• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1316853
審判番号 不服2015-7502  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-22 
確定日 2016-07-13 
事件の表示 特願2012-539218号「ねじ付き接続部」拒絶査定不服審判事件〔平成23年5月26日国際公開、WO2011/060894、平成25年4月4日国内公表、特表2013-511672号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年11月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年11月20日(FR)フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年4月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年7月18日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年12月17日付けで拒絶査定がされ、同査定の謄本は平成26年12月24日に請求人に送達された。
これに対して、平成27年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正書が提出された。

第2 平成27年4月22日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年4月22日の手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成27年4月22日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
なお、下線部は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
第1及び第2の管状コンポーネントを含むねじ付き接続部(1)であって、第1コンポーネントが、遠心面と、その外周面に設けられたねじ領域(5)とを含む雄型端部を含み;第2コンポーネントが、遠心面と、その内周面に設けられたねじ領域(4)とを含む雌型端部を含み;前記雄型端部のねじ領域(5)は、前記雌型端部のねじ領域(4)にねじ込まれ;ねじ領域(4、5)は各々前記遠心面から幅が広がった雄型及び雌型のねじ山(40、50)を含み;前記ねじ山はその径方向寸法の少なくとも部分にわたって-1°?-15°の範囲の負角を有するロードフランク(43、53)と、1°?15°の範囲の正角を有するスタビングフランク(44、54)とを含み、前記雄型のねじ山の頂部(51)と前記雌型のねじ山の谷底部(42)との間及び/又は前記雌型のねじ山の頂部(41)と前記雄型のねじ山の谷底部(52)との間に接続された状態で存在する径方向の間隙があり、前記雄型及び雌型のねじ山の前記スタビングフランク(44、54)の間に接続された状態で存在する0.002mm?1mmの範囲の軸方向の間隙があり;前記雄型端部及び/又は雌型端部の前記遠心面は、対応する隣接面に対して軸方向に接合接触され;前記雄型及び雌型のねじ山(40、50)の前記ロードフランク(43、53)は、組立後の干渉負荷を吸収し、前記雌型端部は、前記ねじ領域(4)と隣接面)8)との間に、テーパ状の面(12)と、凹部(10)とを含み、前記凹部(10)は、円筒形の面(14)と、前記ねじ領域(4)と前記テーパ状の面(12)との間に設けられた回転面18とを含み、前記テーパ状の面(12)は、前記隣接面(8)に隣接することを特徴とする、前記ねじ付き接続部。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年7月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
第1及び第2の管状コンポーネントを含むねじ付き接続部(1)であって、第1コンポーネントが、遠心面と、その外周面に設けられたねじ領域(5)とを含む雄型端部を含み;第2コンポーネントが、遠心面と、その内周面に設けられたねじ領域(4)とを含む雌型端部を含み;前記雄型端部のねじ領域(5)は、前記雌型端部のねじ領域(4)にねじ込まれ;ねじ領域(4、5)は各々前記遠心面から幅が広がった雄型及び雌型のねじ山(40、50)を含み;前記ねじ山はその径方向寸法の少なくとも部分にわたって-1°?-15°の範囲の負角を有するロードフランク(43、53)と、1°?15°の範囲の正角を有するスタビングフランク(44、54)とを含み、前記雄型のねじ山の頂部(51)と前記雌型のねじ山の谷底部(42)との間及び/又は前記雌型のねじ山の頂部(41)と前記雄型のねじ山の谷底部(52)との間に接続された状態で存在する径方向の間隙があり、前記雄型及び雌型のねじ山の前記スタビングフランク(44、54)の間に接続された状態で存在する0.002mm?1mmの範囲の軸方向の間隙があり;前記雄型端部及び/又は雌型端部の前記遠心面は、対応する隣接面に対して軸方向に接合接触され;前記雄型及び雌型のねじ山(40、50)の前記ロードフランク(43、53)は、組立後の干渉負荷を吸収することを特徴とする、前記ねじ付き接続部。」

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無
上記本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「雌型端部」について、「前記ねじ領域(4)と隣接面)8)との間に、テーパ状の面(12)と、凹部(10)とを含み、前記凹部(10)は、円筒形の面(14)と、前記ねじ領域(4)と前記テーパ状の面(12)との間に設けられた回転面18とを含み、前記テーパ状の面(12)は、前記隣接面(8)に隣接する」という事項を付加し、限定するものであり、かつ、当該補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記事項は、本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面とみなされた外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内のものであるので、上記本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
したがって、上記本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものといえる。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)刊行物、刊行物に記載の事項及び発明
ア.刊行物及び刊行物に記載の事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である、特表2008-527256号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で加筆した。
(1a)
「【0001】
本発明は全体として、油田の筒状物体として通常は集合的に知られているチュービング(tubing)、ケーシング(casing)、ライン・パイプ(line pipe)、ドリル・パイプ(drill pipe)のような原油及びガスの井戸の掘削と生産で用いられるねじ付き筒状接続部に関する。特に本発明は、雄(ピン:pin)と雌(ボックス:box)の部材に相対的回転と組立用トルク(torque)を加えることにより接続するための筒状接続部に関する。より特定すれば、本発明は、組立のために過大なトルクと作業エネルギーを加えずに筒状の接続部の雄(ピン:pin)と雌(ボックス:box)の部材の間で確実かつ加圧シール(seal)の接続部を提供し、荷重側面、スタブ(stab)側面、確実停止型のトルク・ショルダー(torque shoulder)を有する2ステップ(step)付きくさび形ねじに関する。
【0002】
加圧流体を輸送するための連続流路を形成するために、端部から端部への関係で流体用導管を接続するためにねじ付き筒状接続部を用いることは良く知られている。油田での筒状部材を用いる特別なひとつの例は、筒状部材の断面をお互いに接続して希望の深さのボアホール(borehole)掘削用である。継手の目的は圧縮と引張りの両方の荷重を支持して、ひとつの部材から次ぎに回転力即ちトルクを伝達し、加圧流体が筒状部材の内部を通過するために通路のシール(seal)を行うことである。油田の筒状物体は、典型的に、ねじ端部付き接続部又は継手を用いて、導管、パイプ又は筒状部材の隣接断面を接続する。油田の筒状物体で用いるように設計されたねじ付き端部接続部の例は特許文献1、2、3、4,5に開示されていて、その全てが本発明の譲受人に譲渡されている。」
(1b)
「【0027】
図3は本発明の一実施例を示していて、接続部50にはボックス部材52の雌ねじ54及び55とピン部材51の雄ねじ74及び75が含まれて、中心軸53に沿った2ステップ型くさび状構造内に形成されている。雄ねじ54及び55が、実質的に各ねじ54及び55の螺旋の全長で、実質的に一方向を一定割合で徐々に幅を拡げている。雄ねじ74及び75が、実質的に各ねじ74及び75の螺旋の全長で、実質的に他方向を一定割合で徐々に幅を拡げている。」
(1c)
「【0029】
図4では、図3に示した2ステップ型くさび状構成に類似した鳩尾型くさび形ねじ構成の追加詳細を示している。雌ねじ54がボックス部分52内で、小ステップ41に沿って形成される。雌ねじ54は、スタブ側面58、荷重側面56、ねじ底60、ねじ山64を含む。相補性の雄ねじ74がピン部分51内に又小ステップ41に沿って形成される。雄ねじ74が相補性のスタブ側面78、荷重側面76、ねじ底80、ねじ山84を含む。」
(1d)
「【0031】
接続部50の回転組立中に、ねじ54及び74のねじ幅(又はくさび形状)の対向的増大で各ねじの相補的側面を、ピン51とボックス52の筒状部材の相対的回転で強制的係合をするように動かす。ピン51とボックス52の対応する先細部が相補性のねじ底とねじ山を係合するように動かす。この実施例で、確実停止型のトルク・ショルダー66がピン51のノーズ面67とボックス52の内径(ID)面87の間に形成される。係合した雌ねじ54と雄ねじ74のそれぞれの先端がピンのノーズ面67をボックスのID面87に押して、確実停止型のトルク・ショルダー66で流体の流れに抵抗するシール部を形成する。特に、接続部50に加えられた組立トルクが小ステップ41内の荷重側面56及び76を係合させ、それにより、確実停止型のトルク・ショルダー66の面67及び87を面同士の係合を行わせる。便宜上、雌ねじ55及び雄ねじ75をまとめて、「係合状態のねじ」43と呼んで良い。加えられた組立トルクは、係合状態のねじ43及び確実停止型のトルク・ショルダー66の対向する面で応力及び得られた歪みにより十分な抵抗を受けた時、回転を停止する。係合した側面56、76及び確実停止型のトルク・ショルダーの面67、87の歪み量及びそれゆえ変形量が材料の弾性率と強度により決定される。それゆえ、組立時のピン51とボックス52の相対的位置が固定され、又は、最初の組立位置で確実に停止し、その位置は加えられる組立トルクの量により決定しうる。」
(1e)
「【0034】
確実停止型のトルク・ショルダー66がピン側のノーズ67とボックス側の内径(ID)87の境界に形成される。この実施例で、係合状態のねじ43,浮動状態のくさび形ねじ44、確実停止型のトルク・ショルダー66が、ピン51とボックス52の間のねじ接続部50を形成する。それゆえ、接続部50を組立てるために、選択した量の組立トルクを加えたときに、少なくとも、係合状態のステップ内で、ピン部材51の荷重側面56及びボックス部材52の荷重側面57が係合し、面同士の係合内に確実停止型のトルク・ショルダー66を強制的に押し込む。この実施例の有用な一側面に基づくと、確実停止型のトルク・ショルダー66の接触面積は荷重側面56及び57の接触面積より少ないので、組立時の接続部内の最大軸変形が確実停止型のトルク・ショルダー66に生じる。これは、ピンとボックスの筒状部材51及び52の内径での加圧シールを形成しやすくする。確実停止型のトルク・ショルダー66での完全なシールにより、筒状部材内の加圧流体が、ねじ接続部50のねじ山54、74の中に、又は、その間に入るのを阻止する。」
(1f)
「【0035】
係合状態のねじ43の少なくとも荷重側面56及び76が組立時に係合するけれども、係合状態のねじ43のスタブ側面58及び78も組立時に係合しうることを理解されたい。例えば、係合状態のねじ43がくさび形ねじであれば、荷重側面56及び57とスタブ側面58及び78の両方で同時に組立てられるように形成できる。そのような構造は特定の目的に、例えば、側面及びねじ底とねじ山の面をシール性の係合をする目的で使用しうる。しかしながら、荷重側面56及び76を強制的に組立てて、確実停止型のトルク・ショルダー66に押込める限り、スタブ側面58及び78が係合する必要はない。」
(1g)
「【0038】
代替として、図5Bに示すように、係合状態のねじ43が、荷重側面56及び76が係合し、スタブ側面58及び78が軸方向の小さなクリアランス95により隙間を生じている。この構成は、係合状態の荷重側面56及び76により生じた軸方向の力全体の全部ではないにしても大部分が、確実停止型のトルク・ショルダー66に加えるのに役立つ。
【0039】
図5A及び5Bの両方の実施例では、ねじ底及びねじ山が半径方向のクリアランスが無いように示されている。図5Cを参照して、係合状態のねじ43の他の代替的実施例で、小さな半径方向のクリアランス104がボックス側のねじ底60とピン側のねじ山84の間に形成され、又、小さな半径方向クリアランス105がボックス側のねじ山64とピン側のねじ底80の間に形成される。さらに、図5Dを参照すると、ねじ底からねじ山までのクリアランス105を、一組のねじ底からねじ山までの間、例えば、ねじ底60からねじ山84の間に形成しうるが、ねじ底64とねじ山80という他の組合わせにはクリアランスが無いことも理解されたい。ねじ底60とねじ山80の間にクリアランスが無いことは、それぞれのねじ底とねじ山の面の間が干渉していて、加圧シールを容易にできることを示していると理解されたい。」
(1h)
「【0040】
係合状態のねじ43でねじ底からねじ山までのクリアランスに可能な変形の全てを図5A-5Dに示してはいないけれども、荷重側面56及び76のみが係合しているか(図5B及び5C参照)、又は、荷重側面56及び76とスタブ側面58及び78の両方が係合しているか(図5A及び5D参照)に関係なく、ねじ底からねじ山までのクリアランスが形成されることを理解されたい。さらに、組立時にねじ底からねじ山までの半径方向の隙間104が、ねじ底60とねじ山84でのねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス無しに形成されることを理解されたい。ねじ底からねじ山までのクリアランス105はねじ底80とねじ山64でのねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス無しに、又は、ねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス104及び106の両方無しに形成しうる。」

イ.刊行物に記載の発明
(ア)
図4を参照すると、上記ア.(1d)で摘記した「確実停止型のトルク・ショルダー66の面67及び87を面同士の係合を行わせる。」及び「係合した側面56、76及び確実停止型のトルク・ショルダーの面67、87の歪み量及びそれゆえ変形量が材料の弾性率と強度により決定される。」という記載は、符号「87」が符号「68」の誤記と認められ、それぞれ、「確実停止型のトルク・ショルダー66の面67及び68を面同士の係合を行わせる。」及び「係合した側面56、76及び確実停止型のトルク・ショルダーの面67、68の歪み量及びそれゆえ変形量が材料の弾性率と強度により決定される。」の誤記と認められる。
(イ)
上記ア.(1e)に記載の「筒状部材内の加圧流体が、ねじ接続部50のねじ山54、74の中に、又は、その間に入るのを阻止する。」という記載は、「筒状部材内の加圧流体が、ねじ接続部50のねじ54、74の中に、又は、その間に入るのを阻止する。」の誤記と認められる。
(ウ)
図5A-Dを参照すると、上記ア.(1g)で摘記した「小さな半径方向のクリアランス104がボックス側のねじ底60とピン側のねじ山84の間に形成され、又、小さな半径方向クリアランス105がボックス側のねじ山64とピン側のねじ底80の間に形成される。」及び上記ア.(1h)で摘記した「組立時にねじ底からねじ山までの半径方向の隙間104が、ねじ底60とねじ山84でのねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス無しに形成されることを理解されたい。ねじ底からねじ山までのクリアランス105はねじ底80とねじ山64でのねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス無しに、又は、ねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス104及び106の両方無しに形成しうる。」という記載は、符号「104」が符号「105」の誤記、符号「105」が符号「104」の誤記、かつ、符号「104及び106」が符号「104及び105」の誤記と認められ、それぞれ、「小さな半径方向のクリアランス105がボックス側のねじ底60とピン側のねじ山84の間に形成され、又、小さな半径方向クリアランス104がボックス側のねじ山64とピン側のねじ底80の間に形成される。」及び「組立時にねじ底からねじ山までの半径方向の隙間105が、ねじ底60とねじ山84でのねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス無しに形成されることを理解されたい。ねじ底からねじ山までのクリアランス104はねじ底80とねじ山64でのねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス無しに、又は、ねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス104及び105の両方無しに形成しうる。」の誤記と認められる。
(エ)
上記(ア)?(ウ)、上記ア.(1a)?(1h)及び図から、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「原油及びガスの井戸の掘削と生産で用いられるねじ付き筒状接続部に関し、流体用導管を接続するねじ付き筒状接続部50にはボックス部材52の雌ねじ54とピン部材51の雄ねじ74が含まれ、
雌ねじ54は、スタブ側面58、荷重側面56、ねじ底60、ねじ山64を含み、相補性の雄ねじ74が相補性のスタブ側面78、荷重側面76、ねじ底80、ねじ山84を含み、
係合状態のねじ43で、半径方向のクリアランス105がボックス側のねじ底60とピン側のねじ山84の間に形成され、又、半径方向クリアランス104がボックス側のねじ山64とピン側のねじ底80の間に形成され、組立時に、ねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス105無しに、又は、ねじ底からねじ山までのクリアランス104無しに形成しうるものであり、
係合状態のねじ43が、荷重側面56及び荷重側面76が係合し、スタブ側面58及びスタブ側面78が軸方向の小さなクリアランス95により隙間を生じ、組立時に、荷重側面56及び荷重側面76が係合するけれども、スタブ側面58及びスタブ側面78が係合する必要はない、
確実停止型のトルク・ショルダー66の面67及び面68を面同士の係合を行わせ、確実停止型のトルク・ショルダー66での完全なシールにより、筒状部材内の加圧流体が、ねじ接続部50のねじ54、74の中に、又は、その間に入るのを阻止する、
ねじ付き筒状接続部50。」

(3)対比・判断
ア.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)
引用発明の「ボックス部材52」及び「雌ねじ54」は、それぞれ、本願補正発明の「雌型端部」及び雌型端部の「ねじ」に相当する。
(イ)
引用発明の「ピン部材51」及び「雄ねじ74」は、それぞれ、本願補正発明の「雄型端部」及び雄型端部の「ねじ」に相当する。
(ウ)
上記(ア)及び図4から、引用発明の「ボックス部材52の雌ねじ54が含まれて」いる「流体用導管を接続するねじ付き筒状接続部50」は、「遠心面と、その外周面に設けられたねじ(雌ねじ54)領域とを含む雄型端部(ボックス部材52)を含」むから、本願補正発明の「第2コンポーネント」に相当する。
(エ)
上記(イ)及び図4から、引用発明の「ピン部材51の雄ねじ74が含まれて」いる「流体用導管を接続するねじ付き筒状接続部50」は、「遠心面と、その外周面に設けられたねじ(雄ねじ74)領域とを含む雄型端部(ピン部材51)を含」むから、本願補正発明の「第1コンポーネント」に相当する。
(オ)
図4から、雄ねじ74が雌ねじ54にねじ込まれていることが明らかであること、並びに、上記(ア)?(エ)及び図4から、引用発明の「流体用導管を接続するねじ付き筒状接続部50にはボックス部材52の雌ねじ54とピン部材51の雄ねじ74が含まれて」いる構成は、本願補正発明の「第1及び第2の管状コンポーネントを含むねじ付き接続部(1)であって、第1コンポーネントが、遠心面と、その外周面に設けられたねじ領域(5)とを含む雄型端部を含み;第2コンポーネントが、遠心面と、その内周面に設けられたねじ領域(4)とを含む雌型端部を含み;前記雄型端部のねじ領域(5)は、前記雌型端部のねじ領域(4)にねじ込まれ」ている構成に相当する。
(カ)
引用発明の「雌ねじ54」及び「雄ねじ74」の「スタブ側面58,スタブ側面78」は、図4及び図5Cから、「正角」であることが明らかであるのから、引用発明の「雌ねじ54」及び「雄ねじ74」の「スタブ側面58,スタブ側面78」と、本願補正発明の「1°?15°の範囲の正角を有するスタビングフランク(44、54)」とは、「正角を有するスタビングフランク」の限りで共通している。
(キ)
引用発明の「雌ねじ54」及び「雄ねじ74」の「荷重側面56,荷重側面76」は、図4及び図5Cから、「負角」であることが明らかであるから、引用発明の「雌ねじ54」及び「雄ねじ74」の「荷重側面56,荷重側面76」と、本願補正発明の「-1°?-15°の範囲の負角を有するロードフランク(43、53)」とは、「負角を有するロードフランク」の限りで共通している。
(ク)
上記(カ)及び(キ)並びに図4及び図5Cから、引用発明の「雌ねじ54は、スタブ側面58、荷重側面56、ねじ底60、ねじ山64を含み、相補性の雄ねじ74が相補性のスタブ側面78、荷重側面76、ねじ底80、ねじ山84を含」む構成と、本願補正発明の「ねじ領域(4、5)は各々前記遠心面から幅が広がった雄型及び雌型のねじ山(40、50)を含み;前記ねじ山はその径方向寸法の少なくとも部分にわたって-1°?-15°の範囲の負角を有するロードフランク(43、53)と、1°?15°の範囲の正角を有するスタビングフランク(44、54)とを含」む構成とは、「ねじ領域は各々前記遠心面から幅が広がった雄型及び雌型のねじ山を含み;前記ねじ山はその径方向寸法の少なくとも部分にわたって負角を有するロードフランクと、正角を有するスタビングフランクとを含」む構成の限りで共通している。
(ケ)
引用発明は、「係合状態のねじ43が、荷重側面56及び荷重側面76が係合し、スタブ側面58及びスタブ側面78が軸方向の小さなクリアランス95により隙間を生じ、組立時に、荷重側面56及び荷重側面76が係合するけれども、スタブ側面58及びスタブ側面78が係合する必要はない」から、「組立時にも、スタブ側面58及びスタブ側面78が軸方向の小さなクリアランス95により隙間を生じ」た状態が維持されているといえるし、引用発明の「組立時」は、本願補正発明の「接続された状態」に相当するといえる。
そうすると、引用発明の「係合状態のねじ43が、荷重側面56及び荷重側面76が係合し、スタブ側面58及びスタブ側面78が軸方向の小さなクリアランス95により隙間を生じ、組立時に、荷重側面56及び荷重側面76が係合するけれども、スタブ側面58及びスタブ側面78が係合する必要はない」構成と、本願補正発明の「雄型及び雌型のねじ山のスタビングフランク(44、54)の間に接続された状態で存在する0.002mm?1mmの範囲の軸方向の間隙があ」る構成とは、「雄型及び雌型のねじ山のスタビングフランクの間に接続された状態で存在する軸方向の間隙があ」る構成の限りで共通している。
(コ)
引用発明の「確実停止型のトルク・ショルダー66の面67及び面68」は、本願補正発明の「雄型端部及び/又は雌型端部の遠心面」の一部分に他ならない。
そうすると、引用発明の「確実停止型のトルク・ショルダー66の面67及び面68を面同士の係合を行わせ、確実停止型のトルク・ショルダー66での完全なシールにより、筒状部材内の加圧流体が、ねじ接続部50のねじ54、74の中に、又は、その間に入るのを阻止する」ことは、本願補正発明の「雄型端部及び/又は雌型端部の遠心面は、対応する隣接面に対して軸方向に接合接触され」ていることに相当する。

イ.一致点及び相違点
以上より、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「第1及び第2の管状コンポーネントを含むねじ付き接続部であって、第1コンポーネントが、遠心面と、その外周面に設けられたねじ領域とを含む雄型端部を含み;第2コンポーネントが、遠心面と、その内周面に設けられたねじ領域とを含む雌型端部を含み;前記雄型端部のねじ領域は、前記雌型端部のねじ領域にねじ込まれ;ねじ領域は各々前記遠心面から幅が広がった雄型及び雌型のねじ山を含み;前記ねじ山はその径方向寸法の少なくとも部分にわたって負角を有するロードフランクと、正角を有するスタビングフランクとを含み、前記雄型及び雌型のねじ山の前記スタビングフランクの間に接続された状態で存在する軸方向の間隙があり;前記雄型端部及び/又は雌型端部の前記遠心面は、対応する隣接面に対して軸方向に接合接触される、前記ねじ付き接続部。」

<相違点1>
「ロードフランク」及び「スタビングフランク」について、本願補正発明では、「-1°?-15°の範囲の負角を有するロードフランク」及び「1°?15°の範囲の正角を有するスタビングフランク」であるのに対して、引用発明では、「負角を有するロードフランク」及び「正角を有するスタビングフランク」であるが、それらの角度が特定されていない点。

<相違点2>
本願補正発明は、「前記雄型のねじ山の頂部(51)と前記雌型のねじ山の谷底部(42)との間及び/又は前記雌型のねじ山の頂部(41)と前記雄型のねじ山の谷底部(52)との間に接続された状態で存在する径方向の間隙があ」るのに対して、引用発明は、「係合状態のねじ43で、半径方向のクリアランス105がボックス側のねじ底60とピン側のねじ山84の間に形成され、又、半径方向クリアランス104がボックス側のねじ山64とピン側のねじ底80の間に形成され、組立時に、ねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス105無しに、又は、ねじ底からねじ山までのクリアランス104は無しに形成しうる」点。

<相違点3>
本願補正発明は、「前記雄型及び雌型のねじ山の前記スタビングフランクの間に接続された状態で存在する0.002mm?1mmの範囲の軸方向の間隙があ」るのに対して、引用発明は、「前記雄型及び雌型のねじ山の前記スタビングフランクの間に接続された状態で存在する軸方向の間隙があ」るが、その隙間の寸法は特定されていない点。

<相違点4>
本願補正発明では、「前記雄型及び雌型のねじ山の前記ロードフランクは、組立後の干渉負荷を吸収し」ているのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

<相違点5>
本願補正発明は、「前記雌型端部は、前記ねじ領域と隣接面との間に、テーパ状の面と、凹部とを含み、前記凹部は、円筒形の面と、前記ねじ領域と前記テーパ状の面との間に設けられた回転面とを含み、前記テーパ状の面は、前記隣接面に隣接する」のに対して、引用発明は、そのような構成が特定がされていない点。

ウ.判断
以下、相違点について検討する。
<相違点1について>
(ア)
「負角を有するロードフランク」の角度を-1°?-15°の角度範囲内とすること及び「正角を有するスタビングフランク」の角度を1°?15°の角度範囲内とすることは、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野では、周知技術といえる(例えば、特表平7-504483号公報の第13頁右下欄第8行?第14頁右上欄第3第行及びFIG.6A等を参照)。
(イ)
本願の明細書の段落【0001】から、本願補正発明は、「炭化水素坑井の掘削又は作業に用いられる管状コンポーネントのための緊密な接続部」の技術分野に属するものであり、上記(2)ア.(1a)から、引用発明は、「原油及びガスの井戸の掘削と生産で用いられるねじ付き筒状接続部」の技術分野に属するものであり、いずれも、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野に属しているといえる。
(ウ)
上記(ア)?(イ)で述べたとおり、技術分野が同じであるので、上記(ア)で述べた周知技術を踏まえて、刊行物1の図5Cを参酌することで、引用発明において、「負角を有するロードフランク」及び「正角を有するスタビングフランク」を、それぞれ、「-1°?-15°の範囲の負角を有するロードフランク」及び「1°?15°の範囲の正角を有するスタビングフランク」として、上記相違点1に係る本願補正発明の構成に到ることは、当業者にとって格別に困難なことではない。

<相違点2について>
(ア)
本願の明細書の段落【0039】に、「(組立後の)接続状態では雌型ねじ領域4のねじ山40の頂部41と雄型ねじ領域5のねじ山50の谷底部52との間に径方向の間隙がある。当該径方向の間隙は、0.05mm?0.5mm程度である。接続状態での径方向の間隙の選定は所望量の潤滑油及び機械加工公差により導かれてよい。機械加工品質が高ければ間隙は0.15mm以下が望ましい。接続状態ではねじ山40の谷底部42とねじ山50の頂部51との間に、図4に見られる径方向の間隙が存在する。当該径方向の間隙は0.05mm?0.5mm程度である。」と記載されているように、本願補正発明の「径方向の間隙」は、所望量の潤滑油及び機械加工公差により選定され、機械加工品質が高ければ、該間隙は0.15mm以下、すなわち、極めて僅かな隙間であり、隙間が無いに等しい態様も含み得るものである。
そして、引用発明の「組立時」は、本願補正発明の「接続された状態」に相当するところ、引用発明の「係合状態のねじ43で、半径方向のクリアランス105がボックス側のねじ底60とピン側のねじ山84の間に形成され、又、半径方向クリアランス104がボックス側のねじ山64とピン側のねじ底80の間に形成され、組立時に、ねじ底からねじ山までの半径方向のクリアランス105無しに、又は、ねじ底からねじ山までのクリアランス104は無しに形成しうる」という事項は、クリアランスが極めて僅かであり、無いに等しい態様を意味するといえるから、上記本願補正発明の「径方向の間隙」の意味を考慮すると、「径方向の間隙」関して、両者は、実質的な差違があるとはいえない。
(イ)
仮に、引用発明では、半径方向のクリアランス104,105が無いとしても、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野において、ねじ山の頂部とその頂部に対向するねじ山の谷底部との間に、接続された状態で存在する径方向の間隙を設けることは、例えば、特開2001-124253号公報の段落【0002】、【0006】及び図1?4、特開平6-307588号公報の段落【0002】及び図3?4、特表2009-531603号公報の段落【0002】及び図1?2に示すように、周知技術であり、この隙間を設ける技術的意義は、ねじを接続する際のねじ込み易さにあることが明らかであるところ、引用発明(明細書の段落【0039】等参照)も、シール性の向上のために径方向の隙間をなるべく小さくすることを目的としているから、引用発明に上記周知技術を適用して、ねじ込み易さとシール性との両方を確保するために、接続された状態で存在する径方向の間隙を僅かに設ける程度のことは、当業者にとって、格別に困難なことではない。

<相違点3について>
(ア)
雄型及び雌型のねじ山のスタビングフランクの間に接続された状態で存在する軸方向の間隙の寸法を、必要以上に大きくしないことは、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの機能(シール機能ないし強固な接続機能など)を保持するための技術常識といえる。
(イ)
また、例えば、特開2001-124253号公報の段落【0002】、【0006】、【0011】?【0018】及び図1?4、特開平6-307588号公報の段落【0002】、【0016】?【0017】及び図3?4、特表2009-531603号公報の段落【0002】、【0069】?【0071】及び図1?2等に示すように、雄型及び雌型のねじ山のスタビングフランクの間に接続された状態で存在する軸方向の間隙の寸法が、0.002mm?1mmの範囲に該当するものは、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野において、周知技術といえる。
(ウ)
上記(ア)の技術常識及び(イ)の周知技術に鑑みることで、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野に属する引用発明において、雄型及び雌型のねじ山のスタビングフランクの間に接続された状態で存在する軸方向の間隙の寸法として、0.002mm?1mmの範囲を選定することは、当業者が必要に応じて適宜になし得たことであり、記相違点3に係る本願補正発明の構成に到ることは、当業者にとって格別に困難なことではない。

<相違点4について>
(ア)
ねじの負荷面が、ねじ込みが完了した時点で弾性的に変形するなどして、ある程度の負荷を吸収することは、ねじの技術分野における技術常識であるから、引用発明においても、組立後には、負荷面であるロードフランクは、干渉負荷を吸収しているといえる。
(イ)
仮に、本願補正発明の「ロードフランクは、組立後の干渉負荷を吸収し」ていることが、スタビングフランク側の軸方向の間隙との関連による作用であったとしても、引用発明は、「前記雄型及び雌型のねじ山の前記スタビングフランクの間に接続された状態で存在する軸方向の間隙があ」るから、本願補正発明と同様に、「ロードフランクは、組立後の干渉負荷を吸収し」ているといえる
(ウ)
上記(ア)?(イ)から、相違点4は、実質的には相違点とはいえない。

<相違点5について>
(ア)
ねじ付き筒状接続部において、ねじ込み時に、ねじ領域に潤滑油が高圧の状態で保持される現象乃至ねじ領域から潤滑油が吐き出される現象が生じることは、グリース等の潤滑油を用いているねじ付き筒状接続部では自明な事項であり、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野に属する引用発明のねじ付き筒状接続部も、通常はグリース等の潤滑油を用いているものといえるから、上記のような現象が生じることは、当業者にとって自明であり、それに伴うジャンプアウト等の課題も自明な課題といえる。
(イ)
ここで、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野において、ねじ付き筒状接続部の雌型端部に潤滑油のリザーバを設けること、その具体的な構造として、ねじ領域と隣接面との間に、シールとして機能するテーパ状の面と、リザーバとして機能する凹部とを含み、前記凹部は、円筒形の面と、前記ねじ領域と前記テーパ状の面との間に設けられた回転面とを含み、前記テーパ状の面は、前記隣接面に隣接する構造によって、雌型端部にリザーバを設けることは、例えば、特表2005-526219号公報の段落【0001】、【0015】、【0028】?【0032】及び図1?3、実願昭57-54409号(実開昭58-157087号)のマイクロフィルムの第1?5図(第4図の雄ねじ部1と雌ねじ部2との間の間隙はリザーバ機能を備えるといえる。)、特開2000-314490号公報の図1?5(図1及び図5のピン1とカップリング2との間の間隙はリザーバ機能を備えるといえる。)、特開2001-173850号公報(図3の雌部材2と雄部材4との間の間隙はリザーバ機能を備えるといえる。)、国際公開第2009-060279号(Fig.2(A)の符号31が示す間隙はリザーバ機能を備えるといえる。)に示すように、周知技術といえる。
(ウ)
引用発明も上記(イ)で述べた周知技術も、油井の掘削等に用いる配管接続ねじの技術分野という同じ技術分野に属するから、上記(ア)で述べた引用発明に内在している自明な課題を解決するために、上記(イ)で述べた周知技術を採用して、上記相違点5に係る本願補正発明の構成に到ることは、当業者にとって格別に困難なことではない。

エ.作用効果について
本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別に顕著なものということはできない。

(4)審判請求人の主張について
審判請求書において、請求人は、
「(A-2)今回補正後の請求項1に係る本願発明の説明
(A-2-1)今回補正後の請求項1に係る本願発明の技術的特徴
今回補正した請求項1に係る本願発明は、前回補正した請求項1の特徴に加えて、次の特徴、さらには、それらの特徴の組み合わせによる特徴を有するものであります。
前記雌型端部は、前記ねじ領域(4)と隣接面)8)との間に、テーパ状の面(12)と、凹部(10)とを含み、前記凹部(10)は、円筒形の面(14)と、前記ねじ領域(4)と前記テーパ状の面(12)との間に設けられた回転面18とを含み、前記テーパ状の面(12)は、前記隣接面(8)に隣接すること。
(A-2-2)上記特徴によって得られる本願発明の技術的作用効果
上記の今回補正後の本願発明によれば、上記特徴によって、次のような優れた作用効果を奏することができます。
つまり、本願発明に関するねじ付き接続部においては、本願明細書の段落【0003】
に記載しますように、接続部が張力を受けると、「ジャンプアウト」という現象が起きて、1つのねじ山から他のねじ山へ伝播し、接続部が分解するリスクが生じます。そして、この現象は内圧が高いと促進されます。
それに対し、今回補正後の本願発明では、本願明細書の段落
【0030】
の第4行?第5行に記載されていますように、
「ねじ込み時にねじ領域4、5間から潤滑油が吐出される際、凹部10は潤滑油のリザーバとして作用し、その結果、接続部の内圧が増大することが回避される」、
という有益な作用効果が得られます。 」と主張する。
しかしながら、上記(3)<相違点5について>で述べたとおりであるので、上記の請求人の主張は採用することができない。

(5)独立特許要件についてのむすび
したがって、本願補正発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年4月22日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成26年7月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2.刊行物の記載事項及び発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物の記載事項は、上記第2[理由]3.(2)ア.に示したとおりである。
また、上記刊行物に記載された発明は、上記第2[理由]3.(2)イ.(エ)に示した「引用発明」のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「雌型端部」について、「前記ねじ領域(4)と隣接面)8)との間に、テーパ状の面(12)と、凹部(10)とを含み、前記凹部(10)は、円筒形の面(14)と、前記ねじ領域(4)と前記テーパ状の面(12)との間に設けられた回転面18とを含み、前記テーパ状の面(12)は、前記隣接面(8)に隣接する」という事項の限定を省いたものである。
本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、第2[理由]3.(3)?(5)で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-04 
結審通知日 2016-02-09 
審決日 2016-03-03 
出願番号 特願2012-539218(P2012-539218)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
一ノ瀬 覚
発明の名称 ねじ付き接続部  
代理人 筒井 大和  
代理人 筒井 大和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ