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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F23D
管理番号 1311721
審判番号 不服2014-7580  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-24 
確定日 2016-03-01 
事件の表示 特願2009-517400「ガス燃焼装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月 3日国際公開、WO2008/001095、平成21年12月 3日国内公表、特表2009-543014〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年6月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年6月30日、イギリス)を国際出願日とする出願であって、平成20年12月26日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成21年2月26日に同法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、要約書及び図面の翻訳文(以下、「翻訳文」という。)が提出され、平成24年4月23日付けで拒絶理由が通知され、同年10月31日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年5月10日付けで再度最初の拒絶理由が通知され、同年8月20日に意見書が提出されたが、同年12月17日付けで拒絶査定がされ、平成26年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年6月6日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において同年12月25日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成27年7月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、平成21年2月26日に提出された翻訳文の明細書、平成27年7月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに国際出願時の図面及び翻訳文の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
可燃性ガスを燃焼させる方法であって、
前記ガスを、燃焼チャンバに連結された燃焼ノズルに運ぶステップと、
燃焼ノズルの回りに口火を形成するために水素及び酸化剤を前記チャンバに供給するステップと、を含み、
前記口火を形成するために、水素と酸化剤を別々に前記チャンバ内に注入し、
前記水素を、前記燃焼ノズルの回りに延びる第1の複数の開口を通して前記チャンバ内に注入し、前記酸化剤を、前記燃焼ノズルの回りに延びる第2の複数の開口を通して前記チャンバ内に注入する、
ことを特徴とする方法。」

第3 引用文献の記載等
1 引用文献の記載
当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-108532号公報(以下、「引用文献」という。)には、「排ガス処理装置」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、順に、「記載1a」ないし「記載1c」という。)がある。

1a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造設備等から排出される排ガスを処理するための排ガス処理装置に関し、特に、排ガス中に含まれているNF_(3)やSF_(6)等の無機系フッ素化合物或いはCF_(4)やC_(2)F_(6)等のフロン系ガスを分解処理するための排ガス処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体の製造においては、SiH_(4)、Si_(2) H_(6)、PH_(3)、NH_(3)、NF_(3)、SF_(6)、CF_(4)、C_(2)F_(6)等の有毒性ガスや環境汚染のおそれがあるガスが含まれた排ガスが生ずる。そのため、このような排ガスが排出される場所には排ガス処理装置を設置し、法令等が定める許容濃度(TLV値)となるまで排ガスを分解処理する必要がある。
【0003】従来の排ガス処理装置としては、火炎により排ガスを燃焼させて分解する燃焼式のものが知られている。一般的な燃焼式排ガス処理装置は、排気ガスに対してバーナーからの火炎を吹き付けて、その熱により排気ガスを分解処理するものである。かかる燃焼式排ガス処理装置は、SiH_(4)、Si_(2)H_(6)、PH_(3)、NH_(3)等の可燃性ガスに対しては有効に機能し得る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の燃焼式排ガス処理装置では、火炎が短く、しかもNF_(3)、SF_(6)、CF_(4)、C_(2)F_(6)等は非常に安定なガスであるため、これらのガスを分解処理するためには、大容量で大型の装置を用いなければならず、且つ、大量の燃料が必要となる。
【0005】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の小型化を図りつつ、効率的に排ガスの分解処理を行うことのできる燃焼式の排ガス処理装置を提供することにある。」(段落【0001】ないし【0005】)

1b 「【0010】図1は、本発明による排ガス処理装置を備える排ガス処理設備の一例を示している。これらの図において、符号10,12,14,16は、それぞれ、排ガス処理装置、フィルタ、排気用ブロワ及び湿式スクラバを示している。フィルタ12、排気用ブロワ14及び湿式スクラバ16については、一般的な排ガス処理設備で通常用いられている型式のものである。
【0011】本実施形態における排ガス処理装置10は、図示するように、円筒形の処理筒18を備えている。この処理筒18は縦置き、即ちその軸線が鉛直方向に向くようにして設置されている。
【0012】処理筒18の底板20の中央部には出口ノズル22が形成されており、この出口ノズル22は配管24を介してフィルタ12に接続されている。また、処理筒18の上板26の中心部には、排ガス導入管28、燃料ガス導入管30及び燃焼用空気導入管32から成るガス導入部が設けられている。このガス導入部は、内側から順に排ガス導入管28、燃料ガス導入管30、燃焼用空気導入管32を同軸に配置して構成されたものであり、排ガス導入管28の内部空間、排ガス導入管28と燃料ガス導入管30との間の環状空間、及び、燃料ガス導入管30と燃焼用空気導入管32との間の環状空間が、それぞれ、排ガス導入路29、燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33として機能するようになっている。これらの導入管28,30,32は処理筒18の上板26を貫通し、処理筒18内の上部の所定位置まで延びている。また、燃焼用空気導入管32の下端には炎導管34が接続され、この炎導管34の下端は処理筒18の底板20の近傍まで延びている。なお、図示しないが、燃料ガス導入路31の出口部分には、点火プラグ等の適当な点火手段が設けられている。
【0013】半導体製造装置等からの排ガスは排ガス導入管28の上端からその内部に導入されるようになっている。また、燃料ガス導入管30の上部には、燃料ガス、例えばメタンガス、天然ガス、都市ガス、プロパンガス、水素ガス若しくはブタンガス又はこれらの混合ガスの供給源36が接続され、燃焼用空気導入管32の上部には燃焼用空気の供給源38が接続されている。更に、冷却用空気供給源40が、処理筒18の上板26の外周部分に設けられた冷却用空気導入口(冷却用空気導入手段)42に接続されている。
【0014】このような構成において、排ガスを処理する場合、排ガスを排ガス導入管28内に送り込むと共に、燃料ガス、燃焼用空気、冷却用空気の各供給源36,38,40及び排気用ブロワ14を駆動する。供給源36,38,40の駆動により、燃料ガス及び燃焼用空気がそれぞれ所定流量で燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33に供給される。ここで、点火手段を作動させて燃料ガスと燃焼用空気の混合ガスを発火させると、その火炎が排ガス導入管28の下端から排出された排ガスに接触し、排ガス中に含まれている物質の分解処理が行われる。混合ガスの火炎は炎導管34の存在により処理筒18の底板20の近傍まで延び、その結果、排ガスと火炎の接触効果が高められ、排ガス中の物質がフロン系ガスのように安定な物質であっても熱分解が可能となっている。」(段落【0010】ないし【0014】)

1c 「【0025】ところで、半導体製造時に使用されるSiH_(4)、PH_(3)、B_(2)H_(6)等の排ガスを燃焼処理する場合、多量の生成酸化物である粉体が発生する。この粉体は、排ガス導入管28の出口側端部に堆積する傾向がある。このような粉体の堆積が生じ成長していくと、正常な火炎の形成を阻害し、処理能力の低下を招くこととなる。」(段落【0025】)

2 引用文献の記載事項
記載1aないし1c及び図面の記載から、引用文献には、次の事項(以下、順に、「記載事項2a」ないし「記載事項2g」という。)が記載されていると認める。

2a 記載1aの「従来の排ガス処理装置としては、火炎により排ガスを燃焼させて分解する燃焼式のものが知られている。一般的な燃焼式排ガス処理装置は、排気ガスに対してバーナーからの火炎を吹き付けて、その熱により排気ガスを分解処理するものである。かかる燃焼式排ガス処理装置は、SiH_(4)、Si_(2)H_(6)、PH_(3)、NH_(3)等の可燃性ガスに対しては有効に機能し得る。」(段落【0003】)及び「本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の小型化を図りつつ、効率的に排ガスの分解処理を行うことのできる燃焼式の排ガス処理装置を提供することにある。」(段落【0005】)、記載1c並びに図面によると、引用文献には、可燃性ガスを燃焼させる方法が記載されている。

2b 記載1bの「また、処理筒18の上板26の中心部には、排ガス導入管28、燃料ガス導入管30及び燃焼用空気導入管32から成るガス導入部が設けられている。」(段落【0012】)、「半導体製造装置等からの排ガスは排ガス導入管28の上端からその内部に導入されるようになっている。」(段落【0013】)及び「このような構成において、排ガスを処理する場合、排ガスを排ガス導入管28内に送り込むと共に、燃料ガス、燃焼用空気、冷却用空気の各供給源36,38,40及び排気用ブロワ14を駆動する。供給源36,38,40の駆動により、燃料ガス及び燃焼用空気がそれぞれ所定流量で燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33に供給される。」(段落【0014】)並びに図面を記載事項2aとあわせてみると、引用文献には、可燃性ガスを、処理筒18に設けられた排ガス導入管28に導入するステップが記載されている。

2c 記載1bの「このガス導入部は、内側から順に排ガス導入管28、燃料ガス導入管30、燃焼用空気導入管32を同軸に配置して構成されたものであり、排ガス導入管28の内部空間、排ガス導入管28と燃料ガス導入管30との間の環状空間、及び、燃料ガス導入管30と燃焼用空気導入管32との間の環状空間が、それぞれ、排ガス導入路29、燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33として機能するようになっている。これらの導入管28,30,32は処理筒18の上板26を貫通し、処理筒18内の上部の所定位置まで延びている。」(段落【0012】)、「また、燃料ガス導入管30の上部には、燃料ガス、例えばメタンガス、天然ガス、都市ガス、プロパンガス、水素ガス若しくはブタンガス又はこれらの混合ガスの供給源36が接続され、燃焼用空気導入管32の上部には燃焼用空気の供給源38が接続されている。」(段落【0013】)及び「このような構成において、排ガスを処理する場合、排ガスを排ガス導入管28内に送り込むと共に、燃料ガス、燃焼用空気、冷却用空気の各供給源36,38,40及び排気用ブロワ14を駆動する。供給源36,38,40の駆動により、燃料ガス及び燃焼用空気がそれぞれ所定流量で燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33に供給される。」(段落【0014】)並びに図面を記載事項2a及び2bとあわせてみると、引用文献には、排ガス導入管28の回りに燃料ガスである水素ガス及び燃焼用空気を処理筒18に供給するステップが記載されている。

2d 記載1bの「供給源36,38,40の駆動により、燃料ガス及び燃焼用空気がそれぞれ所定流量で燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33に供給される。ここで、点火手段を作動させて燃料ガスと燃焼用空気の混合ガスを発火させると、その火炎が排ガス導入管28の下端から排出された排ガスに接触し、排ガス中に含まれている物質の分解処理が行われる。」(段落【0014】)によると、引用文献には、燃料ガスと燃焼用空気を混合させて発火させることにより火炎を形成することが記載されている。

2e 記載事項2c及び2dによると、引用文献には、排ガス導入管28の回りに火炎を形成するための水素ガス及び燃焼用空気を処理筒18に供給するステップが記載されている。

2f 記載1bの「このガス導入部は、内側から順に排ガス導入管28、燃料ガス導入管30、燃焼用空気導入管32を同軸に配置して構成されたものであり、排ガス導入管28の内部空間、排ガス導入管28と燃料ガス導入管30との間の環状空間、及び、燃料ガス導入管30と燃焼用空気導入管32との間の環状空間が、それぞれ、排ガス導入路29、燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33として機能するようになっている。これらの導入管28,30,32は処理筒18の上板26を貫通し、処理筒18内の上部の所定位置まで延びている。」(段落【0012】)、「また、燃料ガス導入管30の上部には、燃料ガス、例えばメタンガス、天然ガス、都市ガス、プロパンガス、水素ガス若しくはブタンガス又はこれらの混合ガスの供給源36が接続され、燃焼用空気導入管32の上部には燃焼用空気の供給源38が接続されている。」(段落【0013】)及び「このような構成において、排ガスを処理する場合、排ガスを排ガス導入管28内に送り込むと共に、燃料ガス、燃焼用空気、冷却用空気の各供給源36,38,40及び排気用ブロワ14を駆動する。供給源36,38,40の駆動により、燃料ガス及び燃焼用空気がそれぞれ所定流量で燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33に供給される。」(段落【0014】)並びに図面を記載事項2aないし2eとあわせてみると、引用文献には、火炎を形成するために、水素ガスと燃料用空気を別々に処理筒18内に供給することが記載されている。

2g 記載1bの「このガス導入部は、内側から順に排ガス導入管28、燃料ガス導入管30、燃焼用空気導入管32を同軸に配置して構成されたものであり、排ガス導入管28の内部空間、排ガス導入管28と燃料ガス導入管30との間の環状空間、及び、燃料ガス導入管30と燃焼用空気導入管32との間の環状空間が、それぞれ、排ガス導入路29、燃料ガス導入路31及び燃焼用空気導入路33として機能するようになっている。これらの導入管28,30,32は処理筒18の上板26を貫通し、処理筒18内の上部の所定位置まで延びている。」(段落【0012】)及び図面を記載事項2aないし2fとあわせてみると、引用文献には、水素ガスを、排ガス導入管28の回りに延びる第1の環状の開口(便宜状、「第1の環状の開口」という。)を通して処理筒18内に供給し、燃焼用空気を、排ガス導入管28の回りに延びる第2の環状の開口(便宜状、「第2の環状の開口」という。)を通して処理筒18内に供給することが記載されている。

3 引用発明
記載1aないし1c、記載事項2aないし2g及び図面を整理すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「可燃性ガスを燃焼させる方法であって、
前記ガスを、処理筒18に設けられた排ガス導入管28に導入するステップと、
排ガス導入管28の回りに火炎を形成するための水素ガス及び燃焼用空気を前記処理筒18に供給するステップとを、含み、
前記火炎を形成するために、水素ガスと燃料用空気を別々に前記処理筒18内に供給し、
前記水素ガスを、前記排ガス導入管28の回りに延びる第1の環状の開口を通して前記処理筒18内に供給し、前記燃焼用空気を、前記排ガス導入管28の回りに延びる第2の環状の開口を通して前記処理筒18内に供給する、
方法。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。

引用発明における「処理筒18」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「燃焼チャンバ」に相当し、以下、同様に、「設けられた」は「連結された」に、「導入する」は「運ぶ」に、「排ガス導入管28」は「燃焼ノズル」に、それぞれ、相当する。
また、記載1bの「図示しないが、燃料ガス導入路31の出口部分には、点火プラグ等の適当な点火手段が設けられている。」(段落【0012】)及び「ここで、点火手段を作動させて燃料ガスと燃焼用空気の混合ガスを発火させると、その火炎が排ガス導入管28の下端から排出された排ガスに接触し、排ガス中に含まれている物質の分解処理が行われる。混合ガスの火炎は炎導管34の存在により処理筒18の底板20の近傍まで延び、その結果、排ガスと火炎の接触効果が高められ、排ガス中の物質がフロン系ガスのように安定な物質であっても熱分解が可能となっている。」(段落【0014】)並びに記載1cの「ところで、半導体製造時に使用されるSiH_(4)、PH_(3)、B_(2)H_(6)等の排ガスを燃焼処理する場合」(段落【0025】)によると、引用発明における「火炎」は、点火手段を作動させることにより生じ、その後、排ガスと接触することにより、燃焼を生じさせるものであるから、本願発明における「口火」に相当する。
さらに、引用発明における「水素ガス」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「水素」に相当し、以下、同様に、「燃焼用空気」は「酸化剤」に、「供給」は「供給」及び「注入」に、それぞれ、相当する。
さらにまた、引用発明における「第1の環状の開口」は、本願発明における「第1の複数の開口」と、「第1の開口」という限りにおいて一致する。
さらにまた、引用発明における「第2の環状の開口」は、本願発明における「第2の複数の開口」と、「第2の開口」という限りにおいて一致する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「可燃性ガスを燃焼させる方法であって、
前記ガスを、燃焼チャンバに連結された燃焼ノズルに運ぶステップと、
燃焼ノズルの回りに口火を形成するために水素及び酸化剤を前記チャンバに供給するステップと、を含み、
前記口火を形成するために、水素と酸化剤を別々に前記チャンバ内に注入し、
前記水素を、前記燃焼ノズルの回りに延びる第1の開口を通して前記チャンバ内に注入し、前記酸化剤を、前記燃焼ノズルの回りに延びる第2の開口を通して前記チャンバ内に注入する、
方法。」

そして、以下の点で相違する。

<相違点>
「第1の開口」及び「第2の開口」に関して、本願発明においては、「第1の複数の開口」及び「第2の複数の開口」であるのに対し、引用発明においては、「第1の環状の開口」及び「第2の環状の開口」である点(以下、「相違点」という。)。

第5 相違点に対する判断
そこで、相違点について、以下に検討する。

円環状に設けた第1の複数の開口を通して燃料ガスを注入し、円環状に設けた第2の複数の開口を通して酸化剤を注入することによって、炎を形成することは周知(必要であれば、下記1ないし4等を参照。特に、下記1には、開口自体が円環状のものと複数の開口を円環状に配置するものが代替可能であることが記載されている。以下、「周知技術」という。)であるから、引用発明において、炎である口火を形成するために、周知技術を適用し、「第1の環状の開口」を第1の複数の開口とし、「第2の環状の開口」を第2の複数の開口として、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明及び周知技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

1 特開平11-257615号公報の記載
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-257615号公報には、「球状粒子製造用バーナ」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある(なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。)。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無機質粉体原料から球状粒子を得る際に用いられる球状粒子製造用バーナに関するものである。
・・・(略)・・・
【0003】上記火炎法による代表的な無機質球状粒子製造装置の一例を図5に示す。この装置によれば、定量供給装置1を備えたホッパー2から、無機質粉体原料3が一定量ずつ排出され、原料搬送用ガス供給配管4から供給される原料搬送用ガス(酸素,LPG等)によってバーナ5に搬送供給されるようになっている。上記バーナ5の先端は、球状化炉6内に設置されており、配管7,8から導入される燃料ガス(LPG等)と支燃ガス(酸素等)を受けて、球状化炉6内に燃焼フレームが形成されるようになっている。そして、上記燃焼フレーム内に前記無機質粉体原料3が噴出され、燃焼フレームの熱で溶融あるいは軟化して、それ自身の表面張力によって球状粒子9となる。そして、球状化炉6の下部において冷却固化した球状粒子9は、サイクロン10およびバグフィルタ11により捕集されるようになっている。
【0004】上記バーナ5の先端は、例えば図6に示すように、同心円的に配置された、大、中、小、三つの環状隔壁15を有している。そして、その最も内側に、無機質粉体原料3を原料搬送用ガスとともに噴出するための原料噴出孔12が形成されており、その外側に、燃料ガス噴出孔13が形成され、さらにその外側に、支燃ガス噴出孔14が形成されている。」(段落【0001】ないし【0004】)

・「【0011】図1(a)および(b)は、本発明の球状粒子製造用バーナの一実施の形態を示している。このバーナ20は、基本的には、図6に示す従来のバーナ5と同一であり、同一部分に同一番号を付している。ただし、このバーナ20は、原料噴出孔12と燃料ガス噴出孔13と支燃ガス噴出孔14を形成するために同心円的に配置される、大、中、小、三つの環状隔壁15の先端縁が、いずれも鋭角的に尖鋭化されている、という特徴を有する。」(段落【0011】)

・「【0017】また、各噴出孔12,13,14を環状隔壁15で形成するのではなく、図4に示すように、中心に、原料噴出孔12となるパイプ22を配し、その周囲に、細い燃料ガス供給パイプ23を環状に配して燃料ガス噴出孔13を形成し、さらにその周囲に、細い支燃ガス供給パイプ24を環状に配して支燃ガス噴出孔14を形成したバーナ21を用いることも考えられる。このバーナ21によれば、噴出孔12,13,14の周囲の、環状隔壁15に相当する部分の肉厚を薄くすることで(例えば肉厚1?3mm)、前述のような、傾斜面16(16a,16b)を形成しなくても、ある程度噴出流において乱流が発生するのを防止することができ、バーナ21先端面に対する無機質粉体原料等の付着を低減することができる。しかし、パイプ22,23,24の側壁部に付着が発生し、これが成長して一部溶融し脱落して製品形状不良化の原因となる。また、各パイプ22,23,24の側壁が肉薄のため、長時間運転すると熱損傷が発生しやすい、という問題がある。そこで、本発明の効果を得るためには、上記のような構造のバーナ21を用いるにしても、ある程度パイプ側壁を厚くして(例えば肉厚3mm以上)、前述のように、各パイプ22,23,24の先端縁に傾斜面16(16a,16b)を形成することが必要である。」(段落【0017】)

2 実願昭58-199431号(実開昭60-111830号)のマイクロフィルムの記載
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭58-199431号(実開昭60-111830号)のマイクロフィルムには、「加熱炉燃焼バーナ」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「まず、第1図(a)並びに(b)において、バーナの先端部で、例えば、同心円状に複数個の燃焼ガス孔9が設けられている。このガス孔9には、燃料ガスの入口8から燃料ガスが送給され、各燃料ガス孔9から噴出される。これら燃料ガス孔9の外側並びに内側にはそれぞれ複数個の外側空気孔5と内側空気孔7が設けられ、中心部にはモーティブ空気孔11が設けられている。」(明細書第3ページ第11ないし17行)

3 特開昭59-49426号公報の記載
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭59-49426号公報には、「酸素・燃料バーナを点火する方法およびバーナ」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「第3図はオリフィス4a(炭化水素)とオリフィス5a(酸素)から出るジエツトJを図示する。バーナの先細部で、これらのジエツトは炭化水素の濃厚な空所Aと酸素の濃厚な空所Bとを生じその後で燃焼が起こる外方室Cの中で混合する。」(第3ページ左上欄第14ないし18行)

・FIG.2から、オリフィス4aとオリフィス5aは、何れも、複数の開口が円環状に設けられたものであることが看取される。

4 実公平5-31377号公報の記載
本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である実公平5-31377号公報には、「ガスバーナ」に関して、図面とともにおおむね次の記載がある。

・「バーナ本体1の内部に、ブロワBに接続する燃焼用空気供給路2を形成し、バーナ本体1の先端円筒部1aの中心に配置した状態でガスノズル3をバーナ本体1に取付け、ガスノズル3の先端側に、小孔状の空気口4aを分散配置して形成するための多孔円板5を取付け、先端円筒部1aとの間に環状の空気口を形成するリング6を多孔円板5に取付け、その環状の空気口をノズル周方向に分割して最外側方の空気口4bを形成するためのジヤマ板10をリング6に取付け、ガスノズル3の先端側に形成したガス燃料噴出孔7からのガス燃料と、空気口4a,4bからの燃焼用空気を先混合して燃焼させるガスバーナを形成してある。
・・・(略)・・・
ガス燃料噴出孔7の6?8個を、全てがほぼ等間隔でノズル周方向に並設し、かつ、ノズル中心Pに対して傾斜する方向にガス燃料が60?70m/secの高速で噴出される状態で形成し、ノズル中心Pとガス燃料噴出軸芯Qとの傾斜角θが40?50度にして、ガス燃料噴出流の巻込効果で燃焼排ガスを炎に混入し、低NO_(X)化できるようにしてある。」(第5欄第38行ないし第6欄第23行)

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-06 
結審通知日 2015-10-07 
審決日 2015-10-20 
出願番号 特願2009-517400(P2009-517400)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
加藤 友也
発明の名称 ガス燃焼装置  
代理人 井野 砂里  
代理人 弟子丸 健  
代理人 松下 満  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 吉野 亮平  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 辻居 幸一  

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