後の請求項1及び4には、新たな技術的事項が導入されることとなったものと認められるから、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず、上記(要件3)を満たしていない。

(エ)したがって、上記(要件1)及び(要件2)について検討するまでもなく、本願は適法に分割されたものではない。

(2)本願出願日
以上のとおり、本願は適法に分割されたものではないから、特許法第44条第2項本文の適用はなく、本願の出願日は現実の出願日である平成27年1月16日である。
また、本願の出願日は、優先権主張の基礎となる出願とされている特願2012-30828号(出願日:平成24年2月15日)及び特願2012-245265号(出願日:平成24年11月7日)のいずれの出願日からも1年を超えた平成27年1月16日であるから、優先権主張を認めることはできない。

(3)本願補正発明
本願補正発明を再掲する。
「回転を一定範囲内とした支持基準体と、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体との相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段と、
を備える回転角度測定装置。」

(4)引用例記載の事項・引用発明
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2013/122037号(以下、「引用例」という。)には、次の事項(a)ないし(g)が記載されている。なお、下線は当審が引いた。

(a)
「[請求項1] 任意の回転軸方向において、一定範囲内に回転が規制された支持基準体と、前記支持基準体に連結され、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体とを有し、前記支持基準体に対する前記回転体の相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転角度を検出する非接触式角度検出手段と、
を備える回転角度測定装置。」

(b)
「[0039] 図1及び図2に示すように、ロータリエンコーダ12は、回転移動軸20に連結されるエンコーダ軸22と、エンコーダ軸22を回転自在に軸支するエンコーダ本体26とから主に構成される。なお、エンコーダ本体26は、任意の回転軸方向において、一定範囲に回転に回転規制された支持基準体である。また、エンコーダ軸22は、支持基準体としてのエンコーダ本体26に連結され、エンコーダ本体26に対し全周回転自在に軸支された回転体である。」

(c)
「[0047] 光ヘッド44には偏光ビームスプリッタ52及び直角プリズム54が隣接して配置されている。レーザ光源50から発光されたレーザ光は、第1の光ファイバ48Aを介して光ヘッド44に入射されると、まず始めに、偏光ビームスプリッタ52に入射され、偏光ビームスプリッタ52で2つのレーザ光に分割される。分割された一方のレーザ光(第1のレーザ光)は、第1のコーナーキューブ42Aに入射して逆方向に戻り、再び偏光ビームスプリッタ52に入射する。分割されたもう一方のレーザ光(第2のレーザ光)は、直角プリズム54で反射され、第1のレーザ光の光軸と平行な平行光となって第2のコーナーキューブ42Bに入射して逆方向に戻り、再び直角プリズム54及び偏光ビームスプリッタ52で反射されて、第1のコーナーキューブ42Aで反射された光と干渉し、干渉したレーザ光(干渉光)は第2の光ファイバ48Bを介して光検出器46に対して出力される。」

(d)
「[0048] 光検出器46は、光ヘッド44から出力される干渉光に基づき、各コーナーキューブ42A、42Bで反射されて戻ってきた光(第1及び第2のレーザ光)の光路長差(位相差)を検出し、検出した光路長差を示す光路長差データをデータ処理装置18に対して出力する。なお、光路長差の検出原理は公知であるため、ここでは詳しい説明を省略するが、エンコーダ本体26の微小な回転運動に伴って反射ユニット38の回転角度が変化すると、第1のコーナーキューブ42Aで反射されて戻る経路と第2のコーナーキューブ42Bで反射されて戻る経路の光路長が変化する。このとき、干渉光の縞数が変化するので、この干渉光の縞数の変化をカウントすることにより、第1及び第2のレーザ光の光路長差を求めることができる。」

(e)
「[0055] エンコーダ本体回転角度算出部66は、レーザ干渉ユニット(光検出器46)から出力された光路長差データを取得し、取得した光路長差データに基づいてエンコーダ本体26の回転角度θ2を算出する。エンコーダ本体回転角度算出部66で算出された回転角度θ2は、回転角度補正部68に対して出力される。」

(f)
「[0075] θ2≒x/2L ・・・(2)
次に、回転角度補正部68は、エンコーダ本体26の回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断を行う(ステップS28)。そして、エンコーダ本体26の回転角度θ2が閾値εよりも大きい場合には、ステップS26で算出されたエンコーダ本体26の回転角度θ2に基づき、ステップS22で算出されたエンコーダ軸22の回転角度θ1を補正する(ステップS30)。具体的には、エンコーダ軸22の回転角度θ1にエンコーダ本体26の回転角度θ2を加算することにより、エンコーダ軸22の軸偏心に起因する偏心誤差が取り除かれた補正後の回転角度θ1’を算出し、現在の測定点(計測位置)における割り出し角度を補正後の回転角度θ1’とし、次のステップS32に進む。
[0076] 一方、エンコーダ本体26の回転角度θ2が閾値ε以下の場合には、エンコーダ軸22の回転角度θ1の補正は行わずに、現在の測定点における割り出し角度を回転角度θ1とし、次のステップS32に進む。」

(g)


・上記記載(a)より、
(ア)「一定範囲内に回転が規制された支持基準体と、前記支持基準体に連結され、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体とを有し、前記支持基準体に対する前記回転体の相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転角度を検出する非接触式角度検出手段と、
を備える回転角度測定装置。」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(b)及び(c)を参酌すると、上記記載(g)より、
(イ)前記支持基準体の回転角度を検出する非接触式角度検出手段は、「支持基準体であるエンコーダ本体26の回転軸に対して垂直方向に第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光を照射する」との技術的事項が見て取れる。

・上記記載(d)及び(e)を参酌すると、上記記載(g)より、
(ウ)前記支持基準体の回転角度を検出する非接触式角度検出手段は、「干渉光に基づき、第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光の光路長差を検出し、光路長差データに基づいてエンコーダ本体26の回転角度θ2を算出する」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(b)及び(f)より、
(エ)「回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断を行い、回転角度θ2が閾値εよりも大きい場合には、回転角度θ2に基づき、回転体であるエンコーダ軸22の回転角度θ1を補正し、回転角度θ2が閾値ε以下の場合には、回転角度θ1の補正は行わない回転角度補正部68」との技術的事項が読み取れる。

イ 引用発明
以上の技術的事項(ア)ないし(エ)を総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「一定範囲内に回転が規制された支持基準体と、前記支持基準体に連結され、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体とを有し、前記支持基準体に対する前記回転体の相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、支持基準体であるエンコーダ本体26の回転軸に対して垂直方向に第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光を照射し、干渉光に基づき、第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光の光路長差を検出し、光路長差データに基づいてエンコーダ本体26の回転角度θ2を算出することにより、前記支持基準体の回転角度を検出する非接触式角度検出手段と、
回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断を行い、回転角度θ2が閾値εよりも大きい場合には、回転角度θ2に基づき、回転体であるエンコーダ軸22の回転角度θ1を補正し、回転角度θ2が閾値ε以下の場合には、回転角度θ1の補正は行わない回転角度補正部68と、
を含む回転角度測定装置。」(以下、「引用発明」という。)

(5)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明における「一定範囲内に回転が規制された支持基準体と、前記支持基準体に連結され、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体とを有し、前記支持基準体に対する前記回転体の相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段」は、本願補正発明における「回転を一定範囲内とした支持基準体と、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体との相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段」に相当する。

イ 引用発明において、「干渉光に基づき、第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光の光路長差を検出し、光路長差データに基づいてエンコーダ本体26の回転角度θ2を検出」し、「回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断を行」うことは、2つのレーザ光の光路長差から、支持基準体であるエンコーダ本体26の回転状態について判断することであるといえる。
また、引用発明において、「回転角度θ2が閾値εよりも大きい場合には、回転角度θ2に基づき、回転体であるエンコーダ軸22の回転角度θ1を補正し、回転角度θ2が閾値ε以下の場合には、回転角度θ1の補正は行わない」ことは、支持基準体であるエンコーダ本体26の回転状態によって、相対角度検出手段により検出された回転角度θ1の角度補正をするか否かを判断することであるといえる。
さらに、引用発明においては、「干渉光に基づき、第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光の光路長差を検出し、光路長差データに基づいてエンコーダ本体26の回転角度θ2を検出」し、その「回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断を行い、回転角度θ2が閾値εよりも大きい場合には、回転角度θ2に基づき、回転体であるエンコーダ軸22の回転角度θ1を補正」するから、レーザ干渉式の角度補正判断をしているといえる。
そうすると、引用発明における「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、支持基準体であるエンコーダ本体26の回転軸に対して垂直方向に第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光を照射し、干渉光に基づき、第1のレーザ光及び第2のレーザ光という2つのレーザ光の光路長差を検出し、光路長差データに基づいてエンコーダ本体26の回転角度θ2を算出することにより、前記支持基準体の回転角度を検出する非接触式角度検出手段と、回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断を行い、回転角度θ2が閾値εよりも大きい場合には、回転角度θ2に基づき、回転体であるエンコーダ軸22の回転角度θ1を補正し、回転角度θ2が閾値ε以下の場合には、回転角度θ1の補正は行わない回転角度補正部68」と、本願補正発明における「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段」とは、共に、「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の回転状態について判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段」である点で共通している。

ウ 以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下の通りである。

(一致点)
「回転を一定範囲内とした支持基準体と、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体との相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の回転状態について判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段と、
を備える回転角度測定装置。」

(相違点)
支持基準体の回転状態についての判断に関し、本願補正発明では、「回転しているか否かを判断する」のに対し、引用発明では、「回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断」する点。

(6)判断
上記相違点について検討する。
ア 本願補正発明における「回転しているか否かを判断する」が、角度補正を必要とするだけ回転しているか否かを判断するという意味であれば、引用発明においても閾値εを用いて角度補正を必要とするだけ回転しているか否かを判断しているから、上記相違点は実質的な相違点ではない。

イ 本願補正発明における「回転しているか否かを判断する」が、回転したか否かを判断するという意味であれば、引用発明における閾値εは、通常小さな値であるし、要求される回転角度の測定精度に応じて当業者が適宜設定すべき値であるから、閾値εを0として、回転したか否かを判断するようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
また、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

したがって、本願補正発明は引用発明であるから(上記ア)、特許法第29条第1項3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、又は、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから(上記イ)、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(7)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「回転を一定範囲内とした支持基準体と、前記支持基準体に対し全周回転自在に軸支された駆動する回転体との相対的な回転角度を検出する相対角度検出手段と、
前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段と、
を備える回転角度測定装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、本願の請求項1ないし7に係る発明は、国際公開第2013/122037号(引用例)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、又は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 分割要件
本願は、特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(分割出願)であるとされているから、まず、本願が適法に分割されたものであるか否かを検討する。
上記「第2」「2」「(1)分割要件」で説示したのと同様の理由により、原出願の分割直前の明細書等には、補正1後の請求項1に記載された「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断手段」、及び補正1後の請求項5に記載された「前記回転体及び前記支持基準体に接触しない位置を基準として、前記支持基準体の回転軸に対して垂直方向に2つのレーザ光を照射し、前記2つのレーザ光の光路長差から、前記支持基準体の角度補正を判断するレーザ干渉式角度補正判断ステップ」が記載されているとは認められず、補正1後の請求項1及び5には、新たな技術的事項が導入されることとなったものと認められる。
よって、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえない(上記(要件3)を満たしていない)から、本願は適法に分割されたものではない。

4 本願出願日
以上のとおり、本願は適法に分割されたものではないから、特許法第44条第2項本文の適用はなく、本願の出願日は現実の出願日である平成27年1月16日である。
また、本願の出願日は、優先権主張の基礎となる出願とされている特願2012-30828号(出願日:平成24年2月15日)及び特願2012-245265号(出願日:平成24年11月7日)のいずれの出願日からも1年を超えた平成27年1月16日であるから、優先権主張を認めることはできない。

5 引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された発明は、上記「第2」「2」「(4)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

6 対比・判断
本願補正発明と引用発明との相違点は、上記「第2」「2」「(5)」「ウ」「(相違点)」に記載したとおり、「支持基準体の回転状態についての判断に関し、本願補正発明では、「回転しているか否かを判断する」のに対し、引用発明では、「回転角度θ2が閾値εよりも大きいか否かの判断」する点」である。これに対し、本願発明は、本願補正発明から「レーザ干渉式角度補正判断手段」についての限定事項である「が回転しているか否かを判断することによって、前記相対角度検出手段により検出された前記回転角度」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明との間に相違点はないから、本願発明は引用発明である。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-30 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-14 
出願番号 特願2015-6937(P2015-6937)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
P 1 8・ 113- Z (G01D)
P 1 8・ 575- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
関根 洋之
発明の名称 回転角度測定装置及び回転角度測定方法  
代理人 松浦 憲三  

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