• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1315166
審判番号 不服2015-13520  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-16 
確定日 2016-06-14 
事件の表示 特願2013-229861「ワイヤレス通信ネットワークにおけるシグナリングメッセージ送信」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月24日出願公開、特開2014- 75801、請求項の数(26)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2009年(平成21年)3月27日(優先権主張 2008年(平成20年)3月28日 米国,2009年(平成21年)3月25日 米国)を国際出願日とする特願2011-502096号の一部を,平成25年11月5日に新たな特許出願としたものであって,同年12月5日付けで手続補正書の提出がなされ,平成26年8月8日付けで拒絶理由が通知され,同年11月17日付けで意見書の提出がなされ,平成27年3月10日付けで拒絶査定され,同年7月16日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされ,同年9月2日付けで前置報告書が作成されたものである。


第2 本願発明

1.本件補正の概要
平成27年7月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成25年12月5日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1,13,17及び23に記載された事項(以下「本件補正前記載事項」)を,次の(2)のように補正することを含むものである。(下線は請求人が付与。)

(1) 本件補正前の請求項1,13,17及び23記載事項
【請求項1】
ワイヤレス通信ネットワーク中でシグナリングを送る方法において、
プロセッサによって、優先順位レベルに関係付けられ、第1の局に対する干渉を減少させるように少なくとも1つの干渉局に要請する干渉減少要求を発生させることと、
前記プロセッサによって、前記干渉減少要求の前記優先順位レベルに基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定することと、
送信機によって、前記直交リソースに基づいて、前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送ることとを含み、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なる優先順位レベルに関係付けられている方法。

【請求項13】
ワイヤレス通信のための装置において、
優先順位レベルに関係付けられ、第1の局に対する干渉を減少させるように少なくとも1つの干渉局に要請する干渉減少要求を発生させる手段と、
前記干渉減少要求の前記優先順位レベルに基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定する手段と、
前記直交リソースに基づいて、前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送る手段とを具備し、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なる優先順位レベルに関係付けられている装置。

【請求項17】
ワイヤレス通信ネットワーク中でシグナリングを受信する方法において、
プロセッサによって、優先順位レベルに関係付けられ、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースに基づいて送られた干渉減少要求を検出することと、
前記プロセッサによって、前記検出した干渉減少要求に基づいて、第1の局の送信電力を減少させることとを含み、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なる優先順位レベルに関係付けられている方法。

【請求項23】
ワイヤレス通信のための装置において、
優先順位レベルに関係付けられ、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースに基づいて送られた干渉減少要求を検出する手段と、
前記検出した干渉減少要求に基づいて、第1の局の送信電力を減少させる手段とを具備し、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なる優先順位レベルに関係付けられている装置。


(2) 本件補正後の請求項1,13,17及び23記載事項
【請求項1】
ワイヤレス通信ネットワーク中でシグナリングを送る方法において、
プロセッサによって、メッセージ値に関係付けられ、第1の局に対する干渉を減少させるように少なくとも1つの干渉局に要請する干渉減少要求を発生させることと、
前記プロセッサによって、前記干渉減少要求の前記メッセージ値に基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定することと、
送信機によって、前記直交リソースに基づいて、前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送ることとを含み、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている方法。

【請求項13】
ワイヤレス通信のための装置において、
メッセージ値に関係付けられ、第1の局に対する干渉を減少させるように少なくとも1つの干渉局に要請する干渉減少要求を発生させる手段と、
前記干渉減少要求の前記メッセージ値に基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定する手段と、
前記直交リソースに基づいて、前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送る手段とを具備し、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている装置。

【請求項17】
ワイヤレス通信ネットワーク中でシグナリングを受信する方法において、
プロセッサによって、メッセージ値に関係付けられ、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースに基づいて送られた干渉減少要求を検出することと、
前記プロセッサによって、前記検出した干渉減少要求に基づいて、第1の局の送信電力を減少させることとを含み、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている方法。

【請求項23】
ワイヤレス通信のための装置において、
メッセージ値に関係付けられ、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースに基づいて送られた干渉減少要求を検出する手段と、
前記検出した干渉減少要求に基づいて、第1の局の送信電力を減少させる手段とを具備し、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている装置。


2.本件補正

(1) 拒絶査定の概要
拒絶査定の備考には,次の記載がある。

●理由A(特許法第36条第6項第1号)について
・請求項:1-26
請求項1,13には「前記干渉減少要求の前記優先順位レベルに基づいて・・・使用するための直交リソースを決定」すること、及び「前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なる優先順位レベルに関係付けられている」と記載されているが、当該事項が発明の詳細な説明のいずれに記載されているのか不明確である。
上申書には段落【0033】、【0038】に基づく旨記載されているが、当該箇所をみても、干渉減少要求の優先順位に基づいて送信するためのリソースを選択することは記載されているが、特に「前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソース」が「(干渉減少要求を送信する直交リソースを決定するのに用いた優先順位レベルとは)異なる優先順位レベルに関係付けられている」ことが記載されているとは認められない。
よって、請求項1,13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
請求項1,13を引用する請求項、請求項17,23及び請求項17,23を引用する請求項も同様である。

なお、出願人は、平成26年11月17日付け意見書において
「明細書の段落0037の実施形態では、M個の副搬送波が言及され、段落0038では、副搬送波と優先順位との関係が説明されています。
これに続く段落0042の実施形態では、M個の直交シーケンスが言及されています。 したがいまして、当業者であれば、文脈の流れから、副搬送波と優先順位との関係が、直交シーケンスと優先順位との関係にも同様に当てはまると当然に考えるものと思料致します。
発明の詳細な説明は当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていれば足り(特許法第36条第4項第1号)、実施形態ごとにあらゆるバリエーションを明細書に記載することは要求されていないものと思料致します。本願明細書の段落0099にも、「開示に対するさまざまな修正は、当業者に容易に明らかになるであろう。また、ここで規定されている一般的な原理は、本開示の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、他の変形に適用されてもよい。」と記載されております。」と主張するので、これを検討する。
段落0042には、M個の直交シーケンスについて言及しており、ウォルシュシーケンスや他の拡散シーケンスであることや、各シーケンスが直交であっても良く、また無くても良い、さらに、シーケンス長やシンボル数等、様々な条件について記載されている一方、優先順位については述べられていない。
出願人が主張するように、実施形態毎にあらゆるバリエーションを明細書に記載することは要求されていないことは、その通りであるとしても、また、段落0099に様々な修正がありうる旨が記載されているとしても、段落0038に副搬送波と優先順位との関係が述べられているからといって、段落0042に記載されている直交シーケンスの上記様々な条件に加えて、直交シーケンスに優先順位を付けることに拡張する合理的な理由はない。
したがって、上記意見書の主張は採用できない。

●理由B(特許法第29条第2項)について
・請求項:1-19,23,24
・引用文献等:1,2
[備考]
引用文献1には、帰属無線基地局の電波に干渉する近隣無線基地局に対して、無線端末装置が電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信することが記載されている。(特に段落【0060】-【0063】,要約,図10を参照)
また、引用文献1には無線基地局と無線端末装置とは無線LANで接続されることが記載されており、無線LANシステムにおいてOFDMが使用されることは当業者にとって周知技術であるので、制御信号を直交リソースを用いて送信することは当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、引用文献2には、データの優先度に応じたリソースを割り当てること、リソースは複数のサブキャリアを含むことが記載されていると認められる。(特に段落【0096】-【0097】,図24,25を参照)
そして、引用文献1に記載された発明において引用文献2に記載された発明を適用し、制御信号の優先度に基づいて直交リソースを割り当てることは、当業者が容易になし得たことである。
また、干渉レベルに基づいて送信電力制御を行うことは、当業者にとって周知技術である。

なお、出願人は平成26年11月17日付け意見書において、
「(A)引例1の発明には、「帰属無線基地局の電波に干渉する近隣無線基地局に対して、無線端末装置が電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信する」ことが開示されているかもしれません。
しかしながら、引例1には、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信するために利用可能なリソースの中から、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信するために使用するリソースを決定することは何ら開示されていません。
これに対して、本願の請求項1の発明は、「干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定」しています。
(B)引例2の段落0096?0098には、優先度の高い呼制御データ用MDSを先にスロットに割り当て、残りのスロットに優先度の低いユーザデータ用MDSを割り当てることが開示されています。
すなわち、引例2の発明では、優先度の高いMDSを先にスロットに割り当て、その後、残りのスロットに優先度の低いMDSを割り当てているに過ぎません。
したがいまして、引例2の発明では、利用可能なスロットが異なる優先順位レベルに関係付けられているものではありません。」と主張するのでこれを検討する。
上記意見書(A)について
引例1では、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信するために使用するリソースを決定していない点で本願と相違すると主張しているが、引例1では、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信していることから、いずれかの(無線)リソースを用いて送信することは当業者にとって自明であり、その際送信するリソースを決定することも自明である。したがって、上記意見書の主張は採用できない。

上記意見書(B)について
引例2の発明では、利用可能なスロットが異なる優先順位レベルに関係づけられているものではありません、とあるが、上記理由Aで検討した通り、本願の請求項1の「利用可能な直交リソースは、異なる優先順位レベルに関係づけられている」という構成は、明細書に記載したものでないから、上記主張(B)についても採用できない。
(なお、本願明細書を参照しても(干渉減少)要求に対する優先順位は記載さ
れているものの、リソースに優先順位があることについて記載されていない。)

したがって、本願の請求項1-19,23,24に係る発明は、引用文献1,2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2008-017325号公報
2.特開2005-252980号公報


(2) 審判請求書における請求人の主張
審判請求書における【請求の理由】には次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)本願は、2008年3月28日および2009年3月25日に米国にした特許出願に基づいて、パリ条約第4条の規定による優先権を主張して、2009年3月27日付けで国際出願として出願され、日本を指定国とした特願2011-502096を原出願とする特願2013-229861でありますが、平成26年8月8日付けで、請求項の記載が不備であるとして、また、本願の請求項1?19、23、24に記載されている発明は、特開2008-017325号公報(引例1)および特開2005-252980号公報(引例2)の発明から容易に発明できるとして、拒絶理由通知を受けました。
これに対して、本発明と引例の発明との相違を説明したにも関わらず、平成27年3月10日付けで拒絶査定されました。
しかしながら、特許請求の範囲を補正したことから、以下に説明しますように、特許請求の範囲に記載不備はなく、本発明は引例1および2に記載されている発明から当業者が容易に発明をすることができるものではないものと思料致します。
(2)補正
補正は、[0042]、[0043]、[0079]に基づくものであります。
補正された事項は、補正前の請求項6、15と同様な構成要件であることから、特許法第17条の2第4項の規定を満たしているものと思料致します。
補正は、拒絶理由通知および拒絶査定で指摘された記載不備に対する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第17条の2第5項の規定を満たしているものと思料致します。なお、付言ながら、特許法第17条の2第5項各号は加重要件ではなく、いずれか1つの目的を満たしていれば、他の目的も満たしている必要はないものと思料致します。
(3)記載不備
記載不備が指摘されていました「優先順位レベル」を「メッセージ値」に補正したことから、記載不備は解消したものと思料致します。
(4)進歩性
(A)引例1の発明には、「帰属無線基地局の電波に干渉する近隣無線基地局に対して、無線端末装置が電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信する」ことが開示されているかもしれません。
しかしながら、引例1には、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信するために利用可能なリソースの中から、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信するために使用するリソースを決定することは何ら開示されていません。
これに対して、本願の請求項1の発明は、「前記干渉減少要求の前記メッセージ値に基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定」しています。
(B)引例2の段落0096?0098には、優先度の高い呼制御データ用MDSを先にスロットに割り当て、残りのスロットに優先度の低いユーザデータ用MDSを割り当てることが開示されています。
しかしながら、引例2にも、上述したような本発明の構成と同様な構成は何ら開示されていないものと思料致します。
(C)したがいまして、本願の請求項1およびその従属請求項は引例1および2の発明から容易になし得ないものと思料致します。
(D)本願の他の独立請求項は、本願の請求項1と同様な構成要件を具備していることから、本願の他の独立請求項およびその従属請求項も、引例1および2の発明から容易になし得ないものと思料致します。

(3) 本件補正に対する当審の見解
ア 拒絶査定について
上記「(1) 拒絶査定の概要」によると,原査定の拒絶の理由A及びBは,要するに,次のように解することができる。
(ア) 理由Aについて
本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項のうち「前記干渉減少要求の前記優先順位レベルに基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定する」との事項が,また,本件補正前の請求項13に係る発明を特定する事項のうち「干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定する」との事項が,それぞれ,本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。更に,本件補正前の請求項1及び13に係る発明を特定する事項である「前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なる優先順位レベルに関係付けられている」との事項も,本願の発明の詳細な説明に記載したものでない。
そして,請求項1,13を引用する請求項、請求項17,23及び請求項17,23を引用する請求項も同様である。

(イ) 理由Bについて
特開2008-017325号公報(引用文献1)に記載された「属無線基地局の電波に干渉する近隣無線基地局に対して、無線端末装置が電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信する」こと,及び,特開2005-252980号公報(引用文献2)に記載された「データの優先度に応じたリソースを割り当てる」ことと「リソースは複数のサブキャリアを含む」こと,そして,周知技術である「無線LANシステムにおいてOFDMが使用される」ことに基づいて,本件補正前の請求項1-19,23,24に係る発明は,当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件補正について
上記「(1) 拒絶査定の概要」,上記「(2) 審判請求書における請求人の主張」及び上記「ア 拒絶査定について」を踏まえると,本件補正は,明りょうでない記載の釈明を目的としたものであるといえる。

このため,本件補正後の請求項1,13,17及び23に記載された発明(以下,それぞれ「本願第1発明」,「本願第13発明」,「本願第17発明」及び「本願第23発明」という。)に対し,特許を受けることができるか否かについて検討する。


第3 引用発明

1.引用文献及び記載事項
原査定の理由に引用された刊行物は,上記「第2」の2.(3)(イ)にも述べたとおりであって,引用文献1として,特開2008-017325号公報(平成20年1月24日公開),引用文献2として,特開2005-252980号公報(平成17年9月15日公開)である。

(1) 引用文献1記載事項
引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 記載事項1
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局と、その無線基地局に帰属し無線通信を行う無線端末装置と、を有して構成される無線通信システムに関し、特に、無線端末装置が帰属する無線基地局の電波と電波干渉を生ずる干渉源となる無線装置が存在する場合に、無線基地局と無線装置との間での電波干渉の発生を回避することを可能とする無線端末装置、無線通信システム、無線通信制御方法及び無線通信制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムは、無線LANに代表されるように、無線端末装置が、無線基地局を介して有線ネットワークに接続し、インターネットサービスを享受することが可能となるように構築されていた。
【0003】
なお、従来の無線通信システムは、共通の周波数帯を使用して無線通信を行っている他の無線装置を検出するためにキャリアセンスを行い、複数の無線端末装置と、無線基地局と、の間の通信時間を時分割することで干渉回避を行っているが、単位時間当たりに伝送可能なデータ量を増加することができないため、無線基地局の設置数を増加してもシステム全体のスループットを増加することができず、無線基地局1台当たりのスループットが低下するという問題があった。
【0004】
このようなことから、上述した問題点を解決すべく、非干渉領域にある複数のユーザ端末に対しては、複数のアクセスポイントから同時に通信を行い、干渉領域にあるユーザ端末に対しては、複数のアクセスポイントから時間分割して通信を行い、データパケットの干渉を回避することを可能とする通信制御方法が開示された文献がある(例えば、特許文献1参照)。

イ 記載事項2
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
まず、本実施形態における無線通信システムの特徴について説明する。
【0060】
本実施形態における無線通信システムは、図1に示すように、無線基地局(AP1)と、無線基地局(AP1)に帰属し無線通信を行う無線端末装置(STA)と、を有して構成される無線通信システムである。なお、無線基地局(STA)は、無線基地局(AP1)に帰属しているため、無線基地局(AP1)を帰属無線基地局と称する。また、無線端末装置(STA)の近隣に存在する無線基地局(AP2)を近隣無線基地局と称する。
【0061】
図1に示すように、無線端末装置(STA)は、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)との電波到達範囲内に位置している。一方、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)とは、互いの電波到達範囲外に位置しており、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)とは、互いの存在を直接認識することができない。
【0062】
このため、帰属無線基地局(AP1)から無線端末装置(STA)へのデータ送信と、干渉源となる近隣無線基地局(AP2)から他の無線端末装置(図示せず)へのデータ送信と、が重なると、帰属無線基地局(AP1)から送信される電波と、近隣無線基地局(AP2)から送信される電波と、により電波干渉が発生し、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)との電波到達範囲内に位置している無線端末装置(STA)は、帰属無線基地局(AP1)からのデータを受信できない場合がある。
【0063】
このため、本実施形態における無線端末装置(STA)は、帰属無線基地局(AP1)の電波と電波干渉を生ずる干渉源となる無線装置(近隣無線基地局AP2に該当)を検出し、その干渉源となる無線装置(AP2)に対し、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信する。これにより、干渉源となる無線装置(AP2)は、無線端末装置(STA)から送信される制御信号を受信して、電波干渉を回避するための制御を行うことになる。

ウ 記載事項3
【0109】
(本実施形態の無線通信システムにおける一連の処理動作)
次に、図9、図10を参照しながら、本実施形態の無線通信システムにおける一連の処理動作について詳細に説明する。なお、図10に示す一連の処理動作は、図9に示すように、無線基地局(AP1)が構築する電波到達範囲(A)と、無線基地局(AP2)が構築する電波到達範囲(B)と、が重複する重複電波到達範囲に、無線端末装置(STA2)が存在していることを前提として説明する。
【0110】
図9に示すように、無線基地局(AP1)と、無線基地局(AP2)と、は互いの電波到達範囲に存在していないため、各無線基地局(AP1、AP2)は、隣接する無線基地局の存在を認識することができない。なお、無線端末装置(STA2)が帰属している無線基地局(AP1)を帰属無線基地局と称し、無線端末装置(STA2)が帰属していない無線基地局(AP2)を近隣無線基地局と称する。また、図9に示す無線端末装置(STA1)は、帰属無線基地局(AP1)に帰属しており、無線端末装置(STA3)は、近隣無線基地局(AP2)に帰属しているものとする。

(中略)

【0119】
次に、帰属無線基地局(AP1)は、無線端末装置(STA2)に対してデータ送信を行うための装置情報と、データ送信期間と、を含む干渉回避メッセージ(RTS:Reqrest To Send)を、帰属無線基地局(AP1)の電波到達範囲内に存在する無線端末装置(STA1、STA2)に対しブロードキャストする(ステップS15)。そして、帰属無線基地局(AP1)は、無線端末装置(STA2)に対してデータ送信を行うデータ送信期間を自身の帰属無線基地局(AP1)内の記憶部(103)に設定する(ステップS16)。
【0120】
無線端末装置(STA2)は、帰属無線基地局(AP1)がブロードキャストした干渉回避メッセージを受信した際に、その受信した干渉回避メッセージに含まれる装置情報を基に、自身の無線端末装置(STA2)宛のデータ送信に対する干渉回避メッセージであるか否かを判断する。
【0121】
なお、本実施形態では、帰属無線基地局(AP1)は、無線端末装置(STA2)に対してデータ送信を行うための装置情報(STA2)と、データ送信期間と、を含む干渉回避メッセージをブロードキャストしたため、無線端末装置(STA2)は、帰属無線基地局(AP1)から受信した干渉回避メッセージが、自身の無線端末装置(STA2)宛のデータ送信に対する干渉回避メッセージであると判断し、無線端末装置(STA2)は、干渉回避制御を行うことになる。
【0122】
このため、無線端末装置(STA2)は、干渉管理テーブル(208)を参照し、その
干渉管理テーブル(208)に登録されている無線装置のアドレスを基に、干渉源となる近隣無線基地局(AP2)に対し、干渉回避メッセージをマルチキャストにて転送する。また、無線端末装置(STA2)は、帰属無線基地局(AP1)から受信した干渉回避メッセージに含まれるデータ送信期間を、データ送信禁止区間として記憶部(203)に設定する。これにより、無線端末装置(STA2)は、記憶部(203)に設定したデータ送信禁止区間の間は、データ送信を行わないように制御することになる(ステップS17)。

エ 記載事項4
図10として,次の記載がある。


オ 引用文献1記載発明
上記アからエによると,引用文献1には,次の発明(以下「引用文献1記載発明」という。)が記載されているといえる。

無線基地局(AP1)と、無線基地局(AP1)に帰属し無線通信を行う無線端末装置(STA)と、を有して構成される無線通信システムにおける方法であって,なお、無線基地局(STA)は、無線基地局(AP1)に帰属しているため、無線基地局(AP1)を帰属無線基地局と称し,また、無線端末装置(STA)の近隣に存在する無線基地局(AP2)を近隣無線基地局と称する,
無線端末装置(STA)は、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)との電波到達範囲内に位置し,一方、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)とは、互いの電波到達範囲外に位置しており、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)とは、互いの存在を直接認識することができない,
このため、帰属無線基地局(AP1)から無線端末装置(STA)へのデータ送信と、干渉源となる近隣無線基地局(AP2)から他の無線端末装置へのデータ送信と、が重なると、帰属無線基地局(AP1)から送信される電波と、近隣無線基地局(AP2)から送信される電波と、により電波干渉が発生し、帰属無線基地局(AP1)と近隣無線基地局(AP2)との電波到達範囲内に位置している無線端末装置(STA)は、帰属無線基地局(AP1)からのデータを受信できない場合があり,
このため、本実施形態における無線端末装置(STA)は、帰属無線基地局(AP1)の電波と電波干渉を生ずる干渉源となる無線装置(近隣無線基地局AP2に該当)を検出し、その干渉源となる無線装置(AP2)に対し、電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信し,これにより、干渉源となる無線装置(AP2)は、無線端末装置(STA)から送信される制御信号を受信して、電波干渉を回避するための制御を行うことになる
無線通信システムにおける方法。


第4 当審の判断

1.原査定の理由A(36条6項1号)について
(1) 前置報告の概要
平成27年9月2日付けで作成された前置報告書には次の記載(下線は当審が付与。)がある。

請求項1,13,17,23には、メッセージ値と干渉減少要求とを関連付けることや、直交リソースは異なるメッセージ値に関連付けられているとの記載が認められるが、メッセージ値がどのようなものか明確で無い。

したがって、請求項1,13,17,23に係る発明及びこれらの請求項を引用する請求項2-12,14-16,18-22,24-26に係る発明は明確で無い。

(2) 理由A(36条6項1号及び同項2号)に関する当審の見解
上記前置報告によると,原査定の理由Aは解消したが,新たに,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を,本願は満たしていないということを報告していると解することができる。

そして,上記に関する報告は,要するに,「メッセージ値がどのようなものか明確で無い」というものである。
この報告事項について検討するに,「メッセージ値」が「メッセージ」の「値」を意味することは,文言上明白である。
したがって,該「メッセージ値」に関連し,本願が特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていないということはできない。

ここで,該「メッセージ値」について,念のため,確認するに,本願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。)には,次の記載(下線は当審が付与。)がある。

【0005】
ここでは、ワイヤレス通信ネットワーク中でシグナリングメッセージを送る技術を記述する。態様では、シグナリングメッセージを送るために予約されている1セットの副搬送波の中の少なくとも1つの特定の副搬送波にシグナリングメッセージをマッピングすることによって、シグナリングメッセージが送られてもよい。シグナリングメッセージは、複数の可能性ある値のうちの1つを持っていてもよい。シグナリングメッセージは、メッセージ値に基づいて、1セットの副搬送波から選択された少なくとも1つの特定の副搬送波上で送られてもよい。1つの設計では、シグナリングメッセージは、送信機局に対する干渉を減少させるように少なくとも1つの干渉局に要請する干渉減少要求であってもよい。送信機局が、シグナリングメッセージに基づいて、1セットの副搬送波中の少なくとも1つの副搬送波を選択してもよい。送信機局は、複数のシンボル期間中にそれぞれの選択された副搬送波上で、シグナリングメッセージを伝えるための信号(例えば、位相連続信号)を送ってもよい。受信機局は、シグナリングメッセージを検出するための相補的な処理を実行してもよい。

【0037】
図5は、副搬送波マッピングを利用するメッセージ送信スキーム500の設計を示している。シグナリングメッセージは、0ないしM-1のインデックスを持つ、予約されたセットのM個の副搬送波により送られてもよい。例えば、3ビットの干渉減少要求は、1セットの8個の副搬送波により送られてもよく、4ビットの要求は1セットの16個の副搬送波等により送られてもよい。シグナリングメッセージのM個の可能性ある値のそれぞれは、M個の副搬送波のうちの異なった1つにマッピングされてもよい。例えば、0ないしM-1のメッセージ値は、それぞれ、副搬送波0ないしM-1にマッピングされてもよい。シグナリングメッセージは、メッセージ値に基づいて、予約されたセット中の特定の副搬送波にマッピングされてもよい。そして、信号は、シグナリングメッセージの信頼ある受信を確実にするために、適切な送信電力レベルで(例えば、フルパワーで)、かつ適切な期間(例えば、予め定められた数のシンボル期間)にわたって、選択された副搬送波上で送られてもよい。予約されたセット中のM-1個の残りの副搬送波上で送られる信号は、存在しないかもしれない。
【0038】
一般的に、シグナリングメッセージに対する何らかの情報が、予約されたセット中の異なる副搬送波に対してハッシュされてもよい。1つの設計では、予約されたセット中のM個の副搬送波は、シグナリングメッセージの異なる優先順位に関係付けられてもよい。例えば、8個の優先順位レベルをサポートするために、8個の副搬送波が使用されるかもしれない。そして、選択された副搬送波は、副搬送波上で送られるシグナリングメッセージの優先順位に関係付けられているかもしれない。別の設計では、異なるセルまたはUE識別子(ID)が、予約されたセット中の異なる副搬送波に対してハッシュされてもよい。選択された副搬送波は、シグナリングメッセージを送る基地局またはUEのIDに関係付けられていてもよい。さらに別の設計では、優先順位と、セルまたはUE IDとを組み合わせたものが、予約されたセット中の異なる副搬送波に対してハッシュされてもよい。例えば、シグナリングメッセージは、3ビットのセルまたはUE IDと1ビットの優先順位とを含んでいてもよい。予約されたセット中の16個の副搬送波のうちの1つを選択するために、この4ビットのシグナリングメッセージを使用してもよい。また、情報の他の組み合わせを、異なる副搬送波にマッピングしてもよい。また、メッセージ値に基づいて、1つよりも多い副搬送波を選択してもよい。【0039】
第1の設計の場合、受信機局が、以下のように、シグナリングメッセージ(例えば、干渉減少要求)を検出してもよい。受信機局は、受信信号に対する時間ドメインサンプルを取得してもよい。それぞれのシンボル期間では、副搬送波NFFTのすべてに対する周波数ドメイン受信シンボルを取得するために、高速フーリエ変換(FTT)が時間ドメインサンプル上で実行されてもよい。予約セット中のそれぞれの副搬送波の受信電力は、その副搬送波に対する受信シンボルに基づいて決定されてもよい。その副搬送波上で信号が送られているか否かを決定するために、それぞれの副搬送波の受信電力を電力しきい値と比較してもよい。信号が検出されたそれぞれの副搬送波に対して、シグナリングメッセージに対するメッセージ値が、その副搬送波のインデックスに基づいて復元されてもよい。1つの設計では、電力しきい値は、静的な値であってもよく、静的な値は、良い検出性能を取得するために、コンピュータシミュレーションまたは経験的測定に基づいて決定されてもよい。別の設計では、電力しきい値は、例えば、すべての予約された副搬送波の受信電力、すべての利用可能な副搬送波の受信電力等に基づいて、動的に決定されてもよい。

【0043】
図6は、時間および周波数拡散を利用するメッセージ送信スキーム600の設計を示している。干渉減少要求は、メッセージ値に基づいて、長さMの特定の直交シーケンスにマッピングされてもよい。Tシンボル期間中にN個の副搬送波をカバーし、M個のリソースエレメントを含むリソースセグメント上で、選択された直交シーケンスが送られてもよい。ここで、M=N・Tである。それぞれのリソースエレメントは、1つのシンボル期間中に1つの副搬送波をカバーしていてもよく、1つのシンボルを送るために使用されてもよく、1つのシンボルは、実数値または複素数値であってもよい。選択された直交シーケンス中のM個のシンボルは、予め定められた順番で、リソースセグメント中のM個のリソースエレメントにマッピングされてもよい。例えば、M個のシンボルは、(i)図6に示したように、すべてのN個の副搬送波にわたって、1つのシンボル期間が同時に、または、(ii)すべてのT個のシンボル期間にわたって、1つの副搬送波が同時に、マッピングされてもよい。

【0079】
1つの設計では、第1の局が、干渉減少要求のメッセージ値に基づいて、複数の直交シーケンスの中から直交シーケンスを選択してもよい。そして、第1の局は、例えば、図6に示したように、リソースセグメントにわたって、選択された直交シーケンスをマッピングしてもよい。別の設計では、直交リソースは、基準信号シーケンスを含んでいてもよい。第1の局は、干渉減少要求を処理して、複数の変調シンボルを取得してもよい。第1の局は、複数の変調シンボルを基準信号シーケンスで拡散して、複数のデータシーケンスを取得してもよい。例えば、式(1)で示したように、それぞれの変調シンボルに対して、1つのデータシーケンスである。第1の局は、複数のデータシーケンスをリソースセグメントにマッピングしてもよく、それぞれのデータシーケンスは、例えば、図7に示したように、1つのシンボル期間中に複数の副搬送波にわたってマッピングされている。第1の局はまた、時間および/または周波数にわたって、干渉減少要求を他の方法で拡散させてもよい。例えば、第1の局は、1つの副搬送波上で複数のシンボル期間における時間にわたって、1つのシンボル期間中に複数の副搬送波上の周波数等にわたって、干渉減少要求を拡散させてもよい。

以上のとおりであって,「メッセージ値」は,当初明細書にも記載されたものである。

したがって,「メッセージ値」に関連し,本願が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないということもできない。


2.原査定の理由B(29条2項)について
(1) 前置報告の概要
平成27年9月2日付けで作成された前置報告書には次に記載(下線は当審が付与。)がある。

引用文献1には、帰属無線基地局の電波に干渉する近隣無線基地局に対して、無線端末装置が電波干渉の発生を回避するための制御信号を送信することが記載されている。(特に段落【0060】-【0063】,要約,図10を参照)
また、引用文献1には無線基地局と無線端末装置とは無線LANで接続されることが記載されており、無線LANシステムにおいてOFDMが使用されることは当業者にとって周知技術である。さらに、本願請求項のメッセージ値がどのようなものであるか不明であるが、適当なメッセージ値を適当に定義して、送信に使用する直交リソースと適当に関連付けることも格別困難性は認められない。
したがって、引用文献1に記載された発明に基づいて、本願の請求項1-19,23,24に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<引用文献等一覧>
1.特開2008-017325号公報

(2) 理由B(29条2項)に関する当審の見解
上記前置報告によると,要するに,本件補正後の請求項1-19,23,24に係る発明は,原査定で引用された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということを報告していると解することができる。

ここで,本願第1発明,本願第13発明,本願第17発明及び本願第23発明それぞれと,引用文献1記載発明とを比較すると,それぞれについて,次の点で一応共通し,また,少なくとも次の相違があるといえる。

ア 本願第1発明との共通点
【請求項1】
ワイヤレス通信ネットワーク中でシグナリングを送る方法において、
プロセッサによって、メッセージ値に関係付けられ、第1の局に対する干渉を減少させるように少なくとも1つの干渉局に要請する干渉減少要求を発生させることと、
前記プロセッサによって、前記干渉減少要求の前記メッセージ値に基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定することと、
送信機によって、前記直交リソースに基づいて、前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送ることとを含み、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている方法。

イ 本願第1発明との相違点
本願第1発明における「リソース」には「直交リソース」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明における「リソース」には,そのような特定がない点で相違する(<相違点1>)。
この相違により,本願第1発明においては,<相違点2>干渉減少要求を送るために利用可能な「リソース」,<相違点3>前記干渉減少要求に対して使用するための「リソース」,<相違点4>「前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送る」のに基づく「リソース」が,いずれも「直交リソース」であるのに対して,引用文献1記載発明における「リソース」については,そのような特定がない点で相違する。
そして,上記の干渉減少要求を送るために利用可能な「リソース」には,「異なるメッセージ値に関係付けられている」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明のものには,そのような特定がない点で相違する(<相違点5>)。

ウ 本願第13発明との共通点
【請求項13】
ワイヤレス通信のための装置において、
メッセージ値に関係付けられ、第1の局に対する干渉を減少させるように少なくとも1つの干渉局に要請する干渉減少要求を発生させる手段と、
前記干渉減少要求の前記メッセージ値に基づいて、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースの中から、前記干渉減少要求に対して使用するための直交リソースを決定する手段と、
前記直交リソースに基づいて、前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送る手段とを具備し、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている装置。

エ 本願第13発明との相違点
上記「イ 本願第1発明との相違点」に述べたのと同様に,本願第13発発明における「リソース」には「直交リソース」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明における「リソース」には,そのような特定がない点で相違する(<相違点1>)。
この相違により,本願第13発明においては,<相違点2>利用可能な「リソース」,<相違点3>前記干渉減少要求に対して使用するための「リソース」,<相違点4>「前記干渉減少要求を前記少なくとも1つの干渉局に送る」のに基づく「リソース」が,いずれも「直交リソース」であるのに対して,引用文献1記載発明における「リソース」のいずれにも,そのような特定がない点で相違する。
そして,上記の干渉減少要求を送るために利用可能な「リソース」には,「異なるメッセージ値に関係付けられている」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明のものには,そのような特定がない点で相違する(<相違点5>)。

オ 本願第17発明との共通点
【請求項17】
ワイヤレス通信ネットワーク中でシグナリングを受信する方法において、
プロセッサによって、メッセージ値に関係付けられ、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースに基づいて送られた干渉減少要求を検出することと、
前記プロセッサによって、前記検出した干渉減少要求に基づいて、第1の局の送信電力を減少させることとを含み、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている方法。

カ 本願第17発明との相違点
本願第17発明においては,利用可能な「リソース」が「直交リソース」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明における「リソース」にはそのような特定がない点で相違する(<相違点1>)。
そして,上記の干渉減少要求を送るために利用可能な「リソース」には,「異なるメッセージ値に関係付けられている」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明のものには,そのような特定がない点で相違する(<相違点2>)。

キ 本願第23発明との共通点
【請求項23】
ワイヤレス通信のための装置において、
メッセージ値に関係付けられ、干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースに基づいて送られた干渉減少要求を検出する手段と、
前記検出した干渉減少要求に基づいて、第1の局の送信電力を減少させる手段とを具備し、
前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている装置。

ク 本願第23発明との相違点
本願第23発明においては,利用可能な「リソース」が「直交リソース」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明における「リソース」にはそのような特定がない点で相違する(<相違点1>)。
そして,上記の干渉減少要求を送るために利用可能な「リソース」には,「異なるメッセージ値に関係付けられている」との特定があるのに対して,引用文献1記載発明のものには,そのような特定がない点で相違する(<相違点2>)。

ケ 検討
(ア) 本願第1発明との相違点に関する検討
(a) 相違点1から4について
本願第1発明と引用文献1記載発明との相違点1から相違点4について検討するに,引用文献1【0002】の記載によると,引用文献1記載発明における「無線通信システム」として「無線LAN」が想定されていると解することができる。
そして,上記のような「無線LAN」において,「OFDM」が使用されることは,引用例を示すまでもなく周知であるといえる。
更に,該「OFDM」が,「キャリア」を「リソース」とし,また,該「キャリア」それぞれが「直交」する変調方式であることは,技術常識である。
このことは,「OFDM」にける「キャリア」が,「直交リソース」といえることを示している。
そうすると,引用文献1記載発明における「リソース」を「直交リソース」とすることは,当業者が適宜なしえたものであるといえる。
したがって,相違点1から相違点4のように構成することは,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易になしえたものであるといえる。

(b) 相違点5について
相違点5についてみるに,本願第1発明における「リソース」が「直交リソース」であることは文言上明白である。
このような「直交リソース」となるには,本願第1発明における「リソース」が少なくとも「2つ」存在しなければならないことは当然である。
これを踏まえると,「前記干渉減少要求を送るために利用可能な直交リソースは、異なるメッセージ値に関係付けられている」との事項が技術的に意味するところは,第一に,少なくとも2つ存在するリソースが互いに「直交」する関係を有するものであって,第二に,該「少なくとも2つ存在するリソース」それぞれに「メッセージ値」が関連付けられ,更に,このように関連付けられた「メッセージ値」それぞれが「異なる」ものであると解するべきである。
一方,引用文献1記載発明において,「直交リソース」を使用し得ることは既に述べたとおりである。しかし,引用文献1記載発明における「リソース」を「直交リソース」とすることを当業者が容易になしえたとしても,当該「直交リソース」が「異なるメッセージ値に関連付けられる」ようにすることの記載も示唆も,引用文献1における記載から発見することはできない。
ほかに,このような「関連付け」を,当業者が容易になしうるものであるとする理由も発見しない。
このことは,結局のところ,本願第1発明が,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないことを示している。

(c) 本願第1発明との相違点に関する検討のまとめ
以上より,本願第1発明は,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたということはできない。
また,ほかに,本願第1発明を拒絶すべき理由も発見しない。

(イ) 本願第13発明との相違点に関する検討
(a) 相違点1から5について
引用文献1記載発明と本願第13発明との相違点1から5についても,上記「(ア) 本願第1発明との相違点に関する検討」に述べたのと同様であって,結局のところ,本願第13発明が,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(b) 本願第13発明との相違点に関する検討のまとめ
以上より,本願第13発明は,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたということはできない。
また,ほかに,本願第13発明を拒絶すべき理由も発見しない。

(ウ) 本願第17発明との相違点に関する検討
(a) 相違点1及び2について
相違点1は,上記「(ア) 本願第1発明との相違点に関する検討」において検討した相違点1及び2と同じであり,そして,相違点2は,上記「(ア) 本願第1発明との相違点に関する検討」において検討した相違点5と同じである。
そうすると,結局のところ,本願第17発明も,引用文献1記載発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(b) 本願第17発明との相違点に関する検討のまとめ
以上より,本願第17発明は,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたということはできない。
また,ほかに,本願第17発明を拒絶すべき理由も発見しない。

(エ) 本願第23発明との相違点に関する検討
(a) 相違点1及び2について
相違点1及び2は,上記「(ウ) 本願第17発明との相違点に関する検討」において検討した「相違点1及び2」と同じである。
そうすると,結局のところ,本願第23発明も,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(b) 本願第23発明との相違点に関する検討のまとめ
以上より,本願第23発明は,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたということはできない。
また,ほかに,本願第23発明を拒絶すべき理由も発見しない。

コ 検討のまとめ
以上のとおりであるから,本願第1,13,17,23発明は,いずれについても,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということができないものである。

このため,本件補正後の請求項1を直接的若しくは間接的に引用する請求項2から12に係る発明も,本件補正後の請求項13を直接的若しくは間接的に引用する請求項14から16に係る発明も,本件補正後の請求項17を直接的若しくは間接的に引用する請求項18から22に係る発明も,本件補正後の請求項23を直接的若しくは間接的に引用する請求項24から26に係る発明も,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということができないものである。

そして,ほかに,本件補正後の請求項1から26に係る発明について,拒絶すべき理由を発見しない。


第5 むすび

以上のとおりであり,本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-05-30 
出願番号 特願2013-229861(P2013-229861)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 圭子遠山 敬彦  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 北岡 浩
近藤 聡
発明の名称 ワイヤレス通信ネットワークにおけるシグナリングメッセージ送信  
代理人 奥村 元宏  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ