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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1316297
審判番号 不服2015-17072  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-16 
確定日 2016-06-20 
事件の表示 特願2013-197533「ドットパターンが印刷されたマウスパッド、マウスパッドシステム、ドットパターンが印刷されたペーパーキーボード、情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月19日出願公開、特開2013-254526〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成19年3月9日(優先権主張平成18年3月10日、平成18年11月21日)を出願日とする特願2009-175775号の一部を平成23年11月25日に新たに特許出願した特願2011-256971号の一部を、さらに分割して平成25年9月24日に新たに特許出願したものであって、平成27年6月11日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年9月16日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、同時に手続補正されたものである。

第2 27年9月16日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年9月16日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の請求項11
「【請求項11】
座標値および/またはコード値が定義されたドットパターンが印刷されたペーパーキーボードであって、
少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷された複数のアイコンを有するアイコン領域と、
少なくとも座標値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド領域と、を備えた、ペーパーキーボード。」を
補正後の請求項1
「【請求項1】
座標値および/またはコード値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッドであって、
座標値、または、座標値およびコード値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド領域と、
少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷された複数のアイコンを有するアイコン領域と、
が前記マウスパッド上の異なる平面領域に形成された
マウスパッド。」と補正する補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所を示す。)

(2)補正の適否
上記補正事項が、出願当初の明細書および図面の範囲内において、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明および特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか否かを検討する。
(a)出願当初の明細書および図面の全記載、特に段落【0319】および図84(a)、(b)等の記載によれば、「ペーパーキーボード」を「マウスパッド」とする補正は、請求人が審判請求書で主張するように誤記の訂正を目的とするものと認められる。
(b)「少なくとも座標値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド領域」を「座標値、または、座標値およびコード値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド領域」とする補正は、補正前と補正後に「座標値および/またはコード値が定義されたドットパターンが印刷された」の記載があることから、実質的な内容に変更はなく、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。
(c)「マウスパッド領域」と「アイコン領域」が「マウスパッド上の異なる平面領域に形成されたマウスパッド。」とする補正は、出願当初の明細書の段落【0320】および【図84(a)】の記載からみて、出願当初の明細書および図面の範囲内での補正であり、また、マウスパッド上の「マウスパッド領域」と「アイコン領域」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものであるから、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。

ア.引用文献
(1)引用文献1・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特表2003-523572号公報(平成15年8月5日公表。以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
「【0035】
第4の態様によれば、本発明は、入力ユニットの構成の様々な機能を実現することを意図とした少なくとも2つの領域又は座標領域に分割される位置符号化パターンを装備するマウスパッドに関する。
【0036】
このマウスパッドの長所は、入力ユニットの構成の上述の説明から明らかである。「マウスパッド」という用語は、この文脈では広義に解釈され、例えば、ある種の視覚的指標を相応しく備えている、位置符号化パターンを印刷された紙製品などを含むものと見なされる。」

「【0043】
マウスパッド100は、複数の異なる領域に区画される。これには、相対的マウス機能用の第1の作業フィールド110、絶対的マウス機能用の第2の作業フィールド111、スクロールフィールド112、スキャナ又は読み取りペン機能に切り替えるためのスキャナフィールド113、写真撮影機能に切り替えるための写真フィールド114、手書き記録機能に切り替えるための手書きフィールド115及び、多数の所定のコマンドが指示されるコマンドフィールド120がある。
【0044】
絶対位置符号化パターン150は、マウスパッド100全体に広がっている。分かりやすくするために、マウスパッド100のほんの小さな部分にパターンを大きく拡大して示してある。
【0045】
絶対位置符号化パターンは、マウスパッド100上で数多い位置の座標を体系的に符号化するタイプであればよいので、入力ユニット300がマウスパッド100上のどこに置かれていようと、入力ユニットの位置は決定できる。
【0046】
このパターンは、例えば、各位置が1つの特定のシンボルで符号化されるという、US-A-5,852,434に掲載されているタイプでよい。しかし、これは有利に、例えば、各位置が複数のシンボルで符号化され、各シンボルが複数の位置の符号化に寄与する、本出願人の国際特許公告WO00/73981、PCT/SE00/01667及びPCT/SE00/01895に記載されているタイプでもよい。これらの出願は、本引用により本出願の一部と見なされ、参照により本書に盛り込まれる。
【0047】
これらの国際出願では、少ないタイプ数のシンボルからパターンが構成される。例えば、パターンは、各々が1と0を表す2つの異なるサイズのドット又は、ラスタポイントとの関連から異なる4つの位置を有し、この方法で異なる4つの値を符号化できるドットから構成できる。
【0048】
図には、マウスパッド上の、異なる2つのサイズのドット形式Dのシンボルから構成される位置符号化パターンが示されている。これらのドットは、それぞれ1と0を表す。そうしたシンボルは、例えば5×5ドットといった相当数が一体となって、マウスパッド100上の位置を符号化する。各位置は、この文脈では、少なくとも2つの座標によって指定される。
【0049】
位置符号化パターンの様々な部分は、異なる座標領域又は領域であって、以下に詳細を説明するように、異なる機能に関連付けることができる。この実施形態では、入力ユニットの構成は、マウス機能モードと入力機能モードを有している。マウス機能モードは、部分的機能として、相対的マウス機能、絶対的マウス機能、スクロール機能及び制御機能を含んでいる。入力機能モードは、部分的機能として、スキャナ機能、写真撮影機能及び手書き記録機能を含んでいる。」

「【0059】
上述の構成は、以下のように用いられる。まず、ユーザが入力ユニット300を通常の相対的マウスとして使いたい場合を想定しよう。ユーザは、入力ユニット300を第1の作業フィールド110に合わせる。プロセッサ20は、センサ8により記録される画像で座標を検出し、入力ユニット300をマウス機能モードに切り替え、座標をコンピュータ200に送るが、そこでは、ソフトウェア210によって、座標が作業フィールド110に属し、そのために相対的マウス機能に属するものとして解読されることが探知される。ソフトウェア210は、作業フィールド110に属する座標を受け取る限り、作業フィールド110上でユーザが入力ユニット300を移動した方法に対応する方法で、画面201上のカーソルを移動するために、コンピュータ200に対して供給するコマンドを生成することになる。絶対的マウス機能の作業フィールド111は、対応する方法で用いてよいが、ソフトウェア210が作業フィールド111中の絶対位置をコンピュータ画面201上のカーソルの絶対位置にマッピングするズレが伴う。」

「【0070】
上述の例では、入力ユニット300は、様々な機能位置の間を切り替えられる。入力ユニット300は、マウス位置にあるとき、相対的マウス機能、絶対的マウス機能、スクロール機能、制御機能のいずれと連携して構成が動作するよう意図されていようと、コンピュータ中のソフトウェアに対して一連の座標を生成する。ソフトウェア210はそれから、受け取った座標を分析し、それに基づいて適当なマウス機能を実行する。入力ユニット300は、写真位置では、個々の画像を生成し、テキスト入力位置では、文字認識(OCR)を実行して、キャラクタ符号テキストを生成し、手書き位置では、手書きのグラフィカル軌跡か、文字認識(ICR)に従属する手書きバージョンを形成する一連の座標のいずれかを生成する。
【0071】
入力ユニット300の切り替えは、そのプロセッサ20が各種の機能と関連付けられている座標領域について少なくとも特定の情報を有していなければならないことを意味している。位置符号化パターンの用法では、入力ユニット300は、プロセッサ能力と記憶容量については少量しか必要とせずに、検出された座標に基づいて様々な機能位置を識別できる。」

上記記載及び図1の記載を技術的常識に照らすとマウスパッド100について次のことがいえる。
(a)「絶対位置符号化パターン150は、マウスパッド100全体に広がっている。」(【0044】)、「絶対位置符号化パターンは、マウスパッド100上で数多い位置の座標を体系的に符号化するタイプであればよいので、入力ユニット300がマウスパッド100上のどこに置かれていようと、入力ユニットの位置は決定できる。」(【0045】)及び「マウスパッド上の、異なる2つのサイズのドット形式Dのシンボルから構成される位置符号化パターンが示されている。これらのドットは、それぞれ1と0を表す。そうしたシンボルは、例えば5×5ドットといった相当数が一体となって、マウスパッド100上の位置を符号化する。各位置は、この文脈では、少なくとも2つの座標によって指定される。」(【0048】)の記載によれば、「絶対位置符号化パターン150」は、「座標値が定義されたドットパターン」であるといえ、「「マウスパッド」という用語は、・・・、位置符号化パターンを印刷された紙製品などを含むものと見なされる。」(【0036】)の記載によれば「絶対位置符号化パターン150」は、マウスパッド100に印刷されたものといえる。
(b)「マウスパッド100」の領域である「相対的マウス機能用の第1の作業フィールド110」、「絶対的マウス機能用の第2の作業フィールド111」と「多数の所定のコマンドが指示されるコマンドフィールド120」の「コピー」、「貼り付け」、「切り取り」、「電子メール」、「WWW」、「ユーザ定義」コマンドという名称が付いた部分にはいずれにも、それぞれ「絶対位置符号化パターン150」が印刷されているといえる。
(c)「マウスパッド100は、複数の異なる領域に区画される。これには、相対的マウス機能用の第1の作業フィールド110、絶対的マウス機能用の第2の作業フィールド111、スクロールフィールド112、スキャナ又は読み取りペン機能に切り替えるためのスキャナフィールド113、写真撮影機能に切り替えるための写真フィールド114、手書き記録機能に切り替えるための手書きフィールド115及び、多数の所定のコマンドが指示されるコマンドフィールド120がある。」(【0043】)の記載及び図1の記載によれば、「相対的マウス機能用の第1の作業フィールド110及び絶対的マウス機能用の第2の作業フィールド111」と「多数の所定のコマンドが指示されるコマンドフィールド120」は、マウスパッド100上の異なる平面領域に形成されているといえる。

以上のことから、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「座標値が定義されたドットパターンである絶対位置符号化パターン150が印刷されたマウスパッド100であって、
座標値が定義されたドットパターンである絶対位置符号化パターン150が印刷された相対的マウス機能用の第1の作業フィールド110及び絶対的マウス機能用の第2の作業フィールド111と、
座標値が定義されたドットパターンである絶対位置符号化パターン150がそれぞれ印刷された「コピー」、「貼り付け」、「切り取り」、「電子メール」、「WWW」、「ユーザ定義」コマンドという名称が付いた部分を有するコマンドフィールド120と、がマウスパッド100上の異なる平面領域に形成されているマウスパッド100。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2004/029871号(2004年4月8日公開。以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
「上述したようなドットパターン1は、種々の印刷物5に印刷することによりドットパターン部6を構成する。特に、本発明では、図23に示すように、このドットパターン部6の他に、人が通常にそのまま情報内容を目視にて認識することができる文字または図等で表示された情報伝達部7を印刷物5の同一面に印刷してある。・・・中略・・・すなわち、このような文字または図等で表示された情報伝達部7とドットパターン部6が同一面に重ねて印刷された印刷物5におけるドットパターン部6の画像データのみを取り込むことにより、ドットパターン部6の情報のみを抽出することができる。
図23はXY座標情報からなるドットパターンを示す説明図である。図24はXY座標情報からなるドットパターンを認識し、その処理方法についての説明図である。
本発明のドットパターン部6はXY座標情報で作成し、そのXY座標情報と情報伝達部7の内容とを関連付けることができる。・・・中略・・・そのX方向、Y方向の座標情報化したものを、円形部分A、四角部分B、三角部分Cで表現した各情報伝達部7の内容のいずれかの位置に対応させる。このときに図24の参照テーブル1を用いてXY座標と各情報伝達部7の内容とを対応させる。すなわち、どのXY領域が、情報伝達部7のいずれの内容であるかを対照させ、次に図24の参照テーブル2を参照することによりドットパターン部6に対応した情報、プログラムを出力する。
このXY座標情報からなるドットパターン部6によれば、予めドットパターン1を印刷した印刷物5を用意しておき、この印刷物5上に情報伝達部7を重ね印刷するだけで、特定の内容(コンテンツ)に対してXY座標の領域と音声等の情報およびプログラムとを関連付けることが可能になる。すなわち、情報伝達部7の内容に合わせたドットパターン部6を作成する必要がないので、その汎用性が非常に高くなる。
図25はコード番号情報からなるドットパターンを示す説明図である。図26はコード番号情報からなるドットパターンの認識および処理手順を示した説明図である。
本発明のドットパターン部6は、前述したXY座標情報に代えてコード番号情報で作成し、そのコード番号情報と情報伝達部7の内容とを関連付けることができる。たとえば、円形部分Aの情報伝達部7、四角部分Bの情報伝達部7または三角部分Cの情報伝達部7の内容に対応して、それぞれ1つのコード番号情報を含んだドットパターン部6を印刷する。このドットパターン部6についても、上述したようにカメラユニット2を用いてその画像データを取り込み、その画像情報をデジタル化して数値化(コード番号情報化)し、図26の参照テーブルを参照することによりそのドットパターン部6に対応した情報、プログラムを出力する。
このコード番号情報からなるドットパターン部6によれば、コード番号と情報伝達部7の内容が直接対応しているために、図26に示すように、参照テーブルを1つ作成すればよい。さらに、参照テーブルを1つ作成すればよいので情報処理時間を短縮することができる。
なお、XY座標情報とコード番号情報からなるドットパターン部6を印刷物5の同一平面上に印刷することは勿論可能である。」(第24頁第2行?第25頁第24行)

イ.対比
補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「絶対位置符号化パターン150」は、「座標値が定義されたドットパターン」であるから、補正発明の「座標値および/またはコード値が定義されたドットパターン」に相当するといえ、引用発明の「絶対位置符号化パターン150が印刷されたマウスパッド100」は、補正発明の「座標値および/またはコード値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド」に相当するといえる。
(イ)引用発明の「座標値が定義されたドットパターンである絶対位置符号化パターン150が印刷された相対的マウス機能用の第1の作業フィールド110及び絶対的マウス機能用の第2の作業フィールド111」は、補正発明の「座標値、または、座標値およびコード値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「座標値が定義されたドットパターンである絶対位置符号化パターン150がそれぞれ印刷された「コピー」、「貼り付け」、「切り取り」、「電子メール」、「WWW」、「ユーザ定義」コマンドという名称が付いた部分」は、「コピー」、「貼り付け」、「切り取り」、「電子メール」、「WWW」、「ユーザ定義」という機能の名称を表す画像が表示され区画された領域であるから、アイコンといいえるものであり、補正発明の「少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷された複数のアイコン」と「ドットパターンが印刷された複数のアイコン」である点では一致するといえる。
したがって、引用発明の「座標値が定義されたドットパターンである絶対位置符号化パターン150がそれぞれ印刷された「コピー」、「貼り付け」、「切り取り」、「電子メール」、「WWW」、「ユーザ定義」コマンドという名称が付いた部分を有するコマンドフィールド120」は、補正発明の「少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷された複数のアイコンを有するアイコン領域」と、「ドットパターンが印刷された複数のアイコンを有するアイコン領域」である点では一致するといえる。
(エ)引用発明の「相対的マウス機能用の第1の作業フィールド110及び絶対的マウス機能用の第2の作業フィールド111」と、「コマンドフィールド120」とが「マウスパッド100上の異なる平面領域に形成」されている構成は、補正発明の「マウスパッド領域」と「アイコン領域と、が前記マウスパッド上の異なる平面領域に形成」された構成に相当するといえる。

したがって、両者は、
「座標値および/またはコード値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッドであって、
座標値、または、座標値およびコード値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド領域と、
ドットパターンが印刷された複数のアイコンを有するアイコン領域と、
が前記マウスパッド上の異なる平面領域に形成された
マウスパッド。」で一致し、次の点で相違する。

〈相違点〉
補正発明は、アイコン領域の「複数のアイコン」は、「少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷された」ものであるのに対し、引用発明のコマンドフィールド120の「「コピー」、「貼り付け」、「切り取り」、「電子メール」、「WWW」、「ユーザ定義」コマンドという名称が付いた部分」(「複数のアイコン」に相当する。)は、座標値が定義されたドットパターンが印刷されたものであって、少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷されたものではない点。

ウ.判断
上記相違点について検討する。
引用文献2の上記記載、特に「なお、XY座標情報とコード番号情報からなるドットパターン部6を印刷物5の同一平面上に印刷することは勿論可能である。」の記載によれば、引用文献2には、ドットパターン部6と文字または図等からなる情報伝達部7(「複数のアイコン」に相当する。)を印刷物5に重ねて印刷したものにおいて、XY座標情報とコード番号情報からなるドットパターン部6(「座標値およびコード値が定義されたドットパターン」に相当する。)のXY座標情報とコード番号情報と情報伝達部7の内容とを関連付けること(「少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷された複数のアイコン」に相当する。)が示されている(以下、「引用文献2記載の技術」という。)。
引用発明と引用文献2記載の技術は、ともに、ドットパターンが印刷された印刷物において、ドットパターンで定義された情報と文字または図等で表示された領域の機能の内容とを関連付けるものであるから、引用発明において引用文献2記載の技術を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用文献2記載の技術を採用することによって、引用発明において、コマンドフィールド120の「「コピー」、「貼り付け」、「切り取り」、「電子メール」、「WWW」、「ユーザ定義」コマンドという名称が付いた部分」(「複数のアイコン」に相当する。)を、少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷されたものとすることに困難性は認められない。

そして、補正発明の奏する作用効果も、引用発明及び引用文献2記載の技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

したがって、補正発明は、引用発明および引用文献2記載の技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができない発明である。

エ.結論
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
以上のとおり、平成27年9月16日付けの手続補正は却下されたので、本願発明は、平成27年5月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項11に記載された以下とおりのものであると認められる。
「座標値および/またはコード値が定義されたドットパターンが印刷されたペーパーキーボードであって、
少なくともコード値が定義されたドットパターンが印刷された複数のアイコンを有するアイコン領域と、
少なくとも座標値が定義されたドットパターンが印刷されたマウスパッド領域と、を備えた、ペーパーキーボード。」
ここで、前記「第2 平成27年9月16日付の手続補正についての補正却下の決定」、[補正却下の決定の結論]、「(2)補正の適否」の欄で説明したとおり、「ペーパーキーボード」は「マウスパッド」の誤記であると認められるから「ペーパーキーボード」は「マウスパッド」と読み替えて判断する。

(2)引用文献
引用文献は、前記「第2 平成27年9月16日付の手続補正についての補正却下の決定」、[補正却下の決定の結論]、「(2)補正の適否」の「イ.引用文献」の欄で説明したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する補正発明が、上記「第2.補正却下の決定」で検討したとおり、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-15 
結審通知日 2016-04-19 
審決日 2016-05-09 
出願番号 特願2013-197533(P2013-197533)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩澤 如正安島 智也三森 雄介  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 和田 志郎
山田 正文
発明の名称 ドットパターンが印刷されたマウスパッド、マウスパッドシステム、ドットパターンが印刷されたペーパーキーボード、情報処理システム  

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