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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1316204
審判番号 不服2015-5298  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-19 
確定日 2016-06-23 
事件の表示 特願2011-208830「熱電発電装置および熱電発電方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日出願公開、特開2013- 69975〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年9月26日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 1月21日 審査請求
平成26年10月21日(発送日) 拒絶理由通知
平成26年12月19日 意見書
平成27年 1月20日(発送日) 拒絶査定
平成27年 3月19日 審判請求・手続補正

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年3月19日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項7は本件補正後の請求項6へ補正された。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,特許請求の範囲の請求項7の記載は次のとおりである。
「両面の温度差により発電する熱電変換モジュールと、前記熱電変換モジュールを両面にて熱伝導材料を介して挟むように設けられ、互いに温度が異なる流体を流す第1の流路および第2の流路とを備えた熱電発電装置に適用される熱電発電方法であって、
集熱手段により輻射熱源からの輻射熱を非接触で受けて集熱し、
流体が前記集熱手段において熱交換を行った後、前記第1の流路を通じて前記熱電変換モジュールと熱交換を行うようにしたことを特徴とする熱電発電方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の,特許請求の範囲の請求項6の記載は,次のとおりである。
「両面の温度差により発電する熱電変換モジュールと、前記熱電変換モジュールを両面にて熱伝導材料を介して挟むように設けられ、互いに温度が異なる流体を流す第1の流路および第2の流路とを備えた熱電発電装置に適用される熱電発電方法であって、
輻射熱源からの輻射熱を非接触で受ける受熱板と、前記受熱板が回収した熱を蓄熱する熱浴とを含む集熱手段により輻射熱源からの輻射熱を非接触で受けて集熱し、
流体が前記熱浴において熱交換を行った後、前記第1の流路を通じて前記熱電変換モジュールと熱交換を行うようにしたことを特徴とする熱電発電方法。」
(3)補正事項
本件補正は,補正前請求項7の「集熱手段」を「輻射熱源からの輻射熱を非接触で受ける受熱板と、前記受熱板が回収した熱を蓄熱する熱浴とを含む」ものとし,流体が熱交換を行う場所を「前記集熱手段」からそこに含まれる「前記熱浴」に限定して,補正後請求項6とするものである。
2 補正の適否
本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0011】及び【0013】の記載からみて,本件補正は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるので,前記補正事項は,特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
そして,本件補正は前記1(3)のとおり,本件補正前の請求項7に記載された発明特定事項を限定的に減縮するものであるから,特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,補正後の請求項6に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項)につき,更に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の請求項6に記載された,次のとおりのものと認める。(再掲)
「両面の温度差により発電する熱電変換モジュールと、前記熱電変換モジュールを両面にて熱伝導材料を介して挟むように設けられ、互いに温度が異なる流体を流す第1の流路および第2の流路とを備えた熱電発電装置に適用される熱電発電方法であって、
輻射熱源からの輻射熱を非接触で受ける受熱板と、前記受熱板が回収した熱を蓄熱する熱浴とを含む集熱手段により輻射熱源からの輻射熱を非接触で受けて集熱し、
流体が前記熱浴において熱交換を行った後、前記第1の流路を通じて前記熱電変換モジュールと熱交換を行うようにしたことを特徴とする熱電発電方法。」
(2)引用文献1の記載と引用発明
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特表2011-515830号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に互いに接続された多数の熱電対を備え、この熱電対が流入する熱流を収容する高温側と、この高温側から離隔して設けられた低温側との間に配置されている、熱電発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電発電機として運転される熱電素子は、ゼーベック効果に従って電圧を供給する。・・・
【0010】
熱電発電機として運転される熱電素子は通常、特にセラミックス製の2枚の薄い熱伝導性板を有し、この板の間に、伝導性の異なる材料、特に半導体材料からなる小さな直方体が交互にはんだ付けされている。異なる各々2つの直方体は直列回路を生じるように互いに接続されている。両板の一方は流入する熱流を収容し(以下、熱電素子の高温側と呼ぶ)、他方の板は流出する熱流を放出する(以下、熱電素子の低温側と呼ぶ)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
公知の熱電発電機から出発して、本発明の根底をなす課題は、太陽発電システムの熱を、電気を発生するために効率的に利用する熱電発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
・・・
【0018】
太陽光照射による熱を利用可能にするソーラーシステムを太陽発電システムと呼ぶ(太陽熱)。熱を回収する際に、集熱器の吸収器は太陽エネルギーによって加熱される。熱を吸収する伝熱媒体が集熱器を通って流れる。ポンプは伝熱媒体をソーラー回路内で搬送する。熱は集熱器からソーラー回路を経てヒートシンク、特に太陽熱蓄熱器に運ばれる。太陽熱蓄熱器は熱を吸収して貯蔵する。
・・・
【0029】
熱電発電機の放熱のために使用される低温側の面を拡大するために、熱電発電機は放熱器、特にリブ構造体を有する放熱器を備えている。リブ構造体のリブは低温側から好ましくは垂直方向に延在している。リブによって改善される熱排出により、熱電発電機の効率が改善される。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0037】
図1aは、互いに電気的に接続された複数の熱電対を有する本発明に係る熱電発電機(1)を示す。この熱電対は流入する熱流を受け入れる高温側(2)と、この高温側から離隔して配置された低減側(3)との間に設けられている。高温側(2)には熱交換器(4)、特に多管式熱交換器が配置されている。熱交換器(4)は太陽発電システムの集熱器(5)の受動的背面に面で連結されている。集熱器(5)と熱交換器(4)との間には、熱的な分離のために、断熱中間層(6)が配置されている。
【0038】
集熱器(5)は図示した実施形態では多管式集熱器である。この多管式集熱器は特に、図2に例示しかつ後述するように、ソーラーシステムの一部である。熱回収の際、集熱器(5)の上方に配置された吸収器(7)が太陽エネルギーによって加熱される。熱を吸収する伝熱媒体が集熱器(5)を通って流れる。伝熱媒体はポンプによってソーラー回路内を搬送され、ヒートシンク、特に太陽熱蓄熱器に供給される。この太陽熱蓄熱器は熱を受け取って貯蔵する。
【0039】
集熱器(5)は供給接続部(8)を有する。この供給接続部には、太陽光照射の結果温められた伝熱媒体のための配管が接続されている。反対側には、集熱器(5)の還流接続部(9)が設けられている。熱交換器(4)は同様に、2つの接続部、すなわち入口接続部(10)と出口接続部(11)を備えている。熱電発電機は図示した実施形態では、2つの多方向制御弁(12、13)を有する弁制御装置を備えている。多方向制御弁(12)は3/2方向制御弁である。方向制御弁(13)は4/2方向制御弁である。
・・・
【0041】
蓄熱器がその全熱容量を満たすかあるいは集熱器(5)の後に配置されたヒートシンクにおいて熱を必要としないときには、熱電発電機(1)は図1bに示した運転モードに移行する。他の集熱器から来る既に温められた伝熱媒体は還流接続部(9)と集熱器(5)と多方向制御弁(12)を経て熱交換器(4)に案内される。この熱交換器は余剰の熱を熱電発電機(1)の高温側(2)に供給する。この熱電発電機において熱が電気エネルギーに変換される。このエネルギー変換時の効率を高めるために、熱電発電機(1)の低温側(3)に放熱器(14)が配置されている。熱交換器(4)の出口接続部(11)は太陽熱蓄熱器に通じている。」
イ 引用発明
前記アより,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「高温側と低温側との間に設けられている熱電発電機と,
前記熱電発電機は熱伝導性板の間にあり,伝熱媒体が案内され余剰の熱を熱電発電機の高温側に供給する熱交換器と,熱電発電機の低温側に配置されるリブ構造体を有する放熱器とを備えた装置に適用される熱電発電方法であって,
太陽エネルギーによって加熱される吸収器と,
上方に前記吸収器が配置され熱を吸収する伝熱媒体が通って流れる集熱器とにより集熱し,
伝熱媒体が前記集熱器において熱を吸収した後、前記熱交換器から熱を熱電発電機に供給するようにしたことを特徴とする熱電発電方法。」
(3)周知例の記載と周知技術
ア 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開平5-167104号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の目的】
【産業上の利用分野】本発明は、熱電素子を用いた発電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】熱電素子を利用して発電を行うことは周知であり、例えば特開昭62-237226号には、給湯機における湯水の温度差を利用して発電を行うことが提案されている。また、太陽エネルギなどによる熱源を利用して熱電素子に温度差を与え、発電をすることも知られている。
【0003】今日の高性能の熱電素子は、一般に、化合物半導体からなり、例えばp型半導体とn型半導体とを熱電対の形に接合することにより構成されている。熱電素子の高温側接合部と低温側接合部との間に温度差を与えると、熱起電力が生じ、電位差が発生する。この現象は、ゼーベック効果として知られている。」
(イ)「【0018】図2を参照するに、この実施例に係る熱電発電装置10は、給湯機(図示せず)から供給される約70℃強の湯と水道水との間の温度差を利用して本発明に従い発電を行い、得られた電力で混合弁装置12を駆動するようになっている。
【0019】即ち、図2に示したように、この発電装置10は、熱電素子モジュール14と、この熱電素子モジュールに伝熱接触関係で配置された2つの熱交換パイプ16および18を備えている。湯用の熱交換パイプ16は給湯機(図示せず)から湯の供給を受け、熱電素子モジュール14の高温側接合部および蓄熱槽20内の蓄熱材に熱エネルギの一部を伝えると共に、混合弁装置12の湯入口22に湯を供給する。水道水の供給を受ける水用の熱交換パイプ18は、熱電素子モジュール14の低温側接合部を冷却すると共に、混合弁装置12の水入口24に水を送る。これらの熱交換パイプ16、18は図3に示したように蛇行させてあり、熱電素子モジュールと効果的に熱交換を行うようになっている。」
イ 周知例1
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2011-87416号公報(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、熱を電力に変換する熱発電素子に太陽熱を集めて発電を行う集熱型の太陽熱発電装置に関するものである。」
(イ)「【0018】
この反射パネル1は、多数のパラボラ型反射板1aを長手方向に並べて伸びるいわば半円筒状の形状を有している。この反射パネル1の焦点位置にはこの反射パネル1の長手方向に沿って太陽光が反射して照射する側の面に熱電変換素子であるTEG3につながるパイプ5が配置されている。このパイプ5は柔軟な金属(例えば、銅)管あるいはプラスチック管で構成されている。そしてこのパイプ5の内部には図示しない水(冷却水)もしくは冷却液が循環流動できるように充填されている。
【0019】
前記パイプ5内を循環流動できるように充填される水を冷却するための蓄冷材が冷却貯蔵タンク6に充分に蓄えられている。この冷却貯蔵タンク6には、フィン7が形成されていて、冷却効果を高めている。そして、冷却水は、例えば電動ポンプ8でパイプ内を循環流動するように構成されている。この冷却貯蔵タンク6内に配設される管は金属管(例えば銅管)で構成されている。前記蓄冷材は後述するPEG(ポリエチレングリコール)によって形成されている。特にこの蓄冷材はPEG♯1000を用いて形成されている。この冷却貯蔵タンク6は図面では反射パネル1のそばに配置されているが、実際には太陽熱の直射から遮蔽された位置に配置されている。
【0020】
前記熱発電部2を同図の拡大図で示すと、熱発電部2の下側面つまり反射パネル1の焦点方向に熱電変換素子であるTEG3が配置されている。そして、その熱発電部2の下側の面であるTEG3と反対側面である上側部分を冷却管9とする。そして、この冷却管9は、金属(例えば、銅)で形成されている。そして、その冷却管9の内部に前記冷却水が循環流動するように構成されている。
【0021】
上記構成の熱発電装置の作用について説明すると、前記TEG3が熱発電部2の下側つまり反射パネル1の焦点方向に配置されている。そして、その熱発電部2の下側面のTEG3とその反対側面である冷却管9にはその内部に前記の冷却水が循環流動することによって温度差が生じる。このとき、より高温となるTEG3に対して冷却のための冷却水は、その流速を前記電動ポンプ8によって変える(速める)必要がある。そして、熱発電部2の下側面であるTEG3とその反対側面である冷却管9との温度差によるゼーベック効果によって電力が発生する。そして、例えば夜間など太陽熱が照射されない時間帯には冷却貯蔵タンク6は、フィン7等を介してその内部に充填されている蓄冷材の冷却を行うようにしてもよい。」
ウ 周知例2
本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2010-11718号公報(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、熱電モジュールを用いて温度差による熱エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽熱発電装置に関し、詳しくは太陽光線を集光した熱源を利用して効率よく発電することができる太陽熱発電装置に関する。」
(イ)「【0012】
本願発明の太陽熱発電装置は、図1に示すように、熱電素子を備え、高温側温度が700℃に耐え、出力が40Wで、実効面積基準の出力密度が3.89W/cm2(受熱面積基準の出力密度が2.85W/cm2)の封止型モジュールである熱電モジュール11と、熱電モジュールの片面に結合され、熱伝導性の高い集熱板12と、熱電モジュール11の反対面に結合され、冷却手段を備えた放熱板13と、集熱板12と放熱板13との間に配置された熱伝導率の低い断熱材14と、集熱板12に対して太陽光を反射集光する曲面形状に形成された反射板15と、太陽光線を受光する光センサー16と、反射板15を太陽光の方向に向くように動かす駆動手段17と、を備えている。
・・・
【0015】
放熱板13は、アルミニュームなどの熱伝導率が高い材料を用いており、実施例においては、この放熱板13内部に水を通す管路を設けた冷却手段を備えている。
この冷却手段は、図示しない放熱板13の管路に流路18を連結し、この流路18が水循環部19に連結して水を管路に供給する構成となっている。
この流路18は水冷に限定することなく空冷でもよく冷却手段は特定事項に限定されるものではない。」
エ 周知技術
水などの流体を流す流路を用いて熱電変換素子を冷却することは,引用文献2,周知例1及び周知例2にみられるように,本願の出願日前,当該技術分野では周知技術と認められる。
(4)本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の「熱電発電機」,「熱伝導性板」及び「吸収器」は,それぞれ本願補正発明の「熱電変換モジュール」,「熱伝導材料」及び「受熱板」に相当するものと認められる。
引用発明の「熱交換器」は「伝熱媒体が案内され余剰の熱を熱電発電機の高温側に供給する」ものであるから,伝導媒体が流れることにより熱を供給するものと認められ,これは,「互いに温度が異なる流路」である点を除いて,本願補正発明の「第1の流路」に相当するものと認められる。
また,引用発明の「熱電発電機」は高温側と低温側との間に設けられ,ゼーベック効果に従って発電するものである(前記(2)ア(ア)参照。)から,両面の温度差により発電するものであると認められる。
また,引用発明の「吸収器」は太陽エネルギーにより加熱されるものであり,太陽光照射による熱を利用するものである(前記(2)ア(ア)参照。)から,太陽という輻射熱源からの輻射熱を非接触で受けるものであると認められる。
してみると,本願補正発明と引用発明とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。
ア 一致点
「両面の温度差により発電する熱電変換モジュールと、前記熱電変換モジュールをその両面にある熱伝導材料のうちの一方を介して設けられ、流体を流す第1の流路を備えた熱電発電装置に適用される熱電発電方法であって、
輻射熱源からの輻射熱を非接触で受ける受熱板と、を含む集熱手段により輻射熱源からの輻射熱を非接触で受けて集熱し、
流体が前記集熱手段において熱交換を行った後、前記第1の流路を通じて前記熱電変換モジュールと熱交換を行うようにしたことを特徴とする熱電発電方法。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願補正発明は熱電変換モジュールの他方の面に「第1の流路の流体とは温度が異なる流体を流す第2の流路」を備えるのに対し,引用発明は熱電変換モジュールの他方の面には「リブ構造体を有する放熱器」を備える点。
(イ)相違点2
本願補正発明は「受熱板が回収した熱を蓄熱する熱浴」を含み「熱浴」において熱交換を行うのに対し,引用発明は受熱板の「熱を吸収する伝熱媒体が通って流れる集熱器」を含み「集熱器」において熱交換を行う点。
(5)相違点についての検討
ア 相違点1について
引用発明の「放熱器」は熱電変換モジュールの他方の面に備えられて放熱により熱電変換モジュールを冷却するものであり,一方,前記(3)ウで認めたとおり,熱電変換素子を冷却するために,水を通す管路を用いることは,周知技術であるから,引用発明の「リブ構造体を有する放熱器」に代えて前記周知技術を採用することは,当業者がコストや冷却効率を考慮して適宜選択すべき設計変更にすぎない。
なお,引用発明は輻射熱源を利用するものであるが,前記周知技術においても熱源として太陽という輻射熱源が意図されているから(前記(3)ア(ア),同イ(ア)及び同ウ(ア)参照。),前記周知技術の採用に困難性はない。
イ 相違点2について
引用発明において,伝熱媒体は熱を保って流れることにより熱を伝える機能を果たすものであることから蓄熱作用を有することは明らかであり,この蓄熱作用を有する伝熱媒体が通って流れる集熱器も蓄熱作用を有するものと認められ,してみると引用発明の「集熱器」は本願補正発明の「受熱板が回収した熱を蓄熱する熱浴」と,実質的には相違するものではない。
なお,本願明細書には「【0014】・・・熱浴12は、熱媒体や蓄熱材で満たされており、受熱板11から受ける熱の温度のばらつきを抑え、安定した熱供給を行うので、熱浴12を通過する熱媒体は温度が効率よく上げられて高温側チャンバ14aへ供給される。」と記載されているから,本願補正発明の「熱浴」は熱媒体自体の蓄熱作用を利用する形態を含むものであり,前記判断と矛盾するものではない。
(6)本願補正発明の効果について
本願補正発明の効果である熱の温度のばらつきを押さえるという点についての構成は前記(5)イに記載したように,引用発明と実質的な相違がないのであるから,引用発明も同様の効果を奏するものと認められ,格別なものではない。
(7)まとめ
本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の特許性の有無について
1 本願発明について
平成27年3月19日にされた手続補正は前記のとおり却下された。
そして,本願の請求項7に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項7に記載された,次のとおりのものと認める。(再掲)
「両面の温度差により発電する熱電変換モジュールと、前記熱電変換モジュールを両面にて熱伝導材料を介して挟むように設けられ、互いに温度が異なる流体を流す第1の流路および第2の流路とを備えた熱電発電装置に適用される熱電発電方法であって、
集熱手段により輻射熱源からの輻射熱を非接触で受けて集熱し、
流体が前記集熱手段において熱交換を行った後、前記第1の流路を通じて前記熱電変換モジュールと熱交換を行うようにしたことを特徴とする熱電発電方法。」
2 引用文献1の記載と引用発明
引用文献1の記載は,前記第2の2(2)アのとおりであり,引用発明は,前記第2の2(2)イで認定したとおりである。
3 本願発明と引用発明との対比及び判断
前記第2の1に記載したとおり,本願発明は,本願補正発明から,平成27年3月19日にされた手続補正による補正事項に係る技術的限定(前記第2の1(3)参照。)を取り除いたものである。
そして,前記補正事項に係る技術的限定は,本願補正発明と引用発明との相違点2(前記第2の2(4)イ(イ)参照。)に係る構成を含むものである。
そうすると,本願発明と引用発明とを対比すると,前記第2の2(4)より,両者は,本願補正発明と引用発明との相違点1の点で相違し,その余の点で一致すると認められる。
そして,前記第2の2(5)アのとおり,引用発明において,相違点1に係る構成とすることは,引用文献2にみられるような周知技術に基づいて当業者が容易になしえたものであり,また,その効果も,引用発明において,当業者が容易に予測し得るものであり,格別のものとはいえない。
4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第4 結言
したがって,本願の請求項7に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-14 
結審通知日 2016-04-19 
審決日 2016-05-09 
出願番号 特願2011-208830(P2011-208830)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽鳥 友哉  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 深沢 正志
飯田 清司
発明の名称 熱電発電装置および熱電発電方法  
代理人 野河 信久  
代理人 佐藤 立志  
代理人 峰 隆司  
代理人 堀内 美保子  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  

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