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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1312533
審判番号 不服2014-20356  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-08 
確定日 2016-03-16 
事件の表示 特願2012-238457「有機EL表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 20985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年 3月 5日に出願した特願2009-51961号(以下「原出願」という。)の一部を平成24年10月30日に新たな特許出願としたものであって、平成25年 7月12日付けで拒絶理由が通知され、同年11月 7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年 6月 6日付けで拒絶査定がなされたところ、同年10月 8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
平成26年10月 8日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成25年11月 7日に提出された手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲を補正しようとするものであって、そのうち、請求項1に係る補正については次のとおりである(下線は補正に関連する箇所を示し、当審で付加したものである。)。
(1)本件補正前の請求項1ないし3、及び7
「【請求項1】
透明電極及び対向電極と、前記透明電極及び前記対向電極の間に発光層を含む有機化合物層とを有する有機EL素子と、
前記発光層から放出された光の光路上に配置された微粒子含有層と、平坦化層とを備える有機EL表示装置において、
前記微粒子含有層は、有機樹脂材料と、第1の微粒子と、前記第1の微粒子よりも重量平均粒子径が大きい第2の微粒子とを含み、かつ
前記微粒子含有層が微粒子分散剤を含み、
前記第1の微粒子が添加された前記有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、前記有機化合物層の平均屈折率n_(2)とが、|n_(1)-n_(2)|<0.25、を満たし、
前記第1の微粒子が添加された前記有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、前記第2の微粒子の屈折率n_(3)とが、n_(3)-n_(1)>0.2、を満たし、
前記微粒子含有層は前記平坦化層に接して配置されていることを特徴とする有機EL表示装置。」

「【請求項2】
第2の微粒子が、無機微粒子である請求項1に記載の有機EL表示装置。」

「【請求項3】
無機微粒子が、TiO_(2)、ZnO、及びZrO_(2)から選択された少なくとも1種を含む請求項2に記載の有機EL表示装置。」

「【請求項7】
第1の微粒子の重量平均粒子径が50nm未満であり、第2の微粒子の重量平均粒子径が50nm以上5μm以下である請求項1から6のいずれかに記載の有機EL表示装置。」

(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
透明電極及び対向電極と、前記透明電極及び前記対向電極の間に発光層を含む有機化合物層とを有する有機EL素子と、
前記発光層から放出された光の光路上に配置された微粒子含有層と、平坦化層とを備える有機EL表示装置において、
前記微粒子含有層は、有機樹脂材料と、第1の微粒子と、前記第1の微粒子よりも重量平均粒子径が大きい第2の微粒子とを含み、かつ
前記微粒子含有層が微粒子分散剤を含み、
前記第1の微粒子の重量平均粒子径が50nm未満であり、前記第2の微粒子の重量平均粒子径が50nm以上5μm以下であり、
前記第2の微粒子が、TiO_(2)、ZnO、及びZrO_(2)から選択された少なくとも1種を含む無機微粒子であり、
前記第1の微粒子が添加された前記有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、前記有機化合物層の平均屈折率n_(2)とが、|n_(1)-n_(2)|<0.25、を満たし、
前記第1の微粒子が添加された前記有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、前記第2の微粒子の屈折率n_(3)とが、n_(3)-n_(1)≧0.83、を満たし、
前記微粒子含有層は前記平坦化層に接して配置されていることを特徴とする有機EL表示装置。」

2 新規事項の追加の有無及び補正の目的について
(1)補正事項
請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項からなるものである。
ア 請求項1ないし3を削除するとともに、請求項3の記載を引用する請求項7を独立形式の記載に改めて新たな請求項1とする。

イ 本件補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「第1の微粒子が添加された有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、第2の微粒子の屈折率n_(3)と」の関係について、本件補正前の請求項1における「n_(3)-n_(1)>0.2」であるとの特定を「n_(3)-n_(1)≧0.83」へと限定する。

(2)新規事項の追加の有無
ア 上記(1)アの補正事項は、当該補正事項による補正の前後で、その発明特定事項に実質的な違いはないから、新規事項を追加するものではない。

イ 上記(1)イにおける補正事項については、本願の当初明細書の【0121】?【0151】に記載された実施例において、実施例1?8の有機EL表示装置における「n_(3)-n_(1)」は、0.83か或いはそれよりも大きな値となっていることから、当該補正事項によって限定された事項は、本願の当初明細書に記載されている技術的事項であると認められる。

ウ したがって、請求項1についての本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされた補正であるから、特許法17条の2第3項の規定に適合する。

(3)補正の目的
上記(1)アにおける補正事項は、特許法17条の2第5項1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し、上記(1)イにおける補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された第1の微粒子が添加された有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、第2の微粒子の屈折率n_(3)との関係である「n_(3)-n_(1)」という発明特定事項を限定するものであって、本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件を満たすか否かの検討
請求項1に係る本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含んでいるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(2)に記載のとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、特許法44条2項の規定により本願が出願されたものとみなされる原出願の出願の時より前(以下「本願出願前」という。)に日本国内において頒布された刊行物である、特開2005-190931号公報(以下「引用例」という。)には、「エレクトロルミネッセンス素子とこれを用いた面光源および表示装置」(発明の名称)に関して、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項1】
陽極電極と陰極電極とからなる一対の電極間に発光層を有するエレクトロルミネッセンス素子において、樹脂中に平均粒子径が1桁以上異なる少なくとも2種の微粒子を分散させた拡散層が光取り出し面側の電極(透明電極)に隣接して設けられていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
拡散層において、少なくとも2種の微粒子は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である超微粒子と、平均粒子径が0.1μmを超え50μm以下である微粒子とからなる請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
拡散層において、樹脂の屈折率をn_(0)、樹脂中に分散させた平均粒子径が1nm以上100nm以下である超微粒子の屈折率をn_(1)、樹脂中に分散させた平均粒子径が0.1μmを超え50μm以下である微粒子の屈折率をn_(2)とし、かつ樹脂と上記超微粒子との合計量中の各体積分率をqおよび1-qとしたとき、上記超微粒子の屈折率がn_(1)≧1.9で、かつ式(1):|〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕-n_(2)|≧0.05、の関係を満たす請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
・・(略)・・
【請求項6】
式(2):〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕≧1.65の関係を満たす請求項3?5のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子。
・・(略)・・
【請求項10】
請求項1?8のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光効率、とくに発光光の外部取り出し効率にすぐれたエレクトロルミネッセンス(以下、ELという)素子に関するものであり、またこのEL素子を用いた高効率な面光源および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陽極電極と陰極電極とからなる一対の電極間に発光層を設け、電気的に発光を得るEL素子は、ディスプレイ表示装置としての利用はもちろんのこと、平面型照明、光ファイバー用光源、液晶ディスプレイ用バックライト、液晶プロジェクタ用バックライトなどの各種光源としても、盛んに研究開発が進んでいる。

とくに、有機EL素子は、発光効率、低電圧駆動、軽量、低コストという点ですぐれており、近年、非常に注目を浴びている。これらの光源用途において、最大の関心事は発光効率の向上であり、蛍光灯に匹敵する発光効率を目標として、素子構成・材料、駆動方法、製造方法などの改良が検討されている。
【0003】
しかし、EL素子のように発光層自体から発光を取り出す固体内発光素子においては、発光層の屈折率と出射媒質との屈折率により決まる臨界角以上の発光光は全反射し、内部に閉じ込められ、導波光として失われる。

古典論的な屈折の法則(スネルの法則)による計算では、発光層の屈折率をnとすると、発生した光が外部に取り出される光取り出し効率ηはη=1/2n^(2)で近似される。仮に発光層の屈折率が1.7である場合、η≒17%程度となり、80%以上の光は導波光として素子側面方向の損失光として失われていることになる。
【0004】
また、有機EL素子では、電極から注入された電子・正孔の再結合により生成する励起子のうち、発光に寄与するのは1重項励起子のみであり、その生成確率は1/4である。すなわち、これだけを考慮しても、効率は5%以下と極めて低いものとなってしまう。しかし、近年、発光層自体の発光効率を上げる方法として、3重項励起子からの燐光からも発光が得られる発光材料の開発(特開2001-313178号公報)も進んでおり、量子効率が飛躍的に向上できる可能性も見い出されている。

しかし、量子効率が仮に向上しても、取り出し効率はそれに乗ずる形で発光効率を低下させてしまう。言い換えると、取り出し効率が改善されれば、相乗効果として飛躍的に効率を向上せしめる余地があることになる。
【0005】
このように導波光を外部に取り出すには、発光層と出射面との間に、反射・屈折角を乱れさせる領域を形成し、スネルの法則を崩し、本来導波光として全反射される光の伝送角を変化させてやるか、発光自体に集光性を持たせる必要がある。しかしながら、これら導波光をすべて外部に出射させうるような領域を形成することは容易ではなく、このため、できるだけ多くの導波光を取り出しうる提案が多数なされている。
【0006】
たとえば、取り出し効率を改善する方法として、基板自体に集光性を持たせることで取り出し効率を向上させる方法(特開昭63-314795号公報)や、発光層をディスコチック液晶で形成し、発光光自体の正面指向性を向上させる方法(特開平10-321371号公報)、素子自体に立体構造や傾斜面、回折格子などを形成する方法(特開平11-214162号、特開平11-214163号、特開平11-283751号などの各公報)が提案されている。しかし、これらの提案では、複雑な構成になってしまったり、発光層自体の発光効率が低いなどの問題がある。
【0007】
また、比較的簡単な方法としては、光拡散層を形成し、光の屈折角を変化させ全反射条件にある光を減らす方法が挙げられる。たとえば、内部と表面で屈折率の異なる屈折率分布構造を有する粒子を透明基材中に分散させた拡散板(特許文献1参照)、透光性基体上に単粒子層を並べた拡散部材(特許文献2参照)、発光層と同じ材質中に散乱粒子を分散させる方法(特許文献3参照)など、数多くの提案がなされている。
【0008】
これらの提案は、散乱粒子の特性、分散マトリックスとの屈折率差、粒子の分散形態、散乱層の形成場所などの特徴を見い出したものである。

また、液晶表示装置に使用される光散乱膜の拡散機能を向上させる方法(特許文献4参照)として、樹脂中に無機粉体を分散させて屈折率差を大きくして、拡散機能を向上させる方法があるが、EL素子の素子内部に閉じ込められ、本来導波光として失われる損失光を取り出し、発光効率を向上させるといった概念は記載されていない。
【0009】
ところで、EL素子のように、発光層を含む有機薄膜層または無機薄膜層を一対の電極で挟持した構成の発光素子では、その光取り出し面側の電極には透明電極が用いられる。透明電極には酸化インジウムに酸化錫をドープした酸化インジウム錫(ITO)が、そのすぐれた透明性と電気伝導性から、広く用いられている。

ITOの屈折率は、その組成、成膜方法、結晶構造などにより変化するが、およそ1.9?2.0であり、非常に高屈折率な材料である。一方、EL素子の基板として用いられるガラスの屈折率はおよそ1.5である。また、後述する図6に示す有機EL素子では、有機EL層の屈折率はおよそ1.7であり、空気層の屈折率を1と仮定すると、発光光が外部の観測者側に出射されるまでの様子は、以下のようである。
【0010】
すなわち、発光層にて発生した発光光は、全空間に放射される。発光層からITOに光が伝送するときは、発光層よりITO層の屈折率のほうが高いため、全反射は起こらず、表面反射する光を除いたすべての光はITO層に入る。

しかし、ITO層の屈折率は、ガラス基板の屈折率より高いため、臨界角が存在する。このため、臨界角以上の伝送角を持つ光は、ITOとガラス基板の界面で全反射されて、素子内部に閉じ込められる。さらに、ガラス基板に入った光は、ガラスと空気の界面で全反射され、素子内部に閉じ込められる。これらの割合を、立体角を考慮して計算すると、外部に出射できる光が約20%、ガラス/空気界面で反射される光が約35%、ITO/ガラス界面で反射される光が約45%となる。
【0011】
したがって、このような有機EL素子の構成において、仮にガラス基板上に光拡散層などを形成したとしても、これにより外部に取り出すことのできる光は、ガラス/空気界面で反射される光のみであり、ITO/ガラス界面で反射される光に対しては、なんら効果を発揮させることができない。しかも、前述したとおり、古典論的な計算では、発光光の約45%はその界面で失われているのである。

この問題を解決するには、ガラス基板として、発光層と同等かそれ以上の高屈折率ガラスを用い、その面上に光拡散層などを形成したり、ITOとガラス基板の間に高屈折率材料からなる光拡散層を形成したり、光の波長より十分に厚い高屈折率層を挿入し、その面上に前記光拡散層を形成するなどの方法が考えられる。
【0012】
しかし、高屈折率ガラスは、一般に高コストであるという問題がある。また、高屈折材料からなる光拡散層やマイクロレンズ構造などを作製するためには、加工性にすぐれた樹脂材料が求められるが、一般的な樹脂材料の屈折率は高いものでも1.65程度である。特殊なもので1.7程度のものがあるが、非常に高コストであるという問題がある。

また、1μm以下の薄い高屈折率層を真空蒸着法、スパッタリング法、ゾル-ゲル法などの薄膜成膜方法で形成するのは比較的容易であるが、上記のように光の波長より十分に厚い高屈折率層を形成するのは、膜の成膜速度や内部応力によるクラックの発生などの問題により極めて困難であり、安価で簡単に塗布できるような材料が必要であった。
【0013】
以上のように、EL素子の導波光、とくに透明電極とガラス基板との界面で全反射される導波光に注目し、それらを効率良く取り出し、EL素子の発光効率を改善しうるような提案はなされておらず、しかもそれらの用途に用いうる高屈折率材料、とくに加工性に富んだ樹脂材料は、多く見い出されていないのが現状であった。
・・(略)・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような事情に照らして、EL素子の内部に導波光として閉じ込められていた損失光を効率良く取り出し、外部取り出し効率にすぐれたEL素子を提供することを目的としている。また、本発明は、このようなEL素子を用いた高効率な面光源および表示装置を提供することを目的としている。」

ウ 「【0023】
本発明は、この問題を解決するため、屈折率の高い透明電極に隣接して平均粒子径が1桁以上異なる少なくとも2種の微粒子を分散させた拡散層を設けるようにしたもので、平均粒子径が極端に小さい超微粒子により拡散層の屈折率を上げることができるとともに、平均粒子径が上記よりも大きな微粒子により光を拡散させることができる。その結果として、ガラス基板/透明電極の界面で全反射される光をも外部に導くことができ、全体の約80%に相当する光を対象として、効果を発揮できるようになる。」

エ 「【0024】
図1は、上記本発明の最も基本的な実施形態を示したものである。
すなわち、前記の図6の場合と同様に、ガラス基板からなる支持基板6に支持された、ITOなどの透明電極からなる陽極電極2と、反射性電極である陰極電極3とからなる一対の電極を有するとともに、両電極2,3間に、電子輸送性発光層4および正孔輸送層5からなる有機EL層が設けられた有機EL素子において、樹脂中に平均粒子径が1桁以上異なる少なくとも2種の微粒子を分散させた拡散層1が、光取り出し面側の電極(透明電極)である陽極電極2に隣接して設けられている。

とくに、上記の拡散層1において、少なくとも2種の微粒子は、平均粒子径が1nm以上100nm以下である超微粒子と、平均粒子径が0.1μmを超え50μm以下である微粒子とからなる構成されているのが望ましい。」

オ 「【0029】
・・(略)・・
また、ITOなどからなる透明電極と拡散層との間に、表面平滑性、密着性、残存不純物の拡散防止、ガスバリア性の向上などを目的に別の層を形成してもよい。ただし、この場合、挿入する層の屈折率は拡散層のそれに近いことが好ましい。」

カ 「【0035】
このような超微粒子の粒子径は、可視光の波長より十分小さく、可視光域で光散乱が生じない大きさ以下であることが肝要であり、その平均粒子径が1nm以上100nm以下であるのが好ましい。完全に光散乱を起こさせないという意味では、1nm以上50nm以下であるのがより好ましい。また、粒子形状は、真球状であっても、そうでなくても、可視光域で散乱が起こらなければ、とくに問題なく、使用できる。

また、このような超微粒子の製造方法は全く任意であり、とくに制限されるものではない。超微粒子の分散性を改善するため、なんらかの表面処理や表面修飾がなされていてもよく、とくに限定されない。
【0036】
・・(略)・・
本発明における拡散層の屈折率としては、発光層と同等かそれ以上が好ましく、屈折率として1.65以上が好ましく、とくに好ましくは1.7以上であるのがよい。つまり、樹脂と上記超微粒子との合計量中の各体積分率をqおよび1-qとしたとき、式(2):〔n_(0) ・q+n_(1) ・(1-q)〕≧1.65(とくに好ましくは≧1.7)の関係を満たしているのが、望ましい。」

キ 「【0037】
本発明においては、拡散層中に、上記の超微粒子に比べ、平均粒子径が1桁以上大きい微粒子を分散させて、光散乱を生じさせるための拡散部位を形成する。この微粒子は、平均粒子径が0.1μmを超え50μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.3μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上10μm以下である。このような微粒子の屈折率n_(2)は、式(1):|〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕-n_(2)|≧0.05、の関係を満たしているのが望ましい。

このような微粒子には、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリコーン粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、プラスチック粒子、液晶粒子、気泡などを分散分布されたものなどが挙げられ、これらを1種または2種以上併用してもよい。また、屈折率を上げるための前記超微粒子を、分散方法や添加量を調整して超微粒子の一部を凝集させて粒子径を大きくすることで、光を拡散させるための微粒子として利用してもよい。」

ク 「【0046】
<拡散層の作製>
ポリエーテルスルホン(n_(0)=1.65)100部に、平均粒子径が18nmの酸化チタン超微粒子(n_(1)=2.7)を54部(ポリエーテルスルホンとの合計量中の体積分率=0.15)、溶媒(N-メチル-2-ピロリドン)を介して混合し、さらに、超音波ホモジナイザーおよびハイブリッドミキサーを用いて、分散液を調製した。」

ケ 上記アないしクから、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「ガラス基板からなる支持基板に支持された、ITOなどの透明電極からなる陽極電極と、反射性電極である陰極電極とからなる一対の電極を有するとともに、両電極間に、電子輸送性発光層および正孔輸送層からなる有機エレクトロルミネッセンス層が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する表示装置において、樹脂中に平均粒子径が1桁以上異なる少なくとも2種の微粒子を分散させた拡散層が光取り出し面側の電極(透明電極)に隣接して設けられており、
拡散層において、少なくとも2種の微粒子は、平均粒子径が極端に小さい超微粒子により拡散層の屈折率を上げるものであって、その平均粒子径が1nm以上50nm以下である超微粒子と、平均粒子径が上記よりも大きな微粒子により光を拡散させるものであって、その平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である微粒子とからなり、
拡散層において、樹脂の屈折率をn_(0)、樹脂中に分散させた平均粒子径が1nm以上50nm以下である超微粒子の屈折率をn_(1)、樹脂中に分散させた平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である微粒子の屈折率をn_(2)とし、かつ樹脂と上記超微粒子との合計量中の各体積分率をqおよび1-qとしたとき、上記超微粒子の屈折率がn_(1)≧1.9で、かつ式(1):|〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕-n_(2)|≧0.05、の関係を満たし、
式(2):〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕≧1.65の関係を満たし、
透明電極と拡散層との間に、表面平滑性、密着性、残存不純物の拡散防止、ガスバリア性の向上などを目的に別の層を形成してもよく、
超微粒子の分散性を改善するため、なんらかの表面処理や表面修飾がなされていてもよく
拡散層の屈折率としては、発光層と同等かそれ以上であり、
このような微粒子には、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリコーン粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、プラスチック粒子、液晶粒子、気泡などを分散分布されたものなどが挙げられる、
有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する表示装置。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「ITOなどの透明電極からなる陽極電極」、「陽極電極と」「一対の電極」となる「反射性電極である陰極電極」、「電子輸送性発光層および正孔輸送層からなる有機エレクトロルミネッセンス層」、「有機エレクトロルミネッセンス素子」、「有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する表示装置」は、それぞれ本願補正発明における「透明電極」、「対向電極」、「発光層を含む有機化合物層」、「有機EL素子」、「有機EL表示装置」に相当する。

イ 引用発明における「ITOなどの透明電極からなる陽極電極と、反射性電極である陰極電極とからなる一対の電極を有するとともに、両電極間に、電子輸送性発光層および正孔輸送層からなる有機エレクトロルミネッセンス層が設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子」は、本願補正発明における「透明電極及び対向電極と、前記透明電極及び前記対向電極の間に発光層を含む有機化合物層とを有する有機EL素子」に相当する。

ウ 引用発明における「樹脂中に平均粒子径が1桁以上異なる少なくとも2種の微粒子を分散させた拡散層」は、微粒子を拡散層に分散させているものであるから微粒子を含有している層であるといえる。そして、引用発明においては、「拡散層が光取り出し面側の電極(透明電極)に隣接して設けられており」、「エレクトロルミネッセン素子」の「発光層」から放出された光は、「光取り出し面側の電極(透明電極)に隣接して設けられ」た「拡散層」を介して取り出されるものであるから、引用発明における「光取り出し面側の電極(透明電極)に隣接して設けられ」、「樹脂中に平均粒子径が1桁以上異なる少なくとも2種の微粒子を分散させた拡散層」は、本願補正発明における「発光層から放出された光の光路上に配置された微粒子含有層」に相当する。

エ 引用発明における「拡散層」は、「樹脂中に平均粒子径が1桁以上異なる少なくとも2種の微粒子を分散させた」ものであり、「拡散層において、少なくとも2種の微粒子は、平均粒子径が1nm以上50nm以下である超微粒子と、平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である微粒子とからな」るから、引用発明における「拡散層」は、「樹脂」中に「超微粒子」と、「超微粒子」よりも粒子径が大きい「微粒子」が分散されたものである。したがって、引用発明における「樹脂」、「超微粒子」、「微粒子」は、それぞれ本願補正発明における「有機樹脂材料」、「第1の微粒子」、「第2の微粒子」に相当し、引用発明における「拡散層」と本願補正発明における「微粒子含有層」とは、「有機樹脂材料と、第1の微粒子と、前記第1の微粒子よりも粒子径が大きい第2の微粒子とを含」む点で一致する。

オ 上記アないしエから、本願補正発明と引用発明とは、
「透明電極及び対向電極と、前記透明電極及び前記対向電極の間に発光層を含む有機化合物層とを有する有機EL素子と、
前記発光層から放出された光の光路上に配置された微粒子含有層とを備える有機EL表示装置において、
前記微粒子含有層は、有機樹脂材料と、第1の微粒子と、前記第1の微粒子よりも平均粒子径が大きい第2の微粒子とを含む有機EL表示装置。」である点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:
本願補正発明は、平坦化層を備え、微粒子含有層は前記平坦化層に接して配置されているのに対し、引用発明は、透明電極と拡散層との間に、表面平滑性、密着性、残存不純物の拡散防止、ガスバリア性の向上などを目的に別の層を形成してもよいものであるが、微粒子含有層が平坦化層に接して配置されるとの特定がなされていない点。

相違点2:
本願補正発明は、微粒子含有層が微粒子分散剤を含むのに対し、引用発明は、超微粒子の分散性を改善するため超微粒子に何らかの表面処理や表面修飾をしてもよいものであるが、微粒子分散剤を含むとの特定がなされていない点。

相違点3:
「有機樹脂材料と、第1の微粒子と、前記第1の微粒子よりも平均粒子径が大きい第2の微粒子とを含」む「微粒子含有層」について、本願補正発明は、「平均粒子径」が「重量平均粒子径」であり、「前記第1の微粒子の重量平均粒子径が50nm未満であり、前記第2の微粒子の重量平均粒子径が50nm以上5μm以下であ」るのに対し、引用発明は、「平均粒子径」の定義が明らかでなく、「超微粒子」の「1nm以上50nm以下」という平均粒子径、及び、「微粒子」の「0.5μm以上10μm以下」という平均粒子径が、「重量平均粒子径」でいかほどの値であるのか定かでない点。

相違点4:
「第2の微粒子」が、本願補正発明では、TiO_(2)、ZnO、及びZrO_(2)から選択された少なくとも1種を含む無機微粒子であるのに対し、引用発明では、シリカ粒子、アルミナ粒子、シリコーン粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、プラスチック粒子、液晶粒子、気泡などを分散分布されたものなどである点

相違点5:
本願補正発明は、「第1の微粒子が添加された有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、有機化合物層の平均屈折率n_(2)とが、|n_(1)-n_(2)|<0.25、を満た」すのに対し、引用発明は、樹脂の屈折率をn_(0)、樹脂中に分散させた平均粒子径が1nm以上50nm以下である超微粒子の屈折率をn_(1)とし、かつ樹脂と上記超微粒子との合計量中の各体積分率をqおよび1-qとしたとき、上記超微粒子の屈折率がn_(1)≧1.9で、かつ式(2):〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕≧1.65の関係を満たすものであって、そのような特定がなされていない点。

相違点6:
本願補正発明は、「第1の微粒子が添加された有機樹脂材料の屈折率n_(1)と、第2の微粒子の屈折率n_(3)とが、n_(3)-n_(1)≧0.83、を満た」すのに対し、引用発明は、樹脂の屈折率をn_(0)、樹脂中に分散させた平均粒子径が1nm以上50nm以下である超微粒子の屈折率をn_(1)、樹脂中に分散させた平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である微粒子の屈折率をn_(2)とし、かつ樹脂と上記超微粒子との合計量中の各体積分率をqおよび1-qとしたとき、上記超微粒子の屈折率がn_(1)≧1.9で、かつ式(1):|〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕-n_(2)|≧0.05、の関係を満たすものであって、そのような特定がなされていない点。

(4)相違点の判断
ア 上記相違点1について判断する。
(ア)引用発明は、透明電極と拡散層との間に、表面平滑性、密着性、残存不純物の拡散防止、ガスバリア性の向上などを目的に別の層を形成してもよいものである。

(イ)また、表面に凹凸を有する拡散層に接して平坦化層を設けることにより、平坦化層上に透明電極層を均一に形成可能とし、有機EL素子の短絡を防止することは、原査定の拒絶の理由において引用された特開2009-4275号公報の【0037】、図1、同じく原査定の拒絶の理由において引用された特開2007-188708号公報の【0064】?【0066】に記載されているように本願出願前の周知技術(以下「周知技術1」という。)である。

(ウ)したがって、引用発明において、上記周知技術1に基づいて、透明電極と拡散層との間に当該拡散層に接して平坦化層を形成することにより上記相違点1にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 上記相違点2について判断する。
(ア)引用発明は、超微粒子の分散性を改善するため、超微粒子になんらかの表面処理や表面修飾がなされていてもよいものであり、超微粒子の分散性を改善することを課題として認識しているものである。

(イ)また、微粒子の分散性を改善するために、微粒子とともに分散剤を含有させることは、原査定の拒絶の理由において引用された特開2005-70318号公報の【0052】、同じく原査定の拒絶の理由において引用された特開2004-29705号公報の【0047】に記載されているように本願出願前の周知技術(以下「周知技術2」という。)である。

(ウ)したがって、引用発明において、上記周知技術2に基づいて、拡散層中に分散剤を含有させることにより上記相違点2にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 上記相違点3について判断する。
(ア)引用発明において、「超微粒子」は拡散層の屈折率を調整する機能を有し、「微粒子」は拡散層中において光を拡散させる機能を有するものである。

(イ)また、有機樹脂層の屈折率を調整するために当該有機樹脂層中に分散させる超微粒子として、重量平均粒子径が50nm未満の超微粒子を用いるのが好ましいことは、特開2001-188104号公報の【0044】、【0054】、【0058】、特開2004-51706号公報の【0066】、特開2004-29705号公報の【0247】?【0250】、【0253】?【0256】に記載されているように本願出願前に周知(以下「周知技術3」という。)であり、また、有機樹脂層に入射する光を散乱させるために当該有機樹脂層中に分散させる微粒子として、重量平均粒子径が50nm以上5μm以下の微粒子を用いるのが好ましいことは、特開2005-276566号公報の【0027】、【0028】、【0064】?【0067】、特開2008-203839号公報の【0035】、【0066】に記載されているように本願出願前に周知(以下「周知技術4」という。)であったところ、引用発明の「超微粒子」における「1nm以上50nm以下」という「平均粒子径」の数値範囲、及び、「微粒子」における「0.5μm以上10μm以下」という「平均粒子径」の数値範囲が、それぞれ前記超微粒子の数値範囲、及び、前記微粒子の数値範囲と整合することから、引用発明の「平均粒子径」とは、「重量平均粒子径」であると解するのが相当である。そして、引用発明の「超微粒子」と本願補正発明の「第1の微粒子」との間、及び、引用発明の「微粒子」と本願補正発明の「第2の微粒子」との間には、それぞれ「重量平均粒子径」の数値範囲に重複する範囲があるので、上記相違点3は実質的な相違点ではない。

(イ)仮に、引用発明の「平均粒子径」が「重量平均粒子径」のことでないとしても、引用発明において、上記周知技術3、4に基づいて、「超微粒子」の「重量平均粒子径」を「50nm未満」とし、「微粒子」の「重量平均粒子径」を「50nm以上5μm以下」とすることにより上記相違点3にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)したがって、上記相違点3は実質的な相違点でないか、少なくとも引用発明において、上記相違点3にかかる本願補正発明の構成とすることは、上記周知技術3、4に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

エ 上記相違点5について判断する。
(ア)引用発明は、拡散層において、樹脂の屈折率をn_(0)、樹脂中に分散させた平均粒子径が1nm以上50nm以下である超微粒子の屈折率をn_(1)とし、かつ樹脂と上記超微粒子との合計量中の各体積分率をqおよび1-qとしたとき、上記超微粒子の屈折率がn_(1)≧1.9で、かつ式(2):〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕≧1.65の関係を満たすものであり、当該式(2)における「n_(0)・q+n_(1)・(1-q)」は、本願補正発明における「第1の微粒子が添加された前記有機樹脂材料の屈折率n_(1)」に相当する。

(イ)また、引用例の【0009】には、有機EL層の屈折率はおよそ1.7である旨が記載されているので、引用発明の有機EL層に含まれる発光層の屈折率もおよそ1.7であると認められる。

(ウ)そして、引用発明において、拡散層の屈折率は、発光層と同等かそれ以上であるところ、屈折率n_(1)が1.9以上である超微粒子の含有量を適宜調整し、〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕の値を発光層と同等の屈折率である、およそ1.7とすることにより「|n_(1)-n_(2)|」の値をゼロ程度とすること、すなわち、上記相違点5にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

オ 上記相違点4及び6について判断する。
(ア)引用発明は、拡散層において、樹脂の屈折率をn_(0)、樹脂中に分散させた平均粒子径が1nm以上50nm以下である超微粒子の屈折率をn_(1)、樹脂中に分散させた平均粒子径が0.5μm以上10μm以下である微粒子の屈折率をn_(2)とし、かつ樹脂と上記超微粒子との合計量中の各体積分率をqおよび1-qとしたとき、上記超微粒子の屈折率がn_(1)≧1.9で、かつ式(1):|〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕-n_(2)|≧0.05、の関係を満たすものであり、当該式(1)における「n_(0)・q+n_(1)・(1-q)」、「n_(2)」は、それぞれ本願補正発明における「第1の微粒子が添加された前記有機樹脂材料の屈折率n_(1)」、「第2の微粒子の屈折率n_(3)」に相当するから、引用発明における上記式(1)を、本願補正発明に記載された「n_(1)」、「n_(3)」を用いて表すと、|n_(1)-n_(3)|≧0.05となる。

(イ)ここで、引用発明において、上記式(1)の関係を満たすための方法としては、「屈折率の高い微粒子を用いる」方法と、「屈折率の低い微粒子を用いる」方法を挙げることができ、このことは、引用発明における「微粒子」として、「シリカ粒子、アルミナ粒子、シリコーン粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、プラスチック粒子、液晶粒子、気泡などを分散分布されたもの」などの低屈折率粒子と高屈折率粒子がともに挙げられていることからも明らかであるところ、拡散層における微粒子とマトリックスの屈折率の差は大きいことが望ましく、チタニアの屈折率が大きいことは、特開2004-296437号公報の【0038】、【0039】、国際公開第2007/041116号の19頁10行?20頁2行に記載されているように本願出願前の技術常識である。

(ウ)したがって、引用発明において、上記技術常識に基づいて、拡散層におけるマトリックスである「樹脂及び超微粒子」と「微粒子」との屈折率の差を大きくするために、引用発明において列記された「微粒子」のうち、高屈折率無機微粒子である「チタニア(TiO_(2))粒子」を用いることにより上記相違点4にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)また、上記3(2)クには、チタニア(酸化チタン)の屈折率が2.7であることが記載されているところ、上記エ(イ)、(ウ)のとおり、引用発明の拡散層において、〔n_(0)・q+n_(1)・(1-q)〕の値を発光層と同等の屈折率である、およそ1.7にすると、引用発明における微粒子の屈折率と拡散層の屈折率の差は1.0(=2.7-1.7)になるのだから、本願補正発明における「n_(3)-n_(1)≧0.83」という条件を満たすこととなる。

(オ)したがって、引用発明において、上記相違点6にかかる本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

カ また、本願補正発明の効果は、引用発明及び上記周知技術1ないし4からみて予測し得る程度のものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記「第2」での本件補正についての補正の却下の決定の結論のとおり、平成26年10月 8日に提出された手続補正書による本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の請求項1ないし11に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載のとおりのものである。

2 引用例の記載事項
引用例の記載事項については、上記第2の3(2)のとおりである。

3 対比・判断
上記第2の1で検討したように、本願補正発明は、本願発明の発明特定事項に限定を付加したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これをより限定したものである本願補正発明が、上記第2の3において検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-10-19 
結審通知日 2015-10-20 
審決日 2015-11-02 
出願番号 特願2012-238457(P2012-238457)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中山 佳美  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
本田 博幸
発明の名称 有機EL表示装置  
代理人 廣田 浩一  

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