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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1316644
審判番号 不服2015-21660  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-07 
確定日 2016-07-26 
事件の表示 特願2015- 70119「ゲームプログラム、コンピュータの制御方法、およびコンピュータ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 49435、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年8月29日に出願した特願2014-176020号(以下「同日出願」という。)の一部を平成27年3月30日に新たな特許出願としたものであって、同年6月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月11日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年8月31日付けで拒絶査定がなされ、同年12月7日付けで審判請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成27年8月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
コンピュータに、
プレイヤによる入力データを取得する入力取得機能と、
パズルの一部を構成する複数のパズル要素のうちの少なくとも1つのパズル要素が、前記入力データに応じて選択可能となるように、当該複数のパズル要素を、3次元情報を有するゲームフィールドにそれぞれ表示させるパズル表示情報を出力するパズル表示情報出力機能と、
前記パズル表示情報出力機能により表示された複数のパズル要素の上に、オブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示情報出力機能と、
前記オブジェクトとは異なるオブジェクトであるゲーム媒体を、前記オブジェクトとともに前記ゲームフィールドに表示させるゲーム媒体表示情報出力機能と、
選択されたパズル要素に対応付けられたパズル属性情報、および/または、当該パズル要素に対応付けられた、当該パズル要素の配置を示すパズル配置情報を更新するパズル情報更新機能と、
前記パズル情報更新機能によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が更新された後、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が、所定の条件を満たすか否かを判定するパズル要素条件判定機能と、
前記パズル要素条件判定機能によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が前記所定の条件を満たすと判定された場合、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が対応付けられたパズル要素の上またはその周辺に表示された前記オブジェクトを前記ゲームフィールド内の所定の方向に移動させることにより、ゲームにおいて所定の効果を発生させるオブジェクト移動機能とを実現させ、
前記オブジェクト移動機能は、前記所定の効果として、前記オブジェクトの移動先に表示されたゲーム媒体が有する状態情報を変更するゲームプログラム。
【請求項2】
前記オブジェクトに、特定のオブジェクト属性が対応づけて記憶され、
前記オブジェクト移動機能は、前記特定のオブジェクト属性に応じて、前記ゲーム媒体が有する状態情報を変更することを特徴とする請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記オブジェクト表示情報出力機能は、少なくとも1つのオブジェクトを前記プレイヤの入力データに応じた位置に配置し、当該オブジェクトに対応づけて記憶されたオブジェクト属性に応じて、前記プレイヤの入力データをもとに配置する前記オブジェクトの位置と、前記プレイヤが前記オブジェクトの位置を配置する回数との少なくともいずれか一方を制限する請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記ゲーム媒体は、特定のゲーム媒体属性が対応づけて記憶され、
前記オブジェクト移動機能は、前記特定のオブジェクト属性と前記特定のゲーム媒体属性との組み合わせに応じて、前記ゲーム媒体が有する状態情報を変更することを特徴とする請求項2または3に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記パズル要素条件判定機能は、前記特定のオブジェクト属性または前記特定のゲーム媒体属性に応じて、前記所定の条件を変更する請求項4に記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記オブジェクト表示情報出力機能は、前記入力取得機能が取得したプレイヤの入力データをもとに、前記画面上におけるオブジェクトの位置を変更させるオブジェクト表示情報を出力する請求項1から5のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記ゲームプログラムは、前記コンピュータに、
前記パズル表示情報出力機能が出力したパズル表示情報に基づいて、パズルゲーム画面に関する画面情報を生成する表示処理機能をさらに実現させ、
前記表示処理機能は、前記オブジェクト移動機能が前記オブジェクトを移動させる際に、前記プレイヤの視点が変更されるように前記画面情報を生成する請求項1から6のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項8】
前記オブジェクト表示情報出力機能は、
前記オブジェクトと対応付けて記憶された1以上のキャラクタを前記ゲームフィールドにさらに表示させるオブジェクト表示情報を出力し、
前記オブジェクト移動機能は、前記1以上のキャラクタのうちいずれかのキャラクタの属性情報を取得し、当該属性情報に応じて前記所定の効果を発生させる請求項1から7のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項9】
前記ゲームプログラムは、前記コンピュータに、
前記パズル要素条件判定機能によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が前記所定の条件を満たすと判定された場合、当該所定の条件を満たした前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が対応付けられたパズル要素を、前記ゲームフィールドから消去するパズル要素消去機能をさらに実現させ、
前記オブジェクト移動機能は、前記パズル要素消去機能によって消去された前記パズル
要素の上またはその周辺に表示された前記オブジェクトを移動させることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項10】
前記入力取得機能は、所定の入力面に対する操作によって描かれた軌跡を、前記入力データとして取得し、
前記パズル表示情報出力機能は、前記入力取得機能によって取得された軌跡に沿って、前記少なくとも1つのパズル要素が選択可能となるように、前記複数のパズル要素を前記ゲームフィールドにそれぞれ表示させる前記パズル表示情報を出力することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項11】
前記ゲームプログラムは、前記コンピュータに、
前記プレイヤが前記少なくとも1つのパズル要素を選択可能となる時間に対して制約を課す時間制約機能をさらに実現させることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項12】
プレイヤによる入力データを取得する入力取得ステップと、
パズルの一部を構成する複数のパズル要素のうちの少なくとも1つのパズル要素が、前記入力データに応じて選択可能となるように、当該複数のパズル要素を、3次元情報を有するゲームフィールドにそれぞれ表示させるパズル表示情報を出力するパズル表示情報出力ステップと、
前記パズル表示情報出力ステップにおいて表示された複数のパズル要素の上に、オブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示情報出力ステップと、
前記オブジェクトとは異なるオブジェクトであるゲーム媒体を、前記オブジェクトとともに前記ゲームフィールドに表示させるゲーム媒体表示情報出力ステップと、
選択されたパズル要素に対応付けられたパズル属性情報、および/または、当該パズル要素に対応付けられた、当該パズル要素の配置を示すパズル配置情報を更新するパズル情報更新ステップと、
前記パズル情報更新ステップにおいて前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報を更新した後、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が、所定の条件を満たすか否かを判定するパズル要素条件判定ステップと、
前記パズル要素条件判定ステップにおいて前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が前記所定の条件を満たすと判定した場合、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が対応付けられたパズル要素の上またはその周辺に表示された前記オブジェクトを前記ゲームフィールド内の所定の方向に移動させることにより、ゲームにおいて所定の効果を発生させるオブジェクト移動ステップとを含み、
前記オブジェクト移動ステップは、前記所定の効果として、前記オブジェクトの移動先に表示されたゲーム媒体が有する状態情報を変更するコンピュータの制御方法。
【請求項13】
プレイヤによる入力データを取得する入力取得部と、
パズルの一部を構成する複数のパズル要素のうちの少なくとも1つのパズル要素が、前記入力データに応じて選択可能となるように、当該複数のパズル要素を、3次元情報を有するゲームフィールドにそれぞれ表示させるパズル表示情報を出力するパズル表示情報出力部と、
前記パズル表示情報出力部により表示された複数のパズル要素の上に、オブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示情報出力部と、
前記オブジェクトとは異なるオブジェクトであるゲーム媒体を、前記オブジェクトとともに前記ゲームフィールドに表示させるゲーム媒体表示情報出力部と、
選択されたパズル要素に対応付けられたパズル属性情報、および/または、当該パズル要素に対応付けられた、当該パズル要素の配置を示すパズル配置情報を更新するパズル情報更新部と、
前記パズル情報更新部によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が更新された後、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が、所定の条件を満たすか否かを判定するパズル要素条件判定部と、
前記パズル要素条件判定部によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が前記所定の条件を満たすと判定された場合、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が対応付けられたパズル要素の上またはその周辺に表示された前記オブジェクトを前記ゲームフィールド内の所定の方向に移動させることにより、ゲームにおいて所定の効果を発生させるオブジェクト移動部とを備え、
前記オブジェクト移動部は、前記所定の効果として、前記オブジェクトの移動先に表示されたゲーム媒体が有する状態情報を変更するコンピュータ。」

第3 原査定の理由の概要

原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「本願請求項1、12、13に係る発明は、同日出願の請求項2に係る発明と同一であり、本願請求項2、10、11に係る発明は、同日出願1の請求項3、6、7に係る発明とそれぞれ同一であり、同日出願は特許されており協議を行うことができないから、本願は特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。」

第4 同日出願に係る発明

原査定の拒絶の理由に引用された、同日出願の請求項1ないし3、6、7に係る発明は、同日出願の特許請求の範囲の請求項1ないし3、6、7に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
コンピュータに、
プレイヤによる入力データを取得する入力取得機能と、
パズルの一部を構成する複数のパズル要素のうちの少なくとも1つのパズル要素が、前記入力データに応じて選択可能となるように、当該複数のパズル要素をゲームフィールドにそれぞれ表示させるパズル表示情報を出力するパズル表示情報出力機能と、
前記複数のパズル要素が表示された画面上に、オブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示情報出力機能と、
選択されたパズル要素に対応付けられたパズル属性情報、および/または、当該パズル要素に対応付けられた、当該パズル要素の配置を示すパズル配置情報を更新するパズル情報更新機能と、
前記パズル情報更新機能によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が更新された後、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が、所定の条件を満たすか否かを判定するパズル要素条件判定機能と、
前記パズル要素条件判定機能によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が前記所定の条件を満たすと判定された場合、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が対応付けられたパズル要素の上またはその周辺に表示された前記オブジェクトを移動させることにより、ゲームにおいて所定の効果を発生させるオブジェクト移動機能とを実現させ、
前記ゲームフィールドは、幅、高さ、および奥行きに関する3次元情報を有し、
前記オブジェクト移動機能は、前記オブジェクトを支持するように表示されていた前記パズル要素を消去することによって、当該オブジェクトが前記ゲームフィールドにおいてプレイヤの視点から遠ざかる奥行き方向へ落下するように、当該オブジェクトを移動させるゲームプログラム。
【請求項2】
前記オブジェクト移動機能は、前記オブジェクトを移動させた後、前記ゲームフィールドに表示されるものであって、前記オブジェクトの移動先にあり、当該オブジェクトとは異なる前記ゲーム内のオブジェクトであるゲーム媒体が有する状態情報を変更する効果を、前記所定の効果として発生させることを特徴とする請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記オブジェクトに、特定のオブジェクト属性が付与され、
前記オブジェクト移動機能は、前記特定のオブジェクト属性に応じて、前記ゲーム媒体が有する状態情報を変更することを特徴とする請求項1または2に記載のゲームプログラム。」

「【請求項6】
前記入力取得機能は、所定の入力面に対する操作によって描かれた軌跡を、前記入力データとして取得し、
前記パズル表示情報出力機能は、前記入力取得機能によって取得された軌跡に沿って、前記少なくとも1つのパズル要素が選択可能となるように、前記複数のパズル要素を前記ゲームフィールドにそれぞれ表示させる前記パズル表示情報を出力することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記ゲームプログラムは、前記コンピュータに、
前記プレイヤが前記少なくとも1つのパズル要素を選択可能となる時間に対して制約を課す時間制約機能をさらに実現させることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のゲームプログラム。」

第5 対比および判断

1 本願請求項1について

(1)対比

本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と、同日出願請求項2に係る発明(以下、同日出願発明1」という。)を対比すると、

同日出願発明1の「ゲームフィールドに表示されるものであって、オブジェクトの移動先にあり、当該オブジェクトとは異なる前記ゲーム内のオブジェクトであるゲーム媒体」は、「ゲームフィールドに表示」されており、「オブジェクトの移動先」にあるから、「オブジェクト」とともに「ゲームフィールド」に表示されていると認められる。したがって、同日出願発明1の「ゲーム媒体」は、本願発明1の「オブジェクトとともに前記ゲームフィールドに表示」される「オブジェクトとは異なるオブジェクトであるゲーム媒体」に相当する。また、同日出願発明1は「オブジェクトとは異なるオブジェクトであるゲーム媒体を、前記オブジェクトとともに前記ゲームフィールドに表示させるゲーム媒体表示情報出力機能」を備えているといえる。

したがって、本願発明1と同日出願発明1とは、
「コンピュータに、
プレイヤによる入力データを取得する入力取得機能と、
パズルの一部を構成する複数のパズル要素のうちの少なくとも1つのパズル要素が、前記入力データに応じて選択可能となるように、当該複数のパズル要素を、3次元情報を有するゲームフィールドにそれぞれ表示させるパズル表示情報を出力するパズル表示情報出力機能と、
前記パズル表示情報出力機能により表示された複数のパズル要素の上に、オブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示情報出力機能と、
前記オブジェクトとは異なるオブジェクトであるゲーム媒体を、前記オブジェクトとともに前記ゲームフィールドに表示させるゲーム媒体表示情報出力機能と、
選択されたパズル要素に対応付けられたパズル属性情報、および/または、当該パズル要素に対応付けられた、当該パズル要素の配置を示すパズル配置情報を更新するパズル情報更新機能と、
前記パズル情報更新機能によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が更新された後、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が、所定の条件を満たすか否かを判定するパズル要素条件判定機能と、
前記パズル要素条件判定機能によって前記パズル属性情報および/またはパズル配置情報が前記所定の条件を満たすと判定された場合、当該パズル属性情報および/またはパズル配置情報が対応付けられたパズル要素の上またはその周辺に表示された前記オブジェクトを前記ゲームフィールド内で所定に移動させることにより、ゲームにおいて所定の効果を発生させるオブジェクト移動機能とを実現させ、
前記オブジェクト移動機能は、前記所定の効果として、前記オブジェクトの移動先に表示されたゲーム媒体が有する状態情報を変更するゲームプログラム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1では、オブジェクトをゲームフィールド内の「所定の方向に」移動させるのに対し、同日出願発明1では、オブジェクトを支持するように表示されていたパズル要素を消去することによって、当該オブジェクトがゲームフィールドにおいてプレイヤの視点から遠ざかる奥行き方向へ落下するように、当該オブジェクトを移動させる点。

(2)判断

上記相違点1について検討する。
以下のア、イのいずれの場合においても、本願発明1と同日出願発明1が同一の発明といえるときに、本願発明1と同日出願発明1とは同一であるといえる。

ア 本願発明1を先の出願に係る発明(以下、「先願発明」という。)とし、同日出願発明1を後の出願に係る発明(以下、「後願発明」という。)と仮定したとき。
イ 同日出願発明1を先願発明とし、本願発明1を後願発明と仮定したとき。

上記アのときについて、以下に検討する。

先願発明と後願発明に相違点がある場合であっても、相違点が以下の(ア)、(イ)、(ウ)の場合は、両者は実質同一であるといえる。

(ア) 課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合。
(イ) 先願発明の発明特定事項を後願発明において上位概念として表現したことによる差異である場合。
(ウ) 単なるカテゴリー表現上の差異(例えば、表現形式上、「物」の発明であるか、「方法」の発明であるかの差異)である場合

上記(ア)について、同日出願発明1の相違点1に係る発明特定事項である「オブジェクトを支持するように表示されていたパズル要素を消去することによって、当該オブジェクトがゲームフィールドにおいてプレイヤの視点から遠ざかる奥行き方向へ落下するように、当該オブジェクトを移動させる」という事項が、周知技術、慣用技術であるとする根拠は見当たらない。また、当該発明特定事項により、同日出願発明1は、「視覚性による爽快感が得られ、上級プレイヤに対しても高いゲームの興趣性を提供できる。」(本願【0073】、同日出願【0073】)という特有の効果を奏する。したがって、上記(ア)の場合に該当しない。
上記(イ)について、後願発明と仮定した同日出願発明1の、相違点1に係る発明特定事項は、先願発明と仮定した本願発明1の、相違点1に係る発明特定事項である「オブジェクトをゲームフィールド内の所定の方向に移動させる」という事項に対して、「ゲームフィールド内の所定の方向」を「ゲームフィールドにおいてプレイヤの視点から遠ざかる奥行き方向」に限定し、また、「オブジェクト」が移動する様子を、「オブジェクトを支持するように表示されていたパズル要素を消去することによって」、「オブジェクト」が「落下するように」表示することに限定したものである。したがって、同日出願発明1は、本願発明1の下位概念に相当するから、上記(イ)の場合に該当しない。
また、上記(ウ)の場合にも該当しない。
したがって、上記アのときに、本願発明1と同日出願発明1とは同一であるとはいえない。

よって、上記イのときについて検討するまでもなく、本願発明1は同日出願発明1と同一であるとはいえない。

2 本願請求項2、10、11について

本願請求項2に係る発明と、同日出願請求項3に係る発明は、それぞれ本願発明1、同日出願発明1に
「前記オブジェクトに、特定のオブジェクト属性が対応づけて記憶され、
前記オブジェクト移動機能は、前記特定のオブジェクト属性に応じて、前記ゲーム媒体が有する状態情報を変更すること」
という発明特定事項を付加したものである。

本願請求項10に係る発明と、同日出願請求項6に係る発明は、それぞれ本願発明1、同日出願発明1に
「前記入力取得機能は、所定の入力面に対する操作によって描かれた軌跡を、前記入力データとして取得し、
前記パズル表示情報出力機能は、前記入力取得機能によって取得された軌跡に沿って、前記少なくとも1つのパズル要素が選択可能となるように、前記複数のパズル要素を前記ゲームフィールドにそれぞれ表示させる前記パズル表示情報を出力すること」
という発明特定事項を付加したものである。

本願請求項11に係る発明と、同日出願請求項7に係る発明は、それぞれ本願発明1、同日出願発明1に
「前記ゲームプログラムは、前記コンピュータに、
前記プレイヤが前記少なくとも1つのパズル要素を選択可能となる時間に対して制約を課す時間制約機能をさらに実現させること」
という発明特定事項を付加したものである。

したがって、本願請求項2、10、11に係る発明と、同日出願の請求項3、6、7に係る発明とをそれぞれ対比すると、上記相違点1と同様の点で相違しており、すでに検討したとおり、本願請求項2、10、11に係る発明は、同日出願の請求項3、6、7に係る発明と同一であるとはいえない。

3 本願請求項12、13について

請求項12、13に係る発明は、本願発明1と発明のカテゴリーが異なるものの、実質的には同じであるから、本願発明1と同様に、請求項12、13に係る発明は、同日出願発明1と同一であるとはいえない。

4 本願請求項3ないし9について

本願請求項3ないし9に係る発明は、いずれも本願発明1を引用したものであるが、本願発明1の上記相違点1に係る発明特定事項に対して、何ら限定を加えていないから、依然として「オブジェクトをゲームフィールド内の所定の方向に移動させる」という発明特定事項を有している。したがって、本願請求項3ないし9に係る発明と、同日出願の請求項2、3、6、7に係る発明とを対比すると、少なくとも、相違点1と同様の点で相違し、すでに検討したとおり、本願請求項3ないし9に係る発明は、同日出願の各請求項に係る発明と同一であるとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、本願請求項1ないし13に係る発明は、同日出願請求項2、3、6、7に係る発明と同一であるとすることができないものであるから、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-07-13 
出願番号 特願2015-70119(P2015-70119)
審決分類 P 1 8・ 4- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 植田 高盛
吉村 尚
発明の名称 ゲームプログラム、コンピュータの制御方法、およびコンピュータ  
代理人 白坂 一  

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