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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1311143 |
審判番号 | 不服2015-1846 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-30 |
確定日 | 2016-02-10 |
事件の表示 | 特願2013-550619「自動車排気ガスに由来するCO2の車両内回収及び貯蔵」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月26日国際公開、WO2012/100165、平成26年 2月24日国内公表、特表2014-504695〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年1月20日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年7月19日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、同年9月17日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文(以下、「翻訳文」という。)が提出され、同年12月20日付けで拒絶理由が通知されるとともに指令書が通知され、平成26年7月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月22日付けで拒絶査定がされ、平成27年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年2月2日(受付日。書面上に記載された提出日は同年1月30日である。)に手続補足書が提出されたものである。 第2 平成27年1月30日付けの手続補正について 1 平成27年1月30日付けの手続補正の内容 平成27年1月30日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正であって、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年7月3日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 車両によって大気中に排出されるCO_(2)の量を減らす方法であって、 a.吸収区域と再生区域との間でCO_(2)捕捉剤を循環させること、 b.排気ガス流を、車両に搭載された前記吸収区域において、排気流からCO_(2)を抽出する予め定められた容量を有するCO_(2)捕捉剤と接触させること、 c.減少されたCO_(2)容量を有する処理済みの排気ガス流を大気中に排出すること、 d.前記CO_(2)捕捉剤を前記再生区域で熱排気ガスとの熱交換により加熱して、抽出されたCO_(2)を放出して該捕捉剤を再生すること、 e.CO_(2)ガス流を回収すること、 f.該回収されたCO_(2)ガスを前記車両内で圧縮して当該容量を縮小すること、 及び、 g.前記圧縮されたCO_(2)を前記車両内で一時的に貯蔵すること、 を含む方法。 【請求項2】 熱電素子との接触によって、前記ICEによって放射された熱排気ガス流から熱及びエネルギーを回収し、該回収されたエネルギーを前記ステップ(f)でCO_(2)を圧縮するために使用することを含む請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記車両のICEの稼働中に実質的に継続して稼働する、請求項1記載の方法。 【請求項4】 前記熱交換は前記CO_(2)捕捉剤が熱交換器を循環している間に発生することを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項5】 前記CO_(2)捕捉剤は、CO_(2)を吸収する液体及びCO_(2)を吸着する微粉化された流動性粉末固形物から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項6】 前記CO_(2)捕捉剤が液体吸収剤であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項7】 前記CO_(2)捕捉剤は、高沸点の液体又は共融混合物であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項8】 前記高沸点の液体は、イオン液体であることを特徴とする請求項7記載の方法。 【請求項9】 前記高沸点の液体は、熱伝導流体であることを特徴とする請求項7記載の方法。 【請求項10】 前記CO_(2)捕捉剤は、高沸点液中のアルカリ金属炭酸塩の溶剤であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項11】 前記CO_(2)捕捉剤は、イミダゾリウムに基づいた、及び、ピリジニウムに基づいた炭酸塩/水素炭酸塩を含むイオン液体炭酸塩であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項12】 前記CO_(2)捕捉剤は、微粒子の高沸点コロイド溶液であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項13】 前記CO_(2)捕捉剤は、高沸点液中に浮遊する固体粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項14】 前記CO_(2)捕捉剤は、アミン溶質のカルバミン酸塩を安定させる高沸点の溶媒であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項15】 前記CO_(2)捕捉剤は、向流関係において排気ガス流と接触される微粉化された流動性固体吸収剤であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項16】 前記排気流の熱エネルギーの一部は、前記ステップ(g)の圧縮で利用されることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項17】 前記処理された排気ガス流のCO_(2)含有量は少なくとも5%縮小されることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項18】 前記CO_(2)捕捉剤は、前記吸収区域及び前記再生区域間を継続的に流れることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項19】 前記排気ガス流から回収されたCO_(2)の一部を前記ICEに渡してICEの稼働温度を下げることを含む請求項1記載の方法。 【請求項20】 前記ステップ(e)で前記排気ガス流から回収されたCO_(2)の一部は、車両に搭載された空気調節装置の冷却ガスとして利用されることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項21】 前記熱電素子によって産出された電気的及び/又は力学的エネルギーの少なくとも一部は、車両に搭載された、稼働のために電気的及び/又は機械的なエネルギーを必要とする補助電気の及び/又は機械的なシステムに動力を供給するために使用されることを特徴とする請求項2記載の方法。 【請求項22】 車両から大気中に放出されるCO_(2)の量を減らすために、車両の動力供給のために使用される炭化水素燃料用の内燃機関(ICE)により放出されるCO_(2)含有の排気ガス流の車両内処理のためのシステムであって、 a.吸収区域、再生区域、前記車両の排気を前記吸収区域に向ける少なくとも一つの弁を備えた前記車両に搭載される処理区域であって、 該処理区域は、排気ガス流から抽出されるCO_(2)に対する予め定められた容量を有し、前記吸収区域及び前記再生区域間で循環されるCO_(2)捕捉剤を含み、 前記吸収区域は、前記排気ガス流と接触させるために前記捕捉剤流を収容するための流入口と、CO_(2)容量が増加された前記捕捉剤の通路用の流出口とを備え、 前記吸収区域は、前記排気ガス流用の流入口及び流出口と、前記排気ガス流が前記捕捉剤と接触する中間混合手段と、をさらに含み、 前記再生区域は、前記ICEからの熱排気ガス流を受け入れ、前記捕捉剤との熱交換に通し、CO_(2)を放出して前記捕捉剤を再生するための流入口と、冷却された排気ガス流を前記吸収区域に渡すための流出口と、を備えた熱交換器を含み、 前記再生区域は、前記再生された捕捉剤から放出されたCO_(2)のためのCO_(2)排出口をさらに備え、 b.前記再生区域からの前記CO_(2)排出口と流体連結する圧縮区域であって、該圧縮区域はCO_(2)の容量を縮小するための1つ以上の圧縮機を含み、 c.該圧縮されたCO_(2)を、車両内の一時貯蔵用に受け入れるための貯蔵区域、 d.前記再生区域からの処理済み排気ガス流出口と流体連結する排気ガス導管、 及び、 e.電気的または機械的エネルギーに転換するために、前記排気ガス流、前記ICE及び/又は冷却液システムから熱エネルギーを回収するための少なくとも一つの廃熱回収区域、 を含むことを特徴とするシステム。 【請求項23】 大気中に放出される前に前記処理区域へ進む排気ガス流の容積量を規制するための誘導弁を含むことを特徴とする請求項22記載のシステム。 【請求項24】 前記誘導弁は、前記ICEの稼働状況に基づいて制御されることを特徴とする請求項23記載のシステム。 【請求項25】 前記排気ガス流の全て又は一部を、前記処理区域を通過させずに大気中に放出するための、前記ICEの稼働状況と関連付けられる制御手段を含むことを特徴とする請求項22記載のシステム。 【請求項26】 処理されて前記処理区域を去る排気ガス流のCO_(2)濃度を判定する手段を含むことを特徴とする請求項22記載のシステム。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 車両によって大気中に排出されるCO_(2)の量を減らす方法であって、 a.吸収区域と再生区域との間でCO_(2)捕捉剤を循環させること、 b.排気ガス流を、車両に搭載された前記吸収区域において、排気流からCO_(2)を抽出する予め定められた容量を有するCO_(2)捕捉剤と接触させること、 c.減少されたCO_(2)容量を有する処理済みの排気ガス流を大気中に排出すること、 d.前記CO_(2)捕捉剤を前記再生区域で熱排気ガスとの熱交換により加熱して、抽出されたCO_(2)を放出して該捕捉剤を再生すること、 e.CO_(2)ガス流を回収すること、 f.該回収されたCO_(2)ガスを前記車両内で圧縮して当該容量を縮小すること、 及び、 g.前記圧縮されたCO_(2)を前記車両内で一時的に貯蔵すること、 を含む方法。 【請求項2】 熱電素子との接触によって、ICEによって放射された熱排気ガス流から熱及びエネルギーを回収し、該回収されたエネルギーを前記ステップ(f)でCO_(2)を圧縮するために使用することを含む請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記車両のICEの稼働中に前記ステップ(a)乃至(g)を継続して稼働する、請求項1記載の方法。 【請求項4】 前記熱交換は前記CO_(2)捕捉剤が熱交換器を循環している間に発生することを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項5】 前記CO_(2)捕捉剤は、CO_(2)を吸収する液体及びCO_(2)を吸着する微粉化された流動性粉末固形物から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項6】 前記CO_(2)捕捉剤が液体吸収剤であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項7】 前記CO_(2)捕捉剤は、(p-ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム ヘキサフルオロリン酸、3-4(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム六フッ化リン酸)、またはポリ(アリルアミン)を含む高沸点の液体であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項8】 前記高沸点の液体は、(p-ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム ヘキサフルオロリン酸、または3-4(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム六フッ化リン酸)を含むイオン液体であることを特徴とする請求項7記載の方法。 【請求項9】 前記CO_(2)捕捉剤は、高められた圧力の水、イオン性液体、または溶融塩を含む高沸点液体での炭酸ナトリウム、カリウム炭酸塩、ルビジウム炭酸塩、カリウム水素炭酸塩、またはルビジウムの炭酸水素塩を含むアルカリ金属炭酸塩の溶液であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項10】 前記CO_(2)捕捉剤は、イミダゾリウムに基づいた、及び、ピリジニウムに基づいた炭酸塩/水素炭酸塩を含むイオン液体炭酸塩であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項11】 前記CO_(2)捕捉剤は、気化を防ぐための上昇された圧力での水、イオンの液体、または融解塩の溶剤における、固体アルミン酸塩吸着剤、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、金属酸化物、ハイドロタルサイト、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、炭酸塩、アミンに担持されるもの、カリウムに促進されたアルミナ、活性炭、ゼオライト、有機骨格の金属(MOF)物質、または有機と無機のハイブリッドを含む微粒子の高沸点コロイド溶液であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項12】 前記CO_(2)捕捉剤は、気化を防ぐための上昇された圧力での水、イオンの液体、または融解塩を含む高沸点液中の、固体アルミン酸塩吸着剤、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、金属酸化物、ハイドロタルサイト、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、炭酸塩、アミンに担持されるもの、カリウムに促進されたアルミナ、活性炭、ゼオライト、有機骨格の金属(MOF)物質、または有機と無機のハイブリッドを含む固体粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項13】 前記CO_(2)捕捉剤は、向流関係において排気ガス流と接触される、アルミン酸塩、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、金属酸化物、ハイドロタルサイト、ジルコン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、アミンに担持されるもの、カリウムに促進されたアルミナ、活性炭、ゼオライト、有機骨格の金属(MOF)物質、および有機と無機のハイブリッドを含む、微粉化された流動性固体吸収剤であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項14】 前記排気流の熱エネルギーの一部は、前記ステップ(f)の圧縮で利用されることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項15】 前記CO_(2)捕捉剤は、前記吸収区域及び前記再生区域間を継続的に流れることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項16】 前記排気ガス流から回収されたCO_(2)の一部をICEに渡してICEの稼働温度を下げることを含む請求項1記載の方法。 【請求項17】 前記ステップ(e)で前記排気ガス流から回収されたCO_(2)の一部は、車両に搭載された空気調節装置の冷却ガスとして利用されることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項18】 前記熱電素子によって産出された電気的及び/又は力学的エネルギーの少なくとも一部は、車両に搭載された、稼働のために電気的及び/又は機械的なエネルギーを必要とする補助電気の及び/又は機械的なシステムに動力を供給するために使用されることを特徴とする請求項2記載の方法。 【請求項19】 車両から大気中に放出されるCO_(2)の量を減らすために、車両の動力供給のために使用される炭化水素燃料用の内燃機関(ICE)により放出されるCO_(2)含有の排気ガス流の車両内処理のためのシステムであって、 a.吸収区域、再生区域、前記車両の排気を前記吸収区域に向ける少なくとも一つの弁を備えた前記車両に搭載される処理区域であって、 該処理区域は、排気ガス流から抽出されるCO_(2)に対する予め定められた容量を有し、前記吸収区域及び前記再生区域間で循環されるCO_(2)捕捉剤を含み、 前記吸収区域は、前記排気ガス流と接触させるために前記捕捉剤流を収容するための流入口と、CO_(2)容量が増加された前記捕捉剤の通路用の流出口とを備え、 前記吸収区域は、前記排気ガス流用の流入口及び流出口と、前記排気ガス流が前記捕捉剤と接触する中間混合手段と、をさらに含み、 前記再生区域は、前記ICEからの熱排気ガス流を受け入れ、前記捕捉剤との熱交換に通し、CO_(2)を放出して前記捕捉剤を再生するための流入口と、冷却された排気ガス流を前記吸収区域に渡すための流出口と、を備えた熱交換器を含み、 前記再生区域は、前記再生された捕捉剤から放出されたCO_(2)のためのCO_(2)排出口をさらに備え、 b.前記再生区域からの前記CO_(2)排出口と流体連結する圧縮区域であって、該圧縮区域はCO_(2)の容量を縮小するための1つ以上の圧縮機を含み、 c.該圧縮されたCO_(2)を、車両内の一時貯蔵用に受け入れるための貯蔵区域、 d.前記再生区域からの処理済み排気ガス流出口と流体連結する排気ガス導管、 及び、 e.電気的または機械的エネルギーに転換するために、前記排気ガス流、前記ICE及び/又はICE冷却液システムから熱エネルギーを回収するための少なくとも一つの廃熱回収区域、 を含むことを特徴とするシステム。 【請求項20】 大気中に放出される前に前記処理区域へ進む排気ガス流の容積量を規制するための誘導弁を含むことを特徴とする請求項19記載のシステム。 【請求項21】 前記誘導弁は、前記ICEの稼働状況に基づいて制御されることを特徴とする請求項20記載のシステム。 【請求項22】 前記排気ガス流の全て又は一部を、前記処理区域を通過させずに大気中に放出するための、前記ICEの稼働状況と関連付けられる制御手段を含むことを特徴とする請求項19記載のシステム。 【請求項23】 処理されて前記処理区域を去る排気ガス流のCO_(2)濃度を判定する手段を含むことを特徴とする請求項19記載のシステム。」 (なお、下線は補正箇所を示すためのものである。) 2 本件補正の目的及び適否 本件補正は、本件補正前の請求項9、14及び17を削除したことに伴い、残りの請求項の項番号を振り直した上で、原査定の拒絶の理由において、明りょうでない旨の指摘をされた請求項の記載を翻訳文の記載を根拠に補正したものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除及び同法第17条の2第5項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、且つ、翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、同法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 よって、本件補正は、適法なものである。 第3 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし23に係る発明は、平成26年7月3日に提出された手続補正書により補正された明細書、本件補正により補正された特許請求の範囲及び図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)の【請求項1】のとおりである。 第4 引用文献の記載等 1 引用文献の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2007-177684号公報(以下、「引用文献」という。)には、「車両用二酸化炭素回収装置及びそれを備えた車両」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、順に「記載1a」及び「記載1b」という。)がある。 1a 「【0019】 以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。 ( 実施形態1 ) 図9に示すように、実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置1は、自動車の排気系における消音器2と排気管3との間に取付けられており、排気ガス中の二酸化炭素を吸収するための二酸化炭素吸収剤を収容するCO_(2)吸収部4を備えている。消音器2とCO_(2)吸収部4とは三方性の電磁弁5を介して接続されており、CO_(2)吸収部4と排気管3との間にはCO_(2)吸収部4からミストとなって散逸してくる二酸化炭素吸収剤を回収するためのオイルフィルターを内蔵するトラップ6が設けられている。また、電磁弁5には、バイパス管7を介し直接排気管3に接続されるバイパス経路が接続されている。 【0020】 CO_(2)吸収部4には、二酸化炭素吸収剤を貯留する吸収貯留槽9及び使用済みの二酸化炭素吸収剤を貯留する使用済吸収剤貯留槽10が三方性の電磁弁8を介して接続されている。そして、電磁弁8を操作することにより、吸収貯留槽9に貯留されている二酸化炭素吸収剤をCO_(2)吸収部4に流入させたり、CO_(2)吸収部4に収容されている二酸化炭素吸収剤を使用済吸収剤貯留槽10に流入させたりすることが可能とされている。 また、CO_(2)吸収部4は圧力配管12によってコンプレッサ11と接続されており、圧力配管12の途中には二方性の電磁弁13が設けられている。 さらに、CO_(2)吸収部4内部には図示しない熱交換器が設けられており、熱交換器は冷却水配管15によってラジエター16と接続され、ラジエター16から供給される冷却水と二酸化炭素吸収剤との熱交換を可能としている。冷却水配管15の途中には二方性の電磁弁17が設けられている。また、CO_(2)吸収部4は走行風があたることによって冷却可能とされている。 また、CO_(2)吸収部4の内部には温度センサー19及び圧力センサー20が設けられており、温度センサー19は温度調節装置18に接続されており、圧力センサー20は電磁弁制御部14に接続されている。温度調節装置18は温度センサー19からの出力信号に基づき、CO_(2)吸収部4内部が所定の温度となるように電磁弁17の開閉制御を行う。また、電磁弁制御装置14は圧力センサー20からの出力信号に基づき、CO_(2)吸収部4の内部を所定の圧力となるように電磁弁8の開閉制御を行う。なお、CO_(2)吸収部4の内部が所定の圧力以上となった場合、及び、エンジンの回転数が所定以上の回転数となった場合には、電磁弁制御装置14はバイパス管7に排気ガスが流れるように電磁弁5を制御する。 【0021】 以上のように構成された実施形態の車両用二酸化炭素回収装置1の制御方法について説明する。 図10に示すように、エンジンが始動されると、図示しないエンジン回転数センサーからの回転数信号が電磁弁制御部14に入力され、エンジン回転数があらかじめ設定された回転数X以上であるか否かが判断される。そして、エンジンの回転数がX以上の場合には、電磁弁制御部14から電磁弁5へ制御信号が送られ、電磁弁5が駆動し消音器2とバイパス管7とが連通状態となる。これにより、CO_(2)吸収部4への排気ガスの過剰な流入が回避される。 一方、エンジンの回転数がXよりも小さい場合には、さらに圧力センサー20から送られた圧力信号に基づき、CO_(2)吸収部4内の圧力があらかじめ設定された圧力Px以上であるか否かが判断される。そして、CO_(2)吸収部4内の圧力があらかじめ設定された圧力Px以上である場合には、電磁弁制御部14から電磁弁5へ制御信号が送られ、電磁弁5が駆動し消音器2とバイパス管7とが連通状態となる。これによってCO_(2)吸収部4内の圧力が高くなりすぎて破損することを防止することができる。 一方、CO_(2)吸収部4内の圧力があらかじめ設定された圧力Pxよりも低い場合には、電磁弁制御部14から電磁弁5へ制御信号が送られ、電磁弁5が駆動し消音器2とCO_(2)吸収部4とが連通状態となり、排気ガスがCO_(2)吸収部4へ流入し、二酸化炭素吸収剤によって排気ガス中の二酸化炭素が吸収される。また、電磁弁制御部14から電磁弁13へ制御信号が送られ、電磁弁13が開状態となり、コンプレッサ12から圧縮空気がCO_(2)吸収部4内に送られ、内部の圧力が高められる。こうして、CO_(2)吸収部4内の圧力が常に設定圧力Pxに保たれることにより、排気ガス中の二酸化炭素の分圧が高められ、二酸化炭素吸収剤への二酸化炭素の吸収反応が促進される。 そして、さらに温度センサー19から送られた温度信号が温度調節装置18に送られ、CO_(2)吸収部4内の温度があらかじめ設定された温度Tx以下であるか否かが判断される。そして、CO_(2)吸収部4内の温度があらかじめ設定された温度Tx以下である場合には、温度調節装置18から電磁弁17へ制御信号が送られ、電磁弁17が閉じられラジエター16からの冷却水が停止する。 一方、CO_(2)吸収部4内の温度があらかじめ設定された温度Txより高い場合には、電磁弁17が開きラジエター16から冷却水がCO_(2)吸収部4内の熱交換器に流入する。こうして、CO_(2)吸収部4内の温度は常に設定されたTxとなるように制御が行われる。 また、CO_(2)吸収部4内で二酸化炭素が除去された排気ガスはトラップ6を通過し、排気管3から外気に排出される。トラップ6では、CO_(2)吸収部4から飛散してきた二酸化炭素吸収剤のミストがフィルターによって吸着除去される。 【0022】 以上のように、実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置では、大気中に排気ガスを排出する前に排気ガス中に含まれている二酸化炭素を除去することができる。このため、車両から排出される二酸化炭素の量を大幅に削減することができる。 また、排気系には二酸化炭素吸収部4と並列にバイパス管7が設けられ、さらに排気ガスを二酸化炭素吸収部4とバイパス管7とに切替える分配装置としての電磁弁5及び電磁弁制御部14が設けられているため、二酸化炭素吸収部4が何らかの理由によって詰まったり、排気ガスの流量が二酸化炭素吸収部4の能力を超えた場合などの場合に、バイパス管7を通じて排気ガスを逃がすことができ、各部の破損等のトラブルを回避することができる。」(段落【0019】ないし【0022】) 1b 「【0023】 ( 実施形態2 ) 実施形態2の車両用二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を吸収した使用済みのアルカノールアミン化合物水溶液から二酸化炭素を回収することができるものである。この車両用二酸化炭素回収装置は、図11に示すように、CO_(2)貯留タンク21が配管20を介して使用済吸収剤貯留槽10に接続されており、配管20の途中には二方性の電磁弁22が設けられている。また、使用済吸収剤貯留槽10は配管24を介してエンジン冷却管23に接続されており、配管24の途中には二方性の電磁弁25が設けられている。電磁弁22及び電磁弁25は電磁弁制御部14によって制御可能とされている。他の構造は実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置1と同様であり、説明を省略する。 【0024】 この車両用二酸化炭素回収装置において、使用済吸収剤貯留槽10に貯留されている使用済みのアルカノールアミン化合物水溶液から二酸化炭素を回収する場合には、電磁弁制御部14によって電磁弁8を閉状態とするとともに、電磁弁22及び電磁弁25を開状態にする。電磁弁25が開状態にされると、使用済吸収剤貯留槽10からアルカノールアミン化合物水溶液がエンジン冷却管23に流れ、エンジンから熱を吸収して再び使用済吸収剤貯留槽10に戻る。こうして暖められたアルカノールアミン化合物水溶液は吸収した二酸化炭素を放出する。そして、放出された二酸化炭素は配管20を通ってCO_(2)貯留タンク21に貯留され、使用済のアルカノールアミン化合物水溶液が再生される。 他の作用効果は実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置と同様である。」(段落【0023】及び【0024】) 2 引用文献の記載事項 記載1a及び1b並びに図面から、引用文献には、次の事項(以下、順に「記載事項2a」ないし「記載事項2f」という。)が記載されていると認める。 2a 記載1aの「図9に示すように、実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置1は、自動車の排気系における消音器2と排気管3との間に取付けられており、排気ガス中の二酸化炭素を吸収するための二酸化炭素吸収剤を収容するCO_(2)吸収部4を備えている。」(段落【0019】)及び「以上のように、実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置では、大気中に排気ガスを排出する前に排気ガス中に含まれている二酸化炭素を除去することができる。このため、車両から排出される二酸化炭素の量を大幅に削減することができる。」(段落【0022】)、記載1bの「他の作用効果は実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置と同様である。」(段落【0024】)並びに図面によると、引用文献には、車両から大気中に排出されるCO_(2)の量を削減する方法が記載されている。 2b 記載1aの「CO_(2)吸収部4には、二酸化炭素吸収剤を貯留する吸収貯留槽9及び使用済みの二酸化炭素吸収剤を貯留する使用済吸収剤貯留槽10が三方性の電磁弁8を介して接続されている。そして、電磁弁8を操作することにより、吸収貯留槽9に貯留されている二酸化炭素吸収剤をCO_(2)吸収部4に流入させたり、CO_(2)吸収部4に収容されている二酸化炭素吸収剤を使用済吸収剤貯留槽10に流入させたりすることが可能とされている。」(段落【0020】)、記載1bの「また、使用済吸収剤貯留槽10は配管24を介してエンジン冷却管23に接続されており、配管24の途中には二方性の電磁弁25が設けられている。」(段落【0023】)及び「この車両用二酸化炭素回収装置において、使用済吸収剤貯留槽10に貯留されている使用済みのアルカノールアミン化合物水溶液から二酸化炭素を回収する場合には、電磁弁制御部14によって電磁弁8を閉状態とするとともに、電磁弁22及び電磁弁25を開状態にする。電磁弁25が開状態にされると、使用済吸収剤貯留槽10からアルカノールアミン化合物水溶液がエンジン冷却管23に流れ、エンジンから熱を吸収して再び使用済吸収剤貯留槽10に戻る。こうして暖められたアルカノールアミン化合物水溶液は吸収した二酸化炭素を放出する。そして、放出された二酸化炭素は配管20を通ってCO_(2)貯留タンク21に貯留され、使用済のアルカノールアミン化合物水溶液が再生される。」(段落【0024】)並びに図面を記載事項2aとあわせてみると、引用文献には、CO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23との間で二酸化炭素吸収剤を流すことが記載されている。 2c 記載1aの「図9に示すように、実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置1は、自動車の排気系における消音器2と排気管3との間に取付けられており、排気ガス中の二酸化炭素を吸収するための二酸化炭素吸収剤を収容するCO_(2)吸収部4を備えている。」(段落【0019】)及び「一方、CO_(2)吸収部4内の圧力があらかじめ設定された圧力Pxよりも低い場合には、電磁弁制御部14から電磁弁5へ制御信号が送られ、電磁弁5が駆動し消音器2とCO2吸収部4とが連通状態となり、排気ガスがCO_(2)吸収部4へ流入し、二酸化炭素吸収剤によって排気ガス中の二酸化炭素が吸収される。また、電磁弁制御部14から電磁弁13へ制御信号が送られ、電磁弁13が開状態となり、コンプレッサ12から圧縮空気がCO_(2)吸収部4内に送られ、内部の圧力が高められる。こうして、CO_(2)吸収部4内の圧力が常に設定圧力Pxに保たれることにより、排気ガス中の二酸化炭素の分圧が高められ、二酸化炭素吸収剤への二酸化炭素の吸収反応が促進される。」(段落【0021】)並びに図面を記載事項2a及び2bとあわせてみると、引用文献には、排気ガスを、車両に取り付けられたCO_(2)吸収部4において、排気ガスからCO_(2)を吸収する二酸化炭素吸収剤と接触させることが記載されている。 2d 記載1aの「以上のように、実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置では、大気中に排気ガスを排出する前に排気ガス中に含まれている二酸化炭素を除去することができる。このため、車両から排出される二酸化炭素の量を大幅に削減することができる。」(段落【0022】)及び記載1bの「他の作用効果は実施形態1の車両用二酸化炭素回収装置と同様である。」(段落【0024】)並びに図面を記載事項2aないし2cとあわせてみると、引用文献には、削減されたCO_(2)の量を有する排気ガスを大気中に排出することが記載されている。 2e 記載1bの「この車両用二酸化炭素回収装置において、使用済吸収剤貯留槽10に貯留されている使用済みのアルカノールアミン化合物水溶液から二酸化炭素を回収する場合には、電磁弁制御部14によって電磁弁8を閉状態とするとともに、電磁弁22及び電磁弁25を開状態にする。電磁弁25が開状態にされると、使用済吸収剤貯留槽10からアルカノールアミン化合物水溶液がエンジン冷却管23に流れ、エンジンから熱を吸収して再び使用済吸収剤貯留槽10に戻る。こうして暖められたアルカノールアミン化合物水溶液は吸収した二酸化炭素を放出する。そして、放出された二酸化炭素は配管20を通ってCO_(2)貯留タンク21に貯留され、使用済のアルカノールアミン化合物水溶液が再生される。」(段落【0024】)及び図面を記載事項2aないし2dとあわせてみると、引用文献には、二酸化炭素吸収剤をエンジン冷却管23でエンジンから熱を吸収することにより暖めて、吸収されたCO_(2)を放出して二酸化炭素吸収剤を再生することが記載されている。 2f 記載1bの「そして、放出された二酸化炭素は配管20を通ってCO_(2)貯留タンク21に貯留され、使用済のアルカノールアミン化合物水溶液が再生される。」(段落【0024】)及び図面を記載事項2aないし2eとあわせてみると、引用文献には、放出されたCO_(2)をCO_(2)貯留タンク21に貯留することが記載されている。 3 引用発明 記載1a及び1b、記載事項2aないし2f及び図面を整理すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「車両から大気中に排出されるCO_(2)の量を削減する方法であって、 CO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23との間で二酸化炭素吸収剤を流すこと、 排気ガスを、車両に取り付けられた前記CO_(2)吸収部4において、排気ガスからCO_(2)を吸収する二酸化炭素吸収剤と接触させること、 削減されたCO_(2)の量を有する排気ガスを大気中に排出すること、 前記二酸化炭素吸収剤を前記エンジン冷却管23でエンジンから熱を吸収することにより暖めて、吸収されたCO_(2)を放出して該二酸化炭素吸収剤を再生すること、 放出されたCO_(2)をCO_(2)貯留タンク21に貯留すること、 を含む方法。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明における「車両から大気中に排出される」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「車両によって大気中に排出される」に相当し、以下、同様に、「削減する」は「減らす」に、「CO_(2)吸収部4」は「吸収区域」に、「エンジン冷却管23」は「再生区域」に、「二酸化炭素吸収剤」は「CO_(2)捕捉剤」及び「予め定められた容量を有するCO_(2)捕捉剤」に、それぞれ、相当する。 また、引用発明における「CO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23との間で二酸化炭素吸収剤を流す」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「吸収区域と再生区域との間でCO_(2)捕捉剤を循環させる」と、「吸収区域と再生区域との間でCO_(2)捕捉剤を流す」という限りにおいて、一致する。 さらに、引用発明における「排気ガス」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「排気ガス流」に相当し、以下、同様に、「取り付けられた」は「搭載された」に、「吸収」は「抽出」に、「削減されたCO_(2)の量を有する排気ガス」は「減少されたCO_(2)容量を有する処理済みの排気ガス流」に、それぞれ、相当する。 さらにまた、引用発明における「エンジンから熱を吸収することにより暖めて」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「熱排気ガスとの熱交換により加熱して」と、「エンジンからの熱との熱交換により加熱して」という限りにおいて、一致する。 さらにまた、引用発明における「放出されたCO_(2)をCO_(2)貯留タンク21に貯留すること」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「e.CO_(2)ガス流を回収すること、 f.該回収されたCO_(2)ガスを前記車両内で圧縮して当該容量を縮小すること、 及び、 g.前記圧縮されたCO_(2)を前記車両内で一時的に貯蔵すること」と、「CO_(2)ガス流を回収すること、 該回収されたCO_(2)ガスを前記車両内で一時的に貯蔵すること」という限りにおいて、一致する。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。 「車両によって大気中に排出されるCO_(2)の量を減らす方法であって、 吸収区域と再生区域との間でCO_(2)捕捉剤を流すこと、 排気ガス流を、車両に搭載された前記吸収区域において、排気流からCO_(2)を抽出する予め定められた容量を有するCO_(2)捕捉剤と接触させること、 減少されたCO_(2)容量を有する処理済みの排気ガス流を大気中に排出すること、 前記CO_(2)捕捉剤を前記再生区域でエンジンからの熱との熱交換により加熱して、抽出されたCO_(2)を放出して該捕捉剤を再生すること、 CO_(2)ガス流を回収すること、 該回収されたCO_(2)ガスを前記車両内で一時的に貯蔵すること、 を含む方法。」 そして、以下の点で相違又は一応相違する。 <相違点1> 「吸収区域と再生区域との間でCO_(2)捕捉剤を流す」に関して、本願発明においては、「吸収区域と再生区域との間でCO_(2)捕捉剤を循環させる」であるのに対し、引用発明においては、「CO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23との間で二酸化炭素吸収剤を流す」である点(以下、「相違点1」という。)。 <相違点2> 「エンジンからの熱との熱交換により加熱して」に関して、本願発明においては、「熱排気ガスとの熱交換により加熱して」であるのに対し、引用発明においては、「エンジンから熱を吸収することにより暖めて」である点(以下、「相違点2」という。)。 <相違点3> 「CO_(2)ガス流を回収すること、 該回収されたCO_(2)ガスを前記車両内で一時的に貯蔵すること」に関して、本願発明においては、「e.CO_(2)ガス流を回収すること、 f.該回収されたCO_(2)ガスを前記車両内で圧縮して当該容量を縮小すること、 及び、 g.前記圧縮されたCO_(2)を前記車両内で一時的に貯蔵すること」であるのに対し、引用発明においては、「放出されたCO_(2)をCO_(2)貯留タンク21に貯留すること」である点(以下、「相違点3」という。)。 第6 相違点に対する判断 そこで、相違点について、以下に検討する。 1 相違点1について 記載1bの「この車両用二酸化炭素回収装置において、使用済吸収剤貯留槽10に貯留されている使用済みのアルカノールアミン化合物水溶液から二酸化炭素を回収する場合には、電磁弁制御部14によって電磁弁8を閉状態とするとともに、電磁弁22及び電磁弁25を開状態にする。電磁弁25が開状態にされると、使用済吸収剤貯留槽10からアルカノールアミン化合物水溶液がエンジン冷却管23に流れ、エンジンから熱を吸収して再び使用済吸収剤貯留槽10に戻る。」(段落【0024】)によると、引用発明における「CO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23との間で二酸化炭素吸収剤を流す」ことは、電磁弁8及び25を開閉することによって、間歇的に行われるものであるが、間歇的に行われるものであるとしても、二酸化炭素吸収剤はCO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23の間で行き来するものであるから、二酸化炭素吸収剤は循環しているといえ、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 仮に、相違点1が実質的なものであるとしても、「CO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23との間で二酸化炭素吸収剤を流す」ことを間歇的に行うか、連続的に行う、即ち循環して行うかは、当業者が適宜決めるべき設計的事項であるし、本願の優先日前に周知でもある(必要であれば、下記1-1 ア等を参照。以下、「周知技術1」という。)から、引用発明において、周知技術1を適用して、二酸化炭素吸収剤をCO_(2)吸収部4とエンジン冷却管23の間で循環させるようにして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。 1-1 特開2002-79052号公報の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開2002-79052号公報には、「二酸化炭素回収方法およびシステム」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。)。 ア 「【0038】そして、二酸化炭素回収システム2の分離回収部10は、燃焼排ガス用の流路(管路)を有しており、この流路に供給される約50μm?数100μmの吸着材粒子6の吸着反応を利用して二酸化炭素を吸着回収するための吸着部ライザ20と、吸着材用の流路(管路)を有しており、吸着部ライザ20から後述する第1のサイクロンを介して供給される吸着材粒子の脱着反応を利用して二酸化炭素を吸着回収するための脱着部ライザ21とを備えている。 【0039】吸着部ライザ20の一端部(図2中下端部20A)は、脱着部ライザ21の一端部(図2中下端部21A)に連通されており、それぞれのライザ20および21に充填された吸着材粒子6は、それらライザ20および21間を流動循環するようになっている。」(段落【0038】及び【0039】) イ 「【0041】また、脱着部ライザ21内には、排出用ライン22を介してライザ21内に流入する燃焼排ガス5Aと脱着部ライザ21内を流動する吸着材粒子6とを熱交換させるための熱交換器25が組み込まれている(図1においては、説明の都合上、脱着部ライザ21外に示している)。 【0042】脱着部ライザ21に組み込まれたプレート型熱交換器25は、図2に示すように、四角形状および熱交換機能を有する複数の熱交換用プレート型伝熱壁部を備え、これら複数の伝熱壁部は、ライザ21の管軸方向(吸着材粒子6の搬送方向)および排出用ライン22のライン軸方向(ガスの流出方向)にそれぞれ沿うように所定間隔を隔てて積層されており、この結果、伝熱壁部間に吸着材粒子流動用流路25Aおよび燃焼排ガス流路25Bをその伝熱壁部を隔てて隣接するように互い違いに配置している。 【0043】すなわち、この熱交換器25においては、流路25Aを流れる吸着材粒子と流路25Bを流れる燃焼排ガスとは、伝熱壁部を介して熱交換するようになっている。」(段落【0041】ないし【0043】) ウ 「【0066】一方、分離された二酸化炭素7は、熱交換器40および熱回収部41を介して熱エネルギーが回収された後、圧縮部43を介して圧縮されて貯蔵タンク44内に貯蔵される。」(段落【0066】) 2 相違点2について エンジンからの熱をエンジンから直接得るか、熱排気ガスを介して得るかは、当業者が適宜決めるべき設計的事項であるし、熱排気ガスから熱エネルギーを得ることは本願の優先日前に周知(必要であれば、上記1-1 イ等を参照。以下、「周知技術2」という。)でもあるから、引用発明において、周知技術2を適用して、熱排気ガスとの熱交換により加熱するようにして、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。 3 相違点3について 回収されたCO_(2)ガスを車両内に貯蔵する際に、どのような状態で貯蔵するかは、貯蔵スペースをどの程度確保するかに応じて適宜決めるべき設計的事項であるし、回収されたCO_(2)ガスを圧縮してから貯蔵することは本願の優先日前に周知(必要であれば、上記1-1 ウ及び下記3-1等を参照。なお、CO_(2)ガスを圧縮すれば、CO_(2)ガスの容量が縮小することは明らかである。以下、「周知技術3」という。)でもあるから、引用発明において、周知技術3を適用して、放出されたCO_(2)を圧縮して当該容量を縮小してからCO_(2)貯留タンク21に貯留するようにして、相違点3に係る本願発明の発明特定事項を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。 3-1 特開昭61-254221号公報の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された刊行物である特開昭61-254221号公報には、「CO_(2)除去装置」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。 ・「次に本発明のCO_(2)除去装置を第1図に示す一実施例により説明すると,(1)(2)が空気中からCO_(2)を捕獲する吸着剤(アミン系イオン交換樹脂或いは活性炭等)(1a)(2a)を内部に充填した吸着槽,(19)がCO_(2)を含有する空気を上記吸着槽(1)(2)の入口側に導くガス導入管,(4)が同ガス導入管(19)に設けた空気フアン,(11)(13)が同ガス導入管(19)に設けた自動切換弁,(23)が水供給源から供給された給水を加熱して水蒸気にする水蒸気発生器,(21)が同水蒸気発生器(23)で発生した水蒸気(置換ガス)を上記吸着槽(1)(2)の入口側に導く水蒸気導入管,(16)(18)が同水蒸気導入管(21)に設けた自動切換弁,(20)がCO_(2)から分離した空気を上記吸着槽(1)(2)の出口側から導出するガス導出管,(12)(14)が同ガス導出管(20)に設けた自動切換弁,(22)が吸着剤(1a)(2a)から脱着したCO_(2)を上記吸着槽(1)(2)の出口側から取り出すCO_(2)導出管,(15)(17)が同CO_(2)導出管(22)に設けた自動切換弁,(6)が同CO_(2)導出管(22)に設けたCO_(2)圧縮器、(6’)が同CO_(2)導出管(22)に設けたCO_(2)タンク,(21’)が水供給源から上記水蒸気発生器(23)へ延びた給水管,(28)が同給水管(21’)中を流れる給水を上記ガス導出管(20)からの空気により予熱する熱交換器,(28’)が同ガス導出管(20)の下流側に設けた排出空気冷却用クーラである。なお上記吸着槽(1)(2)の出口側には,CO_(2)の脱着状態を検出するCO_(2)検出センサがあり,同各CO_(2)検出センサからの検出信号に基づいて上記自動切換弁(11)?(18)を制御する制御器があるが,同各CO_(2)検出センサ及び同制御器は,図示を省略している。」(第2ページ左下欄第18行ないし第3ページ左上欄第8行) 4 効果について そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明並びに周知技術2及び3からみて又は引用発明及び周知技術1ないし3からみて格別顕著な効果を奏するともいえない。 5 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、「・・・(略)・・・しかして、引用文献2の発電システムの上記のような著しく高い温度要件は、引用文献1や本願明細書で開示されるような移動性を有する車両内CO_(2)回収システムとの間での互換性の欠如を示す証拠であり、引用文献2の捕捉剤により要求される温度で移動性を有するCO_(2)捕捉(回収)プロセスを稼働することは非現実的であると思料する。 この温度の非互換性に基づいて、引用文献1と引用文献2の組み合わせが引用文献1の動作不能のシステムを提供することから、本出願人は、現在の各請求項に係る発明を拒絶するために用いられる引用文献1及び引用文献2の組み合わせが不適切であると考える。特に、引用文献1の吸着剤は、引用文献2によって開示された大幅に高い吸着及び再生温度では有効ではない。さらにまた、引用文献2によって指定された700℃から850℃までの再生温度は、典型的な温度が約600℃の自動車の排気ガス流よりも高温であり、したがって、自動車の排気ガス流からの熱は、引用文献2の捕捉剤の再生用としても十分ではない。 上述の分析より、本出願人は、本出願の特許請求の範囲に記載の発明は、引用文献1、引用文献2、及び引用文献3の組み合わせを超えた進歩性ないし導出困難性を備えたものであると考える。」旨主張するが、引用文献1(本審決における「引用文献」である。)に記載された発明も、引用文献2(本審決の第6 1 1-1で提示した特開2002-79052号公報である。)に記載された発明も、何れも、石油等の化石燃料の燃焼排ガス中における二酸化炭素の削減を目的とするものであり、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤を車両からの熱により再生し、その際に放出される二酸化炭素を貯蔵するものである点で、共通の作用を有するものであり、しかも、引用文献2に記載された二酸化炭素吸収剤を車両からの熱により再生する機構や放出された二酸化炭素を貯蔵するための機構は、二酸化炭素吸収剤として何を選択するかによらないものであるから、上記機構を引用文献1に記載された発明に適用する動機付けはあるし、上記機構を引用文献1に記載された発明に適用することに阻害要因があるともいえないので、請求人の上記主張は採用できない。 第7 むすび したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術2及び3に基づいて又は引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-09-09 |
結審通知日 | 2015-09-15 |
審決日 | 2015-09-28 |
出願番号 | 特願2013-550619(P2013-550619) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今関 雅子 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 槙原 進 |
発明の名称 | 自動車排気ガスに由来するCO2の車両内回収及び貯蔵 |
代理人 | 小川 英宣 |
代理人 | 水野 勝文 |
代理人 | 須澤 洋 |
代理人 | 井出 真 |