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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1310613
審判番号 不服2014-20323  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-08 
確定日 2016-02-04 
事件の表示 特願2013- 93446「インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日出願公開、特開2013-168997〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成25年4月26日の出願(平成18年4月12日に出願された特願2006-110295号を、平成23年2月14日に分割出願した特願2011-028956号のさらなる分割出願)であって、平成26年1月23日付けで拒絶理由が通知され、同年3月18日付けで手続補正され、同年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月8日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成26年3月18日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の通りのものと認める。

「住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、前記住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え、前記信号線を介して音声信号もしくは映像信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能なインターホンシステムにおいて、
前記インターホン親機は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信部を有する携帯電話端末もしくは前記携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信部を有する増設インターホン親機に対して、前記インターホン親機と前記携帯電話端末もしくは前記インターホン親機と前記増設インターホン親機とをインタフェースする無線インタフェース手段を備え、
前記インターホン親機は、前記無線インタフェース手段を介し、前記ドアホン子器から呼出信号を受信すると、呼出音を鳴動させるとともに、呼出通知を前記携帯電話端末の無線通信部へ送信し、前記携帯電話端末の無線通信部から送信される応答信号を受信後、前記ドアホン子器との間に通話路を形成し、前記ドアホン子器から出力される音声信号及び映像信号を前記携帯電話端末の無線通信部へ伝送することを特徴とするインターホンシステム。」

3 引用例及び引用発明
原査定の拒絶理由に引用された特開2003-198738号公報(以下「引用例」という。)には、「インターフォンシステム、インターフォン装置及び携帯電話機」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インターフォン装置と携帯電話機を備えてなるインターフォンシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は従来のインターフォン装置を概念的に示すブロック図である。同図におおいて、インターフォン装置は、屋外に設置される子機10と、屋内に設置される親機20とを有している。子機10は、来訪者が押す呼出釦11と、来訪者を撮影するCCDカメラ12と、来訪者がユーザ(ここでは来訪を受けた屋内にいる者)と通話するためのマイク13と、スピーカ14とを有している。また、親機20は、CCDカメラ12が撮影した画像を表示する表示部21と、ユーザが来訪者と通話するためのマイク23と、スピーカと、チャイム24とを有している。」(段落【0001】、【0002】、2頁左欄34?50行)

ロ.「【0009】
【課題を解決するための手段】・・・(中略)・・・子機からの呼出しに基づいて第1の近距離無線通信部と第2の近距離無線部とが通信することにより、子機と携帯電話機との通話を可能にしたこと・・・(中略)・・・
【0012】従って、本発明によれば、親機が子機からの呼び出しに基づいて第1の近距離無線通信部により第2の近距離無線通信部と通信することにより、親機から近距離の範囲内にいるユーザが携帯電話機を用いてインターフォン装置を介して来訪者と通話料金が課されることなく通話することができる。」(段落【0009】、【0012】、2頁右欄41行?3頁左欄24行)

ハ.「【0013】・・・(略)・・・図1において、親機20は、電話部25(固定電話に相当する。)と、全体を制御するCPU26と、A/D変換器27と、メモリ28と、D/A変換器29と、操作部30と、電子メール送信部31と、Blue Tooth通信モジュール32とを有している。Blue Tooth通信モジュール32は、近距離無線通信機能を有する通信モジュールである。
【0014】一方、携帯電話機40は、通常の携帯電話機能を有すると共に、Blue Tooth通信モジュール41を有している。親機20に設けられたBlue Tooth通信モジュール32と携帯電話機40に設けられたBlue Tooth通信モジュール41とは互いに通信可能に構成されている。・・・(略)・・・」(段落【0013】、【0014】、3頁左欄30?42行)

ニ.「【0015】次に、上記構成からなるインターフォンシステムの動作を図2に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、親機20は操作部30により近距離無線通信モードに設定されており、携帯電話機40は、電源が入っていて通話可能な状態にあるものとする。図1、図2において、子機10の呼出釦11が押されたか否かを判断する(ステップS1)。呼出釦11が押されると、子機10のCCDカメラ12、マイク13、スピーカ14が動作され、来訪者の音声信号及び来訪者を撮影した画像(動画又は静止画)信号が親機20に送られる。この音声信号と画像信号は、A/D変換器27でディジタル信号に変換された後、メモリ28に取込まれる(ステップS2)。
【0016】次に、Blue Tooth通信モジュール32は、携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を呼び出し、これに応じて携帯電話機40は着信音を発生する(ステップS3)。・・・(略)・・・
【0017】次に、ユーザが携帯電話機40からBlue Tooth通信モジュール41を介して応答して来たか否かを調べ(ステップS4)、応答してきた場合は、Blue Tooth通信モジュール32は、上記取り込まれた画像信号をBlue Tooth通信モジュール41に転送すると共に、音声信号の双方向通信を可能にする(ステップS5)。これによって、ユーザと来訪者とが、子機10、親機20、携帯電話機40を介して通話することができる。この場合、Blue Tooth通信モジュール32、41の通信可能な近距離範囲内にユーザがいれば、通話料金を課されることなく通話することができる。」(段落【0015】?【0017】、3頁左欄46行?右欄25行)

ホ.「【0020】尚、操作部30により通常のインターフォンモードが設定された場合は、親機20は、マイク23、スピーカ22、表示部21、チャイム24等を用いることにより、図3の従来のインターフォン装置と同様にして子機10と通話することができる。」(段落【0020】、3頁右欄46?50行)

上記摘記事項の記載及び図1、図2並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

上記イ.の【0001】の「本発明は、インターフォン装置と携帯電話機を備えてなるインターフォンシステムに関するものである。」の記載から、引用例は、インターフォンシステムの発明であるといえる。

上記、ニ.の【0015】の「図1、図2において、子機10の呼出釦11が押されたか否かを判断する(ステップS1)。呼出釦11が押されると、子機10のCCDカメラ12、マイク13、スピーカ14が動作され、来訪者の音声信号及び来訪者を撮影した画像(動画又は静止画)信号が親機20に送られる。」、上記ニ.の【0017】の「ユーザと来訪者とが、子機、親機20、携帯電話機40を介して通話することができる」、上記ホ.の【0020】の「図3の従来のインターフォン装置と同様にして子機と通話することができる。」、イ.の【0002】の「図3は従来のインターフォン装置を概念的に示すブロック図である。同図におおいて、インターフォン装置は、屋外に設置される子機10と、屋内に設置される親機20とを有している。」の各記載から、子機10が屋外に設置され、親機20が屋内に設置されることは明らかである。
また、図1より、(a)子機10のCCDカメラは親機20のA/D変換器27と信号線を介して接続し、(b)子機10のマイクは、親機20のスピーカ22とA/D変換器27と信号線を介して接続し、(c)子機10のスピーカ14は、親機20のマイク23と信号線を介して接続していることが読み取れるので、親機20と子機10とは信号線を介して音声信号および画像信号を授受することは明らかである。以上のことを総合すると、引用例には「屋外に設置される子機10と、屋内に設置されるとともに信号線を介して前記子機10と接続される親機20とを備え、前記信号線を介して音声信号もしくは画像信号を授受することにより前記親機20と前記子機10との間でユーザが来訪者とインターホン通話が可能なインターフォンシステム」が記載されているといえる。

上記ハ.の【0013】の「図1において、親機20は、・・・(略)・・・近距離無線通信機能を有するBlue Tooth通信モジュール32とを有している」、同【0014】の「携帯電話機40は、通常の携帯電話機能を有すると共に、Blue Tooth通信モジュール41を有している。親機20に設けられたBlue Tooth通信モジュール32と携帯電話機40に設けられたBlue Tooth通信モジュール41とは互いに通信可能に構成されている。」の各記載から、親機20と、携帯電話機40とは、Blue Tooth通信モジュール32により、インターフェースされているといえる。
また、親機20に設けられたBlue Tooth通信モジュール32と携帯電話機40に設けられたBlue Tooth通信モジュール41との通信は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに近距離無線通信することは、明らかである。
よって、引用例に記載のものは、「前記親機20は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに近距離無線通信するBlue Tooth通信モジュール41を有する携帯電話機40に対して、前記親機20と前記携帯電話機40とをインターフェースするBlue Tooth通信モジュール32を備え」ているといえる。

上記ロ.の【0009】の「子機からの呼出しに基づいて第1の近距離無線通信部と第2の近距離無線部とが通信することにより、子機と携帯電話機との通話を可能にしたこと」、上記ニ.【0015】の「図1、図2において、子機10の呼出釦11が押されたか否かを判断(ステップS1)し、呼出釦11が押されると、子機10のCCDカメラ12、マイク13、スピーカ14が動作され、来訪者の音声信号及び来訪者を撮影した画像(動画又は静止画)信号が親機20に送られ、この音声信号と画像信号はA/D変換された後、メモリ28に取り込まれ(ステップS2)」、同【0016】の「次に、Blue Tooth通信モジュール32は、携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を呼び出し、これに応じて携帯電話機40は着信音を発生する(ステップS3)」の各記載から、子機10の呼出釦11が押されると、親機のBlue Tooth通信モジュール32を介し、携帯電話機のBlue Tooth通信モジュール41を呼び出し、携帯電話機40で着信音を発生するといえる。
よって、引用例に記載のものは、「前記親機20は、前記Blue Tooth通信モジュール32を介し、前記子機10からの呼び出しに基づいて、前記携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を呼び出し」ているといえる。

ニ.の【0017】の「次に、ユーザが携帯電話機40からBlue Tooth通信モジュール41を介して応答して来たか否かを調べ(ステップS4)、応答してきた場合は、親機のBlue Tooth通信モジュール32は、上記取り込まれた画像信号を、携帯電話機のBlue Tooth通信モジュール41に転送すると共に、音声信号の双方向通信を可能にする(ステップS5)」の記載から、「前記携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を介して応答してきた場合、音声信号の双方向通信を可能とし、前記子機10から出力される音声信号及び画像信号を前記携帯電話機のBlue Tooth通信モジュール41へ伝送する」ものといえる。

したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「屋外に設置される子機10と、屋内に設置されるとともに信号線を介して前記子機10と接続される親機20とを備え、前記信号線を介して音声信号もしくは画像信号を授受することにより前記親機20と前記子機10との間でユーザが来訪者とインターホン通話が可能なインターフォンシステムにおいて、
前記親機20は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに近距離無線通信するBlue Tooth通信モジュール41を有する携帯電話機40に対して、前記親機20と前記携帯電話機40とをインターフェースするBlue Tooth通信モジュール32を備え、
前記親機20は、前記Blue Tooth通信モジュール32を介し、前記子機10の呼び出し釦に基づいて、前記携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を呼び出し、前記携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を介して応答してきた場合、音声信号の双方向通信を可能とし、前記子機10から出力される音声信号及び画像信号を前記携帯電話機のBlue Tooth通信モジュール41へ伝送するインターフォンシステム。」

4 周知技術
例えば、特開2004-112484号公報(以下、「周知例1」という。)、特開2006-80611号公報(以下、「周知例2」という。)には、インターホン子機、インターホン親機、無線通信機からなるインターホンシステムにおいて、以下の事項ヘ.、ト.が記載されている。

ヘ.「【0012】
次に、このインターホン装置の動作を説明する。玄関子機1の呼出部8に備えられた呼出ボタンを来訪者が押下すると、信号線4を介して居室親機2の呼出検出部11が呼び出しを検出して制御部18に知らせる。すると制御部18は呼出音発生部12を動作させてスピーカ13から呼出音を鳴らして居住者に来訪者があることを報知する。また、呼出音発生部12より信号線4を介して玄関子機1のスピーカ7より呼出確認音が鳴り、来訪者に対して呼び出しを居室親機2が受け取ったことを知らせる。
同時に、制御部18は、親機側ID設定部15で設定したID情報を加えたデータを親機側データ成形部16に送る。そして、親機側データ成形部16は、ID情報を加えた呼出情報を成形し、送信部17より成形した呼出情報データを発信し、呼び出しがあったことを微弱電波により無線受信機3に送る。」、
「【0015】
更に、上記実施の形態では無線受信機を1つとしているが、複数設けることも容易に実施でき、携帯することなく各部屋に無線受信機を設置すれば、どの部屋に居ても来訪者の存在を容易に知ることができる。しかも、無線受信機を複数設けても、居室親機に対応した同一IDに設定することで同時に報知動作するので、居住者は居室親機の呼出し動作とほぼ同時に来訪者の存在を知ることができ、スムーズに応対することができる。
尚、このように無線受信機を各部屋に設置する場合は、無線受信機の電源は商用電源を使用すると良いし、無線受信機の報知部は発光ダイオードでなくとも良い。
また、上記実施の形態は、電波によるデータ送信を居室親機により行っているが、呼出検出部、制御部、ID設定部、親機側データ成形部、送信部を独立した機器で作製すれば、既設のインターホン装置を用いて無線受信機を利用することが可能となり、安価に本装置を構築できる。
また、無線受信機の報知部は、携帯を前提とした場合はバイブレーション(振動)やブザー音による報知を加えるのも効果的である。」(段落【0012】、【0015】、4頁17行?5頁10行)(周知例1)

ト.「【0100】
インターホン子機1の呼出ボタン10が来訪者によって押下されると、インターホン子機1のCPU100から出力された制御信号である来訪者検知信号が、多重/分離回路103、インターホン線5、およびインターホン親機2の多重/分離回路203を介してインターホン親機2に送信され、CPU200において検出される。
【0101】
ステップS101において、端末機器の電源が投入された初期状態での初期化処理が完了した後、CPU200はかかる来訪者検知信号が検出されるまで待機する(S103でNO)。来訪者検知信号が検出される、すなわちインターホン子機1近傍に来訪者の存在が認識されると(S103でYES)、呼出音回路209で生成された呼出音が、インターホン親機のスピーカから出力される(S105)。
【0102】
また、インターホン親機2のメモリ25に、すでに圧縮映像蓄積回路211に蓄積されている映像である、CPU200が来訪者検知信号を検出した時点前後の所定時間、例えば前後合わせて5秒間の映像が、順次記録される(S107)。
【0103】
同時に、インターホン子機1から受信した映像信号に基づいて、インターホン子機1のカメラ部11でリアルタイムに撮影されている来訪者の映像が、液晶表示部21に表示される(S109)。
【0104】
これと同時に、インターホン親機2の無線送受信部24から、待機状態であるインターホン副親機3のスニフモードを解除するための解除信号が、インターホン副親機3の無線送受信部34へと送信される(S111)。ここで、インターホン副親機3Aの無線送受信部34へは、中継端末4の無線送受信部43を経由して送信される。インターホン親機2からインターホン副親機3にスニフモードの解除信号が送信されることにより、インターホン副親機3は、上記した通常モードへと速やかに遷移する。なお、スニフ間隔は、例えば1秒以下に設定されることが好ましい。ここでのインターホン副親機3のスニフモードから通信可能な通常モードへの遷移は、上記したようにインターホン親機2がインターホン副親機3との問合処理および呼出処理がすでに行われているため、1秒以下の短時間で可能である。
【0105】
次に、インターホン副親機3が通常モードに遷移すると、インターホン親機2の無線送受信部24より、インターホン副親機3に対して、来訪者検知信号およびインターホン子機1からの映像信号を含む送信用信号が送信される(S113)。
【0106】
インターホン副親機3では、インターホン親機2から送信された送信用信号が無線送受信部34で受信され、この信号中の来訪者検知信号がCPU300で検出される。CPU300の制御により、呼出音回路306で生成された呼出音が音声通話回路301のスピーカから出力される。なお、インターホン副親機3Aの無線送受信部34への送信用信号は、中継端末4の無線送受信部43を経由して送信される。」(段落【0100】-【0106】、15頁34行?16頁23行)(周知例2)

上記周知例1、2に記載されているように、インターホン子機、インターホン親機、無線通信機からなるインターホンシステムにおいて、
「インターホン子機からの呼び出しに対して、インターホン親機から無線通信により無線通信機に呼び出しを報知する際に、インターホン親機においても呼び出しを行うこと。」は、周知技術である。

5 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明の「子機」、「親機」、「インターフォンシステム」は、それぞれ、本願発明の「ドアホン子器」、「インターホン親機」、「インターホンシステム」に相当する。
そうすると、引用発明の「屋外に設置される子機10と、屋内に設置されるとともに信号線を介して前記子機10と接続される親機20とを備え、前記信号線を介して音声信号もしくは画像信号を授受することにより前記親機20と前記子機10との間でユーザが来訪者とインターホン通話が可能なインターフォンシステム」と、本願発明の「住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、前記住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え、前記信号線を介して音声信号もしくは映像信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能なインターホンシステム」は、以下の相違点1を除き、「屋外に設置されるドアホン子器と、屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え、前記信号線を介して音声信号もしくは映像信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能なインターホンシステム」の点で共通する。

(2)引用発明の「Blue Tooth通信モジュール41」、「携帯電話機40」、「親機20」、「Blue Tooth通信モジュール32」は、それぞれ、本願発明の「無線通信部」、「携帯電話端末」、「インターホン親機」、「無線インタフェース手段」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記親機20は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに近距離無線通信するBlue Tooth通信モジュール41を有する携帯電話機40に対して、前記親機20と前記携帯電話機40とをインターフェースするBlue Tooth通信モジュール32を備え、」と、本願発明の「前記インターホン親機は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信部を有する携帯電話端末もしくは前記携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信部を有する増設インターホン親機に対して、前記インターホン親機と前記携帯電話端末もしくは前記インターホン親機と前記増設インターホン親機とをインタフェースする無線インタフェース手段を備え、」は、「前記インターホン親機は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信部を有する携帯電話端末に対して、前記インターホン親機と前記携帯電話端末とをインタフェースする無線インタフェース手段を備え」る点で共通する。

(3)引用発明の「前記親機20は、前記Blue Tooth通信モジュール32を介し、前記子機10からの呼び出しに基づいて、前記携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を呼び出し、」において、子機10からの呼び出しに基づいて、本願発明の「呼出信号」に相当する信号を親機20が受信すること、及び、親機10が本願発明の「呼出通知」に相当する信号を送信することは明らかである。よって、引用発明の「前記親機20は、前記Blue Tooth通信モジュール32を介し、前記子機10の呼び出し釦に基づいて、前記携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を呼び出し、」は、本願発明の「前記インターホン親機は、前記無線インタフェース手段を介し、前記ドアホン子器から呼出信号を受信すると、呼出音を鳴動させるとともに、呼出通知を前記携帯電話端末の無線通信部へ送信し、」と、以下の相違点2を除き、「前記インターホン親機は、前記無線インタフェース手段を介し、前記ドアホン子器から呼出信号を受信すると、呼出音を鳴動させるとともに、呼出通知を前記携帯電話端末の無線通信部へ送信し、」の点で共通する。

(4)引用発明の「音声信号の双方向通信を可能」は、本願発明の「前記ドアホン子機との間に通話路を形成」に相当する。よって、引用発明の「前記携帯電話機40のBlue Tooth通信モジュール41を介して応答してきた場合、音声信号の双方向通信を可能とし、前記子機10から出力される音声信号及び画像信号を前記携帯電話機のBlue Tooth通信モジュール41へ伝送するインターフォンシステム。」は、本願発明の「前記携帯電話端末の無線通信部から送信される応答信号を受信後、前記ドアホン子器との間に通話路を形成し、前記ドアホン子器から出力される音声信号及び映像信号を前記携帯電話端末の無線通信部へ伝送することを特徴とするインターホンシステム。」
に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。
[一致点]
「屋外に設置されるドアホン子器と、前記屋内に設置されるとともに信号線を介して前記ドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え、前記信号線を介して音声信号もしくは映像信号を授受することにより前記インターホン親機と前記ドアホン子器との間でインターホン通話が可能なインターホンシステムにおいて、
前記インターホン親機は、携帯電話事業者の携帯電話網を介さずに無線通信する無線通信部を有する携帯電話端末に対して、前記インターホン親機と前記携帯電話端末とをインタフェースする無線インタフェース手段を備え、
前記インターホン親機は、前記無線インタフェース手段を介し、前記ドアホン子器から呼出信号を受信すると、呼出通知を前記携帯電話端末の無線通信部へ送信し、前記携帯電話端末の無線通信部から送信される応答信号を受信後、前記ドアホン子器との間に通話路を形成し、前記ドアホン子器から出力される音声信号及び映像信号を前記携帯電話端末の無線通信部へ伝送することを特徴とするインターホンシステム。」

[相違点]

(相違点1)
一致点の「屋外」、「屋内」について、本願発明が、「住戸の」であるのに対して、引用発明が「住戸の」であるか否か明確でない点。

(相違点2)
一致点の「前記ドアホン子機から呼出信号を受信する」と、本願発明の「インターホン親機」は、「呼出音を鳴動させる」のに対して、引用発明の「親機」は、呼出音を鳴動させることが記載されていない点。

上記相違点1について検討すると、
インターホン装置を住戸に設置して使用することは、一般的なことであるから、引用発明の「屋外」「屋内」の対象を「住戸の」とすることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

上記相違点2について検討すると、
上記「4 周知技術」の項に示したようにインターホン子機、インターホン親機、無線通信機からなるインターホンシステムにおいて、「インターホン子機からの呼び出しに対して、インターホン親機から無線通信により無線通信機に呼び出しを報知する際に、インターホン親機においても呼び出しを行うこと。」ことは、周知技術である。
そして、引用例の【0012】に記載されているように、親機から近距離の範囲内にいるユーザを呼び出すことを想定していることから、上記引用発明において、確実にユーザを呼び出すことも考慮して携帯電話だけでなく、親機も鳴動させるように構成することは、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

なお、本願発明の「もしくは、前記携帯電話網を介さずに無線通信する無線部を有する増設インターホン親機」について、「もしくは」と選択肢とされているので、相違点の認定では対象としていないが、仮に対象としたとしても、インターホン親機と無線通信可能な副親機を設けることは周知技術(例えば、原査定の拒絶理由に引用された特開2005-295368号公報(特に【0152】、図1)、特開平03-185960号公報(特に、第3頁左上欄14-20行、第1図))であり、引用発明に、該周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得ることにすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

6.結語
本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-08 
結審通知日 2015-09-15 
審決日 2015-12-18 
出願番号 特願2013-93446(P2013-93446)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山中 実
中野 浩昌
発明の名称 インターホンシステム  
代理人 鎌田 健司  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 前田 浩夫  

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