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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1312529
審判番号 不服2014-17621  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-04 
確定日 2016-03-16 
事件の表示 特願2012-139599「ディジタル画像および音声データを無損失に復号化するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月18日出願公開、特開2012-200005〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本願は、2002年(平成14年)7月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2001年7月19日、米国、2002年7月18日、米国)を国際出願日とする出願である特願2003-514427号の一部を平成20(2008)年10月1日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願とした特願2008-256186号の一部を平成24(2012)年6月21日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願(特願2012-139599号)としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成24年 7月23日
拒絶理由通知 :平成25年 8月26日(起案日)
手続補正 :平成25年12月 3日
拒絶理由通知(最後) :平成26年 1月 8日(起案日)
拒絶査定 :平成26年 4月30日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成26年 9月 4日
手続補正 :平成26年 9月 4日
前置審査報告 :平成26年10月 2日
上申書 :平成26年12月26日

2.査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1-26に係る発明(平成25年12月3日付け手続補正による)は、下記の刊行物1-7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:国際公開第01/35673号
刊行物2:N. Memon,Adaptive coding of DCT coefficients by Golomb-Rice codes,Proceedings of 1998 International Conference on Image Processing,IEEE,1998年,Vol.1,pp.516-520
刊行物3:特開平7-336235号公報
刊行物4:特開平7-123413号公報
刊行物5:特開昭63-45684号公報
刊行物6:特開平4-101278号公報(平成6年10月14日付け手続補正書の補正の内容も含む。上記補正を掲載した公報(以下、補正掲載公報という。)の発行日:平成8年11月29日)
刊行物7:特開平11-252573号公報

第2 補正の却下の決定
平成26年9月4日付けの手続補正について次のとおり決定する。

《補正の却下の決定の結論》
平成26年9月4日付けの手続補正を却下する。

《補正の却下の決定の理由》
1.本件補正の内容
平成26年9月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1の記載を、以下のように、補正後の請求項1の記載とする補正を含むものである。

(補正前の請求項1)
【請求項1】
オリジナル画像を表すデータを復号化する方法であって、
損失圧縮データを受信することと、
様々なサイズを有する画素ブロックを定めるカッドツリー(PQR)データを受信することと、
前記損失圧縮データをDC係数とAC係数とに分離することと、
前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化し、DC値とAC値とをそれぞれ決定することと、ここで、前記AC係数を復号化することは、前記AC係数を復号化するためにゴロム復号化を用いるゴロム復号化器を用いることを備え、
前記DC値を逆量子化することなく前記AC値を逆量子化することと、
前記DC値と前記逆量子化されたAC値とを逆変換して、前記オリジナル画像に類似した画像を再生するために使用可能な損失解凍データを生成することと、
残差圧縮データを受信することと、
前記残差圧縮データを復号化して、残差解凍データを生成することと、
前記損失解凍データを前記残差解凍データと結合させて、無損失データを生成することとを備え、
前記無損失データを用いて再生される画像は、前記オリジナル画像に類似する、方法。
(補正後の請求項1)
【請求項1】
オリジナル画像を表すデータを復号化する方法であって、
損失圧縮データを受信することと、
様々なサイズを有する画素ブロックを定めるカッドツリー(PQR)データを受信することと、
前記損失圧縮データをDC係数とAC係数とに分離することと、
前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化し、DC値とAC値とをそれぞれ決定することと、ここで、前記AC係数を復号化することは、前記AC係数を復号化するためにゴロム復号化を用いるゴロム復号化器を用いることを備え、
前記DC値を逆量子化することなく前記AC値を逆量子化することと、
前記DC値と前記逆量子化されたAC値とを逆変換して、前記オリジナル画像に類似した画像を再生するために使用可能な損失解凍データを生成することと、
残差圧縮データを受信することと、ここで、前記残差圧縮データは、前記オリジナル画像と前記損失圧縮データの解凍データとの差分を取得することと、前記差分を無損失に符号化することとによって、取得される、
前記残差圧縮データを復号化して、残差解凍データを生成することと、
前記損失解凍データを前記残差解凍データと結合させて、無損失データを生成することとを備え、
前記無損失データを用いて再生される画像は、前記オリジナル画像に類似する、方法。

2.本件補正の適合性
(2-1)補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2-2)補正の目的
上記補正事項は、補正前の「残差圧縮データを受信すること」の構成について、「前記残差圧縮データは、前記オリジナル画像と前記損失圧縮データの解凍データとの差分を取得することと、前記差分を無損失に符号化することとによって、取得される」の構成を付加して限定する補正事項であるといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

(2-3)独立特許要件
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含む補正であるから、独立特許要件について検討する。

(ア)補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、以下のとおりである。
((A)ないし(K)は当審において付与した。以下「構成要件(A)」等として引用する。)

【請求項1】
(A)オリジナル画像を表すデータを復号化する方法であって、
(B)損失圧縮データを受信することと、
(C)様々なサイズを有する画素ブロックを定めるカッドツリー(PQR)データを受信することと、
(D)前記損失圧縮データをDC係数とAC係数とに分離することと、
(E)前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化し、DC値とAC値とをそれぞれ決定することと、ここで、前記AC係数を復号化することは、前記AC係数を復号化するためにゴロム復号化を用いるゴロム復号化器を用いることを備え、
(F)前記DC値を逆量子化することなく前記AC値を逆量子化することと、
(G)前記DC値と前記逆量子化されたAC値とを逆変換して、前記オリジナル画像に類似した画像を再生するために使用可能な損失解凍データを生成することと、
(H)残差圧縮データを受信することと、ここで、前記残差圧縮データは、前記オリジナル画像と前記損失圧縮データの解凍データとの差分を取得することと、前記差分を無損失に符号化することとによって、取得される、
(I)前記残差圧縮データを復号化して、残差解凍データを生成することと、
(J)前記損失解凍データを前記残差解凍データと結合させて、無損失データを生成することとを備え、
(K)前記無損失データを用いて再生される画像は、前記オリジナル画像に類似する、方法。

(イ)引用刊行物の記載
(イ-1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である国際公開第01/35673号(以下、刊行物1という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(イ-1-1)
「BACKGROUND OF THE INVENTION
I. Field of the Invention
The present invention relates to image processing. More specifically, the present invention relates to a compression scheme for image signals utilizing adaptively sized blocks and sub-blocks of encoded discrete cosine transform coefficient data.」(1頁4-11行)
(訳)
「発明の背景
I. 発明の分野
本発明は画像処理に関する。特に、本発明はコード化された離散コサイン変換係数データの適応性サイズブロックおよびサブブロックを利用するイメージ信号の圧縮計画に関連する。」

(イ-1-2)
「Referring now to FIG. 1, an image processing system 100 which incorporates the compression system of the present invention is shown. The image processing system 100 comprises an encoder 102 that compresses a received video signal. The compressed signal is transmitted through a transmission channel 104, and received by a decoder 106. The decoder 106 decodes the received signal into image samples, which may then be displayed. 」(7頁30行-8頁4行)
(訳)
「図1を参照すると、本発明の圧縮システムを取り入れる画像処理システム100が示される。画像処理システム100は受信されたビデオ信号を圧縮するエンコーダ102を含む。圧縮された信号は伝送チャンネル104で送信され、デコーダ106によって受信される。デコーダ106は受信された信号をイメージサンプルに復号し、次に、サンプルは表示されるかもしれない。」

(イ-1-3)
「In a preferred embodiment, each of the Y, Cb, and Cr components is processed without sub-sampling. Thus, an input of a 16x16 block of pixels is provided to the encoder 102. The encoder 102 comprises a block size assignment element 108, which performs block size assignment in preparation for video compression. The block size assignment element 108 determines the block decomposition of the 16x16 block based on the perceptual characteristics of the image in the block. Block size assignment subdivides each 16x16 block into smaller blocks in a quad-tree fashion depending on the activity within a 16x16 block. The block size assignment element 108 generates a quad-tree data, called the PQR data, whose length can be between 1 and 21 bits. Thus, if block size assignment determines that a 16x16 block is to be divided, the R bit of the PQR data is set and is followed by four additional bits of P data corresponding to the four divided 8x8 blocks. If block size assignment determines that any of the 8x8 blocks is to be subdivided, then four additional bits of Q data for each 8x8 block subdivided are added. 」(8頁16行-30行)
(訳)
「好ましい実施例では、Y、CbおよびCr成分のそれぞれはサブサンプリングなしで処理される。したがって、画素の16x16ブロックの入力はエンコーダ102に供給される。エンコーダ102はブロックサイズ割当て要素108を含み、それはビデオ圧縮に備えてブロックサイズ割当てを実行する。ブロックサイズ割当て要素108はブロックにおけるイメージの知覚特性に基づいて16x16ブロックのブロック分解を決定する。ブロックサイズ割当ては16x16ブロック内の活動に依存してクオドトリーの様式で各16x16ブロックをより小さなブロックに細分化する。ブロックサイズ割当て要素108はPQRデータと呼ばれる長さが1?21ビットであることができるクオドトリーデータを発生する。したがって、16x16ブロックが分割されるべきであることをブロックサイズ割当てが決定するならば、PQRデータのRビットが設定され、4つの分割された8x8ブロックに対応するPデータの4つの付加的なビットにより続けられる。8x8ブロックのどれかが細分化されるべきであることをブロックサイズ割当てが決定するなら、細分化された各8x8ブロックのQデータの4つの付加的なビットが加えられる。」

(イ-1-4)
「If the variance vl6 is not greater than the threshold T16, then at step 208, the starting address of the 16x16 block is written, and the R bit of the PQR data is set to 0 to indicate that the 16x16 block is not subdivided. The algorithm then reads the next 16x16 block of pixels. If the variance vl6 is greater than the threshold T16, then at step 210, the R bit of the PQR data is set to 1 to indicate that the 16x16 block is to be subdivided into four 8x8 blocks.」(9頁13行-18行)
(訳)
「変化v16が閾値T16ほど大きくないならば、ステップ208で、16x16ブロックの始めのアドレスが書かれ、PQRデータのRビットは16x16ブロックが細分化されないことを示すために0に設定される。アルゴリズムは画素の次の16x16ブロックを読む。変化のv16が閾値T16よりも大きいならば、ステップ210で、PQRデータのRビットは16x16ブロックが4つの8x8ブロックに細分化されるべきであることを示すために1に設定される。」

(イ-1-5)
「For purposes of illustration, consider the following example. Let the predetermined variance thresholds for the Y component be 50, 1100, and 880 for the 16x16, 8x8, and 4x4 blocks, respectively. In other words, T16 = 50, T8 = 1100, and T16 = 880. Let the range of mean values be 80 and 100. Suppose the computed variance for the 16x16 block is 60. Since 60 and its mean value 90 is greater than T16, the 16x16 block is subdivided into four 8x8 sub-blocks. Suppose the computed variances for the 8x8 blocks are 1180, 935, 980, and 1210. Since two of the 8x8 blocks have variances that exceed T8, these two blocks are further subdivided to produce a total of eight 4x4 sub-blocks. Finally, suppose the variances of the eight 4x4 blocks are 620, 630, 670, 610, 590, 525, 930, and 690, with corresponding means values 90, 120, 110, 115. Since the mean value of the first 4x4 block falls in the range (80, 100), its threshold will be lowered to T'4=200 which is less than 880. So, this 4x4 block will be subdivided as well as the seventh 4x4 block. The resulting block size assignment is shown in FIG. 3a. The corresponding quad-tree decomposition is shown in FIG. 3b. Additionally, the PQR data generated by this block size assignment is shown in FIG. 3c.」(10頁18行-10頁2行)
(訳)
「図の目的のため以下の例を考える。Y成分の予定された変化の閾値がそれぞれ16x16、8x8、および4x4ブロックについて50、1100、および880であるとしよう。言い換えれば、T16=50、T8=1100、およびT4=880である。平均値の範囲が80と100であるとしよう。16x16ブロックの計算された変化が60であると仮定する。60とその平均値90はT16より大きいので、16x16ブロックが4つの8x8サブブロックに細分化される。8x8ブロックの計算された変化が1180、935、980、および1210であると仮定する。2つの8x8ブロックがT8を超える変化を有するので、これらの2つのブロックが合計8つの4x4サブブロックを生成するようにさらに細分化される。最終的に、8つの4x4ブロックの変化が対応する平均値90、120、110、115を有して620、630、670、610、590、525、930、および690であると仮定する。最初の4x4ブロックの平均値が範囲(80、100)内に入るので、その閾値は880未満であるT'4=200に下げられるだろう。そこで、この4x4ブロックは7番目の4x4ブロックと同様に細分化されるだろう。結果として起こるブロックサイズ割当ては図3aに示される。対応するクオドトリーの分解は図3bに示される。さらに、このブロックサイズ割当てによって発生したPQRデータは図3cに示される。」

(イ-1-6)
「Referring back to FIG. 1, the remainder of the image processing system 110 will be described. The PQR data, along with the addresses of the selected blocks, are provided to a DCT element 110. The DCT element 110 uses the PQR data to perform discrete cosine transforms of the appropriate sizes on the selected blocks. Only the selected blocks need to undergo DCT processing.
The image processing system 100 may optionally comprise DQT element 112 for reducing the redundancy among the DC coefficients of the DCTs. A DC coefficient is encountered at the top left corner of each DCT block. The DC coefficients are, in general, large compared to the AC coefficients. The discrepancy in sizes makes it difficult to design an efficient variable length coder. Accordingly, it is advantageous to reduce the redundancy among the DC coefficients.
The DQT element 112 performs 2-D DCTs on the DC coefficients, taken 2x2 at a time. Starting with 2x2 blocks within 4x4 blocks, a 2-D DCT is performed on the four DC coefficients. This 2x2 DCT is called the differential quad-tree transform, or DQT, of the four DC coefficients. Next, the DC coefficient of the DQT along with the three neighboring DC coefficients with an 8x8 block are used to compute the next level DQT. Finally, the DC coefficients of the four 8x8 blocks within a 16x16 block are used to compute the DQT. Thus, in a 16x16 block, there is one true DC coefficient and the rest are AC coefficients corresponding to the DCT and DQT.
The transform coefficients (both DCT and DQT) are provided to a quantizer 114 for quantization. In a preferred embodiment, the DCT coefficients are quantized using frequency weighting masks (FWMs) and a quantization scale factor. A FWM is a table of frequency weights of the same dimensions as the block of input DCT coefficients. The frequency weights apply different weights to the different DCT coefficients. The weights are designed to emphasize the input samples having frequency content that the human visual system is more sensitive to, and to de-emphasize samples having frequency content that the visual system is less sensitive to. The weights may also be designed based on factors such as viewing distances, etc.」(11頁11行-12頁10行)
(訳)
「図1に戻って、画像処理システム110の残りが説明されるだろう。選択されたブロックのアドレスと共にPQRデータはDCT要素110に提供される。DCT要素110は、選択されたブロックにおける適切なサイズの離散コサイン変換を実行するためにPQRデータを使用する。選択されたブロックだけがDCT処理を受ける必要がある。
画像処理システム100は、DCTのDC係数中の冗長を減らすために選択的にDQT要素112を含んでもよい。DC係数はそれぞれのDCTブロックの先頭の左隅で遭遇される。一般に、AC係数と比べてDC係数は大きい。サイズの不一致は効率的な可変長コーダを設計することを難しくする。従って、DC係数中の冗長を減らすことは有利である。
DQT要素112は一度に2x2を取られた、DC係数における2-D DCTを実行する。4x4ブロック中で2x2ブロックから始まって、2-D DCTは4つのDC係数に実行される。この2x2DCTは4つのDC係数の微分クオドトリー変換、即ちDQTと呼ばれる。次に、8x8ブロックで3つの隣接しているDC係数と共にDQTのDC係数は次のレベルのDQTを計算するために使用される。最終的に、16x16ブロック中の4つの8x8ブロックのDC係数は、DQTを計算するために使用される。かくして16x16ブロックにおいて、1つの真のDC係数があり、残りはDCTおよびDQTに対応するAC係数とである。
変換係数(DCTとDQTの両方)は量子化のための量子化器114に提供される。好ましい実施例では、DCT係数は周波数加重マスク(FWM)と量子化スケールファクターを使用して量子化される。FWMは入力DCT係数のブロックと同じ次元の周波数加重の表である。周波数加重は異なったDCT係数に異なった加重を適用する。加重は、人間の視覚システムがより敏感である周波数内容を持っている入力サンプルを強調して、視覚システムがより敏感でない周波数内容を持っているサンプルを反-強調するように設計される。加重はまた見る距離などの要因に基づいて設計されるかもしれない。」

(イ-1-7)
「The quantized coefficients are provided to a zigzag scan serializer 116.The serializer 116 scans the blocks of quantized coefficients in a zigzag fashion to produce a serialized stream of quantized coefficients. A number of different zigzag scanning patterns, as well as patterns other than zigzag may also be chosen. A preferred technique employs 8x8 block sizes for the zigzag scanning, although other sizes may be employed.
Note that the zigzag scan serializer 116 may be placed either before or after the quantizer 114. The net results are the same.
In any case, the stream of quantized coefficients is provided to a variable length coder 118. The variable length coder 118 may make use of run-length encoding of zeros followed by Huffman encoding. This technique is discussed in detail in aforementioned U.S. Pat. Nos. 5,021,891, 5,107,345, and 5,452,104, and is summarized herein. A run-length coder would take the quantized coefficients and separate out the zero from the non-zero coefficients. The zero values are referred to as run-length values, and are Huffman encoded. The non-zero values are separately Huffman encoded.
A modified Huffman coding of the quantized coefficients is also possible and is used in the preferred embodiment. Here, after zigzag scanning, a run- length coder will determine the run-length /size pairs within each 8x8 block. These run-length/ size pairs are then Huffman encoded.」(12頁30行-13頁18行)
(訳)
「量子化係数はジグザグ走査シリアライザ116に供給される。シリアライザ116は量子化係数の直列化された流れを生成するためにジグザグな様式で量子化係数のブロックを走査する。ジグザグ以外のパターンはもちろん、多くの異なったジグザグ走査のパターンがまた選択されてもよい。好ましい技術はジグザグ走査のために8x8ブロックサイズを採用するが、他のサイズも採用され得る。
ジグザグ走査シリアライザ116が量子化器114の前または後のいずれに置かれてもよいことに注意すべきである。最終的な結果は同じである。
どの場合でも、量子化係数の流れは可変長コーダ118に供給される。可変長コーダ118はハフマン(Huffman)コード化によって生じるゼロのランレングスコード化を使用させるかもしれない。この技術は前述の米国特許番号5,021,891、5,107,345、および5,452,104に詳述され、ここにまとめられる。ランレングスコーダは量子化係数を取り、非ゼロ係数からゼロを分離するだろう。ゼロ値がランレングス値として参照され、ハフマンコード化される。非ゼロ値は別々にハフマンコード化される。
量子化係数の変更されたハフマンコード化はまた可能であり、好ましい実施例で使用される。ここで、ジグザグ走査の後に、ランレングスコーダは各8x8ブロック中でランレングス/サイズ対を決定するだろう。そしてこれらのランレングス/サイズ対はハフマンコード化される。」

(イ-1-8)
「The compressed image signal generated by the encoder 102 are transmitted to the decoder 106 via the transmission channel 104. The PQR data, which contains the block size assignment information, is also provided to the decoder 106. The decoder 106 comprises a variable length decoder 120, which decodes the run-length values and the non-zero values.
The output of the variable length decoder 120 is provided to an inverse zigzag scan serializer 122 that orders the coefficients according to the scan scheme employed. The inverse zigzag scan serializer 122 receives the PQR data to assist in proper ordering of the coefficients into a composite coefficient block.
The composite block is provided to an inverse quantizer 124, for undoing the processing due to the use of the frequency weighting masks.
The coefficient block is then provided to an IDQT element 126, followed by an IDCT element 128, if the Differential Quad-tree transform had been applied. Otherwise, the coefficient block is provided directly to the IDCT element 128. The IDQT element 126 and the IDCT element 128 inverse transform the coefficients to produce a block of pixel data. The pixel data may be then have to be interpolated, converted to RGB form, and then stored for future display.」(13頁28行-14頁15行)
(訳)
「エンコーダ102によって発生される圧縮されたイメージ信号は、伝送チャンネル104を通してデコーダ106に送信される。また、ブロックサイズ割当て情報を含むPQRデータはまたデコーダ106に提供される。デコーダ106は可変長デコーダ120を含み、それはランレングス値および非ゼロ値を復号する。
可変長デコーダ120の出力は採用された走査計画に従って係数を順序付ける逆ジグザグ走査シリアライザ122に供給される。逆ジグザグ走査シリアライザ122は、合成係数ブロックに係数の適切な順序付けを援助するためにPQRデータを受け取る。
合成ブロックは、周波数加重マスクの使用による処理を元に戻すために逆量子化器124に供給される。
微分クオドトリー変換が適用されたならば、係数ブロックはIDCT要素128に続けられるIDQT要素126に供給される。別の方法では、係数ブロックは直接IDCT要素128に供給される。IDQT要素126とIDCT要素128は画素データのブロックを生成するため係数を逆変換する。画素データは次に、RGB形式に補間され変換されなければならなく、またさらに表示のために格納されなくてはならないかもしれない。」

(イ-2)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であるN. Memonによる「Adaptive coding of DCT coefficients by Golomb-Rice codes」(以下、刊行物2という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(イ-2-1)
「In this paper we apply some of the Golomb-Rice coding techniques that emerged in JPEG-LS, a new standard for lossless image compression, and apply them towards coding DCT coeficients in the lossy JPEG baseline algorithm. We show that this results in significant improvements in performance with limited impact on computational complexity. In fact, one significant reduction in complexity provided by the proposed techniques is the complete elimination of the Huffman tables in JPEG baseline which can be a bottleneck in hardware implementations. We give simulation results,comparing the performance of the proposed technique to JPEG baseline, JPEG baseline with optimal Huffman coding (two pass) and JPEG arithmetic.」(516頁左欄2-15行)
(訳)
「本稿では、ロスレス画像圧縮のための新しい標準であるJPEG-LSに出現したゴロムライス符号化技術のいくつかを適用し、非可逆JPEGベースラインアルゴリズムでは、DCT係数のコーディングに向けてそれらを適用します。これは、計算量の限定的な影響と共にパフォーマンスの大幅な改善につながることを示しています。実際には、提案された技術により提供される複雑さの一つの重要な減少が、ハードウェア実装におけるボトルネックになる可能性があるJPEGベースラインにおけるハフマンテーブルの完全な除去となります。我々は提案されたテクニックのパフォーマンスを JPEG ベースライン(最適なハフマン符号化(2つのパス)と JPEG 演算を持った JPEG ベースライン)と比較するシミュレーション結果を与えます。」

「3 Golomb-Rice coding of AC coefficients
In JPEG-LS, prediction errors are encoded using a special case of Golomb codes [2] also known as Rice codes [4]. Golomb codes of parameter m encode a positive integer n by encoding n mod m in binary followed by an encoding of n div m in unary. When m = 2^(k) the encoding procedure has a very simple realization and has been referred to as Rice coding in the literature,but following [8] we refer to them as Golomb- Rice codes. The key factor behind the effective use of Golomb-Rice codes is the estimation of the coding parameter k to be used for a given sample or block of samples. Rice's algorithm exhaustively [4] tries codes with each parameter on a block of samples and selects the one which results in the shortest code length.This parameter is sent to the decoder as side information.However, in JPEG-LS the coding parameter k is estimated on the fly for each prediction error using techniques proposed by Weinberger et. al, [8]. Despite the simplicity of the coding and estimation procedures,the compression performance achieved is surprisingly close to that obtained by arithmetic coding.In their technique, each prediction error is mapped in an interleaved manner to a positive number and then encoded by using a Golomb-Rice code of parameter m = 2^(k). ・・・
Now, it has been established empirically by several researchers that the AC coefficients of an 8 x 8 DCT block are well modeled by a Laplacian distribution (for example, see [11] or [5]). Hence in order to compute the appropriate Golomb-Rice encoding parameter we need a good estimate of the expected magnitude of each AC coefficient. In JPEG-LS, good estimates of the expected magnitudes of prediction errors are obtained by using a large number of contexts. Using large number of contexts for coding AC coefficients within a DCT block can be potentially expensive as we would need a different set of contexts for each of the 63 coefficients. This is because although the distribution of each AC coefficient is Laplacian, the variance of this distribution varies with the coefficient position in the DCT block. Hence we would require separate contexts for each of AC coefficients. Not only would this require an enormous amount of memory, but estimation would be ineffective due to the sparse context problem or high model cost. Hence the challenge is to design a small number of contexts that are able to capture the essential structure within a DCT block and further adapt the estimation procedure within each context.
The distribution of a specific AC coefficient depends on the quantizer step size being used for that coefficient. Hence, clearly the entropy coding of AC coefficients needs to be adapted to the specific quantization table being employed. In addition it is known that DCT blocks containing an edge of the same orientation would have a similar structure. For example, DCT blocks containing a vertical (horizontal) edge have most of their energy in the first row (column) of the block. One way to detect the presence of an edge in the current DCT block is to examine the difference between the DC values of adjacent blocks.Hence, we compute the differences
dv = DCi,j - DCi-l,j
dl = DCi,j - DCi-1,j-l
dh = DCi,j - DCi,j-1
dr = DCi,j - DCi-l,j+l
where i , j are block indices. These differences, multiplied by the DC quantization step size can then be quantized into two levels (low, high), yielding 4^(2) = 16 contexts. In addition the DC value of the current block is quantized into t levels yielding 16t contexts. Within each context we, like in JPEG-LS, keep track of the average magnitude of each of the 63 AC coefficients. This can be done by maintaining a count Nc of the number of occurrence of each context C and the accumulated sum of magnitudes Ac within this context. Doing this requires 63 * 16t + 16t words of additional memory. The Golomb-Rice parameter for coding an AC coefficient can then be computed as in JPEG-LS, by the procedure given in (1).
3.1 Scaling the expected magnitude
The memory requirement of the above technique is still prohibitive as the number of contexts is unacceptably large. One way to get good estimates for the Golomb-Rice parameter with a smaller number of contexts is to adaptively compute, a scale factor s for each DCT block based on the sum of the actual magnitudes of the AC coefficients seen so far in the block and the sum of the corresponding expected magnitudes. The expected magnitude of the current AC coefficient can then be scaled by this factor s before computing the Golomb-Rice parameter k for encoding the coefficient. Using this scaling technique along with very few contexts was observed to give results better than those obtained by using significantly larger number of contexts. For example, the best results were obtained by using only dh and dv and t = 2, that is a total of 8 contexts. The disadvantage of the scaling technique, of course is the division operation needed to compute the scaling factor. It should be noted however, that a majority of AC coefficients would have an expected magnitude of zero, thereby obviating the need for this division operation, as they would be encoded using the runlength coding technique described in the next section.」(517頁右欄6行-518頁右欄31行)
(訳)
「3 AC係数のゴロム - ライス符号化
JPEG-LSでは、予測誤差は、ライスコードとしても知られている[4]ゴロム符号の特殊なケースを使用してエンコードされている[2]。パラメータmのゴロム符号化は、正の整数nを、単項でn DIV mのエンコードを行いこれに続いてバイナリでn mod mのエンコードを行うことにより符号化する。「m = 2^(k)」のとき符号化の手順は非常に簡単に実現しており、文献ではライスコーディングと呼ばれていますが、以下 [8] で私たちはそれらをゴロムライス符号化と呼びます。ゴロム・ライス符号化の効果的な利用の背後にある重要な要因は、所定のサンプルあるいはサンプルのブロックのために使われる符号化パラメータkの推定値です。ライスのアルゴリズムは、サンプルのブロックの各パラメータを使用してコードをしようと徹底的に試み、結果として最も短いコード長となる一つを選択する[4]。このパラメータはサイドインフォメーションとしてデコーダに送られます。しかし、JPEG-LSで符号化パラメータkは、ワインバーガーらによって提案された技術を用いて、各予測誤差のためにオンザフライで推定されます[8]。コーディングと推定手続きの簡単さにもかかわらず、達成された圧縮性能は、算術コーディングによって得られたものに驚くほど近い。その技術では、それぞれの予測誤差は、正の数にインターリーブ方式でマッピングされ、その後、パラメータm=2^(k)のゴロム - ライス符号化を用いて符号化される。・・・
さて、8×8のDCTブロックのAC係数がよくラプラス分布によってモデル化されていることを、何人かの研究者によって経験的に確立されている(例えば、[11]あるいは[5]参照)。したがって、適切なゴロム - ライス符号化パラメータを計算するために、我々は各AC係数の予測される大きさの良好な推定値を必要としています。JPEG-LSでは、予測誤差の予測される大きさの良好な推定値は、コンテキストの多くを使用することによって得られます。DCTブロック内のAC係数を符号化するためコンテキストを大量に使用すると、63の係数のそれぞれについてコンテキストの異なるセットを必要とするであろうから、潜在的に高価となり得ます。各AC係数の分布は、ラプラシアンであるが、この分布の分散は、DCTブロック内の係数の位置によって変化するためです。したがって、我々は、AC係数のそれぞれに別々のコンテキストを必要とするであろう。これはメモリの膨大な量を必要とするだけでなく、まばらなコンテキストの問題や高モデルコストのために効果がないであろう。よって課題は、DCTブロック内の本質的な構成を取得し、さらに、各コンテキスト内で推定手順を適合させることができる少ない数のコンテキストを設計することです。
特定のAC係数の分布は、その係数に使用されている量子化ステップサイズに依存します。したがって、明らかに、AC係数のエントロピー符号化は、使用されている特定の量子化テーブルに適合される必要があります。加えて、同じ方向のエッジを含むDCTブロックが同様の構造を有することが知られています。例えば、垂直方向(水平方向)のエッジを含むDCTブロックは、ブロックの最初の行(列)にそのエネルギーの大部分を持っています。現在のDCTブロック内のエッジの存在を検出するための一つの方法は、隣接するブロックのDC値の差を調べることです。それ故我々は、以下の計算をする。
dv = DCi,j - DCi-l,j
dl = DCi,j - DCi-1,j-l
dh = DCi,j - DCi,j-1
dr = DCi,j - DCi-l,j+l
i、jはブロックのインデックスである。DC量子化ステップサイズを掛けたこれらの差異は、その後4^(2)=16のコンテキストを与えて、2つのレベル(低高)に量子化することができます。加えて、現在のブロックのDC値は、16tのコンテキストを与える、tのレベルに量子化されます。JPEG-LSのように、各コンテキストの中で、63個のAC係数のそれぞれの平均の大きさを追跡します。これは、各コンテキストCの発生回数と、このコンテキスト内の大きさのAcの累積合計数Ncとを維持することによって行うことができます。この間、追加メモリの(63*16t+16t)分のワードを必要とします。AC係数を符号化するためのゴロム・ライスパラメータは、その後、(1)で与えられた手順により、JPEG-LSのように計算することができます。
3.1予想される大きさをスケーリング
コンテキストの数が許容できないほど大きいほど上述の技術のメモリ要件は依然として法外です。より少ない数のコンテキストで、ゴロム - ライスパラメータのための良い推定値を得るための一つの方法は、ブロック内にこれまでにみられたAC係数の実際の大きさの和と対応する予測される大きさの和とに基づいた各DCTブロックのスケールファクタのsを適応的に計算することである。現在のAC係数の予測される大きさは、その後、係数を符号化するためのゴロム・ライスパラメータkを計算する前に、このファクタsによりスケーリングすることができます。非常に少数のコンテキストと共にこのスケーリング技術を用いたことは、コンテキストのかなり大きな数を使用することによって得られるものよりも良好な結果を与えることが観察されました。例えば、最良の結果は、dhとdv及びt = 2のみを使用することによって得られ、それはトータルで8コンテキストを利用しただけでした。スケーリング技術の欠点は、もちろんスケーリング係数を計算するのに必要な除算です。しかしながら、AC係数の大部分は、ゼロの予測値を有することが予想され、このことにより上記除算の必要が不要となり、そして、次のセクションで説明されるランレングス符号化技術を使用して符号化されることに注目すべきです。」

(イ-3)刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平7-336235号公報(以下、刊行物3という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、集積回路に適した高密度で低消費電力かつ高速のデータ圧縮装置の量子化見積り回路に係り、特にデータ圧縮に際しデータの質の低下を抑制する対策に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、画像信号のディジタル化に伴い、画像信号等のデータを符号化して圧縮し、信号の高密度化を図ろうとするデータ圧縮技術が重要となってきている。
【0003】例えば画像処理の場合、直流成分は平均値なので他の変換係数と比べはるかに大きな振幅を有するために量子化歪みの影響を受けやすく、それを回避するためにはかなり細かく量子化をする必要がある。つまり、直流成分の量子化歪みはブロック全体のレベル変動となり、ブロック歪みとして目立つからである。一方、交流成分は比較的次数の低い成分に大きな振幅を有する傾向があり、高次の変換係数はゼロかそれに近い値を有することが多い。このため、量子化ステップを低次では細かく高次では粗くして、与えるビット数を減らして情報量の削減を図っている。また、複雑な画像は多少の変化が生じても目立たないが、単調な画像は少しの変化でも目立ってしまうので、各データに対する量子化レベルを均一にする必要はない。すなわち、必要な部分では量子化レベルを高くし、量子化レベルを低下させても差支えない部分では量子化レベルを低くすることで、画像データの質の維持と情報量の削減とを両立させることができる。
【0004】かかる観点から、DVC(デジタルビデオカセットレコーダ)の画像処理に使用されるデータ圧縮装置では、図12に示すように、直流成分は量子化せずそのまま記録するとともに、交流成分はエリア0?3の4つのエリアに分け、エリア内の成分の値に合わせて量子化を行う際のステップ幅を変えるようにしている。また、DVCにおけるデータ圧縮装置では、マクロブロックと5つのマクロブロックからなるマクロブロックスライスという概念を有し、5マクロブロック分をある共通の符号長に圧縮して詰め込む方式が一般的である。

(イ-4)刊行物4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平7-123413号公報(以下、刊行物4という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【請求項1】 画像データを直交変換し、量子化し、さらにエントロピー符号化して得られた符号データを含む圧縮画像データを伸長する方法であって、
(A)複数の画素ブロックに対する符号データと、前記複数の画素ブロックの先頭に位置する第1の画素ブロックに対する第1の係数コードと、任意の第2の画素ブロックに対する第2の係数コードとを含む圧縮画像データを準備する工程と、
(B)前記符号データをエントロピー復号化することによって、量子化された変換係数を生成するとともに、前記第1と第2の係数コードをエントロピー復号化することによって第1と第2の係数を生成する工程と、
(C)前記第1と第2の係数のそれぞれと、所定の基本量子化テーブルの基本量子化レベルとを乗ずることによって、第1と第2の量子化テーブルを作成する工程と、
(D)前記第1の画素ブロックに対する前記量子化された変換係数を前記第1の量子化テーブルで逆量子化するとともに、前記第2の画素ブロックに対する前記量子化された変換係数を前記第2の量子化テーブルで逆量子化することによって、逆量子化された変換係数を求める工程と、
(E)前記逆量子化された変換係数を逆直交変換することによって、伸長された画像データを求める工程と、
を備えることを特徴とする圧縮画像データの伸長方法。

【請求項8】 請求項1記載の圧縮画像データの伸長方法であって、
前記圧縮画像データは、さらに、同一の画像パターンを有する連続した複数の画素ブロックの個数を示す同一パターンブロックデータを含み、
さらに、前記工程(B)は、
前記同一パターンブロックデータで表わされた前記複数の画素ブロックに対する前記量子化された変換係数を作成する際に、前記変換係数の所定の成分を予め指定された値に設定するとともに、前記所定の成分以外の前記変換係数の成分の値をゼロに設定することによって作成する工程、
を有する圧縮画像データの伸長方法。

【請求項10】 請求項8記載の圧縮画像データの伸長方法であって、
前記工程(D)は、前記同一パターンブロックデータから復号化された前記変換係数については前記逆量子化を省略する工程、
を含む圧縮画像データの伸長方法。

【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、画像データを圧縮・伸長する方法およびそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図31は、従来の画像データの圧縮/伸長装置の構成を示すブロック図である。画像データ圧縮装置540は、直交変換部542において原画像データをM×N画素のブロック毎に直交変換した後、量子化部544において量子化を行ない、さらに、エントロピー符号化部546において符号化を行なって圧縮画像データを作成する。一方、画像データ伸長装置550は、まずエントロピー復号化部556において圧縮画像データを復号化し、逆量子化部554で逆量子化した後に、逆直交変換部552によって画像データを復元する。なお、量子化部544と逆量子化部554は同一の量子化テーブル562を使用し、また、エントロピー符号化部546とエントロピー復号化部556も同一の符号テーブル564を使用する。

【0046】図5は、変換係数F(u,v)の配列を示す説明図である。変換係数F(u,v)は画素ブロックPBと同じ8×8の配列である。左上端の変換係数F(0,0)はDC成分(またはDC係数)と呼ばれており、その他の変換係数はAC成分(またはAC係数)と呼ばれている。DC成分は、画素ブロックPBにおける画像データの平均値を示している。また、AC成分は、画素ブロックPB内における画像データの変化を示している。隣接する画素の画像データにはある程度の相関があるので、AC係数の中で低周波成分の値は比較的大きく、高周波成分の値は比較的小さい。また、高周波成分が画質に与える影響は比較的小さい。
【0047】図6は、画像データ圧縮装置100と画像データ伸長装置200の基本動作を示す説明図である。DCT部110は、図6(a)に示すDCT係数F(u,v)を作成する。
【0048】量子化テーブル作成部140は、次の数式2に示すように、基本量子化テーブルBQT(図6(c))と量子化レベル係数QCxとを乗ずることによって量子化テーブルQT(図6(d))を作成する。
【数2】・・・略
【0049】図6の例ではQCx=1なので、量子化テーブルQTは基本量子化テーブルBQTと同一である。
【0050】量子化部120は、DCT係数F(u,v)を量子化テーブルQTで線形量子化することによって、図6(b)に示す量子化されたDCT係数QF(u,v)を求める。線形量子化とは、除算を行なって、その除算結果を整数に丸める処理である。
【0051】ハフマン符号化部130は、このDCT係数QF(u,v)をハフマン符号化することによって圧縮画像データZZ(図6(e))を作成する。なお、ハフマン符号化の方法については更に後述する。圧縮画像データZZは、後述するように、基本量子化テーブルBQTを表わす第1のデータと、量子化レベル係数QCxと変換係数QF(u,v)を表わす第2のデータとを含んでいる。
【0052】圧縮画像データZZが画像データ伸長装置200に与えられると、ハフマン復号化部210が圧縮画像データZZを復号化してDCT係数QF(u,v)(図6(f))を求める。ハフマン符号化は可逆符号化なので、このDCT係数QF(u,v)は、画像データ圧縮装置100の量子化部120によって求められた量子化後のDCT係数QF(u,v)(図6(b))と同一である。なお、ハフマン復号化部210は、DCT係数QF(u,v)の他に、圧縮画像データZZに含まれている基本量子化テーブルBQT(図6(c))と量子化レベル係数QCxも復号化して逆量子化テーブル作成部250に与える。
【0053】逆量子化テーブル作成部250は、基本量子化テーブルBQTと量子化レベル係数QCxとを乗算することによって量子化テーブルQT(図6(d))を作成する。逆量子化部220は、この量子化テーブルQTとDCT係数QF(u,v)とを乗算し、図6(g)に示す復号されたDCT係数FF(u,v)を求める。

【0069】図17は、ハフマン符号化の一例を示す説明図である。図17(B)は、DC係数の符号化を示している。1つ前の画素ブロックにおけるDC係数の値を0と仮定すると、△DC=F(0,0)=12である。図11のカテゴリ化テーブルによれば△DC=12のカテゴリSSSSは4であり、識別データIDは「1100」である。また、図12のDC係数用ハフマン符号テーブルによれば、カテゴリSSSS=4のハフマン符号語HFDCは「 011」である。なお、ここではY信号用のハフマン符号テーブルを使用する。DC係数に対するハフマン符号(HF+ID)は、図17(B)に示すように「 0111100」となる。
【0070】図17(C)はAC係数の符号化を示している。まず、ジグザグスキャンによって、AC係数が一次元の配列に並べられる。この配列は、ゼロラン長NNNNと、ゼロでない値のカテゴリSSSS(図11参照)とに変換される。ゼロラン長NNNNとカテゴリSSSSの組み合わせは、図15および図16に示すAC係数用ハフマン符号テーブルによってハフマン符号語HFACに変換され、ゼロでないAC係数の識別データIDと組み合わされて、図17(C)に示すようにハフマン符号(HFAC+ID)が作成される。

【0075】ブロックデータ内の1つの画素ブロックに対する符号データは、図18(F)に示すように、DC係数の1つのハフマン符号データと、AC係数の複数のハフマン符号データとで構成されている。DC係数のハフマン符号データは、前述したように、カテゴリSSSSのハフマン符号語HFDCと識別データIDとで構成される(図18(G))。また、AC係数のハフマン符号データは、ゼロラン長NNNNとカテゴリSSSSとの組み合わせに対するハフマン符号語HFACと、識別データIDとで構成される(図18(H))。

【0119】先頭データが量子化レベル係数QCxのハフマン符号語である場合には、ステップS4において、この量子化レベル係数QCxと基本量子化テーブルBQTを乗ずることによって量子化テーブルQTを作成する。なお、この乗算の際に、前述した特徴、すなわち、(1)乗算結果が最大値以上の量子化レベルを最大値に設定すること、(2)DC係数は量子化しないこと、(3)量子化レベル係数QCxの値が0の時にはすべての量子化レベルを1に設定すること、が実現される。ステップS4において量子化テーブルQTが作成されると、ステップS3に戻る。

(イ-5)刊行物5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開昭63-45684号公報(以下、刊行物5という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(イ-5-1)
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は画像圧縮装置、特に画像をコード化、投影化または変換処理を施して情報量の保存を行いつつ見掛けのデータ量の圧縮を行う画像圧縮装置に関するものである。(公報1頁左下欄16行-右下欄1行)

(イ-5-2)
(実施例)
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
第1図は本発明の一実施例たる画像圧縮装置のブロック図である。本実施例装置は、画像メモリ1,第1の圧縮手段2,伸長手段3,差分手段4,第2の圧縮手段5,マルチプレクサ(MPX)6を有する。
画像メモリ1は原画像(被圧縮画像)を格納するものであり、第1の圧縮手段2はこの画像メモリ1内の原画像を非可逆的に圧縮するものである。この第1の圧縮手段2は、第2図にその詳細な構成を示すように、原画像データを取り込みコサイン変換、2次元フーリエ変換などを行う変換部2aと、この変換出力を取り込み語長の量子化を行う量子化部2bと、この量子化出力をコード化するコード化部2Cとを有して成る。Chung(Radiological Image Compression:Full flame bit allocation Technique Skihchung Lo,H.K.Huang,Radiology 1985:811?817)の方法によると、前記変換部2aにおける2次元コサイン変換は、
(式略)
で与えられる。また、量子化部2bにおける量子化には種々の方法が考えられるが、最も単純な方法として量子化ビット数を一律に小さくする方法を適用するとよい。また実用的には、各ワードの持つ情報量に応じてビットを割り当てる方法が使われる。
さらに、第1図において伸長手段3は、前記第1の圧縮手段2内の量子化部2bの出力を取り込み、非可逆的圧縮画像の伸長を行うものでおり、その伸長出力は差分手段4に送出されるようになっている。
この差分手段4は、伸長手段3による伸長画像と原画像との差分を得るものでおり、その差分出力は、後段に配置された第2の圧縮手段5に送出されるようになっている。
この第2の圧縮手段5は、前記差分手段4の差分出力を可逆的に圧縮するものであり、この第2の圧縮手段5による差分圧縮データと、前記第1の圧縮手段2内のコード化部2Cの出力データとが、マルチプレクサ(MPX)6を介することにより、本実施例装置の圧縮画像データとして外部装置に送出されるようになっている。外部装置としては例えば圧縮画像データを格納する記憶装置が挙げられる。(公報2頁右上欄11行-3頁左上欄1行)

(イ-6)刊行物6の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平4-101278号公報(以下、刊行物6という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(産業上の利用分野)
本発明は、多数の画像データを蓄積記憶しておいて必要に応じて読み出す画像ファイリング装置に関するものである。
(従来の技術)
画像データをファイリングしておく画像ファイリング装置は種々の分野で利用されている。たとえば病院等の医療機関においては、医療あるいは研究のために多くの医用画像が利用されている。この医用画像の大半は放射線画像であるが、最近ではその他にCT画像やMR画像も多く利用されつつある。
ところで、このような医用画像は、患者の傷病の変化を知るために保管しておく必要があり、また法律でも所定期間の保管が義務付けられているので、病院等においては保管する医用画像の枚数が日々増えてゆくことになる。従来この医用画像は、ハードコピーそのままの形態で保管されていたので、その保管スペースの確保、管理作業、検索作業は、各病院等にとって大きな負担になっていた。
ところが近年では、たとえば医用画像等の画像を画像データの形で記憶媒体に検索可能に記憶(ファイリング)する、いわゆる画像ファイリング装置が提案されている。この画像ファイリング装置を用いて医用画像を記憶媒体に記憶すれば、画像保管の上で省スペース、省力化が実現され、また画像の検索作業も容易かつ高速化される。
ところで、上述のような医用画像等を担持する画像データの量は、画像1枚分でも膨大なものであるので、通常各種のデータ圧縮処理を施してデータ量を削減した後記憶媒体に蓄積記憶される。
(発明が解決しようとする課題)
上記データ圧縮処理は可逆圧縮処理と非可逆圧縮処理とに大別される。
可逆圧縮処理は圧縮前の画像データを完全に復元することのできるデータ圧縮処理をいい、もとの画像の画質は保存されるが、データ量の削減に限界があり、一画像あたりのデータ量が比較的大きく、所定の記憶容量を有する記憶媒体に比較的少数の画像しか蓄積記憶できない、即ちファイリング適性に劣るという欠点を有する。一方非可逆圧縮処理は圧縮前の画像データを完全には復元すことのできないデータ圧縮処理をいい、データ量は比較的大幅に削減できるが、画質が劣化するという欠点を有する。したがって画像ファイリング装置を構成する際に、画像データを可逆圧縮処理して蓄積記憶する装置とするか非可逆圧縮処理して蓄積記憶する装置とするかが問題となる。
本発明は、上記事情に鑑み、良好な画質と良好なファイリング適性との両者を合わせもつ画像ファイリング装置を提供することを目的とするものである。
(課題を解決するための手段)
本発明の画像ファイリング装置は、
『オリジナル画像データに非可逆圧縮処理を施すことにより非可逆圧縮画像データを求める非可逆圧縮手段と、
前記非可逆圧縮画像データを伸張する伸張手段と、
互いに対応する各画素毎に前記オリジナル画像データと前記伸張された非可逆圧縮画像データとの差分を求めることにより差分画像データを求める差分演算手段と、
前記差分画像データに可逆圧縮処理を施すことにより可逆圧縮差分画像データを求める可逆圧縮手段と、
前記非可逆圧縮画像データを記憶しておく第一の記憶手段と、
前記可逆圧縮差分画像データを記憶しておく書き換え可能な第二の記憶手段とを備えたことを特徴とするものである。』(公報1頁右下欄2行-左下欄11行)
(『』の部分は、平成6年10月14日付け、補正掲載公報、補正の内容(2)による。)

(ウ)刊行物1に記載された発明
(ウ-1)
刊行物1の(イ-1-1)、(イ-1-2)の記載によれば、刊行物1には、画像処理に関して、デコーダによって受信された信号をイメージサンプルに復号することが開示されているといえる。

(ウ-2)
刊行物1の(イ-1-2)の記載によれば、「圧縮された信号は伝送チャンネル104で送信され、デコーダ106によって受信される」のであるから、デコーダは圧縮された信号を受信しているといえる。

(ウ-3)
刊行物1の(イ-1-3)-(イ-1-6)の記載によれば、PQRデータはブロックサイズ割り当てによって設定されるデータであり、上記ブロックサイズの割り当ては、16x16、8x8、4x4、のように様々なサイズが割り当てられることが開示されている。
上記ブロックは、画素のブロックであることは明らかである。
また、刊行物1の(イ-1-8)には、デコーダにはPQRデータが提供されることが記載されている。
以上のことから、刊行物1のデコーダは、様々なサイズの画素のブロック割り当てによって設定されるPQRデータを受信しているといえる。

(ウ-4)
刊行物1の(イ-1-8)の記載によれば、刊行物1のデコーダは、エンコーダ102から送信された圧縮されたイメージ信号を受信し、可変長デコーダ120、逆ジグザグ走査シリアライザ122、逆量子化器124、IDQT要素126、IDCT要素128で上記信号を順に処理している。
上記「圧縮されたイメージ信号」は、(ウ-2)の圧縮された信号と同じであることは明らかであるから、上記圧縮された信号を受信しているといえる。
上記圧縮された信号は、刊行物1の(イ-1-6)、(イ-1-7)の記載からDCTのDC係数、および、AC係数を含むことは明らかであるから、DCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号を受信している。
したがって、刊行物1のデコーダは、DCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号を受信し、可変長デコーダ120、逆ジグザグ走査シリアライザ122、逆量子化器124、IDQT要素126、IDCT要素128で上記信号を順に処理している。
(イ-1-8)によれば、可変長デコーダは、ランレングス値および非ゼロ値を復号するとあり、可変長デコーダには、上記DCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号が入力されている。
したがって、可変長デコーダは、受信したDCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号を入力して、ランレングス値および非ゼロ値を復号した信号を出力している。
上記可変長デコーダが出力する信号(ランレングス値および非ゼロ値を復号した信号)は、(イ-1-7)の記載も参酌すると、可変長コーダ118に入力される信号に対応していることは明らかであるから、ジグザグ走査された量子化係数でもある。
以上のことから、DCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号は、可変長デコーダに入力され、ランレングス値および非ゼロ値を復号した信号(ジグザグ走査された量子化係数)が出力されているといえる。
続いて、逆ジグザグ走査シリアライザは、(イ-1-7)の記載も参酌すると、ジグザグ走査シリアライザの逆変換処理を行っていることは明らかであり、したがって、逆ジグザグ走査シリアライザの出力は、量子化係数である。
そして、上記逆ジグザグ走査シリアライザの出力である量子化係数は、逆量子化器で逆量子化の処理が行われているから、逆量子化の出力は、(イ-1-6)の記載も参酌すれば、量子化器に入力される信号である、量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)である。
上記量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)は、IDQT要素、IDCT要素に入力され、(イ-1-8)の記載によれば画素データのブロックを生成するための係数を逆変換している。そして、IDCT要素の出力は、デコーダの出力であって、(イ-1-2)の記載によれば、表示されるイメージサンプルである。
以上まとめると、デコーダ106として、以下の構成が開示されている。
「DCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号を、可変長デコーダに入力し、ランレングス値および非ゼロ値を復号した信号(ジグザグ走査された量子化係数)を出力し、
ジグザグ走査された量子化係数を、逆ジグザグ走査シリアライザと逆量子化器で処理することで、量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)を出力し、
量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)を、IDQT要素、IDCT要素に入力し、逆変換処理して、表示されるイメージサンプルを出力する」の各処理を行うデコーダ106。

(ウ-5)まとめ
以上(ウ-1)ないし(ウ-4)の検討によれば、刊行物1には、上記(ウ-1)ないし(ウ-4)にて検討した、デコーダが、「復号する」、「受信し」、「出力する」等の処理を行う方法の発明が開示されているといえるから、以下の方法の発明(以下、刊行物1発明という。)が開示されている。((a)ないし(f)は当審において付与した。以下「構成要件(a)」等として引用する。)

(a)画像処理に関して、デコーダによって受信された信号をイメージサンプルに復号する方法であって、
(b)圧縮された信号を受信し、
(c)様々なサイズの画素のブロック割り当てによって設定されるPQRデータを受信し、
(d)DCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号を、可変長デコーダに入力し、ランレングス値および非ゼロ値を復号した信号(ジグザグ走査された量子化係数)を出力し、
(e)ジグザグ走査された量子化係数を、逆ジグザグ走査シリアライザと逆量子化器で処理することで、量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)を出力し、
(f)量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)を、IDQT要素、IDCT要素に入力し、逆変換処理して、表示されるイメージサンプルを出力する、方法。

(エ)対比
補正後発明と刊行物1発明とを対比する。

(エ-1)補正後発明の構成要件(A)と刊行物1発明の構成要件(a)とを対比する。
刊行物1発明の「デコーダによって受信された信号をイメージサンプルに復号」するのであるから、受信された信号は、イメージ(画像)を表すデータの信号であって、上記画像を表す信号は、もとの画像(オリジナル画像)を符号化した信号であることは技術常識である。
したがって、刊行物1発明の「画像処理に関して、デコーダによって受信された信号をイメージサンプルに復号する方法」は、補正後発明の「オリジナル画像を表すデータを復号化する方法」と相違ない。

(エ-2)補正後発明の構成要件(B)と刊行物1発明の構成要件(b)とを対比する。
刊行物1発明の「圧縮された信号を受信し」について検討するに、刊行物1発明の圧縮は、その全体の記載からみて、DCT変換を行って、DC係数とAC係数とを用いて画像を表すデータとする変換処理を含むが、上記変換処理により、通常、オリジナル画像に対して損失が生じることは技術常識であるから、上記圧縮された信号を受信していることは、損失圧縮データを受信していることであるといえる。
したがって、刊行物1発明は補正後発明の「損失圧縮データを受信すること」の構成を有している。

(エ-3)補正後発明の構成要件(C)と刊行物1発明の構成要件(c)とを対比する。
刊行物1発明のPQRデータは、様々なサイズの画素のブロック割り当てによって設定されるデータであるから、上記PQRデータによって、様々なサイズを有する画素ブロックを定めているといえるから、刊行物1発明は、補正後発明の「様々なサイズを有する画素ブロックを定めるカッドツリー(PQR)データを受信すること」を有している。

(エ-4)補正後発明の構成要件(D)と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明は「前記損失圧縮データをDC係数とAC係数とに分離する」構成を有していない。
したがって、刊行物1発明は、補正後発明の構成要件(D)を有していない。

(エ-5)補正後発明の構成要件(E)と刊行物1発明の構成要件(d)とを対比する。
刊行物1発明では、「DCTのDC係数、および、AC係数を含む上記圧縮された信号を、可変長デコーダに入力し、ランレングス値および非ゼロ値を復号した信号(ジグザグ走査された量子化係数)を出力し」ているから、可変長デコーダは、DC係数とAC係数とを復号化し、上記復号化されたDC係数とAC係数の値を出力しているから、DC値とAC値とをそれぞれ決定している。
したがって、刊行物1発明は、「前記DC係数と前記AC係数とを復号化し、DC値とAC値とをそれぞれ決定する」構成を有している点で、補正後発明と相違がない。
もっとも、補正後発明では、「前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化し、DC値とAC値とをそれぞれ決定することと、ここで、前記AC係数を復号化することは、前記AC係数を復号化するためにゴロム復号化を用いるゴロム復号化器を用いることを備え」ているのに対し、刊行物1発明では、「前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化」しておらず、また、「前記AC係数を復号化することは、前記AC係数を復号化するためにゴロム復号化を用いるゴロム復号化器を用い」ていない点で相違する。

(エ-6)補正後発明の構成要件(F)と刊行物1発明の構成要件(e)とを対比する。
刊行物1発明は、「ジグザグ走査された量子化係数を、逆ジグザグ走査シリアライザと逆量子化器で処理することで、量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)を出力」している。
「ジグザグ走査された量子化係数」は、上記(エ-5)で検討したように、DC値とAC値とを含んでいるから、逆ジグザグ走査シリアライザと逆量子化器で行われる処理は、DC値とAC値とを共に逆量子化する構成を有している。
したがって、刊行物1発明は、「前記AC値を逆量子化すること」を有している点で補正後発明と相違がない。
もっとも、補正後発明では、「前記DC値を逆量子化することなく前記AC値を逆量子化すること」の構成であるのに対し、刊行物1発明では、DC値も逆量子化しているから「前記DC値を逆量子化することなく」の構成を有していない点で補正後発明と相違している。

(エ-7)補正後発明の構成要件(G)と刊行物1発明の構成要件(f)とを対比する。
刊行物1発明は、「量子化前の変換係数(DC係数、および、AC係数を含む。)を、IDQT要素、IDCT要素に入力し、逆変換処理して、表示されるイメージサンプルを出力」している。
上記「量子化前の変換係数」は(エ-6)で検討したように、DC値とAC値とを共に逆量子化した値であるから、DC値とAC値とを共に逆量子化した値を逆変換処理している。
刊行物1発明において、デコーダが受信しているのは、「損失圧縮データ」であることは、上記(エ-2)のとおりであり、したがって、当該損失(を有する)データを逆変換処理して得られる表示されるイメージサンプルは、損失を有するイメージサンプルであるといえ、また、上記表示されるイメージサンプルは、エンコーダで処理される前のもとの(オリジナル)画像であるから、表示されるイメージサンプルは、損失のあるオリジナル画像であって、これをオリジナル画像に類似した画像と称することができるのは明らかである。
そして、もとの画像(に類似する画像)を表示することを再生ということ、および、圧縮されたデータを逆変換して表示に用いられるデータを生成することを解凍と称することは技術常識であるから、刊行物1発明は、「DC値と前記逆量子化されたAC値とを逆変換して、前記オリジナル画像に類似した画像を再生するために使用可能な損失解凍データを生成すること」を有している。
もっとも、補正後発明のDC値は「前記DC値」すなわち、逆量子化されていないDC値であるのに対し、刊行物1発明のDC値は、逆量子化されたDC値である点で相違する。

(エ-8)補正後発明の構成要件(H)ないし構成要件(K)と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明は、「無損失」に関する構成を有していないから、補正後発明の構成要件(H)ないし構成要件(K)を有していない。

(エ-9)まとめ(一致点・相違点)
以上まとめると、補正後発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し相違点で相違する。

(一致点)
オリジナル画像を表すデータを復号化する方法であって、
損失圧縮データを受信することと、
様々なサイズを有する画素ブロックを定めるカッドツリー(PQR)データを受信することと、
DC係数とAC係数とを復号化し、DC値とAC値とをそれぞれ決定することと、
前記AC値を逆量子化することと、
DC値と前記逆量子化されたAC値とを逆変換して、前記オリジナル画像に類似した画像を再生するために使用可能な損失解凍データを生成する、方法。

(相違点)
相違点1
刊行物1発明は、「前記損失圧縮データをDC係数とAC係数とに分離すること」の構成を有していない点。

相違点2
補正後発明では、「前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化し」ているのに対し、刊行物1発明では、「前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化し」ていない点。

相違点3
補正後発明は「ここで、前記AC係数を復号化することは、前記AC係数を復号化するためにゴロム復号化を用いるゴロム復号化器を用いることを備え」ているのに対し、刊行物1発明は当該構成を備えていない点。

相違点4
補正後発明では「前記DC値を逆量子化することなく前記AC値を逆量子化」しているのに対し、刊行物1発明ではDC値も逆量子化している点。

相違点5
補正後発明は、
「残差圧縮データを受信することと、ここで、前記残差圧縮データは、前記オリジナル画像と前記損失圧縮データの解凍データとの差分を取得することと、前記差分を無損失に符号化することとによって、取得される、
前記残差圧縮データを復号化して、残差解凍データを生成することと、
前記損失解凍データを前記残差解凍データと結合させて、無損失データを生成することとを備え、
前記無損失データを用いて再生される画像は、前記オリジナル画像に類似する」
の構成を有しているのに対し、刊行物1発明は、当該構成を有していない点。

(オ)判断
(オ-1)相違点1、相違点2、相違点3について
相違点1、相違点2は、本願発明では、前記(受信した)損失圧縮データをDC係数とAC係数とに分離し、これらの係数データを別々に復号化する構成であるのに対し、刊行物1発明では、上記DC係数とAC係数とを分離せずに復号化するという相違点であるが、DCT変換して得られたDC係数とAC係数とをそれぞれ別々に符号化・復号化することは、例えば、上記刊行物4の【0069】、【0070】、【0075】にあるとおり本願出願前普通に行われたことであるから、当該構成を採用することは、刊行物1発明をみれば、当業者が普通に想起しえたことである。
相違点3は、上記DCT変換したDC係数とAC係数とをそれぞれ別々に復号化する際に、特にAC係数についてゴロム復号化器を用いる構成を特定しているが、AC係数についてゴロム復号化器を用いて復号することは、上記刊行物2に記載されるとおり、当該技術分野において公知の構成であるから、当該構成を採用することは当業者が容易になしえたことである。

(オ-2)相違点4について
DCT変換したDC値とAC値とを符号化・復号化する際に、DC値については量子化しないことは、上記刊行物3、刊行物4にあるとおり、当該技術分野においてはよく知られた構成であり、当該構成を採用することに格別な点はない。

(オ-3)相違点5について
相違点5は、刊行物1発明の復号化が、損失圧縮(非可逆圧縮)に係る発明であるのに対し、補正後発明は、無損失圧縮(可逆圧縮)に係る発明である点で相違するといえる。
しかし、オリジナル画像を非可逆圧縮した信号を復号化して得られた画像とオリジナル画像との差分データを可逆圧縮した信号と、上記非可逆圧縮した信号とを復号化側で受信し、上記二つの受信した信号を共に解凍してオリジナル画像により近い画像を得ることは、上記刊行物5、刊行物6に記載されるとおりであり、刊行物1発明の非可逆圧縮の構成を利用して、さらに品質のよい可逆圧縮の復号化画像を得ようとして、相違点5の構成を採用することは当業者が容易になしえたことである。

(カ)効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

(キ)まとめ(独立特許要件)
以上によれば、補正後発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成26年9月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし26に係る発明は、平成25年12月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年12月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
オリジナル画像を表すデータを復号化する方法であって、
損失圧縮データを受信することと、
様々なサイズを有する画素ブロックを定めるカッドツリー(PQR)データを受信することと、
前記損失圧縮データをDC係数とAC係数とに分離することと、
前記DC係数と前記AC係数とを別々に復号化し、DC値とAC値とをそれぞれ決定することと、ここで、前記AC係数を復号化することは、前記AC係数を復号化するためにゴロム復号化を用いるゴロム復号化器を用いることを備え、
前記DC値を逆量子化することなく前記AC値を逆量子化することと、
前記DC値と前記逆量子化されたAC値とを逆変換して、前記オリジナル画像に類似した画像を再生するために使用可能な損失解凍データを生成することと、
残差圧縮データを受信することと、
前記残差圧縮データを復号化して、残差解凍データを生成することと、
前記損失解凍データを前記残差解凍データと結合させて、無損失データを生成することとを備え、
前記無損失データを用いて再生される画像は、前記オリジナル画像に類似する、方法。

2.刊行物1の記載
審査官が拒絶の査定で引用した刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(イ)(イ-1)に示したとおりの事項が記載されている。

3.刊行物1記載の発明
上記刊行物1には、上記第2 2.(2-3)(ウ)に示した、刊行物1発明が記載されている。

4.対比・判断
本願発明は、前記第2 2.(2-3)(ア)で認定した補正後発明から、上記第2 2.(2-2)で検討した付加して限定する構成を省いたものであって、補正後発明と刊行物1発明との対比でいうと、その相違点5に係る限定事項の一部が省かれたものであるといえる。
そうすると、本願発明の特定事項の全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正後発明が上記第2 2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし26に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-13 
結審通知日 2015-10-20 
審決日 2015-11-04 
出願番号 特願2012-139599(P2012-139599)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 渡辺 努
渡邊 聡
発明の名称 ディジタル画像および音声データを無損失に復号化するためのシステムおよび方法  
代理人 峰 隆司  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 井関 守三  
代理人 野河 信久  
代理人 堀内 美保子  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  

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