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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62B |
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管理番号 | 1314285 |
審判番号 | 不服2015-7434 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-21 |
確定日 | 2016-05-02 |
事件の表示 | 特願2010-238275号「ロールボックスパレット」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 91557号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年10月25日の出願であって、平成26年4月24日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月25日付けで拒絶査定がされ、平成27年4月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2 平成27年4月21日付けの手続補正について 1 補正の内容 平成27年4月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、請求項1について、補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (補正前の請求項1) 「床板となるパレットの上方外周の3面が格子状または網状の枠で囲まれ、1面が開口になっているかご体を有し、パレットの下面中央部に固定キャスターを配置し、この固定キャスターが前後両側の自在キャスターを結ぶ線より下方位置にあるようにして6輪構成としたロールボックスパレットにおいて、 パレットの前後四隅に配置する自在キャスターはブレーキを有さない双輪キャスターとし、また、前記固定キャスターを双輪ではないブレーキ付きキャスターとしたことを特徴とするロールボックスパレット。」 (補正後の請求項1) 「床板となるパレットの上方外周の3面が格子状または網状の枠で囲まれ、1面が開口になっているかご体を有し、パレットの下面中央部に固定キャスターを配置し、この固定キャスターが前後両側の自在キャスターを結ぶ線より下方位置にあるようにして6輪構成としたロールボックスパレットにおいて、 パレットの前後四隅に配置する自在キャスターはブレーキを有さない双輪キャスターとし、また、前記固定キャスターを単輪のブレーキ付きキャスターとしたことを特徴とするロールボックスパレット。」 2 補正の適否(補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無 ) 上記特許請求の範囲についてする補正は、補正前の「双輪ではないブレーキ付きキャスター」を、補正後の「単輪のブレーキ付きキャスター」に補正するものであるところ、かかる補正は「双輪ではない」との抽象的な表現を「単輪の」との具体的な表現に改め、「双輪ではない」の意味を明らかにするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものである(なお、平成26年12月25日付けの拒絶査定において、「双輪でないブレーキ付きキャスタ」との記載について、当初明細書等の開示の範囲を超えている旨の指摘がなされている。)。 そして、補正後の「単輪のブレーキ付きキャスター」は、本願の願書に最初に添付した図面の図6に図示されているから、上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、新規事項を追加するものではない。 また、上記補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。 さらに、上記補正に関連し、本願明細書の段落【0016】、段落【0020】、段落【0026】、段落【0036】及び段落【0039】の記載も「単輪のブレーキ付きキャスター」に補正しているが、かかる補正も上記請求項1に係る補正と同様に、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、新規事項を追加するものではない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、特許請求の範囲についてする補正は、同法第17条の2第4項に規定する要件を満たし、さらに同法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、適法な補正といえる。 第3 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明は、平成27年4月21日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(補正後の請求項1)」に示すとおりのものである。 第4 原査定の理由 原査定の理由は、平成26年4月24日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由であり、その概要は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1、2に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 そして、拒絶理由通知において、引用文献1として特開2001-10501号公報(以下「刊行物1」という。)が、引用文献2として特開2006-347537号公報(以下「刊行物2」という。)がそれぞれ示され、さらに、拒絶査定時に、技術常識(周知例1)として特開2009-83706号公報(以下「刊行物3」という。)が示されている。 第5 当審の判断 当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載された技術事項(周知技術、技術常識)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。 その理由は、以下のとおりである。 1 刊行物の記載事項 ア 刊行物1の記載事項 刊行物1には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】 側面パネルを立設した床フレームの四隅に第一キャスターを設けると共に、該床フレームの中間部に1対の昇降自在の第二キャスターを設け前記床フレームに床パネルを載置してなる6輪の台車において、前記床パネルを、一端の軸を中心に回動して起伏可能に床フレームに取り付け、前記床パネルの下面に設けた操作案内具により、前記床パネルの伏状態で前記第二キャスターが下方位置にあり、床パネルの起状態で前記第二キャスターが上方位置にあるように昇降操作レバーを操作したことを特徴とする運搬用台車。 【請求項2】 床フレーム端部に設けたペダル操作部により、ブレーキ操作具を介して、第二キャスターの車輪のブレーキを操作することを特徴する請求項1記載の運搬用台車。 【請求項3】 床フレームは、並列したパイプからなるフレーム基材の両端部に、両端部に第一キャスターを夫々固定した第一基材、第二基材を取付け、前記フレーム基材の中間部に、両端部に第二キャスターを設けてなる昇降キャスターユニットを取り付けて、平面「王」字状の床フレームを構成し、前記フレーム基材の下面より下方に、第一第二基板及び昇降キャスターユニットの上面を位置させたことを特徴とする請求項1記載の運搬用台車。」(【特許請求の範囲】の欄) (1b)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、フレーム下面に6つのキャスターを有する運搬用台車に関する。」(下線は当審で付与。以下同様。) (1c)「【0015】(1)床フレーム70の構成 【0016】所定間隔を開けて並列した2本の角パイプ1、1からなるフレーム基材2の両端部下面3に、下面両端部に自在キャスター6、6を取り付けた第一基板7、第二基板8の上面9、9を夫々固定する。また、前記フレーム基材2の中央部に、前記基板7、8と並列して昇降キャスターユニット10を固定して、床フレーム70を構成する。前記フレーム基材2、第一第二基板7、8、昇降キャスターユニット10とで、平面略「王」字状に形成される(図3、4)。」 (1d)「【0051】(3)側面パネル110、112 【0052】パイプを屈曲して柱材106、106の上端を水平連結材107で連結して門型に形成し、両柱材106、106間に水平中間材108、108を並列して架設固定し、側面パネル本体を形成する。前記パネル本体の面内で、柱材106の上端部内面側に下方に向けた係止爪109、109を突設して、側面パネル110を構成する。前記係止爪109は、下部に向けて細くなるようにテーパーに形成されて、かつ最上の水平中間材108より上方に位置している。 【0053】また、他の側面パネル本体の最上に位置する水平中間材108に上方に向けた係止爪111を固定して側面パネル112を構成する。」 (1e)「【0063】(6-a)運搬時 【0064】床パネル80上に荷物を載置して、搬送に使用する。この際、昇降キャスターユニット10の車輪23、23は下降状態にあり、車輪(固定)23と、第一基板又は第二基板のいずれか一方の自在キャスター6、6とで接地するので、直行性の良い搬送ができる。」 (1f)「【0066】また、荷崩れ防止用に、両側面パネル100、102の対応する柱材106、106間にベルトや各種パネルを取り付けることもできる(図示していない)。」 (1g)刊行物1の図1、2には、以下の図が示されている。 (1h)刊行物1の図10には、以下の図が示されている。 イ 刊行物2の記載事項 刊行物2には、以下の事項が記載されている。 (2a)「【0001】 本発明は、たとえば荷配送用の台車などに設けられる輪体、および荷配送用の台車などの移動体に関するものである。」 (2b)「【0018】 図1に示すように、1は荷を積載して配送する際に使用される台車(移動体の一例)であり、この台車1の本体2は、左右一対のサイドパネル3と、背面パネル4と、底部材5などにより構成されている。前記本体2における底部材5の四隅部分には、それぞれ車輪装置7が設けられている。」 (2c)「【0090】 上記した各実施の形態では、移動体の一例として、たとえば図1に示すようにロールボックス式の台車1を挙げたが、これは平パレット式の台車や手押し式の台車あるいはドーリー台車,コンテナ台車などであってもよく、さらには、台車ではなく、車両などであってもよい。」 (2d)「【0091】 上記した各実施の形態において、各車輪10は、鉛直軸心を中心に旋回して方向転換自在なキャスター形式の自由輪であってもよいし、あるいは、向きが固定されている固定輪であってもよい。また、自由輪と固定輪とを混在させてもよい。さらに、ストッパー付きの車輪であってもよく、また、双輪式のキャスター形式であったり、球体(ボール)式のキャスター形式であってもよい。」 (2e)刊行物2の図1には、以下の図が示されている。 ウ 刊行物3の記載事項 刊行物3には、以下の事項が記載されている。 (3a)「【0002】 従来の一般的なキャスターは単輪式が普通であるが、安定性に欠けるので、特別な用途には双輪や三輪や四輪にしたものがあり、安定性を高めるとともに、支持荷重を大きくしている。」 2 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、段落【0001】(摘示(1b))に記載のとおり「フレーム下面に6つのキャスターを有する運搬用台車」に関する技術について開示されているところ、その特許請求の範囲の請求項1?3(摘示(1a))には、 「【請求項1】 側面パネルを立設した床フレームの四隅に第一キャスターを設けると共に、該床フレームの中間部に1対の昇降自在の第二キャスターを設け前記床フレームに床パネルを載置してなる6輪の台車において、前記床パネルを、一端の軸を中心に回動して起伏可能に床フレームに取り付け、前記床パネルの下面に設けた操作案内具により、前記床パネルの伏状態で前記第二キャスターが下方位置にあり、床パネルの起状態で前記第二キャスターが上方位置にあるように昇降操作レバーを操作したことを特徴とする運搬用台車。 【請求項2】 床フレーム端部に設けたペダル操作部により、ブレーキ操作具を介して、第二キャスターの車輪のブレーキを操作することを特徴する請求項1記載の運搬用台車。 【請求項3】 床フレームは、並列したパイプからなるフレーム基材の両端部に、両端部に第一キャスターを夫々固定した第一基材、第二基材を取付け、前記フレーム基材の中間部に、両端部に第二キャスターを設けてなる昇降キャスターユニットを取り付けて、平面「王」字状の床フレームを構成し、前記フレーム基材の下面より下方に、第一第二基板及び昇降キャスターユニットの上面を位置させたことを特徴とする請求項1記載の運搬用台車。」と記載されている。 また、刊行物1の段落【0015】(摘示(1c))の記載によれば、上記運搬用台車の実施の態様について、第一キャスターは自在キャスターとして構成されることが明らかであり、さらに段落【0063】?段落【0064】(摘示(1e))及び図1(摘示(1g))の記載によれば、床フレームに床パネルを載置した状態で、昇降キャスターユニットの車輪は下降状態にあり、該車輪と、第一基板又は第二基板のいずれか一方の自在キャスターとで接地すること、が明らかである。 以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものといえる。 「側面パネルを立設した床フレームの四隅に第一キャスターを設けると共に、該床フレームの中間部に1対の昇降自在の第二キャスターを設け前記床フレームに床パネルを載置してなる6輪の台車において、前記床パネルを、一端の軸を中心に回動して起伏可能に床フレームに取り付け、前記床パネルの下面に設けた操作案内具により、前記床パネルの伏状態で前記第二キャスターが下方位置にあり、床パネルの起状態で前記第二キャスターが上方位置にあるように昇降操作レバーを操作した、運搬用台車であって、 前記床フレーム端部に設けたペダル操作部により、ブレーキ操作具を介して、第二キャスターの車輪のブレーキを操作するものであり、 前記床フレームは、並列したパイプからなるフレーム基材の両端部に、両端部に第一キャスターを夫々固定した第一基材、第二基材を取付け、前記フレーム基材の中間部に、両端部に第二キャスターを設けてなる昇降キャスターユニットを取り付けて、平面「王」字状の床フレームを構成し、前記フレーム基材の下面より下方に、第一第二基板及び昇降キャスターユニットの上面を位置させ、 前記第一キャスターは自在キャスターとして構成され、 前記床フレームに床パネルを載置した状態で、前記昇降キャスターユニットの車輪は下降状態にあり、該車輪と、前記第一基板又は第二基板のいずれか一方の前記自在キャスターとで接地する、運搬用台車。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「床パネル」は、本願発明の「床板となるパレット」に相当する。 イ 引用発明の「第二キャスター」は、本願発明の「固定キャスター」に相当する。 また、上記「第二キャスター」は、「床フレームの中間部に1対」設けられるものであるところ、上記「床フレーム」に対する「床パネル」の「前記床フレームに床パネルを載置」するという配設態様及び図1の記載(摘示(1g))に照らせば、床パネルの下面中央部に第二キャスターが配置されていることは明らかであるから、かかる第二キャスターの配設構成は、本願発明の「パレットの下面中央部に固定キャスターを配置し」という構成に相当するものといえる。 さらに、引用発明は、「前記床フレーム端部に設けたペダル操作部により、ブレーキ操作具を介して、第二キャスターの車輪のブレーキを操作する」ものであるから、引用発明の「第二キャスター」の構成と、本願発明の「前記固定キャスターを単輪のブレーキ付きキャスターとした」という構成とは、「前記固定キャスターをブレーキ付きキャスターとした」という構成の限度で共通するものといえる。 ウ 引用発明の「第一キャスター」は、「自在キャスターとして構成され」るものである。さらに、上記「第一キャスター」は、「床フレームの四隅に」設けられるものであるところ、上記「床フレーム」に対する「床パネル」の「前記床フレームに床パネルを載置」するという配設態様及び図1の記載(摘示(1g))に照らせば、上記第一キャスターは、床パネルの前後四隅に配置されていることも明らかであるから、かかる第一キャスターは、本願発明の「パレットの前後四隅に配置する自在キャスター」に相当するものといえる。 さらに、引用発明の「第一キャスター」は、「自在キャスターとして構成」され、ブレーキを備えるものではないから、かかる第一キャスターの構成と、本願発明の「自在キャスターはブレーキを有さない双輪キャスターとし」という構成とは、「自在キャスターはブレーキを有さないキャスターとし」て構成される限度で共通するものといえる。 エ 引用発明の「運搬用台車」は、その技術的意義において、本願発明の「ロールボックスパレット」に相当する。 また、引用発明の「運搬用台車」は、「床フレームの四隅に第一キャスターを設けると共に、該床フレームの中間部に1対の昇降自在の第二キャスターを設け前記床フレームに床パネルを載置してなる6輪の台車」として構成されるものであるから、そのような6輪の台車を構成する限度で6輪構成ということができる。さらに、引用発明の「運搬用台車」は、「前記床フレームに床パネルを載置した状態で、前記昇降キャスターユニットの車輪は下降状態にあり、該車輪と、前記第一基板又は第二基板のいずれか一方の前記自在キャスターとで接地する」ものであり、第二キャスターが前後両側の第一キャスタをなす自在キャスターを結ぶ線より下方位置にあることも明らかであるから、かかる運搬用台車の構成は、本願発明の「ロールボックスパレット」における「この固定キャスターが前後両側の自在キャスターを結ぶ線より下方位置にあるようにして6輪構成とした」という構成に相当するものといえる。 以上によれば、本願発明と引用発明とは、 「床板となるパレットを有し、パレットの下面中央部に固定キャスターを配置し、この固定キャスターが前後両側の自在キャスターを結ぶ線より下方位置にあるようにして6輪構成としたロールボックスパレットにおいて、 パレットの前後四隅に配置する自在キャスターはブレーキを有さないキャスターとし、また、前記固定キャスターをブレーキ付きキャスターとした、ロールボックスパレット。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願発明は、「床板となるパレットの上方外周の3面が格子状または網状の枠で囲まれ、1面が開口になっているかご体を有」するものとして構成されているのに対し、引用発明は「側面パネル」を有するものの、そのようなかご体として特定されていない点。 <相違点2> 自在キャスター及び固定キャスターの構成について、本願発明は、自在キャスターが「双輪キャスター」であり、固定キャスターが「単輪」で構成されているのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。 4 判断 <相違点1> について ア 刊行物1の段落【0051】?段落【0053】(摘示(1d))及び図1、2(摘示(1g):審決注:図1の図番「100」及び「102」は、図番「110」及び「112」の誤記と認める。)には、引用発明のロールボックスパレット(運搬用台車)に係る実施の態様として、床パネル80の上方外周に、一対の側面パネル110、112を立設して配置することが記載されている。 イ ここで、刊行物1の段落【0066】(摘示(1f))には、「また、荷崩れ防止用に、両側面パネル100、102の対応する柱材106、106間にベルトや各種パネルを取り付けることもできる(図示していない)。」(審決注:「両側面パネル100、102」は、「両側面パネル110、112」の誤記と認める。)とも記載されているから、引用発明の側面パネルの設置に係り、荷崩れ防止の観点から、床パネルの上方外周に両側面パネルに加えて各種パネルを取り付け得ることも技術的に明らかである。 ウ そして、例えば、刊行物2の段落【0001】、段落【0018】、段落【0090】及び図1(摘示(2a)?(2c)(2f))には、荷配送用の台車の構成として、底部材5の上方外周の3面に、格子状の左右一対のサイドパネル3、3及び背面パネル4を配置することが記載されているように、ロールボックスパレット(荷配送用の台車)において、パレット(底部材5)の上方外周の3面が格子状または網状の枠(左右一対のサイドパネル3、3及び背面パネル4)で囲まれ、1面が開口になっているかご体を有するものとして構成することは、かかる技術分野の周知技術といえる(さらに必要ならば、本願明細書中に背景技術として示される実用新案登録第2504075号公報の段落【0007】、図1?3等を参照。)。 エ してみると、刊行物1及び上記周知技術に接した当業者において、引用発明の側面パネルを設置するに際し、荷崩れ防止の観点から、上記周知技術をも参考として、パレットの上方外周の3面が格子状または網状の枠で囲まれ、1面が開口になっているかご体を有するものとして構成することは格別困難なことではない。 したがって、上記相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明、刊行物1に記載の事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。 <相違点2> について ア 刊行物2には、段落【0001】(摘示(2a))に記載されているとおり、荷配送用の台車に係る技術について開示されているところ、段落【0091】(摘示(2d))の「上記した各実施の形態において、各車輪10は、・・・キャスター形式の自由輪であってもよいし、あるいは、・・・固定輪であってもよい。また、自由輪と固定輪とを混在させてもよい。さらに、ストッパー付きの車輪であってもよく、また、双輪式のキャスター形式であったり、球体(ボール)式のキャスター形式であってもよい。」との記載によれば、ロールボックスパレット(荷配送用の台車)に配設する車輪には、各種形式のものが存在し、それら各種形式の車輪から、双輪式のキャスターを採用することも、通常の選択肢の一として想定される範囲のものということができる。 イ また、刊行物3の段落【0002】(摘示(3a))には、「従来の一般的なキャスターは単輪式が普通であるが、安定性に欠けるので、特別な用途には双輪や三輪や四輪にしたものがあり、安定性を高めるとともに、支持荷重を大きくしている。」とも記載されているように、キャスターの特性として、安定性や支持荷重を向上させるには、単輪式のものより双輪式のものが効果的であることも、当業者が技術常識として認識しているものということができる。 ウ 以上を踏まえて検討すると、引用発明のロールボックスパレット(運搬用台車)は、刊行物1の段落【0063】?段落【0064】(摘示(1e))にも記載されているとおり、床パネル上に荷持を載置して搬送するものであり、載置する荷物の支持荷重や搬送時の走行の安定性をも考慮して設計すべきことは技術的に明らかであるから、上記ア、イに照らして、引用発明のロールボックスパレット(運搬用台車)においても、自在キャスター(第一キャスター)及び固定キャスター(第二キャスター)の形式として、「単輪式」あるいは「双輪式」を適宜選択して設計し得ることは明らかである。 そして、引用発明において、パレットの前後四隅に配置される自在キャスター(第一キャスター)は、ブレーキを有さないものであって、専ら載置する荷物の支持荷重や搬送時の走行の安定性を考慮して設計すべきことは技術的に明らかであるから、かかる自在キャスター(第一キャスター)を双輪式として構成することの動機付けは十分存在する。また、パレットの下面中央部に配置される固定キャスター(第二キャスター)は、ブレーキ付きのキャスターとして構成されるものであるから、双輪式として構成する場合には、ブレーキシステム自体の構成をも変更することとなり、その構造が複雑化することも想定されるところ、そもそもロールボックスパレット(運搬用台車)に採用するキャスターを単輪式とするか、あるいは双輪式とするかは当業者が適宜選択的に設定可能なものであることから、引用発明の固定キャスター(第二キャスター)を、刊行物1の図10(摘示(1h))に記載されるとおりの単輪式として構成することは、当業者にとって格別困難な選択ということはできない。 エ ここで、請求人は、平成27年4月21日付けの審判請求書の「(ハ)本発明と各引用文献との対比」の欄で、「引用文献1、2には、四隅と中央とでキャスターの種類を変えるという動機づけは存在しないので、引用文献1に引用文献2を組み合わせて本発明を容易に想到できるものとは言えない。」旨主張する。 しかし、上記ア?ウで述べたとおり、ロールボックスパレットに配設する車輪には、各種形式のものが存在し、それら各種形式の車輪から、双輪式のキャスターを採用することは通常の選択肢の一として想定されるものであり、そのような選択は、ロールボックスパレットの使用の態様(安定性や支持荷重)をも踏まえて適宜選択的に設計し得ること、引用発明の自在キャスター(第一キャスター)は、ブレーキを有さないものであって、専ら載置する荷物の支持荷重や搬送時の走行の安定性を考慮して設計すべきことは技術的に明らかであること、さらに、引用発明の固定キャスター(第二キャスター)は、ブレーキ付きのキャスターとして構成され、双輪式として構成する場合には、ブレーキシステム自体の構成を変更することとなり、その構造が複雑化することも想定されること、以上を併せ考慮すれば、引用発明において、四隅に配置される自在キャスター(第一キャスター)として双輪式のものを選択し、中央に配置される固定キャスター(第二キャスター)として単輪式のものを選択することは、当業者にとって格別困難な選択とはいえず、設計事項の域を出るものではない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 オ 以上のとおりであるから、上記相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明、上記周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明、刊行物1に記載の事項、上記周知技術及び技術常識から当業者が予測し得る範囲のものといえる。 5 まとめ したがって、本願発明は、引用発明、刊行物1に記載の事項、上記周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-01-20 |
結審通知日 | 2016-02-09 |
審決日 | 2016-02-22 |
出願番号 | 特願2010-238275(P2010-238275) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B62B)
P 1 8・ 121- Z (B62B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 敏史 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 氏原 康宏 |
発明の名称 | ロールボックスパレット |
代理人 | 久保 司 |