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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1314757
審判番号 不服2015-9500  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-22 
確定日 2016-05-12 
事件の表示 特願2011- 86270「無線タグ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月12日出願公開、特開2012-221214〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成23年4月8日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 4月 7日 :出願審査請求書の提出
平成26年 7月 9日 :手続補正書の提出
平成26年10月20日付け :拒絶理由の通知
平成26年12月19日 :意見書,手続補正書の提出
平成27年 2月17日付け :拒絶査定
平成27年 5月22日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成27年 6月12日 :前置報告


第2 平成27年5月22日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年5月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成27年5月22日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成26年12月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至4の記載

「 【請求項1】
無線タグIDとそのユーザの身体的特徴情報とを予め登録したデータ保存手段と,
2つ以上の無線タグが含まれる広範囲の通信エリアに存する前記無線タグの無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段と,
前記無線タグの2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段と,
前記外観情報から前記ユーザの各身体的特徴情報を抽出する身体的特徴抽出手段と,
抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報との対比を行い処理対象となる前記無線タグIDを決定し当該無線タグIDと前記ユーザを紐付ける処理対象決定手段と,
を備えることを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項2】
前記処理対象決定手段での前記対比は,抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報の間の類似度を計算する類似度計算手段により実行され,最も類似度が高いユーザを処理対象と決定し,これにより処理対象となるべき前記無線タグIDを決定することを特徴とする請求項1記載の無線タグ処理装置。
【請求項3】
前記外観情報取得手段の取得動作で得られた外観情報に基づいて2人以上の前記ユーザの各々の位置情報を抽出する位置情報抽出手段を備えることを特徴とする請求項1記載の無線タグ処理装置。
【請求項4】
前記ユーザに関する前記身体的特徴は,顔,虹彩,または身長であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の無線タグ処理装置。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を,

「 【請求項1】
無線タグIDとそのユーザの身体的特徴情報とを予め登録したデータ保存手段と,
2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された広範囲の通信エリアと,
2つ以上の無線タグが含まれる前記広範囲の通信エリアに存する前記無線タグの無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段と,
前記無線タグの2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段と,
前記外観情報から前記ユーザの各身体的特徴情報を抽出する身体的特徴抽出手段と,
抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報との対比を行い前記所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグIDを決定し当該無線タグIDと前記ユーザを紐付ける処理対象決定手段と,
を備えることを特徴とする無線タグ処理装置。
【請求項2】
前記処理対象決定手段での前記対比は,抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報の間の類似度を計算する類似度計算手段により実行され,最も類似度が高いユーザを処理対象と決定し,これにより処理対象となるべき前記無線タグIDを決定することを特徴とする請求項1記載の無線タグ処理装置。
【請求項3】
前記外観情報取得手段の取得動作で得られた外観情報に基づいて2人以上の前記ユーザの各々の位置情報を抽出する位置情報抽出手段を備えることを特徴とする請求項1記載の無線タグ処理装置。
【請求項4】
前記ユーザに関する前記身体的特徴は,顔,虹彩,または身長であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の無線タグ処理装置。」(当審注:下線は,請求人が付与したものである。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
また,本件補正は,特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではなく,特許法第17条の2第4項の規定に適合している。


2 目的要件

本件補正は,上記「1 補正の内容」のとおり本件審判の請求と同時にする補正であり,特許請求の範囲について補正をしようとするものであるから,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正前の請求項と,補正後の請求項とを比較すると,補正前の請求項1のみ補正され,補正後の請求項1,2,3,4はそれぞれ,補正前の請求項1,2,3,4に対応することは明らかである。

(2)よって,本件補正は,下記の補正事項1,2よりなるものである。

<補正事項1>
補正後の請求項1の
「2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された広範囲の通信エリア」との記載を追加し,
補正前の請求項1の
「広範囲の通信エリア」との記載を,
補正後の請求項1の
「前記広範囲の通信エリア」との記載に変更する補正。

<補正事項2>
補正前の請求項1の
「処理対象となる前記無線タグID」との記載を,
補正後の請求項1の
「前記所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグID」との記載に変更する補正。

(3)補正事項1について

補正事項1は,発明特定事項である「広範囲の通信エリア」に「2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された」の限定を加えることを目的とするものであり,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

(4)補正事項2について

補正事項2は,発明特定事項である「処理対象となる前記無線タグID」の「処理」に「前記所定のサービスの提供に係る」の限定を加えることを目的とするものであり,本件補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

(5)したがって,上記補正事項1,2は限定的減縮を目的とするものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると言えることから,特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。


3 独立特許要件

以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする上記補正事項1,2を含むものである。そこで,限定的減縮を目的として補正された補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記平成27年5月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 無線タグIDとそのユーザの身体的特徴情報とを予め登録したデータ保存手段と,
2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された広範囲の通信エリアと,
2つ以上の無線タグが含まれる前記広範囲の通信エリアに存する前記無線タグの無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段と,
前記無線タグの2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段と,
前記外観情報から前記ユーザの各身体的特徴情報を抽出する身体的特徴抽出手段と,
抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報との対比を行い前記所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグIDを決定し当該無線タグIDと前記ユーザを紐付ける処理対象決定手段と,
を備えることを特徴とする無線タグ処理装置。」


(2)引用例

ア 本願の出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶査定の理由である平成26年10月20日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2005-242775号公報(平成17年9月8日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0001】
この発明は,例えばビルや駅やアミューズメント施設といった建造物への入場口や,セキュリティルームといった領域への入場口に設置して,入場権限のない利用者の入場規制を行うようなゲートシステムに関する。
…(中略)…
【0006】
この発明は,ゲートを通過利用する利用者が携帯するカード等の記憶媒体の不正利用を防止すると共にゲートの通過判定に要する時間を短くしてゲート通過時に混雑を生じさせないゲートシステムを提供することを目的とする。」

B 「【0040】
次に,図2に示すブロック図と共に,カメラ10,ゲート装置20,利用者特定装置30,及びサーバ50で構成するゲートシステム1の構成について説明する。
【0041】
ゲート装置20は,ゲート扉21,カード読取部22,判定部23,ゲート側記憶部24,及び送受信部25をゲート側制御部26に接続して構成する。
【0042】
前記ゲート扉21は,利用者の通過可否を物理的に制限する板状体と,該板状体を開閉動作させる駆動装置で構成しており,ゲート側制御部26からの開閉制御信号に従って板状体の開閉動作を実行する。
【0043】
前記カード読取部22は,非接触ICカード15とアンテナで無線通信を行い,非接触ICカード15の記憶部に格納したデータを読み取る。なお,非接触ICカード15は,記憶部を備えたICチップと通信手段となるアンテナとで構成し,アンテナを介してカード読取部22から制御信号を受信すると共に起電力を得て駆動する。
【0044】
前記判定部23は,読み取った非接触ICカード15に通過権限があるか否かの判定処理を実行する。
【0045】
前記ゲート側記憶部24は,フラッシュメモリ又はハードディスクといった記憶装置で構成しており,利用者特定装置30から送信される照合済みの非接触ICカードに関する照合済カードデータと,通過を拒否する非接触ICカードに関するブラックリストデータとを記憶している。
…(中略)…
【0047】
前記送受信部25は,利用者特定装置30とデータの送受信を実行する。
前記ゲート側制御部26は,CPU,ROM,及びRAMで構成し,各部の動作制御を実行する。」

C 「【0048】
利用者特定装置30は,送受信部31,画像取得部32,顔データ抽出部33,顔照合部34,特定側記憶部35,通信部36,入力装置38,及び表示装置39を特定側制御部37に接続して構成する。
【0049】
前記送受信部31は,ゲート装置20とデータの送受信を実行し,照合済みの非接触ICカードに関する照合済カードデータのゲート装置20への送信等を行う。
【0050】
前記画像取得部32は,カメラ10から撮像画像データを取得し,取得した撮像画像データを顔データ抽出部33に送信する。
【0051】
前記顔データ抽出部33は,撮像画像データに存在する人物の顔を認識し,認識した顔から顔データを取得する。該顔データとしては,撮像画像から抽出した顔画像データ,又は,該顔画像から取得した各顔器官(目,鼻,口,耳等)の位置関係に関する特徴データ等,顔に関するデータに設定する。
【0052】
前記顔照合部34は,前記顔データ抽出部33で取得した顔データと,登録利用者として事前にサーバ50に登録され,該サーバ50から送信されて特定側記憶部35に記憶する顔データとを照合して同一人物が存在するか否かを判定する。
【0053】
前記特定側記憶部35は,ハードディスク又はフラッシュメモリといった記憶装置で構成しており,サーバ50から受信した利用者データ(顔データ及びカードデータ含む)を記憶している。
【0054】
前記通信部36は,サーバ50とのデータ通信を実行する。
前記特定側制御部37は,各部の動作制御を実行する。
【0055】
前記入力装置38は,マウスやキーボード等の入力装置で構成し,警備員によるメンテナンス入力等を許容している。
【0056】
前記表示装置39は,CRTモニタや液晶モニタといった表示装置で構成しており,特定側制御部37の制御に従ってエラーメッセージの表示等を実行する。」

D 「【0057】
サーバ50は,前記通信部36を介して利用者特定装置30とデータの送受信を可能に構成している。
該サーバ50には複数の利用者特定装置30(30A,30B)を接続しており,1つのサーバ50で複数の利用者特定装置30を管理可能に構成している。
…(中略)…
【0059】
以上の構成により,サーバ50で全入場口3での利用者を管理し,利用者特定装置30で入場口3単位での監視を可能とし,ゲート装置20で通過可否を判定可能とすることができる。」
【0060】
次に,図3のデータ構成図と共に,サーバ50のサーバ側記憶部,及び利用者特定装置30の特定側記憶部35に格納する登録利用者データ71について説明する。
【0061】
該登録利用者データ71は,カードIDナンバー,有効期間,通過可能ゲート,及び顔データで構成する。
前記カードIDナンバーは,非接触ICカード15にユニークに割り与えたナンバーを格納する。
…(中略)…
【0064】
以上の構成により,利用者を認証する顔データ,ゲートの通過可否を判定する有効期間と通過可能ゲートとを,カードIDナンバーをキーにして利用者単位で管理することができる。」

E 「【0066】
次に,図4のデータ構成図と共に,ゲート装置20のゲート側記憶部24に格納する照合済データ72について説明する。
該照合済データ72は,利用者特定装置30が顔データによる照合を済ませた利用者データ(非接触ICカードデータ)であり,受信時間,カードIDナンバー,有効期間,及び通過可能ゲートで構成する。
【0067】
前記受信時間は,利用者特定装置30からデータを受信した時間を格納する。
前記カードIDナンバーは,非接触ICカード15にユニークに割り与えたナンバーを格納する。」

F 「【0071】
次に,図5に示す利用者特定装置30の特定側制御部37の動作を示す処理フロー図により,ゲートへ近づく利用者を顔データにより事前に照合する事前照合処理について説明する。
【0072】
まず,カメラ10でゲートへ至る通路若しくはゲート前空間を撮像し,図6のイメージ図に示す撮像画像11を取得する(ステップn1)。
【0073】
特定側制御部37は,上記撮像画像内に人物の顔F(F1,F2,F3)が存在して顔データ抽出部33で顔データを抽出することができる(ステップn2:YES)。」

G 「【0090】
以上の動作により,ゲート装置20は利用者特定装置30から受信した照合済データを随時ゲート側記憶部24の照合済データ72に追加して格納し,一定時間が経過して古くなった照合済データを照合済データ72から削除することができる。
【0091】
これにより,ゲート側記憶部24に格納している照合済データのデータ数を必要最小限の数に維持することができ,次に説明する通過照合処理で通過可否判定の比較対象を減少して高速に判定可能とすることができる。
【0092】
次に,図8に示すゲート装置20のゲート側制御部26の動作を示す処理フロー図により,通過照合処理について説明する。
【0093】
ゲート側制御部26は,カード読取部22で非接触ICカード15から信号を受信するまで待機する(ステップs1)。
【0094】
信号を受信すると,カード読取部22で非接触ICカード15に格納しているカードIDナンバー等のカードデータを読み取る(ステップs2)。
【0095】
ゲート側制御部26は,読み取ったカードデータが,ゲート側記憶部24に格納した照合済データ72に存在するか判定部23で判定する(ステップs3)。
【0096】
また,カードデータが適正であるか,すなわち,照合済データ72の有効期間が切れておらず,通過可能ゲートにそのゲートが含まれていて適正であるかを判定部23で判定する(ステップs4)。
【0097】
さらに,カードデータがブラックリストに存在しないかを判定部23で判定する(ステップs5)。
【0098】
前記ステップs3?s5の判定で何か1つでもNOであった場合,すなわち照合済データ72に存在しないか,カードデータが適正でないか,ブラックリストに存在するかのいずれかであった場合には,ゲート側制御部26は通過不可と判定してゲート扉21を閉鎖し(ステップs6),処理を終了する。
【0099】
前記ステップs3?s5の判定で全てがYESであった場合,すなわち照合済データ72に存在し,カードデータが適正であり,ブラックリストに存在しない場合には,ゲート側制御部26は通過許可と判定してゲート扉21を開く(ステップs7)。」


イ ここで,引用例1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「この発明は,例えばビルや駅やアミューズメント施設といった建造物への入場口や,セキュリティルームといった領域への入場口に設置して,入場権限のない利用者の入場規制を行うようなゲートシステムに関する。」,「この発明は,ゲートを通過利用する利用者が携帯するカード等の記憶媒体の不正利用を防止すると共にゲートの通過判定に要する時間を短くしてゲート通過時に混雑を生じさせないゲートシステムを提供することを目的とする。」との記載,上記Bの「次に,図2に示すブロック図と共に,カメラ10,ゲート装置20,利用者特定装置30,及びサーバ50で構成するゲートシステム1の構成について説明する。」との記載からすると,「ゲートシステム」は,カードを携帯する利用者の入場規制を1つの目的とすることが読み取れるから,引用例1には,
“カメラ,ゲート装置,利用者特定装置,及びサーバで構成され,カードを携帯する利用者の入場規制を行うゲートシステム”
が記載されていると解される。

(イ)上記Bの「ゲート装置20は,ゲート扉21,カード読取部22,判定部23,ゲート側記憶部24,及び送受信部25をゲート側制御部26に接続して構成する。」,「前記カード読取部22は,非接触ICカード15とアンテナで無線通信を行い,非接触ICカード15の記憶部に格納したデータを読み取る。」,「前記判定部23は,読み取った非接触ICカード15に通過権限があるか否かの判定処理を実行する。」,「前記送受信部25は,利用者特定装置30とデータの送受信を実行する。前記ゲート側制御部26は,CPU,ROM,及びRAMで構成し,各部の動作制御を実行する。」との記載,上記Gの「ゲート側制御部26は,カード読取部22で非接触ICカード15から信号を受信するまで待機する」,「信号を受信すると,カード読取部22で非接触ICカード15に格納しているカードIDナンバー等のカードデータを読み取る」,「前記ステップs3?s5の判定で全てがYESであった場合,すなわち照合済データ72に存在し,カードデータが適正であり,ブラックリストに存在しない場合には,ゲート側制御部26は通過許可と判定してゲート扉21を開く(ステップs7)。」との記載からすると,「カード読取部22」が「非接触ICカード15」の「カードIDナンバー」を読み取る態様を含むことから,引用例1には,
“ゲート装置は,
ゲート扉と,非接触ICカードとアンテナで無線通信を行い,非接触ICカードの記憶部に格納したカードIDナンバーを読み取るカード読取部と,読み取った非接触ICカードに通過権限があるか否かの判定処理を実行する判定部と,ゲート側記憶部と,利用者特定装置とデータの送受信を実行する送受信部と,判定部で通過許可と判定されるとゲート扉を開くゲート側制御部と,を備え”ること
が記載されていると解される。

(ウ)上記Eの「次に,図4のデータ構成図と共に,ゲート装置20のゲート側記憶部24に格納する照合済データ72について説明する。該照合済データ72は,利用者特定装置30が顔データによる照合を済ませた利用者データ(非接触ICカードデータ)であり,受信時間,カードIDナンバー,有効期間,及び通過可能ゲートで構成する。」との記載,上記Gの「ゲート側制御部26は,読み取ったカードデータが,ゲート側記憶部24に格納した照合済データ72に存在するか判定部23で判定する(ステップs3)。」,「また,カードデータが適正であるか,すなわち,照合済データ72の有効期間が切れておらず,通過可能ゲートにそのゲートが含まれていて適正であるかを判定部23で判定する(ステップs4)。」,「前記ステップs3?s5の判定で全てがYESであった場合,すなわち照合済データ72に存在し,カードデータが適正であり,ブラックリストに存在しない場合には,ゲート側制御部26は通過許可と判定してゲート扉21を開く(ステップs7)。」との記載からすると,「ゲート側記憶部」には,「利用者特定装置」において「顔データ」による照合済みの「カードIDナンバー」が格納されることが読み取れ,「ゲート装置」の「判定部」は,読み取った「カードIDナンバー」が「ゲート側記憶部」に格納された照合済みの「顔データ」に係る「カードIDナンバー」に存在するか否かを調べて,通過許可を判定することが読み取れる。
また,上記Gの「以上の動作により,ゲート装置20は利用者特定装置30から受信した照合済データを随時ゲート側記憶部24の照合済データ72に追加して格納し,一定時間が経過して古くなった照合済データを照合済データ72から削除することができる。」,「これにより,ゲート側記憶部24に格納している照合済データのデータ数を必要最小限の数に維持することができ,次に説明する通過照合処理で通過可否判定の比較対象を減少して高速に判定可能とすることができる。」との記載からすると,「ゲート側記憶部」に格納されるのは,一定時間以内に格納された複数の照合済みの「顔データ」であると解されるから,読み取った「カードIDナンバー」に係る照合済みの「顔データ」の存否を調べることは,読み取った「カードIDナンバー」と照合済みの「顔データ」に係る「利用者」との対応付けを行うことに他ならないから,引用例1には,
“判定部は,
読み取ったカードIDナンバーが,ゲート側記憶部に格納した顔データ照合済の複数のカードIDナンバーの中に存在するか判定し,読み取ったカードIDナンバーと照合済みの顔データに係るカードIDナンバーとの対応付けを行”うこと
が記載されていると解される。

(エ)上記Cの「利用者特定装置30は,送受信部31,画像取得部32,顔データ抽出部33,顔照合部34,特定側記憶部35,通信部36,入力装置38,及び表示装置39を特定側制御部37に接続して構成する。」,「前記画像取得部32は,カメラ10から撮像画像データを取得し,取得した撮像画像データを顔データ抽出部33に送信する。」,「前記顔データ抽出部33は,撮像画像データに存在する人物の顔を認識し,認識した顔から顔データを取得する。」,「前記顔照合部34は,前記顔データ抽出部33で取得した顔データと,登録利用者として事前にサーバ50に登録され,該サーバ50から送信されて特定側記憶部35に記憶する顔データとを照合して同一人物が存在するか否かを判定する。」,「前記特定側記憶部35は,ハードディスク又はフラッシュメモリといった記憶装置で構成しており,サーバ50から受信した利用者データ(顔データ及びカードデータ含む)を記憶している。」,「前記通信部36は,サーバ50とのデータ通信を実行する。」との記載,上記Fの「まず,カメラ10でゲートへ至る通路若しくはゲート前空間を撮像し,図6のイメージ図に示す撮像画像11を取得する」,「特定側制御部37は,上記撮像画像内に人物の顔F(F1,F2,F3)が存在して顔データ抽出部33で顔データを抽出することができる」との記載からすると,「画像取得部」が「カメラ」から取得する「撮像画像データ」は,ゲート前空間の複数の顔データを含む態様が読み取れ,
また,上記Dの「次に,図3のデータ構成図と共に,サーバ50のサーバ側記憶部,及び利用者特定装置30の特定側記憶部35に格納する登録利用者データ71について説明する。」,「該登録利用者データ71は,カードIDナンバー,有効期間,通過可能ゲート,及び顔データで構成する。前記カードIDナンバーは,非接触ICカード15にユニークに割り与えたナンバーを格納する。」との記載からすると,「利用者特定装置」の「特定側記憶部」は,携帯する「非接触ICカード」の「カードIDナンバー」と「利用者」の「顔データ」などを格納していることが読み取れるから,引用例1には,
“利用者特定装置は,
送受信部と,カメラからゲート前空間の撮像画像データを取得し,取得したゲート前空間の撮像画像データを顔データ抽出部に送信する画像取得部と,撮像画像データに存在する複数の人物の顔を認識し,認識した顔から顔データを取得する顔データ抽出部と,顔データ抽出部で取得した顔データと,登録利用者として事前にサーバに登録され,該サーバから送信されて特定側記憶部に記憶する顔データとを照合して同一人物が存在するか否かを判定する顔照合部と,サーバから受信した,顔データ及び携帯する非接触ICカードのカードIDナンバー含む利用者データを記憶している特定側記憶部と,サーバとのデータ通信を実行する通信部と,入力装置,表示装置を接続する特定側制御部と,を備え”ること
が記載されていると解される。

(オ)上記Dの「サーバ50は,前記通信部36を介して利用者特定装置30とデータの送受信を可能に構成している。」,「以上の構成により,サーバ50で全入場口3での利用者を管理し,利用者特定装置30で入場口3単位での監視を可能とし,ゲート装置20で通過可否を判定可能とすることができる。」との記載からすると,引用例1には,
“サーバは,通信部を介して利用者特定装置とデータの送受信が可能で,ゲート装置で通過可否を判定可能とする”こと
が記載されていると解される。

ウ 以上,(ア)乃至(オ)で示した事項から,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「カメラ,ゲート装置,利用者特定装置,及びサーバで構成され,カードを携帯する利用者の入場規制を行うゲートシステムであって,
前記ゲート装置は,
ゲート扉と,非接触ICカードとアンテナで無線通信を行い,前記非接触ICカードの記憶部に格納したカードIDナンバーを読み取るカード読取部と,読み取った前記非接触ICカードに通過権限があるか否かの判定処理を実行する判定部と,ゲート側記憶部と,利用者特定装置とデータの送受信を実行する送受信部と,前記判定部で通過許可と判定されると前記ゲート扉を開くゲート側制御部と,を備え
前記判定部は,
読み取った前記カードIDナンバーが,前記ゲート側記憶部に格納した顔データ照合済の複数のカードIDナンバーの中に存在するか判定し,読み取った前記カードIDナンバーと照合済みの顔データに係るカードIDナンバーとの対応付けを行い,
前記利用者特定装置は,
送受信部と,カメラからゲート前空間の撮像画像データを取得し,取得したゲート前空間の撮像画像データを顔データ抽出部に送信する画像取得部と,撮像画像データに存在する複数の人物の顔を認識し,認識した顔から顔データを取得する顔データ抽出部と,前記顔データ抽出部で取得した顔データと,登録利用者として事前にサーバに登録され,前記サーバから送信されて特定側記憶部に記憶する顔データとを照合して同一人物が存在するか否かを判定する顔照合部と,前記サーバから受信した,顔データ及び携帯する非接触ICカードのカードIDナンバー含む利用者データを記憶している特定側記憶部と,前記サーバとのデータ通信を実行する通信部と,入力装置,表示装置を接続する特定側制御部と,を備え
前記サーバは,前記通信部を介して前記利用者特定装置とデータの送受信が可能で,前記ゲート装置で通過可否を判定可能とする
ことを特徴とするゲートシステム。」


(3)参考文献

(3-1)参考文献1に記載されている技術的事項

本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2006-99381号公報(平成18年4月13日出願公開,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H 「【0015】
図1?図2に,本発明の入退場管理システムにおける共連れ防止方法の第1実施例を示す。
本発明は,図1に示すように,工場,事務所,役所,その他の建物,構築物等固定側,特に限定されるものではないが,例えば,壁や天井面に配設したコントローラCTLと,予め特定した位置の通過者や特定場所への入場者が携帯するようにしたタグTとから構成し,かつこタグTには,それぞれ特定の個人情報などの各種情報を入力し,これを事業所員,作業員等が携帯或いは所持するようにし,該コントローラCTL,タグT間を光信号及び/又は電波にて送受信してタグからの受信信号をコントローラ側に配設した認証用データベースとに基づいて判定して位置ID及びタグIDを認証し,かつ該認証判定によるカウント数と,カメラによる画像分析の人数カウントとを比較し,その判定結果に基づいて警報器,ゲート用電気錠,録画機能を備えた録画式防犯カメラ等の防犯管理用機器を操作するようにして,タグ不携帯者等の不正侵入,所謂共連れを防止するように構成する。
なお,必要に応じて壁や天井面等の固定側に,人感センサー等の侵入検知センサーを配設して,コントローラ,タグによるタグ認証の補完をするようにすることもある。
【0016】
この入退場管理システムにおける共連れ防止方法の詳細を,図1に示すフロー図に従って説明する。
コントローラCTLは,特に限定されるものではないが,例えば,図1に示すように,位置ID生成回路1及び認証判定回路2よりなる計算機CPUと,外部I/O制御回路3と,前記位置ID生成回路1にて形成された位置IDの信号を光信号に変換するようにして位置ID生成回路1に接続する光信号変換回路4と,タグIDと位置IDをキーにデータベースから認証結果を取得するよう認証判定回路2に接続した認証用データベース5と,認証判定回路2と外部I/O制御回路3との間に並列的に接続し,警報器等20,ゲート用電気錠等19の防犯管理用操作機器を制御するようにした制御回路6及び受信機9からの受信信号を受けて外部I/O制御回路3により合成した合成IDを位置IDとタグIDに変換するようにしたID変換回路7とから構成する。
なお,必要に応じて該光信号変換回路4をコントローラCTLの外部に配設することもできる。
…(中略)…
【0021】
このタグTから発信される無線信号を受信するための受信器9は,特に限定されるものではないが,例えば,コントローラCTLの近傍に配設し,この受信器9のアンテナ15にて受信した無線信号をコントローラCTLの外部I/O制御回路3に投入できるように配設して構成する。
この受信器9は1台で,同時に複数のタグT,Tからの信号を受信するようにするとともに,複数のゲート或いは仮想ゲートがある場合,各仮想ゲート毎に1台の受信器9を配設し,各受信器9とコントローラCTLの外部I/O制御回路3とを電気的に接続するようにする。
なお,この無線信号の送受信は,特に限定されるものではないが,例えば,RFID(Radio Frequency Identifiation(電波方式認識))にて行うことができる。」

(3-2)参考文献2に記載されている技術的事項

本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2010-126898号公報(平成22年6月10日出願公開,以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0005】
このことを入退室管理システムの模式図である図9,図10を用いて説明する。図9,図10に示すように,入退室管理システムは,部屋どうしを仕切る壁202,部屋の出入り口となる電気錠付きの扉204,扉204付近に設置されたタグリーダー(不図示),タグリーダーが識別情報を問い合わせる質問信号を送信する大エリア206または小エリア208を含む。また,各ユーザーA,Bは図示しないタグを携行し,扉204の通行権限を有するのに対して,ユーザーC,Dは,タグを携行していないか,携行していても扉204の通行権限を有さないものとする。
【0006】
図9(a)に示すように,タグリーダーは大エリア206に質問信号を送信する。大エリア206は大きいため,タグリーダーは,ユーザーAは扉204に接近するより手前の段階で,ユーザーAのタグから識別情報を読み取って,扉204の電気錠を解錠することができる。 …(後略)…」


(4)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「ゲートシステム」は利用者の携帯する非接触型のカードのデータを処理することは明らかであるから,本件補正発明の「無線タグ処理装置」に対応するものである。

(イ)引用発明では,「利用者特定装置」の「特定側記憶部」が「サーバから受信した,顔データ及び携帯する非接触ICカードのカードIDナンバー含む利用者データを記憶している」ところ,引用発明の「カードIDナンバー」は利用者が携帯する「非接触ICカード」のIDであり,「顔データ」は利用者の身体的特徴情報と言えることは明らかであるから,引用発明の「カードIDナンバー」,「顔データ」はそれぞれ,本件補正発明の「無線タグID」,「身体的特徴情報」と言える。
そうすると,引用発明の「顔データ及び携帯する非接触ICカードのカードIDナンバー含む利用者データを記憶している特定側記憶部」は本件補正発明の「無線タグIDとそのユーザの身体的特徴情報とを予め登録したデータ保存手段」に相当すると言える。

(ウ)引用発明では,「ゲート装置」の「カード読取部」が「非接触ICカードとアンテナで無線通信を行い,前記非接触ICカードの記憶部に格納したカードIDナンバーを読み取る」ところ,上記(イ)での検討から引用発明の「非接触ICカード」,「カードIDナンバー」はそれぞれ,本件補正発明の「無線タグ」,「無線タグID」に相当すると言え,引用発明の「カード読取部」と本件補正発明の「無線タグID取得手段」とは,無線通信可能な範囲に存在する「無線タグ」の「無線タグID」を受信する点で共通すると言える。
そうすると,引用発明の「非接触ICカードとアンテナで無線通信を行い,前記非接触ICカードの記憶部に格納したカードIDナンバーを読み取るカード読取部」と,本件補正発明の「2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された広範囲の通信エリア」で「2つ以上の無線タグが含まれる前記広範囲の通信エリアに存する前記無線タグの無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段」とは,後記する点で相違するものの,“無線タグが含まれる無線通信可能な通信エリアに存在する無線タグの無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段”である点で共通していると言える。

(エ)引用発明では,「利用者特定装置」の「画像取得部」が「カメラからゲート前空間の撮像画像データを取得し」,「撮像画像データ」には「複数の人物の顔」が存在するところ,引用発明の「撮像画像データ」は本件補正発明の「ユーザ」の「外観情報」に相当することは明らかであるから,引用発明の「カメラからゲート前空間の撮像画像データを取得し,取得したゲート前空間の撮像画像データを顔データ抽出部に送信する画像取得部」は本件補正発明の「前記無線タグの2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段」に相当すると言える。

(オ)引用発明では,「利用者特定装置」の「顔データ抽出部」が「撮像画像データに存在する複数の人物の顔を認識し,認識した顔から顔データを取得する」ところ,上記(イ),(エ)での検討から引用発明の「撮像画像データ」,「顔データ」はそれぞれ,本件補正発明の「外観情報」,「身体的特徴情報」に相当すると言えるから,引用発明の「撮像画像データに存在する複数の人物の顔を認識し,認識した顔から顔データを取得する顔データ抽出部」は本件補正発明の「前記外観情報から前記ユーザの各身体的特徴情報を抽出する身体的特徴抽出手段」に相当すると言える。

(カ)引用発明では,「利用者特定装置」の「顔照合部」が「顔データ抽出部で取得した顔データと,登録利用者として事前にサーバに登録され,前記サーバから送信されて特定側記憶部に記憶する顔データとを照合して同一人物が存在するか否かを判定する」ところ,上記(イ)での検討から引用発明の「顔データ」,「特定側記憶部」はそれぞれ,本件補正発明の「身体的特徴情報」,「データ保存手段」に相当することから,抽出した「顔データ」と「特定側記憶部」に登録した「顔データ」との対比を行っているとみることができる。
また,引用発明では,「ゲート装置」の「判定部」が「読み取った前記非接触ICカードに通過権限があるか否かの判定処理を実行」し,「ゲート側制御部」は「判定部で通過許可と判定されると前記ゲート扉を開く」ところ,この「ゲート扉を開く」処理は,「非接触ICカード」のデータを介して権限が確認される「利用者」が受けることができるサービスとみることができるから,引用発明の「ゲート扉を開く」ことは本件補正発明の「所定のサービスの提供に係る処理」に相当すると言える。
そして,引用発明では,「ゲート装置」の「判定部」が「読み取った前記カードIDナンバーが,前記ゲート側記憶部に格納した顔データ照合済の複数のカードIDナンバーの中に存在するか判定し,読み取った前記カードIDナンバーと照合済みの顔データに係るカードIDナンバーとの対応付けを行」うところ,「ゲート扉を開く」対象となる「カードIDナンバー」を決定することから,本件補正発明の「所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグIDを決定」することに相当すると言える。
そうすると,引用発明の「顔データ抽出部で取得した顔データと,登録利用者として事前にサーバに登録され,前記サーバから送信されて特定側記憶部に記憶する顔データとを照合して同一人物が存在するか否かを判定する顔照合部」と,「読み取った前記カードIDナンバーが,前記ゲート側記憶部に格納した顔データ照合済の複数のカードIDナンバーの中に存在するか判定し,読み取った前記カードIDナンバーと照合済みの利用者の顔データとの対応付けを行」うことにより「読み取った前記非接触ICカードに通過権限があるか否かの判定処理を実行する判定部」とを併せたものと,本件補正発明の「抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報との対比を行い前記所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグIDを決定し当該無線タグIDと前記ユーザを紐付ける処理対象決定手段」とは,後記する点で相違するものの,“抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報との対比を行い前記所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグIDを決定する処理対象決定手段”である点で共通していると言える。

イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>

「無線タグIDとそのユーザの身体的特徴情報とを予め登録したデータ保存手段と,
無線タグが含まれる無線通信可能な通信エリアに存する前記無線タグの無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段と,
前記無線タグの2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段と,
前記外観情報から前記ユーザの各身体的特徴情報を抽出する身体的特徴抽出手段と,
抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報との対比を行い前記所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグIDを決定する処理対象決定手段と,
を備えることを特徴とする無線タグ処理装置。」

<相違点1>

無線タグID取得手段と無線タグとの通信エリアに関し,本件補正発明では,「2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された」「広範囲の通信エリアに在する」のに対して,引用発明では,無線タグ(非接触ICカード)が「アンテナで無線通信を行」うことができるエリアに存在するものの,2つ以上の無線タグ(非接触ICカード)が含まれる所定のサービスの提供が設定された広範囲の通信エリアかどうか特定されていない点。

<相違点2>

本件補正発明では,「所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグIDを決定し当該無線タグIDと前記ユーザを紐付ける」のに対して,引用発明では,「読み取った前記非接触ICカードに通過権限があるか否かの判定処理を実行する」ものの,所定のサービスの提供に係る処理の対象(通過権限がある)と判定された無線タグ(非接触ICカード)とユーザを紐付けることについて言及されていない点。


(5)当審の判断

上記相違点1及び2について検討する。

ア 相違点1について

引用発明では,「ゲート装置」の「カード読取部」が「アンテナで無線通信を行」うことのできるエリアに存在する「非接触ICカード」を介して,利用者にゲート扉を開くサービスを提供するところ,2つ以上の無線タグが含まれるような比較的広範囲のエリアに存在する無線タグと通信して,所定のサービスの提供に係る無線タグを決定する技術は,例えば,参考文献1(上記Hを参照のこと),参考文献2(上記Jを参照のこと)に記載されるように本願出願前には当該技術分野における周知技術であった。
また,引用発明の如く,サービス提供を受ける権限(通過権限)があると判定された無線タグに係る利用者にサービスを提供するシステムにおいて,無線タグ読み取り部が当該判定のために通信する無線タグの存在するエリアを,近接したエリアとするか,2つ以上の無線タグが存在する比較的広範囲のエリアとするかは,サービス内容やサービス可否の判定の精度に応じて適宜選択し得た設計的事項である。
そうすると,引用発明において,上記周知技術を適用し,適宜,所定のサービスの提供に係る非接触ICカードの存在するエリアを2つ以上の非接触ICカードが含まれる範囲の通信エリアとし,当該エリアに存在する非接触ICカードと通信して所定のサービスの提供を決定すること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

引用発明では,「ゲート装置」の「判定部」が「読み取った前記カードIDナンバーが,前記ゲート側記憶部に格納した顔データ照合済の複数のカードIDナンバーの中に存在するか判定し,読み取った前記カードIDナンバーと照合済みの顔データに係るカードIDナンバーとの対応付けを行」うところ,「ゲート扉を開く」対象となる「カードIDナンバー」を決定しているとみることができる。
また,引用発明において,「利用者特定装置」の「特定側記憶部」に記憶されるように,「非接触ICカード」の「カードIDナンバー」と「利用者データ」は紐付けられたデータであると言える。
そうすると,引用発明において,判定部で通過許可と判定された非接触ICカードのカードIDナンバーと利用者を紐付けること,すなわち,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 小括

上記で検討したごとく,相違点1及び2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。


4 補正却下の決定のむすび

上記「3 独立特許要件」で指摘したとおり,補正後の請求項1に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

平成27年5月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,補正後の請求項1に対応する補正前の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年12月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「 無線タグIDとそのユーザの身体的特徴情報とを予め登録したデータ保存手段と,
2つ以上の無線タグが含まれる広範囲の通信エリアに存する前記無線タグの無線タグIDを受信して取得する無線タグID取得手段と,
前記無線タグの2人以上のユーザの外観情報を取得する外観情報取得手段と,
前記外観情報から前記ユーザの各身体的特徴情報を抽出する身体的特徴抽出手段と,
抽出した前記身体的特徴情報と登録した前記身体的特徴情報との対比を行い処理対象となる前記無線タグIDを決定し当該無線タグIDと前記ユーザを紐付ける処理対象決定手段と,
を備えることを特徴とする無線タグ処理装置。」

2 引用例に記載されている技術的事項及び引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された,引用発明は,前記「第2 平成27年5月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は,前記「第2 平成27年5月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」で検討した本件補正発明の発明特定事項である「2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された広範囲の通信エリア」から「2つ以上の無線タグが含まれることができ,かつユーザが無線タグを介して受けることのできる所定のサービスの提供が設定された」の限定事項を削除し,さらに,発明特定事項である「前記所定のサービスの提供に係る処理の対象となる前記無線タグID」から「前記所定のサービスの提供に係る処理の」の限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,前記「第2 平成27年5月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3 独立特許要件」の「(2)引用例」乃至「(5)当審の判断」に記載したとおり,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明及び当該技術分野の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-03 
結審通知日 2016-03-08 
審決日 2016-03-28 
出願番号 特願2011-86270(P2011-86270)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 充裕福田 正悟  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 辻本 泰隆
戸島 弘詩
発明の名称 無線タグ処理装置  
代理人 田宮 寛祉  
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