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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1313621
審判番号 不服2015-8852  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-13 
確定日 2016-04-20 
事件の表示 特願2012-538430「統合ナビゲーションレシーバを備えたコンパクトマルチパス耐性アンテナシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月26日国際公開、WO2011/061589、平成25年 3月28日国内公表、特表2013-511187〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯と本願発明
本願は,2010年11月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年11月17日,米国 2010年11月12日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年7月24日付けで拒絶理由が通知され,同年10月20日に手続補正書が提出されたが,平成27年1月13日付けで拒絶査定がなされ,これを不服として同年5月13日に審判請求がなされたものであって,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年10月20日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「第1アンテナアセンブリであって,
第1周囲,第1表面,及び第2表面を有し,第2表面が前記第1表面と反対側に位置する第1グランドプレーンと,
第2周囲を有し,前記第1表面から離間された第1ラジエターパッチと,
前記第1ラジエターパッチと前記第1表面の間に配置された第1誘電媒 体と,
前記第1ラジエターパッチ内で第1電磁信号を励磁するように構成され た励磁機と
を含む前記第1アンテナアセンブリと,
前記第1アンテナアセンブリと電磁結合された第2アンテナアセンブリで
あって,
第3周囲,第3表面,及び第4表面を有する第2グランドプレーンであ
って,
前記第4表面が前記第3表面と反対側に位置し,
前記第3表面が前記第2表面と近接し,
前記第1グランドプレーンが前記第2グランドプレーンと前記第1誘
電媒体の間に配置され,
前記第1グランドプレーンに電気的に接続された前記第2グランドプ
レーンと,
第4周囲を有し,前記第4表面から離間された第2ラジエターパッチで
あって,
前記第2グランドプレーンが前記第1グランドプレーンと前記第2ラ
ジエターパッチの間に配置され,
前記第1電磁信号によって誘導された第3電磁信号に応答して第2電
磁信号を励磁するように構成された前記第2ラジエターパッチと,
前記第2ラジエターパッチと前記第4表面の間に配置された第2誘電媒

を含む前記第2アンテナアセンブリと,
前記第1ラジエターパッチに電気的に接続され,前記第2ラジエターパッチに電磁結合された信号ポートと
を含むパッチアンテナシステム。」

2 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特表2006-500821号公報(発明の名称:マルチパス無線信号の影響を低下させるためのアンテナ構造)(以下,「引用例」という。)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0007】
一般に,アンテナシステムの上下比は,原理的に接地面のサイズと形状により決まる。理想的には,無限大の平坦な金属製接地面は,アンテナ水平面の下から受信する信号を完全に抑圧する。実際に,大きな接地面を利用して良好な上下比性能を得ているアンテナシステムも多い。とりわけ,GPS「チョークリング」が周知であり,接地面の上面に形成される幾つかの同心円状の溝を備える接地面である。それらは,高精度のGPS/GLONASS用途で広く用いられ,良好なマルチパス除去性能を有する。これらのシステムにおける接地面の代表的な直径は30?50cm程度なので,携帯無線ナビゲーション装置での使用は嵩張るために限界がある。基地局のアンテナ部分として用いられることがほとんどである。
【0008】
移動局では,サイズが小さく生産性が高いのでマイクロストリップアンテナが用いられる。しかしながら,これらのアンテナは上下比が低く,マルチパス抑圧能力はほとんどない。
【0009】
本発明は,小型であるにもかかわらず,良好な上下比,および良好なマルチパス抑圧性能を有するアンテナシステムを提供することを目指している。」

イ 「【0018】
図1は,本発明によるアンテナシステムの第1の実施例5の分解斜視図を示す。システム5は,信号受信アンテナ10,低雑音増幅器(LNA)を含む接地された筐体18,およびパッシブアンテナ20を備える。受信アンテナとパッシブアンテナとの間の強い相互電磁結合のために,かかるアンテナシステムの指向性およびマルチパス抑制能力は,受信アンテナ単体のものとは異なる。
【0019】
受信アンテナ10は,第1面と第2面を有する誘電体基板12,基板12の第1面の少なくとも一部に配置されるアンテナ素子11,および基板12の第2面に配置される導電性接地面13を備える。アンテナ素子11と接地面13とは,共同で従来型パッチアンテナ構成を備える。一般的に接地面13は,アンテナ素子11と同じかそれ以上の面積に広がり,誘電体基板12の第2面の一部または全部を覆う。しかし,接地面13がアンテナ素子11より狭い面積を覆うことも可能である。受信アンテナ10は,アンテナ素子11から誘電体基板12を通って形成され,基板12の少なくとも第2面にまで伸びる導電性供給リード線15を更に備える。供給線15は,基板12の第2面を超えて伸びてもよい。開口部14を接地面13に形成して,供給リード線15と接地面13とを電気絶縁する(すなわち,リード線15と面13との間の直流電流路を妨げる)。開口部14は,リード線15を中心として同心円状に配置されて,同軸インターフェースおよび信号ポートを形成するのが好ましい。以下,より詳細に説明するように,低雑音増幅器への入力は,この同軸インターフェースに結合するのが好ましく,増幅器は接地された筐体18内に収納される。他の実施の形態では,同軸伝送ラインが,同軸インターフェースに結合してもよい。
【0020】
パッシブアンテナ20は,第1面と第2面を有する誘電体基板22,基板22の第1面の少なくとも一部に配置されるアンテナ素子21,および基板22の第2面に配置される導電性接地面23を備える。アンテナ素子21と接地面23とは,共同で従来型パッチアンテナ構成を備える。一般的に,接地面23は,アンテナ素子21と同じかそれ以上の面積に広がり,誘電体基板22の第2面の一部または全部を覆う。しかし,接地面23がアンテナ素子21より狭い面積を覆うことも可能である。パッシブアンテナ20は,アンテナ素子21から接地面23まで,誘電体基板22を通って形成されるスルーホール25を更に備える。以下に示すように,スルーホール25は,接地筐体18から外部環境までケーブルを取り回せるよう提供される。一般的に,スルーホール25は,導電性材料でメッキを施され,アンテナ素子21の中心と接地面23との間の導電パスを形成する。メッキされた導電性材料により,パッシブアンテナ20の動作に関して有するケーブルの影響は最小化される。しかし,スルーホール25の断面積がアンテナ素子21の面積の15ないし20分の1しかない場合,このような小さな断面積はパッシブアンテナの動作にほとんど影響を与えないので,スルーホール25の内面は,メッキを施さなくてもよい。言うまでもなく,ここで説明したメッキを施した各スルーホール,リード線,およびトレースは,導電性パスを提供する。
【0021】
接地筐体18は,図2の断面図に概略を示す低雑音増幅器(LNA)16を収容し,電気的にシールドするのに用いられることが好ましい。LNA16を提供するための幾つかのオプションが利用可能である。密閉型LNAを,受信アンテナ10の接地面13に接着してもよい。LNA16の電気入力の構成およびアンテナシステムの所望の動作特性に依っては,ワイヤ,コンデンサ,インピーダンス整合部品,またはインピーダンス整合ネットワークを用いて,リード線15の先端をLNA16の入力に結合してもよい。そして,LNAの出力を,次に外部環境に取り回す同軸線17に結合してもよい。別のオプションとして,LNA部品を載せる超小型回路基板を接地面13に接着してもよく,ワイヤ,コンデンサ,インピーダンス整合部品,またはインピーダンス整合ネットワークを用いて,リード線15の先端を超小型回路基板の入力に電気結合してもよい。そして,超小型回路基板の出力を,次に外部環境に取り回す同軸線17に結合してもよい。
【0022】
図1を参照すると,筐体18は,底面,1つ以上の側面,および,上面周囲に形成される薄い縁をもつ開口上面をもつ薄い箱を備えるのが一般的であり,縁は箱の側面に取り付けられる。筐体18の薄い箱は,単一の側面を備えて薄い円板形状を有してもよく,または楕円か多角形の形状を有する2つ以上の側面を有してもよい。図1には正方形状が示されている。筐体18の底面,側面,および,上部の縁は,全体を金属で形成するか,または外側に導電性外膜をもつ複合材料で形成してもよい。受信アンテナ10の接地面13は,筐体18の上部の縁に重ねて配置され,好ましくは金属ベースのハンダにより,上部の縁にシールされる。同様に,パッシブアンテナ20の接地面23は,筐体18の底面に重ねて配置され,好ましくは金属ベースのハンダにより,底面にシールされる。ハンダは,筐体18の底面の縁に沿って施してもよく,または底面の全面にわたって施してもよい。筐体18の底面に開口部19が形成される。開口部19はスルーホール25と位置を合わせて,筐体18から出るケーブル(例えば,同軸線17)の通路を確保する。別の実施では,筐体18の底面は,筐体18の上面と同様の開口構造を有して,接地面23の外周にシールされる,対応する底面の縁を有してもよい。
【0023】
電力は,同軸線17の内側コアにDC電圧を重畳し,LNA16内のフィルタにより受信アンテナ信号からDC電圧を分離することにより,LNA16に提供される。この技法は,当該技術で周知であり,その説明は,本発明をし,また使用するのに不要である。接地ポテンシャルは,同軸線17の外側接地シールドにより提供される。他のオプションとして,同軸線17内またはそれに沿わせた別の電力線および/または別の接地線を供給してもよい。
【0024】
LNA16を用いるのが好ましいが,実施の形態によっては省略してもよい。その場合は,筐体18は,同軸線17用の空間を与えてリード線15の経路を提供する。以下に示すように,リード線15は,アンテナ素子11の中心からずれていて,入力インピーダンスの特定レベルを達成し,右旋回偏波(RHCP)衛星信号の受信を強める。LNA16を省略する場合,筐体18は,経路を提供するとともに,2つのアンテナ接地面13および23を互いに電気結合する回路基板により置き換えてもよい。また,図3の50で説明するように,もっと単純な全体構成を用いてもよい。この実施の形態では,接地面13および23に代わりに,単一の接地面53を用いる。基板12は,接着剤で接地面53に接着してもよく,または,多層プリント基板で行うように,全体構成を一体的に構成してもよい。同軸線17は,スルーホール25に挿入されるとともに,先端部をリード線15にハンダ付けされ,同軸シールド周囲の外側絶縁は除去され,シールドの僅かに露出した部分をスルーホール25のメッキを施した面にハンダ付けしてもよい。代替として,同軸ケーブルコネクタを組み込んだ構造として,同軸線17のための接続点としてもよい。例えば,このようなコネクタをリード線15にハンダ付けしてから,基板12を接地面53に接着し,その後でコネクタの接地シールドをスルーホール25にハンダ付けしてもよい。
【0025】
さらに別の実施では,LNA部品を載せる超小型回路基板をパッシブアンテナ素子21のパッチに取り付けることにより,LNAを実施の形態50に用いてもよい。
【0026】
上記の好適な実施例では,LNA16を用いるかどうかに拘わらず,リード線15および最も近い接地面が信号ポートを提供し,そのポートにおいて,LNAによる処理に対して,またはケーブルによる外部LNAかプロセッサへの伝送に対して,受信したアンテナ信号が利用可能となる。この信号ポートは,図2および図3で参照符号6により示す。LNA16または同軸線17のいずれかが信号ポート6に結合される。受信アンテナのアンテナ素子11は,リード線15に電気結合するので,アンテナ素子11は信号ポート6にも電気結合される。対照的に,パッシブアンテナ20のアンテナ素子21は,リード線15に電気結合しないので,信号ポート6から電気絶縁される(すなわち,電気結合されない)。本明細書で用いる場合,「電気絶縁」は,アンテナ素子21から信号ポート6のリード線15までの直流電流(DC)路がないことを意味する。従って,受信アンテナ素子と信号ポート(およびLNAまたは同軸線)との間の電気結合度(例えば,信号の供給量)は,パッシブアンテナ素子と信号ポート(およびLNAまたは同軸線)との間の電気結合度よりも高い。
【0027】
上記説明の実施の形態は,放射素子(素子11)に電気結合され,かつアンテナ素子21等の他のアンテナ素子から電気絶縁される供給リード線15を有する同軸供給構造を用いるが,本発明の他の実施の形態では,当該技術で周知の他の供給構造を用いてもよい。他の供給構造の実施例は:マイクロストリップライン供給,近接結合,および開口結合である。(多様な供給構造に関する優れた分類が,「マイクロストリップアンテナ:マイクロストリップアンテナおよびアレイの解析と設計。選定再版」IEEE PRESS 1995年,からのDaniel H.Schaubertによる「幾つかのマイクロストリップアンテナ特性のレビュー」に与えられている)。これらの供給構造の幾つかは,アンテナ素子21等の他のアンテナ素子はもとより,放射素子にDC接点を有する供給ラインを用いる(但し,受信周波数で結合度が異なる)。そして,これらの構造の幾つかは,放射素子および他のアンテナ素子から電気絶縁される供給ラインを有することができる。しかし,これらの構造の全てを本発明に適用する場合,用語が信号供給に関する当該技術で知られかつ使用されているところでは,受信アンテナ素子は「供給」と考えられ,一方,パッシブアンテナ素子は「非供給」であると考えられる。言いかえると,受信アンテナ素子11と信号ポート(およびLNAまたは同軸ケーブル)との間の電気結合度(例えば,信号の供給量)は,特に,受信アンテナの受信周波数(動作周波数)および受信周波数周辺の周波数帯域(例えば,VSWR≦2で定義される帯域幅)では,パッシブアンテナ素子21と信号ポート(およびLNAまたは同軸ケーブル)との間の電気結合度よりも高い。これは,結合度(供給量)が全周波数で同一である全方向性アンテナシステムと対照的である。」

上記引用例の記載及び図面(特に,図1,2)ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,以下の技術事項が読み取れる。

a 引用例の「アンテナシステム5」は,「受信アンテナ10」,「接地筐体18」,「パッシブアンテナ20」を含む。
b 引用例の「受信アンテナ10」は,「誘電体基板12」,誘電体基板12の下面(第2面)に形成された「接地面13」,誘電体基板12の上面(第1面)に形成された「アンテナ素子11」,アンテナ素子11を励磁する「リード線15」を含む。
c 引用例の「パッシブアンテナ20」は,「誘電体基板22」,誘電体基板22の上面(第2面)に形成された「接地面23」,誘電体基板22の下面(第1面)に形成された「アンテナ素子21」を含み,「アンテナ素子21」は「接地面23」から「離間された位置に配置」されている。
d 引用例の「筐体18の底面,側面,および,上部の縁は,全体を金属で形成するか,または外側に導電性外膜をもつ複合材料で形成してもよい。受信アンテナ10の接地面13は,筐体18の上部の縁に重ねて配置され,好ましくは金属ベースのハンダにより,上部の縁にシールされる。同様に,パッシブアンテナ20の接地面23は,筐体18の底面に重ねて配置され,好ましくは金属ベースのハンダにより,底面にシールされる。」(段落【0022】)の記載によれば,「接地面13」と「接地面23」は接地筐体18を介して「電気的に接続」されている。
e 引用例の「受信アンテナとパッシブアンテナとの間の強い相互電磁結合のために,かかるアンテナシステムの指向性およびマルチパス抑制能力は,受信アンテナ単体のものとは異なる。」(段落【0018】)の記載から,「受信アンテナ10」と「パッシブアンテナ20」は「相互電磁結合」している。
f 引用例の「受信アンテナのアンテナ素子11は,リード線15に電気結合するので,アンテナ素子11は信号ポート6にも電気結合される。」(段落【0026】)の記載によれば,「信号ポート6」は「アンテナ素子11」に「電気的に接続」している。
g 引用例の『対照的に,パッシブアンテナ20のアンテナ素子21は,リード線15に電気結合しないので,信号ポート6から電気絶縁される(すなわち,電気結合されない)。本明細書で用いる場合,「電気絶縁」は,アンテナ素子21から信号ポート6のリード線15までの直流電流(DC)路がないことを意味する。従って,受信アンテナ素子と信号ポート(およびLNAまたは同軸線)との間の電気結合度(例えば,信号の供給量)は,パッシブアンテナ素子と信号ポート(およびLNAまたは同軸線)との間の電気結合度よりも高い。』(段落【0026】)の記載,及び,上記dに記したように「受信アンテナ10」と「パッシブアンテナ20」は「相互電磁結合」している事実に鑑みれば,「信号ポート6」は「アンテナ素子21」に「電磁結合」されているといえる。

以上を総合すると,上記引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されていると認める。

「受信アンテナ10であって,
接地面13と,
前記接地面13から離間されたアンテナ素子11と,
前記アンテナ素子11と前記接地面13の間に配置された誘電体基板12と,
前記アンテナ素子11に電磁信号を励磁するように構成されたリード線15と
を含む前記受信アンテナ10と,
前記受信アンテナ10と相互電磁結合されたパッシブアンテナ20であって,
接地面23であって,
接地筐体18を挟んで前記接地面13に近接し,
前記接地面13が前記接地面23と前記誘電体基板12の間に配置され,
前記接地面13に電気的に接続された前記接地面23と,
前記接地面23から離間した位置に配置されたアンテナ素子21であって,
前記接地面23が前記接地面13と前記アンテナ素子21の間に配置され,
前記アンテナ素子11と相互電磁結合するように構成されたアンテナ素子21と,
アンテナ素子21と前記接地面23の間に配置された誘電体基板22とを含む前記パッシブアンテナ20と,
前記アンテナ素子11に電気的に接続され,前記アンテナ素子21に電磁結合された信号ポート6と
を含むアンテナシステム5。」

3 対比
本願発明と引用発明とを,特に引用例の図1,2を参照しながら対比するに,
a 引用発明の「接地面13」は,誘電体基板12の第2面に形成された特定の面積に広がる導電性の「面」であるから,特定の「輪郭」すなわち特定の「周囲」を有し,誘電体基板12に接する面である「上面」,一部が接地筐体18に接する面である「下面」を有し,かつ,該「下面」が「上面」とは反対側に位置することは明らかである。そして,前記「周囲」,「上面」,「下面」を,それぞれ,「第1周囲」,「第1表面」,「第2表面」と称することは任意である。
また,「接地面13」が「グランドプレーン」であることは自明であって,これを「第1グランドプレーン」と称することも任意である。
そうすると,引用発明の「接地面13」は,本願発明の「第1周囲,第1表面,及び第2表面を有し,第2表面が前記第1表面と反対側に位置する第1グランドプレーン」に相当する。
b 引用発明の「アンテナ素子11」が「周囲」を有しておりこれを「第2の周囲」と称することは任意である。
また,「アンテナ素子11」が「接地面13」から「離間」されている以上,該「接地面13」の「上面」すなわち上記aで述べた「第1表面」から離間されていることは明らかである。
そうすると,引用発明の「前記接地面13から離間されたアンテナ素子11」は,本願発明の「第2周囲を有し,前記第1表面から離間された第1ラジエターパッチ」に相当する。
c 引用発明の「誘電体基板12」が「アンテナ素子11」と接地面13の「上面」との間に配置されてることは明らかであって,引用発明の「前記アンテナ素子11と前記接地面13の間に配置された誘電体基板12」は,本願発明の「前記第1ラジエターパッチと前記第1表面の間に配置された第1誘電媒体」に相当する。
d 引用発明の「前記アンテナ素子11に電磁信号を励磁するように構成されたリード線15」は,本願発明の「前記第1ラジエターパッチ内で第1電磁信号を励磁するように構成された励磁機」に明らかに相当する。
e 上記a?dによれば,引用発明の「受信アンテナ10」は,本願発明の「第1アンテナアセンブリ」に相当する。
f 引用発明の「接地面23」は誘電体基板22の第2面に形成された特定の面積に広がる導電性の「面」であるから,特定の「輪郭」すなわち特定の「周囲」を有し,接地筐体18に接する面である「上面」,誘電体基板22に接する面である「下面」を有し,かつ,該「下面」が「上面」とは反対側に位置することは明らかである。そして,前記「周囲」,「上面」,「下面」を,それぞれ,「第3周囲」,「第3表面」,「第4表面」と称することは任意である。
また,「接地面23」は「接地筐体18を挟んで前記接地面13に近接し」ているから,その「上面」すなわち「第3表面」は,「接地面13」の「下面」すなわち「第2表面」と「近接し」ているといえる。
また,「接地面13」すなわち「第1グランドプレーン」は,「接地面23」と前記「誘電体基板12」すなわち「第1誘電媒体」の間に配置されている。
また,「接地面23」が「グランドプレーン」であることは自明であって,これを「第2グランドプレーン」と称することは任意である。
また,「接地面13」と「接地面23」は「電気的に接続されている」ものである。
そうすると,引用発明の「接地面23であって,接地筐体18を挟んで前記接地面13に近接し,前記接地面13が前記接地面23と前記誘電体基板12の間に配置され,前記接地面13に電気的に接続された前記接地面23」は,本願発明の「第3周囲,第3表面,及び第4表面を有する第2グランドプレーンであって,前記第4表面が前記第3表面と反対側に位置し,前記第3表面が前記第2表面と近接し,前記第1グランドプレーンが前記第2グランドプレーンと前記第1誘電媒体の間に配置され,前記第1グランドプレーンに電気的に接続された前記第2グランドプレーン」に相当する。
g 引用発明の「アンテナ素子21」は「周囲」を有しておりこれを「第4の周囲」と称することは任意である。
また,「アンテナ素子21」が「接地面23」から「離間した位置に配置され」ている以上,該「接地面23」の「下面」すなわち上記fで述べた「第4表面」から離間されていることは明らかである。
また,「前記接地面23が前記接地面13と前記アンテナ素子21の間に配置され」ている。
また,「アンテナ素子21」は「アンテナ素子11とは相互電磁結合するように構成され」ていることから,該「アンテナ素子21」は,「アンテナ素子11」内で励磁された「第1電磁信号」により誘導された電磁信号に応答して自らも電磁信号を励磁することは技術常識であって,該誘導された「電磁信号」と自らが励磁する「電磁信号」をそれぞれ「第3の電磁信号」,「第2の電磁信号」と称することは任意である。
そうすると,引用発明の「接地面24から離間した位置に配置されたアンテナ素子21であって,前記接地面23が前記接地面13と前記アンテナ素子21の間に配置され,前記アンテナ素子11と相互電磁結合するように構成されたアンテナ素子21」は,本願発明の「第4周囲を有し,前記第4表面から離間された第2ラジエターパッチであって,前記第2グランドプレーンが前記第1グランドプレーンと前記第2ラジエターパッチの間に配置され,前記第1電磁信号によって誘導された第3電磁信号に応答して第2電磁信号を励磁するように構成された前記第2ラジエターパッチ」に相当する。
h 引用発明の「誘電体基板22」が「アンテナ素子21」と接地面23の「下面」との間に配置されていることは明らかであって,引用発明の「アンテナ素子21と前記接地面23の間に配置された誘電体基板22」は,本願発明の「前記第2ラジエターパッチと前記第4表面の間に配置された第2誘電媒体」に相当する。
i 上記f?hによれば,引用発明の「パッシブアンテナ20」は,本願発明の「第2アンテナアセンブリ」に相当する。
j 引用発明の「信号ポート6」は,本願発明の「信号ポート」に明らかに相当する。
k 引用例の「アンテナ素子11と接地面13とは,共同で従来型パッチアンテナ構成を備える」(段落【0019】),「アンテナ素子21と接地面23とは,共同で従来型パッチアンテナ構成を備える」(段落【0020】)などの記載によれば,引用発明の「受信アンテナ10」および「パッシブアンテナ20」はそれぞれ「パッチアンテナ」であるから,「受信アンテナ10」と「パッシブアンテナ20」をふくむ「アンテナシステム5」も明らかに「パッチアンテナシステム」である。

したがって,本願発明の用語を用いて表現すると両者は,
「第1アンテナアセンブリであって,
第1周囲,第1表面,及び第2表面を有し,第2表面が前記第1表面と反対側に位置する第1グランドプレーンと,
第2周囲を有し,前記第1表面から離間された第1ラジエターパッチと,
前記第1ラジエターパッチと前記第1表面の間に配置された第1誘電媒 体と,
前記第1ラジエターパッチ内で第1電磁信号を励磁するように構成され た励磁機と
を含む前記第1アンテナアセンブリと,
前記第1アンテナアセンブリと電磁結合された第2アンテナアセンブリで
あって,
第3周囲,第3表面,及び第4表面を有する第2グランドプレーンであ
って,
前記第4表面が前記第3表面と反対側に位置し,
前記第3表面が前記第2表面と近接し,
前記第1グランドプレーンが前記第2グランドプレーンと前記第1誘
電媒体の間に配置され,
前記第1グランドプレーンに電気的に接続された前記第2グランドプ
レーンと,
第4周囲を有し,前記第4表面から離間された第2ラジエターパッチで
あって,
前記第2グランドプレーンが前記第1グランドプレーンと前記第2ラ
ジエターパッチの間に配置され,
前記第1電磁信号によって誘導された第3電磁信号に応答して第2電
磁信号を励磁するように構成された前記第2ラジエターパッチと,
前記第2ラジエターパッチと前記第4表面の間に配置された第2誘電媒

を含む前記第2アンテナアセンブリと,
前記第1ラジエターパッチに電気的に接続され,前記第2ラジエターパッチに電磁結合された信号ポートと
を含むパッチアンテナシステム。」で一致するものであり,相違点は認められない。

4 判断
本願発明は,引用例に記載された発明に該当するから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に該当するから,特許法第29条第1項3号の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-18 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-07 
出願番号 特願2012-538430(P2012-538430)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 新川 圭二
▲高▼橋 真之
発明の名称 統合ナビゲーションレシーバを備えたコンパクトマルチパス耐性アンテナシステム  
代理人 藤本 芳洋  

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