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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1310639
審判番号 不服2015-9176  
総通号数 195 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-18 
確定日 2016-02-04 
事件の表示 特願2014- 46918「決済端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月28日出願公開、特開2015-171105〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下「本願」と記す。)は、平成26年3月10日付けの出願であって、同年7月2日付けで審査請求がなされ、同年9月1日付けで拒絶理由通知(同年9月2日発送)がなされ、同年11月4日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年11月25日付けで最後の拒絶理由通知(同年12月2日発送)がなされ、平成27年1月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年2月12日付けで上記平成27年1月28日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年2月17日謄本送達)がなされるとともに、同日付けで拒絶査定(同年2月17日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成27年5月18日付けで審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年7月2日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされた。

第2 平成27年5月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年5月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成27年5月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成26年11月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載

「【請求項1】
筐体に収容され、非セキュアな第1の実行環境において決済に関する金額等を表示する表示部と、セキュアな第2の実行環境において本人確認のための認証情報が入力される入力部とを含む情報処理部と、
セキュアモード状態を報知する報知部と、
前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部と、を備え、
前記報知制御部は、決済処理開始時においては前記報知部にセキュアモード状態であることを報知させず、その後少なくとも前記入力部に前記認証情報が入力されるまでに、前記報知部にセキュアモード状態を報知させる、
決済端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の決済端末装置であって、
前記報知制御部は、
前記セキュアモード状態から非セキュアモード状態に変更された場合に、前記セキュアモード状態の報知を終了する、
決済端末装置。
【請求項3】
筐体に収容され、非セキュアな第1の実行環境において決済に関する金額等を表示する表示部と、セキュアな第2の実行環境において本人確認のための認証情報が入力される入力部とを含む情報処理部と、
非セキュアモード状態を報知する報知部と、
前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部と、を備え、
前記報知制御部は、決済処理開始時においては前記報知部に非セキュアモード状態であることを報知させ、その後少なくとも前記入力部に前記認証情報が入力されるまでに、前記報知部に非セキュアモード状態の報知を終了させる、
決済端末装置。
【請求項4】
請求項3に記載の決済端末装置であって、
前記報知制御部は、
セキュアモード状態から前記非セキュアモード状態に変更された場合に、前記非セキュアモード状態の報知を開始する、
決済端末装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の決済端末装置であって、
前記報知部は、
前記セキュアモード状態を、LEDの点灯又は画面表示により報知する、
決済端末装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の決済端末装置であって、
前記報知部は、
前記非セキュアモード状態を、LEDの点灯又は画面表示により報知する、
決済端末装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「本件補正前の請求項」という。)

を、

「【請求項1】
筐体に収容され、決済に関する金額等を表示部において表示するとともに、ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境と、決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かを示す認証情報が入力部を介して入力される画面を表示する、セキュアな第2の実行環境とを有する情報処理部と、
セキュアモード状態を報知する報知部と、
前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部と、を備え、
前記報知制御部は、決済処理開始時においては前記報知部にセキュアモード状態であることを報知させず、その後少なくとも前記入力部に前記認証情報が入力されるまでに、前記報知部にセキュアモード状態を報知させる、
決済端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の決済端末装置であって、
前記報知制御部は、
前記セキュアモード状態から非セキュアモード状態に変更された場合に、前記セキュアモード状態の報知を終了する、
決済端末装置。
【請求項3】
筐体に収容され、決済に関する金額等を表示部において表示するとともに、ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境と、決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かを示す認証情報が入力部を介して入力される画面を表示する、セキュアな第2の実行環境とを有する情報処理部と、
非セキュアモード状態を報知する報知部と、
前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部と、を備え、
前記報知制御部は、決済処理開始時においては前記報知部に非セキュアモード状態であることを報知させ、その後少なくとも前記入力部に前記認証情報が入力されるまでに、前記報知部に非セキュアモード状態の報知を終了させる、
決済端末装置。
【請求項4】
請求項3に記載の決済端末装置であって、
前記報知制御部は、
セキュアモード状態から前記非セキュアモード状態に変更された場合に、前記非セキュアモード状態の報知を開始する、
決済端末装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の決済端末装置であって、
前記報知部は、
前記セキュアモード状態を、LEDの点灯又は画面表示により報知する、
決済端末装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の決済端末装置であって、
前記報知部は、
前記非セキュアモード状態を、LEDの点灯又は画面表示により報知する、
決済端末装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「本件補正後の請求項」という。なお、下線は、補正箇所を示すものとして、請求人が付与したものである。)

に補正するものである。

そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。

2 目的要件

本件補正(審判請求時の補正)が、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものに限られるものであるかについて、以下に検討する。

(1)本件補正前の請求項と、本件補正後の請求項とを比較すると、請求項1,3のみが補正され、本件補正後の請求項1,3はそれぞれ、本件補正前の請求項1,3に対応することは明らかである。

(2)本件補正後の請求項1,3に係る補正は、下記の補正事項よりなるものである。

(補正事項)
本件補正前の請求項1,3の「筐体に収容され、非セキュアな第1の実行環境において決済に関する金額等を表示する表示部と、セキュアな第2の実行環境において本人確認のための認証情報が入力される入力部とを含む情報処理部」との記載を、本件補正後の請求項1,3の「筐体に収容され、決済に関する金額等を表示部において表示するとともに、ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境と、決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かを示す認証情報が入力部を介して入力される画面を表示する、セキュアな第2の実行環境とを有する情報処理部」との記載に限定するもの。

(3)本件補正によっても、本件補正前の請求項に記載された発明と本件補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかであるから、上記補正事項は限定的減縮を目的とするものであり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると言えることから、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものである。

3 独立特許要件

以上のように、本件補正は、限定的減縮を目的とする上記補正事項を含むものである。そこで、限定的減縮を目的として補正された本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記平成27年5月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「筐体に収容され、決済に関する金額等を表示部において表示するとともに、ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境と、決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かを示す認証情報が入力部を介して入力される画面を表示する、セキュアな第2の実行環境とを有する情報処理部と、
セキュアモード状態を報知する報知部と、
前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部と、を備え、
前記報知制御部は、決済処理開始時においては前記報知部にセキュアモード状態であることを報知させず、その後少なくとも前記入力部に前記認証情報が入力されるまでに、前記報知部にセキュアモード状態を報知させる、
決済端末装置。」

(2)引用例

(2-1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明

ア 本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原審の拒絶査定の理由である上記平成26年11月25日付けの最後の拒絶理由通知において引用された、特開2011-138477号公報(平成23年7月14日出願公開、以下、「引用例1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0025】
情報処理装置10が実行する実行環境には、セキュアな実行環境と非セキュアな実行環境とがある。ここにおいて、「実行環境」とは、アプリケーションを実行するために必要な所定のまとまりを有するプログラム群をいい、例えば、OS(operating system)である。また、実行環境について「セキュア」とは、安全であることが保証されたことをいい、例えば、信頼できるソフトウェアのみが動作可能なクローズドな実行環境がこれに該当する。一方、実行環境について「非セキュア」とは、セキュアでないことをいい、例えば、サードパーティによるソフトウェアが自由にインストール及び実行可能な実行環境がこれに該当する。実行環境がセキュアであるか否かは、あらかじめ決められていてもよいし、情報処理装置10が安全性を判断することで事後的に決められてもよい。
【0026】
情報処理装置10は、制御部100と、記憶部200と、ハードウェアデバイス300とを備える。制御部100は、CPU(central processing unit)等の演算処理装置とメモリ(主記憶装置)に相当する記憶手段とを備え、プログラムを実行することによって情報処理装置10の各部の動作を制御する。記憶部200は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の補助記憶装置に相当する記憶手段を備え、制御部100が用いるデータを記憶する。なお、記憶部200は、いわゆるメモリカードのような、情報処理装置10に対して容易に着脱可能な記憶手段とそのドライブを含んでもよい。」

B 「【0035】
図2は、制御部100により実現される機能を示す機能ブロック図である。制御部100は、VMM(virtual machine monitor:仮想マシンモニタ)130を利用することにより、第1OS110と第2OS120とを実現する。ここにおいて、第1OS110は、本発明に係る「セキュアな実行環境」の一例に相当し、第2OS120は、本発明に係る「非セキュアな実行環境」の一例に相当する。第1OS110及び第2OS120は、それぞれが所定のアプリケーションを実行する。」

C 「【0042】
状態決定部113は、識別子保持部111により保持されている識別子に従って、フォアグラウンドで実行されている実行環境の状態を決定する。本実施形態において、実行環境の状態は、「セキュア」及び「非セキュア」のいずれかであるとする。また、状態決定部113は、識別子保持部111により保持されている識別子と属性設定部112により保持された属性とを用いて実行環境の状態を決定してもよい。この場合、状態決定部113は、フォアグラウンドの実行環境の料金体系や操作手段の種別を当該実行環境の状態として決定することも可能である。」

D 「【0047】
状態報知部114は、状態決定部113により決定された状態をハードウェアデバイス300に報知させる。状態報知部114は、ハードウェアデバイス300のうち、セキュアな実行環境からはアクセス可能であって、非セキュアな実行環境からはアクセス不可能であるハードウェアデバイスに、状態を報知させる。かかるハードウェアデバイスは、情報処理装置10で実行される実行環境や情報処理装置10の具体的な構成に応じて異なり得る。状態報知部114は、OSに問い合わせたり、あるいはソフトウェアにハードコーディングされたデータを参照したりして、かかるハードウェアデバイスの存在を認識する。」

E 「【0052】
フック部116は、あらかじめ決められた特定処理が実行環境により実行される場合に、当該処理をフックし、状態報知部114による報知処理を追加する。フック部116が機能する場合、情報処理装置10は、特定処理を実行する前や実行中に、情報処理装置10の状態をユーザに報知する。ここにおける「特定処理」は、典型的には安全性に関連する処理であり、例えば、重要な情報(暗証番号等の個人情報など)の入力を促す処理や当該情報を表示する処理、ユーザに何らかの選択や設定を促す処理、データ通信を開始する処理などである。状態報知部114は、特定処理をフックして報知を行う場合には、他の場合と異なる態様で報知を行わせてもよい。」

F 図10には情報処理装置10が筐体に収容されることが図示されている。

イ ここで、上記引用例1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「実行環境について「セキュア」とは、安全であることが保証されたことをいい、例えば、信頼できるソフトウェアのみが動作可能なクローズドな実行環境がこれに該当する。」、「実行環境について「非セキュア」とは、セキュアでないことをいい、例えば、サードパーティによるソフトウェアが自由にインストール及び実行可能な実行環境がこれに該当する。」及び上記Bの「制御部100は、VMM(virtual machine monitor:仮想マシンモニタ)130を利用することにより、第1OS110と第2OS120とを実現する。ここにおいて、第1OS110は、本発明に係る「セキュアな実行環境」の一例に相当し、第2OS120は、本発明に係る「非セキュアな実行環境」の一例に相当する。」より、引用例1には、「サードパーティによるソフトウェアが自由にインストール及び実行可能なOSによる非セキュアな実行環境と、信頼できるソフトウェアのみが動作可能なセキュアな実行環境と、を有する制御部」が記載されていると解される。

(イ)上記Aの「情報処理装置10は、制御部100と、記憶部200と、ハードウェアデバイス300とを備える。」及び上記Fより、制御部を含む情報処理装置は筐体に収容されていることから、上記(ア)と併せて、引用例1には「筐体に収容され、サードパーティによるソフトウェアが自由にインストール及び実行可能なOSによる非セキュアな実行環境と、信頼できるソフトウェアのみが動作可能なセキュアな実行環境と、を有する制御部を備える情報処理装置」が記載されていると解される。

(ウ)上記Cの「状態決定部113は、識別子保持部111により保持されている識別子に従って、フォアグラウンドで実行されている実行環境の状態を決定する。本実施形態において、実行環境の状態は、「セキュア」及び「非セキュア」のいずれかであるとする。」及び上記Dの「状態報知部114は、状態決定部113により決定された状態をハードウェアデバイス300に報知させる。」より、状態報知部は状態決定部により決定された、「セキュア」及び「非セキュア」のいずれかの実行環境の状態を報知していることから、引用例1には、「「セキュア」及び「非セキュア」のいずれかの実行環境の状態を報知する状態報知部」が記載されていると解される。

(エ)上記Dの「状態報知部114は、ハードウェアデバイス300のうち、セキュアな実行環境からはアクセス可能であって、非セキュアな実行環境からはアクセス不可能であるハードウェアデバイスに、状態を報知させる。」より、引用例1には、「状態報知部はセキュアな実行環境からアクセス可能なハードウェアデバイスに状態を報知させる」ことが記載されていると解される。

(オ)上記Eの「「特定処理」は、典型的には安全性に関連する処理であり、例えば、重要な情報(暗証番号等の個人情報など)の入力を促す処理・・・などである。状態報知部114は、特定処理をフックして報知を行う場合には、他の場合と異なる態様で報知を行わせてもよい」より、引用例1には、暗証番号を入力する場合には、他の場合と異なる態様で報知することが記載されていると解される。

ウ 以上、(ア)乃至(オ)で指摘した事項から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「筐体に収容され、サードパーティによるソフトウェアが自由にインストール及び実行可能な非セキュアなOSによる実行環境と、信頼できるソフトウェアのみが動作可能なセキュアな実行環境と、を有する制御部と、
「セキュア」及び「非セキュア」のいずれかの実行環境の状態を報知する状態報知部と、を備え、
前記状態報知部はセキュアな実行環境からアクセス可能なハードウェアデバイスに状態を報知させ、
暗証番号を入力する場合には、他の場合と異なる態様で報知する、
情報処理装置。」

(2-2)引用例2に記載されている技術的事項

本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、原審の拒絶査定の理由である上記平成26年11月25日付けの最後の拒絶理由通知において引用された、特開2006-195599号公報(平成18年7月27日出願公開、以下、「引用例2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0027】
(3):カードの処理の説明
例えば、商品を販売する商店等で使用する端末1には、通常モード(非認証モード)では非認証アプリケーションが動作し商品の販売をし売上額を合計した預かり金額が表示される。預かり金額の決済のため端末1にICカード等のカードを挿入すると認証モードとなり認証アプリケーションが動作する。
【0028】
また、一枚のICカード等のカードに複数の種別(機能)を持たせることがある。このカードの種別として、クレジット、電子マネーや百貨店の友の会(商品券の電子化されたもの)等のプリペイド、ポイントなどがある。ここでカードをクレジットとして使用する場合はセキュアモードが必要であり、プリペイド、ポイントとして使用する場合はセキュアモードが不要なものとする。
【0029】
図4はカードの処理フローチャートである。以下、図4の処理S1?S8に従って説明する。
【0030】
S1:端末1のカードリーダ/ライタ(R/W)11に、ICカード等のカードが挿入されると処理S2に移る。
【0031】
S2:端末1の制御部12は、カードR/W11にカードが挿入されたことを認識して、認証アプリケーションを実行し、処理S3に移る。
【0032】
S3:制御部12は、認証アプリケーションによりカードの種別選択/利用額の入力画面を表示をし、利用者によりカードの種別の選択が行われると、処理S4に移る。なお、利用額はプリペイド等でセキュアモード不要な場合は、非認証画面を利用したカード種別選択、利用額入力が可能なものである。
【0033】
S4:制御部12は、認証アプリケーションによるPIN入力の要求があるかどうか判断する。この判断で、PIN入力の要求がある場合は処理S5に移り、無い場合は処理S6に移る。
【0034】
S5:制御部12は、認証アプリケーションによるPIN入力の画面を表示し、利用者がキーボード3によりPINを入力すると、処理S6に移る。
【0035】
S6:制御部12は、認証アプリケーションによるカードの実行処理(ICカード等のカードの情報を読み取り決済処理等の結果をカードに書き込みや入力されたPINとカード内のPINとの照合等)を行い、処理S7に移る。
【0036】
S7:制御部12は、認証アプリケーションによりカード種別の選択をするかどうかの画面を表示する。利用者がカード種別の選択を行う指示を行った場合は処理S3に戻り、選択を行わない場合は処理S8に移る。
【0037】
S8:制御部12は、カードR/W11からのカードの取り出しを検出し、この処理を終了する(通常モードに切り替わる)。」

(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「サードパーティによるソフトウェアが自由にインストール及び実行可能なOSによる非セキュアな実行環境」は、本件補正発明の「ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境」と、「ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境」である点において共通するものである。

(イ)引用発明の「暗証番号を入力する場合には、他の場合と異なる態様で報知する」ことより、暗証番号がセキュアな実行環境において入力されることは明らかであるから、引用発明の「信頼できるソフトウェアのみが動作可能なセキュアな実行環境」は、本件補正発明の「決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かを示す認証情報が入力部を介して入力される画面を表示する、セキュアな第2の実行環境」と、「認証番号が入力されるセキュアな第2の実行環境」である点において共通するものである。

(ウ)上記(ア)(イ)より、引用発明の「筐体に収容され、サードパーティによるソフトウェアが自由にインストール及び実行可能なOSによる非セキュアな実行環境と、信頼できるソフトウェアのみが動作可能なセキュアな実行環境を有する制御部」は、本件補正発明の「筐体に収容され、決済に関する金額等を表示部において表示するとともに、ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境と、決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かを示す認証情報が入力部を介して入力される画面を表示する、セキュアな第2の実行環境とを有する情報処理部」と「筐体に収容され、ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境と、セキュアな第2の実行環境とを有する情報処理部」を有する点において共通するものである。(相違点については後述する。)

(エ)引用発明の「「セキュア」及び「非セキュア」のいずれかの実行環境の状態を報知する状態報知部」は、本件補正発明の「セキュアモード状態を報知する報知部」に相当するものである。

(オ)引用発明の「上記状態報知部はセキュアな実行環境からアクセス可能なハードウェアデバイスに状態を報知させる」ことは、本件補正発明の「前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部」に相当する構成を有するものである。

(カ)本件補正発明の「決済端末装置」は上位概念では「情報処理装置」とみることができるから、引用発明の「情報処理装置」と、本件補正発明の「決済端末装置」とは、「情報処理装置」である点において共通するものである。

イ 以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)
「筐体に収容され、ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で業務アプリケーションを実行可能な、非セキュアな第1の実行環境と、認証情報が入力されるセキュアな第2の実行環境とを有する情報処理部と、
セキュアモード状態を報知する報知部と、
前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部と、
を備える情報処理装置。」

(相違点1)
本件補正発明は「決済端末装置」であり、非セキュアな第1の実行環境において「決済に関する金額等を表示部において表示する」とともに「決済アプリケーション」を実行可能であること、セキュアな第2の実行環境において「決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているかを示す認証情報が入力部を介して入力される画面を表示する」のに対し、引用発明では「決済に関する金額等を表示部において表示する」こと、及び「認証情報」が「決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているかを示す」ものであることについて言及がない点。

(相違点2)
本件補正発明は「前記報知制御部は、決済処理開始時においては前記報知部にセキュアモード状態であることを報知させず、その後少なくとも前記入力部に前記認証情報が入力されるまでに、前記報知部にセキュアモード状態を報知させる」のに対し、引用発明では「セキュア」及び「非セキュア」の実行環境の状態を報知する構成はあるものの、決済処理開始時にセキュアな実行環境であることを報知させず、認証情報が入力されるまでにセキュアな実行環境であることを報知する動作について言及がない点。

(4)当審の判断

上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用例2の上記Gの「商品を販売する商店等で使用する端末1には、通常モード(非認証モード)では非認証アプリケーションが動作し商品の販売をし売上額を合計した預かり金額が表示される。預かり金額の決済のため端末1にICカード等のカードを挿入すると認証モードとなり認証アプリケーションが動作する。」、「認証アプリケーションによるPIN入力の画面を表示し、利用者がキーボード3によりPINを入力する・・・認証アプリケーションによるカードの実行処理(ICカード等のカードの情報を読み取り決済処理等の結果をカードに書き込みや入力されたPINとカード内のPINとの照合等)を行い」との記載からすると、通常モード(非認証モード)において金額を表示するとともに、認証モードにおいてICカードのPIN入力の画面を表示して決済を行う端末が記載されていると認められる。
引用発明と引用例2に記載の発明は、セキュアな実行環境(認証モード)と非セキュアな実行環境(通常モード(非認証モード))を切り替えて用いる装置に関する発明であって、同一の技術分野に属するから、引用発明に引用例2に記載の発明を適用し、非セキュアな実行環境において金額を表示すると共に、認証情報をICカードのPINとする構成、すなわち相違点1に係る構成とすることは、当業者ならば容易になし得たものである。

イ 相違点2について
引用例2の上記Gには、「商品を販売する商店等で使用する端末1には、通常モード(非認証モード)では非認証アプリケーションが動作し商品の販売をし売上額を合計した預かり金額が表示される。預かり金額の決済のため端末1にICカード等のカードを挿入すると認証モードとなり認証アプリケーションが動作する。・・・認証アプリケーションによるPIN入力の画面を表示し、利用者がキーボード3によりPINを入力する」との記載があり、決済処理の開始時には通常モードであり、ICカードを挿入すると認証モードとなってPINを入力することが記載されている。
引用発明と引用例2に記載の発明は、セキュアな実行環境(認証モード)と非セキュアな実行環境(通常モード(非認証モード))を切り替えて用いる装置に関する発明であって、同一の技術分野に属するから、引用発明に引用例2に記載の発明を適用し、決済処理開始時には非セキュアな実行環境とし(すなわちセキュアな実行環境であることを報知しない)、ICカードを挿入するとセキュアな実行環境としてPINを入力するまでにセキュアな実行環境であることを報知する構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たものである。

ウ 小括
上記で検討したごとく、相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり、そして、この相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び引用例2に記載の発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、上記引用発明及び引用例2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)補正却下決定のむすび

上記で指摘したとおり、本件補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明の認定

平成27年5月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年11月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「筐体に収容され、非セキュアな第1の実行環境において決済に関する金額等を表示する表示部と、セキュアな第2の実行環境において本人確認のための認証情報が入力される入力部とを含む情報処理部と、
セキュアモード状態を報知する報知部と、
前記セキュアな第2の実行環境に設けられ、前記報知部を制御する報知制御部と、を備え、
前記報知制御部は、決済処理開始時においては前記報知部にセキュアモード状態であることを報知させず、その後少なくとも前記入力部に前記認証情報が入力されるまでに、前記報知部にセキュアモード状態を報知させる、
決済端末装置。」

2 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用発明は、前記「第2 平成27年5月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成27年5月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明の

「非セキュアな第1の実行環境」を修飾する「ソフトウェアプラットフォームとしての汎用オペレーティングシステムの下で決済アプリケーション及びその他の業務アプリケーションを実行可能な」との特定事項、及び、「セキュアな第2の実行環境」を修飾する「決済に用いられるカードが正当な者によって保有されているか否かを示す・・・入力部を介して・・・画面を表示する」との特定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記「第2 平成27年5月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」乃至「(4)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-25 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-16 
出願番号 特願2014-46918(P2014-46918)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸島 弘詩脇岡 剛  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 浜岸 広明
須田 勝巳
発明の名称 決済端末装置  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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