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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G |
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管理番号 | 1316574 |
審判番号 | 不服2014-16785 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-08-25 |
確定日 | 2016-06-29 |
事件の表示 | 特願2010-539253「携帯通信端末、基地局、警報システム、および携帯通信端末の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月27日国際公開、WO2010/058828〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件に係る出願(以下,「本願」と言う。)は, 2009年(平成21年)11月16日(優先権主張2008年11月21日)を国際出願日とする出願であって, 平成26年5月27日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成26年6月3日), これに対し,平成26年8月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され, 当審により,平成27年5月26日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年6月2日), これに対し,平成27年8月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され, 当審により,平成27年9月17日付けで最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年9月24日), これに対し,平成27年12月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2.平成27年12月22日付けの手続補正書についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年12月22日付けの手続補正(以下,「本件補正」と言う。)を却下する。 [理由I] 1.補正の内容 (1)本件補正前の特許請求の範囲及び明細書の段落0004の記載は,以下のとおりである。 「【請求項1】 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、を備え、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記設定手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除する ことを特徴とする携帯通信端末。 【請求項2】 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する受信手段と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、を備え、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記受信手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止する ことを特徴とする携帯通信端末。 【請求項3】 前記特定の領域は危険エリアであり、 前記特定の制御信号は、前記危険エリアの情報が含まれる特定の制御信号であることを特徴とする請求項2に記載の携帯通信端末。 【請求項4】 前記所定の無線信号は、車の状態又は運転手の状態を検出する検出手段からの検出情報を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項5】 前記車の状態は、車速、進行方向、位置情報、アクセルの状態、ブレーキの状態、車の大きさのうち、少なくともひとつを含むことを特徴とする請求項4に記載の携帯通信端末。 【請求項6】 前記車載機器は、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車の何れかに搭載されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項7】 前記車載機器は、カーナビゲーションシステム、オーディオシステムの何れかであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項8】 自機の位置を、複数の基地局からのRSCP及び/又はRSSIに基づき検出する位置検出手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項9】 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する判別手段と、 前記判別手段により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信されるビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する送信手段と、 を備え、 前記送信手段は、前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、 前記特定の制御信号の送信を停止することを特徴とする基地局。 【請求項10】 前記通信エリアには危険エリアが登録されており、 前記特定の制御信号は、前記危険エリアの情報が含まれる特定の制御信号であることを特徴とする請求項9に記載の基地局。 【請求項11】 前記携帯通信端末が前記ビーコン受信可能状態になると、前記携帯通信端末及び、前記所定の通信エリア内又は前記危険エリア内の他の携帯通信端末を監視し、前記携帯通信端末に所定以上の速度で近づく前記他の携帯通信端末を検出すると、この検出した携帯通信端末及び前記携帯通信端末の双方に警報を発する監視装置を更に備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の基地局。 【請求項12】 請求項1乃至8の何れかに記載の携帯通信端末と、 この携帯通信端末と無線信号を送受信する請求項9乃至11の何れかに記載の基地局とを備えることを特徴とする警報システム。 【請求項13】 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨 を報知する工程と、を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除する工程と、 を含むことを特徴とする携帯通信端末の制御方法。 【請求項14】 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する工程と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する工程と、を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止する工程と、 を含むことを特徴とする携帯通信端末の制御方法。 【請求項15】 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する工程と、 前記判別する工程により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信されるビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する工程と、 前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の送信を停止する工程と、 を含むことを特徴とする基地局の制御方法。」 「【0004】 本発明は上記課題を解決するためのものであって、本発明の携帯通信端末は、 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、を備え、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記設定手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除することを特徴とする。 また、本発明の携帯通信端末は、 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する受信手段と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、を備え、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記受信手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止することを特徴とする。 また、本発明の基地局は、 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する判別手段と、 前記判別手段により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信されるビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する送信手段と、 を備え、 前記送信手段は、前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、 前記特定の制御信号の送信を停止することを特徴とする。 更に、本発明の携帯通信端末の制御方法は、 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する工程と、を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除する工程と、 を含むことを特徴とする。 また、本発明の携帯通信端末の制御方法は、 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する工程と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する工程と、を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信されるビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止する工程と、 を含むことを特徴とする。 更に、本発明の基地局の制御方法は、 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する工程と、 前記判別する工程により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信されるビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する工程と、 前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の送信を停止する工程と、 を含むことを特徴とする。」 (2)これに対し,本件補正により,特許請求の範囲及び明細書の段落0004の記載は,以下のように補正された。 「【請求項1】 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、 自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する ことを特徴とする携帯通信端末。 【請求項2】 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する受信手段と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、 自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する ことを特徴とする携帯通信端末。 【請求項3】 前記特定の領域は危険エリアであり、 前記特定の制御信号は、前記危険エリアの情報が含まれる特定の制御信号であることを特徴とする請求項2に記載の携帯通信端末。 【請求項4】 前記所定の無線信号は、車の状態又は運転手の状態を検出する検出手段からの検出情報を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項5】 前記車の状態は、車速、進行方向、位置情報、アクセルの状態、ブレーキの状態、車の大きさのうち、少なくともひとつを含むことを特徴とする請求項4に記載の携帯通信端末。 【請求項6】 前記車載機器は、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車の何れかに搭載されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項7】 前記車載機器は、カーナビゲーションシステム、オーディオシステムの何れかであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項8】 自機の位置を、複数の基地局からのRSCP及び/又はRSSIに基づき検出する位置検出手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の携帯通信端末。 【請求項9】 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する判別手段と、 前記判別手段により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信される電波ビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する送信手段と、自局の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた基地局であって、 前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別することを特徴とする基地局。 【請求項10】 前記通信エリアには危険エリアが登録されており、 前記特定の制御信号は、前記危険エリアの情報が含まれる特定の制御信号であることを特徴とする請求項9に記載の基地局。 【請求項11】 前記携帯通信端末が前記電波ビーコン受信可能状態になると、前記携帯通信端末及び、前記所定の通信エリア内又は前記危険エリア内の他の携帯通信端末を監視し、前記携帯通信端末に所定以上の速度で近づく前記他の携帯通信端末を検出すると、この検出した携帯通信端末及び前記携帯通信端末の双方に警報を発する監視装置を更に備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の基地局。 【請求項12】 請求項1乃至8の何れかに記載の携帯通信端末と、 この携帯通信端末と無線信号を送受信する請求項9乃至11の何れかに記載の基地局とを備えることを特徴とする警報システム。 【請求項13】 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する工程と、 自端末の全体の動作を制御する工程と、を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する工程と、 を含むことを特徴とする携帯通信端末の制御方法。 【請求項14】 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する工程と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する工程と、 自端末の全体の動作を制御する工程と、 を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する工程と、 を含むことを特徴とする携帯通信端末の制御方法。 【請求項15】 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する工程と、 前記判別する工程により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信される電波ビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する工程と、自局の全体の動作を制御する工程と、を含む基地局の制御方法であって、 前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する工程と、 を含むことを特徴とする基地局の制御方法。」 「【0004】 本発明は上記課題を解決するためのものであって、本発明の携帯通信端末は、 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する ことを特徴とする。 また、本発明の携帯通信端末は、 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する受信手段と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する設定手段と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する報知手段と、 自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 前記報知手段は、前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知し、 前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する ことを特徴とする。 また、本発明の基地局は、 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する判別手段と、 前記判別手段により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信される電波ビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する送信手段と、自局の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた基地局であって、 前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別することを特徴とする。 更に、本発明の携帯通信端末の制御方法は、 所定の通信エリアの外から内に移動し、移動先の基地局からの特定の制御信号を受信すると、所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する工程と、 自端末の全体の動作を制御する工程と、を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する工程と、 を含むことを特徴とする。 また、本発明の携帯通信端末の制御方法は、 所定の通信エリアの外から内に移動した際に、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信する工程と、 前記特定の領域に移動したときに所定の無線信号を受信可能状態に設定する工程と、 この受信可能状態で前記所定の無線信号を受信すると、自機のユーザにその旨を報知する工程と、 自端末の全体の動作を制御する工程と、を含む携帯通信端末の制御方法であって、 前記所定の無線信号は、無線通信により、車載機器から送信される電波ビーコンであって、 更に、 前記車載機器を搭載した車両の接近を、前記自機のユーザに対して報知する工程と、 前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する工程と、 を含むことを特徴とする。 更に、本発明の基地局の制御方法は、 所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別する工程と、 前記判別する工程により、前記携帯通信端末が移動したと判別されると、前記携帯通信端末を、移動先の通信エリアに含まれる特定の領域に移動したときに車載機器から送信される電波ビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する工程と、自局の全体の動作を制御する工程と、を含む基地局の制御方法であって、 前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する工程と、 を含むことを特徴とする。」 2.新規事項について (1)本件補正後の請求項1には,「自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、」「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」と記載されているから,本件補正後の請求項1に記載された携帯通信端末の制御手段において,報知が終了か否かを判別し,報知が終了しないと判別すると,移動先の基地局からの特定の制御信号を受信したか否かを判別することとなる。 さらに,本件補正後の請求項2には,「自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、」「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」と記載されているから,本件補正後の請求項2に記載された携帯通信端末の制御手段において,報知が終了か否かを判別し,報知が終了しないと判別すると,移動先の基地局からの特定の制御信号を受信したか否かを判別することとなる。 さらに,本件補正後の請求項9には,「自局の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた基地局であって、」「前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」と記載されているから,本件補正後の請求項9に記載された基地局の制御手段において,特定の制御信号の送信が終了か否かを判別し,特定の制御信号の送信が終了しないとき、所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別することとなる。 そこで,当該補正が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否かを検討する。 (2)当初明細書等には,携帯通信端末の制御器における動作手順及び基地局の制御器における動作手順に関し,以下の事項が記載されている。 (ア)「このような携帯通信端末101は、図2に示すフローチャートのように動作する。 最初に、ステップ101(以下、「ステップ」を「S」と記す。)において、携帯通信端末101の図示しない制御器は、移動先の基地局106から特定の制御信号を受信したか否かを判別する。携帯通信端末101が通信エリア104内にとどまっているため、特定の制御信号を受信していない場合(S101でNO)、制御S101を繰り返す。………次に、S103で、制御器は、所定の無線信号を受信したか否かを判別する。所定の無線信号を受信したと制御器が判別すると(S103でYES)、報知手段103が無線信号の受信を、自機(携帯通信端末101)のユーザに報知する(S104)。そして、制御器は、S105で終了か否かを判別し、終了でなければ(S105でNO)、制御がS101に移行する。」(明細書第3頁第25?37行目) (イ)「このような携帯通信端末201は、図4に示すフローチャートのように動作する。 最初に、S201において、図示しない制御器は、移動先の基地局203から特定の制御信号を受信したか否かを判別する。携帯通信端末201が通信エリア104内にとどまっていて、特定の制御信号を受信手段202で受信していない場合(S201でNO)、制御はS201を繰り返す。………次に、S204で、ビーコンを受信したか否かを制御器は判別する。受信手段202がビーコンを受信したと制御器が判別すると(S204でYES)、報知手段103がビーコン受信を、自機(携帯通信端末201)のユーザに報知する(S205)。次に、制御器は、S105で終了か否かを判別し、終了でなければ(S105でNO)、制御がS201に移行する。」(明細書第4頁第14?29行目) (ウ)「このような基地局106は、図6に示すフローチャートのように動作する。 最初にS301で、図示しない基地局106の制御器は、通信エリア104から、危険エリアが登録されている通信エリア105に、携帯通信端末101が移動したか否かを判別する。この判別は、携帯通信端末101が自局(基地局106)に位置登録されているか否かで判別する。 図示しない制御器は、携帯通信端末101が、通信エリア105に移動したと判別すると(S301でYES)、送信手段301が、携帯通信端末101をビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する(S302)。次に、制御器は、S303で終了か否かを判別し、終了でなければ(S303でNO)、制御がS301に移行する。」(明細書第4頁第44行目?第5頁第2行目) (エ)「このような基地局203は、図8に示すフローチャートのように動作する。 最初にS301で、通信エリア104から、危険エリアが登録されている通信エリア105に、ユーザの移動に伴って携帯通信端末101が移動したか否かを判別する。この判別は、携帯通信端末101が自局(基地局203)に位置登録されているか否かで判別する。 図示しない制御器は、ユーザの移動に伴って携帯通信端末201が通信エリア105に移動したと判別すると(S301でYES)、送信手段301Aが、特定の制御信号を送信する(S401)。この制御信号を受信した携帯通信端末201が、ユーザの移動に伴って危険エリア204に移動すると、携帯通信端末201はビーコン受信可能状態に設定される。次に、制御器は、S303で終了か否かを判別し、終了でなければ(S303でNO)、制御がS301に移行する。」(明細書第5頁第16?26行目) (オ)図2,4には,「S105」として示されるひし形のブロック内に「終了?」と図示されている。 (カ)図6,8には,「S303」として示されるひし形のブロック内に「終了?」と図示されている。 (3)当初明細書等の,携帯通信端末の制御器における動作手順に関する記載事項は,上記(ア),(イ),(オ)のとおりであり,携帯通信端末の制御器において,終了か否かを判別すること(S105)が記載されてはいるが,この終了が報知の終了であること,すなわち,携帯通信端末の制御器において,報知が終了か否かを判別することは,記載されていない。 また,当初明細書等において,仮にS105の終了を報知の終了とした場合,S105で報知が終了しない,すなわち,報知が終了せずに継続していると判別されると,S105からS101(又はS201)に移行し,S101(又はS201)に移行した時点で通信エリア外であれば,基地局から制御信号を受信したと判別されるまでS101(又はS201)を繰り返し,このS101(又はS201)を繰り返している間は報知が継続しており,通信エリア,危険険エリア及び車両の接近と関係なくユーザに報知し続けることになり,「所定のエリアにおいて、所定のエリアに対応した状況をユーザに報知できる携帯通信端末、基地局、警報システム、および携帯通信端末の制御方法を提供することにある。」(明細書段落0003)という本件発明の課題を解決できない。そうすると,S105の終了を報知の終了とすることは,本件発明の課題を解決できなくするものであるから,当初明細書等の記載から自明な事項とはいえない。 したがって,携帯通信端末の制御器において,報知が終了か否かを判別することを含む,「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」こと(本件補正後の請求項1)及び「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」こと(本件補正後の請求項2)は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものではなく,本件補正による請求項1及び2に対する補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 また,本件補正後の, 請求項13に記載された「前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」, 請求項14に記載された「前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」, 明細書の段落0004に記載された「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」,「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」,「前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」,「前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」 ことも,当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等の記載から自明な事項ともいえないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものではなく,本件補正による請求項13,14及び明細書の段落0004の記載に対する補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 (4)当初明細書等の,基地局の制御器における動作手順に関する記載事項は,上記(ウ),(エ),(カ)のとおりであり,基地局の制御器において,終了か否かを判別すること(S303)が記載されてはいるが,この終了が特定の制御信号の送信の終了であること,すなわち,基地局の制御器において,特定の制御信号の送信が終了か否かを判別することは,記載されていない。 また,当初明細書等において,仮にS303の終了を特定の制御信号の送信の終了とした場合,S303で特定の制御信号の送信が終了しない,すなわち,特定の制御信号の送信が終了せずに当該送信が継続していると判別されると,S303からS301に移行し,S301に移行した時点でも特定の制御信号の送信が継続しており,S301における,通信エリアに携帯通信端末が移動したか否かの判別結果とは関係なく,特定の制御信号が送信されることになる。 一方,当初明細書等の記載事項である上記(ウ)の「携帯通信端末101が、通信エリア105に移動したと判別すると(S301でYES)、送信手段301が、携帯通信端末101をビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する(S302)」こと及び上記(エ)の「ユーザの移動に伴って携帯通信端末201が通信エリア105に移動したと判別すると(S301でYES)、送信手段301Aが、特定の制御信号を送信する(S401)」ことは,S301に移行した時点では特定の制御信号が送信されていないことを前提に,S301の条件分岐により,特定の制御信号の送信を制御するものである。 そうすると,S303の終了を特定の制御信号の送信の終了とすることは,当初明細書等の記載と整合するものではないから,当初明細書等に記載されていないし,自明のことでもない。 したがって,基地局の制御器において,特定の制御信号の送信が終了か否かを判別することを含む,「前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」こと(本件補正後の請求項9)は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものではなく,本件補正による請求項9に対する補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 また,本件補正後の, 請求項15に記載された「前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」, 明細書の段落0004に記載された「前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」,「前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」 ことも,当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等の記載から自明な事項ともいえないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものではなく,本件補正による請求項15及び明細書の段落0004の記載に対する補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 3.補正の目的について (1)本件補正が,特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。 特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は,第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが求められ,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。 本件補正前後の請求項数は15であり,本件補正前後の請求項3?8,10?12は従属項であってその記載は同じであり,本件補正前後の請求項1,2,9,13,14,15は何れも独立項であるから,本件補正前の請求項1は本件補正後の請求項1に,一応対応する。 (2)本件補正前の請求項1は,携帯通信端末が制御手段を備えることを明示しておらず,仮に携帯通信端末が制御手段を備えることが自明であったとしても,その制御手段が,報知状態を監視する機能や制御信号の受信状態を監視する機能を有しているとまではいえず,さらに,「設定手段」又は「報知手段」を限定しても,「前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」ことはないものであるが,本件補正後の請求項1は,携帯通信端末が「自端末の全体の動作を制御する制御手段」を備えることが追加され,「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」ことが追加されるものであり,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。 また,本件補正前の請求項1は,「前記設定手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除する」構成を有するものであるが,本件補正後の請求項1は,当該構成,すなわち,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項の一部,が削除されており,請求項1の記載が拡張されているといえる。 そうすると,本件補正による請求項1に対する補正は,特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 同様に本件補正による請求項13に対する補正も,本件補正前の請求項13に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず,本件補正前の請求項13に記載された発明を特定するために必要な事項の一部を削除するものであるから,特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 (3)本件補正前の請求項2は,携帯通信端末が制御手段を備えることを明示しておらず,仮に携帯通信端末が制御手段を備えることが自明であったとしても,その制御手段が,報知状態を監視する機能や制御信号の受信状態を監視する機能を有しているとまではいえず,さらに,「受信手段」,「設定手段」又は「報知手段」を限定しても,「前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」ことはないものであるが,本件補正後の請求項2は,携帯通信端末が「自端末の全体の動作を制御する制御手段」を備えることが追加され,「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」ことが追加されるものであり,本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。 また,本件補正前の請求項2は,「前記受信手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止する」構成を有するものであるが,本件補正後の請求項2は,当該構成,すなわち,本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項の一部,が削除されており,請求項2の記載が拡張されているといえる。 そうすると,本件補正による請求項2に対する補正は,特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 同様に本件補正による請求項14に対する補正も,本件補正前の請求項14に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず,本件補正前の請求項14に記載された発明を特定するために必要な事項の一部を削除するものであるから,特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 (4)本件補正前の請求項9は,基地局が制御手段を備えることを明示しておらず,仮に基地局が制御手段を備えることが自明であったとしても,その制御手段が,制御信号の送信状態を監視する機能や携帯通信端末の移動状態を監視する機能を有しているとまではいえず,さらに,「判別手段」又は「送信手段」を限定しても,「前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」ことはないものであるが,本件補正後の請求項9は,基地局が「自局の全体の動作を制御する制御手段」を備えることが追加され,「前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」ことが追加されるものであり,本件補正前の請求項9に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当しない。 また,本件補正前の請求項9は,「前記送信手段は、前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の送信を停止する」構成を有するものであるが,本件補正後の請求項9は,当該構成,すなわち,本件補正前の請求項9に記載された発明を特定するために必要な事項の一部,が削除されており,請求項9の記載が拡張されているといえる。 そうすると,本件補正による請求項9に対する補正は,特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 同様に本件補正による請求項15に対する補正も,本件補正前の請求項15に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものには該当せず,本件補正前の請求項15に記載された発明を特定するために必要な事項の一部を削除するものであるから,特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 (5)したがって,本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。 また,本件補正が,請求項の削除,誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。 4.むすび したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,また,同法第17条の2第5項の規定に違反するものでもあるから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [理由II] 上記のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,また,同法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが,仮に本件補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして,本件補正後の請求項1?15に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討しておく。 1.特許法第36条第6項第1号の要件について (1)本件補正後の請求項1には,「自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、」「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」と記載されているから,本件補正後の請求項1に記載された携帯通信端末の制御手段において,報知が終了か否かを判別し,報知が終了しないと判別すると,移動先の基地局からの特定の制御信号を受信したか否かを判別することとなる。 発明の詳細な説明には,携帯通信端末の制御器において,終了か否かを判別すること(S105)は記載されているが,この終了が報知の終了であること,すなわち,携帯通信端末の制御器において,報知が終了か否かを判別することは,記載されておらず,仮にS105の終了を報知の終了とすると,「[理由I]2.(3)」で上述したとおり本件発明の課題を解決できなくなるから,携帯通信端末において,「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の基地局からの前記特定の制御信号を受信したか否かを判別する」ものは,発明の詳細な説明に記載されたものでなない。 また,本件補正後の請求項13も同様である。 (2)本件補正後の請求項2には,「自端末の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた携帯通信端末であって、」「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」と記載されているから,本件補正後の請求項2に記載された携帯通信端末の制御手段において,報知が終了か否かを判別し,報知が終了しないと判別すると,移動先の基地局からの特定の制御信号を受信したか否かを判別することとなる。 発明の詳細な説明には,携帯通信端末の制御器において,終了か否かを判別すること(S105)は記載されているが,この終了が報知の終了であること,すなわち,携帯通信端末の制御器において,報知が終了か否かを判別することは,記載されておらず,仮にS105の終了を報知の終了とすると,「[理由I]2.(3)」で上述したとおり本件発明の課題を解決できなくなるから,携帯通信端末において,「前記制御手段は、前記報知が終了しないとき、前記移動先の通信エリアに含まれる前記特定の領域を示す特定の制御信号を前記移動先の基地局から受信したか否かを判別する」ものは,発明の詳細な説明に記載されたものでなない。 また,本件補正後の請求項14も同様である。 (3)本件補正後の請求項9には,「自局の全体の動作を制御する制御手段と、を備えた基地局であって、」「前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」と記載されているから,本件補正後の請求項9に記載された基地局の制御手段において,特定の制御信号の送信が終了か否かを判別し,特定の制御信号の送信が終了しないとき、所定の通信エリアの外から内に携帯通信端末が移動したか否かを判別することとなる。 発明の詳細な説明には,基地局の制御器において,終了か否かを判別すること(S303)は記載されているが,この終了が特定の制御信号の送信の終了であること,すなわち,基地局の制御器において,特定の制御信号の送信が終了か否かを判別することは,記載されておらず,仮にS303の終了を特定の制御信号の送信の終了とすると,「[理由I]2.(4)」で上述したとおり,発明の詳細な説明に記載される「携帯通信端末101が、通信エリア105に移動したと判別すると(S301でYES)、送信手段301が、携帯通信端末101をビーコン受信可能状態に設定する特定の制御信号を送信する(S302)」こと及び「ユーザの移動に伴って携帯通信端末201が通信エリア105に移動したと判別すると(S301でYES)、送信手段301Aが、特定の制御信号を送信する(S401)」ことと整合しなくなるから,基地局において,「前記制御手段は、前記特定の制御信号の送信が終了しないとき、前記所定の通信エリアの外から内に前記携帯通信端末が移動したか否かを判別する」ものは,発明の詳細な説明に記載されたものでなない。 また,本件補正後の請求項15も同様である。 (4)したがって,本件補正後の請求項1,2,9,13,14,15の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしておらず,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 2.むすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で準用する同法第53条の規定により却下されるべきものである。 第3.明細書及び特許請求の範囲の記載について 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?15は,「第2.[理由I]1.(1)」に本件補正前の請求項1?15(平成27年8月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?15)として記載されるとおりのものである。 1.当審の最後の拒絶の理由 当審で平成27年9月17日付けで通知した最後の拒絶の理由1,2の概要は以下のとおりである。 「理由1 平成27年8月28日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 理由2 本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項1号、第6項1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ●理由1について 請求項1において「前記設定手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除すること」と記載する補正がなされ、請求項13において「前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除する工程」と記載する補正がなされた。これらの補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。 請求人は上記補正について意見書において以下のように主張している。 「この補正は、当初明細書等の第3ページ第20行-22行目における、「設定手段102は、所定の通信エリア105に携帯通信端末101が移動し、移動先の基地局106からの特定の制御信号を受信すると、携帯通信端末101を、所定の無線信号の受信可能状態に設定する。」の記載、第28行-29行目における、「携帯通信端末101が通信エリア104内にとどまっているため、特定の制御信号を受信していない場合(S101でNO)、制御S101を繰り返す。」の記載、第35行-37行目における、「そして、制御器は、S105で終了か否かを判別し、終了でなければ(S105でNO)、制御がS101に移行する。」の記載、及び図2の記載に基づくものであり、何ら新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであります(特許法第17条の2第3項)。」 しかし、請求人が意見書で指摘する箇所には、設定手段が携帯通信端末を所定の無線信号の受信可能状態に設定するタイミングに関する記載は存在するものの、設定手段が受信可能状態を解除するタイミングを特定する記載はない。 なお、図2及び当初明細書等の関連箇所にはS105で「終了」であると判別された場合に「エンド」に移行することが記載されている。「エンド」状態となったときに受信可能状態が解除される可能性があるから、図2には受信可能状態を解除するタイミングについて記載している可能性がある。しかし、仮にそうであったとしても、エンド状態とする動作が設定手段により実施されているとは認められず、また、「終了」であることと「所定の通信エリアの内から外へ移動すること」が同じことを意味するとも認められない。すなわち、図2及び当初明細書等の関連箇所にも「前記設定手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除すること」が記載されているとは認められない。 そして、当初明細書等の請求人が意見書で指摘する箇所以外の箇所にも「前記設定手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除すること」は記載されていない。 したがって、請求項1及び13における上記補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。 また、請求項2において「前記受信手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止すること」と記載する補正がなされ、請求項14において「前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止する工程」と記載する補正がなされているが、当初明細書等には、受信手段が制御信号の受信を停止するタイミングについての記載は無く、請求項2及び14における上記補正も、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。 さらに、請求項9において「前記送信手段は、前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の送信を停止すること」と記載する補正がなされ、請求項15において「前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の送信を停止する工程」と記載する補正がなされているが、当初明細書等には、送信手段が制御信号の送信を停止するタイミングについての記載は無く、請求項9及び15における上記補正も、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。 ●理由2について (1)請求項1における「前記設定手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除すること」との構成、請求項2における「前記受信手段は、前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止すること」との構成、請求項9における「前記送信手段は、前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の送信を停止すること」との構成、請求項13における「前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記所定の無線信号の受信可能状態を解除する工程」との構成、請求項14における「前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の受信を停止する工程」との構成、請求項15における「前記携帯通信端末が前記所定の通信エリアの内から外へ移動すると、前記特定の制御信号の送信を停止する工程」との構成は、明細書に記載さされたものではない。 (2)本件発明が解決しようとする課題は、本件発明は交通事故防止のため車両の接近を携帯情報端末のユーザに報知するものであると認められるが(明細書段落0003等参照)、ビーコンを送信する「車載機器」を車両のどの位置に配置すればそのような課題を解決することができるのかが不明である。仮に車両のフロントグリルに配置されていた場合、車両自体がビーコンを遮ってしまうから車両後方にビーコンを送信することはできないと考えられ、車両が後進しているときに携帯通信端末ユーザに車両の接近を報知することはできないと考えられる。 請求項7において「車載機器」の例として「カーナビゲーションシステム、オーディオシステム」があげられているが、車載機器としてのカーナビゲーションシステム、オーディオシステムは、通常鋼板からなる車両のボディ内(車室内)に配置されるものである。したがって請求項7に係る発明であっても、具体的にどのような手段により、車室外の全方位に向けて十分な強度の無線信号を送信することを実現できるのかが不明である。 仮に、十分な強度の無線信号を車室外に送信するための構成を備えていない場合であって、例えば無線信号到達距離が10mであった場合には、車両が時速40kmで携帯状端末ユーザに向かって走行していたとすると、携帯情報端末が車両の接近を検知できるのは車両がユーザに衝突する0.9秒前となり、ユーザが事故を避けるために対処するには短すぎる時間となる。したがって、十分な強度の無線信号を車室外に送信するための構成が明らかでない本件発明は、交通事故防止のため車両の接近を携帯情報端末のユーザに報知するという課題を解決するに足らないものを包含している。 (本件発明が解決しようとする課題を解決できるための具体的構成を、意見書等で説明されたい。)」 2.最後の拒絶の理由についての判断 (1)理由1について 平成27年8月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2,9,13,14,15に記載された事項は,審判請求書,平成27年8月28日付けの意見書を参照しても,平成27年9月17日付けの最後の拒絶の理由1に示したとおり,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものではない。 したがって,平成27年8月28日付けでした手続補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (2)理由2について 平成27年8月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2,9,13,14,15の記載は,審判請求書,平成27年8月28日付けの意見書を参照しても,平成27年9月17日付けの最後の拒絶の理由2(1)に示したとおり,発明の詳細な説明に記載されたものではない。 したがって,平成27年8月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2,9,13,14,15の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4.むすび したがって,平成27年8月28日付けでした手続補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず,また,平成27年8月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2,9,13,14,15の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-01-29 |
結審通知日 | 2016-02-02 |
審決日 | 2016-02-15 |
出願番号 | 特願2010-539253(P2010-539253) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(G08G)
P 1 8・ 55- WZ (G08G) P 1 8・ 572- WZ (G08G) P 1 8・ 561- WZ (G08G) P 1 8・ 537- WZ (G08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神山 貴行 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
前田 浩 新海 岳 |
発明の名称 | 携帯通信端末、基地局、警報システム、および携帯通信端末の制御方法 |
代理人 | 丸山 隆夫 |