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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1310959
審判番号 不服2015-15947  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-28 
確定日 2016-03-01 
事件の表示 特願2011- 50166「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日出願公開、特開2011-187961、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月8日(パリ条約による優先権主張2010年3月9日、大韓民国)の出願であって、平成26年12月4日付けで拒絶理由通知が通知され、平成27年3月2日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月1日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、同年8月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出された。

第2 平成27年8月28日に提出された手続補正書による補正の適否
1 補正の内容
平成27年8月28日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?15を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?12と補正するものであり、補正前後の請求項1は、それぞれ次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
第1半導体層、活性層及び第2半導体層を含む発光構造物と、
前記発光構造物の上に形成され、炭素ナノチューブを含むナノチューブ層と、
前記第1及び第2半導体層の何れか一つの層上に形成された第1電極と、
前記第1及び第2半導体層の何れか一つの層上に形成された第2電極と、
を含み、
前記第2電極は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の上に配置され、
前記第2電極の下面は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層に接する発光素子。」

(補正後)
「【請求項1】
第1半導体層、活性層及び第2半導体層を含む発光構造物と、
前記発光構造物の上に形成され、炭素ナノチューブを含むナノチューブ層と、
前記第1半導体層上に形成された第1電極と、
前記第2半導体層上に形成された第2電極と、
を含み、
前記第2電極は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の上に配置され、
前記第2電極は、前記ナノチューブ層を貫通して前記第2半導体層と接し、
前記第2電極は、前記ナノチューブ層の一部領域とオーバーラップするように前記ナノチューブ層の前記一部領域上に形成され、
前記第2電極の下面は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の前記一部領域に直接接し、
前記第2半導体層は、上面に凹凸構造を含み、
前記ナノチューブ層は、前記第2電極と接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有し、
前記第2電極は、前記ナノチューブ層と接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有することを特徴とする発光素子。」

2 本件補正についての検討
(1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について
ア 本件補正を整理すると次のとおりである。
[補正事項1]
補正前の請求項1に記載された「前記第1及び第2半導体層の何れか一つの層上に形成された第1電極と、前記第1及び第2半導体層の何れか一つの層上に形成された第2電極と」を、「前記第1半導体層上に形成された第1電極と、前記第2半導体層上に形成された第2電極と」とすること。
[補正事項2]
補正前の請求項1に、「前記第2電極は、前記ナノチューブ層を貫通して前記第2半導体層と接し、前記第2電極は、前記ナノチューブ層の一部領域とオーバーラップするように前記ナノチューブ層の前記一部領域上に形成され、」との記載を付加するとともに、補正前の請求項1に記載された「前記第2電極の下面は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層に接する」を、「前記第2電極の下面は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の前記一部領域に直接接し」とすること。
[補正事項3]
補正前の請求項1に、「前記第2半導体層は、上面に凹凸構造を含み、 前記ナノチューブ層は、前記第2電極と接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有し、 前記第2電極は、前記ナノチューブ層と接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有することを特徴とする」との記載を付加すること。
[補正事項4]
補正前の請求項6?8を削除し、当該削除に対応して補正前の請求項9?15の請求項番号を繰り上げ、それぞれ補正後の請求項6?12とするとともに、それぞれ引用請求項の請求項番号を繰り上げること。

イ 以下、補正事項1?4について検討する。
(ア)補正事項1について
補正事項1は、「第1電極」及び「第2電極」について、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

また、補正事項1により追加された構成は、本願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「当初明細書等」という。)に記載されており、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項2について
補正事項2は、補正前の請求項1における「前記第2電極」について、「前記第2電極は、前記ナノチューブ層を貫通して前記第2半導体層と接し、前記第2電極は、前記ナノチューブ層の一部領域とオーバーラップするように前記ナノチューブ層の前記一部領域上に形成され、」との限定を付加するとともに、「前記第2電極の下面は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層に接する」を、「前記第2電極の下面は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の前記一部領域に直接接し」として、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

また、補正事項2により追加された構成は、当初明細書等に記載されており、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(ウ)補正事項3について
補正事項3は、補正前の請求項1における「前記第2半導体層」、「前記ナノチューブ層」、及び「前記第2電極」について、「前記第2半導体層は、上面に凹凸構造を含み、 前記ナノチューブ層は、前記第2電極と接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有し、 前記第2電極は、前記ナノチューブ層と接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有することを特徴とする」との限定を付加して、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、補正事項3は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

また、補正事項3により追加された構成は、当初明細書等に記載されており、補正事項3は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(エ)補正事項4について
補正事項4は、請求項の削除を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

また、補正事項4が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすことは明らかである。

(オ)補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものである。
また、補正事項1?4は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下において検討する。

(2)独立特許要件について
ア 本件補正後の発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明1」という。また、本件補正後の請求項2?12に係る発明をそれぞれ「補正発明2」?「補正発明12」という。)は、上記「1 補正の内容」の「(補正後)」に記載したとおりである。

イ 引用例の記載事項と引用発明
(ア)引用例1:特表2007-523495号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2007-523495号公報(以下「引用例1」という。)には、「ナノチューブ・コンタクトを用いた半導体デバイスおよび方法」(発明の名称)に関して、図1?4とともに以下の記載がある(下線は当審において付加した。以下同じ。)。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の半導体層に対して接触抵抗を低下させるコンタクト層を備えたナノチューブを含む電子および光電半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる材料間の接合部における電子輸送は、それぞれの材料間のバンド構造整列およびそれらの相対的化学ポテンシャルによって支配される。バンド間に不整合があると、電気的ポテンシャル・バリアが生ずるが、キャリア輸送を行うためにはこれを克服しなければならない。更に、材料を接触させるときに化学的ポテンシャルの平衡が生じ、その結果空間電荷層が形成される。この層には自由キャリアが枯渇しているため、輸送に対する障壁が増大し、全体的なデバイス性能を低下させる原因となる。
【0003】
適性なデバイス動作のためには、一般に、nおよびp型半導体双方に対する低抵抗オーミック・コンタクトが必要である。接触抵抗が高いと、コンタクトにおける電圧降下が著しくなり、スイッチング速度および電圧振幅というような、交流および直流それぞれの性能双方の低下に至る可能性がある。」

b 「【課題を解決するための手段】
【0009】
半導体デバイスは、少なくとも1つの半導体層と、半導体層と電気的に接触する金属層と、金属層と半導体層との間に介在するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層とを含む。ナノチューブ・コンタクト層は、金属層を半導体層に電気的に結合する。本発明の一実施形態では、ナノチューブ・コンタクト層は、本質的に単一壁ナノチューブ(SWNT)から成る。コンタクト層は、可視光範囲の少なくとも一部において、実質的に光透過膜となることができる。」

c 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明ならびにその特徴および利点については、以下の詳細な説明を添付図面と共に検討することにより、一層深い理解が得られる。
…(略)…
【0016】
ワタナベらとは対照的に、ここに記載する本発明は、金属電極と半導体材料を構成するアクティブ層との間における電荷の転移を改善するために、コンタクト領域にナノチューブを用いる。本発明の一実施形態による半導体デバイスは、少なくとも1つの半導体層と、半導体層と電気的に接触している層を備えている金属と、金属層と半導体層との間に介在するコンタクト層を備えているカーボン・ナノチューブとを含む。コンタクト層は、金属層を半導体層に電気的に結合し、低い比接触抵抗を有する半導体コンタクトを設ける。デバイスを構成する半導体は、ディスクリート・デバイス(例えば、ダイオードまたはトランジスタ)、あるいはマイクロプロセッサまたはメモリ・デバイスのような集積デバイスの一部とすることができる。デバイスは、電子デバイスまたは光電デバイスとすることができ、1つ以上のMEMSデバイスを用いて具体化されているように、チップ上に機械的構成要素を含むことができる。
【0017】
前述の電子回路へのナノチューブの応用のために半導体を金属ナノチューブから分離しようとするのではなく、本発明者は、密接に混合されたナノチューブ材料の特性は、金属を半導体に電気的に結合するための大きな利点を保有する中間層として用いるのに非常に適していることを発見した。金属層は、一般に、ナノチューブ混合物内に金属ナノチューブに対する障壁がなく、強く結合することが発見されている。
【0018】
特許請求する発明を実施するためには必要でないが、出願人は、理論に拘束されることを嫌い、本発明による層を備えたナノチューブによって得られる低抵抗コンタクトを説明する機構を紹介する。密接に混成した金属および半導体ナノチューブ間にある大きな接触面積は、これらの間に障壁ができたとしても、かなりの電流を伝達するのに役立つ。混合物における金属ナノチューブも、種々の半導体と電気的に強く結合する。金属ナノチューブは、金属層へのコンタクトをナノチューブ層の小領域に局在化することができ、しかも低抵抗コンタクトを設けるように、ナノチューブ層全体に電気コンタクトを分散すると考えられる。
…(略)…
【0020】
ナノチューブと電荷移動錯体を形成する元素および化合物の膨大な一群の内、1つ以上を用いると、ハロゲンまたはアルカリ金属のような、ナノチューブを化学的荷電転移ドープするために用いることができる。このような材料を用いると、ナノチューブのナノチューブ・フェルミ・レベルを容易にそして制御可能に調整することができ、n型またはp型のいずれにすることもできる。結晶格子を含む原子の希釈置換を伴う典型的な半導体ドーピングとは異なり、ナノチューブ格子の原子を除去する必要はない。代わりに、ドーパント種とナノチューブとの間に、本質的に自発的に、しかるべき化学物質(複数の化学物質)に露出したときに、単純な電荷転移が発生する。このため、電荷転送ドーピングを用いると、ナノチューブ層と、接触させる半導体層との間のバンド整合を改善することができる。望ましければ、ナノチューブ層のフェルミ・レベルを、接触させる半導体層のフェルミ・レベルに対して約0.1ボルト(以内)に近づけることができると考えられる。化学的ドーピングによって吸収バンドが抑制されることは、ナノチューブのフェルミ・レベルを少なくとも±1eVずらせることを示す。
…(略)…
【0022】
厚さ100から400nmというような、約1μm以下の薄いSWNT膜を用いることにより、ナノチューブ層は、可視光および/または赤外線範囲において、実質的に光透過性となることができる。…(略)…」

d 「【0029】
…(略)…
(実施例)
以下の具体例によって、本発明を更に例示する。これらの例は、如何様にしても本発明の範囲または内容を限定するように解釈すべきではない。
【0030】
図1に示したGaN量子井戸LED100を、c面電気的絶縁サファイア(Al_(2)O_(3))基板105上に、金属有機化学蒸着(MOCVD)によって成長させた。p-GaN層115におけるホール濃度は、約1×10^(17)cm^(-3)であって、n-GaN層110の電子濃度は、5×10^(18)から10^(19)cm^(-3)であった。接合領域を参照番号118で示す。P+ナノチューブ層120を形成するために、純化、パルス状レーザ気化成長SWNTを、約1.5×10^(-3)mg/mlの希釈濃度で、水性界面活性懸濁液(1%v/vTRITON X-100TM)において超音波破砕によって散乱させた。懸濁液を0.1μm孔サイズ、混合セルロース・エステル・メンブレーン(Millipore、Billerica、Ma)上で真空濾過し、続いて大量の脱イオン化水で洗浄して界面活性剤を除去した。メンブレーン上に、透明電極として用いるための1500Åナノチューブ膜が形成された。
【0031】
ナノチューブ膜を転移するために、未だ濡れているメンブレーンをナノチューブ膜側のp-GaN層115上に配置した。続いて、この構造体を多孔質濾紙で覆い、4kgの質量で負荷をかけて一晩乾燥平坦化し(dry flat)、p-GaN層115に接着したナノチューブ膜(未だメンブレーンがくっついたままである)を残した。通例、接着は、ナノチューブを傷つけずに連続アセトン槽において、次いで最後のメタノール槽においてメンブレーンの溶解を続けて行うことを可能にするには適当である(連続槽は、ナノチューブ膜内に取り込んだ溶解セルロース・エステルを最少に抑えるために用いる)。一旦乾燥したなら、ナノチューブ120/p-GaN115/n-GaN110/基板105の構造体を600℃で6時間空気中においてアニールして、セルロース・エステル・メンブレーンの最後の痕跡を除去した。Eビーム堆積Ti/Al/Pt/Au、Pd/Au、またはPdをリフトオフによってパターニングし、Cl2/Ar誘導性結合プラズマ・エッチングによってメサを形成し、接合部のn-GaN側を露出した。n-GaN110への金属コンタクト112は、N_(2)の下で1分間700℃にてアニールしたTi/Al/Pt/Auであった。同様に、金属コンタクト122をナノチューブ層120上に形成した。
【0032】
加えて、CNT膜もサファイア上の単一層p-GaN上に堆積し、CNT膜をパターニングしてまたはパターニングせずに金属層とp-GaN層との間に介在させた構造において、伝送線路法(TLM)を用いて、比接触抵抗(r_(c))を測定した。各場合における比接触抵抗(r_(c))は、関係r_(c)=(Rc^(2)/Rs)W^(2)によって、構造R=2R+Rs(L/W)の全測定抵抗から得た。ここで、Rcは測定した接触抵抗、Rs/Wは抵抗対パッド間隔のグラフの傾きであり、Wはパッドの幅、Lはパッドの間隔である。
【0033】
図2は、本発明によるp-GaN層上のCNT膜の上に種々の金属を配したLEDの接合電流-電圧(V-I)特性を示す。各場合において、接合部は、優れた整流特性を呈している。このように、SWNTコンタクト層は、p-GaN層のホール濃度が比較的低い(約1×10^(17)cm^(-3))にも拘わらず、優れたオーミック・コンタクトを備えている。TLM測定から得た接触抵抗データを図3に示す。CNT膜自体は、非常に導電性が高く、電流が主にCNT膜を通過する場合のこれらの膜の上に堆積した際の接触抵抗、5.4×10^(-3)Ωcm^(2)が、700℃、1分間のN_(2)アニールの後に1.3×10^(-4)Ωcm^(2)となる。CNTをパターニングして、電流がp-GaNを通過するようにさせる場合、この構造の接触抵抗は、700℃アニール後には1.1×10^(-2)Ωcm^(2)となることがわかったが、CNTは堆積した状態においても、オーミック挙動を生ずる。これは、堆積すると非オーミックであった、同一層上の標準的なNi/Auコンタクトの場合(中間ナノチューブ層がない)とは全く対照的である。」

e 図1は、「本発明の一実施形態による、金属とp-GaN層との間に配置したカーボン・ナノチューブ・コンタクト層を含むGaN LED構造の模式図。」であり、以下のとおりである。
また、p-GaN層115とn-GaN層110との間に接合領域118が見てとれる。
ナノチューブ層120はp-GaN層115の上に形成されていること、及び、金属コンタクト122は、ナノチューブ層120の一部領域上に、直接接するように形成されていることが見てとれる。

【図1】


(イ)引用発明
上記「(ア)b」の段落【0009】、「(ア)c」の【0016】等の記載から、引用例1の(実施例)に記載の「ナノチューブ層」は、金属層と半導体層との間に介在するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層であるといえ、当該「金属層」と「半導体層」は、それぞれ図1の「金属コンタクト122」と「p-GaN層115」が対応することは明らかである。
したがって、図1を参酌してまとめると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「P+ナノチューブ層120/p-GaN層115/n-GaN層110/基板105の構造体を含み、
前記構造体は、p-GaN層115とn-GaN層110との間に接合領域118を有し、
ナノチューブ層120はp-GaN層115の上に形成され、
n-GaN110への金属コンタクト112が、n-GaN110上に形成され、
金属コンタクト122は、ナノチューブ層120の一部領域上に、直接接するように形成され、
ナノチューブ層120は、金属コンタクト122とp-GaN層115との間に介在するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層である、
GaN量子井戸LED100。」

(ウ)引用例2:特開平10-242516号公報
原査定で周知技術を示す文献として提示され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-242516号公報(以下「引用例2」という。)には、「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子及びその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。

a 「【0014】本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、信頼性を向上でき、かつ外部発光効率を向上できる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。」

b 「【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、基板上にN型窒化ガリウム系化合物半導体層及びP型窒化ガリウム系化合物半導体層が積層され、該P型窒化ガリウム系化合物半導体層の表面を発光透光面とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子において、該P型窒化ガリウム系化合物半導体層の表面にP型ボンディング用電極と透光性電極が形成され、該P型窒化ガリウム系化合物半導体層の該P型ボンディング用電極の直下の領域に電流が注入されるのを阻止する一方、該透光性電極と該P型窒化ガリウム系化合物半導体層がオーミックコンタクトしている領域のみに電流が注入される構造を有しており、そのことにより上記目的が達成される。」

c 「【0029】(実施形態1)図1?図4は本発明窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の実施形態1を示す。まず、図1及び図2に基づき本実施形態1の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の概略構造について説明する。
【0030】この窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、絶縁性基板であるサファイヤ基板6上に、バッファ層7、N型窒化ガリウム系化合物半導体層8及びP型窒化ガリウム系化合物半導体層9をこの順に積層して形成されている。加えて、P型窒化ガリウム系化合物半導体層9の表面上、即ち発光透光面3上には、ショットキー電極2aが形成され、その上にP型ボンディング用電極2bが形成されている。図2に示すように、ショットキー電極2a及びP型ボンディング用電極2bは、発光透光面3の隅部に形成されている。また、これらは透光性電極1によって覆われている。
…(略)…
【0038】このような電極構造によれば、TiはP型窒化ガリウム系化合物半導体層9に対してショットキー特性を有するため、P型窒化ガリウム系化合物半導体層9のP型ボンディング用電極2bの直下に位置する領域に電流が注入されるのを阻止できる。
【0039】また、透光性電極1はAu及びNiの積層構造とし、P型窒化ガリウム系化合物半導体層9の表面上にNiを3?15nm(例えば、3nm)形成し、その上にAuを3?15nm(例えば、4nm)形成した。ここで、NiはP型窒化ガリウム系化合物半導体層9に対してオーミックコンタクトを示す。このため、図4に示すように、透光性電極(オーミック電極)1のNiとP型窒化ガリウム系化合物半導体層9が接触している領域のみに電流を流すことができる。
【0040】それ故、本実施形態1の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子によれば、このオーミックコンタクトしている領域のみの電流密度を高く、かつ発光密度を高くできるので、発光層、つまり活性層7からの発生光を図4に示すように、効率よく外部に取り出すことができる。この結果、本発明者等の実験結果によれば、上記従来の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子に比べて約2倍の輝度改善を図れることが確認できた。」

d 「【0044】(実施形態2)図5?図7は本発明窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の実施形態2を示す。本実施形態2の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、電極構造のみが実施形態1の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子と異なっている。即ち、図5及び図6に示すように、本実施形態2の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子では、透光性電極1の隅部を切り欠いた部分のP型窒化ガリウム系化合物半導体層9の表面上、即ち発光透光面3上にショットキー電極2aとP型ボンディング用電極2bからなる積層構造を形成している。なお、実施形態1の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子と対応する部分には同一の符号を付してある。
【0045】次に、図7に基づきこの窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の製造工程について説明する。
【0046】まず、同図(a)に示すように、サファイヤ基板6上にバッファ層7、n型窒化ガリウム系化合物半導体層8及びP型窒化ガリウム系化合物半導体層9をこの順に積層形成する。次に、N型窒化ガリウム系化合物半導体層8が露出するまでP型窒化ガリウム系化合物半導体層9の一部をエッチングする。図中の符号5はこのエッチング領域を示す。続いて、P型窒化ガリウム系化合物半導体層9の表面上、即ち発光透光面3上に隅部を切り欠いた透光性電極1を形成する。
【0047】次に、同図(b)に示すように、透光性電極1の隅部を切り欠いた部分のP型窒化ガリウム系化合物半導体層9の表面上にショットキー電極2aを形成し、続いてその上にP型ボンディング用電極2bを形成する。
【0048】次に、同図(c)に示すように、N型窒化ガリウム系化合物半導体層8の表面上にN型ボンディング用電極4を形成する。以上の工程によって、図5及び図6に示す本実施形態2の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子が作製される。
【0049】ここで、本実施形態2においても、ショットキー電極2aの材質はTiであり、その厚みも実施形態1と同様である。また、P型ボンディング用電極2bの材質、厚みも同様である。更に、透光性電極1も同様のAu及びNiからなる積層構造であり、その厚みも同様である。
【0050】このため、本実施形態2においても、実施形態1同様に、オーミックコンタクトしている領域のみの電流密度を高く、かつ発光密度を高くできるので、発光層、つまり活性層7からの発生光を効率よく外部に取り出すことができる。」

e 「【0061】
【発明の効果】以上の本発明によれば、P型ボンディング用電極の直下での電流注入を阻止し、透光性電極とP型窒化ガリウム系化合物半導体層がオーミックコンタクトしている領域のみに電流を注入することができるので、オーミックコンタクトしている領域のみの電流密度と発光密度を高くできる。このため、発光層、即ち活性層からの発生光を効率よく外部に取り出すことができる。即ち、外部発光効率を向上できる。」

(エ)引用例3:特開2006-237574号公報
原査定で周知技術を示す文献として提示され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-237574号公報(以下「引用例3」という。)には、「GaN系発光ダイオード」(発明の名称)に関して、以下の記載がある。

a 「【請求項1】
GaN系半導体からなる発光層に積層して形成されたp型GaN系半導体層と、該p型GaN系半導体層の表面に形成されたp型オーミック電極と、該p型オーミック電極に電気的に接続されたp側パッド電極と、を備えたGaN系発光ダイオードであって、
前記p型オーミック電極は、前記発光層で生じる光が通過し得る窓部を有するパターンに形成された部分と、開口部が設けられた部分と、からなり、
前記p側パッド電極は、前記開口部の内側で前記p型GaN系半導体層と接するとともに、その外周部が前記p型オーミック電極の上に重なるように形成され、それによって、該p側パッド電極と該p型オーミック電極とが重なった領域が、該p側パッド電極の輪郭線に沿った帯状かつ環状の領域となっており、
前記p側パッド電極と前記p型GaN系半導体層との接触が非オーミック性とされるか、または、前記p側パッド電極が接する前記p型GaN系半導体層の表面が高抵抗化されることにより、前記p側パッド電極から前記p型GaN系半導体層に直接電流が流れないようにされている、GaN系発光ダイオード。」

b 「【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN系発光ダイオードに関する。更に詳しくは、p型GaN系半導体層の表面に形成されるp型オーミック電極が、窓部を有するパターンに形成され、該窓部を通して光を取り出すことができるように構成されたGaN系発光ダイオードに関する。」

c 「【0011】
以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態(審決注:【図面の簡単な説明】から、「実施」は誤記と認定した。)に係るGaN系LEDの構造を示す模式図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のx-y線における断面図である。
図1において、1はサファイア基板、2はSi(ケイ素)がドープされた膜厚3μmのn型GaNクラッド層、3はIn_(X1)Ga_(1-X1)N井戸層とIn_(X2)Ga_(1-X2)N(0≦X2<X1)障壁層が交互に積層されてなる量子井戸構造の発光層、4はMg(マグネシウム)がドープされた膜厚30nmのp型AlGaNクラッド層、5はMgがドープされた膜厚200nmのp型GaNコンタクト層、P1は膜厚20nmのTi(チタン)層の上に膜厚1000nmのAl(アルミニウム)層を積層し、熱処理してなるn型オーミック電極、P2は膜厚20nmのNi(ニッケル)層の上に膜厚200nmのAu(金)層を積層し、熱処理してなるp型オーミック電極、P3は膜厚30nmのTi層の上に膜厚1000nmのAu層を積層し、熱処理してなるp側パッド電極である。サファイア基板1とn型GaNクラッド層2との間には、AlGaNからなるバッファ層(図示せず)が形成されている。
【0012】
p型GaNコンタクト層5の表面には、p側パッド電極P3が形成される領域を除いて、該表面のほぼ全域を覆うように、p型オーミック電極P2が格子状パターンに形成されている。この格子状パターンは、電極膜の中に、一辺15μmの正方形状の窓部Wが、直交する二方向に、共に間隔3μmで正方行列状に規則配列されてなるもので、窓部Wにはp型GaNコンタクト層5の表面が露出している。窓部を有するパターンにおける電極部分の面積比を、電極部分の面積と窓部の面積の合計に対する、電極部分の面積の比率と定義すると、この格子状パターンにおける電極部分の面積比は、図9に示すように、約31%と計算される。
図3(a)は、図1のGaN系LEDに含まれるp型オーミック電極P2のみを図示したもので、格子状パターンに形成された部分と、開口部Qが設けられた部分と、からなっている。
【0013】
素子の上面には、一辺100μmの正方形状のp側パッド電極P3が、p型GaNコンタクト層5の表面とp型オーミック電極P2の両方に接するように形成されている。このp側パッド電極P3は、p型オーミック電極P2の開口部の内側で、p型GaNコンタクト層5と接しており、また、その外周部は、p型オーミック電極P2の上に重なっている。
図1(a)にて斜線で示した領域は、p側パッド電極P3がp型オーミック電極P2の上に重ねられることにより、これらの電極が接している領域Sである。この領域Sは、p側パッド電極P3の輪郭線に沿った帯幅約10μmの帯状となっており、かつ、環状をなしている。図1(a)にて、環状の領域Sの内側の縁を規定している点線は、p側パッド電極P3の下に隠れているp型オーミック電極P2の輪郭線であり、領域Sの内側(=p型オーミック電極P2の開口部の内側)では、p側パッド電極P3がp型GaNコンタクト層5の表面に接している。この帯状の領域Sの面積は約3600μm^(2)であり、p側パッド電極P3の面積(10000μm^(2))に対する面積比は約36%である。
【0014】
図1のGaN系LEDにワイヤボンディングを行い通電すると、p型オーミック電極P2の下方の発光層3で発光が生じ、窓部Wを通して、素子上方に出射される。一方、p側パッド電極P3は、p型GaNコンタクト層5と接する部分がTiからなるので、p側パッド電極P3がp型GaNコンタクト層5の表面に接している領域の下方では発光が生じない。これは、Tiとp型GaNとの接触はショットキー接触となるため、p側パッド電極P3からp型GaNコンタクト層5には直接電流が流れないためである。よって、図1のGaN系LEDでは、p側パッド電極P3の中央部分の下方では、発光が生じない。一方、帯状の領域Sの下方では、p型オーミック電極P2からp型GaNコンタクト層5に電流が流れるので、発光が生じるが、この発光はp側パッド電極P3の縁部の下方で生じるために、従来のGaN系LEDで生じていた、p側パッド電極の中央部分の下方での発光と比べて、窓部Wを通して素子外部に出射され易い。
【0015】
図2は、本発明者等が、比較のために検討を行ったGaN系LEDの上面図である。図2のGaN系LEDが、図1に示すGaN系LEDと異なるのは、p側パッド電極がp型オーミック電極の上に積層された領域と、p側パッド電極がp型層に接する領域とが、当該p側パッド電極の輪郭線に沿って交互に並ぶように、p型オーミック電極の形状の一部を変更している点である。図2において、黒く塗り潰して表示した領域が、p側パッド電極P13がp型オーミック電極P12の上に重なった領域である。図3(b)は、図2のGaN系LEDに含まれるp型オーミック電極P12のみを図示したものである。図2のGaN系LEDでは、p側パッド電極がp型オーミック電極の上に重なった領域の面積が、図1のGaN系LEDの約6分の1となっている。
【0016】
本発明者等による検討の結果、図2のGaN系LEDは特性が極めて不安定であることが分かった。具体的には、このGaN系LEDは順方向電圧のバラツキが大きく、それに伴い、1枚のウェハから得られる素子の平均的な順方向電圧の値も大きくなった。また、それだけでなく、不良品として、素子を上から見たときに、p側パッド電極P13の近傍でしか発光しない素子、即ち、電流がp側パッド電極P13からp型オーミック電極P12に正常に流れない素子が、多数発生した。これらの問題は、図1のGaN系LEDでは生じなかったものであり、図1のGaN系LEDの方が、図2のGaN系LEDよりも、p型オーミック電極とp側パッド電極との電気的な接続状態が良好となることを示唆している。
このように、図1に示すGaN系LEDと図2に示すGaN系LEDの対比から、本発明のGaN系LEDにおいて、p側パッド電極がp型オーミック電極の上に重なった領域を、p側パッド電極の輪郭線に沿った帯状かつ環状の領域とすることが、重要な意義を持つことが理解される。」

d 「【0036】
本発明に係るGaN系LEDでは、p側パッド電極がp型オーミック電極の上に重なった領域を、p側パッド電極の輪郭線に沿った帯状の領域とするが、ここでいう、p側パッド電極の輪郭線に沿った帯状とは、該輪郭線に沿った方向が長手方向である帯状であり、該輪郭線の形状に応じて直線的な帯状であってもよいし、曲がった帯状であってもよい。この帯状の領域を、p側パッド電極の輪郭線の全周に沿った環状とすることにより、p側パッド電極とp型オーミック電極との接触状態を安定なものとすることができる。」

ウ 対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「GaN量子井戸LED100」、「P+ナノチューブ層120」、「p-GaN層115」、「n-GaN層110」、「金属コンタクト112」、「金属コンタクト122」、及び「カーボン・ナノチューブ」は、それぞれ補正発明1の「発光素子」、「ナノチューブ層」、「第2半導体層」、「第1半導体層」、「第1電極」、「第2電極」、及び「炭素ナノチューブ」に相当する。

(イ)引用発明において、「p-GaN層115とn-GaN層105との間」の「接合領域118」は、LED100におけるp層とn層との間の領域であるから、活性層であることは明らかである。
したがって、引用発明において、「構造体」の「『p-GaN層115/n-GaN層110』及び『p-GaN層115とn-GaN層105との間』の『接合領域118』」からなる構造物は、補正発明1の「第1半導体層、活性層及び第2半導体層を含む発光構造物」に相当する。
さらに、引用発明は、「ナノチューブ層120はp-GaN層115の上に形成され」るものであるから、補正発明1と引用発明は、「前記発光構造物の上に形成されたナノチューブ層」を含む点で一致する。

(ウ)引用発明の「金属コンタクト122は、ナノチューブ層120の一部領域上に、直接接するように形成され」、「ナノチューブ層120は、金属コンタクト122とp-GaN層115との間に介在する」ものであるから、引用発明において、「金属コンタクト122の下面は、ナノチューブ層120の一部領域とオーバーラップするようにナノチューブ層120の前記一部領域上に形成され、金属コンタクト122の下面は、ナノチューブ層の前記一部領域に直接接」するものであるといえる。
したがって、補正発明1と引用発明は、「前記第2電極は、前記ナノチューブ層の一部領域とオーバーラップするように前記ナノチューブ層の前記一部領域上に形成され、前記第2電極の下面は、前記ナノチューブ層の前記一部領域に直接接し」たものである点で一致する。

さらに、引用発明において、「ナノチューブ層120はp-GaN層115の上に形成され」たものであるから、「金属コンタクト122」(第2電極)は、「p-GaN層115(第2半導体層)上に形成され」たものであり、「p-GaN層115とナノチューブ層120の上に配置され」たものであるといえる。
したがって、補正発明1と引用発明は、「前記第2半導体層上に形成された第2電極」を含み、「前記第2電極は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の上に配置され」たものである点で一致する。

(エ)以上をまとめると、補正発明1と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
第1半導体層、活性層及び第2半導体層を含む発光構造物と、
前記発光構造物の上に形成され、炭素ナノチューブを含むナノチューブ層と、
前記第1半導体層上に形成された第1電極と、
前記第2半導体層上に形成された第2電極と、
を含み、
前記第2電極は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の上に配置され、
前記第2電極は、前記ナノチューブ層の一部領域とオーバーラップするように前記ナノチューブ層の前記一部領域上に形成され、
前記第2電極の下面は、前記ナノチューブ層の前記一部領域に直接接する、
発光素子。」

<相違点1>
第2電極について、補正発明1では、「前記第2電極は、前記ナノチューブ層を貫通して前記第2半導体層と接し、前記第2電極は、前記ナノチューブ層の一部領域とオーバーラップするように前記ナノチューブ層の前記一部領域上に形成され、前記第2電極の下面は、前記第2半導体層と前記ナノチューブ層の前記一部領域に直接接」するものであるのに対し、引用発明において、「金属コンタクト122は、ナノチューブ層120の一部領域上に、直接接するように形成され」、「ナノチューブ層120は、金属コンタクト122とp-GaN層115との間に介在するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層である」ものの、引用発明の「金属コンタクト122」(第2電極)は、「ナノチューブ層120を貫通してp-GaN層115と接し」ておらず、その下面は、「p-GaN層115とナノチューブ層120の一部領域に直接接」するものではない点。

<相違点2>
補正発明1は、「前記第2半導体層は、上面に凹凸構造を含み、前記ナノチューブ層は、前記第2電極と接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有し、前記第2電極は、前記ナノチューブと接する領域に前記凹凸構造に対応する凹凸形状を有する」のに対し、引用発明では、「p-GaN層115」(第2半導体層)、「ナノチューブ層120」及び「金属コンタクト122」(第2電極)について、そのような特定はなされていない点。

エ 判断
(ア)補正発明1についての判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
a 相違点1について
(a)上記「イ」の「(ア)引用例1」の摘記事項「a」の段落【0001】、「b」の段落【0009】、「c」の段落【0016】?【0020】等を参照すると、引用例1には、1つ以上の半導体層に対して接触抵抗を低下させるコンタクト層を備えたナノチューブを含む電子および光電半導体デバイスに関する発明が開示されており、課題解決手段として、金属層と半導体層との間に介在するカーボン・ナノチューブ・コンタクト層を含むものが開示されている。
他方、引用発明において、「金属コンタクト122」(第2電極)を、「ナノチューブ層120を貫通してp-GaN層115と接」するものとし、「金属コンタクト122」の下面を、「p-GaN層115とナノチューブ層120の一部領域に直接接する」ようにすることは、「カーボン・ナノチューブ・コンタクト層を金属層と半導体層との間に介在する構成とし、ナノチューブ層と、接触させる半導体層との間のバンド整合を改善して、接触抵抗を低下させる」こととは、逆行することであり、引用発明において、上記相違点1に係る補正発明1の構成を採用することの動機付けはない。

(b)次に、引用発明と引用例2に記載の技術との組合せについて検討する。
上記のように、引用例1には、半導体層に対して接触抵抗を低下させるために、金属層と半導体層との間にナノチューブを介在させる発明が記載されている。

他方、上記「イ」の「(ウ)引用例2」の摘記事項「d」及び図5を参照すると、引用例2には、「実施形態2」において、「ショットキー電極2a」は、「透光性電極1の一部領域とオーバーラップするように透光性電極1の前記一部領域上に形成され、ショットキー電極2aの下面は、P型チッ化ガリウム系化合物半導体層9と透光性電極1の前記一部領域に直接接する」構成が開示されているといえる。
しかしながら、引用例2に記載された技術は、摘記事項「b」の段落【0015】、摘記事項「c」の段落【0040】、摘記事項「d」の段落【0050】、摘記事項「e」の段落【0061】を参照すると、P型窒化ガリウム系化合物半導体層の表面にP型ボンディング用電極と透光性電極が形成され、該P型窒化ガリウム系化合物半導体層の該P型ボンディング用電極の直下の領域に電流が注入されるのを阻止する一方、該透光性電極と該P型窒化ガリウム系化合物半導体層がオーミックコンタクトしている領域のみに電流が注入される構造を有しているので、発生光を効率良く外部に取り出すことができるものである。
また、同「(ウ)引用例2」の摘記事項「c」を参照すると、「実施形態1」においては、「ショットキー電極2a」は、その下面がP型チッ化ガリウム系化合物半導体層9にのみ直接接しており、透光性電極1には直接接しておらず、「透光性電極1の一部領域とオーバーラップするように透光性電極1の前記一部領域上に形成され、ショットキー電極2aの下面は、P型チッ化ガリウム系化合物半導体層9と透光性電極1の前記一部領域に直接接する」構成ではない。

したがって、引用例1に開示の「接触抵抗を低下させる」との課題と引用例2に記載の技術の課題とは異なり、しかも、引用発明において、「金属コンタクト122」の構成として、引用例2の記載に基づき、「実施形態2」として開示の上記の構成を採用しようとすること、すなわち、接触抵抗を低下させるために用いた「ナノチューブ層120」を貫通させてp-GaN層115と接するようにし、その下面を、「p-GaN層115とナノチューブ層120の一部領域に直接接する」構成を採用しようとすることは、接触抵抗を低下させることとは逆行し、動機付けもない。

よって、引用発明において、金属コンタクト122の構成として、引用例2に記載された「実施形態2」の「ショットキー電極2a」の構成を採用することは、当業者において動機付けもなく、論理に飛躍があり、引用発明において、引用例2を参照したとしても、相違点1に係る補正発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たとはいえない。

(c)次に、引用発明と引用例3に記載の技術との組合せについて検討する。
上記「イ」の「(エ)引用例3」の摘記事項「c」及び図1を参照すると、引用例3には、図1に示された「本発明の実施形態に係るGaN系LEDの構造」において、「p側パッド電極P3」が、「p型GaNコンタクト層5の表面とp型オーミック電極P2の両方に接するように形成されている」構成が開示されている。
しかしながら、引用例3において、図2に示された「比較例」のLEDも、p側パッド電極P13がp型オーミック電極P12の上に積層された領域と、p側パッド電極P13がp型層に接する領域とが形成されたものであり、引用例3に記載された技術は、摘記事項「a」の請求項1、摘記事項「c」の段落【0016】、摘記事項「d」の段落【0036】に記載されているように、「該p側パッド電極と該p型オーミック電極とが重なった領域」を、「p側パッド電極の輪郭線に沿った帯状かつ環状の領域」とすることにより、p型オーミック電極とp側パッド電極との接触状態を安定なものとすることで、電気的な接続状態が良好となるLEDを得ることである。

したがって、引用例1に開示の「接触抵抗を低下させる」との課題と引用例3に記載の技術の課題とは異なり、しかも、引用発明において、「金属コンタクト122」の構成として、引用例3の記載に基づき、図1に示された実施形態に係るLED及び図2に示された比較例のLEDの両者が備える構成を採用しようとすること、すなわち、接触抵抗を低下させるために用いた「ナノチューブ層120」を貫通させてp-GaN層115と接するものとし、その下面を、「p-GaN層115とナノチューブ層120の一部領域に直接接する」ようにする構成を採用しようとすることは、接触抵抗を低下させることとは逆行するし、動機付けもない。

よって、引用発明において、金属コンタクト122の構成として、引用例3に記載された「p側パッド電極P3とP13」の構成を採用することは、当業者において動機付けもなく、論理に飛躍があり、引用発明において、引用例3を参照したとしても、相違点1に係る補正発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たとはいえない。

(d)以上のとおりであるから、引用例2及び引用例3を参照したとしても、引用発明において、相違点1に係る補正発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たとはいえない。

b 補正発明1についての判断のまとめ、
したがって、相違点2について検討するまでもなく、補正発明1は、引用発明並びに引用例2及び引用例3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)補正発明2?補正発明12についての判断
補正発明2?補正発明12は、補正発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記「(ア)補正発明1についての判断」と同様の理由により、引用発明並びに引用例2及び引用例3の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)判断についてのまとめ
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項?第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項?第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?12に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-02-16 
出願番号 特願2011-50166(P2011-50166)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 恩田 春香
▲高▼ 芳徳
発明の名称 発光素子  
代理人 金山 賢教  
代理人 小野 誠  
代理人 市川 英彦  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 重森 一輝  
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