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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1312933 |
審判番号 | 不服2015-8584 |
総通号数 | 197 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-08 |
確定日 | 2016-03-28 |
事件の表示 | 特願2013-265761「半導体装置の製造方法、半導体装置、包埋用接着フィルム、及びダイシング・ダイボンドフィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開、特開2015-122425〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成25年12月24日に出願したものであって、平成26年11月17日付け拒絶理由通知に対して平成27年1月15日付けで手続補正がなされたが、同年2月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月8日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成27年1月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1半導体素子を被着体に固定する第1固定工程と、 前記被着体及び前記被着体に固定された前記第1半導体素子をボンディングワイヤーにより電気的に接続するワイヤーボンディング工程と、 第2半導体素子及び前記第2半導体素子上に配置された包埋用接着フィルムを準備する素子準備工程と、 前記包埋用接着フィルムにより、前記ボンディングワイヤー、及び前記被着体に固定された前記第1半導体素子を包埋しながら前記第2半導体素子を前記被着体に固定する第2固定工程と、 前記第2固定工程の後に、前記包埋用接着フィルムを加圧雰囲気下で熱硬化させる熱硬化工程とを含み、 前記包埋用接着フィルムは、前記第1半導体素子の厚さT_(1)より厚い厚さTを有し、 前記厚さTと前記厚さT_(1)との差が40μm以上260μm以下である半導体装置の製造方法。」 3.先願明細書等 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の特許出願であって、その出願日後に出願公開された特願2013-46667号(平成25年3月8日出願、特開2014-175459号公報を参照。)の願書の最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、半導体装置の製造方法に関し、図面と共に、以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0001】 本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。」 イ.「【0028】 (フィルム状接着剤) 図1は、本実施形態に係るフィルム状接着剤10を模式的に示す断面図である。フィルム状接着剤10は、熱硬化性であり、半硬化(Bステージ)状態を経て、硬化処理後に完全硬化物(Cステージ)状態となり得る接着剤組成物をフィルム状に成形することにより作製できる。」 ・・・(中略)・・・ 【0040】 半導体素子を圧着時に良好な埋込性が得られ、加圧オーブンで良好にボイドを消失させるためには、ずり粘度が5000Pa・s以下となる温度が60?175℃のいずれかの温度とすることが好ましい。熱硬化性樹脂を調整することにより、ずり粘度が5000Pa・s以下となる温度を60?175℃のいずれかの温度とするためには、(a1)成分の含有量が(a)熱硬化性成分100質量部を基準として30質量%以上含有することが必要である。 ウ.「【0089】 (半導体装置の製造方法) 本実施形態に係る半導体装置200は、以下の手順により製造される。まず、図7に示すように、基板14上の回路パターン94上に、接着剤41付き第1の半導体素子Waaを圧着し、第1のワイヤ88を介して基板14上の回路パターン84と第1の半導体素子Waとを電気的にボンディング接続する(第1のダイボンディング工程)。 【0090】 次に、厚み50μmの半導体ウェハ(サイズ:8インチ)の片面に、接着シート100をラミネートし、基材フィルム20を剥がすことで、半導体ウェハの片面にフィルム状接着剤10(厚み135μm)を貼り付ける。そして、フィルム状接着剤10にダイシングテープ60を貼り合わせた後、7.5mm角にダイシングすることにより、図8に示すように、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを得る(ラミネート工程)。 ・・・(中略)・・・ 【0093】 そして、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを、第1の半導体素子Waがワイヤ88を介してボンディング接続された基板14に圧着する。具体的には、図9に示すように、フィルム状接着剤10が貼付した第2の半導体素子Waaを、フィルム状接着剤10が第1の半導体素子Waを覆うように載置し、次いで、図10に示すように、第2の半導体素子Waaを基板14に圧着させることで基板14に第2の半導体素子Waaを固定する(ダイボンド工程)。ダイボンド工程は、フィルム状接着剤10を80?180℃、0.01?0.50MPaの条件で0.5?3.0秒間圧着することが好ましい。ダイボンド工程の後、フィルム状接着剤10を60?175℃、0.3?0.7MPaの条件で、5分間以上加圧及び加熱する。 ・・・(中略)・・・ 【0095】 以上説明したように、この半導体装置200では、基板14上に第1のワイヤ88を介して第1の半導体素子Waがワイヤボンディング接続されると共に、第1の半導体素子Wa上に、第1の半導体素子Waの面積よりも大きい第2の半導体素子Waaがフィルム状接着剤10を介して圧着されることで、第1のワイヤ88及び第1の半導体素子Waがフィルム状接着剤10に埋め込まれてなるワイヤ埋込型の半導体装置であって、フィルム状接着剤10は、硬化後における50℃での弾性率が1000MPa以下、硬化後における150℃?260℃の弾性率が20MPa以下であり、ガラス転移温度Tgが150℃以下である。」 エ.「【0098】 本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、基板14上に第1のワイヤ88を介して第1の半導体素子Waを電気的に接続する第1のダイボンディング工程と、第2の半導体素子Waaの片面に、第2の半導体素子Waaの形状に合わせてフィルム状接着剤10を貼付するラミネート工程と、フィルム状接着剤10が貼付された第2の半導体素子Waaを、フィルム状接着剤10が第1の半導体素子Waを覆うように載置し、フィルム状接着剤10を80?180℃、0.01?0.50MPaの条件で、0.5?3.0秒間圧着することで、第1のワイヤ88及び第1の半導体素子Waをフィルム状接着剤10に埋め込むダイボンド工程と、を備える。この場合、半導体装置200を安定的に製造することができる。 【0099】 また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、ダイボンド工程の直後の工程として、フィルム状接着剤10を60?175℃、0.3?0.7MPaの条件で、5分間以上加圧及び加熱する工程を備えている。この場合、ダイボンド工程において、残存したわずかなボイドを消失させることができるため、歩留まりを安定させながら、より容易に半導体装置を製造することができる。」 上記アないしエから、先願明細書等には以下の事項が記載されている。 ・上記アによれば、半導体装置の製造方法に係わるものである。 ・上記ウによれば、第1の半導体素子を基板に載置し圧着する工程を備えているものである。 ・上記エによれば、基板にワイヤを介して第1の半導体素子を電気的に接続するダイボンディング工程を備えているものである。 ・上記ウ及びエによれば、第2の半導体素子にフィルム状接着剤を貼付するラミネート工程を備えているものである。 ・上記ウ及びエによれば、ワイヤ及び第1の半導体素子をフィルム状接着剤で覆うように第2の半導体素子を基板に固定するダイボンド工程を備えるものである。 ・上記ウ及びエによれば、ダイボンド工程の後、フィルム状接着剤を加圧及び加熱する工程を備えているものである。 また、図6等を参酌すると、フィルム状接着剤10は、第1の半導体素子Waの厚さより厚い厚さを有していることは明らかである。 そうすると、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。 「第1の半導体素子を基板に圧着する工程と、 前記基板にワイヤを介して前記第1の半導体素子を電気的に接続するダイボンディング工程と、 第2の半導体素子にフィルム状接着剤を貼付するラミネート工程と、 前記ワイヤ及び前記第1の半導体素子を前記フィルム状接着剤で覆うように前記第2の半導体素子を前記基板に載置し固定するダイボンド工程と、 前記ダイボンド工程の後、前記フィルム状接着剤を加圧及び加熱する工程とを備え、 前記フィルム状接着剤は、前記第1の半導体素子の厚みより厚い厚さを有する半導体装置の製造方法。」 4.対比・判断 本願発明と先願発明とを対比する。 a.先願発明の「第1の半導体素子」及び「基板」は、本願発明の「第1半導体素子」及び「被着体」に相当する。そして、先願発明の「第1の半導体素子」は、基板に圧着、すなわち固定されるものである。 よって、先願発明の「第1の半導体素子を基板に圧着する工程」は、本願発明の「第1半導体素子を被着体に固定する第1固定工程」に相当する。 b.先願発明の「ワイヤ」は、本願発明の「ボンディングワイヤー」に相当する。 よって、先願発明の「前記基板にワイヤを介して前記第1の半導体素子を電気的に接続するダイボンディング工程」は、本願発明の「前記被着体及び前記被着体に固定された前記第1半導体素子をボンディングワイヤーにより電気的に接続するワイヤーボンディング工程」に相当する。 c.先願発明の「第2の半導体素子」及び「フィルム状接着剤」は、本願発明の「第2半導体素子」及び「包理用接着フィルム」に相当する。そして、先願発明の「ラミネート工程」は、第2の半導体素子にフィルム状接着剤を貼付する工程であるから、第2の半導体素子及び前記第2の半導体素子上に配置されたフィルム状接着剤を準備しているともいえる。 よって、先願発明の「第2の半導体素子にフィルム状接着剤を貼付するラミネート工程」は、本願発明の「第2半導体素子及び前記第2半導体素子上に配置された包埋用接着フィルムを準備する素子準備工程」に相当する。 d.先願発明の「ダイボンド工程」は、ワイヤ及び第1の半導体素子を前記フィルム状接着剤により覆っているから、包理するともいえる。 よって、先願発明の「前記ワイヤ及び前記第1の半導体素子を前記フィルム状接着剤で覆うように前記第2の半導体素子を前記基板に載置し固定するダイボンド工程」は、本願発明の「前記包埋用接着フィルムにより、前記ボンディングワイヤー、及び前記被着体に固定された前記第1半導体素子を包埋しながら前記第2半導体素子を前記被着体に固定する第2固定工程」に相当する。 e.先願発明の「フィルム状接着剤を加圧及び加熱する工程」とは、上記イ、ウ及びコによれば、加圧しながら(加圧オーブンで)フィルム状接着剤を熱硬化することと認められる。 よって、先願発明の「前記ダイボンド工程の後、前記フィルム状接着剤を加圧及び加熱する工程」は、本願発明の「前記第2固定工程の後に、前記包埋用接着フィルムを加圧雰囲気下で熱硬化させる熱硬化工程」に相当する。 f.先願発明の「前記フィルム状接着剤は、前記第1の半導体素子の厚みより厚い厚さを有」することは、本願発明の「前記包埋用接着フィルムは、前記第1半導体素子の厚さより厚い厚さを有」することに相当する。 但し、先願発明は、本願発明のような厚さの差を特定していない。 以上のことから、本願発明と先願発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「第1半導体素子を被着体に固定する第1固定工程と、 前記被着体及び前記被着体に固定された前記第1半導体素子をボンディングワイヤーにより電気的に接続するワイヤーボンディング工程と、 第2半導体素子及び前記第2半導体素子上に配置された包埋用接着フィルムを準備する素子準備工程と、 前記包埋用接着フィルムにより、前記ボンディングワイヤー、及び前記被着体に固定された前記第1半導体素子を包埋しながら前記第2半導体素子を前記被着体に固定する第2固定工程と、 前記第2固定工程の後に、前記包埋用接着フィルムを加圧雰囲気下で熱硬化させる熱硬化工程とを含み、 前記包埋用接着フィルムは、前記第1半導体素子の厚さより厚い厚さを有す半導体装置の製造方法。」 そして、以下の点で一応相違する。 <相違点> 包理用接着フィルムの厚さと第1半導体素子の厚さとの差について、本願発明は「40μm以上260μm以下」であるのに対し、先願発明はそのような特定がなされていない。 そこで、<相違点>について検討する。 本願明細書の段落【0110】に「本実施形態では、前記被着体1と前記第1半導体素子11との電気的接続がワイヤーボンディング接続により達成されることから、前記厚さTと前記厚さT_(1)との差を40μm以上260μm以下が好ましい。前記厚さTと前記厚さT_(1)との差の下限は40μm以上が好ましいものの、50μm以上がより好ましく、60μm以上がさらに好ましい。また、前記厚さTと前記厚さT_(1)との差の上限は260μm以下が好ましいものの、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。これにより、半導体装置全体の薄型化を図りながらも、第1半導体素子11と第2半導体素子12との接触を防止しつつ第1半導体素子11全体を包埋用接着フィルム22の内部に包埋することができ、コントローラとしての第1半導体素子11の被着体1上への固定(すなわちワイヤー長が最短となる最下段での固定)を可能にする。」と記載されているように、本願発明における包理用接着フィルムの厚さと第1半導体の厚さとの差として特定した「40μm以上260μm以下」は、特別な臨界的意義を備えた範囲を示したものではなく、包理用接着フィルム22の厚さによって第1半導体素子11とボンディングワイヤーが包理できるような範囲を設定したに過ぎないものである。 ここで、本願発明の第1半導体素子の厚さは、本願明細書の段落【0100】に「第1半導体素子11の厚さは特に限定されないものの、通常100μm以下の場合が多い。また、近年の半導体パッケージの薄型化に伴い75μm以下、さらには50μm以下の第1半導体素子11も用いられつつある。」と記載され、本願発明の包理用フィルムの厚さは、段落【0111】に「包埋用接着フィルム22の厚さTは第1半導体素子11を包埋可能なように第1半導体素子11の厚さT1及びワイヤー突出量を考慮して適宜設定すればよいが、その下限は80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、120μm以上がさらに好ましい。一方、厚さTの上限は300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。」と記載されている。 一方、先願明細書等には、段落【0087】に「第1の半導体素子Waの厚みは、10?170μmであり、・・・フィルム状接着剤10の厚みは、20?200μmであり、好ましくは30?200μmであり、より好ましくは40?150μmである。」と記載されているように、本願発明の第1半導体および包理用フィルムの厚さを含んだものが記載されている。なお、先願発明におけるフィルム状接着剤(本願発明の「包理用接着フィルム」に相当。)も、第1の半導体素子とワイヤを包理するものである。 そうすると、先願明細書等には、本願発明で使用される第1半導体素子及び包埋用接着フィルムの厚さと同程度のものが記載されていることから、包理用接着フィルムの厚さと第1半導体の厚さとの差が「40μm以上260μm以下」であるものが当然に含まれていると認められる。 よって、先願発明には、相違点に係る事項が実質的に記載されている。 したがって、本願発明は、先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時に、その出願人が先願の出願人と同一でもない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-01-29 |
結審通知日 | 2016-02-02 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2013-265761(P2013-265761) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 将之 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
酒井 朋広 ゆずりは 広行 |
発明の名称 | 半導体装置の製造方法、半導体装置、包埋用接着フィルム、及びダイシング・ダイボンドフィルム |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |