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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1310609
審判番号 不服2014-18122  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-10 
確定日 2016-02-04 
事件の表示 特願2013-237077「電池」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開、特開2014- 53325〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年 5月27日に出願した特願2002-151808号(以下、「原出願」という。)の一部を平成21年 2月16日に新たな特許出願(特願2009-032907号)とし、該新たな特許出願の一部をさらに平成25年 7月22日に新たな特許出願(特願2013-152002号)とし、該新たな特許出願の一部をさらに同年11月15日に新たな特許出願としたものであって、平成26年 1月20日付けで拒絶理由が通知され、同年 3月27日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がされたが、同年 6月 6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年 9月10日に拒絶査定不服の審判請求がされると同時に、特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がされ、同年10月17日付けで前置報告がなされたものである。


第2 平成26年 9月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定
1. 補正の却下の決定の結論
平成26年 9月10日付けの手続補正を却下する。

2. 理由
(1) 補正の内容
平成26年 9月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(A)から(B)とする補正事項aを含む(下線部は補正部分である。)。

(A)「【請求項1】
電池外装体と、
前記電池外装体の外部に配置された外部接続端子と、
端部に活物質未塗工部を有する巻回型の発電要素と、
前記発電要素と前記外部接続端子とを接続する集電接続板とを備え、
前記集電接続板は、
前記発電要素の端部から前記発電要素の中央方向に水平に延びるとともに前記外部接続端子と接続される本体部と、
前記本体部から突設されて前記活物質未塗工部の重なりの外側面に接合される接続板部とを有する
電池。」

(B)「 【請求項1】
電池外装体と、
前記電池外装体の外部に配置された外部接続端子と、
端部に活物質未塗工部を有する巻回型の発電要素と、
前記発電要素と前記外部接続端子とを接続する集電接続板とを備え、
前記集電接続板は、
前記発電要素の端部から前記発電要素の中央方向に水平に延びるとともに前記外部接続端子と接続される本体部と、
前記本体部から突設されて、前記活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間に、表面が接合される接続板部とを有する
電池。」

(2) 補正の目的
上記の補正事項aは、請求項1に記載の「接続板部」についての、補正前の「前記本体部から突設されて前記活物質未塗工部の重なりの外側面に接合される」との特定事項を、「前記本体部から突設されて、前記活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間に、表面が接合される」に限定する、すなわち、接合態様を限定するものであって、この限定によっても、産業の利用分野及び解決しようとする課題は同一のままであるから、上記の補正事項aは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、独立特許要件について、すなわち、上記の補正事項aを含む本件補正により特許請求の範囲が減縮された請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。


(3) 独立特許要件
ア. 本件補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記(B)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

イ. 刊行物及びその記載事項・視認事項
本願の原出願日前に頒布され、原査定で引用された、特開2002-100340号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載され、視認される(「…」は記載の省略を表す。)。

(イ-1)「(実施例7)実施例7は、図17に示されたように、一方の長辺部に厚密化部24、34が形成された扁平型状巻回型電極体1と、厚密化部24が形成された長辺部の外周面に軸部51が配置され径方向に架橋部52が形成された電極端子5と、を有する以外は、実施例1と同様な構成の電池である。
扁平形状巻回型電極体1は、突出端部23、33の長辺部の一方のみを径方向に圧縮して厚密化部24、34が形成された。
電極端子5は、突出端部23、33の厚密化部24、34が形成された一方の長辺部の外周面に沿って配される軸部51と、軸部51から突出端部23、33の突出した方向に沿って突出した突起よりなるとともに突出端部23、33と接合されて架橋部52を形成する突起部54と、を有する。」(【0106】?【0108】)

(イ-2)「(実施例1)実施例1は、図1に示された、正極板2、負極板3およびセパレータ4を有する扁平形状巻回型電極体1と、扁平形状巻回型電極体1の巻回軸の両端面のそれぞれに接合された正極端子55および負極端子56よりなる電極端子5と、を有する電池である。
扁平形状巻回型電極体1は、帯状の正極板2および負極板3と両極板2、3間に介在するセパレ-タ4とが巻回された状態で扁平形状に成形された電極体である。
正極板2は、帯状のアルミニウムシートからなる正極集電体の両面に正極活物質層21が形成されるとともに、正極集電体の幅方向の一方の端部側に正極活物質層21が形成されていない未塗布部22を有する。…
負極板3は、帯状の銅のシートからなる負極集電体の両面に負極活物質層31が形成されるとともに、負極集電体の幅方向の一方の端部側に負極活物質層31が形成されていない未塗布部32を有する。…

扁平形状巻回型電極体1は、正極板2および負極板3の未塗布部22、32が互いに軸方向の反対方向にセパレータ4から突出し、巻回されてリング状に形成された突出端部23、33を形成している。各突出端部23,33の長辺部は、積層した未塗布部22、23が圧縮されて厚密化部24,34を形成している。また、突出端部23、33は、巻回軸の軸心部に、一対の圧密化部に挟まれた長径方向に扁平形状の中空部を有している。…
電極端子5は、金属板を所定形状に形成した後に曲成して形成された部材であり、…
ここで、電極端子5は、それぞれが接合される集電体と同種の材質で形成された。詳しくは、正極端子55側の電極端子5はアルミニウムよりなり、負極端子56側の電極端子5は銅により形成された。」(【0067】?【0074】)

(イ-3)「実施例1の電池は、この扁平形状巻回型電極体1を電解液とともにケースに封入して形成された。」(【0084】)


(イ-4)「実施例7の扁平型状巻回型電極体1と電極端子5の接合は、実施例1と同様の手段により行われた。ここで、図18に正極端子55を突出端部23に配置した状態の図を示した。」(【0109】)

(イ-5)「


図17及び図18からは、上記(イ-1)、(イ-2)、(イ-4)の内容が具体的に把握できる。すなわち、図17及び図18からは、厚密化部24とは、突出端部23の一対の長辺部のうちの一方で、積層された未塗布端部22が、扁平形状巻回型電極体1の径方向に圧縮されて形成された部分であることが見て取れ、また、正極端子55側の電極端子5の一部が折り曲げられて形成された長尺部分である軸部51が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の厚密化部24が形成された一方の長辺部の外周面に沿って配され、その軸部51から扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の突出した方向に沿って突出した突起部54が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23と接合されて架橋部52を形成していることが見て取れ、また、正極端子55側の電極端子5の軸部51以外の部分は、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23からその扁平形状巻回型電極体1の中央方向に水平に延びており、その水平に延びている箇所には正極端子55が設けられていることが見て取れる。

(イ-6)「(電極体と電極端子の接合)実施例1の電池において、扁平形状巻回型電極体1と電極端子5の接合は、電極端子5を扁平形状巻回型電極体1の端面部に配置した状態で、電極端子5を溶融させ溶融液を突出端部に供給し、その後、溶融液を冷却固化することで行われた。このときの様子を図3?6に示した。

…正極端子55を有する電極端子5の接合を説明する。

正極端子55が固定された状態で、正極端子55の突起部54をTIG溶接機により加熱し、溶融させた。突起部54の溶融液は、当接した突出端部23に毛細管現象等により供給され、積層した複数の未塗布部22の界面に供給される(図6)。
その後、溶融液を冷却し、凝固させることで、突起部54と未塗布部22とが一体になった架橋部52が形成され、正極端子55が扁平形状巻回型電極体1の端面に電気的に接合された。なお、負極端子56を有する電極端子5においても、上述と同様な方法により突起部54を積層した未塗布部32に電気的に接合した。」(【0075】?【0083】)

(イ-7)「


図6からは、上記(イ-6)の内容が具体的に把握できる。すなわち、図6からは、突起部54の溶融液が当接した厚密化部24の端部に供給され、突起部54と厚密化部24の端部とが一体となった架橋部52が形成される様子が見て取れる。


ウ. 引用例1に記載された発明
(ウ-1) 上記(イ-1)によれば、引用例1における、実施例7は、突出端部23、33の長辺部の一方のみを径方向に圧縮して厚密化部24、34が形成された扁平型状巻回型電極体1と、突出端部23、33の厚密化部24、34が形成された一方の長辺部の外周面に沿って軸部51が配置され径方向に架橋部52が形成された電極端子5と、を有する以外は、実施例1と同様な構成の電池であるとされている。

(ウ-2) ここで、引用例1における、実施例1は、上記(イ-2)によれば、正極板2、負極板3およびセパレータ4を有する扁平形状巻回型電極体1と、扁平形状巻回型電極体1の巻回軸の両端面のそれぞれに接合された正極端子55および負極端子56よりなる電極端子5と、を有する電池であって、扁平形状巻回型電極体1は、帯状の正極板2および負極板3と両極板2、3間に介在するセパレ-タ4とが巻回された状態で扁平形状に成形された電極体であり、正極板2は帯状のアルミニウムシートからなる正極集電体の両面に正極活物質層21が形成されるとともに、正極集電体の幅方向の一方の端部側に正極活物質層21が形成されていない未塗布部22を有し、負極板3は帯状の銅のシートからなる負極集電体の両面に負極活物質層31が形成されるとともに、負極集電体の幅方向の一方の端部側に負極活物質層31が形成されていない未塗布部32を有しており、正極板2および負極板3の未塗布部22、32が互いに軸方向の反対方向にセパレータ4から突出し、巻回されてリング状に形成された突出端部23、33を形成し、また、突出端部23、33は巻回軸の軸心部に扁平形状の中空部を有しており、電極端子5は、金属板を所定形状に形成した後に曲成して形成された部材であって、それぞれが接合される集電体と同種の材質で形成された、すなわち、正極端子55側の電極端子5はアルミニウムよりなり、負極端子56側の電極端子5は銅により形成された、電池であるとされている。

(ウ-3) また、上記(イ-2)によれば、厚密化部24、34は、積層された未塗布端部22、32が各突出端部23、33の長辺部で圧縮されて形成された部分であるとされている。

(ウ-4) さらに、上記(イ-3)によれば、実施例1の電池は、扁平形状巻回型電極体1を電解液とともにケースに封入して形成されたとされている。

(ウ-5) また、実施例7の電池は、上記(イ-1)によれば、図17に示したとされ、上記(イ-4)によれば、図18に示したとされているところ、上記(イ-5)に示した図17及び図18からは、厚密化部24とは、突出端部23の一対の長辺部のうちの一方で、積層された未塗布端部22が、扁平形状巻回型電極体1の径方向に圧縮されて形成された部分であることが見て取れ、また、正極端子55側の電極端子5の一部が折り曲げられて形成された長尺部分である軸部51が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の厚密化部24が形成された一方の長辺部の外周面に沿って配され、その軸部51から扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の突出した方向に沿って突出した突起部54が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23と接合されて架橋部52を形成していることが見て取れ、また、正極端子55側の電極端子5の軸部51以外の部分は、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23からその扁平形状巻回型電極体1の中央方向に水平に延びており、その水平に延びている箇所には正極端子55が設けられていることが見て取れる。

(ウ-6) 上記(ウ-1)?(ウ-5)に示したことからして、引用例1の実施例7に注目すると、引用例1には、「正極板2、負極板3およびセパレータ4を有する扁平形状巻回型電極体1と、前記扁平形状巻回型電極体1の巻回軸の両端面のそれぞれに接合された正極端子55側および負極端子56側の電極端子5と、を有する電池であって、
前記扁平形状巻回型電極体1は、帯状の前記正極板2および前記負極板3と両極板2、3間に介在する前記セパレ-タ4とが巻回された状態で扁平形状に成形された電極体であり、
前記正極板2は帯状のアルミニウムシートからなる正極集電体の両面に正極活物質層21が形成されるとともに、前記正極集電体の幅方向の一方の端部側に前記正極活物質層21が形成されていない未塗布部22を有し、
前記負極板3は帯状の銅のシートからなる負極集電体の両面に負極活物質層31が形成されるとともに、前記負極集電体の幅方向の他方の端部側に前記負極活物質層31が形成されていない未塗布部32を有しており、
前記正極板2および前記負極板3の前記未塗布部22、32が互いに軸方向の反対方向に前記セパレータ4から突出し、巻回されてリング状に形成された突出端部23、33を有しており、
前記突出端部23、33は巻回軸の軸心部に扁平形状の中空部を有しており、積層された未塗布端部22が、前記突出端部23の一対の長辺部のうちの一方で、前記扁平形状巻回型電極体1の径方向に圧縮されて厚密化部24が形成されており、
前記電極端子5は、金属板を所定形状に形成した後に曲成して形成された部材であって、それぞれが接合される集電体と同種の材質で形成され、すなわち、前記正極端子55側の電極端子5はアルミニウムよりなり、前記負極端子56側の電極端子5は銅により形成され、
前記正極端子55側の電極端子5の一部が折り曲げられて形成された長尺部分である軸部51が、前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23の前記厚密化部24が形成された長辺部の外周面に沿って配され、その軸部51から前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23の突出した方向に沿って突出した突起部54が、前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23と接合されて架橋部52を形成しており、
前記正極端子55側の電極端子5の前記軸部51以外の部分は、前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23からその電極体1の中央方向に水平に延びており、その水平に延びている箇所には正極端子55が設けられており、
前記扁平形状巻回型電極体1を電解液とともにケースに封入して形成された、電池」(以下、引用発明という。)が記載されていると認められる。


エ. 本件補正発明と引用発明との対比
(エ-1) 本件補正発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「ケース」は、本件補正発明の「電池外装体」に相当し、
引用発明の「正極板2、負極板3およびセパレータ4を有する扁平形状巻回型電極体1」であって「帯状の前記正極板2および前記負極板3と両極板2、3間に介在する前記セパレ-タ4とが巻回された状態で扁平形状に成形された電極体であり、
前記正極板2は帯状のアルミニウムシートからなる正極集電体の両面に正極活物質層21が形成されるとともに、前記正極集電体の幅方向の一方の端部側に前記正極活物質層21が形成されていない未塗布部22を有し、
前記負極板3は帯状の銅のシートからなる負極集電体の両面に負極活物質層31が形成されるとともに、前記負極集電体の幅方向の他方の端部側に前記負極活物質層31が形成されていない未塗布部32を有しており、
前記正極板2および前記負極板3の前記未塗布部22、32が互いに軸方向の反対方向に前記セパレータ4から突出し、巻回されてリング状に形成された突出端部23、33を有しており、
前記突出端部23、33は巻回軸の軸心部に扁平形状の中空部を有しており、前記突出端部23の一対の長辺部のうちの一方で、積層した未塗布端部22が、前記扁平形状巻回型電極体1の径方向に圧縮されて厚密化部24が形成されて」いる、「扁平型状巻回型電極体1」は、
本件補正発明の「端部に活物質未塗工部を有する巻回型の発電要素」に相当し、
引用発明の「正極板2および負極板3の未塗布部22、32が互いに軸方向の反対方向にセパレータ4から突出し、巻回されてリング状に形成された突出端部23、33」は、本件補正発明の巻回型の発電要素の端部の「活物質未塗工部」に相当する。

(エ-2) また、引用発明の「正極端子55」および「負極端子56」は、技術常識(特開2000-150306号公報の【図4】、特開2002-93402号公報の【0025】と【図1】、特開2002-8708号公報の【図1】等参照。)に照らし、
本件補正発明の「電池外装体の外部に配置された外部接続端子」に相当するし、
引用発明の「正極端子55側および負極端子56側の電極端子5」は、
上記(ウ-6)によれば、扁平形状巻回型電極体1の巻回軸の両端面のそれぞれに接合される部材であって、金属板を所定形状に形成した後に曲成して形成された部材であり、正極端子55または負極端子56が設けられる部材である、すなわち、扁平形状巻回型電極体1の巻回軸の端面と正極端子55または負極端子56とに接合される板材であるから、
本件補正発明の「発電要素と外部接続端子とを接続する集電接続板」に相当する。
引用発明の「正極端子55側の電極端子5の軸部51以外の部分」は、
上記(ウ-6)によれば、正極端子55側の電極端子5における、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23からその電極体1の中央方向に水平に延びており、その水平に延びている箇所には前記正極端子55が設けられている部分であるから、
本件補正発明の「発電要素の端部から前記発電要素の中央方向に水平に延びるとともに外部接続端子と接続される本体部」に相当する。
引用発明の「正極端子55側の電極端子5の一部が折り曲げられて形成された長尺部分である軸部51」は、
上記(ウ-6)によれば、正極端子55側の電極端子5における、長尺部分であって、その軸部51から扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の突出した方向に沿って突出した突起部54が、前記扁平形状巻回型電極体1の突出端部23と接合されて架橋部52を形成しているから、
本件補正発明の「本体部から突設されて、」「接合される接続板部」に相当する。

(エ-3) また、引用発明の「扁平形状巻回型電極体1の突出端部23」は、
上記(ウ-6)によれば、正極集電体の幅方向の一方の端部側の正極活物質層21が形成されていない未塗工部22であって、セパレータ4から突出した、前記未塗工部22が巻回されてリング状に形成された部分であり、その突出端部23は扁平形状巻回型電極体1の巻回軸の軸心部に扁平形状の中空部を有しており、前記扁平形状巻回型電極体1の巻回軸の端面を含んでいるといえるため、
本件補正発明の「活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間」に相当する。
そして、引用発明の「扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の厚密化部24が形成された長辺部の外周面」は、
上記(ウ-6)によれば、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の一対の長辺部のうちの一方で、積層された未塗布端部22が、前記扁平形状巻回型電極体1の径方向に圧縮されて厚密化部24が形成された長辺部についての外側面であるところ、
上述のとおり、「扁平形状巻回型電極体1の突出端部23」が、本件補正発明の「活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間」に相当することから、本件補正発明の「活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間」に相当する。

(エ-4) 上記(エ-2)?(エ-3)での検討からすると、引用発明における「正極端子55側の電極端子5は、その一部が折り曲げられて形成された長尺部分である軸部51が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の厚密化部24が形成された一方の長辺部の外周面に沿って配され、その軸部51から前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23の突出した方向に沿って突出した突起部54が、前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23と接合されて架橋部52を形成して」いることは、本件補正発明における「本体部から突設されて、」「接合される接続板部」が、「活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間」に接合されることに相当する。

(エ-5) 上記(エ-1)?(エ-4)での検討を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
電池外装体と、
前記電池外装体の外部に配置された外部接続端子と、
端部に活物質未塗工部を有する巻回型の発電要素と、
前記発電要素と前記外部接続端子とを接続する集電接続板とを備え、
前記集電接続板は、
前記発電要素の端部から前記発電要素の中央方向に水平に延びるとともに前記外部接続端子と接続される本体部と、
前記本体部から突設されて、前記活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質塗工部の端部と活物質塗工部との間に接合される接続板部とを有する
電池。

<相違点>
接続板部が、本件補正発明では、「前記活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間に、表面が接合される接続板部」であるのに対して、引用発明1では、前記活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質塗工部の端部と活物質塗工部との間に接合されるものの、その接続板部が、表面が接合される接続板部であるのか否かが明らかでない点。


オ. 相違点についての判断
(オ-1) 上記相違点について検討するに、上記(イ-4)によれば、引用発明における、扁平型状巻回型電極体1と電極端子5の接合は、実施例1と同様の手段により行われたとされているところ、実施例1における、扁平型状巻回型電極体1と電極端子5の接合は、上記(イ-6)によれば、電極端子5を扁平形状巻回型電極体1の端面部に配置した状態で、電極端子5の突起部54をTIG溶接機により加熱し、溶融させると、その突起部54の溶融液は、当接した突出端部23に毛細管現象等により供給され、積層した複数の未塗布部22の界面に供給され(図6)、その後、溶融液を冷却し、凝固させることで、突起部54と未塗布部22とが一体になった架橋部52が形成され、正極端子55が扁平形状巻回型電極体1の端面に電気的に接合されるということであるとされ、また、上記(イ-7)によれば、上記(イ-6)の内容が具体的に把握でき、すなわち、突起部54の溶融液が当接した厚密化部24の端部に供給され、突起部54と厚密化部24の端部とが一体となった架橋部52が形成される様子が見て取れる。

(オ-2) そして、引用発明において、電極端子5は、金属板を所定形状に形成した後に曲成して形成された部材であって、接合される集電体と同種の材質で形成され、すなわち、正極端子55側の電極端子5は、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23と同種の材質の、アルミニウムよりなり、前記正極端子55側の電極端子5の一部が折り曲げられて形成された長尺部分である軸部51(以下、単に、「正極端子55側の電極端子5の軸部51」あるいは「軸部51」ということがある。)が、前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23の厚密化部24が形成された長辺部の外周面(以下、「突出端部23の厚密化部24の外周面」あるいは「厚密化部24の外周面」ということがある。)に沿って配され、その軸部51から前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23の突出した方向に沿って突出した突起部54が、前記扁平形状巻回型電極体1の前記突出端部23と接合されて架橋部52を形成している。

(オ-3) 上記(オ-1)?(オ-2)に示したことからすると、引用発明においては、正極端子55側の電極端子5の軸部51が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の厚密化部24の外周面に沿って配され、その軸部51から突出した突起部54は扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の突出した方向に沿って突出しているところ、扁平型状巻回型電極体1と電極端子5の接合は、当該突起部54をTIG溶接機により加熱し、溶融させると、その突起部54の溶融液は、当接した厚密化部24の外周面を含む突出端部23に毛細管現象等により供給され、積層した複数の未塗布部22の界面に供給され(図6)、その後、溶融液を冷却し、凝固させることで、突起部54と厚密化部24とが一体になった架橋部52が形成され、正極端子55が扁平形状巻回型電極体1の端面に電気的に接合されるということであると認められる。

(オ-4) 引用発明においては、正極端子55側の電極端子5と扁平形状巻回型電極体1の突出端部23は、いずれも、アルミニウムよりなるところ、上記(オ-3)に示したように、正極端子55側の電極端子5の軸部51から突出したアルミニウムよりなる突起部54をTIG溶接機により加熱し、溶融させると、そのアルミニウムよりなる突起部54の溶融液は、当接したアルミニウムよりなる厚密化部24の外周面を含む突出端部23に毛細管現象等により供給され、積層した複数の未塗布部22の界面に供給され、その後、溶融液を冷却し、凝固させることで、突起部54と未塗布部22とが一体になった架橋部52が形成されるが、そのアルミニウムよりなる突起部54の溶融液は、当接したアルミニウムよりなる厚密化部24の外周面を含む突出端部23を溶融するに十分な温度となっているため、突起部54と当接していた、積層した複数の未塗布部22でなる厚密化部24の外周面を含む厚密化部24の表面も溶融されるし、また、突起部54の溶融液が供給されるのは、積層した複数の未塗布部22の界面に限られず、突起部54が突出していた厚密化部24の外周面と軸部51の表面との界面も含まれることとなるため、突起部54と厚密化部24とが一体になった架橋部52には、厚密化部24の外周面と正極端子55側の電極端子5の軸部51の表面との接合も含まれることとなる。

(オ-5) ここで、引用発明において「正極端子55側の電極端子5は、その一部が折り曲げられて形成された長尺部分である軸部51が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の厚密化部24が形成された一方の長辺部の外周面に沿って配され、その軸部51から扁平形状巻回型電極体1の突出端部23の突出した方向に沿って突出した突起部54が、扁平形状巻回型電極体1の突出端部23と接合されて架橋部52を形成して」いることは、上記(エ-4)に示したとおり、本件補正発明における「本体部から突設されて、接合される接続板部」が、「活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間」に接合されることに相当するから、上記(オ-4)で検討した、架橋部52には、厚密化部24の外周面と正極端子55側の電極端子5の軸部51の表面との接合も含まれることは、本件補正発明の「活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間」と「本体部から突設されて、接合される接続板部」の表面との接合も含まれることに相当する。

(オ-6) してみると、引用発明には、本件補正発明における、本体部から突設されて接合される接続板部の表面と、活物質未塗工部の重なりの外側面のうちの前記活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間との接合も含まれるといえるから、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。
また、仮に、上記相違点が実質的なものであったとしても、微差であって、当業者が適宜になし得る設計事項にすぎない。


カ. 補足
(カ-1) 請求人の主張
なお、請求人は、平成26年 9月10日付けの審判請求書において、「本願発明(当審注:「本件補正発明」を意味する。)では、活物質未塗工部の最外周面のうちの活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間に、接続板部の面が接合されている(面同士が接合されている)のに対し、引用文献1(当審注:「引用例1」を意味する。)では、複数の活物質未塗工部の端縁に集電接続板の突起部が接合されている(複数の線と点とが接合されている)点で、大きく異なる。」旨主張をしている(審判請求書「3.(d)」)。

(カ-2) 当審の見解
しかし、本件補正発明における、活物質未塗工部の最外周面のうちの活物質未塗工部の端部と活物質塗工部との間での、接続板部の面の接合は、本願明細書【0017】?【0018】に記載されているような、接続板部に形成した凸部で集中的に超音波エネルギーを受けるようにした超音波溶接による溶着や、本願明細書【0026】?【0018】に記載されているような、スポット溶接等の他の溶接による溶着を含んでおり、すなわち、点接合を含むものであって、面同士の接合に限られているわけではないし、また、上記ウ.?オ.で検討したとおり、引用発明は、複数の活物質未塗工部の端縁に集電接続板の突起部が接合されているものとはいえない。
よって、請求人の上記主張は妥当性を欠いており、採用できない。

キ. 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、または、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3.まとめ
したがって、上記補正事項aを含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 原査定の理由についての検討
1.本願発明
本願の平成26年 9月10日付けの手続補正は、上記のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成26年 3月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その発明は上記「第2 2.(1)」の(A)に【請求項1】として示すとおりのものである(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

2.原査定の理由の概要
原審における拒絶査定の理由の一つは、概略、以下のものである。

本願発明は、本願の原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


刊行物1:特開2002-100340号公報

3.当審の判断
(1) 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、上記「第2 2.(3)イ.」に記載した、引用例1であるから、上記「第2 2.(3)ウ.」の(ウ-5)に記載されたとおりの発明(以下、引用発明という。)が記載されていると認められる。

(2) 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 2.(3)エ.」の(エ-1)?(エ-5)での検討と同様の検討により、両者の間には、差異は見出し得ない。

(3) まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、原査定は妥当である。
したがって、本願発明は特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-25 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-16 
出願番号 特願2013-237077(P2013-237077)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01M)
P 1 8・ 113- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 充司  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 小川 進
宮澤 尚之
発明の名称 電池  
代理人 中原 正樹  

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