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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1314183
審判番号 不服2015-11501  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-17 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2013- 37661「表示プログラムおよび表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2004年7月6日を国際出願日とする特願2006-527637号の一部を、平成23年7月12日に新たな特許出願とした特願2011-153588号の一部を、さらに、平成25年2月27日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月28日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年2月3日付けで手続補正がなされ、平成26年7月18日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年9月29日付けで手続補正がなされたが、平成26年9月29日付け手続補正が平成27年3月9日付けで却下されるとともに同日付で拒絶査定がなされ(発送日:同月17日)、平成27年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成27年6月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年6月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
平成27年6月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項1を、補正後の請求項1に変更する補正事項(なお、補正後の請求項1は、補正前の請求項2にあった「表示幅を変えない非テキスト部品を生成」するという要件を含まないので、補正前の請求項2を減縮したものと見ることはできないこと、同様に、補正前の請求項3にあった「非テキスト部品については縮小処理を適用する」という要件を含まないので、補正前の請求項3を減縮したものと見ることもできないこと、補正前の請求項4は、実質的に、補正前の請求項1と発明のカテゴリーのみが相違する請求項であって、補正後の請求項1、4は、それぞれ補正前の請求項1,4に、同趣旨の補正をしたものと見なせること、等の事情を総合すると、補正後の請求項1は補正前の請求項1を変更したものと見るのが妥当である。)を含むものである。

そして、補正前の請求項1に係る発明及び補正後の請求項1に係る発明は、それぞれ、以下のとおりである。(<補正後の請求項1>における下線は補正箇所を表す。)

<補正前の請求項1>
「【請求項1】
コンピュータに、
マークアップ言語で記述されたデータに基づく表示部品が、横方向に並べて配置するように規定されたテキスト部品と非テキスト部品とを含み、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が表示画面の横方向の表示幅を超えない場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の横方向に並べて配置し、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が前記表示画面の横方向の表示幅を超える場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の縦方向に並べて表示させることを許容する、
処理を実行させることを特徴とする表示プログラム。」

<補正後の請求項1>
「【請求項1】
コンピュータに、
マークアップ言語で記述されたデータに基づく表示部品が、横方向に並べて配置するように規定されたテキスト部品と非テキスト部品とを含み、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が表示画面の横方向の表示幅を超えない場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の横方向に並べて配置し、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が前記表示画面の横方向の表示幅を超える場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の縦方向に並べて表示させることを許容する処理を実行させ、
該表示画面の横方向の表示幅を超える部品がテキスト部品であるときは、該テキスト部品の改行位置を、改行禁止に設定された位置の場合であっても変更して、前記表示画面の横方向の表示幅を超えないテキスト部品を生成する、
処理を実行させることを特徴とする表示プログラム。」

2.補正の目的の適否について(主位的理由)
上記補正事項のうちの、
「該表示画面の横方向の表示幅を超える部品がテキスト部品であるときは、該テキスト部品の改行位置を、改行禁止に設定された位置の場合であっても変更して、前記表示画面の横方向の表示幅を超えないテキスト部品を生成する」処理を付加する補正事項(以下、「補正事項A」という。)は、要するに、個別の「テキスト部品」が画面の表示幅を超える場合、「テキスト部品」内の改行位置を変更する処理である。
一方、補正前の請求項1に記載されていた処理は、「マークアップ言語で記述されたデータに基づく表示部品が、横方向に並べて配置するように規定されたテキスト部品と非テキスト部品とを含み、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が表示画面の横方向の表示幅を超えない場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の横方向に並べて配置し、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が前記表示画面の横方向の表示幅を超える場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の縦方向に並べて表示させることを許容する」処理であって、要するに、横方向に並べて配置された「テキスト部品と非テキスト部品の横方向の表示幅の合計」が画面の表示幅を超える場合、テキスト部品と非テキスト部品とを、縦方向に並べるという処理のみがあった。
したがって、補正事項Aにより、個別の「テキスト部品」が画面の表示幅を超える場合、「テキスト部品」の改行位置を変更する処理を付加することは、補正前の「テキスト部品と非テキスト部品の横方向の表示幅の合計」が画面の表示幅を超える場合、テキスト部品と非テキスト部品とを、縦方向に並べる処理を行うという発明特定事項を、概念的により下位のものとするものとは認められない。
よって、補正事項Aは、特許法第17条の2第5項でいう「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするもの(第2号)に該当しない。
また、補正事項Aが、特許法第17条の2第5項でいう「請求項の削除」を目的とするもの(第1号)、「誤記の訂正」を目的とするもの(第3号)、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするもの(第4号)、のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に適合しない。

3.独立特許要件について(予備的理由)
仮に、補正事項Aを含む本件補正が、限定的減縮を目的とするものであるとしても、補正後の請求項1に係る発明は、本願の出願時において独立して特許を受けることができるものとはいえない。

(1)本願補正発明
本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)は、上記1.の<補正後の請求項1>に記載されたとおりのものである。

(2)引用例、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-7269号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、次の記載がある。

ア 【請求項1】
「【請求項1】 端末の小型表示画面に対応して、マークアップ言語で作成されたページを再編集するプロキシサーバであって、テーブルタグ及びイメージタグで構成された前記ページについて、
前記テーブルタグを削除する第1の手段と、
前記イメージタグの横幅の値に対する前記端末の表示画面の横幅の値の比に対応して、該イメージタグの横幅及び縦幅の値を変更する第2の手段とを有することを特徴とするプロキシサーバ。」

イ 【請求項3】
「【請求項3】 前記第1の手段は、前記テーブルタグで表示されるテーブルの横幅が、前記端末の表示画面の横幅よりも小さい場合、該テーブルタグは削除しないことを特徴とする請求項1に記載のプロキシサーバ。」

ウ 段落【0006】
「【0006】そこで、本発明は、前述した課題を解決し、端末の小型表示画面でも視覚的に認識しやすいように、マークアップ言語で作成されたページを再編集するプロキシサーバ、方法及びプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。」

エ 段落【0009】
「【0009】また、本発明の他の実施形態によれば、第1の手段は、テーブルタグで表示されるテーブルの横幅が、端末の表示画面の横幅よりも小さい場合、該テーブルタグは削除しないことも好ましい。端末の表示画面で表示可能な大きさのテーブルは、なるべくテーブルの状態で表示するのが好ましい。」

オ 段落【0014】-【0025】
「【0014】
【発明の実施の形態】以下では、図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】図1は、本発明によるページ再編集のフローチャートである。図2は、再編集の対象となるページの例である。図3は、図2のページを再編集した後のページの例である。
【0016】図1のフローチャートに従って説明する。携帯端末から、例えば図2のページを参照したい旨の通知を受信すると、そのページの再編集を実行する。最初に、当該ページを保持するサーバから、図2のページを取り込む(1)。次に、予め携帯端末から通知されるテーブルタグ削除設定(2)が「有り」であるならば、当該ページのテーブルタグを削除する(3)。
【0017】テーブルタグの削除とは、例えば、以下のようにタグを削除することである。



ab
cd


a


b


c


d


【0018】テーブルタグの削除が、参照符号9、10及び11で説明されている。例えば親テーブル1が、参照符号9のようなテーブルであるとする。親テーブル1の入れ子構造となる子テーブル1-1には要素a、b、c及びdが表示されている。同様に、子テーブル1-2には要素e、f及びgが、子テーブル1-3には要素hが、子テーブル1-4には要素i、j、k及びlが表示されている。この場合、親テーブル1のテーブルタグを削除することにより、参照符号10のように縦にテーブルが並べられる。このとき、それぞれの子テーブルが、携帯端末の画面に十分に表示されることが好ましい。子テーブルが携帯端末の画面よりも大きいために子テーブルを縮小したとき、認識しにくい画面表示となるならば、子テーブルのテーブルタグも削除するのが好ましい。更に、子テーブルのテーブルタグを削除することにより、参照符号11のように全ての要素が縦に並べられる。携帯端末では、縦スクロールのみでこれらの全ての要素を認識することができる。
【0019】例えば、図2のページの構成は、先頭に横長のKDDと記載されたバナーイメージ等を含むテーブル1と、複数のテーブルを含むテーブル2とから構成されている。テーブル2は、それぞれ縦に3列のテーブル2-1?3、イメージ及びテキストから構成されている。テーブル2-1?3は、テーブル2の入れ子構造となっている。これらテーブルは、無色ラインで指定されたテーブルタグを用いて構成されている。
【0020】図2のページのテーブルタグを削除すると、図3のように縦1列のページが作成される。このとき、図2において「MENU」を取り囲む丸みを帯びた枠のイメージは、図3では、表示不可能なイメージとして表示される。このような表示は、テーブルタグが削除されたために、このレイアウトイメージの配置場所が変更され、枠として表示されなくなるために生じる。このようなイメージは、レイアウトのためだけのイメージと判断される。そこで、予め携帯端末から指定されたイメージタグ削除設定(4)が「有り」であるならば、このようなレイアウトのためだけのイメージを削除可能なイメージとして選択し(5)、そのイメージのタグを削除する(6)。
【0021】レイアウトのためだけのイメージではない、即ち表示することが必要なイメージである、と判断される要因としては、イメージタグにALT属性等が設定されている、又はAタグの中にイメージタグが入れ子になっている、ものが該当する。以下に、レイアウトのためだけのイメージではないと判断されるHTMLの一例を示す。


ALT属性とは、マウスのポイントを、当該イメージ上に移動させたときに表示される説明文字である。説明を必要とするようなイメージは、削除対象とはならない。また、Aタグとは、リンクボタンを指定するものである。これら以外に、USEMAP属性が指定されたものでもよい、該USEMAP属性とは、イメージの中にリンク付けできる形状及び座標又はリンク先等を指定したものである。このように、閲覧者に選択肢を与えるようなイメージは削除対象とはならない。反対に、イメージの表示しか指定されていない以下のようなイメージは、削除対象となる。

【0022】次に、イメージを端末の画面に表示できるように縮小する(7)。即ち、イメージタグの横幅の値に対する端末の表示画面の横幅の値の比に対応して、イメージタグの横幅及び縦幅の値を変更する。
【0023】イメージタグが、横長のイメージを指定している

の場合、端末の表示画面の横幅が100であれば、以下のように何ら変更しない。

但し、端末の表示画面の横幅が50であれば、以下のように変更する。

このとき、WIDTHとHEIGHTとの比は変更しない。
【0024】最後に、携帯端末へ再編集したページを出力する(8)。
【0025】前述した本発明のページを再編集するプロキシサーバ、方法及びプログラムを記録した記録媒体の種々の実施形態は、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略が、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。」

カ 段落【0026】
「【0026】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、パーソナルコンピュータの画面で閲覧することを想定したページを、携帯端末の画面で閲覧する場合にも、縦スクロールのみの操作で閲覧可能となる。また、情報として必要ないと判断されたイメージを削除することにより、携帯端末での画面の操作性も向上する。」

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「端末の小型表示画面でも視覚的に認識しやすいように、マークアップ言語で作成されたページを再編集する、プログラムであって、
テーブルタグで表示されるテーブルの横幅が、端末の表示画面の横幅よりも小さい場合、該テーブルタグは削除しないで、端末の表示画面で表示可能な大きさのテーブルは、なるべくテーブルの状態で表示するものであって、
最初に、当該ページを保持するサーバから、ページを取り込み(1)、
次に、予め携帯端末から通知されるテーブルタグ削除設定(2)が「有り」であるならば、
当該ページのテーブルタグを削除し(3)、
テーブルタグの削除は、
親テーブル1の入れ子構造となる子テーブル1-1には要素a、b、c及びdが表示され、同様に、子テーブル1-2には要素e、f及びgが、子テーブル1-3には要素hが、子テーブル1-4には要素i、j、k及びlが表示されている場合、
親テーブル1のテーブルタグを削除することにより、縦にテーブルが並べられ、
このとき、子テーブルが携帯端末の画面よりも大きいために子テーブルを縮小したとき、認識しにくい画面表示となるならば、子テーブルのテーブルタグも削除することにより、全ての要素が縦に並べられ、携帯端末では、縦スクロールのみでこれらの全ての要素を認識することができる、ものであって、
ページの構成は、
先頭に横長のKDDと記載されたバナーイメージ等を含むテーブル1と、複数のテーブルを含むテーブル2とから構成され、
テーブル2は、それぞれ縦に3列のテーブル2-1?3、イメージ及びテキストから構成され、
テーブル2-1?3は、テーブル2の入れ子構造となっており、
このページのテーブルタグを削除すると、縦1列のページが作成される、ものであって、
レイアウトのためだけのイメージと判断されるとき、このようなレイアウトのためだけのイメージを削除可能なイメージとして選択し(5)、
そのイメージのタグを削除し(6)、
レイアウトのためだけのイメージではない、即ち表示することが必要なイメージである、と判断されるとき、イメージを端末の画面に表示できるように縮小し(7)、
ここで、イメージタグが、WIDTH="100"の場合、端末の表示画面の横幅が100であれば、何ら変更しないが、但し、端末の表示画面の横幅が50であれば、WIDTH="50"に変更し、
最後に、携帯端末へ再編集したページを出力する(8)、
プログラム。」


(3)対比
ア 引用発明の「端末の小型表示画面でも視覚的に認識しやすいように、マークアップ言語で作成されたページを再編集する、プログラム」は、本願補正発明に係る「表示プログラム」に相当する。
また、引用発明の「プログラム」は、明らかに「コンピュータに」、「処理を実行させる」ものであると認められる。

イ 引用発明の「マークアップ言語で作成されたページ」は、本願補正発明の「マークアップ言語で記述されたデータ」に相当する。
引用発明の「ページ」を構成する各「テーブル」は、本願補正発明の「表示部品」に相当する。
引用発明の「複数のテーブルを含むテーブル2」が、「それぞれ縦に3列のテーブル2-1?3、イメージ及びテキストから構成され、テーブル2-1?3は、テーブル2の入れ子構造となって」いることは、本願補正発明の「マークアップ言語で記述されたデータに基づく表示部品が、横方向に並べて配置するように規定されたテキスト部品と非テキスト部品とを含」むことに相当するといえる。

ウ 引用発明の「イメージ及びテキストから構成され」、「複数のテーブルを含むテーブル2」が、「当該ページのテーブルタグを削除し(3)」、「このページのテーブルタグを削除すると、縦1列のページが作成され」るが、ただし、「テーブルタグで表示されるテーブルの横幅が、端末の表示画面の横幅よりも小さい場合、該テーブルタグは削除しないで、端末の表示画面で表示可能な大きさのテーブルは、なるべくテーブルの状態で表示する」こと、要するに、引用発明において、「テーブル2」の幅が表示画面の幅より大きければ、縦にテーブルを並べるが、ただし、「テーブル2」の幅が表示画面の幅より小さければ、テーブルの配置を変更しないでそのままとすることは、本願補正発明の「前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が表示画面の横方向の表示幅を超えない場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の横方向に並べて配置し」ていること、及び、「前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が前記表示画面の横方向の表示幅を超える場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の縦方向に並べて表示させることを許容する処理を実行させ」ることに相当するといい得る。

したがって、本願補正発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるとえいる。

[一致点]
「コンピュータに、
マークアップ言語で記述されたデータに基づく表示部品が、横方向に並べて配置するように規定されたテキスト部品と非テキスト部品とを含み、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が表示画面の横方向の表示幅を超えない場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の横方向に並べて配置し、前記テキスト部品と前記非テキスト部品の横方向の表示幅の合計が前記表示画面の横方向の表示幅を超える場合に、前記テキスト部品と前記非テキスト部品とを前記表示画面の縦方向に並べて表示させることを許容する、
処理を実行させることを特徴とする表示プログラム。」

[相違点]
本願補正発明は、さらに、「該表示画面の横方向の表示幅を超える部品がテキスト部品であるときは、該テキスト部品の改行位置を、改行禁止に設定された位置の場合であっても変更して、前記表示画面の横方向の表示幅を超えないテキスト部品を生成する、処理を実行させる」のに対し、引用発明は、テーブルがテキストから構成される場合(本願補正発明の「テキスト部品」に相当する。)の改行処理について特段の言及がなく、「該表示画面の横方向の表示幅を超える部品がテキスト部品であるときは、該テキスト部品の改行位置を、改行禁止に設定された位置の場合であっても変更して、前記表示画面の横方向の表示幅を超えないテキスト部品を生成する、処理を実行させる」ものではない点。

(4)判断
[相違点]について
ア 引用発明は、マークアップ言語で作成された「ページ」に含まれている「テーブル」を縦に並べる処理や、「イメージ」(本願補正発明の「非テキスト部品」に相当する。)を縮小する処理によって、引用例の段落【0026】に記載される「パーソナルコンピュータの画面で閲覧することを想定したページを、携帯端末の画面で閲覧する場合にも、縦スクロールのみの操作で閲覧可能となる。」という効果を得るものである。
よって、引用発明において、マークアップ言語で作成された「ページ」に含まれる「テキスト」(本願補正発明の「テキスト部品」に相当する。)についても、明記はないものの、装置の表示画面の横幅を超えないように表示をすべきことは、明らかであるといえる。

イ 一般に、HTMLなどのマークアップ言語においては、テキストが表示されるウィンドウの横幅や、テーブルの横幅の大小に合わせて、テキストを自動的に改行すること、及び、各種タグ情報(例えば<nowrap>タグ、<nobr>タグなど)をテキストに付加することで、テキストの改行を禁止することは、文献を挙げるまでもなく、普通に行われている。
さらに、一般に、HTMLなどのマークアップ言語で記述された文書データの処理や表示をする場合に、装置の処理や表示の制約条件を考慮して、文書データに付加された、改行を禁止するタグ情報などの表示を制御する情報を無視したり削除することは、下記<周知文献1-3>に記載されるように、周知技術である。
<周知文献1> 特開平11-15749号公報
段落【0028】-【0030】「…スクロールという操作が出来ないため、ホームページの切れている部分を閲覧することができない。……そこで、HTMLファイルをもととした変換画像の横幅がファクシミリ端末の解像度内に納まるように、(1)HTMLファイルの中で指定された該画像データを縮小して、HTMLファイルをファクシミリ出力用の画像データに変換する。……(b)HTMLファイル中に記述された表組のタグ指定において、改行の禁止もしくは横幅の指定により、指定されたHTMLファイルをもととした変換画像がファクシミリ端末の横解像度よりも大きくなる場合がある。…この例では、図6中の「発売日」の部分が改行禁止指定(nowrap指定)されている。このため、右端の「申込」が切れてしまっている。そこで、HTMLファイルをもととした変換画像がファクシミリ端末の横幅解像度内に納まるように、(1)改行禁止タグや横幅指定のタグを無視して表組の画像変換を行なう。…この例では改行禁止であった「発売日」の部分を改行することにより、右端の「申込」部が出力領域内に入っている。または……」の記載、図6-図7を参照。
<周知文献2> 米国特許出願公開第2003/115167号明細書
段落[0116]「Textarea controls in the browser do not have vertical or horizontal scroll bars. Also, since a reduced-keyset user interface device does not have an ability to input a newline character, the browser always automatically wrap and ignore the NOWRAP modifier. 」(当審訳:ブラウザのTextareaコントロールには、縦方向、又は横方向のスクロールバーがない。さらに、減少されたキー集合のユーザ・インタフェース装置では、改行コードを入力できないから、ブラウザは、常に自動的に改行して、改行禁止指定(NOWRAP)修飾子を無視する。)の記載を参照。
<周知文献3> 特開2000-123012号公報
段落【0004】「【発明が解決しようとする課題】しかし、WWW用翻訳装置…では、「School」のうち例えば「Sch 」だけが斜体になっている場合、翻訳結果である日本語の一部分に斜体を反映させることができない。」、【0033】-【0034】「ところで、HTML形式で記述した翻訳原文Aのi番目の単語Ai に次のような非言語情報が付加されていたとする。……ここでは、当該単語Ai から非言語情報 を削除し、…文書データ記録部7に記憶する」の記載を参照。

ウ したがって、引用発明において、「ページ」に含まれる「テキスト」についても、装置の表示画面の横幅を超えないように表示すると共に、この際、マークアップ言語で記述された文書データの処理や表示をする場合に、装置の処理や表示の制約条件を考慮して、文書データに付加された改行を禁止するタグ情報などの制御情報を無視したり削除する周知技術を付加することによって、「該表示画面の横方向の表示幅を超える部品がテキスト部品であるときは、該テキスト部品の改行位置を、改行禁止に設定された位置の場合であっても変更して、前記表示画面の横方向の表示幅を超えないテキスト部品を生成する、処理を実行させる」、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

さらに、本願補正発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
上記2.で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反するものである。
仮にそうでないとしても(本件補正が限定的減縮を目的とするものであったとしても)、本願補正発明は、上記3.で検討したとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、いずれにしても本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成26年2月3日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項1>に記載されたとおりのものである。

2.引用例 、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、引用発明は、上記「第2」の「3.」(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「該表示画面の横方向の表示幅を超える部品がテキスト部品であるときは、該テキスト部品の改行位置を、改行禁止に設定された位置の場合であっても変更して、前記表示画面の横方向の表示幅を超えないテキスト部品を生成する」処理に関する「発明を特定するための事項」を省いたものである。
そうすると、上記「第2」の「3.」「(3)」の「[一致点]」の欄に記載したように、本願発明と引用発明の間に差異は認められないから、本願発明は、引用例に記載された発明である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 

審理終結日 2016-03-07 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-22 
出願番号 特願2013-37661(P2013-37661)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史西田 聡子  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 稲葉 和生
千葉 輝久
発明の名称 表示プログラムおよび表示方法  
代理人 渡部 章彦  
代理人 重久 啓子  
代理人 重久 啓子  
代理人 渡部 章彦  

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