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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1313610
審判番号 不服2014-23926  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-25 
確定日 2016-04-20 
事件の表示 特願2010- 33613「接触断の発生を抑えた携帯情報端末のバッテリ接続端子構造」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日出願公開、特開2011-171987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年2月18日の出願であって、平成25年5月17日付けで最初の拒絶理由が通知され、同年7月9日付けで手続補正され、平成26年1月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月18日付けで手続補正がなされたところ、同年8月25日付けで同年3月18日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月25日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付で手続補正されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下決定の結論]
平成26年11月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年3月18日付けの手続補正が同年8月25日付けで却下されたので、平成25年7月9日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「略直方体の第一面と該第一面に直交する第二面とを跨るように連続して設けられ、断面が略L字型をした一の極性をもった接点を正極及び負極のそれぞれで有するバッテリーパックと、該バッテリーパックから電源の供給を受ける携帯情報端末とを電気的に接続するバッテリ接続端子構造であって、
前記接続端子は、前記バッテリーパックの第一面側の接点に弾性をもって当接する第一の接続端子と、前記バッテリーパックの第二面側の接点に弾性をもって当接する第二の接続端子とを正極及び負極のそれぞれで個別に備え、
前記第一の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、前記第一面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記第二の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、前記第二面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接することを特徴とするバッテリ接続端子構造。」

という発明(以下「本願発明」という。)を、平成26年11月25日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「略直方体の第一面と該第一面に直交する第二面とを跨るように連続して設けられ、断面が略L字型をした一の極性をもった接点を正極及び負極のそれぞれで有するバッテリーパックと、該バッテリーパックから電源の供給を受ける携帯情報端末とを電気的に接続するバッテリ接続端子構造であって、
接続端子は、前記バッテリーパックの第一面側の接点に弾性をもって当接する第一の接続端子と、前記バッテリーパックの第二面側の接点に弾性をもって当接する第二の接続端子とを正極及び負極のそれぞれで個別に備え、
前記第一の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する円錐状の端子片からなり、該円錐の頂点部が前記第一面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記第二の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する円錐状の端子片からなり、該円錐の頂点部が前記第二面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記バッテリーパックは、バッテリーパック格納部にバッテリーパックカバーで覆われて収納され、前記バッテリーパックが装着された状態にて、前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子のバネの力で前記バッテリーパックの前記接点との接続を保持することを特徴とするバッテリ接続端子構造。」

という発明(以下「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2 補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件、シフト補正の有無について
本件補正は、まず本願発明に記載された「前記接続端子は」を「接続端子は」と、「前記」を削除しているが、これは、誤記の訂正をするものである。そして、本願発明に記載された「第一の接続端子」と「第二の接続端子」の「正極及び負極それぞれについて」、「外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する円錐状の端子片からなり、」と限定し、本願発明に記載された「第一面側」と「第二面側」の接点それぞれに対して「略垂直方向に追従可能に当接」するのが、「該円錐の頂点部が」である点を限定し、さらに、本願発明に記載された「バッテリーパック」について、「バッテリーは、バッテリーパック格納部にバッテリーパックカバーで覆われて収納され、前記バッテリーパックが装着された状態にて、前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子のバネの力で前記バッテリーパックの前記接点との接続を保持する」ものである点を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合し、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反しないことも明らかである。

(2)独立特許要件について
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下に検討する。

1.補正後の発明
上記「1 本願発明と補正後の発明」の項において、「補正後の発明」として認定したとおりである。

2.引用発明と周知技術
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-75309号公報(以下「引用例」という。)には、「接点端子を備えた情報機器」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話機や携帯情報端末(PDA)など着脱可能な外付けユニット(例えば電池パック)が本体部に装着され、端子を介して電気的に接続される接点端子を備えた情報機器に関し、詳しくはその端子構造に関する。」(2頁右欄25?30行)

ロ.「【0002】
【従来の技術】携帯電話機などの携帯情報機器は、電源として再充電可能な二次電池を備えた電池パックを本体部に着脱自在に設けるものが一般的になりつつある。このような携帯情報機器において、電池パックの端子と導通して電気的接続する本体部側端子としては、従来、例えば特開平10-40990号公報に開示されているように、筒部の内部にプランジャーとスプリングとを設けて筒部の端部よりプランジャーの先端部を突出させて電池側端子と当接させる構成のものが用いられている。
【0003】図12は従来の携帯情報機器における端子部の構成例を示す局部断面図である。本体部201には、本体部側端子202を実装したプリント基板203が内蔵され、このプリント基板203には機器の各機能を実現する電子回路が形成されている。本体部側端子202は、基部204上に先端部が開口した筒部205が設けられ、この筒部205内にスプリング206とプランジャー207とが配設されている。筒部205は、一端が開口した開放部、他端が閉じた絞り部となっており、スプリング206の一端が絞り部に当接して固定端となり、プランジャー207の先端が開放部より突出している。プランジャー207は、スプリング206の弾性力によって付勢された状態で筒部205内を移動可能に設けられ、側方に周回状に突出して太径となった基端部208がスプリング206の移動端に当接している。
【0004】本体部201の一面には電池収納部209が凹状に形成されており、この電池収納部209において本体部側端子202のプランジャー207先端が突出している。また、電池収納部209に着脱自在に組み付けられる電池パック210には、本体部側端子202のプランジャー207の位置に対応して電池側端子211が露出して設けられている。そして、電池収納部209に電池パック210が装着されたときに、本体部側端子202と電池側端子211とが接触して電気的に接続されるようになっている。
【0005】この構成では、本体部201に電池パック210を装着しようとしたときに、電池側端子211が本体部側端子202のプランジャー206と当接し、装着が完了した時にはスプリング206が所定量圧縮した状態となり、この圧縮分だけ電池側端子211を付勢する構成となっている。・・・(中略)・・・
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の携帯情報機器における単支部の構成において、電池パック210を装着した状態で本体部201に対して電池パック210の相対位置関係が変化すること、通常はスプリング206が圧縮又は伸張することでプランジャー207が追従し、端子の当接状態が継続される。」(2頁右欄31行目?3頁左欄41行)

ハ.「【0013】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、落下時に作用する衝撃加速度などによって生じる外部振動による接点部の接続解除を防止でき、電源の瞬断や信号の欠落を防止することが可能な接点端子を備えた情報機器を提供することを目的とする。」(3頁右欄30?34行)

ニ.「【0027】
【発明の実施の形態】
・・・(中略)・・・
[第1実施形態]図1は本発明の実施形態に係る情報機器としての携帯電話機の構成を示す断面図である。
・・・(中略)・・・
【0029】・・・(中略)・・・また、本体プリント基板10の裏面下側には、電池パック11に内蔵された電池側端子20と当接して導通し、電源が供給される本体部側端子21が正極及び負極用に2つ実装されている。
・・・(中略)・・・
【0031】また、下ケース2の図中下側には、凹部空間による電池収納部25が形成されている。この電池収納部25には、外付けユニットの一態様としての電池ユニットを構成する、電源供給用の電池パック11が収納され、筐体3の外面に装着されるようになっている。そして、電池収納部25の図中上部には下ケース2に対し摺動可能にフック26が装着され、電池パック11の一端外側にはフック26の係止爪27と係合する係合溝28が形成されている。また、電池パック11の他端には引掛け爪29が突設され、電池収納部25の図中下部にはこの引掛け爪29と係合する係合凹部30が設けられている。」(5頁左欄5行?右欄8行)

ホ.「【0048】[第3実施形態]図5は本発明の第3実施形態における本体部側端子の構成を示す断面図である。第3実施形態では、プランジャー及びスプリングを備えた端子の構成例を示す。
【0049】第3実施形態の本体部側端子61は、先端部が開口した筒部62を備え、この筒部62内にプランジャー63とスプリング64とが配設されている。この本体部側端子61は、正極及び負極用に2つが紙面垂直方向に並んで本体プリント基板10に表面実装され、プランジャー63の先端が幾分突出するように配置されて下ケース2の電池収納部25内側に収容されている。」(6頁右欄50行?7頁左欄10行)

ヘ.「【0056】[第4実施形態]図6は本発明の第4実施形態における本体部側及び電池側端子部の構成を示す断面図である。第4実施形態では本体部側端子の配設構成の他の例を示す。
【0057】第4実施形態の本体部側端子は、当接する方向が異なる2つの端子を備えた構成となっている。各本体部側端子の構成は前述した第1?第3実施形態と同様であってもよいし、従来用いられている構成としてもよい。ここでは第1又は第2実施形態に示したような接点片による構成を用いた例を示す。本実施形態では本体部側端子71,72において接続解除防止手段が構成される。
【0058】電池パック73は、下面側(下ケース側)と他端側(フックと反対側の引掛け爪側)の2つの面にわたって略直角に曲げられた電池用プリント基板79を備え、この電池用プリント基板79の上に形成されて前記2つの面に露呈するように配設された電極ランドからなる電池側端子74を備えている。この電池側端子74は、正極及び負極用に2つ設けられる。本体部の下ケース2には、本体部側端子71,72が設けられ、それぞれ正極及び負極用に2つが紙面垂直方向に並んで本体プリント基板10上に実装されている。この本体部側端子71,72は、それぞれ接点ばね77,78を収容してなり、電池パック73を装着した状態で電池側端子74の一面75と他面76とにそれぞれ対向し、接点ばね77,78が電池側端子74の2面に当接して付勢するように配置されている。
【0059】このような構成の端子部に衝撃加速度が加わった場合の作用を説明する。落下などによって端子部に強制振動が加わり、例えば本体部側端子71の接点ばね77が共振した場合、電池側端子74の一面75から接点部が離れて電気的接続が解除されるおそれがある。しかし、本実施形態ではさらに本体部側端子72の接点ばね78が電池側端子74の他面76に当接しており、接点ばね77と同時に接点ばね78が電池側端子74から離遠する方向へ振動が働くことは起こり得ないため、接点ばね78と電池側端子74の他面76との当接が解除されることなく電気的接続が継続される。
【0060】すなわち、本体部側端子71,72の接点ばね77,78の付勢方向はそれぞれ図6においてY、X方向であるので、例えばY方向に衝撃加速度が生じて接点ばね77,78の共振周波数と一致する強制振動がY方向に働いた場合でも、X方向には接点ばね77,78は共振しない。また、振動方向がX方向であっても同様であり、2つの接点ばね77,78は電池側端子74から同時に離遠しないようになっている。
【0061】このように、第4実施形態では、端子接続部において当接方向を異なる複数の方向に設定して電池側端子を付勢するように本体部側端子を配設することにより、第1実施形態と同様に常に本体部側端子が電池側端子と当接して電気的な接続が継続されるようにすることができ、電源供給の瞬断を防ぐことができる。」(7頁右欄9行?8頁左欄10行)

ト.「【0082】上述したように、本実施形態では、ばね定数が異なる複数の接点ばねを当接させた構造、複数の方向から接点ばねを当接させた構造、ばね定数が異なる端子を互いに当接しあう構造などによって、常に電気的接続を維持でき、端子部において外力が加わったときに振動により共振した場合の当接解除を回避できるので、瞬断によって機器の動作不良が生じるなどの障害を防止できる。」(10頁左欄32?39行)

上記摘記事項の記載及び図5、図6、図12並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記イ.の【0001】の「本発明は、携帯電話機や携帯情報端末(PDA)など着脱可能な外付けユニット(例えば電池パック)が本体部に装着され、端子を介して電気的に接続される接点端子を備えた情報機器に関し、詳しくはその端子構造に関する。」の記載から、引用例には、「電池パックから電源が供給される携帯電話機の本体部とを電気的に接続する本体部側端子の接点端子構造」が記載されているといえる。

b.上記ヘ.の【0058】の「電池パック73は、下面側(下ケース側)と他端側(フックと反対側の引掛け爪側)の2つの面にわたって略直角に曲げられた電池用プリント基板79を備え、この電池用プリント基板79の上に形成されて前記2つの面に露呈するように配設された電極ランドからなる電池側端子74を備えている。この電池側端子74は、正極及び負極用に2つ設けられる。」の記載と図6の記載(特に、電池側端子74)より、引用例は、「下面側の面と、該下面側の面に略直角の他端側の面にわたって設けられ、断面が略直角に曲げられた電池側端子を正極及び負極用に2つ設けられる電池パックと、」を有するといえる。

c.上記ヘ.の【0058】の「本体部の下ケース2には、本体部側端子71、72が設けられ、それぞれ正極及び負極用に2つが紙面垂直方向に並んで本体プリント基板10上に実装されている。この本体部側端子71,72は、それぞれ接点ばね77,78を収容してなり、電池パック73を装着した状態で電池側端子74の一面75と他面76とにそれぞれ対向し、接点ばね77,78が電池側端子74の2面に当接して付勢するように配置されている。」の記載より、引用例は「本体部側端子は、前記電池パックの下面側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第一の接点ばねと、前記電池パックの他端側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第二の接点ばねとを、正極及び負極用に2つ実装され、」ていることは明らかである。

d.上記へ.の【0057】の「第4実施形態の本体部側端子は、当接する方向が異なる2つの端子を備えた構成となっている。各本体部側端子の構成は・・・従来用いられている構成としてもよい。」の記載によれば、「各本体部側端子」の構成を、「従来用いられている構成」としたものも引用例に記載されていると認められるところ、「従来用いられている構成」としては、上記ロ.の【0002】の「携帯情報機器において、電池パックの端子と導通して電気的接続する本体部側端子としては、・・・筒部の内部にプランジャーとスプリングとを設けて筒部の端部よりプランジャーの先端部を突出させて電池側端子と当接させる構成のものが用いられている。」、【0005】の「本体部201に電池パック210を装着しようとしたときに、電池側端子211が本体部側端子202のプランジャー206と当接し、装着が完了した時にはスプリング206が所定量圧縮した状態となり、この圧縮分だけ電池側端子211を付勢する構成となっている。」の各記載と図12により、筒部の内部にプランジャーとスプリングとを設けて筒部の端部よりプランジャーの先端部を突出させて電池側端子と当接させる構成であるといえる。そして、「各本体部側端子」のうち、いずれか一方を「第1の本体部側端子」、他方を「第2の本体部側端子」と称することは任意である。その上で、上記c.の検討結果を踏まえると、「本体部側端子は、前記電池パックの下面側の接点に当接して付勢するように配置された第一の本体部側端子と、前記電池パックの他端側の接点に当接して付勢するように配置された第二の本体部側端子とを、正極及び負極用に2つ実装され、」るといえる。
さらに、上記ハ.の【0013】の「落下時に作用する衝撃加速度などによって生じる外部振動による接点部の接続解除を防止」、上記ロ.の【0008】の「スプリング206が圧縮又は伸張することでプランジャー207が追従し、端子の当接状態が継続される。」、上記ト.の【0082】の「複数の方向から接点ばねを当接させた構造、・・(中略)・・などによって、常に電気的接続を維持でき、端子部において外力が加わったとき振動により共振した場合の当接解除を回避できるので、瞬断によって機器の動作不良が生じるなどの障害を防止できる。」の各記載から、前記「第1の本体部側端子」、「第2の本体部側端子」各々が「外力が加わったとき」、「外部振動に応じて」、「スプリングが圧縮又は伸張することで追従するプランジャー」を含むものであるといえるし、「プランジャー」の突出した先端が、下面側の面の電池側端子、他端側の面の電池側端子に対して、各々、別個独立に略垂直方向に追従し、当接することは明らかである。したがって、引用例は、「前記第1の本体部側端子は、前記正極及び負極のそれぞれについて、外力に応じて別個独立にスプリングが圧縮又は伸張することで追従するプランジャーからなり、該プランジャーの先端が、前記下面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、」ているといえるし、同様に、「前記第2の本体部側端子は、前記正極及び負極のそれぞれについて、外力に応じて別個独立にスプリングが圧縮又は伸張することで追従するプランジャーからなり、該プランジャーの先端が、前記他端側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、」ているといえる。

e.上記ロ.の【0004】の「本体部201の一面には、電池収納部209が凹状に形成されており、」、同「電池収納部209に着脱自在に組み付けられる電池パック210」、同「電池収納部209に電池パック210が装着されたときに、本体部側端子202と電池側端子211とが接触して電気的に接続される」、上記ハ.の【0013】の「落下時に作用する衝撃加速度などによって生じる外部振動による接点部の接続解除を防止でき、電源の瞬断や信号の欠落を防止することが可能な接点端子」の各記載及び上記d.の検討の結果も踏まえると、引用例は、「前記電池パックは、電池収納部に収納され、前記電池パックが装着されたときに、前記第一の本体部側端子、前記第二の本体部側端子のスプリングの弾性力で、本体部側端子と電池側端子とが接触して電気的に接続解除を防止する本体部側端子の接点端子構造。」といえる。

したがって、摘記した引用例の記載及び図面を総合すると、引用例には、以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

(引用発明)
「下面側の面と、該下面側の面に略直角の他端側の面にわたって設けられ、断面が略直角に曲げられた電池側端子を正極及び負極用に2つ設けられる電池パックと、該電池パックから電源が供給される携帯電話機の本体部とを電気的に接続する本体部側端子の接点端子構造であって、
本体部側端子は、前記電池パックの下面側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第一の本体部側端子と、前記電池パックの他端側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第二の本体部側端子とを、正極及び負極用に2つ実装され、
前記第1の本体部側端子は、前記正極及び負極のそれぞれについて、外力に応じて別個独立にスプリングが圧縮又は伸張することで追従するプランジャーからなり、該プランジャーの先端が、前記下面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記第2の本体部側端子は、前記正極及び負極のそれぞれについて、外力に応じて別個独立にスプリングが圧縮又は伸張することで追従するプランジャーからなり、該プランジャーの先端が、前記他端側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記電池パックは、電池収納部に収納され、前記電池パックが装着されたときに、前記第一の本体部側端子、前記第二の本体部側端子のスプリングの弾性力で、本体部側端子と電池側端子とが接触して電気的に接続解除を防止する本体部側端子の接点端子構造。」

[周知技術]
当審で新たに引用する、特開平10-284026号公報(以下、「周知例」という。)には、「電子機器のバッテリ固定構造」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば携帯用通信機器等をはじめとする電子機器のバッテリ固定構造に関し、特にバッテリカバーの外れ防止構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図5はこの種の電子機器における従来のバッテリ固定構造の一例を示すものである。図5に示すように、バッテリカバー1の裏側に張り付けたスポンジ等からなる緩衝材2によるバッテリ3の押圧と、バッテリカバー1側のストッパ受け4とリアケース5側のストッパ6との係止の双方の作用を利用して、バッテリ3およびバッテリカバー1の固定を行っていた。」(2頁左欄33?46行)

ロ.【0004】また、バッテリはバッテリ収納室内で若干の余裕を持って収納され、多少動くことがあるため、機器の落下等による衝撃でバッテリがバッテリカバーに当たる等、バッテリカバーに過度の力が加わることがある。」(2頁右欄2?6行)

ハ.図4より、バッテリの形状が略直方体であることは明らかである。

したがって、周知例には、上記イ.?ハ.より、以下の周知技術(以下、「周知技術」という。)が記載されていると認められる。

「電子機器の収納室内に略直方体のバッテリが、バッテリカバーで覆われて収納されること。」

3.対比
補正後の発明と引用発明とを対比すると、

a.引用発明の「下面側の面」、「他端側の面」は、それぞれ、補正後の発明の「第一面」、「第二面」に相当する。

b.引用発明の「下面側の面と、該下面側の面に略直角の他端側の面にわたって設けられ、断面が略直角に曲げられた電池側端子」は、下面側の面と、下面側の面に直交する他端側の面に「跨がるように連続して設けられ」ており「断面が略L字型をした一の極性をもつ電池側端子」といえる。
そして、上記a.の検討の結果を踏まえると、引用発明の「下面側の面と、該下面側の面に略直角の他端側の面にわたって設けられ、断面が略直角に曲げられた電池側端子を正極及び負極用に2つ設けられる電池パックと、該電池パックから電源が供給される携帯電話機の本体部とを電気的に接続する本体部側端子の接点端子構造であって、」と、
補正後の発明の「略直方体の第一面と該第一面に直交する第二面とを跨るように連続して設けられ、断面が略L字型をした一の極性をもった接点を正極及び負極のそれぞれで有するバッテリーパックと、該バッテリーパックから電源の供給を受ける携帯情報端末とを電気的に接続するバッテリ接続端子構造であって、」とは、以下の相違点1を除いて、
「第一面と該第一面に直交する第二面とを跨るように連続して設けられ、断面が略L字型をした一の極性をもった接点を正極及び負極のそれぞれで有するバッテリーパックと、該バッテリーパックから電源の供給を受ける携帯情報端末とを電気的に接続するバッテリ接続端子構造」の点で共通する。

c.引用発明の「携帯電話機の本体部」は、「電池パック」から電源が供給されるものなので、補正後の発明の「バッテリーパック」から電源の供給を受ける「携帯情報端末」に相当する。

d.上記a.乃至c.の検討の結果を踏まえると、引用発明の「本体部側の接点端子構造」は、補正後の発明の「バッテリ接続端子構造」に相当する。

e.上記a.b.の検討の結果を踏まえると、引用発明の「前記電池パックの下面側の電池側端子」は、補正後の発明の「前記バッテリーパックの第1面側の接点」に相当する。また、「当接して付勢するように」は、スプリングが圧縮又は伸張することで当接することを指しているので、「弾性をもって当接する」といえる。
そうすると、引用発明の「前記電池パックの下面側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第一の本体部側端子と」は、補正後の発明の「前記バッテリーパックの第一面側の接点に弾性をもって当接する第一の接続端子と」に相当する。同様に、引用発明の「前記電池パックの他端側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第二の本体部側端子とを、」は、補正後の発明の「前記バッテリーパックの第二面側の接点に弾性をもって当接する第二の接続端子とを」に相当する。更に、引用発明の「正極及び負極用に2つ実装され、」は、「補正後の発明の、正極及び負極のそれぞれで個別に備え、」に相当する。
よって、引用発明の「前記電池パックの下面側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第一の本体部側端子と、前記電池パックの他端側の電池側端子に当接して付勢するように配置された第二の本体部側端子とを、正極及び負極用に2つ実装され、」は、補正後の発明の「前記バッテリーパックの第一面側の接点に弾性をもって当接する第一の接続端子と、前記バッテリーパックの第二面側の接点に弾性をもって当接する第二の接続端子とを正極及び負極のそれぞれで個別に備え、」に相当する。

f.引用発明の「プランジャー」、「プランジャーの先端」が、それぞれ、補正後の発明の「端子片」、「頂点部」に相当する。
そして、上記e.の検討の結果を踏まえると、引用発明の「前記第1の本体部側端子は、前記正極及び負極のそれぞれについて、外力に応じて別個独立にスプリングが圧縮又は伸張することで追従するプランジャーからなり、該プランジャーの先端が、前記下面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記第2の本体部側端子は、前記正極及び負極のそれぞれについて、外力に応じて別個独立にスプリングが圧縮又は伸張することで追従するプランジャーからなり、該プランジャーの先端が、前記他端側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、」と、
補正後の発明の「前記第一の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する円錐状の端子片からなり、該円錐の頂点部が前記第一面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記第二の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する円錐状の端子片からなり、該円錐の頂点部が前記第二面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、」とは、以下の相違点2を除いて、
「前記第一の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する端子片からなり、該端子片の頂点部が前記第一面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記第二の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する端子片からなり、該端子片の頂点部が前記第二面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、」の点で共通する。

g.引用発明の「電池収納部」が、補正後の発明の「バッテリパック格納部」に相当する。

h.引用発明の「本体部側端子のスプリングの弾性力」は、補正後の発明の「接続端子のバネの力」に相当する。

i.引用発明の「本体部側端子と電池側端子とが接触して電気的に接続解除を防止する」は、引用例の上記ハ.の【0013】の「電源の瞬断や信号の欠落を防止する」とあることから、補正後の発明の「前記バッテリーパックの前記接点との接続を保持すること」に相当する。

そして、上記d.の検討の結果を踏まえると、引用発明の「前記電池パックは、電池収納部に収納され、前記電池パックが装着されたときに、前記第一の本体部側端子、前記第二の本体側端子のスプリングの弾性力で、本体部側端子と電池側端子とが接触して電気的に接続解除を防止する本体部側端子の接点端子構造」と、
補正後の発明の「前記バッテリーパックは、バッテリーパック格納部にバッテリーパックカバーで覆われて収納され、前記バッテリーパックが装着された状態にて、前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子のバネの力で前記バッテリーパックの前記接点との接続を保持することを特徴とするバッテリ接続端子構造」とは、以下の相違点3を除いて、
「前記バッテリーパックは、バッテリーパック格納部に収納され、前記バッテリーパックが装着された状態にて、前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子のバネの力で前記バッテリーパックの前記接点との接続を保持することを特徴とするバッテリ接続端子構造」の点で共通する。

したがって、両者は、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「第一面と該第一面に直交する第二面とを跨るように連続して設けられ、断面が略L字型をした一の極性をもった接点を正極及び負極のそれぞれで有するバッテリーパックと、該バッテリーパックから電源の供給を受ける携帯情報端末とを電気的に接続するバッテリ接続端子構造であって、
接続端子は、前記バッテリーパックの第一面側の接点に弾性をもって当接する第一の接続端子と、前記バッテリーパックの第二面側の接点に弾性をもって当接する第二の接続端子とを正極及び負極のそれぞれで個別に備え、
前記第一の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する端子片からなり、該端子片の頂点部が前記第一面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記第二の接続端子は、前記正極及び負極それぞれについて、外力に応じて別個独立に沈み込みあるいは突出する端子片からなり、該端子片の頂点部が前記第二面側の接点に対して略垂直方向に追従可能に当接し、前記バッテリーパックは、バッテリーパック格納部に収納され、前記バッテリーパックが装着された状態にて、前記第一の接続端子及び前記第二の接続端子のバネの力で前記バッテリーパックの前記接点との接続を保持することを特徴とするバッテリ接続端子構造。」

(相違点1)一致点の「バッテリーパック」について、補正後の発明が、「略直方体の」ものであるのに対して、引用発明は、「略直方体の」ものではない点。

(相違点2)一致点の「端子片」の形状について、補正後の発明では、「円錐状」であるのに対して、引用発明では、「円錐状」と特定されていない点。

(相違点3)一致点の「前記バッテリーパックは、バッテリーパック格納部に収納され」について、補正後の発明においては、「バッテリーパックカバーで覆われて」いるのに対して、引用発明においては、「電池パック」が、筐体の外面に装着されるようになっていて、バッテリーカバーの機能も有している点。

4.判断
上記相違点について検討すると

(相違点1)と(相違点3)について、
上記[周知技術]の欄で示したように、「電子機器の収納室内に略直方体のバッテリが、バッテリカバーで覆われて収納されること。」は、周知技術である。そして、引用発明のような「携帯電話機」において、電池(バッテリー)パックをどのように収納するかは、一般的な課題であるから、引用発明に上記周知技術を適用して、「電池パック」を「略直方体」とし(相違点1)、「バッテリーカバーで覆われて収納」する構成とすること(相違点3)は、当業者が容易に想到できることである。

(相違点2)について
補正後の発明の「円錐状」について、本願明細書の段落【0025】?【0026】及び図5、図6の記載から、「円錐状」には、先端が丸みを帯びて突出した形状が含まれることは明らかである。そして、引用例に記載の「プランジャー」の形状も、引用例の図12を参酌すると、先端が丸みを帯びて突出した形状を有していることが見て取れる。してみると、この点において両者には、実質的な差異は認められない。また仮に引用例の「プランジャー」の形状が「円錐状」でないとしても、電池(バッテリ-)を接続するための端子の形状を「円錐状」とすることは、常套手段(例えば、特開2007-73860号公報【0021】参照。)であり、該常套手段を引用発明の本体側端子に適用することにより、当業者が容易に想到できたものである。

そして補正後の発明の作用・効果も、引用発明及び周知技術等から当業者が予測できる範囲のものである。

3 むすび
以上のとおり、補正後の発明は、引用発明及び周知技術等に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は、前記「第2 補正却下の決定」の項中の前記「1 本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。

2 引用発明及び周知技術
引用発明と周知技術は、前記「第2 補正却下の決定」の項中の前記「2.引用発明と周知技術」の項でそれぞれ「引用発明」、「周知技術」として認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、補正後の発明から上記補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記補正に係る限定を付加した補正後の発明が、前記「第2 補正却下の決定」の項中の前記「2(2)独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術等に基づいて容易に発明することができたものであるから、補正後の発明から本件補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-30 
結審通知日 2015-10-06 
審決日 2015-12-09 
出願番号 特願2010-33613(P2010-33613)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丸山 高政白川 瑞樹戸次 一夫  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
山中 実
発明の名称 接触断の発生を抑えた携帯情報端末のバッテリ接続端子構造  
代理人 丸山 隆夫  

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