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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B |
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管理番号 | 1315437 |
審判番号 | 不服2014-15074 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-31 |
確定日 | 2016-06-10 |
事件の表示 | 特願2008-192915「体内イオン比検知器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年2月12日出願公開、特開2010-29339〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成20年7月26日の出願であって、平成25年4月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月13日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年11月14日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成26年2月4日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年4月4日付けで同年2月4日付けの手続補正を却下する決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月31日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成27年9月2日付けで拒絶理由が通知され、同年10月29日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年同月30日付けで手続補足書が提出されたものである。 2 当審の拒絶理由通知 当審における平成27年9月2日付けの拒絶理由通知の概略は、以下のとおりである。 (1)理由1(特許法第36条第6項第2号) 本願出願は、特許請求の範囲が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 特許請求の範囲に記載の「体内イオン比」は、一般的な技術用語でないので、発明の詳細な説明を参酌すると、段落【0024】に記載されるように、IRIb×(MI/PI)、すなわち、生体イオン比(IRIb)と、マイナスイオンとプラスイオンの比である非局所性イオン比(MI/PI)の積により定義されているものと解される。 このうち、非局所性イオン比については、段落【0002】の記載に照らし、空気イオン比(マイナスイオン数/プラスイオン数)をいうものと解され、空気イオンは、段落【0047】に記載されるように、空気イオン測定器により測定できるものである。 他方、「生体イオン比」については、段落【0023】の記載によれば、空気イオン比に起因する変動を起こす組織液中の陽イオンと陰イオンの比と解されるが、空気イオン比に起因する変動を起こす組織液中の陽イオンと陰イオンの存在は、出願時の技術常識を参酌しても知られておらず、不明である。 そうすると、「非局所性イオン比」及び「生体イオン比」の積で定義される特許請求の範囲の「体内イオン比」は、「非局所性イオン比」のみが理解できたとしても、「生体イオン比」の意味は不明であり、それらの積で表されるところの特許請求の範囲の「体内イオン比」もまた、その意味が不明と言わざるを得ない。 よって、請求項1に係る発明は明確でない。 (2)理由2(特許法第36条第4項第1号) 本願出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4号第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ア 本願発明の「体内イオン比検知器」を使用すると、段落【0065】等からは「体内イオン比検知器」が回転を起こすことが解され、段落【0071】等からは手指の開閉動作が行われることが解され、【実施例1】?【実施例17】には何らかの検出ができたことが記載されている。 しかしながら、上記理由1で述べたように、「体内イオン比」自体の概念が不明であって、体内イオン比が測定できたことが認識できない。 また、仮に、「体内イオン比」が理解でき、明りょうであるとしても、「体内イオン比」が測定できたというには、本願発明とは別の「体内イオン比」測定手段で「体内イオン比」を測定し、その結果と本願発明の「体内イオン比検知器」の結果を対比し、測定できたことを示す必要があるところ、そのような実施例の裏付けもない。 すなわち、本願発明の「体内イオン比検知器」を【実施例1】?【実施例17】のごとく実施した結果、何らかのものが検出できるとしても、それが、「体内イオン比」を反映しているか不明であって、「体内イオン比」とは別のものを検出した結果であることを否定できない。 また、段落【0047】?【0054】等において、非特許文献を引用しつつ理論的な説明を試みているが、段落【0047】に「体内イオン比に起因する体内イオン比流、体外イオン比流は、謂わばイオン特性および非周期的な波動的特性を有するイオン比流なので、従来科学領域の直流電流計、交流電流計およびそれに替わる如何なる計測機器でも計測できないのが現状である。」と記載のように、本願発明の「体内イオン比検知器」以外に測定できないと述べられており、その理論が正しいか否かも検証できるものではない。 したがって、【実施例1】?【実施例17】で検知されたものが「体内イオン比」であるということはできず、「体内イオン比検知器」として使用できるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 イ 検知者を意識状態に置く手法について(省略) (3)理由3(特許法第36条第6項第1号) 本願出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本願発明の解決しようとする課題は、段落【0034】の「体内イオン比状態に起因する情報を体外に取り出し、体内イオン比に関わる日常的な生体イオン比(健康状態)、非局所性イオン比(環境状態)および意識状態を簡便かつ視的に意識認知科学的な視的動作として検知できるようなマンマシーンインターフェースを提供することである」と解される。 本願発明の「体内イオン比検知器」を使用すると、段落【0065】等からは「体内イオン比検知器」が回転を起こすことが解され、段落【0071】等からは手指の開閉動作が行われることが解され、【実施例1】?【実施例17】には何らかの検出ができたことが記載されている。 しかしながら、上記理由1で述べたように、「体内イオン比」自体の概念が不明であって、体内イオン比が測定できたことが認識できない。 また、仮に、「体内イオン比」が理解でき、明りょうであるとしても、「体内イオン比」が測定できたと言うには、本願発明とは別の「体内イオン比」測定手段で「体内イオン比」を測定し、その結果と本願発明の「体内イオン比検知器」の結果を対比し、測定できたことを示す必要があるところ、そのような実施例の裏付けもない。 すなわち、本願発明の「体内イオン比検知器」を【実施例1】?【実施例17】のごとく実施した結果、何らかのものが検出できるとしても、それが、「体内イオン比」を反映しているか不明であって、「体内イオン比」とは別のものを検出した結果であることを否定できない。 また、段落【0047】?【0054】等において、非特許文献を引用しつつ理論的な説明を試みているが、段落【0047】に「体内イオン比に起因する体内イオン比流、体外イオン比流は、謂わばイオン特性および非周期的な波動的特性を有するイオン比流なので、従来科学領域の直流電流計、交流電流計およびそれに替わる如何なる計測機器でも計測できないのが現状である。」と記載のように、本願発明の「体内イオン比検知器」以外に測定できないと述べられており、その理論が正しいか否かも検証できるものではないから、上記本願発明の解決しようとする課題が解決できたと当業者が認識することはできない。 以下省略。 3 検討・判断 (1)理由1(特許法第36条第6項2号)についての検討・判断 ア 請求人は、同年10月29日付けの補正で、特許請求の範囲の請求項1の発明特定事項である「体内イオン比」について、「生体イオン比(健康状態、即ち西洋医学の体液恒常性、東洋医学の後天の精気にそれぞれ相当する概念)および非局所性イオン比(環境状態、即ち空気イオン比、東洋医学の天陽の気に相当する概念)が相乗的に作用する体内イオン比(西洋医学にはない東洋医学の気に相当する概念)」と規定した。 この補正により、体内イオン比は、西洋医学にはない東洋医学の気に相当する概念であって、生体イオン比(健康状態、即ち西洋医学の体液恒常性、東洋医学の後天の精気にそれぞれ相当する概念)と非局所性イオン比(環境状態、即ち空気イオン比、東洋医学の天陽の気に相当する概念)が相乗的に作用するものであることが一応理解できる。 しかしながら、体内イオン比は一般的な技術用語ではなく、西洋医学にはない東洋医学の気に相当する概念だとしても、それがどのような具体的なイオン比を意味するか不明であるし、生体イオン比(健康状態、即ち西洋医学の体液恒常性、東洋医学の後天の精気にそれぞれ相当する概念)と非局所性イオン比(環境状態、即ち空気イオン比、東洋医学の天陽の気に相当する概念)が相乗的に作用するものだとしても、特に生体イオン比(健康状態、即ち西洋医学の体液恒常性、東洋医学の後天の精気にそれぞれ相当する概念)の技術的意味が不明であるから、依然として体内イオン比の技術的意味は不明である。 イ そこで、体内イオン比、生体イオン比及び非局所性イオン比の技術的意味を把握するために、平成27年10月29日付け補正により補正された明細書(以下、「明細書」という。)の記載を参酌する。 (ア)非局所性イオン比について a 明細書には以下の記載がある(下線は当審で付した。以下、同様。)。 「 【0003】 同じ環境のもとで、同一場所でも刻々と変動する空気イオンの空気イオン比(マイナスイオン数/プラスイオン数=非局所性イオン比)を測定するには、同軸2重円筒型のゲルディエン式のイオン測定器で同時にプラスイオン数・マイナスイオン数を測定しなければならない。(「非特許文献11」 P88参照) 仮に、同軸2重円筒型のゲルディエン式イオン測定器でプラスイオン数・マイナスイオン数および非局所性イオン比を測定しても、それらが個々の生体にとってどのように影響しているのか分らないのが現状である。(「非特許文献11」 P87参照) 【0004】 従って、隣接する2軸の円筒型、交互切換の1軸円筒型の測定器では厳密には空気中の非局所性イオン比の測定はできないことになる。況や、平行平板式の簡易型空気イオン測定器は、プラス・マイナス切り替えモードで測定するので、測定の時系列が異なり、それぞれのデータをもって非局所性イオン比を比較しても定性的把握に留まり、本来的とは言えない。(「非特許文献11」 P88参照)」 「 【0018】 空気イオン(MI、PI)はイオン(帯電複合微粒子)特性を有するが、いわゆる量子とは異なる。また、その物理量が周期的に変化して空間方向に伝播する現象ではないので、いわゆる線形波動とも異なる。 空気中で刻々と変動する空気イオン(MI、PI)は物理量で単位は[個/cm^(3)]と定義され、加重平均値として計測する測定器は存在する。空気イオンのことを「非局所性イオン」(MI、PI)と称する。刻々と変動する非局所性イオンに従って刻々と変動する非局所性イオン比(MI/PI)、即ち単位容積当たりのマイナスイオン数/プラスイオン数は、従来科学ではその必要性を認識するに至らず直接的に計測表示する測定器は現存しない。仮に、刻々と変動する非局所性イオン比が二次的に数値化されて計測表示できたとしても、それだけでは個々の生体にどのように影響するかは不明であり、本発明の代替えとはならない。そこで、非局所性イオン比(MI/PI)とは、空気イオン健康学で言うところの俗称マイナスイオン、俗称プラスイオンの刻々と変動する物理量の集団的な傾向を捉えるための非周期的な数学的因子のことで「マイナスイオン数[個/cm^(3)]/プラスイオン数[個/cm^(3)]」および液体中の含有成分の総和比である「陰イオン総和[個/cc]/陽イオン総和[個/cc]」に相当し、前者は東洋医学における「天陽の気」に相当する。ただし、非周期的に変動している加重平均値的なマイナスイオン数(個/cm^(3))、プラスイオン数(個/cm^(3))をも便宜的にそれぞれMI、PIと表わす。(【非特許文献11】P37?38、143、255?256参照)従って、非局所性イオン比の計測方法は、本発明の動作原理の原点となる体内イオン比の一因となる非局所性イオン比を定性的に把握するための便法であり、動作原理の理論的解明の一助としたものである。」 「 【0021】 従って、非局所性イオンにもとづく非局所性イオン比とは、本来は空気中の非局所性イオン比だけではなく、外的摂取する飲食物、浴水に起因する非局所性イオン比を含むが、その大半は環境条件により非周期的に変動する空気イオン(非局所性イオン)による。以下、空気中の非局所性イオン比のことを狭義の「非局所性イオン比」(MI/PI)とする。(「非特許文献11」 P37?38参照)」 b これらの明細書の記載から、非局所性イオン比とは、空気中で刻々と変動する空気イオンの空気イオン比(マイナスイオン数[個/cm^(3)]/プラスイオン数[個/cm^(3)])で定義され、マイナスイオン数[個/cm^(3)]及びプラスイオン数[個/cm^(3)]はイオン測定器で測定できる物理量であると解される。 (イ)生体イオン比について a 明細書には以下の記載がある。 「 【0023】 プラスイオンは吸気的に体内に吸収され、マイナスイオンは吸気的および経皮的(主に吸気的)に体内に吸収されている。その時々の環境における非局所性イオン比に応じて吸収されたプラスイオンおよびマイナスイオンに起因して、それぞれが体内では陽イオンおよび陰イオンのもととなる。それらが日常的に栄養素として吸収されたミネラルや細胞での代謝物質と生化学変化しながら生体イオン(電解質)として体液(血液、組織液、即ち東洋医学で言う血(けつ)に相当)中を流れている。そこで、体内を循環して流れている体液中の陰陽イオン比を生体イオン比(IRIb)とする。 即ち、生体イオン比は、西洋医学における体液(血液、組織液)中を流れる電解質の「陰イオン総和/陽イオン総和」、即ち体液恒常性のもととなる概念に相当、東洋医学における体液(血液、経絡組織液、一般組織液)中を流れる「後天の精気」に相当する。 (「非特許文献11」 P36?39、P54?57、P254?256、「非特許文献IT」 P1?8参照) ただし、IRIbはIRlb(「非特許文献11」)と同意である。 非周期的な非局所性イオン比状態が体内の酸素需要に応じて生体イオン比状態に相乗的に作用するため、血液中の相対的なイオンの流れも必然的に非周期的に変わるものと考えられる。(【非特許文献11】P36?37参照) 西洋医学の電解質イオンとは正負に帯電した電解質のことで、血液中の電解質は陽イオン(Na+、K+、Ca++、Mg++など)、陰イオン(Cl-、HCO3??、HPO4??など)として溶存している。 本論では特定して議論することに意義はない。(【非特許文献11】P25参照) 以降、主たる酸素と赤血球との関係を考えることにする。(【非特許文献11】P26参照)」 b この明細書の記載から、生体イオン比IRIbとは、その時々の環境における非局所性イオン比に応じて吸収されたプラスイオンおよびマイナスイオンが体内で陽イオンおよび陰イオンのもととなり、それらが日常的に栄養素として吸収されたミネラルや細胞での代謝物質と生化学変化しながら、体液(血液、組織液、即ち東洋医学で言う血(けつ)に相当)中を流れることになる生体イオン(電解質)における陰陽イオン比であり、西洋医学における体液(血液、組織液)中を流れる電解質の「陰イオン総和/陽イオン総和」、即ち体液恒常性のもととなる概念に相当し、また、東洋医学における体液(血液、経絡組織液、一般組織液)中を流れる「後天の精気」に相当すると解される。 しかしながら、その時々の環境における非局所性イオン比に応じて吸収されたプラスイオンおよびマイナスイオンが体内で陽イオンおよび陰イオンのもととなること、そして、それらが日常的に栄養素として吸収されたミネラルや細胞での代謝物質と生化学変化しながら、体液(血液、組織液、即ち東洋医学で言う血中を生体イオンとして流れることは、いずれも出願時の技術常識としては知られておらず、そのように説明される生体イオンにおける陽イオンと陰イオンの存在は不明であって、その陰陽イオン比を技術的に理解することができない。 また、東洋医学における体液(血液、経絡組織液、一般組織液)中を流れる「後天の精気」に相当する概念という説明ではその技術的意味が不明である。 よって、明細書の記載から生体イオン比IRIbの技術的意味は不明である。 c この点、請求人は、上記補正と同日付けの意見書(以下、「意見書」という。)において、段落【0023】を 「プラスイオンは吸気的に体内に吸収され、マイナスイオンは吸気的および経皮的(主に吸気的)に体内に吸収されている。その時々の身の置かれた環境におけるプラスイオンおよびマイナスイオンがそれぞれ体内に吸収され、陽イオンおよび陰イオンのもととなる。それらが血液中のヘモグロビン、日常的な栄養素として吸収されたミネラルや細胞での代謝物質と生化学変化しながら生体イオン(電解質)として体液(血液、組織液)中を陽イオンおよび陰イオンの流れとして体内循環している。体液は酸塩基反応と酸化還元反応によって自動的に調節され、体液恒常性が保たれている。そこで、体液中を緩やかに変動する陰陽イオン比(水素イオン濃度[OH^(-)]/水酸化物イオン濃度[H^(+)])に活力係数を掛けた生体イオンの振る舞いを記述する概念を生体イオン比(IRIb)とする。従って、体液中を刻々と変動する単位容積当たりの陰イオン総和/陽イオン総和は従来科学ではその必要性を認識するに至らず計測できるようにした測定器がない。」(【非特許文献11】P36?39、P54?57、P254?256参照) と補正し(下線は当審で付した。)、段落【0024】の「MI、PI:マイナスイオン、プラスイオン」を「MI、PI:マイナスイオン数、プラスイオン数」と補正する旨、記載している。なお、上記下線部は、明細書の記載と整合していない。 d この意見書の記載から、生体イオン比とは、体液中を緩やかに変動する陰陽イオン比(水素イオン濃度[OH^(-)]/水酸化物イオン濃度[H^(+)])に活力係数を掛けた生体イオンの振る舞いを記述する概念であると一応理解できる。 しかしながら、活力係数について具体的な説明がなく、本願出願時には活力係数に関する技術常識も見当たらない。 よって、明細書の記載に加えて意見書の主張を参酌したとしても生体イオン比IRIbの技術的意味は不明である。 e したがって、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、依然として生体イオン比の技術的意味は不明であると言わざるを得ない。 (ウ)体内イオン比について a 明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。 「 【0024】 生体イオン比IRIbおよび非周期的に変動する非局所性イオン比MI/PIの相乗積で表わされる「体内イオン比関数」は、非物理量の仮称「体内イオン」の振る舞いを記述する概念であり、「体内イオン比」と略称する。体内イオン比は、西洋医学にはない東洋医学における(内)気に相当する。(【非特許文献11】P36?39、P54?71、P254?256、【非特許文献IT】P1?8参照)」 「 【0031】 逆に、意識状態は体内イオン比検知器によって体外的に認知できるので体系化できる。 体内イオン比流は体内イオン比f(MI/PI)=IRIb×(MI/PI)の関数であり、とりわけ非局所性イオン比MI/PIに即応して変化する。そしてMI/PIの変化に応じて体内イオン比流の向きが変わる。この体内イオン比流の変化は血液の肺循環によって数秒のうちに脳に到達する。 無意識とは脳が感受する体内イオン比f(MI/PI)状態、即ち生体イオン比IRIbおよび非局所性イオン比MI/PIに従うあるがままの自然体である。意識とは自然体に対する意思表明である。意識は日常的に流動的に変化し、無関心および関心に区分できる。無関心とは無意識状態である。関心には肯定的意識および否定的意識がある。無意識および肯定的意識は同じ意識状態である。肯定的意識および否定的意識の間にどちらつかずの不安定意識および全くの中立意識がある。停止意識は意識において最優先される。(「非特許文献11」 P233?P237参照)」 「 【0034】 本発明の解決しようとする問題は、生体イオン比(西洋医学の体液恒常性、東洋医学の後天の精気にそれぞれ相当する概念であり、経絡組織液中または一般組織液中を流れる陰陽イオン比、即ち前者は当該経穴に関わる臓器器官の健康状態、後者は全体的健康状態の指標として反映される)状態および非局所性イオン比(空気イオン比(単位容積当たりのマイナスイオン数/プラスイオン数)、東洋医学の天陽の気に相当する概念であり、環境状態の指標として細動脈毛細血管の血液中を流れる陰陽イオン比、即ち環境状態の指標として反映される)状態が相乗的に作用する体内イオン比(西洋医学にはない東洋医学の気に相当する概念であり、体内イオン比流(内気の流れ)の放射現象として体外イオン比流(外気の流れ)が放出される)状態を簡便かつ視的に意識認知科学的な視的動作として検知できるようにした体内イオン比検知器を提供することである。(「非特許文献11」 P36、P37?38、P39、P54?59、P237?240、P254?275、P224?226、P199、P210?211、P219、P233、P253、P256、P278?282、「非特許文献IT」 P1?8参照)」 b これらの記載から、体内イオン比は、西洋医学にはない東洋医学における気に相当する概念であって、生体イオン比IRIbおよび非周期的に変動する非局所性イオン比MI/PIの相乗積、すなわち、体内イオン比f(MI/PI)=生体イオン比IRIb×非局所性イオン比(MI/PI)により定義される非物理量であるものと解される。 しかしながら、西洋医学にはない東洋医学における気に相当する概念という説明では、その技術的意味が不明である。 また、生体イオン比IRIbは、上記(イ)で述べたように、その技術的意味が不明であるので、生体イオン比をその要素として定義される体内イオン比はその技術的意味が不明である。 よって、明細書の記載を参酌しても、体内イオン比の技術的意味が不明である。 c この点、請求人は、意見書において以下のように主張している。 「本願明細書において、MI、PIはマイナスイオン、プラスイオン、および単位容積あたりのマイナスイオン数、プラスイオン数の略称として使用している。 【0024】について、「MI、PI:マイナスイオン、プラスイオン」は「MI、PI:マイナスイオン数、プラスイオン数」と補正する。 液体中の陰陽イオンは物理量であるが、体液中を刻々と変動して流れる陰陽イオン比である生体イオン比(IRIb)、即ち体液中を単位容積当たりの陰イオン総和/陽イオン総和は従来科学ではその必要性を認識するに至らず計測できるようにした測定器が現存しない。 一方、空気中で刻々と変動する空気イオンのプラス、マイナスイオンは物理量であるが、非局所性イオン比(MI/PI)、即ち単位容積当たりのマイナスイオン数/プラスイオン数は従来科学でその必要性を認識するに至らず計測できるようにした測定器が現存しない。 仮に、それらが二次的に数値化されて測定表示できても、本発明の代替えとはならない。何故ならば、体内イオン比とは、体液中を緩やかに変動する陰陽イオン比(水素イオン濃度[OH-]/水酸化物イオン濃度[H+])に活力係数を掛けた生体イオン比(IRIb)および生活環境(空気中、浴水中、主として日常的に身の置かれた空気中)で刻々と変動する非局所性イオン比(MI/PI)との相乗積と定義しているからである。体内イオン比は非物理量の仮称「体内イオン」の振る舞いを記述する概念であり、実際は東洋医学の「気」に相当する概念である。(【非特許文献11】 P36?39、P54?57 、P254?256参照) 従って、刻々と変動する体内イオン比f(MI/PI)=(IRIb)×(MI/PI)の計測方法は、体内イオン比状態に起因する微弱で脈動的な体内イオン比流(【非特許文献11】 P39?45、P48?52参照)が逆比例的に増幅して体外に放出される体外イオン比流(【非特許文献11】 P45?52参照)を計測することによって間接的に捉える以外には方法がない。通常、工学的な測定ではノイズは敬遠され勝ちだが、体外イオン比流の測定は工学的にはノイズを測定するようなものである。即ち、本発明の導電体を通じて体外に放出される体外イオン比流は通常の科学工学的世界の電流に比べて微弱なので、精密な直流データロガーの計測系の直流ベース電流値を可変抵抗でマイクロレベルに調節した上ではじめて体外イオン比流をノイズ的な変動として数値的に捉えられる。生体機能として定常的に一方向に循環して流れる体液(血液、組織液)中を陰陽イオンが脈動的に流れることからすると、直流系に体外イオン比流を重畳させる計測方法は極めて必然性がある(【非特許文献11】 P162?171、P204?209参照)ことが分かる。 各計測条件のもとで体外イオン比流の計測結果(手続補足書(平成26年7月31日)の添付資料8の計測データ)および計測に同期した本発明の動画DVD記録および考察(手続補足書(平成27年10月29日)の添付資料9参照)から生体を介した本発明の物理的動作が定性的ながら慣性に抗して追随することが視的に検知できたことになる。この動画記録は、「適正なる審判のためには、計測データに伴う本発明の物理的動作の動画記録および面前実験を客観的に直視されることが必要不可欠である」として面談の際に開示するとした手続補足書(平成26年7月31日)の添付資料8の計測データに対応する動画記録および考察である。即ち、実験系を一系統とした結果、本来の計測データが不明確となったため、および実験(計測、動画記録)を全て一人で段取りを含め実施せざるを得ず、意識を集中できず若干不安定の要素があるため、面談にて補足説明を要するとした。尚、ベース直流電流に体外イオン比流を重畳させる意義が不明とされるのは妥当とは言えない。 従って、体外イオン比流と体内イオン比検知器の動作との相関関係が分かったので、体内イオン比状態が定性的にどの状態(例えば、f(MI/PI)>1、f(MI/PI)<1、f(MI/PI)=1±α不安定)であるかを簡便に視的動作として検知できることが重要となる。 何故ならば、本発明のもととなる基本理論(【非特許文献11】)において、体内イオン比(東洋医学の「気」に相当)は、生体イオン比(日常的な健康状態)と非局所性イオン比(身が置かれているところの環境状態)の相乗積と定義しているので、体内イオン比状態を検知することによって、逆に生体イオン比状態または非局所性イオン比状態を検知することができるからである。また、体内イオン比状態は意識状態(無意識または肯定的意識、否定的意識、不安定意識、停止意識など)によって変わることから、逆に体内イオン比状態が分かれば意識状態をも検知できることになるからである。 本発明は、飽くまでも体内イオン比検知器であって、物理量を測定する測定器ではない。」 d この意見書の記載から、上記a及びbで述べた体内イオン比に関する事項と、上記(イ)のc及びdで述べた生体イオン比に関する事項を説明することのほかに、体内イオン比の計測方法は、体内イオン比状態に起因する微弱で脈動的な体内イオン比流が逆比例的に増幅して体外に放出される体外イオン比流を計測することによって間接的に捉える以外に方法がないことが述べられているが、体外イオン比流の存在は、出願時の技術常識を参酌しても知られておらず、また、これにより間接的に体内イオン比を捉えるというのであればそもそも体内イオン比自体を測定しているとは言えずこれによって体内イオン比を定義することはできないから、依然として、体内イオン比の技術的意味が不明である。 なお、請求人は、体外イオン比流は微弱なのでその測定は工学的にはノイズを測定するようなもので、精密な直流データロガ-の計測系の直流ベース電流値を可変抵抗でマイクロレベルに調節した上ではじめて体外イオン比流をノイズ的な変動として数値的に捉えられる旨説明し、また、平成27年10月30日付けの手続補足書の添付資料9としてその測定の動画DVD記録を提出するが、この測定は体外イオン比流を直接測定するものではなく、検知器に電圧を負荷して電流を流し、複数の異なる実験環境(MI/PI)、支持態様(指先・絶縁等)、モード(肯定的意識・否定的意識等)の各々の場合の電流の変化を測定しており、このように測定された電流の変化が体外イオン比流とどのような関係を持つものであるかを証明しておらず、例えば、その変動がノイズの影響によるものとも考えられ、果たしてその測定が体外イオン比流を測定しているか否か不明と言わざるを得ないことを付言しておく。 ウ したがって、特許請求の範囲の請求項1の発明特定事項である「体内イオン比」の技術的意味は依然として不明と言わざるを得ず、請求項1に係る発明は明確でない。 よって、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)理由2(特許法第36条第4項第1号)についての検討・判断 本願発明の「体内イオン比検知器」を使用する場合、明細書の段落【0065】等には「体内イオン比検知器」が回転を起こすことが記載され、段落【0071】等には手指の開閉動作が行われることが記載され、【実施例1】?【実施例17】には何らかの検出ができたことが記載されている。 しかしながら、上記(1)で検討したように「体内イオン比」の技術的意味が不明であるから、体内イオン比を測定できたことが認識できず、また、仮に「体内イオン比」の技術的意味が理解でき明りょうであるとしても、「体内イオン比」が測定できたというには、本願発明とは別の「体内イオン比」測定手段で「体内イオン比」を測定し、その結果と本願発明の「体内イオン比検知器」の結果を対比し、測定できたことを示す必要があるところ、そのような実施例の裏付けもない。 すなわち、本願発明の「体内イオン比検知器」を【実施例1】?【実施例17】のごとく使用した結果、何らかのものが検出できるとしても、検出されたものが、「体内イオン比」を反映しているものであるかは不明であって、「体内イオン比」とは別のものを検出した結果であることを否定できない。 また、段落【0047】?【0054】等において、非特許文献を引用しつつ理論的な説明を試みているが、段落【0047】に「即ち、従来科学に立脚した物理量を測定する機器でないと科学的測定機器とは認められていない限り、本発明のもととなる体内イオン比に関わる測定器は存在しないことになる。」と記載のように、本願発明の検出結果を従来科学に立脚した物理量を測定する機器では検証できず、その理論が正しいか否かを検証できるものではない。 さらに、段落【0047】の「例えば、『図2』の場合、絶縁性剛体に支持部(導電性多面体1)を固定した上、導電性錘3を吊るし、導電性鎖2に直流または交流を流しても体内イオン比検知器の導電性錘3は動作をしない。ところが生体皮膚面(例えば、親指および人差し指の末節掌側)で支持部を支持した上、導電性鎖2に直流を重畳的に流すと導電性錘3は回転動作し、また体外イオン比流の脈動が無視できない程度の低レベルの交流のときは導電性錘3が単振動動作することが検証できる。…従って、導電性多面体1を親指および人差し指の末節掌側で支持する場合(例えば、『図2』の場合)、導電性多面体1に接する親指および人差し指の末節掌側の皮膚面から導電性鎖2に流出する体外イオン比流以外に考えられない。何故ならば、非周期的かつ脈動的に変動する非局所性イオン比に起因する体内イオン比、体内イオン比を変数とする統合波動方程式で表わせる体内イオン比流、更に体内イオン比流が逆比例的に流出すると定義した体外イオン比流の何れもが非周期的かつ脈動的に変動することになるからである。」という説明でも、「体内イオン比を変数とする統合波動方程式で表せる体内イオン比流が逆比例的に流出する体外イオン比流」の存在は出願時の技術常識としては知られておらず、導電性錘3の回転動作が体内イオン比に起因する体外イオン比流によるものであると認識することはできず、別の影響によるものであることを否定できない。 したがって、【実施例1】?【実施例17】で検知されたものが「体内イオン比」であるか否かは不明であって、発明の詳細な説明においては本願発明が「体内イオン比検知器」として使用できることが示されているとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (3)理由3(特許法第36条6項1号)についての検討・判断 本願発明の解決しようとする課題は、明細書の段落【0034】によれば、「体内イオン比状態に起因する情報を体外に取り出し、体内イオン比に関わる日常的な生体イオン比(健康状態)、非局所性イオン比(環境状態)および意識状態を簡便かつ視的に意識認知科学的な視的動作として検知できるようなマンマシーンインターフェースを提供することである」と解される。 本願発明の「体内イオン比検知器」を使用すると、段落【0065】等からは「体内イオン比検知器」が回転を起こすことが解され、段落【0071】等からは手指の開閉動作が行われることが解され、【実施例1】?【実施例17】には何らかの検出ができたことが記載されている。 しかしながら、上記(1)で検討したように「体内イオン比」の技術的意味が不明であって、上記(2)で検討したように発明の詳細な説明においては本願発明が「体内イオン比検知器」として使用できることが示されているとはいえない。 よって、本願発明の検知器が体内イオン比が測定できるという本願発明の解決しようとする課題が解決できたと当業者が認識することはできない。 したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において「発明が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」内のものではない。 よって、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-19 |
結審通知日 | 2016-03-15 |
審決日 | 2016-03-28 |
出願番号 | 特願2008-192915(P2008-192915) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(A61B)
P 1 8・ 536- WZ (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮川 哲伸 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 尾崎 淳史 |
発明の名称 | 体内イオン比検知器 |