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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C22C |
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管理番号 | 1315661 |
異議申立番号 | 異議2016-700249 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-03-24 |
確定日 | 2016-06-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5783303号「銅系焼結摺動部材」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5783303号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件特許第5783303号の請求項1、2に係る特許についての出願は、2007年 1月15日(優先権主張 2006年 1月16日、日本国)を国際出願日とする特願2007-553885号の一部を、特許法第44条第1項の規定に基づき平成26年 6月19日に特願2014-125960号として、新たに特許出願されたものであって、平成27年 6月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 出口 歓一により特許異議の申立てがされたものである。 第2.本件発明 本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、「本件特許発明1、2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 錫0.5?20重量%とマンガン0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)と固体潤滑材(但し金属酸化物を除く)2?25重量%と残余部の銅とから成ることを特徴とする銅系焼結摺動部材。 【請求項2】 銅系合金焼結層と金属製裏金とを一体化して成る複層銅系焼結摺動部材において、前記銅系合金焼結層が錫0.5?20重量%とマンガン0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)と固体潤滑材(但し金属酸化物を除く)2?25重量%と残余部の銅とから成ることを特徴とする複層銅系焼結摺動部材。 第3.申立理由の概要 特許異議申立人は、主たる証拠として特開2005-113225号公報(以下、「甲第1号証」という。)、従たる証拠として特開2005-133130号公報(以下、「甲第2号証」という。)、特開平09-303373号公報(以下、「甲第3号証」という。)、特開平10-042579号公報(以下、「甲第4号証」という。)、特開2000-248352号公報(以下、「甲第5号証」という。)、特開2002-180216号公報(以下、「甲第6号証」という。)、再公表特許第2003/000946号(以下、「甲第7号証」という。)を提出し、請求項1、2に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 第4.甲号証の記載 1.甲第1号証について 甲第1号証には、以下の(1-ア)?(1-イ)が記載されている(なお、下線は当合議体が付加した。)。 (1-ア) 「Pbフリー銅系溶射摺動部材」(【発明の名称】) (1-イ) 「【請求項1】 0.5?5重量%の黒鉛を含有し、残部が実質的にCu及び不可避的不純物からなるPbフリー銅系材料を、アルミニウム合金、銅合金、炭素含有量が0.6重量%未満の鋼材もしくは鋳鋼、あるいは樹脂からなる基材に溶射したことを特徴とするなじみ性に優れたPbフリー銅系溶射摺動部材。 【請求項2】 前記銅系Pbフリー銅系材料がさらに35重量%以下のSnを含有することを特徴とする請求項1記載のなじみ性に優れたPbフリー銅系溶射摺動部材。 【請求項3】 さらに、0.01?0.2の重量%P,0.5?10の重量%Al,0.1?3重量%のSi,0.5?4重量%のMn,0.5?3重量%のCr,0.5?15重量%のNi,及び0.5?25重量%のZnの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のPbフリー銅系溶射摺動部材。」(【請求項1】?【請求項3】) 2.甲第2号証について 甲第2号証には、以下の(2-ア)?(2-イ)が記載されている。 (2-ア) 「本発明は、すべり軸受けなどの摺動面を有する摺動部材用Cu基合金に関し、特に初期なじみ性に優れた摩擦係数の低い摺動部材用Cu基合金に関するものである。」(【0001】) (2-イ) 「実施例はインゴットを用いた摩擦試験であるが、摺動部材の製造方法は溶射や成形焼結、HIP、ホットプレス等一般的な固化成形方法などでも構わない。」(【0027】) 3.甲第3号証について 甲第3号証には、以下の(3-ア)が記載されている。 (3-ア) 「次に、本発明による積層摺動部材において、表面層として使用する合金Bの製造法については、通常は板状の鋳造材を圧延していく方法をとるが、Pbが4%を超えると鋳造法では偏析が生じ、均一な材料組織となりにくいため、板材を粉末圧延、焼結法で作っても良いし、溶射により合金Aの上に直接積層することも可能である。」(【0024】) 4.甲第4号証について 甲第4号証には、以下の(4-ア)?(4-イ)が記載されている。 (4-ア) 「本発明は振動体に振動波を生じさせ、この振動体に接触する接触体との間で摩擦駆動により相対移動を起こさせる振動波モータに係り、詳しくは加圧接触部における摺動材料に関するものである。」(【0001】) (4-イ) 「なお、酸化アルミニウムには焼結したセラミックス、溶射によるセラミックスを用いた。いづれもビッカース硬度で1400?1500程度であった。酸化アルミニウムの場合は前述した実施例1、実施例2の振動体側の摺動材の樹脂複合材と異なりPTFEの膜形成がないため、振動波モータにおいて、硬度粒子Si、SiCとの摩耗が生じ始めると摩耗が急激に進み、モータとして供し得なくなるが、硬質粒子を突出させた表面の効果は大きく、摩耗は少なくなった。」(【0058】) 5.甲第5号証について 甲第5号証には、以下の(5-ア)?(5-イ)が記載されている。 (5-ア) 「この発明は低摩擦係数粉末を溶射して成る溶射層を少なくともその摺動面に有する低摩擦係数摺動部材に関する。」(【0001】) (5-イ) 「表1の結果から、本発明材は比較材(S45C)よりも摩擦係数が低くなっていることが分かる。また同一成分の焼結材と本発明材とは、無潤滑,油塗布下で同じ摩擦係数であり、300℃の下でもその効果は変らない。この結果から、溶射により低コストで且つ焼結材と同じ効果の得られることが明らかになった。」(【0040】) 6.甲第6号証について 甲第6号証には、以下の(6-ア)?(6-イ)が記載されている。 (6-ア) 「前記耐摩耗材料もしくは摺動材料が、超硬、ステライト、鉄系耐摩耗材料、セラミックス、耐摩耗Cu溶浸材のうちの一種であり、これらが溶射、ろう付け、焼結接合、溶浸接合、接着のうちのいずれかの手段で一体化される請求項19に記載の複合焼結摺動部材。」(【請求項20】) (6-イ) 「さらに、前記第13発明乃至第18発明において、スラスト荷重を受けて摺動するように前記裏金に鍔部が設けられ、この鍔部摺動面に耐摩耗材料もしくは摺動材料が一体化される態様としても良い(第19発明)。この場合、前記耐摩耗材料もしくは摺動材料が、超硬、ステライト、鉄系耐摩耗材料、セラミックス、耐摩耗Cu溶浸材のうちの一種であり、これらが溶射、ろう付け、焼結接合、溶浸接合、接着のうちのいずれかの手段で一体化されるのが好ましい(第20発明)。なお、前記ろう付け、接着による手段が簡便で好ましいが、この場合には摺動材料が焼結摺動材料の場合、予め焼結が完了している必要がある。」(【0042】) 7.甲第7号証について 甲第7号証には、以下の(7-ア)?(7-エ)が記載されている。 (7-ア) 「前記摺動面の形成は、前記合金粉末を大気中で溶射、または酸化雰囲気での焼結でおこなう請求の範囲第9項から第12項のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。」(【請求項13】) (7-イ) 「モリブデン、および/またはタングステンを含有する酸素含有合金粉末を、無酸化雰囲気または酸化雰囲気で溶射または焼結しておこなう請求の範囲第9項に記載の摺動部材の製造方法。」(【請求項14】) (7-ウ) 「本発明の摺動面は、酸化雰囲気で溶射および焼結によって形成するので、酸素含有合金に含まれるモリブデンやタングステンなどは、酸化を受けた状態で摺動部面の内部まで存在している。」(第4頁第49行?第5頁第1行) (7-エ) 「本発明の摺動部材の製造方法は、鉄、アルミニウムあるいは銅に、モリブデン、タングステンの1種以上の金属元素を2?80重量%含む合金粉末を、酸化雰囲気中、たとえば空気中で摺動基部表面に溶射して皮膜を形成するか、あるいは、酸化雰囲気で合金粉末を焼結して摺動基部表面を形成することで得られる。前記の合金粉末は、酸化雰囲気中で溶射や焼結のような加熱処理を受けることで酸素と反応し、合金粉末に含まれるモリブデン、タングステンが酸化された酸素含有合金素材が得られる。 また、モリブデンおよび/またはタングステンを含有する酸素含有合金粉末を無酸化雰囲気または酸化雰囲気で溶射または焼結してもよい。 また、前記合金粉末に、クロム、ニッケル、マンガン、炭素、シリコン、銅、マグネシウム、亜鉛、錫、アルミニウム、鉄の1種以上の元素を添加した合金粉末を、酸化雰囲気中で加熱して摺動基部表面に固定し摺動面を形成することもできる。加熱は合金粉末を空気中での溶射あるいは酸化雰囲気下での焼結により所望の酸素量を含んだ酸素含有合金が形成できる。 前記皮膜の形成は、前記合金粉末を大気中で溶射、または酸化雰囲気での焼結でおこなうことが好ましい。摺動面に形成される酸素含有合金の皮膜の厚さは、少なくとも1μm存在し、表面粗さが3μm以下であることが耐久性、摩擦係数低下を保持する上で望ましい。」(第5頁第20行?同頁第36行) 第5.判断 1.本件特許発明1について (ア)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証の(1-イ)の【請求項2】には、【請求項1】を引用の上で「前記銅系Pbフリー銅系材料がさらに35重量%以下のSnを含有する」と記載されており、さらに、同じく【請求項3】には、【請求項1】又は【請求項2】を引用の上で「さらに、0.01?0.2の重量%P,0.5?10の重量%Al,0.1?3重量%のSi,0.5?4重量%のMn,0.5?3重量%のCr,0.5?15重量%のNi,及び0.5?25重量%のZnの1種又は2種以上を含有する」ことが記載されている。 してみると、当該記載からみて、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる。 「0.5?5重量%の黒鉛を含有し、任意添加成分として35重量%以下のSnを含有でき、さらに任意添加成分として0.01?0.2の重量%P,0.5?10の重量%Al,0.1?3重量%のSi,0.5?4重量%のMn,0.5?3重量%のCr,0.5?15重量%のNi,及び0.5?25重量%のZnの1種又は2種以上を含有でき、残部が実質的にCu及び不可避的不純物からなるPbフリー銅系材料を、アルミニウム合金、銅合金、炭素含有量が0.6重量%未満の鋼材もしくは鋳鋼、あるいは樹脂からなる基材に溶射した、なじみ性に優れたPbフリー銅系溶射摺動部材。」(以下「甲1発明」という。) (イ) 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 本件特許発明1の「固体潤滑剤」は、本件特許明細書の【0013】に、「…固体潤滑材成分としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン(MoS_(2))又はこれらの混合物を使用することが出来る。…」と記載されており、「天然黒鉛」と「人造黒鉛」とが併記されていることから、「黒鉛」全般を含むといえる。 そして、甲1発明における黒鉛の含有量は「0.5?5重量%」であり、本件特許発明1における「固体潤滑剤」の含有量は「2?25重量%」であるから、甲1発明と本件特許発明1とは、「固体潤滑剤」の含有量について、2?5重量%の範囲において重複する。 してみると、両者は、 「固体潤滑剤を2?5重量%含む、銅系摺動部材。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1-1: 銅系摺動部材の成分について、本件特許発明1が「錫0.5?20重量%とマンガン0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)」を含有するのに対して、甲1発明は「任意添加成分として35重量%以下のSnを含有でき、さらに任意添加成分として0.01?0.2の重量%P,0.5?10の重量%Al,0.1?3重量%のSi,0.5?4重量%のMn,0.5?3重量%のCr,0.5?15重量%のNi,及び0.5?25重量%のZnの1種又は2種以上を含有でき」る点。 相違点1-2: 銅系摺動部材について、本件特許発明1が「焼結摺動部材」であるのに対して、甲1発明は「溶射摺動材料」である点。 (ウ) 相違点1-1について検討する。 (エ) 特許異議申立人は、平成28年 3月24日付け特許異議申立書にて「甲1発明に係るSnは35重量%以下であり、本件特許発明1に係る『錫0.5?20重量%』を含むものであり、両者は一致する。」(第9頁第6?7行)、及び、「両者はマンガンの含有量が0.5?4重量%において一致」(第9頁第11?13行)すると主張する。 (オ) そこで、まず、本件特許発明1の技術的意義について検討する。 (カ) 本件特許明細書には、「錫0.5?20重量%とマンガン0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)と固体潤滑材(但し金属酸化物を除く)2?25重量%と残余部の銅とから成ることを特徴とする銅系焼結摺動部材。」(【特許請求の範囲】)と記載され、本件特許明細書の発明の詳細な説明中の【背景技術】の欄に、「銅系焼結摺動部材(軸受)としては、黒鉛、鉛などの固体潤滑材を含有させたCu-Sn-固体潤滑材系の焼結摺動部材が知られている。…」(【0002】)、「固体潤滑材としての鉛は、相手材との摺動においてなじみ性に優れ、耐焼付き性を向上させる物質として銅系焼結摺動部材の重要な成分である。しかしながら、近年、環境問題などの点から、鉛の使用を断念せざるを得ない状況にある。」(【0003】)との記載があり、【発明が解決しようとする課題】の欄に、「本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉛を含有しない銅系焼結摺動部材であって、鉛を含有する銅系焼結摺動部材と同等以上の摺動特性を発揮し、含油焼結摺動部材として好適に使用できると共に、潤滑油の使用が困難な高温領域または乾燥摩擦条件下でも好適に使用できる銅系焼結摺動部材を提供することにある。…」(【0005】)との記載があり、【課題を解決するための手段】の欄に、「…Cu-Snマトリックスに特定量のマンガン(Mn)成分と固体潤滑材成分を含有させることにより、鉛を含有する銅系焼結摺動部材と同等以上の摺動特性を発揮し、含油焼結摺動部材として好適に使用できることを見出した。」(【0006】)、「本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その第1の要旨は、錫0.5?20重量%とマンガン0.1?35重量%と固体潤滑材2?25重量%と残余部の銅とから成ることを特徴とする銅系焼結摺動部材に存する。」(【0007】)、【発明の効果】の欄に、「本発明によれば、鉛を含有する銅系焼結摺動部材と同等以上の摺動特性を発揮し、さらに、含油焼結摺動部材としての使用は勿論のこと、潤滑油の使用が困難な高温領域での乾燥摩擦条件下での使用および高荷重条件下での使用においても優れた摺動特性を発揮することが出来る。」(【0009】)との記載がある。 (キ) これらの記載によれば、本件特許発明1は、銅系摺動部材の組成として、鉛を含有しない、錫0.5?20重量%、マンガン0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)、固体潤滑材2?25重量%、及び、銅の組合せとすることにより、鉛を含有する銅系摺動部材と同等以上の摺動特性を発揮し、含油摺動部材として好適に使用できると共に、潤滑油の使用が困難な高温領域または乾燥摩擦条件下でも好適に使用できるという効果を得ることができるものと認められる。 (ク) これに対し、甲1発明は、黒鉛(固体潤滑剤)を含む銅系摺動部材において、Pbフリー銅系材料の成分系として多数の組合せを包含しており、その一つとして形式的に35重量%以下のSnと0.5?4重量%のMnとの組合せも包含し得るものである。 (ケ) しかしながら、甲第1号証には、SnとMnとを組み合わせて成るPbフリー銅系材料を用いた摺動部材について、実施例等、何ら具体的な記載はなされていない。 (コ) そして、甲1発明において、Pbフリー銅系材料の成分系として、0.5?20重量%のSnと0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)との組合せを選択することにより、鉛を含有する銅系摺動部材と同等以上の摺動特性を発揮し、含油摺動部材として好適に使用できると共に、潤滑油の使用が困難な高温領域または乾燥摩擦条件下でも好適に使用できるという、当業者に認識されていなかった顕著な作用効果を得ることになるから、当該相違点1-1は、実質的な相違点であり、また、甲第1号証の記載、甲第2号証?甲第7号証の記載、及び、周知技術を勘案しても、Pbフリー銅系材料の成分系として0.5?20重量%のSnと0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)のMnとの組合せを選択し上記顕著な作用効果を得ることは、当業者が容易に想到し得ることともいえない。 (サ) したがって、本件特許発明1は、相違点1-2について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証?甲第7号証に記載された発明及び周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 2.本件特許発明2について (ア) 本件特許発明2と甲1発明とを対比する。 (イ) 本件特許発明2の「固体潤滑剤」は、上記1.に記載したとおり、「黒鉛」全般を含むといえ、甲1発明と本件特許発明2とは、「固体潤滑剤」の含有量について、2?5重量%の範囲において重複する。 また、甲1発明の「基材」のうち、「鋼材もしくは鋳鋼」からなる基材は、本件特許発明2の「金属製裏金」に相当する。 そして、甲1発明においてはPbフリー銅系材料を基材に溶射していることから、Pbフリー銅系材料と基材とは一体化していると解される。 してみると、両者は、 「銅系合金層と金属製裏金とを一体化して成る複層銅系摺動部材において、銅系合金層が固体潤滑剤を2?5重量%含む、銅系摺動部材。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点2-1: 銅系合金層の成分について、本件特許発明2が「錫0.5?20重量%とマンガン0.1?35重量%(但し15重量%を越える範囲は除く)」を含有するのに対して、甲1発明は「任意添加成分として35重量%以下のSnを含有でき、さらに任意添加成分として0.01?0.2の重量%P,0.5?10の重量%Al,0.1?3重量%のSi,0.5?4重量%のMn,0.5?3重量%のCr,0.5?15重量%のNi,及び0.5?25重量%のZnの1種又は2種以上を含有」できる点。 相違点2-2: 銅系合金層について、本件特許発明2が「焼結」層であるのに対して、甲1発明は「溶射」層である点。 (エ) しかしながら、相違点2-1は、上記1.にて本件特許発明1と甲1発明とを対比した際に(ウ)?(コ)にて述べたように、実質的な相違点であり、また、甲第1号証の記載、甲第2号証?甲第7号証の記載、及び、周知技術を勘案しても、Pbフリー銅系材料の成分系としてSn、Mn、固体潤滑剤、及び、銅の組合せを選択し上記顕著な作用効果を得ることは、当業者が容易に想到し得ることともいえない。 (オ) したがって、本件特許発明2は、相違点2-2について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証?甲第7号証に記載された発明及び周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 第6.むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-05-27 |
出願番号 | 特願2014-125960(P2014-125960) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C22C)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 相澤 啓祐 |
特許庁審判長 |
鈴木 正紀 |
特許庁審判官 |
河本 充雄 河野 一夫 |
登録日 | 2015-07-31 |
登録番号 | 特許第5783303号(P5783303) |
権利者 | オイレス工業株式会社 |
発明の名称 | 銅系焼結摺動部材 |
代理人 | 岡田 数彦 |