• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04R
審判 一部申し立て 2項進歩性  H04R
管理番号 1311838
異議申立番号 異議2015-700255  
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-03 
確定日 2016-02-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第5726448号「車載用スピーカ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5726448号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5726448号の請求項1に係る特許についての出願は、平成22年7月14日に特許出願され、平成27年4月10日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成27年12月3日に特許異議申立人特許法人にじいろ特許事務所により特許異議の申立てがされたものである。


2.本件特許発明
特許第5726448号の請求項1に係る特許は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」という。)である。

「【請求項1】
車室へ音響を出力する車載用スピーカであって、
前記車室の天井材に振動を与える加振手段と、
前記加振手段を取り付ける取り付け部を有し、該取り付け部が前記天井材に形成された開口部分に位置するように、かつ、前記取り付け部に前記加振手段が取り付けられた場合に該加振手段を取り囲んで広がる鍔状の領域が前記開口部分から前記車室側へ露出されるように配置されて前記天井材に固定されるブラケットと、
前記天井材の振動幅に基づく所定の間隙を前記天井材との間に置きつつ、前記ブラケットおよび該ブラケットに取り付けられた前記加振手段を覆う保護手段と、
前記保護手段を固定する締結部材を外部から遮蔽する遮蔽手段と
を備えることを特徴とする車載用スピーカ。」


3.申立理由の概要
特許異議申立人特許法人にじいろ特許事務所(以下「異議申立人」という。)は、以下の2点の理由を申し立て、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。

・請求項1に係る発明は、明確でなく、また、発明の詳細な説明に記載されたものでもないので、特許法第36条第6項第1号及び2号の規定に違反してなされたものである。
・請求項1に係る発明は、証拠として提出された本件特許発明の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-98864号公報(以下「甲第1号証」という。)、実願昭61-86590号(実開昭62-198787号)のマイクロフィルム(以下「甲第2号証」という。)により、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。


4.特許法第36条第1項及び2項違反について

異議申立人は、本件特許発明1は「ブラケットは天井材の開口部分から車室側へ露出させるように配置されているにもかかわらず、保護手段でブラケット及び加振手段を覆う」記載となっており、「加振手段を取り囲んで広がる鍔状の領域が露出していて、且つ、保護手段で覆われているとの記載は、ブラケットと保護手段の位置関係が不明確といえる。」、また、「【図4】、【図5】、【図7】、【図8】は、ブラケットが『車室側へ露出されるように』固定される記載はない、そのため、本件特許発明1に記載の発明は明細書の発明の詳細な説明中に記載されたものではない。」と主張している。
しかしながら、本件特許明細書および図面を参酌すると、本件特許発明1の「前記開口部分から前記車室側へ露出されるように配置され」とは、保護手段を備えた状態でも鍔状の領域が車室側から露出されている(車室側から見える)ことを意味しているわけではなく、天井材の裏側に固定されたブラケットの鍔状の領域が天井材の開口部分にも位置していることを表現するために、天井材の表側である「車室側へ露出」いう文言にしたと認められる。
よって、本件特許発明1の「加振手段を取り囲んで広がる鍔状の領域が前記開口部分から前記車室側へ露出されるように配置されて前記天井材に固定されるブラケット」と「前記ブラケットおよび該ブラケットに取り付けられた前記加振手段を覆う保護手段」の記載は矛盾したものではなく、異議申立人が主張する位置関係の不明確な事項ではないので、本件特許発明1は、特許法第36条第1項及び2項の期待に違反したものではない。


5.特許法第29条第2項違反について

(1)甲第1号証の記載
異議申立人が証拠として提出した甲第1号証(特開2008-98864号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0001】
本発明は、自動車や電車等の車両用の内装板を振動板とするスピーカ装置及びその取り付け方法に関する。」

イ.「【0021】
図1及び図3に示されるように、本実施形態のスピーカ装置1は、主として、車両の天井部の外板3近傍に配置される内装板5と、内装板5に設けられた環状のスピーカ収容孔9(すなわち開口部)の周縁部10に、内装板5の裏面5a側から接着剤等で固定される環状の基板11と、電気信号を振動に変換する環状の振動発生部15と、振動発生部15を基板11との間で挟みこむ環状のフロント部材13(すなわち固定部材)と、を備える。」

ウ.「【0023】
上記フロント部材13には、周方向に等間隔で厚さ方向に貫通するねじ孔23が設けられている。また、ねじ孔23に対応し、基板11に内ねじが螺刻されたポスト25が形成されている。そして、ねじ27をフロント部材13のねじ孔23を挿通させ基板11のポスト25に螺合し、スピーカ装置1が内装板5に取り付けられる。なお、本実施形態では、内装板5、スピーカ収容孔9、基板11、振動発生部15、フロント部材13、圧着テープ17、パッキン21が同心に配置される構成である。」

エ.「【0025】
環状の基板11は、開口部9を覆うような寸法の平板状の基部11bと、基部11bから図中で下方へほぼ垂直方向に伸び、開口部9と相補的な形状を有する支持部11aと、を備える。また、支持部11の先端部分には、基板11の中心方向からL字状に切り欠かれた切欠部11a1が形成されている。さらに、基板11の基部11bから下方に伸びる円筒状ポスト25が、周方向で等間隔に複数設けられている。

オ.「【0026】
振動発生部15は、椀形状のヨーク33と、円板状の永久磁石35と、金属性の円板状トッププレート37と、円筒状のボビン39と、ボイスコイル41と、ボイスコイル41に駆動電流を供給するために電気的に連結された端子19(図1参照。)と、を備える。ヨーク33、永久磁石35、トッププレート37、ボイスコイル41が同心に配置される。
・・・(中略)・・・
【0029】
ヨーク33の開口を覆うように、円板状のキャップ43が配される。キャップ43の外径は、ヨーク33の外径より大きい。前述したように、キャップ43にはボビン39が装着され、高音域の音声を再現するツィータとして機能する。キャップ43の外周縁部には、ねじ47により、公知の板ばね45(例えば、特許文献1の図1(b)参照。)がネジ止めされており、板ばね45を介してヨーク33の側壁部33bを支持している。さらに、キャップ43の下面は、フロント部材13に支持され、フロント部材13がねじ27により基板11にねじ止めされる。もちろん、フロント部材13を基板11ではなく、内装板5に固定する構成としてもよいことは言うまでもない。」

カ.「【0033】
次に、上記構成のスピーカ装置1の動作について説明する。本実施形態のスピーカ装置1において、中、低音は、ウーハユニットの振動板として機能する内装板5により再現される。ボイスコイル41の振動は、2つの経路を介して内装板5に伝達される。まず、第1の経路によれば、キャップ43、パッキン21、フロント部材13、基板11のポスト25及び基部11bを介して内装板5に振動が伝達される。さらに、第2の経路によれば、キャップ43(、圧着テープ17)、基板11の支持部11a及び基部11bを介して内装板5に振動が伝達される。他方、高音は、ツィータユニットの振動板として機能するキャップ43により再現される。」

キ.「【0036】
次に、スピーカ装置1の取り付け方法について簡単に説明する。裏面5a側から、開口部9に基板11の支持部11aを挿通させて基板装着部10に固着した内装板5を用意す
る。なお、基板11を固定した後の工程については、内装板5を車両内の所定位置に装着した後に行うことも可能であるし、スピーカ装置1が完全に取り付けた内装板5を車両の所定位置に装着することも可能である。
【0037】
次に、基板11の支持部11a(切欠部11a1)に対して圧着テープ17を介在させて振動発生部15を装着する。さらに、板ばね45を固定した振動発生部15のキャップ43の下面にパッキン21を挟みフロント部材13を配置する。最後に、フロント部材13のねじ孔23から雄ねじ27を挿通させ、雄ねじ27を基板11のポスト25に螺合し、フロント部材13を基板11に固定する。このように、スピーカ装置1を取り付ける作業は、内装板5の裏面5aに基板11を固定した後に、内装板5の表面5b側から行うことができるので作業性が非常に良い。」

上記アないしキから、甲第1号証には以下のことが記載されている。

・上記アによれば、車両用の内装板を振動板とするスピーカ装置に関するものである。

・上記イ、オ、カによれば、振動発生部15は、その構成要素のボイスコイル41の振動を内装板5に伝達するものである。

・上記イ、エ、キによれば、環状基板11は、内装板5に固定され、該内装板5の裏面から該内装板5に設けられた開口部9を覆う平板状の基部11bと、振動発生部15を圧着テープ17を介在させて装着し、開口部9と相補的な形状を有する支持部11aと、を備えたものである。また、図1および図3を参照すると、環状基板11は、基部11aを囲むように基部11bが配置されているものである。

・上記イ、ウ、キによれば、環状のフロント部材13は、振動発生部15を環状基板11との間で挟みこみ、該環状基板11と固定されるものである。

したがって、上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「車両用の内装板を振動板とするスピーカ装置であって、
前記内装板に振動を伝達する振動発生部と、
内装板に設けられた開口部と相補的な形状を有し、前記振動発生部を装着する支持部を備え、かつ、前記支持部を囲むように平板状の基部が開口部を覆って前記内装板に固定される環状基板と、
前記環状基板に固定され、前記環状基板に装着された前記振動発生部を前記環状基板と共に挟み込む環状のフロント部材と、
を備えることを特徴とするスピーカ装置。」


(2)甲第2号証の記載
異議申立人が証拠として提出した甲第2号証(実願昭61-86590号(実開昭62-198787号)のマイクロフィルム)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ク.「上記のように構成されたスピーカユニットの前面側には振動板保護用の金網26やディフューザー27が配置される場合があるが、金網26の外周縁部を取り付けるための取付リング9やディフューザー27の取付基端部28その他の取付部材8は上記フレーム6に取り付けられる。本考案においては上記フレーム6に上記取付部材8に対応する凹部10が形成されると共に該凹部10内で上記取付ビス7がネジ込まれてフレーム6がトッププレート5に取り付けられ、これを隠蔽するように上記取付部材8が埋め込み固定される。」(甲第2号証 明細書第7ページ第7?17行)

上記ク、第1図および第2図によれば、甲第2号証には以下の技術事項が記載されている。
「振動板保護用の金網は取付リングに取付けられ、該取付リング(および取付部材8)は、フレームを固定するための取付ビスを隠蔽するように該フレームの凹部に埋め込み固定される」こと。


(3)対比・判断
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。なお、下記aないしgは、異議申立人が本件特許発明1を分説したAないしGに対応させた。

a.甲1発明の「車両用の内装板を振動板とするスピーカ装置」は、車両内部の内装板を振動させて音を出すものであるから、本件特許発明1の「車室へ音響を出力する車載用スピーカ」に相当する。

b.甲1発明の「振動発生部」は、本件特許発明1の「加振手段」に相当する。また、甲1発明の「内装板」は、振動発生部によって振動させられるものであるから、本件特許発明1の「天井材」に相当する。
よって、甲1発明の「前記内装板に振動を伝達する振動発生部」は、本件特許発明1の「前記車室の天井材に振動を与える加振手段」に相当する。

c.甲1発明の「前記振動発生部を装着する支持部」は、本件特許発明1の「前記加振手段を取り付ける取り付け部」に相当する。

d.甲1発明の「内装板に設けられた開口部と相補的な形状を有し」た支持部は、本件特許発明1の「該取り付け部が前記天井材に形成された開口部分に位置するように」配置されているものである。

e.甲1発明の「前記支持部を囲むように平板状の基部が開口部を覆って前記内装板に固定される」とは、振動発生部を装着する支持部を囲む平板状の基部が内装板に固定されるから、本件特許発明1の「前記取り付け部に前記加振手段が取り付けられた場合に該加振手段を取り囲んで広がる鍔状の領域が前記天井材に固定される」ことに相当する。
そして、支持部と平板状の基部とで構成されている甲1発明の「環状基板」は、取り付け部と鍔状の領域で構成された本件特許発明1の「ブラケット」に相当する。
よって、甲1発明の「前記支持部を囲むように平板状の基部が開口部を覆って前記内装板に固定される環状基板」は、本件特許発明1の「前記取り付け部に前記加振手段が取り付けられた場合に該加振手段を取り囲んで広がる鍔状の領域が前記天井材に固定されるブラケット」に相当する。
但し、本件特許発明1には、ブラケットの鍔状の領域が「前記開口部分から前記車室側へ露出されるように配置」されているが、甲1発明には、開口部において環状基板の平板状の基部が露出されているか否か直接記載されていない。

f.甲1発明の「環状のフロント部材」は、図1および図3を参照すると、一応本件特許発明1の「保護手段」に対応するものであるから、甲1発明の「前記環状基板に固定され、前記環状基板に装着された前記振動発生部を前記環状基板と共に挟み込む環状のフロント部材」は、本件特許発明1の「前記ブラケットおよび該ブラケットに取り付けられた前記加振手段」の「保護手段」に相当する。
但し、本件特許発明1の保護手段は「天井材の振動幅に基づく所定の間隙を前記天井材との間に置」くように配置されているが、甲1発明の環状のフロント部材は内装板(本件特許1の「天井材」に相当。)との配置関係は直接記載されていない。
また、本件特許発明1の保護手段は「加振手段を覆う」が、甲1発明の環状のフロント部材が振動発生部(本件特許1の「加振手段」に相当。)を覆っているとの直接記載はない。

g.本件発明発明1の「前記保護手段を固定する締結部材を外部から遮蔽する遮蔽手段」は、甲1発明には記載されていない。

したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「車室へ音響を出力する車載用スピーカであって、
前記車室の天井材に振動を与える加振手段と、
前記加振手段を取り付ける取り付け部を有し、該取り付け部が前記天井材に形成された開口部分に位置するように、かつ、前記取り付け部に前記加振手段が取り付けられた場合に該加振手段を取り囲んで広がる鍔状の領域が前記天井材に固定されるブラケットと、
前記ブラケットを覆う保護手段と、
を備えることを特徴とする車載用スピーカ。」

<相違点1>
ブラケットの鍔状の領域について、本件特許発明1は「前記開口部分から前記車室側へ露出されるように配置」されてるのに対し、甲1発明にはその旨の特定がない。

<相違点2>
保護手段について、本件特許発明1は「天井材の振動幅に基づく所定の間隙を前記天井材との間に置」くように配置されているのに対し、甲1発明にはその旨の特定がない。

<相違点3>
保護手段について、本件特許発明1は「加振手段を覆う」ように構成されているのに対し、甲1発明にはその旨の特定がない。

<相違点4>
遮蔽手段について、本件発明発明1は「前記保護手段を固定する締結部材を外部から遮蔽する」よう構成しているが、甲1発明には「遮蔽手段」そのものが記載されていない。

そこで、上記相違点1ないし4について検討する。

<相違点1>について
甲第1号証の段落【0025】(上記エを参照。)には、内装板の開口部9(本件特許発明1の「天井材に形成された開口部分」に相当。)と環状基板の支持部11a(本件特許発明1の「ブラケットの取り付け部」に相当。)とが「相補的な形状」であることが記載されているから、開口部9の直径と支持部11aの外径とはほぼ同じであると認められる。また、甲第1号証の図1を参照すると、開口部9は、環状基板の平板状の基部11b(本件特許発明1の「ブラケットの鍔状の領域」に相当。)に形成されたポスト25に対応する箇所だけ該開口部より更に外側に切り欠きが設けられていることからしても、該平板状の基部11bが該開口部9から露出されるほど該開口部9の直径があるとは認められない。そして、本件特許発明1は、ブラケットの鍔状の領域を開口部分から露出させることにより音質の調整を行ったものであるが、甲第1号証にはその旨の記載もない。
よって、相違点1は、甲1発明に記載された事項ではなく、また、容易になし得た事項でもない。

<相違点2>について
甲第1号証の段落【0029】(上記オを参照。)によれば、フロント部材(本件特許発明1の「保護手段」に相当。)は環状基板(本件特許発明1の「ブラケット」に相当。)か内装板(本件特許発明1の「天井材」に相当。)のどちらに固定するか選択し得るところ、甲第1号証の段落【0023】(上記ウを参照。)および図3を参酌すると、フロント部材は環状基板に固定されているから、内装板には固定されていないか、内装板に固定しないように構成することは容易になし得ることと認められる。
しかしながら、例えフロント部材と内装板とが固定せず離れていると認定したとしても、どの程度離すかは甲第1号証には記載も示唆もない。
よって、相違点2は、甲1発明に記載された事項ではなく、また、容易になし得た事項でもない。

<相違点3>について
甲第1号証の図1および図3を参照すると、フロント部材(本件特許発明1の「保護手段」に相当。)は、少なくとも振動発生部(本件特許発明1の「加振手段」に相当。)のキャップ43を覆っていないことは明らかである。また、甲第1号証の詳細な説明にも、キャップ43をフロント部材が覆っても良い旨の記載も認められない。
よって、相違点3は、甲1発明に記載された事項ではなく、また、容易になし得た事項でもない。

<相違点4>について
異議申立人は、相違点4に係る事項は甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術を組み合わせることにより容易になし得たものと主張している。
しかしながら、甲第2号証に記載された技術事項(上記「(2)甲第2号証の記載」を参照。)は、振動板保護用の金網の取付リング9が記載されているが、これが本件特許発明1の「保護手段を固定する締結部材」に相当するにしても、該取付リング9は外部から遮蔽されていない。
なお、異議申立人が本件特許発明1の「締結部材」に相当すると主張した甲第2号証に記載された「取付ビス7」は、取付リング9と一体的に構成された取付部材8により遮蔽されているものであり、そもそも振動板保護用の金網及びその取付リング9を固定するためのものではないから、本件特許発明1の「締結部材」に相当しない。
よって、相違点4は、甲1発明に甲第2号証に記載された技術事項を組み合わせても容易になし得たものではない。

したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された技術事項を組み合わせても、当業者が容易になし得たものではなく、特許法第29条第2項に違反したものではない。


6.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
異議決定日 2016-01-27 
出願番号 特願2010-160110(P2010-160110)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H04R)
P 1 652・ 537- Y (H04R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 雅博  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 ゆずりは 広行
酒井 朋広
登録日 2015-04-10 
登録番号 特許第5726448号(P5726448)
権利者 富士通テン株式会社
発明の名称 車載用スピーカ  
代理人 酒井 宏明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ