• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A01K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A01K
審判 全部無効 2項進歩性  A01K
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A01K
管理番号 1315952
審判番号 無効2012-800097  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-06-11 
確定日 2013-07-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4616162号発明「犬のトイレ仕付け用サークル」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。

平成17年12月 9日 本件出願(特願2005-356334)
平成21年 4月 7日 拒絶査定
平成21年 7月13日 審判請求(不服2009-12706)
手続補正
平成22年10月 5日 審決(不服2009-12706:原査定取り消し)
平成22年10月29日 設定登録(特許第4616162号)
平成24年 1月26日 別件無効審判請求(無効2012-800005)
平成24年 6月11日 本件無効審判請求(無効2012-800097)
上申書(無効2012-800005との併合希望)
平成24年 6月13日 別件無効審判請求(無効2012-800100)
平成24年 8月27日 被請求人より審判事件答弁書提出
平成24年 9月12日 手続中止
平成24年10月 5日 別件無効2012-800005審決(審判の請求は,成り立たない。)
平成24年10月 5日 別件無効審判請求(無効2012-800161)
平成24年10月18日 請求人より上申書提出(中止解除要望)
平成24年11月 7日 中止解除
平成24年12月26日 被請求人より無効2012-800161の訂正請求書提出(平成25年1月22日補正)
平成25年 1月 9日 無効2012-800097,無効2012-800100,無効2012-800161を併合
平成25年 1月28日 請求人より上申書提出(特許権侵害差止等請求事件の被告準備書面及び証拠説明書)
平成25年 1月29日 審理事項通知
平成25年 2月15日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成25年 2月19日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成25年 2月26日 請求人より口頭審理陳述要領書(2)提出(無効2012-800161について)
平成25年 3月 5日 被請求人より口頭審理陳述要領書(2)提出
平成25年 3月 5日 口頭審理の後,無効2012-800097,無効2012-800100,無効2012-800161を分離
平成25年 3月12日 被請求人より上申書提出
平成25年 3月27日 請求人より上申書提出


第2 当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は,特許第4616162号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,甲第1?8号証を提出して,次の無効理由を主張した。

[無効理由の概要]
(1)第1の無効理由(本件訂正発明1:特許法第29条第2項)
本件訂正発明1は,その出願前に頒布された刊行物(甲第1号証ないし甲第4号証)に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであり,よって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効である。
具体的には,甲第1号証に記載された発明に甲第2号証から甲第4号証の周知技術ないしは技術常識を適用することは当業者が容易に推考しうるものである。また,本件訂正発明1の効果も引用発明1及び上記周知技術ないしは技術常識から予測できる以上のものではない。

(2)第2の無効理由(本件訂正発明1:特許法第29条第1項第3号)
本件訂正発明1は,甲第1号証に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(3)第3の無効理由(本件訂正発明2:特許法第29条第2項)
本件訂正発明2は上記第1,2の無効理由で無効である本件訂正発明1に技術常識といえる構成を付加したものにすぎず,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件訂正発明2は特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証 実公平3-33255号公報
甲第2号証 杉浦基之監修,「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日2刷発行,(株)主婦と生活社,50?51ページ
甲第3号証 大友藤夫,小方宗次監修,「06・07年版 犬の医・食・住」2005年11月29日発行,株式会社どうぶつ出版,114ページ
甲第4号証 特開2003-23904号公報
甲第5号証 杉浦基之監修,「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日2刷発行,(株)主婦と生活社,目次,68?69ページ
甲第6号証 大友藤夫,小方宗次監修,「06・07年版 犬の医・食・住」2005年11月29日発行,株式会社どうぶつ出版,目次,178?179ページ,190?191ページ
甲第7号証 本件特許第4616162号公報
甲第8号証 本願特許願2005-356334号の平成22年4月27日付け回答書

2 被請求人の主張の概要
被請求人は,特許第4616162号の明細書及び特許請求の範囲を無効2012-800161号の平成24年12月26日付け訂正請求書に添付した明細書,特許請求の範囲のとおり訂正することを求め,本件無効審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めた。

[証拠方法]
乙第1号証 「サークル使用状況に関してのWeb調査」,サークルに関する新たな商品を開発する目的で実施したアンケート調査
乙第2号証 「トイレ本体に関するアンケート」,サークルに関する新たな商品を開発する目的で実施したアンケート調査
乙第3号証 「ペティオ トイレスペース付き木製サークル」,アンケート調査から検討・作成された内部資料
乙第4号証 「Wood circle having Toile space & Toilet for dogs」,アンケート調査から検討・作成された内部資料
乙第5号証 「DVD」,本件訂正発明1と仕切を着脱するサークルによるトイレの仕付けの容易さの相違について犬を用いて比較したもの
乙第6号証 「DVDこま取り」,上記内容のこま取り
乙第7号証 「All Aboutの”ペットと人の快適な住空間づくり”との記事をプリントしたもの」
乙第8号証 株式会社富士経済,「2008年 ペット関連市場マーケティング総覧」,表紙,230?235ページ
乙第9号証 「犬用サークル売り上げ数量・金額の推移」
乙第10号証 「グッドデザインファインダーの受賞番号04A02054に関する記事をプリントしたもの」


第3 訂正について
1 訂正の内容
本件は,無効2012-800161号と一時併合されたものであり,無効2012-800161号の平成24年12月26日付け訂正請求書(平成25年1月22日補正)による訂正事項は,以下のとおりである。
(1)訂正事項a
特許第4616162号における特許請求の範囲の請求項1および請求項2を
「【請求項1】
複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて,
前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており,
前記中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。
【請求項2】
請求項1に記載の犬のトイレ仕付け用サークルにおいて。
前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。」(以下,「訂正発明1」等という。)に訂正する。

(2)訂正事項b
明細書の【0001】の記載を
「【0001】
本発明は,内部に犬を入れてトイレの仕付けを行う犬のトイレ仕付け用サークルに関する。」に訂正する。

(3)訂正事項c
明細書の【0003】の記載を
「【0003】
ところで,犬の飼い主は,サークルの中に犬用トイレを置いて使用していることが多い。そして,犬にトイレの仕付けを行う際,飼い主が犬の排泄時が近づいたと察知すれば,まず犬をトイレに誘導し,犬がトイレで排泄を終えると,トイレで排泄ができたことを誉めて学習させるという手順を踏むのが通常である。
【特許文献1】特開2001-245545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】」に訂正する。

(4)訂正事項d
明細書の【発明の名称】,段落【0002】,【0004】,【0005】,【0006】,【0007】,【0008】,【0009】,【0010】,【0011】,【0012】,【0013】,【0015】,【0016】,【0019】,【0021】,【0022】,【0025】,【0030】,【0031】,【0032】,【0035】,【0036】,【0040】,【0041】,【0042】,【0043】,【0044】,【0045】,【0046】,【0047】,【0048】の記載において,「ペット」を「犬」に訂正する。

2 本件訂正の適否
これらの訂正事項について検討する。
上記訂正事項aは,訂正前の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された,「ペット」を「犬」に限定しようとするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ここで,「犬」との限定事項は,技術分野を記した【0001】において,「本発明は,内部に犬や猫などのペットを入れて・・・」と記載され,背景技術を記した【0003】に「ペット,特に犬の・・・」と記載されているから,当該限定事項による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正である。

また,上記訂正事項b?dについては,上記特許請求の範囲の減縮に伴い,明細書の記載と特許請求の範囲の記載との整合を図ったものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

したがって,上記訂正事項a?dは,特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とし,いずれも,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,本件訂正は,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第134条の2ただし書き,及び同条第5項において準用する同法第126条第3項,4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。


第4 本件特許発明
上記「第3 訂正について」において,本件訂正を適法な訂正と認めたので,本件特許の請求項1及び2に係る発明は,「第3 訂正について 1 訂正の内容 (1)訂正事項a」に記載された訂正発明1及び2である。


第5 無効理由についての判断
1 証拠方法の記載内容
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第6号証には,次の事項が記載されている。(下線は,当審にて付与。)

(1)甲第1号証(実公平3-33255号公報)
(1a)「「産業上の利用分野」
本考案は,主として犬,猫,小鳥,マウス,うさぎ等動物飼育籠に於ける出入口,仕切壁,通路等に開閉自在に設けられて扉の規制装置に関するものである。」(1欄20行?24行)
(1b)「「作用」
次に本考案の作用状態を説明すると,規制杆8が飼育籠1の扉枠杆2を構成する下方側の横杆4上に隣接して載架されている第3図イの状態においては,規制杆8と扉7の下端とは離間されており,扉7は開放状態(フリー状態)となつている。したがつて扉7は図示の如く自由に回動するので,動物等の出りが自由に行えるのである。そこで扉7を閉塞しようとするときは,同図イの二点鎖線で示す如く規制杆8を上方へ引上げ,その間に扉7の下端部を挿入する。ついでこの状態のままで規制杆8のストツパー片9,9及び扉7の下部を飼育籠1の内方へと移行させつつ,前記ストツパー片9,9の下部が下方側の横杆4を乗り越えたならば,規制杆8及びストツパー片9,9を下げる。これによりストツパー片9,9の下部が下方側の横杆4の裏側に隣接掛止され同図ロの状態となり,この掛止と扉枠杆2の両縦杆5,6に規制杆8が捲装されていることと相俟て,規制杆8は固止状態となると共に,この規制杆8はストツパー片9,9の掛止によりその位置が前記フリー状態の時より僅か上方に位置する。したがつて規制杆8内に挿入された扉7は,これより脱抜することができず,図示のように扉7は規制杆8,ストツパー片9,9等を介して固定状態に保持されるので,扉7は閉塞状態(ロツク状態)となるのである。そして前記閉塞の解除は,先ず規制杆8を両縦杆5,6をガイドにして少し引き上げて,そのストツパー片9,9を下方側の横杆4より離間させる。つづいて更に規制杆8を引き上げることによりストツパー片9,9と下方側の横杆4との掛止が解かれる。そこで規制杆8を押下げ前記横杆4上に載架すれば,最初の状態にもどり扉7は開放状態となる。」(3欄8行?41行)
(1c)「「実施例」
図面は本考案の一実施例を示しており,1は犬,猫,うさぎ等動物の飼育籠で,この飼育籠1の一面には出入口,仕切り壁用の出入口(飼育籠内に仕切り壁体を設けた場合である。図示せず),通路用として開設される方形の開口部を囲繞する扉枠杆2が設けられており,この扉枠杆2は飼育籠1を構成する上方側の横杆3と下方側の横杆4及びこれと直交する左右の縦杆5,6を井形に交わらせて形成されている。7は扉枠杆2の上方側の横杆3に回動自在に吊架された扉で,扉枠体2と略同じ大きさとされている。尚扉7の丈の正確な寸法については後述する。8は扉枠体2の両縦杆5,6に上下動可能かつ僅か揺動可能(第2図で手前と後方である。)に捲装された平面視して偏平環状若しくは両端部が偏平環状になる規制杆で,この例では規制杆8は外方杆材8aと内方杆材8b及び両杆材8a,8bを連結する連結杆材8c,8cとで構成されており,この規制杆8が下降限にある時外方杆材8aは下方側の横杆4上に載架される構造となつている。そしてこの規制杆8の外方杆材8aにはこの例では二本のストツパー片9,9が垂下されており,このストツパー片9,9は前述の如く下方側の横杆4の裏側に掛止できる。この場合規制杆8は前記下降限より僅か上方に位置するようになる(第3,4図ロの状態)。そして扉7の丈と規制杆8との関係,及び規制杆8の操作を介して扉7の動きを規制する方法は,下記のようになつている。
先ず,前述の如く,規制杆8が,下降限にあるとき,即ち,規制杆8の外方杆材8aが,下方側の横杆4上に載架されているとき(下方側の横杆4上面に乗つているとき,以下同じ)は,この規制杆8より離間する。いわゆる扉7の下枠杆7aと,規制杆8との間に,僅かの隙間Aが形成される。この隙間Aを利用して,扉7が開閉される。
また前述の如く,規制杆8のストツパー片9,9が下方側横杆4に掛止されているとき,即ちストツパー片9,9が,下方側の横杆4上に載架されているときは,内外方杆材8b,8aで扉7の下枠杆7aを挾持して,この扉7の開閉を規制するか,又は内外杆材8bで扉7の下枠杆7aの外方への開扉を規制し,扉7の動物籠1の外方への動きが停止されている(勿論扉7の動物籠1の内方への動ぎは可能であり,例えば水,餌の取り替え等ができる。第4図ロ参照)。尚以上は動物籠1の出入口について詳述したが,その他通路とか仕切壁とかの開閉扉にも採用できる」(4欄16行?5欄19行)
(1d)「「考案の効果」
本考案は以上詳述したように,動物籠等の扉枠杆に扉を回動自在に設けると共に,この扉の回動若しくは内方へのみの回動または停止を司る規制杆を前記扉枠杆に設ける構成であるので,扉の取り扱いが,開放,内方へのみ開放または閉塞という三通りが可能となり大変に便利であり,動物等の飼育に最適であること,また飼育する動物の種類とか習性,しつけの程度等により随時使い分けることができ重宝する。」(5欄23行?6欄9行)
(1e)第1図?第4図には,以下の記載がある。


したがって,上記記載事項(1a)?(1e)からみて,甲第1号証には以下の発明が記載されている。
「犬,猫,小鳥,マウス,うさぎ等の動物飼育籠であって,
飼育籠内に仕切り壁が設けられ,
仕切り壁用の出入口として開設される方形の開口部を囲繞する扉枠杆2が設けられ,
扉枠杆2の上方側の横杆3に回動自在に吊架される扉7を有し,
規制杆8が飼育籠1の扉枠杆2を構成する下方側の横杆4上に隣接して載架されている状態においては,扉7は自由に回動するので,動物等の出りが自由に行え,
扉7を閉塞しようとするときは,扉7を規制杆8,ストツパー片9,9等を介して固定状態に保持して,扉7は閉塞状態(ロツク状態)となり,
動物等の飼育に最適であり,飼育する動物の種類や習性,しつけの程度等により随時使い分けることができる飼育籠」(以下,「甲1発明」という。)

(2)甲第2号証,甲第5号証(杉浦基之監修,「赤ちゃん犬のしつけと育て方」2001年6月22日2刷発行,(株)主婦と生活社,目次,50?51ページ,68?69ページ)
(2a)「「トイレ」といっても,トイレをしつけるためにサークルで作るスペースは赤ちゃん犬のお城。眠ったり遊ぶ場所でもあるので,できるだけ居心地よい空間にしてやりましょう。
1 トイレの場所を決める
赤ちゃん犬はトイレを場所でも覚えます。・・・」(50ページ)
(2b)「3 トイレとベッドを置いてサークルで囲う
新聞紙を敷き,ペットシーツをサークルの大きさより少し広めに敷き,ベッドになるものを置きます。ベッドは赤ちゃん犬の体の1.5倍前後が適当な大きさ。雑誌や木をベッドの下にあてがって床よりも5cmくらい高くすると,ベッドとトイレがより明確に区別できます。
人間の寝室のように,ベッドとトイレの間を板で仕切って区別するのもよい方法です。この場合,赤ちゃん犬がふたつの部屋を自由に行き来できるスペースを開けておきます。最後に,サークルでベッドとトイレを囲います。」(51ページ)
(2c)「1 こんな時がトイレタイム
寝ていた場合,起きてすぐ。これは,朝に限りません。ご飯を食べたあと。そして,遊んだあと。赤ちゃん犬は,起きている間は,だいたい1時間ごとにトイレに行きます。
2 ソワソワしたらトイレのサイン
クンクン鳴いたり,匂いをかぐようにソワソワウロウロしだしたらトイレのサイン。
遊んでいても,こういうサインがあったらトイレに連れていきます。また,よく観察すると,トイレが近くなった時にする表情があります。それも目安になります。
3 トイレに連れていく
抱き上げてトイレへ連れていきます。
4 終る頃,「オシッコ」と声をかける
終りそうになったら「オシッコ」と声をかけます。ウンチもオシッコも「オシッコ」という同じことばを使い,口調やトーンも統一すると覚えやすくなります。
くりかえしていると,オシッコ=排泄行為という回路ができて,オシッコということばとトイレタイムが結び付きます。このことばを教えることで,外でするトイレのしつけがスムーズになります(→146ページ)。
5 ほめて遊んであげる
ペットシーツの上できちんとトイレできたら,ほめて,それから,遊んでやります。
ほめたり遊んでやることでトイレで排泄する=気持ちよい体験になっていきます。」(68?69ページ)

(3)甲第3号証,甲第6号証(大友藤夫,小方宗次監修,「06・07年版 犬の医・食・住」2005年11月29日発行,株式会社どうぶつ出版,目次,114ページ,178?179ページ,190?191ページ)
(3a)第114ページには,「子犬の部屋はサークルを使って囲うとトイレのしつけがしやすく,大変便利です。
犬は寝床で排泄することを嫌いますから,『食事』『寝床』『排泄』の場所をそれぞれ分けられるようにするのが理想です。」と記載され,同ページの絵には,「一端が開放した中間柵で二箇所に仕切られた扉のないサークル」が記載されている。
(3b)「2-日頃の接し方
つきあい方が関係の基礎をつくる
(中略)
[犬の居場所]
(中略)
また,トイレのしつけが完了するまでは時間を決めて犬を出したり,遊んであげるようにします。
子犬は目覚めたとき,食事の後や遊んだ後に排泄をしますので,排泄を確認した後,ご褒美として20?30分ほどサークルの外に出して遊んであげましょう。子犬がトイレを失敗しないうちにサークルに戻してあげましょう。」(178?179ページ)
(3c)「まず教えたいトイレのしつけ
排泄のしつけ
『トイレのしつけ』は,子犬が家族の一員となったその日から行わなければなりません。
(中略)
■トイレの設置
P114の犬の部屋を参考にしてください。サークルを使って,犬の行動範囲を制限する方法が一番無難で,人も犬も苦労しません。
(中略)
■守るべき3カ条
まる1 早い時期に開始する
何日間か自由奔放にさせられてしまってから,慌ててしつけを始めたのでは,サークルの中に入れられることに我慢出来ず,出してもらうまで鳴き続けたり,わざと粗相をしたりする問題犬になってしまう恐れが。家に来た最初の日から,トイレのしつけのことは頭に入れておくことが大切です。
(以下略)」(190?191ページ)

(4)甲第4号証(特開2003-23904号公報))
(4a)「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は,犬の習性を利用し,犬の排泄場所を特定させるしつけ(以下「トイレのしつけ」とします)を手助けする機器に関するものである
【0002】
【従来の技術】屋内で犬を飼う上で最初に行うしつけがトイレのしつけである。従来ではまず犬のトイレ場所を決め,排泄するであろう時間帯に飼い主が犬を決めた場所に連れて行き,排泄をするまで待つ。これを繰り返す。またドッグゲージに入れて育てようとした場合,ゲージの中にトイレ用シーツを敷きつめ,その上だけで排泄するように繰り返し覚えさせる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】トイレのしつけを覚えさせる時期は子犬なので,しつけを覚えさせるまでが非常に根気がいる作業です。まして初めて犬を飼う人は,どのようにしつけたらよいかわからないのが現状です。実際には次のような問題が犬を始めて飼う人を煩わせています。
・ トイレシーツの上や決まった場所で排泄するように促しても,子犬にとっては「遊んでくれている」としか思いません。
・ 排泄をするであろう時間(食事後)に飼い主が犬をトイレに連れて行っても,子犬はジャレ動き回り,飼い主が注意をそらしたころに子犬が排泄してしまった事に気づいてしまうことも多く,そのため,ある程度子犬が動き回らないように子犬を小さなドッグゲージ等に入れる必要がある。
・ 日頃ドッグゲージに入れていない子犬はドッグゲージのような何かに覆われている場所に対し,違和感をもち,排泄をしない。
・ 日頃からドッグゲージに入っている子犬は,ゲージ全体をトイレとみなし,ゲージ全体で排泄をしてしまう犬が多い。
・ またドッグゲージ内にトイレシーツを引いたところでも,その後ジャレ遊ぶことで子犬やゲージ全体が糞尿まみれになり,非常に不衛生である。
【0004】そこで本発明は上述したトイレのしつけの問題点を解消するために提案するもので,犬を初めて飼う人にも本発明を利用することで,短期間で確実に子犬のトイレのしつけができるものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】犬のトイレのしつけを行うために,犬の反復学習(スリコミ)を利用して,居住部分とトイレ部分を明確に分け,その境目に取り外し可能な仕切りを備え,トイレ部分にはトイレシーツが滑りにくく加工した引き出しトレーを備えたドッグサークル型トイレしつけ機を使用する」
(4b)「【0007】この実施の形態に係る子犬のトイレしつけ機は図1に示すように,全体を柵で囲まれています。床面はA居住エリアとBトイレエリアと2つに分かれており。AとBの境目には1段差が設けられています。また3脱着可能な仕切りでAとBの間は仕切られています。例えば3脱着可能な仕切りは網状であったり,板状であったりするもので,犬が容易にA居住エリアとBトイレエリアを通り抜けできないものとします。犬は自らの肉球の感触でそこがどんな場所か判別するので,A居住エリアの床は非常に心地が良い床面(タオル地,カーペット地)で構成されたほうがより高いトイレのしつけ効果を望めます。Bトイレエリアは例えばプラスティック素材や金属,セラミック等の清掃のしやすい素材を使用したほうがよい。3脱着可能な仕切りは両サイドがスライドして上から容易に脱着できます。Bには2引き出しトレイが設けられています。2引き出しトレイはトイレエリア全体に引き出しがついたものです。
【0008】平常時,図2を参照のとおり脱着可能な仕切りは取り外しておきます。犬は自由に走りまわることができます。
【0009】図3のとおり,犬の排泄のタイミングは食後,運動後ですが,そのタイミングに図3のとおり犬をBトイレエリアに入れ,3脱着可能な仕切りをスライド装着します。
【0010】排泄をしたら,犬をほめ,おやつをあげます。そしてA居住エリアに犬を移し,図4のように2引き出しトレイを引き,Bトイレエリアの排泄物の処理をします。
【0011】処理が終わり,3脱着可能な仕切りをはずします。図2のように元に戻します。
【0012】
【発明の効果】上述した子犬のトイレしつけ機はA居住エリアとBトイレエリアの間に1脱着可能な仕切りを設けたことが最大のポイントで,飼い主がトイレのしつけを行う際,子犬はどんなに暴れようが,排泄時にBトイレエリア以外では排泄ができない。そこで排泄をし,その結果を褒め,おやつを与えることで,トイレでの排泄が習慣化し,その結果犬はBトイレエリアを自分のトイレ・排泄場所とスリコミをすることになり,最終的には3脱着可能な仕切りがない状態でも犬は好んでBトイレエリアで排泄をすることになる。」

2 各無効理由についての判断
(1)第1の無効理由について
訂正発明1と甲1発明を対比すると,
甲1発明の「飼育籠内」は,訂正発明1の「内部空間」に相当し,
以下同様に,
「仕切り壁」は,「中仕切体」に,
「方形の開口部」は,「仕切出入口」に,
それぞれ相当する。

また,甲1発明の「飼育籠」と,訂正発明1の「サークル本体」,「複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークル」,「犬のトイレ仕付け用サークル」は,「犬の囲い」である点で共通し,
甲1発明の飼育籠の「扉枠杆2の上方側の横杆3に回動自在に吊架される扉7」と,訂正発明1の犬のトイレ仕付け用サークルの「仕切扉」とは,扉である点で共通し,
甲1発明の「仕切り壁が設けられ」た「飼育籠内」は仕切により分けられていると認められるから,甲1発明の分けられた飼育籠内と,訂正発明1の「住居スペースとトイレスペース」とは,「2つの区画」である点で共通する。

そうすると,訂正発明1と甲1発明とは,
「犬の囲いにおいて,
犬の囲いの内部空間が中仕切体によって仕切られることにより2つの区画に区画されており,
前記中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,この仕切出入口を開閉する扉が設けられ,この扉を介して2つの区画の間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている犬の囲い。」で一致し,以下の点で相違する。

<相違点>
訂正発明1では,犬の囲いが「複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で,収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークル」であり,
中仕切体によって仕切られるのが「サークル本体」の内部空間であり,
区画が「住居スペースとトイレスペースに」区画であり,
犬が出入り可能な仕切出入口を開閉するのが「仕切」扉であり,
「仕切扉」を介して「住居スペースとトイレスペースと」の間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている「犬のトイレ仕付け用サークル」なのに対し,
甲1発明は,犬の囲いが「動物飼育籠」であり,
中仕切体によって仕切られるのが「飼育籠内」であり,
区画が「住居スペースとトイレスペースに」区画か否か不明であり,
犬が出入り可能な仕切出入口を開閉するのが「扉7」であり,
「扉7」を介して何用のスペースかは不明の2つの区画の間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されている「動物飼育籠」である点。

<相違点について>
(a)訂正発明1は,「トイレ仕付け用」サークルであって,上記相違点に係る仕切扉,中仕切体,住居スペース,トイレスペースの構成を備えることにより,仕切扉を開放し犬を住居スペースからトイレスペースに誘導する際,又は開放された開口を通って,犬が自発的に住居スペースからトイレスペースに移動した際,中仕切体の開口部以外はトイレスペースと住居スペースが仕切られているため,犬が元のスペースに戻ることが抑制され,仕切扉を迅速かつ容易に閉鎖できる,トイレ仕付け時の効果を有すると認められる。

(b)甲1発明は,「トイレ仕付け」を意図したものではなく,トイレ仕付け時の効果を向上させるための構成を付加する起因付けはない。
請求人は平成25年3月27日付け上申書3ページ4?21行において,「『飼育』の中には『トイレしつけ』も含まれるから,甲1には,引用発明1が,犬のトイレしつけに最適なサークルを提供できる効果が有ることが示唆されているといえる。『しつけの程度等により随時使い分けることができ』との記載は,周知用途1を踏まえ,・・・犬のトイレしつけの常識的方法を念頭に置けば,仕切壁の扉の利用方法として・・・トイレしつけが完了するまでは仕切壁の扉を閉塞し,犬が排泄するときには仕切壁の扉を開放しトイレスペースに誘導した上で仕切壁の扉を閉鎖し,排泄完了後は仕切壁の扉を開放し犬を居住スペースに誘導するという方法を示唆しているといえる。」(なお,「周知用途1」は,「室内において犬のトイレしつけを行うため,トイレスペースと居住スペースを備えるサークルを利用すること」)と主張している。
しかしながら,上記甲第1号証記載の「飼育」は,一般的な飼育を漠然と記載したにとどまり,「トイレのしつけ」と特定した記載がなされていると解せる根拠はなく,さらに,甲第1号証の記載事項(1d)には,「しつけの程度等により随時使い分けることができ」と記載されているが,「仕付けの程度を向上させるために用いる」ということ,即ち「仕付けに用いる」ということは記載されておらず,さらに,請求人が主張する様に「室内において犬のトイレしつけを行うため,トイレスペースと居住スペースを備えるサークルを利用すること」が,仮にサークルの用途として周知であったとしても,それは扉と関連付けられたものでなく,甲第1号証に,請求人が主張する「トイレしつけが完了するまでは仕切壁の扉を閉塞し,犬が排泄するときには仕切壁の扉を開放しトイレスペースに誘導した上で仕切壁の扉を閉鎖し,排泄完了後は仕切壁の扉を開放し犬を居住スペースに誘導するという仕切壁の扉と関連図けられた方法」が示唆されているとまでいえるものでない。

(c)また、甲1発明の扉7は上方側の横杆3に回動自在に吊架されているものである。そして,記載事項(1b)からみて,「開放状態(フリー状態)」と「閉塞状態(ロック状態)」とを取り得るものであるが,両状態ともに開口は扉7により塞がれており,「開放状態(フリー状態)」では自由に回動して動物等の出入りが自由に行われるものである。さらに,両状態を切り替える際には,規制杆8を上方へ引き上げてストッパー9,9の位置を変える必要がある。
このような扉7を訂正発明1のように犬のトイレ仕付けに用いるには,行き来の規制を切り替える際に,迅速に籠の内部の下方側に設けられたストッパー9,9の位置を操作する必要があるところ,上面を含む全面が覆われた「籠」である甲1発明において,人が手を挿し入れて迅速かつ容易に扉の状態を切換ることは困難であり,そのうえ,犬を誘導する際に開口が塞がれていて,犬に飼い主の誘導の意図が伝わりにくく,通過するためには犬が鼻先で扉を押すという,犬にとって必ずしも快適とは思われない行動をする必要がある等,犬の誘導が困難であると認められる。
ここで,記載事項(1d)には,考案の効果として,動物のしつけの程度等により使い分けることができる旨の記載があるが,上述したのと同様に,使い分けるのは「開放状態(フリー状態)」,「閉塞状態(ロック状態)」と「内方へは押せば動くが,外方へは押しても動かない状態(内方へのみ開放状態)」の三通りの扉状態であり,当該扉状態を仕付けの程度により使い分けることは考えられるが,籠の内側にある扉を仕付けの程度を向上させるため,即ち,仕付けるために用いるということまで記載されているとは認められない。
請求人は平成25年3月27日付け上申書3ページ30行?第4ページ20行において,「・・扉の構造としては種々のものが以下の公知文献に開示されており,請求人の指摘する不都合を回避するために様々な扉の構造を検討し最適なものを選択することは当業者にとって当然の行為であり・・」と主張しているが,不都合の回避のための検討には,不都合を認識することが必要であるところ,甲1発明の仕切壁の扉が,「トイレのしつけ」に用いることを意図したものでない以上,不都合の回避を検討すること自体起因付けがないといわざるえない。

(d)そうすると,訂正発明1は,上記の相違点に係る構成を有し,上記(a)の効果を有するものであるのに対して,甲第1?4号証は(更に甲5?6号証も),いずれも該効果を奏するために必要な,訂正発明1の「トイレ仕付け用サークル」本体の「中仕切体には,犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ」に相当する構成が記載若しくは示唆されているものではなく,例え,上面を覆う構造がない「サークル」が甲第2号証,甲第5号証の記載事項(2b),甲第3号証,甲第6号証記載事項(3a),に記載されているように当業者に周知なものであり,さらに,犬のトイレの仕付けのために,住居スペースとトイレスペースを物理的に仕切る等して区画するという手法が甲第2?4号証に記載されているように周知技術ないしは技術常識であったとしても,それらから上記(a)の効果を奏する訂正発明1を容易に想到することはできない。
したがって,訂正発明1は,その出願前に頒布された刊行物(甲第1号証ないし甲第4号証)に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)第2の無効理由について
上記(1)のとおり,甲1発明と訂正発明1には相違点があるから,訂正発明1は,甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえない。

(3)第3の無効理由について
訂正発明2は,訂正発明1にさらに「前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられた」との構成を付加したものであり,上記(1)で訂正発明1は当業者が容易になし得たものであると認められない以上,訂正発明2も当業者が容易になし得たものであると認められない。


第6 むすび
以上のとおり,請求人の主張する理由及び証拠方法によっては,訂正発明1,2を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
犬のトイレ仕付け用サークル
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に犬を入れてトイレの仕付けを行う犬のトイレ仕付け用サークルに関する。
【背景技術】
【0002】
犬用サークルは、複数のパネルを連結し、これらのパネルで囲まれた内部に犬を収容するものであって、サークルの内部空間は、仕切られることなく1つ空間として構成されているものが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、犬の飼い主は、サークルの中に犬用トイレを置いて使用していることが多い。そして、犬にトイレの仕付けを行う際、飼い主が犬の排泄時が近づいたと察知すれば、まず犬をトイレに誘導し、犬がトイレで排泄を終えると、トイレで排泄ができたことを誉めて学習させるという手順を踏むのが通常である。
【特許文献1】特開2001-245545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した一般的な犬用サークルにおいてその内部に犬用トイレを置くと、犬の住居空間が狭くなって使い勝手が悪い。その上、犬用トイレの他に食器やベッドを置くと、衛生上好ましくない。このように、犬がサークル内で快適に過ごすことができないという問題があった。
【0005】
また、犬用トイレと住居空間との境界がないので、飼い主が犬をトイレに誘導し難く、たとえトイレへの誘導に成功した場合であっても、犬がトイレの上で静止し難い。このため、犬に対するトイレの仕付けが困難であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み創案されたもので、サークル内部が住居スペースとトイレスペースとに区画され、トイレの仕付けが容易で、使い勝手がよく、犬が快適に過ごすことができる犬のトイレ仕付け用サークルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明は、複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で、収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて、前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており、前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、サークル本体の内部空間が住居スペースとトイレスペースに区画されているので、トイレスペースを犬用トイレを置くためだけの空間として使用することができる。したがって、サークル本体内に犬用トイレを置いた場合であっても、犬は、住居スペースでゆとりを持って快適に過ごすことができる。また、住居スペースには、食器やベッドを置くことができるので、使い勝手がよい。
【0009】
また、住居スペースとトイレスペースとの間が中仕切体によって仕切られ、この中仕切体には仕切出入口が開口されているので、トイレの仕付けを行う際に、飼い主が犬をトイレに誘導しやすいので、便利である。
【0010】
さらに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されているので、仕切扉の開閉に応じて犬をトイレスペースに誘導したり住居スペースに誘導することができる。
【0011】
本発明は、上記構成の犬のトイレ仕付け用サークルにおいて、前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、仕切出入口の開放時および閉鎖時に仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられているので、仕切出入口を開放状態および閉鎖状態で保持することができる。したがって、閉鎖した仕切出入口の仕切扉を犬が開けるのを防止できるとともに、仕切出入口を開放した状態で犬が住居スペースとトイレスペースとの間を安全で自由に行き来することができる。そして、トイレの仕付けを終えた犬に対しては、仕切出入口を常に開放状態に保持し、住居スペースとトイレスペースとの間を安全で自由に行き来できるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トイレの仕付けが容易で、使い勝手がよく、犬が快適に過ごすことができる犬のトイレ仕付け用サークルを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0015】
図1には、本実施形態の犬のトイレ仕付け用サークル1の全体が示されている。
【0016】
この犬のトイレ仕付け用サークル1は、複数のパネル2a,2b,2c,2dが連結されたサークル本体2と、サークル本体2の下部に取り付けられたトレー6とを備え、サークル本体2の内部空間は、中仕切体4によって仕切られ、住居スペース1aとトイレスペース1bに区画されている。
【0017】
サークル本体2は、正面・背面・左右の側面の4枚のパネル2a,2b,2c,2dが周囲壁を形成するように連結されており、各パネル2a,2b,2c,2dの隣り合うパネル同士は、固定棒20により固定されている。
【0018】
各パネル2a,2b,2c,2dは、木製の上フレーム21と下フレーム22と、これら上フレーム21と下フレーム22との間に取り付けられる金属製の網状体とから構成されている。
【0019】
なお、各パネル2a,2b,2c,2dは、上フレーム21と下フレーム22との間をすべて網状体で構成するものに限定されるものではなく、例えば、上フレーム21と下フレーム22との間の一部に板状体を挿入することにより、サークル本体2の内部空間への外部からの刺激を軽減して、犬が落ち着くことのできる空間となるようにしてもよい。また、下フレーム22の床面と接地する面に、床の傷付きを防止する滑り止め部材を設けてもよい。
【0020】
正面パネル2aの上フレーム21と背面パネル2bの上フレーム21において、住居スペース1aとトイレスペース1bの境界に対応する位置には、中仕切体4を嵌め込む仕切体嵌め込み部21aが切り欠かれている(図3参照)。
【0021】
正面パネル2aの住居スペース1aに対応する側には、犬が出入り可能な犬出入口2eが開口されており、この犬出入口2eを開閉する犬用扉3が開閉自在に取付けられている。
【0022】
犬出入口2eは、正面パネル2aの下端部から上端部にわたって広く開口されており、犬が出入りし易いように図られている。
【0023】
中仕切体4は、仕切フレーム41と網状体とが組み合わされたパネルで構成されており、仕切出入口4aが開口されている(図2、図3、図4参照)。
【0024】
仕切フレーム41は、両端に嵌入部42が形成された断面矩形状の角材であって、嵌入部42をサークル本体2の仕切体嵌め込み部21aに嵌め込むことにより、中仕切体4をサークル本体2に取り付けるようになされている。
【0025】
仕切出入口4aは、中仕切体4の下端部から上端部にわたって広く開口されており、犬が出入りし易いように図られており、この仕切出入口4aを開閉する仕切扉43が開閉自在に取り付けられている。
【0026】
仕切扉43は、中仕切体4の網状体の上部の横線材44に吊下げ部材45を介して摺動自在に取り付けられている。
【0027】
また、仕切扉43の上部の左右の端部には、突出枠46がそれぞれ形成されているとともに、この突出枠46に対応する正面パネル2aと背面パネル2bには、突出枠46の上端に当接して仕切扉43のずり上がりを阻止する係止棒24が設けられている(図2参照)。したがって、仕切扉43のずり上がりを仕切出入口4aの開放状態・閉鎖状態の双方において防止できるようになされている。
【0028】
さらに、仕切扉43の突出枠46よりも若干下側に位置する左右の端部には、把手47がそれぞれ形成されており、使用者(飼い主)がこの把手47に手を掛けて仕切扉43を動かすことができるように図られている。
【0029】
さらにまた、中仕切体4の仕切出入口4a側の端縁40には、掛け止め部材48が回動自在に取り付けられている。この掛け止め部材48は金属製の線材を屈曲して形成され、縦線材を挟み込んで係止するとともに、回動させることで係止を解除することができるようになされている。したがって、仕切扉43を閉じたときには、仕切扉43の一方の側端部43aを掛け止め部材48で係止することで、仕切出入口4aの閉鎖状態を保持することができる。一方、仕切扉43を開けたときには、仕切扉43の他方の側端部43bを掛け止め部材48で係止することで、仕切出入口4aの開放状態を保持することができる。
【0030】
なお、中仕切体4は、嵌入部42をサークル本体2の仕切体嵌め込み部21aから外すことにより、容易に取り外すことができる。このように、中仕切体4を取り外すことで、例えばトイレの仕付けが完了した犬に対しては、住居スペース1aとトイレスペース1bとの間を常に自由に行き来できるようにすることも可能になる。
【0031】
正面パネル2aのトイレスペース1bに対応する側の下部には、犬用トイレを出し入れ可能なトイレ出し入れ口5aが開口されており、このトイレ出し入れ口5aを開閉するトイレ用扉5が開閉自在に取付けられている。
【0032】
トイレ出し入れ口5aは、犬用トイレの幅よりも若干広幅の横長形状に形成されており、犬用トイレAを出し入れし易いように図られている(図2参照)。
トイレ用扉5は、トイレ出し入れ口5aに対応する形状に形成された網状のパネル体である。
【0033】
トレー6は、外周にわたって周壁部61が立ち上げられており、排泄物や飲食物がサークル本体2内にこぼれた場合であっても、これらの汚物などがサークル本体2の木製の下フレームに直接かかって木材が腐敗することがないように図られている(図5参照)。また、トレー6は、住居スペース1aに対応する住居側トレー部6aとトイレスペース1bに対応するトイレ側トレー部6bに区画されており、住居側トレー部6aとトイレ側トレー部6bの境界にわたって漏れ止め用突部62が形成されている。
【0034】
また、中仕切体4に対応する位置には、突起63が3個所形成されており、中仕切体4の下端部を突起63と漏れ止め用突部62との間(嵌入部)に嵌め込んで、中仕切体4のガタツキを防止できるようになされている。
【0035】
さらに、トイレ側トレー部6bには、犬用トイレを所定位置で静止させるトイレ静止用突部64が形成されている。このトイレ静止用突部64は、犬用トイレAの外枠が嵌め込まれるように形成されており、犬の動きに伴って犬用トイレAが動くことがなくなり、好適に排便等をさせることを可能にしている。
【0036】
次に、上記構成の犬用サークル1を組み立てる手順について説明する。
【0037】
まず、正面、背面、左右の側面の4枚のパネル2a,2b,2c,2dを固定棒20を介して連結し、サークル本体2を組み立てる。
【0038】
次いで、トレー6をサークル本体2内に設置する。
【0039】
続いて、サークル本体2の上方から中仕切体4を挿入していき、中仕切体4の下端部をトレー6の嵌入部に嵌め込むとともに、正面パネル2aの上フレーム21と背面パネル2bの上フレーム21の仕切体嵌め込み部21aに中仕切体4を嵌め入れる。中仕切体4を嵌め入れる際、突出枠46を係止棒24の下部に挿入する。
【0040】
次に、上記構成の犬用サークル1の使用方法の一例について説明する。
【0041】
まず、犬用トイレをサークル本体2のトイレスペース1bに設置する。この際、犬用トイレの外枠をトレー6のトイレ静止用突起64に嵌め込んで、犬用トイレAが不測に動かないようにする。
【0042】
次いで、犬出入口2eを開けて、犬をサークル本体2内に入れる。
【0043】
使用者が犬の排泄が近づいてきたと察知した場合、仕切扉43を開けて、犬をトイレスペース1bの犬用トイレAに誘導する。その後、仕切扉43を閉鎖し、ロックする。
【0044】
犬が犬用トイレAで排泄し終えると、トイレで排泄したことを誉め、仕切扉43を開けて、住居スペース1aに犬を入れる。
【0045】
犬用トイレAのシーツを交換する際には、トイレ出し入れ口5aを開けて、犬用トイレを取り出し、使用者は楽な姿勢でシーツを交換することがでる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られて住居スペースとトイレスペースとに区画され、この中仕切体には犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が開閉自在に取り付けられているから、トイレの仕付けが容易な犬のトイレ仕付け用サークルに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る犬のトイレ仕付け用サークルの全体を示す斜視図である。
【図2】犬のトイレ仕付け用サークルの各扉を開けた状態を示す斜視図である。
【図3】犬のトイレ仕付け用サークルを分解して示す斜視図である。
【図4】住居スペースとトイレスペースとを区画する中仕切体を部分拡大して示す斜視図である。
【図5】サークル本体内に設置するトレーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 犬のトイレ仕付け用サークル
1a 住居スペース
1b トイレスペース
2 サークル本体
3 犬用扉
4 中仕切体
4a 仕切り出入口
43 仕切扉
5 トイレ用扉
6 トレー
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で、収容した犬のトイレの仕付けを行う犬用サークルにおいて、
前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており、
前記中仕切体には、犬が出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに、この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ、この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間を犬が行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。
【請求項2】
請求項1に記載の犬のトイレ仕付け用サークルにおいて、
前記仕切出入口の開放時および閉鎖時にそれぞれ仕切扉を係止する仕切出入口ロック手段が設けられたことを特徴とする犬のトイレ仕付け用サークル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-05-10 
結審通知日 2013-05-15 
審決日 2013-05-28 
出願番号 特願2005-356334(P2005-356334)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (A01K)
P 1 113・ 851- YAA (A01K)
P 1 113・ 121- YAA (A01K)
P 1 113・ 853- YAA (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 高橋 三成
筑波 茂樹
登録日 2010-10-29 
登録番号 特許第4616162号(P4616162)
発明の名称 ペットのトイレ仕付け用サークル  
代理人 池村 正幸  
代理人 倉内 義朗  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 倉内 義朗  
代理人 宇治 美知子  
代理人 宇治 美知子  
代理人 ▲高▼橋 淳  
代理人 上原 理子  
代理人 布施 行夫  
代理人 上原 理子  
代理人 上原 健嗣  
代理人 池村 正幸  
代理人 上原 健嗣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ