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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H03J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03J
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H03J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H03J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03J
管理番号 1316442
審判番号 不服2015-8781  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-12 
確定日 2016-06-22 
事件の表示 特願2013-536841「パッケージインダクタンス補償型調整可能キャパシタ回路」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月 3日国際公開、WO2012/058471、平成25年11月 7日国内公表、特表2013-541308〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年10月27日(パリ条約に基づく優先権主張2010年10月29日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年5月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


2.平成27年5月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年5月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、次のように補正された。

〈補正前〉
【請求項1】
パッケージインダクタンスを補償するための集積回路(IC)であって、
オンチップグラウンドノードに直接接続された第1のICグラウンドパッドと;
調整可能キャパシタ回路を介して前記オンチップグラウンドノードに接続された第2のICグラウンドパッドと、なお、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスは、前記ICの動作周波数において、パッケージインダクタンスと共振し、前記調整可能キャパシタ回路を調整する複数の制御信号のための1または複数の最も良い値を決定するために、アイドル期間の間周期的に較正プロセスが実行される;
を備える集積回路。

〈補正後〉
【請求項1】
パッケージインダクタンスを補償するための集積回路(IC)であって、
オンチップグラウンドノードに直接接続された第1のICグラウンドパッドと;
調整可能キャパシタ回路を介して前記オンチップグラウンドノードに接続された第2のICグラウンドパッドと、なお、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスは、前記ICの動作周波数において、パッケージインダクタンスと共振し、前記調整可能キャパシタ回路を調整する複数の制御信号のための1または複数の最も良い値を決定するために、アイドル期間の間周期的に較正プロセスが実行され、前記調整することは、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、最も高い可能な利得を生成する値に調整することと、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、前記調整可能キャパシタ回路を使用する送信/受信スイッチにおける最も高い可能なRFアイソレーションを生成する値に調整することとを含む;
を備える集積回路。

本件補正は、(2)で述べるとおり不明確ではあるが、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「調整可能キャパシタ回路を調整する」について「前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、最も高い可能な利得を生成する値に調整する」及び「前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、前記調整可能キャパシタ回路を使用する送信/受信スイッチにおける最も高い可能なRFアイソレーションを生成する値に調整する」との限定を付加するものであると認められ、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。

そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

〈特許請求の範囲の明確性について〉

(2)以下の(ア)から(オ)に述べるとおり、本願補正発明は不明確である。

(ア)請求項1には、「前記調整すること」との記載があるが、「調整すること」は当該記載の前には無いため、当該記載が何を指し示しているのか不明である。

(イ)請求項1には、「前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、最も高い可能な利得を生成する値に調整する」との記載があるが、「最も高い可能な利得」とは何の利得であるのかが不明である。

(ウ)請求項1には、「前記調整可能キャパシタ回路を使用する送信/受信スイッチ」との記載があるが、「送信/受信スイッチ」と請求項1の「集積回路」との関係が不明である。該「送信/受信スイッチ」は、該「集積回路」と同一のものであるのか否かが不明であり、仮に両者が異なるものであるとすれば、該「送信/受信スイッチ」が該「集積回路」の一部を形成するものであるのか、該「集積回路」が該「送信/受信スイッチ」の一部を形成するものであるのか、該「送信/受信スイッチ」と該「集積回路」とが完全に別体のものであるのか、あるいは、上記以外の関係のものであるのかが不明である。

(エ)請求項1には、「送信/受信スイッチにおける最も高い可能なRFアイソレーション」との記載があるが、該「RFアイソレーション」は、何と何との間のRFアイソレーションを意味しているのかが不明である。

(オ)請求項1には、「最も高い可能な利得」及び「最も高い可能なRFアイソレーション」との記載があるが、日本語として意味が不明である。「最も」との語は「高い」を修飾しているのか「可能な」を修飾しているのかが不明確であると共に、「可能な利得」及び「可能なRFアイソレーション」とは、誰にとってどのように可能であることを表現しているのかが不明である(主観的表現のように読める)。

(カ)請求項1の「調整する」という動作の動作主体が不明である。

上記(ア)から(オ)のとおり、本願補正発明は明確ではないため、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

進歩性について〉

(3)本願補正発明の解釈
上記(2)(ア)から(オ)のとおり本願補正発明は不明確であるが、発明の詳細な説明の第0032段落から第0035段落の記載に鑑み、「前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、最も高い可能な利得を生成する値に調整する」という動作は、集積回路がRF増幅器である場合に、該RF増幅器の利得を当該RF増幅器の動作周波数において最も高くなるように前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを調整するという較正プロセスでの動作であると解され、かつ、「前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、前記調整可能キャパシタ回路を使用する送信/受信スイッチにおける最も高い可能なRFアイソレーションを生成する値に調整する」という動作は、集積回路が送信/受信スイッチである場合に、該送信/受信スイッチの何らかのRFアイソレーションを該送信/受信スイッチの動作周波数において最も高くなるように前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを調整するという較正プロセスでの動作であると解される。
そして、上記の「調整する」という動作は、発明の詳細な説明の第0036段落の記載に鑑み、制御信号によって調整されることを意味しており、制御信号の生成主体については特に限定されないものであると解される。
以上を踏まえ、本願補正発明は、以下のとおりのものであると解される(下線は当審にて解釈しなおした部分を示す)。

【請求項1】
パッケージインダクタンスを補償するための集積回路(IC)であって、
オンチップグラウンドノードに直接接続された第1のICグラウンドパッドと;
調整可能キャパシタ回路を介して前記オンチップグラウンドノードに接続された第2のICグラウンドパッドと、なお、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスは、前記ICの動作周波数において、パッケージインダクタンスと共振し、前記調整可能キャパシタ回路を調整する複数の制御信号のための1または複数の最も良い値を決定するために、アイドル期間の間周期的に較正プロセスが実行され、上記較正プロセスは、前記集積回路がRF増幅器である場合には、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、該RF増幅器の動作周波数において最も高い利得を得られる値に調整する前記制御信号が決定され、前記集積回路が送信/受信スイッチである場合には、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、該送信/受信スイッチの動作周波数において最も高いRFアイソレーションを得られる値に調整する前記制御信号が決定されることとを含む;
を備える集積回路。

(4)引用文献
引用文献1.特開2002-43869号公報(拒絶査定で引用された文献1)
引用文献2.特表2006-238243号公報(拒絶査定で引用された周知文献)
引用文献3.特表2006-25425号公報(拒絶査定で引用された周知文献)
引用文献4.特開2006-121187号公報(拒絶査定で引用された周知文献5)

(4-1)引用文献1の記載
引用文献1には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(ア)第0006段落から第0008段落
【0006】上述したように、プラスチックパッケージは実装費、部材費ともに非常に安くできるため、携帯電話等に用いるのに適している。しかし、高周波集積回路をプラスチックパッケージに実装する場合、特にパワーアンプなど高利得、高効率が要求される回路をプラスチックパッケージに実装した場合に、ICチップ単体での特性に比較してプラスチックパッケージ全体としての特性が劣化するという問題点がある。
【0007】以下、図14を用いて上述した問題点を説明する。ICチップ102をワイヤによって接地リード線109に実装するために、ICチップ上の接地パッド108からモールド樹脂103外部への接地方向を見た場合、ワイヤ130の誘導性により周波数に比例して、接地インピーダンスZが増大して見えることになる。ここで、従来のICチップのブロック図を図15に示す。従来のICチップでは、信号増幅回路110の接地電極とICチップの接地端子113とは配線のみで接続されていた。
【0008】また、プラスチックパッケージには必ず対地容量が存在するため、ICチップの接地パッド108からパッケージ外部の接地点(例えば、プラスチックパッケージが実装されているプリント基板の接地点)へは容量的に結合されている。このため、ICチップ102から見た場合ワイヤ130の誘導性と対地容量によって並列共振的に作用するため、ICチップ内の増幅素子の使用周波数帯が高周波化するのに応じて、接地インピーダンスが増大して見えることになる。接地インピーダンスが増大することによりICチップ内の増幅素子の利得が下がり、出力パワー((出力パワー)=(入力パワー)×(利得))の劣化及び効率の劣化が生じる。パワーアンプでは出力パワーの劣化は大きな問題であり、対策が必要である。

(イ)第0024段落
【0024】(第1の実施形態)図1は本発明の第1実施形態に係る高周波集積回路のブロック図である。点線枠で囲んだ部分が半導体基板に形成された高周波集積回路(ICチップ)102である。ICチップ102の内部には信号増幅回路110がある。信号増幅回路110は、例えば、ICチップの半導体基板がGaAs基板の場合は、GaAs系ショットキーゲート電界効果トランジスタ(Metal-semiconductor FET;MESFET)やGaAs 系ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(heterojunction bipolartransistor; HBT)等の増幅素子を含んでいる。信号入力端子111、信号出力端子112、第1接地端子113及び第2接地端子114はそれぞれICチップ102上のボンディングパッド(以下、単にパッドと記す)である。信号増幅回路の接地電極と第1接地端子113とは配線のみで接続され、かつ、信号増幅回路110の接地電極と第2接地端子114とは容量結合回路115を介して交流的に短絡されている。

(ウ)第0035段落
【0035】本実施形態(図4)はICチップ内部に形成したキャパシタ(容量結合回路)115とボンディングワイヤ130のインダクタンスとが使用周波数fで直列共振となるようにキャパシタの値を設定しているため、接地インピーダンスは実質的に0となる。例えば、使用周波数fが2.0GHz、インダクタンスが1nHの時は、キャパシタは6.3pFと設定した。尚、対地容量の値は、使用周波数fから見て、非常に大きいため、対地容量200側には電流が流れにくくなる。従って、本実施形態では、使用周波数帯f以外の周波数帯を使わないので、対地容量200は無視でき、容量結合回路115とワイヤ130の直列回路とみなすことができる。

(エ)第0038段落
【0038】図6は本実施形態(図4)と従来例(図14)との実装時の増幅素子の利得特性および効率特性を示す図である。実線は本実施形態、破線は従来例を示す。測定は同一入出力条件で、同一増幅器ICを用いて行った。測定周波数は使用周波数帯fである2.0GHzである。入力パワーに対する出力パワーの比,すなわち利得は、従来例に比べて本実施形態の方が12dB程度良好である。これは増幅素子の使用周波数帯fにおける本実施形態及び従来例のトランジスタ素子抵抗を含めた接地インピーダンスの比によって決まる値であり、トランジスタ素子の寄生エミッタ抵抗を1Ω、従来例の2.0GHzにおける接地インピーダンスを3Ωとしたとき、ワイヤインダクタンスによる接地インピーダンスの増加分は12dB程度であることから、本実施形態によって接地インピーダンスが素子寄生抵抗分のみの最小値で済んでいることがわかる。

(オ)第0041段落
【0041】(第2の実施形態)図8は本発明の第2実施形態に係る高周波集積回路の概略ブロック図である。図1と同じ構成要素については、図1の説明を参照していただき、ここでは省略する。図1と異なる点は、図1の容量結合回路115が可変容量結合回路120に置き換わっている点と、この可変容量結合回路の容量値を変更するための調整端子121が備わっている点である。この調整端子はICチップ上でのボンディングパッドであり、ICチップ外部と電気的に接続可能である。また、前記可変容量結合回路が可変ダイオードである場合、前記調整端子は電圧端子である。

以上の引用文献1の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「高周波集積回路であって、
ICチップ102の内部に信号増幅回路110があり、
信号入力端子111、信号出力端子112、第1接地端子113及び第2接地端子114はそれぞれICチップ102上のボンディングパッド(以下、単にパッドと記す)であり、信号増幅回路の接地電極と第1接地端子113とは配線のみで接続され、かつ、信号増幅回路110の接地電極と第2接地端子114とは容量結合回路115を介して交流的に短絡されており、
ICチップ内部に形成したキャパシタ(容量結合回路)115とボンディングワイヤ130のインダクタンスとが使用周波数fで直列共振となるようにキャパシタの値を設定しているため、接地インピーダンスは実質的に0となり、
使用周波数帯f以外の周波数帯を使わないので、対地容量200は無視でき、容量結合回路115とワイヤ130の直列回路とみなすことができ、
入力パワーに対する出力パワーの比,すなわち利得は、従来例に比べて本実施形態の方が12dB程度良好であって、これは増幅素子の使用周波数帯fにおける本実施形態及び従来例のトランジスタ素子抵抗を含めた接地インピーダンスの比によって決まる値であり、トランジスタ素子の寄生エミッタ抵抗を1Ω、従来例の2.0GHzにおける接地インピーダンスを3Ωとしたとき、ワイヤインダクタンスによる接地インピーダンスの増加分は12dB程度であることから、本実施形態によって接地インピーダンスが素子寄生抵抗分のみの最小値で済んでおり、
容量結合回路115は可変容量結合回路120であり、この可変容量結合回路の容量値を変更するための調整端子121が備わっている、
高周波集積回路。」

(4-2)引用文献2の記載
引用文献2には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(カ)第0046段落
【0046】
このアイドルモード"Idle"中に、ベースバンドICからVCOのキャリブレーションを指示する所定のビットもしくはコードを含むコマンド"Word7"が供給されると、高周波IC内のRFVCOとTXVCOのキャリブレーション処理(周波数の測定と記憶)が行なわれる(図6タイミングt2)。

(4-3)引用文献3の記載
引用文献3には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(キ)第0010段落
【0010】
従来のRFトランシーバーの校正を実行するために異なる校正方法が利用されている。ある校正方法は、既に校正された局部送信器を使用して、テストベクトルをRF受信器へ送信し、そしてRFトランシーバーのデジタル基本帯域回路におけるデジタル信号処理(DSP)マシンを介してミスマッチ補償ファクタを計算する。これは、「局部校正」と称され、通常、システムパワーアッププロセス中又はアイドル時間中に(例えば、データがRF送信器からRF受信器へ送信される時間と時間との間に)実行される。補償ファクタは、RFトランシーバーのRFチップ内でミスマッチ補償が検出された場合にRFトランシーバーに適用することもできるし、又はデジタルドメインにおいてアナログ/デジタル変換(ADC)の後に直接適用することもできる。

(4-4)引用文献4の記載
引用文献4には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

(ク)第0001段落から第0002段落、第0033段落
【0001】
本発明は半導体切替回路に係わり、例えばSPnT(Single-Pole n-Throw)切替スイッチに好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機において1つのアンテナで高周波信号の送受信の切り替えを行うための切替スイッチとして、SP3Tスイッチが幅広く用いられている。
【0033】
ここで、上記回路を製品化する際には、接地端子GND_1、GND_2、GND_3はボンディングワイヤで外部端子に接続される。このボンディングワイヤには寄生インダクタンスが存在し、完全に接地された状態ではない。よって、これら3本の接地端子を集積回路内で束ねてしまうと、その経路を通じて高周波信号の漏れが生じ、端子RF_1、RF_2、RF_3の相互間におけるアイソレーション特性が劣化するおそれがある。

(ケ)第0045段落、第0046段落、第0048段落、第0050段落
【0045】
(2)実施の形態2
本発明の実施の形態2によるSP3Tスイッチ回路の構成を図3に示す。
【0046】
本実施の形態2は上記実施の形態1と比較し、端子RF_COMとスルーFET Q_T1?Q_T3のそれぞれの一端との間に、DC成分を除去するための容量C1が接続され、さらに端子RF_1?RF_3、GND_1?GND_3と、それぞれ接続されているシャントFET Q_S1B?Q_S3Bとの間に、DC成分を除去するための容量C2?C7が接続されている点で相違する。
【0048】
尚、このようなDC成分除去用の容量は必要であるため、上記実施の形態1では集積回路の外部に容量を設けることになる。これに対し、本実施の形態2では容量C1?C7が回路内に設けられているので、外付けの必要が無く、装置面積の縮小及びコスト低減に寄与することができる。
【0050】
これにより、容量の値を、ボンディングワイヤ等の外囲器の直列寄生インダクタンスと所望の周波数で直列共振する値に高い精度で調整することが可能となり、SP3Tスイッチとしての特性を十分に引き出すことが可能となる。

(5)対比
本願補正発明と引用発明1とを以下で対比する。
引用発明1における「ボンディングワイヤ130のインダクタンス」は、高周波集積回路をプラスチックパッケージに実装する場合に特性を劣化させる要因である(摘記事項(ア)を参照)から、本願補正発明の「パッケージインダクタンス」に相当する。
引用発明1における「高周波集積回路」は、ボンディングワイヤのインダクタンス成分による特性の劣化を回避するために可変容量結合回路を設けたものであるから、本願補正発明の「パッケージインダクタンスを補償するための集積回路(IC)」に相当する。
引用発明1の「信号増幅回路の接地電極」及び「信号増幅回路110の接地電極」は、本願補正発明の「オンチップグラウンドノード」に相当する。
引用発明1の「第1接地端子113」は、「信号増幅回路の接地電極と第1接地端子113とは配線のみで接続され」ているのであるから、本願補正発明の「オンチップグラウンドノードに直接接続された第1のICグラウンドパッド」に相当する。
引用発明1の「可変容量結合回路120」は、本願補正発明の「調整可能キャパシタ回路」に相当する。
引用発明1の「第2接地端子114」は、「信号増幅回路110の接地電極と第2接地端子114とは容量結合回路115を介して交流的に短絡されて」いるのであるから、本願補正発明の「調整可能キャパシタ回路を介して前記オンチップグラウンドノードに接続された第2のICグラウンドパッド」に相当する。
引用発明1の「ICチップ内部に形成したキャパシタ(容量結合回路)115とボンディングワイヤ130のインダクタンスとが使用周波数fで直列共振となるようにキャパシタの値を設定している」ことは、本願補正発明の「調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスは、前記ICの動作周波数において、パッケージインダクタンスと共振」することに相当する。
そして、引用発明1において、可変容量結合回路120のキャパシタの値を上記のように設定することは、当該設定によって増幅素子の利得が従来例に比べて「12dB程度良好」となり、「これは増幅素子の使用周波数帯fにおける本実施形態及び従来例のトランジスタ素子抵抗を含めた接地インピーダンスの比によって決まる値であり、トランジスタ素子の寄生エミッタ抵抗を1Ω、従来例の2.0GHzにおける接地インピーダンスを3Ωとしたとき、ワイヤインダクタンスによる接地インピーダンスの増加分は12dB程度であることから、本実施形態によって接地インピーダンスが素子寄生抵抗分のみの最小値で済ん」だ結果であるから、前記キャパシタの値の調整のみで得られる最大の利得を得たものと認められるので、本願補正発明の「前記調整可能キャパシタ回路を調整する複数の制御信号のための1または複数の最も良い値を決定する」こと、及び、「前記集積回路がRF増幅器である場合には、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、該RF増幅器の動作周波数において最も高い利得を得られる値に調整する前記制御信号が決定される」ことに相当する。
すると、本願補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
「パッケージインダクタンスを補償するための集積回路(IC)であって、
オンチップグラウンドノードに直接接続された第1のICグラウンドパッドと;
調整可能キャパシタ回路を介して前記オンチップグラウンドノードに接続された第2のICグラウンドパッドと、なお、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスは、前記ICの動作周波数において、パッケージインダクタンスと共振し、前記調整可能キャパシタ回路を調整する複数の制御信号のための1または複数の最も良い値が決定され、前記集積回路がRF増幅器である場合には、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、該RF増幅器の動作周波数において最も高い利得を得られる値に調整する前記制御信号が決定されることとを含む;
を備える集積回路。」

〈相違点1〉
本願補正発明は、最良の制御信号を決定するために、「アイドル期間の間周期的に較正プロセスが実行」されるのに対し、引用発明1の制御信号はいつ決定されるのか不明である点。

〈相違点2〉
本願補正発明は、「前記集積回路が送信/受信スイッチである場合には、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、該送信/受信スイッチの動作周波数において最も高いRFアイソレーションを得られる値に調整する前記制御信号が決定されることとを含む」のに対し、引用発明1では集積回路が送信/受信スイッチである場合が想定されていない点。

(6)判断

(6-1)相違点1について
アイドル期間中にRF回路の較正を行うことは、周知技術である(摘記事項(カ)及び(キ)を参照)。加えて、回路素子には経年劣化による特性の変化があるため、較正作業を定期的に行わなければならないことは、技術常識である。
上記周知技術及び技術常識に鑑みれば、引用発明1の高周波集積回路において、最良のキャパシタの値を設定するような制御信号を常に得られるようにするために、較正プロセスをアイドル期間の間周期的に実行することは、当業者が容易になし得ることである。

(6-2)相違点2について
高周波信号の送受信の切り替えを行うためのSP3Tスイッチにおいて、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの存在により、高周波入出力端子相互間のアイソレーションが劣化すること(摘記事項(ク)を参照)、及び、その解決方法として、当該スイッチをなす半導体集積回路のグランドとなるべき点と接地端子との間に容量(C5からC7)を挿入し、容量の値をボンディングワイヤ等の外囲器の直列寄生インダクタンスと所望の周波数で直列共振する値に調整すること(摘記事項(ケ)を参照)は、周知技術である。
上記周知技術に鑑みれば、引用発明1の高周波集積回路において、当該集積回路が送信/受信スイッチである場合に、当該スイッチのRFアイソレーションを最良にするようなキャパシタの値が得られるように較正することは、当業者が容易になし得ることである。

(6-3)効果について
また、本願補正発明の構成によって生じる効果も、上記引用発明1、引用文献2から4に記載の周知技術及び技術常識から当業者が予測し得る範囲内のもので、格別顕著であるとはいえない。

(6-4)審判請求書における主張について
審判請求人は、審判請求書にて、「本願独立請求項1に係る発明は、審判請求時に補正された請求項1に記載されている「前記調整可能キャパシタ回路を調整する複数の制御信号のための1または複数の最も良い値を決定するために、アイドル期間の間周期的に較正プロセスが実行され、前記調整することは、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、最も高い可能な利得を生成する値に調整することと、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、前記調整可能キャパシタ回路を使用する送信/受信スイッチにおける最も高い可能なRFアイソレーションを生成する値に調整することとを含む」構成(A)を具備することにより、パッケージインダクタンスを補償している。」とした上で、「本願独立請求項1に係る発明は、請求項1に記載されている前記構成(A)を有していない引例1乃至13に記載の発明及び慣用技術から、それら単独でもまた組み合わせても、容易に考えられるものではない。」として、本願発明の新規性及び進歩性を主張している。
しかしながら、上述の「(6-1)相違点1について」及び「(6-2)相違点2について」のとおりであるから、審判請求人の上記主張は採用できない。

(6-5)
上記(6-1)から(6-4)のとおり、本願補正発明は、引用発明1、引用文献2から4に記載の周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(7)むすび
以上の(2)及び(6)のとおり、本願補正発明は明確ではなく、かつ、本願補正発明の不明確部分を実施例に則して解釈し直したとしても、本願補正発明は引用発明1及び周知技術から容易に発明をすることができたものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成27年5月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年8月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
パッケージインダクタンスを補償するための集積回路(IC)であって、
オンチップグラウンドノードに直接接続された第1のICグラウンドパッドと;
調整可能キャパシタ回路を介して前記オンチップグラウンドノードに接続された第2のICグラウンドパッドと、なお、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスは、前記ICの動作周波数において、パッケージインダクタンスと共振し、前記調整可能キャパシタ回路を調整する複数の制御信号のための1または複数の最も良い値を決定するために、アイドル期間の間周期的に較正プロセスが実行される;
を備える集積回路。

(1)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された文献、及びその記載事項は、前記「2.(4)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「較正プロセス」の限定事項である「上記較正プロセスは、前記集積回路がRF増幅器である場合には、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、該RF増幅器の動作周波数において最も高い利得を得られる値に調整する前記制御信号が決定され、前記集積回路が送信/受信スイッチである場合には、前記調整可能キャパシタ回路のキャパシタンスを、該送信/受信スイッチの動作周波数において最も高いRFアイソレーションを得られる値に調整する前記制御信号が決定されることとを含む」との構成を省いたものであって、前記2.(2)で指摘した明確性の問題を含んでいない。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(6)に記載したとおり、上記引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-21 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-09 
出願番号 特願2013-536841(P2013-536841)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H03J)
P 1 8・ 56- Z (H03J)
P 1 8・ 572- Z (H03J)
P 1 8・ 121- Z (H03J)
P 1 8・ 575- Z (H03J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 博幸  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 丸山 高政
水野 恵雄
発明の名称 パッケージインダクタンス補償型調整可能キャパシタ回路  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 奥村 元宏  
代理人 福原 淑弘  
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