• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 B63B
管理番号 1312831
審判番号 不服2015-1436  
総通号数 197 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-26 
確定日 2016-03-24 
事件の表示 特願2012-552178号「船舶及びバラスト水処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月17日国際公開、WO2013/153670号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、2012年4月13日を国際出願日とする出願であって、平成26年10月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年1月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成27年1月26日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項3に係る発明(以下「本願発明3」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項3】
バラスト水を処理し、貨物を搭載する貨物艙に搭載するように構成されると共に、着脱可能に設置され、荷役装置で積み下ろしされるように構成されたことを特徴とするバラスト水処理装置。」

2.先願明細書の記載事項 及び先願発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2011-196045号(特開2013-56621号公報参照)の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、「コンテナ船におけるバラスト水処理装置の設置構造」に関して、次の事項が図面とともに記載されている。(下線は、当審で付与。以下同様。)

ア.「【0011】
本発明は、上記の要望に応え、新造船のみでなく、既存船の場合においても大幅な改造を要さずに、バラスト水処理装置を容易に設置することができるバラスト水処理装置の設置構造及び設置方法を提供するものである。」

イ.「【0016】
前記のバラスト水処理装置の設置構造において、処理装置パッケージには、内部のバラスト水処理装置に接続された流水用の配管がハウジング用ボックスの外壁面において臨出して設けられており、該処理装置パッケージが、設置スペースとなる積載用区画に収容され設置固定された状態において、前記配管が、機関室と船倉との間の隔壁を貫通する接続用管路を介してバラスト水ポンプとバラストタンクを接続する流水用管路に接続されてなるものとすることができる。これにより、微生物類を除去処理したバラスト水をバラストタンクに貯留できることになる。」

ウ.「【0024】
前記船体1の中央部4における甲板下方の船体1の内部が、積載対象となる所定の規格の船倉積みコンテナCを積載するための船倉8として、前記コンテナCを積載するための多数の積載用区画10が縦、横及び高さ方向に並列して設定されている。前記積載用区画10は、通常、コンテナCの揚降作業のためのガイド機能を有するセルガイド9と船体1構成部材である横隔壁により区画形成されている。そして、前記積載用区画10のうち、前記バスト水ポンプを備える機関室7に近い1区画又は複数区画分の積載用区画10aが、バラスト水中の微生物類を処理し死滅又は除去するための後述する処理装置パッケージ20の設置スペースに利用されている。」

エ.「【0030】
かかるバラスト水処理装置22としては、詳細な図示説明は省略するが、処理工程部25の構成が、剪断作用や衝撃を利用する方式、高周波や紫外線を利用する方式、あるいはフィルター構造を利用する方式等、従来より公知の各種の処理方式の処理装置を利用できる。いずれの場合も、前記ボックス21内にはそれぞれの処理方式に応じた配電盤、制御器、タンクやバルブ等の必要な装置類、機器類が装備されて構成されるとともに、流入側及び流出側の配管24a,24bが前記ボックス21の外部に臨出して設けられる。
【0031】
・・・
【0032】
前記のようにコンテナ外形に対応した形状の前記ボックス21内にバラスト水処理装置22を装備してパッケージ化した処理装置パッケージ20を船体1とは別に構成しておくことにより、船体1内への設置作業においては、該処理装置パッケージ20を、通常のコンテナCの場合と同様に、クレーン等で吊り下げて船倉8内の所定の積載用区画10aに降下させて収容することにより容易に設置固定することができる。」

オ.記載事項エの段落【0032】に記載されている「コンテナ外形に対応した形状の前記ボックス21内にバラスト水処理装置22を装備してパッケージ化した処理装置パッケージ20」は、同段落【0030】の記載を参酌すると、コンテナ外形に対応した形状のボックス21内にバラスト水処理装置22と処理方式に応じた配電盤、制御器、タンクやバルブ等の装置類、機器類を装備してパッケージ化した処理装置パッケージ20であることが理解できる。
これら記載事項、図示内容及び認定事項を総合し、本願発明3の記載ぶりに倣って整理すると、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
《先願発明》
「バラスト水中の微生物類を処理し、船倉積みコンテナCを積載する船倉8内の所定の積載用区画10aに、通常のコンテナCの場合と同様に、クレーン等で吊り下げて降下させて収容することにより設置固定するように構成された、コンテナ外形に対応した形状のボックス21内にバラスト水処理装置22と処理方式に応じた配電盤、制御器、タンクやバルブ等の装置類、機器類を装備してパッケージ化した処理装置パッケージ20。」

3.対比・判断
本願発明3と先願発明とを対比する。
・後者の「バラスト水中の微生物類を処理し」は、その技術的意義において、前者の「バラスト水を処理し」に相当する。

・後者の「船倉積みコンテナC」は前者の「貨物」に相当し、後者の「船倉積みコンテナCを積載する」「船倉8」は前者の「貨物を搭載する」「貨物艙」に相当する。また、後者の「通常のコンテナCの場合と同様に、クレーン等で吊り下げて降下させて収容する」は前者の「荷役装置で積み下ろしされるように構成された」に相当し、後者は「船倉積みコンテナCを積載する船倉8内の所定の積載用区画10aに、通常のコンテナCの場合と同様に、クレーン等で吊り下げて降下させて収容することにより設置固定する」ものであるから、処理装置パッケージ20は着脱可能に船倉8内の所定の積載用区画10aに設置されるものといえる。

・前者の「バラスト水処理装置」は、本願明細書の段落【0025】に「バラスト水処理装置2は、フィルター21と、殺菌ユニット22と、電源制御ユニット23と、配管24とを備えている。」と記載されているように、フィルター21や殺菌ユニット22を機能させるための、電源制御ユニット23や配管24等の周辺機器を含めたものと解釈できるから、後者の「コンテナ外形に対応した形状のボックス21内にバラスト水処理装置22と処理方式に応じた配電盤、制御器、タンクやバルブ等の装置類、機器類を装備してパッケージ化した」「処理装置パッケージ20」は、前者の「バラスト水処理装置」に相当する。

してみると、本願発明3と先願発明とは、
「バラスト水を処理し、貨物を搭載する貨物艙に搭載するように構成されると共に、着脱可能に設置され、荷役装置で積み下ろしされるように構成されたバラスト水処理装置。」の点で一致し、相違点は存在しない。
したがって、本願発明3と先願発明は同一であり、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上総合すると、本願の請求項3に係る発明(本願発明3)は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(先願明細書等)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
そして、本願の請求項3に係る発明が特許を受けることができない以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-20 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-08 
出願番号 特願2012-552178(P2012-552178)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (B63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 島田 信一
出口 昌哉
発明の名称 船舶及びバラスト水処理装置  
代理人 平井 功  
代理人 昼間 孝良  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 境澤 正夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ