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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C23C
管理番号 1316983
異議申立番号 異議2015-700335  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-21 
確定日 2016-07-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第5795420号発明「酸素含有量が低いCu-Ga系合金スパッタリングターゲット材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5795420号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5795420号は、平成23年4月1日に出願された特願2011-81806号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年10月29日に新たな特許出願とした特願2014-220011号について、平成27年8月21日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1に係る特許に対し、特許異議申立人 特許業務法人 藤央特許事務所により特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件発明の認定
上記特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのもの(以下、「本件発明1」という。)と認められる。

「原子%で、Gaを25%以上、40%未満含み、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、酸素含有量が250ppm未満、かつ結晶粒径が10μm超?35μmとしたことを特徴とするCu-Ga系合金スパッタリングターゲット材。」

第3.申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記甲第1-4号証(以下、「甲1-4」という。)を提出した。

甲1:特開2012-31508号公報
甲2:特願2010-146239号の明細書等
甲3:特開2010-265544号公報
甲4:国際公開第2011/13471号

そして、特許異議申立人は、本件特許は、本件特許の原出願の出願前である平成22年6月28日に出願された甲2に係る特許出願(特願2010-146239号)を基礎出願とし、優先権を主張して出願された甲1に係る特許出願(特願2011-140203号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反(以下、「取消理由1」という。)してされたものであって、取り消すべきものである旨主張している。
ここで、甲1に係る特許出願の出願日は平成23年6月24日であって、本件特許の原出願の出願日である平成23年4月1日の後であるから、上記「取消理由1」はすなわち、本件発明1は、甲1及び甲2の双方に共通して記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであって、取り消すべきものであるという主張といえる。
そこで、本件発明1が、甲1及び甲2の双方に共通して記載された発明と実質的に同一であるといえるかについて、以下検討する。

1.甲1及び甲2に記載された事項
(1)甲1及び甲2の双方に共通に記載された事項
甲2には、下記の事項が記載されている。また、同様の記載は甲1にもあるから、甲2に記載された下記の事項は、甲1及び甲2の双方に共通に記載された事項であるといえる。
(ア)「【請求項1】
Gaを10?95質量%含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなるCu-Ga合金ターゲット材であって、組織が平均粒径300μm以下のCu-Ga合金相からなり、かつターゲット材中の各部位のGa含有量がターゲット材全体のGa含有量の平均値に対して±3%以内であることを特徴とするCu-Ga合金ターゲット材。
・・・
【請求項3】
ターゲット材の各部位の酸素含有量がターゲット材全体の酸素含有量の平均値に対して±20%以内の範囲にあり、且つターゲット材全体の酸素含有量の平均値が300ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のCu-Ga合金ターゲット材。」
(イ)「【0009】
本発明のCu-Ga合金ターゲット材によれば、スパッタの際のターゲット上でのノジュールの発生を抑制することができる。また、本発明のCu-Ga合金スパッタリングターゲット材を使用してスパッタ成膜することで、スパッタ成膜後の薄膜中で欠陥原因となる異常放電(アーキング)やパーティクルの発生が抑制され良好なCu-Ga層が形成できるため、太陽電池の製造において極めて有効である。」
(ウ)「【0012】
本発明のCu-Ga合金ターゲット材は、平均粒径300μm以下のCu-Ga合金相からなり、かつターゲット材中の各部位のGa含有量がターゲット材全体のGa含有量の平均値に対し±3%以内である。
それは、組成変動のない均一なCu-Ga相からなるターゲット材とすることにより、組成変動におるスパッタレート差を抑制し、局所的な凹凸のバラつきをなくすことで均一なエロージョン面を実現し、ターゲット上のノジュールの発生を抑制することが可能となるためである。また、ノジュールの発生の抑制は、スパッタ中の異常放電やスパッタ成膜後の薄膜中で欠陥原因となるパーティクルの発生を抑制することにも寄与する。また、Cu-Ga合金相を平均粒径300μm以下と微細にすることで、スパッタの際に、ターゲット材表面に凹凸が小さい平滑なエロージョン面を実現することが可能となり、ターゲット材上のノジュールの発生を抑制することが出来る。」
(エ)「【0019】
ガスアトマイズ法によるCu-Ga合金粉末を使用する場合には、アトマイズ出湯温度はCu-Ga合金の融点に対して50℃から300℃高い温度であることが好ましい。この理由は、合金融点から融点に対し50℃高い温度範囲では溶湯ノズルが閉塞する可能性があり、合金融点に対し300℃を超える温度では、アトマイズ粉末がアトマイズ装置のチャンバー内で凝集する可能性があるためである。また、より球状で酸素含有量を抑制したアトマイズ粉末を得るためにはアトマイズのガス圧力は1MPa以上10MPa以下とすることが好ましい。
また、Cu-Ga合金粉末は平均粒径20?300μmであることが好ましい。平均粒径が20μmを下回る粉末では単位体積当たりの比表面積が大きくなるため、粉末全体の酸素含有量が高くなり、焼結体の酸素含有量に影響を与えるためである。平均粒径が300μmを超える粉末では焼結性が低下し、高密度の焼結体を得ることが困難になる。」
(オ)「【0021】
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明する。
先ず、Cu原料を68質量%、Ga原料を32質量%の割合になるように秤量して溶解炉内に装填し真空溶解した後、出湯温度1000℃、アトマイズガス圧4MPaでガスアトマイズを行いCu-Ga合金粉末を得た。得られた粉末を目開き250μmのふるいを用いて分級を実施し、平均粒径(D50)が75μmの粉末を得た。」
(カ)「【0025】
・・・実施例1のCu-Ga合金ターゲット材では、図1に示す光学顕微鏡像で示すように平均粒径は、50μmであった。比較例1は場所により粒径は異なるが1mmを超える大きな結晶粒であった。」
(キ)「【0026】【表1】



(2)甲1に記載された事項
(1)に記載した事項に加えて、甲1には、下記の事項も記載されている。
(ク)「【請求項3】
前記Cu-Ga合金相の平均粒径が40μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCu-Ga合金ターゲット材。」
(ケ)「【0012】
・・・以下、その理由を説明する。
まず、本発明のCu-Ga合金ターゲット材は、ターゲット材中の各部位の成分変動を抑制するために、Cu-Ga合金相を平均粒径300μm以下に限定する。本発明では、より顕著に成分変動をなくすためには、Cu-Ga合金相の平均粒径を40μm以上にすることが好ましい。これにより、本発明のCu-Ga合金ターゲット材は、スパッタの際に凹凸が小さい平滑なエロージョン面をターゲット材表面に実現することが可能となり、ターゲット上のノジュールの発生を抑制することができる。
また、本発明のCu-Ga合金ターゲット材は、組成変動のない均一なCu-Ga相からなるターゲット材とすることにより、組成変動におけるスパッタレート差を抑制し、局所的な凹凸のバラつきをなくすことで均一なエロージョン面を実現し、ターゲット上のノジュールの発生を抑制することが可能となるためである。・・・」
(コ)「【0031】
次に実施例2として、Cu原料を75質量%、Ga原料を25質量%の割合になるように秤量して溶解炉内に装填し真空溶解した後、出湯温度1050℃、アトマイズガス圧4MPaでガスアトマイズを行いCu-Ga合金粉末を得た。得られた粉末を目開き250μmのふるいを用いて分級を実施し、平均粒径(D50)が95μmの粉末を得た。
・・・
【0035】
また、実施例2のCu-Ga合金ターゲット材の平均結晶粒径を測定した。実施例2のCu-Ga合金ターゲット材では、図3に示す光学顕微鏡像で示すように平均粒径は、100μmであった。」

2.甲1及び甲2に記載された発明の認定
記載事項(ア)によれば、甲1及び甲2には、Gaを10?95質量%含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなるCu-Ga合金ターゲット材であって、組織が平均粒径300μm以下のCu-Ga合金相からなり、且つ、ターゲット材全体の酸素含有量の平均値が300ppm以下であるCu-Ga合金ターゲット材が記載されており、ここで記載事項(イ)によれば、Cu-Ga合金ターゲット材は、Cu-Ga合金スパッタリングターゲット材である。
したがって甲1及び甲2の双方には、
「Gaを10?95質量%含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなるCu-Ga合金ターゲット材であって、組織が平均粒径300μm以下のCu-Ga合金相からなり、且つ、ターゲット材全体の酸素含有量の平均値が300ppm以下であるCu-Ga合金スパッタリングターゲット材。」が共通して記載されている(以下「引用発明1」という)。

3.対比・判断
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、
「Gaを含み、残部Cuおよび不可避的不純物からなるCu-Ga系合金スパッタリングターゲット材。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
Gaの含有量が、本件発明1では、「原子%」で、「25%以上、40%未満」であるのに対し、引用発明1では、「10?95質量%」である点。

(相違点2)
本件発明1では、結晶粒径が「10μm超?35μm」と特定されているのに対し、引用発明1では、組織の平均粒径が「300μm以下」と特定されているのみである点。

(相違点3)
酸素含有量が、本件発明1では、「250ppm未満」とされているのに対し、引用発明1では、「300ppm以下」である点。

(2)判断
まず(相違点1)及び(相違点3)について検討する。
記載事項(オ)(キ)によれば、引用発明1の実施例1には、Gaを31.96質量%含有し、ターゲット材全体の酸素含有量の平均値が109.4ppmであるCu-Ga合金ターゲット材が記載されている。
そして、Gaの原子量は約69.723、Cuの原子量は約65.346であるから、引用発明1において、31.96質量%のGaおよび残部である68.04質量%のCuを原子%に換算すると、Ga:Cu=(31.96/69.723):(68.04/65.346)≒30.5:69.5となり、本件発明1のGaの含有量である「原子%」で、「25%以上、40%未満」という条件を満たす。
また、実施例1に記載された酸素含有量の平均値「109.4ppm」も、本件発明1の酸素含有量である「250ppm未満」という条件を満たす。
したがって、甲1及び甲2には、「Gaの含有量」及び「酸素含有量」について、本件発明1で特定された条件に合致する開示があるといえるから、(相違点1)及び(相違点3)は、本件発明1と引用発明1との実質的な相違点でない。

次に(相違点2)について検討する。
引用発明1で特定されている組織の平均粒径「300μm以下」には、形式的には本件発明1の結晶粒径の範囲「10μm超?35μm」も含まれるが、記載事項(カ)によれば、引用発明1の実施例には、組織の平均粒径として「50μm」が記載されているのみであって、結晶粒径が「10μm超?35μm」の範囲のものについては、具体的な記載も示唆もない。
また、記載事項(ウ)によれば、引用発明1は、「ターゲット上のノジュールの発生を抑制」することを課題とするものであるが、甲1の記載事項(ク)(ケ)には、前記課題の解決に適切な平均粒径の範囲は「40μm以上」であることが記載されている。
したがって、引用発明1において、前記課題を解決するための手段として、組織の平均粒径を具体的に選択しようとした場合、その範囲を「10μm超?35μm」とすることは、甲1及び甲2の双方に共通して記載された前記課題を解決するための具体化手段における微差とはいえない。
したがって、本件発明1は、(相違点2)の点で、甲1及び甲2の双方に共通に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、請求項1に係る本件特許は、特許法第29条の2に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

第4.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は異議申立書にて、「第3.3.(2)」にて判断した事項に加えて、下記主張をしているので、当該主張について検討する。
(1)本件特許の原出願の出願前に公開された甲3の請求項1には、Cu-Ga合金からなるスパッタリングターゲットの平均結晶粒径を10μm程度に十分小さくすることが記載されており、甲4の請求項1には、Cu-Ga合金焼結体スパッタリングターゲットで、平均粒径が5?30μmのものが記載されていることを勘案すると、引用発明1において、平均粒径を10μm超?35μmに小さくすることは、本件特許の原出願の出願時における単なる周知慣用技術の付加ないし転用に該当し、新たな効果を奏するものではない。
(2)本件特許の明細書に記載されたスパッタリングターゲット材の製造方法を、甲1及び甲2に記載された製造方法と比較すると、両者に実質的な違いはないから、甲1及び甲2に記載された製造方法によって、本件発明1のスパッタリングターゲット材を製造できることは明らかである。

(1)について
特許法第29条の2において、本件発明と引用発明とが実質的に同一であるかを判断する際に考慮する「周知慣用技術」は、引用発明に係る出願時の「周知慣用技術」である(審査基準第III部第3章4.2及び第2章第3節3.1.1(1)を参照。)。本件異議申立における甲3、甲4は、甲2の出願後に公開された刊行物であるから、本件発明1が、引用発明1の単なる周知慣用技術の付加ないし転用に該当するかの判断基準となる、「甲2の出願時」における周知慣用技術を示す根拠にはならない。

(2)について
記載事項(エ)によれば、引用発明1の「Cu-Ga合金スパッタリングターゲット材」の原料となる「Cu-Ga合金粉末」は「平均粒径20?300μm」である。
また、記載事項(オ)によれば、甲1及び甲2の実施例1においては「平均粒径75μm」の「Cu-Ga合金粉末」が原料として用いられている。
一方、本件特許明細書の段落【0020】には、「目開き500μmの網により分級」された、「500μm以下の粉末」について「酸素分析を行なった」旨の記載があるが、「Cu-Ga系合金スパッタリングターゲット材」の原料となる「Cu-Ga合金粉末」の平均粒径については、具体的な記載はない。
そして、段落【0025】の【表2】に記載された、結晶粒径が12?35μmの「Cu-Ga系合金スパッタリングターゲット材」の実施例と、段落【0014】の、「なお、アトマイズ粉末の結晶粒径は本発明範囲の結晶粒径より十分に小さい」という記載を考慮すれば、本件発明における実施例の「Cu-Ga系合金スパッタリングターゲット材」の製造に用いられた粉末の粒径は、12?35μmより「十分に小さい」ものであるといえる。
したがって、本件特許明細書に記載されたスパッタリングターゲット材の製造方法と、甲1及び甲2の双方に共通して記載された製造方法とは、少なくとも原料となる粉末の粒径の点で実質的な違いがあるから、甲1及び甲2に記載された製造方法によって、本件発明1のスパッタリングターゲット材を製造できることが明らかであるとはいえず、当該主張は採用できない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人が主張する取消理由1によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

したがって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-06-23 
出願番号 特願2014-220011(P2014-220011)
審決分類 P 1 651・ 161- Y (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安齋 美佐子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 萩原 周治
中澤 登
登録日 2015-08-21 
登録番号 特許第5795420号(P5795420)
権利者 山陽特殊製鋼株式会社
発明の名称 酸素含有量が低いCu-Ga系合金スパッタリングターゲット材  
代理人 椎名 彊  
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