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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1313652
審判番号 不服2015-3125  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-18 
確定日 2016-04-21 
事件の表示 特願2010-158553号「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年2月2日出願公開、特開2012-20618号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月13日の出願であって、平成26年5月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年6月24日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年11月28日付けで拒絶査定がされ、同査定の謄本は平成26年12月2日に請求人に送達された。
これに対して、平成27年2月18日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正書が提出された。


第2 平成27年2月18日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年2月18日の手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成27年2月18日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
なお、下線部は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダル状に延在するカーカス層と、該カーカス層の外側に配置されるベルト層を備えた空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層は、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、
前記ベルト層は、タイヤの赤道に対する角度を15°?75°の範囲で傾斜させた第1のコードを配置した第1のベルトと、タイヤの赤道と平行に延びる第2のコードを配置した第2のベルトとを備え、
前記第2のコードは、前記トレッド部を幅方向中央に位置するセンター域と該センター域の両外側に位置するショルダー域とに分けた場合に、ショルダー域に位置するコードがセンター域に位置するコードよりも広いコード間隔を有し、
前記第2のコードは、前記センター域に位置するコードの間隔をDcとし前記ショルダー域に位置するコードの間隔をDsとする際に、1.7≦Ds/Dc<3.0の関係を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年6月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダル状に延在するカーカス層と、該カーカス層の外側に配置されるベルト層を備えた空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層は、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、
前記ベルト層は、タイヤの赤道に対する角度を15°?75°の範囲で傾斜させた第1のコードを配置した第1のベルトと、タイヤの赤道と平行に延びる第2のコードを配置した第2のベルトとを備え、
前記第2のコードは、前記トレッド部を幅方向中央に位置するセンター域と該センター域の両外側に位置するショルダー域とに分けた場合に、ショルダー域に位置するコードがセンター域に位置するコードよりも広いコード間隔を有し、
前記第2のコードは、前記センター域に位置するコードの間隔をDcとし前記ショルダー域に位置するコードの間隔をDsとする際に、1.2<Ds/Dc<3.0の関係を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。」

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
上記本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第2のコードは、前記センター域に位置するコードの間隔をDcとし前記ショルダー域に位置するコードの間隔をDsとする際に、1.2<Ds/Dc<3.0の関係を満たすこと」について、その数値範囲の下限値を「1.7≦」とすることで数値範囲を限定して、「前記第2のコードは、前記センター域に位置するコードの間隔をDcとし前記ショルダー域に位置するコードの間隔をDsとする際に、1.7≦Ds/Dc<3.0の関係を満たすこと」に限定するものであり、かつ、当該補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記事項は、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるので、上記本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)刊行物、刊行物に記載された事項及び発明
ア.
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2001-253208号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で加筆した。
(1a)
「【請求項1】 少なくとも一対のビードコア間に跨がってトロイド状をなすカーカスのクラウン部外周に、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びる複数本のコードまたはフィラメントを配列した1層の傾斜ベルト層と、この傾斜ベルト層上に位置し、タイヤ赤道面に対して実質状平行に複数本のコードを配列した少なくとも1層の周方向ベルト層と、前記周方向ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられるトレッドと、前記トレッドに設けられ周方向に沿って延びる周方向主溝と、を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、
タイヤ幅方向断面内において、前記周方向ベルト層の幅方向中心線を対称線とする前記周方向ベルト層の層幅の半分を占める部分を中央域、残りの部分を両端域とした場合、前記周方向ベルト層の周方向引張剛性の前記中央域における平均値が、前記両端域における平均値に比較して少なくとも15%以上大きいことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。」
(1b)
「【請求項4】 前記周方向ベルト層における単位幅当たりのコード本数の前記中央域における平均値が、前記両端域における平均値に比較して大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤ。」
(1c)
「【請求項15】 傾斜ベルト層のコードまたはフィラメントは、タイヤ赤道面に対する傾斜角度が15°?45°の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項14の何れか1項に記載の空気入りラジアルタイヤ。」
(1d)
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】特開平8-318706号公報に記載の空気入りラジアルタイヤでは、ベルトが2層であり、周方向ベルトに高強度の有機繊維コード(または最適に配置されたスチールコード)を用いることにより軽量化及び高速耐久性の向上が図られている。
【0005】しかしながら、上記のように、タイヤ赤道面に対して平行な複数本のコードと、タイヤ赤道面に対して傾斜する複数本のコードとを重ねた構造のベルトでは、周方向の引張剛性が構造上従来のクロスベルト構造(一方のベルト層のコードと、他方のベルト層のコードとがタイヤ赤道面を挟んで互いに反対方向に傾斜している。)に対して小さい。
【0006】ここで、特に、ベルト幅中央域の剛性に大きく影響され易い耐プランジャー性能の低下、操縦性悪化、石噛み時のグルーブクラックの発生等の現象が顕在化してくる問題があった。
【0007】本発明は上記事実を考慮し、上記の問題を生じさせることなく軽量化及び高速耐久性を維持することのできる空気入りラジアルタイヤを提供することが目的である。」
(1e)
「【0091】周方向ベルト層20Bの層数は2層以上でも良いが、軽量化の点からは1?2層程度が好ましい。
【0092】なお、周方向ベルト層20Bには、有機繊維コードに代えてスチールコードを用いることもできる。この場合、スチールコードの弾性率は3000kgf/mm2 以上であることが好ましい。
【0093】また、スチールコードの打ち込み数は、50mm当たり15?50本の範囲内にすることが好ましい。」
(1f)
「【0094】図1及び図2に示すように、トレッド部16には、タイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝24が複数本、本実施形態ではタイヤ赤道面CLを挟んで左右に2本づつ合計4本形成されている。
【0095】タイヤ幅方向断面内において、周方向ベルト層20Bの幅方向中心線(タイヤ赤道面CL)を対称線とする周方向ベルト層20Bの層幅Wの半分を占める部分を中央域CA、その両側の残りの部分を両端域EAとした場合、周方向ベルト層20Bの周方向引張剛性の中央域CAにおける平均値は、両端域EAにおける平均値に比較して少なくとも15%以上大きく設定されていること必要であり、20%以上大きいことが好ましい。
【0096】このように、周方向ベルト層20Bの周方向引張剛性の中央域CAにおける平均値を、両端域EAにおける平均値に比較して大きく設定するために、本実施形態では、周方向ベルト層20Bにおける単位幅当たりのコード本数(所謂打ち込み本数)の中央域CAにおける平均値を、両端域EAにおける平均値に比較して大きく設定している。」
(1g)
段落【0094】の【表2】には、実施例1(コード打ち込み本数(本/50mm)が、中央域で58、両端域で50)及び実施例2(コード打ち込み本数(本/50mm)が、中央域で64、両端域で50)が記載されている。

イ.
上記(1a)?(1g)及び図1?7から、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも一対のビードコア間に跨がってトロイド状をなすカーカスのクラウン部外周に、タイヤ赤道面に対して15°?45°の範囲で傾斜して延びる複数本のコードを配列した1層の傾斜ベルト層と、この傾斜ベルト層上に位置し、タイヤ赤道面に対して実質状平行に複数本のコードを配列した少なくとも1層の周方向ベルト層と、前記周方向ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられるトレッドと、を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、
タイヤ幅方向断面内において、前記周方向ベルト層の幅方向中心線を対称線とする前記周方向ベルト層の層幅の半分を占める部分を中央域、残りの部分を両端域とした場合、前記周方向ベルト層における単位幅当たりのコード本数の前記中央域における平均値が、前記両端域における平均値に比較して大きい、空気入りラジアルタイヤ。」

(3)対比・判断
ア.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)
タイヤのカーカスの構造は、通常カーカスプライであり、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部まで延在するから、引用発明の「一対のビードコア間に跨がってトロイド状をなすカーカス」は、本願補正発明の「トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダル状に延在するカーカス層」及び「前記カーカス層は、少なくとも1枚のカーカスプライからな」ることに相当する。
(イ)
引用発明の「タイヤ赤道面に対して傾斜して延びる複数本のコード」、「傾斜ベルト層」、「タイヤ赤道面に対して実質状平行に複数本のコード」及び「周方向ベルト層」は、それぞれ、本願補正発明の「タイヤの赤道に対する角度を傾斜させた第1のコード」、「第1のベルト」、「タイヤの赤道と平行に延びる第2のコード」及び「第2のベルト」に相当する。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)から、引用発明の「少なくとも一対のビードコア間に跨がってトロイド状をなすカーカスのクラウン部外周に、タイヤ赤道面に対して15°?45°の範囲で傾斜して延びる複数本のコードを配列した1層の傾斜ベルト層と、この傾斜ベルト層上に位置し、タイヤ赤道面に対して実質状平行に複数本のコードを配列した少なくとも1層の周方向ベルト層と、前記周方向ベルト層のタイヤ径方向外側に設けられるトレッドと、を備えた空気入りラジアルタイヤ」と、本願補正発明の「トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダル状に延在するカーカス層と、該カーカス層の外側に配置されるベルト層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層は、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、前記ベルト層は、タイヤの赤道に対する角度を15°?75°の範囲で傾斜させた第1のコードを配置した第1のベルトと、タイヤの赤道と平行に延びる第2のコードを配置した第2のベルトとを備え」ることとは、「トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダル状に延在するカーカス層と、該カーカス層の外側に配置されるベルト層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層は、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、前記ベルト層は、タイヤの赤道に対する角度を傾斜させた第1のコードを配置した第1のベルトと、タイヤの赤道と平行に延びる第2のコードを配置した第2のベルトとを備え」る限りで共通するといえる
(エ)
引用発明の「中央域」は、「タイヤ幅方向断面内において、周方向ベルト層の幅方向中心線を対称線とする前記周方向ベルト層の層幅の半分を占める部分」であるから、本願補正発明の「幅方向中央に位置するセンター域」に相当し、引用発明の「両端域」は、「中央域」を除いた「残りの部分」であるから、本願補正発明の「センター域の両外側に位置するショルダー域」に相当する。
(オ)
引用発明において、「単位幅当たりのコード本数の平均値」が大きいほど、コード間隔は小さくなり、その逆に、小さいほど、コード間隔は大きくなるといえる。
(カ)
上記(エ)及び(オ)から、引用発明の「周方向ベルト層における単位幅当たりのコード本数の中央域(センター域)における平均値が、両端域(ショルダー域)における平均値に比較して大きい」ことは、中央域(センター域)のコード間隔が、両端域(ショルダー域)のコード間隔よりも狭いことを意味しているから、本願補正発明の「第2のコードは、ショルダー域に位置するコードがセンター域に位置するコードよりも広いコード間隔を有し」ていることに相当する。
(キ)
上記(エ)?(カ)から、引用発明の「タイヤ幅方向断面内において、前記周方向ベルト層の幅方向中心線を対称線とする前記周方向ベルト層の層幅の半分を占める部分を中央域、残りの部分を両端域とした場合、前記周方向ベルト層における単位幅当たりのコード本数の前記中央域における平均値が、前記両端域における平均値に比較して大きい」ことは、本願補正発明の「前記第2のコードは、前記トレッド部を幅方向中央に位置するセンター域と該センター域の両外側に位置するショルダー域とに分けた場合に、ショルダー域に位置するコードがセンター域に位置するコードよりも広いコード間隔を有し」ていることに相当する。

イ.一致点及び相違点
以上より、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダル状に延在するカーカス層と、該カーカス層の外側に配置されるベルト層を備えた空気入りタイヤにおいて、
前記カーカス層は、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、
前記ベルト層は、タイヤの赤道に対する角度を傾斜させた第1のコードを配置した第1のベルトと、タイヤの赤道と平行に延びる第2のコードを配置した第2のベルトとを備え、
前記第2のコードは、前記トレッド部を幅方向中央に位置するセンター域と該センター域の両外側に位置するショルダー域とに分けた場合に、ショルダー域に位置するコードがセンター域に位置するコードよりも広いコード間隔を有している空気入りタイヤ。」
<相違点1>
「タイヤの赤道に対する角度を傾斜させた第1のコード」が、本願補正発明では、「タイヤの赤道に対する角度を15°?75°の範囲で傾斜させた第1のコード」であるのに対して、引用発明では、「タイヤの赤道に対する角度を15°?45°の範囲で傾斜させた第1のコード」である点。
<相違点2>
本願補正発明は、「前記第2のコードは、前記センター域に位置するコードの間隔をDcとし前記ショルダー域に位置するコードの間隔をDsとする際に、1.7≦Ds/Dc<3.0の関係を満たす」のに対して、引用発明は、コードの間隔について、そのような数値範囲が特定されていない点。

ウ.判断
以下、相違点について検討する。
<相違点1について>
(ア)
補強コードの角度に関する例示するまでもない周知技術等を参酌することで、引用発明の第1のコードの角度範囲15°?45°を、15°?75°の範囲に選定することは、当業者が適宜になし得たといえる。
<相違点2について>
(ア)
強度を維持しつつ軽量化を試みるという課題、及び、その課題を解決するためにセンター域とショルダー域とで、コードの間隔を調整する(コードの打ち込み本数を調整する)という手段は、本願補正発明(明細書の段落【0004】?【0006】を参照)と引用発明(上記(2)ア.(1d)及び(1f)を参照))とは共通しているといえる。
(イ)
単位幅当たりのコードの打ち込み本数を減らせばより軽量となること、及び、単位幅当たりのコードの打ち込み本数を増やせばより強度が増すことは、自明な事項であり、強度を考慮した上で軽量化を目的としてセンター域とショルダー域のコードの打ち込み本数を調整している引用発明において、強度を維持しつつ、さらなる軽量化を試み、センター域とショルダー域のコードの打ち込み本数(コードの間隔)の割合の調整を行うことは、当業者であれば、何ら創意工夫を必要とすることではない。
(ウ)
コードの打ち込み本数を減らしすぎると、軽量化には寄与するが強度が低下することは自明な事項であり、また、センター域の単位幅当たりのコードの打ち込み本数とショルダー域の単位幅当たりのコードの打ち込み本数との差が大きくことなると、センター域とショルダー域との強度が不釣り合いとなり、タイヤとしての機能を充分に発揮できなくなることも自明な事項であるので、タイヤとしての必要な機能を確保することを前提とした上で、限界のコードの打ち込み本数(コードの間隔)を探ることも、当業者であれば、ごく自然なことといえる。
(エ)
上記(2)ア.(1g)で摘記した、刊行物1の実施例2(コード打ち込み本数(本/50mm)が、中央域で64、両端域で50)について、Ds/Dcを求めると、概ね、Ds=50mm/50本、Dc=50mm/64本といえるから、Ds/Dc=64/50=1.28となる。
上記(ア)で述べたとおり、本件補正発明と引用発明とは、課題とその解決手段が共通であるといえるから、上記(イ)及び(ウ)で述べた自明な事項を踏まえることで、Ds/Dcが1.28程度を示している刊行物に記載の一実施例である実施例2のものよりも、引用発明において、適切な強度を維持しつつ、さらに軽量化を試みて、上記相違点2の本願のDs/Dcの数値範囲のものを求めることは、当業者にとって格別に困難なことではない。

エ.作用効果等について
本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別に顕著なものということはできない。

(4)独立特許要件についてのむすび
したがって、本願補正発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年2月18日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成26年6月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2.刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物に記載された事項は、上記第2[理由]3.(2)ア.に示したとおりである。
また、上記刊行物に記載された発明は、上記第2[理由]3.(2)イ.に示した「引用発明」のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「前記第2のコードは、前記センター域に位置するコードの間隔をDcとし前記ショルダー域に位置するコードの間隔をDsとする際に、1.7≦Ds/Dc<3.0の関係を満たすこと」について、その数値範囲の下限値を「1.2<」とすることで、「前記第2のコードは、前記センター域に位置するコードの間隔をDcとし前記ショルダー域に位置するコードの間隔をDsとする際に、1.2<Ds/Dc<3.0の関係を満たすこと」とし、数値範囲を拡張して本件補正による限定を省いたものである。
本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、第2[理由]3.(3)?(4)で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-05 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-03-07 
出願番号 特願2010-158553(P2010-158553)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 上村 欣浩  

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