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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
管理番号 1311794
異議申立番号 異議2015-700098  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-16 
確定日 2015-12-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第5704541号「粘着剤組成物と、これを含む偏光板及び液晶表示装置」の請求項1ないし21に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5704541号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。 
理由 1 主な手続の経緯等
特許第5704541号(請求項の数は21。以下,「本件特許」という。)は,国際出願日である平成21年4月9日(パリ条約に基づく優先権主張 平成20年4月21日,同年10月14日,いずれも大韓民国)にされたとみなされる特許出願に係るものであって,平成27年3月6日に設定登録された。
特許異議申立人森岡道朗(以下,単に「異議申立人」という。)は,平成27年10月16日,本件特許の請求項1?21に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。

2 本件発明
本件特許の請求項1?21に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。なお,請求項2?21の記載は,省略する。)。
「【請求項1】
アクリル系共重合体と,
前記アクリル系共重合体と反応して架橋構造を具現することができる多官能性架橋剤であって,イソシアネート系化合物,エポキシ系化合物,アジリジン系化合物,及び金属キレート系化合物よりなる群から選択された1つ以上である多官能性架橋剤と,
多官能性アクリレートと,
光開始剤と,
熱開始剤と,を含み,
硬化時に相互浸透ネットワーク構造を具現する粘着剤組成物。」

3 申立理由の概要
異議申立人の主張は,概略,次のとおりである。
(1) 本件特許に係る特許請求の範囲の記載は特許法36条6項2号に規定する要件に適合せず(以下「取消理由1」という。なお,当該要件を「明確性要件」という場合がある。),また,本件の明細書の発明の詳細な説明の記載は36条4項1号に規定する要件に適合しないから(以下「取消理由2」という。なお,当該要件を「実施可能要件」という場合がある。),本件発明は特許を受けることができない。
具体的には,本件の明細書に記載される比較例1及び2の組成物は,甲1?3からみて,計算上,アクリル共重合体100部に対して0.0229部のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を含むと認められ,また当該AIBNは本件発明の熱開始剤に相当するものである。そして,上記比較例1及び2のものは本件発明1の発明特定事項をすべて満たすものであるが,本件の明細書の記載によれば,これらのものは熱耐久性や光透過性が不十分なものとなっている。よって,本件発明に係る請求項1の記載は特許を受けようとする発明が明確でない。請求項1の従属項である請求項2?21についても,同様である。又は,明細書の発明の詳細な説明の記載が,当業者が実施できる程度に明確に記載されていない。
(2) そして,上記取消理由1?2にはいずれも理由があるから,本件の請求項1?21に係る発明についての特許は,113条4号に該当し,取り消されるべきものである。
(3) また,証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1?3)を提出する。
・甲1:「改訂 高分子合成の化学」,大津隆行,株式会社化学同人,1991年11月1日第2版第14刷の抜粋
・甲2:「有機過酸化物 ORGANIC PEROXIDES 第5版」,日本油脂株式会社化成事業部,1997年6月の抜粋
・甲3:「高分子データハンドブック 基礎編」,高分子学会,昭和61年1月30日初版の抜粋

4 当合議体の判断
当合議体は,以下述べるように,取消理由1?2にはいずれも理由はないと解する。
(1) 取消理由1(明確性要件)について
ア 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきであり,特許請求の範囲の記載に,発明に係る機能,特性,解決課題ないし作用効果との関係での技術的意味が示されているかどうかとは直接関係がない。
イ これを本件発明についてみると,本件発明1は,上記2で認定のとおりのものであり,「アクリル系共重合体」,当該アクリル系共重合体と反応して架橋構造を具現することができる「多官能性架橋剤」,「多官能性アクリレート」,「光開始剤」及び「熱開始剤」とを含み,硬化時に「相互浸透ネットワーク構造」を具現する粘着剤組成物についての発明である。そして,本件発明1の特定事項のそれぞれの技術的意味,すなわち上記アクリル系共重合体の技術的意味については本件の特許請求の範囲の【請求項4】?【請求項6】及び明細書の【0024】?【0029】など,上記多官能性架橋剤については【0036】?【0039】など,上記多官能性アクリレートについては【請求項10】及び【0040】?【0042】など,上記光開始剤については【請求項12】及び【0043】?【0044】など,上記熱開始剤については【請求項15】及び【0045】?【0048】など,さらに上記相互浸透ネットワーク構造については【0021】などの記載及び本件の出願当時の技術常識から,当業者が容易に理解することができると認められる。
そうすると,本件発明1(粘着剤組成物)の技術的範囲(特許請求の範囲の記載)は明確に把握することができるのであって,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。本件発明2?21(粘着剤組成物,偏光板及び液晶表示装置)についても,同様である。
ウ 異議申立人は,本件の明細書に記載される比較例1及び2の組成物は本件発明の熱開始剤に相当するアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を含んでいる,すなわち上記比較例1及び2のものは本件発明1の発明特定事項をすべて満たすものであるにもかかわらず熱耐久性や光透過性が不十分なものとなっている旨主張する(上記3(1))。
しかし,異議申立人が主張するように,仮に上記比較例1及び2のものがAIBNを含むといえるとしても,だからといって,本件発明1の技術的範囲が明確に把握できないことにならないのは上記イで検討のとおりである。明確性要件を取消理由とする異議申立人の上記主張は採用の限りでない。
エ よって,本件発明は明確性要件を満たすと判断される。異議申立人が主張する取消理由1には理由がない。

(2) 取消理由2(実施可能要件)について
ア 物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(特許法2条3項1号),物の発明については,明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,実施可能要件を満たすということができる。
イ これを本件発明についてみると,本件発明は,いずれも物の発明(粘着剤組成物,偏光板及び液晶表示装置)であるから,本件発明が実施可能であるというためには,本件の明細書の発明の詳細な説明に本件発明を構成するものを製造する方法についての具体的な記載があるか,あるいはそのような記載がなくても,技術常識に基づき当業者が本件発明のものを製造することができる必要がある。
そこで検討するに,明細書の発明の詳細な説明には,上記粘着剤組成物の具体例として,本件発明1で特定するアクリル系共重合体,多官能性架橋剤,多官能性アクリレート,光開始剤及び熱開始剤に相当する化合物を特定の割合で含有する粘着剤組成物を調製し,またこれを硬化させて偏光板を製造した実施例が複数記載されている。そして,明細書のこのような記載から,当業者は本件発明のものを製造できるものと認められる。
ウ よって,本件の明細書の記載は,本件発明について,実施可能要件を満たすと判断される。異議申立人が主張する取消理由2には理由がない。

5 むすび
したがって,異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては,特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また,他に当該特許が113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2015-12-08 
出願番号 特願2011-506183(P2011-506183)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C09J)
P 1 651・ 537- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤代 亮▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 堀 洋樹
須藤 康洋
登録日 2015-03-06 
登録番号 特許第5704541号(P5704541)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 粘着剤組成物と、これを含む偏光板及び液晶表示装置  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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