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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1317416 |
審判番号 | 不服2015-13651 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-17 |
確定日 | 2016-07-20 |
事件の表示 | 特願2013-123579「移動局の制御操作のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開、特開2013-258702〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年(平成22年) 3月 4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年(平成21年) 3月 4日 米国)を国際出願日とする出願である特願2011-553115号の一部を、平成25年 6月12日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成25年 7月 9日 :翻訳文の提出 平成25年 7月 9日 :手続補正書の提出 平成26年 6月 3日付け:拒絶理由の通知 平成26年10月 7日 :意見書、手続補正書の提出 平成27年 3月 5日付け:拒絶査定 平成27年 7月17日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年 7月17日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「 モバイルデバイスの動きを検知するように構成された1つ以上の動きセンサと、 前記モバイルデバイスの検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示すかどうか決定する制御論理と、 移動局の検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示す場合に、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する制御論理と、 デバイス制御が開始され得る1つ以上の時間区間を示す期間制限情報を格納するメモリと、を備え、 前記制御論理はさらに、現在時間が前記1つ以上の時間区間に含まれるかどうか決定するために前記現在時間を前記期間制限情報と比較することができ、 前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することは、 前記移動局の検知された前記動きが前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が始められることになっていることを示すこと、および前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することを備える モバイルデバイス。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「 モバイルデバイスの動きを検知するように構成された1つ以上の動きセンサと、 前記モバイルデバイスの検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示すかどうか決定する制御論理と、 移動局の検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示す場合に、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する制御論理と、ここで、前記制御論理はさらに、検知された前記動きに基づいて衛星測位システム受信機を活性化することができる、 デバイス制御が開始され得る1つ以上の時間区間を示す期間制限情報を格納するメモリと、を備え、 前記制御論理はさらに、現在時間が前記1つ以上の時間区間に含まれるかどうか決定するために前記現在時間を前記期間制限情報と比較することができ、 前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することは、前記移動局の検知された前記動きが前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が始められることになっていることを示すこと、および前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することを備え、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することは、前記衛星測位システム受信機によって決定された前記モバイルデバイスの位置にさらに基づく、 モバイルデバイス。」(下線は、請求人が手続補正書において補正箇所を示すものとして付加したものを援用したものである。)という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 2.新規事項・シフト補正の有無について 上記補正は、下記(1)、(2)に記載した構成を付加するものである。 (1)補正前の請求項1に記載された「制御論理」に関し、「ここで、前記制御論理はさらに、検知された前記動きに基づいて衛星測位システム受信機を活性化することができる」こと。 (2)補正前の請求項1に記載された「前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する」ことに関し、「前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することは、前記衛星測位システム受信機によって決定された前記モバイルデバイスの位置にさらに基づく」こと。 そうしてみると、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内(本願明細書の翻訳文の段落【0042】、【0043】)になされた補正であり、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合し、また、同法第17条の2第4項(シフト補正)の規定に適合することも明らかである。 3.補正の目的について (1)上記「2.新規事項・シフト補正の有無について」の項で検討した(1)に関し、上記「衛星測位システム受信機」は「1つ以上の動きセンサ」で検出された動きに基づいて活性化することができるものであるから(本願明細書の翻訳文の段落【0042】、【0043】)、補正前の請求項1に記載された「1つ以上の動きセンサ」とは異なるものであり、補正前の請求項1に記載された発明特定事項のいずれの事項の限定でもない。 また、本件補正により、「検知された前記動きに基づいて衛星測位システム受信機を活性化する」という作用(働きや役割)が付加されているが、これは、補正前の請求項1に記載された「検知された前記動き」に基づいて「前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する」という作用(働きや役割)とは異なるものであるから、当該作用を概念的に下位にしたものではなく、補正前の発明特定事項を限定するものでない。 さらに、補正前の発明の解決しようとする課題(本願明細書の翻訳文の段落【0001】?【0003】)は「車両の操作に専念しているべき」ときなどに「移動局の使用をコントロールすること」にあるのに対し、補正後の発明の解決しようとする課題(本願明細書の翻訳文の段落【0042】)は「衛星測位システム(SPS)受信機」を使用する場合に生じる「パワーコスト」を抑えることにあるから、補正前後の発明の解決しようとする課題は同一でない。 (2)上記「2.新規事項・シフト補正の有無について」の項で検討した(2)に関し、本件補正により、「前記衛星測位システム受信機によって決定された前記モバイルデバイスの位置にさらに基づ」いて「前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する」という作用(働きや役割)が付加されているが、これは位置に基づく変更であり、補正前の請求項1に記載された「移動局の検知された前記動き」に基づいて「前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する」という作用(働きや役割)とは異なるものであるから、当該作用を概念的に下位にしたものではなく、補正前の発明特定事項を限定するものでない。 そうしてみると、本件補正前の請求項1の発明特定事項の一部を限定的に減縮しているものということはできないし、また、請求項の削除、及び、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成27年 7月17日に提出された手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりのものである。 2.引用発明、周知技術 (1)引用発明 これに対して、原審の拒絶査定で引用された文献であり、本願の優先権主張の日前に公開された、特開2008-053988号公報(平成20年3月6日公開。以下、「引用例」という。)には、「携帯電話端末装置」の発明に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ「【0045】 この第2の実施形態に係る携帯電話端末装置は、システム制御部1、送受信部2、記憶部3、操作部4、呼び出し部5、表示部6、インターフェイス部7、振動検出部8、およびアンテナ9を備えている。図7において、図1に示す構成要素に相当するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。 【0046】 システム制御部1は、送受信部2、記憶部3、操作部4、呼び出し部部5、表示部6、インターフェイス部7、および振動検出部8を制御すると共に、特徴とする構成要素として、新たに設けられた車安全モードがオンであるか否かを判定する車安全モード判定手段15と、車安全モードがオンであると判定されたときに、振動検出部8がエンジン振動を検出しているか否かを判定するエンジン振動検出判定手段16と、振動検出部8がエンジン振動を検出していると判定された後、操作部4による操作のアクションの有無を判定する操作アクション有無判定手段17と、前記操作のアクションが有ったと判定されたときに、操作のロックを行い、表示部6に、運転中であり危険であるため操作できない旨の警告メッセージを表示させると共に、操作を望むなら安全な場所でエンジンを切って携帯電話端末装置を使用するように指示するメッセージを表示させる操作ロック/メッセージ表示手段18とを有する。 【0047】 振動検出部8は、前記第1の実施形態では、ユーザが携帯電話端末装置を携帯して歩行している時に歩行振動を検出したが、この第2の実施形態では、ユーザが携帯電話端末装置を携帯して自動車の車内に居る時にエンジンがかかっていれば、エンジン振動を検出することになる。歩行振動とエンジン振動との区別は、振動数によって行うことができる。即ち、人間が歩行している場合は、体が上下に動くことによる振動パターンであるが、エンジンの場合は、上下左右に動くことによる振動パターンであり、また、エンジン振動は、単位時間当たりの振動数が、歩行振動に比べて遥かに大きい。したがって、システム制御部1のエンジン振動検出判定手段16は、振動検出部8からの振動検出信号の周波数が予め定めた周波数(エンジンのアイドリング状態での周波数)以上になれば、振動検出部8がエンジン振動を検出したと判定することができる。 【0048】 図8は第2の実施形態において車安全モードの処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートおよび図7を参照して車安全モードの処理について説明する。 【0049】 先ず、システム制御部1の車安全モード判定手段11は、車安全モードがデフォルトとしてオンに設定されているので、車安全モードがオンであると判定し(ステップN1)、システム制御部1のエンジン振動検出判定手段16は、振動検出部8がエンジン振動を検出しているか否かを判定する(ステップN2)。 【0050】 ここで、ユーザがエンジンをかけると、振動検出部8は、エンジン振動を検出し、振動検出信号を出力する。これにより、システム制御部1のエンジン振動検出判定手段16は、その振動検出信号を入力することにより、振動検出部8がエンジン振動を検出していると判定する。そして、システム制御部1の操作アクション有無判定手段17は、操作部4による操作のアクションが有ったか否かを判定する(ステップN3)。 【0051】 前記操作のアクションが有ったと判定されたとき、システム操作部1の操作ロック/メッセージ表示手段18は、操作のロックを行い、表示部6に、運転中であり危険であるため操作できない旨の警告メッセージを表示させると共に、操作を望むなら安全な場所でエンジンを切って携帯電話端末装置を使用するように指示するメッセージを表示させる(ステップN4)。 【0052】 一方、ステップN1において、システム制御部1の車安全モード判定手段15により、車安全モードがオフであると判定されたときには、システム制御部1は、車安全モードの処理は無しで、通常の動作処理(携帯電話端末装置の本来の機能である電話などに対する処理)を行う(ステップN5)。なお、車安全モードの設定に関するデフォルトはオンとしておく。これにより、ユーザが車安全モードをオフに設定しない限り、車安全モードがオンになっていて車安全モードが働いていることになる。 【0053】 車安全モードは、出来れば強制的に常にオンにしておくことが望ましいが、振動検出部8の誤動作なども考えられるため車安全モードのオンからオフへの切り替えは矢も得ない。例えば、エンジンはかかっているが車は停止している時に電話をかけたりする場合、車安全モードがオン状態であれば、振動検出部8が運転中のエンジン振動としてエンジン振動を検出するが、この検出は振動検出部8の誤検出と同じようなものであり、これにより、携帯電話端末装置の本来の機能を停止させ、車内で電話をかけることができなくなる。したがって、エンジンがかかっていても車が停止している状態でユーザが車内に居るときは、車安全モードをオフにしておけば、通常の携帯電話端末装置として使用することができる。」(9頁?11頁) 上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、 a 上記イの【0045】の記載によれば、引用例には、振動検出部と、システム制御部とを備える携帯電話端末装置が記載されている。 b 上記イの【0047】の記載によれば、上記振動検出部が、携帯電話端末装置の振動を検出することは明らかである。 c 上記イの【0046】、【0047】の記載によれば、上記システム制御部のエンジン振動検出判定手段が、振動検出部により検出された携帯電話端末装置の振動が、エンジン振動であるか否かを判定することは明らかである。 また、上記イの【0046】、【0053】の記載によれば、エンジン振動であると判定された場合に、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することとなっていることも明らかである。 そうすると、システム制御部のエンジン振動検出判定手段は、携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することとなっているエンジン振動であるか否かを判定すると言える。 d 上記イの【0046】、【0052】、【0053】の記載によれば、上記cで言及した、エンジン振動検出判定手段により、検出された振動がエンジン振動であると判定された場合に携帯電話端末装置の本来の機能を停止することは明らかである。 また、上記イの【0052】、【0053】の記載によれば、携帯電話端末装置の本来の機能を停止させる処理が、システム制御部によって行われることは明らかであり、技術常識に照らし、システム制御部が、当該停止させる処理を行う制御手段を有することも明らかである。 そうすると、システム制御部は、携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止させることとなっているエンジン振動であると判定された場合に、携帯電話端末装置の本来の機能を停止する制御手段を有すると言える。 e 上記dの検討から、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することは、携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することとなっているエンジン振動であることを示すことに応じて、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することを備えると言える。 以上を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「携帯電話端末装置の振動を検出する振動検出部と、 携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することとなっているエンジン振動であるか否かを判定するシステム制御部のエンジン振動検出判定手段と、 携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止させることとなっているエンジン振動であると判定された場合に、携帯電話端末装置の本来の機能を停止するシステム制御部の制御手段と、を備え、 携帯電話端末装置の本来の機能を停止することは、携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することとなっているエンジン振動であることを示すことに応じて、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することを備える 携帯電話端末装置。」 (2)周知技術 同じく原審の拒絶査定で引用された特開平11-331369号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ロ「【0005】このような問題に対する一つの対処方法として、「マナーモード」や「ドライブモード」と呼ばれる機能を付加した携帯電話装置がある。マナーモードは、着信音を鳴らさずに、例えばバイブレータ機能でユーザに着信があった旨を通知するモードである。ドライブモードは、着信音を鳴らさずに、例えば「ただ今、運転中のため、電話にでられません。」といったような応答メッセージを流し、相手にこちらの状況を通知するモードである。」(2頁) ハ「【0019】スケジュール機能用RAM13は、本装置のスケジュール機能で用いられるスケジュール情報を格納するためのメモリであり、スケジュールデータベースとしてCPU11により参照される。電話帳機能用RAM14は、本装置の電話帳機能で用いられる電話帳情報を格納するためのメモリであり、電話帳データベースとしてCPU11により参照される。」(3頁) ニ「【0034】提供されるアイコンの一例としては以下のようなものが考えられる。 ・睡眠中(重要度レベル5、全面禁止) ・通勤中(重要度レベル2、マナーモードもしくはドライブモード) ・勤務中(重要度レベル3、マナーモード) ・会議中(重要度レベル4、マナーモード) ・指定外の時間帯(重要度レベル1、着信音による通知) ・アラーム通知(通知方法任意) ・発呼指定(発呼を促す、もしくは強制的に指定接続先に発呼する) ・ユーザ設定(任意レベル、任意通知方法) また、図3に示すように、ユーザは初期設定の重要度レベルおよび通知方法を一括して登録することができ、例えば睡眠中や通勤など、毎日同じ時間帯の行動に対しては登録の手間を減らすことができる。この場合、項目51で曜日、項目52で期間を設定して一括登録を行う。」(4?5頁) ホ「【0041】携帯電話機能の待ち受け状態の時に、無線回路21を通じて外部からの呼び出し信号を受信すると(ステップS11)、CPU11はスケジュール機能用RAM13に格納されたスケジュール登録内容を参照して、当該時刻に設定されているスケジュールをチェックし、そのスケジュールの重要度レベルを取得する(ステップS12)。 【0042】このスケジュールの重要度レベルが全面許可、つまり、すべての着呼を受け付ける最低レベル「1」であれば(ステップS13のYes)、CPU11は、上記図2の通知設定項目43に設定された通知方法に基づいて通知制御部25を制御することにより、発信相手優先の通知を行う(ステップS18)。 【0043】このように、スケジュールの重要度レベルが全面許可の場合には、スケジュール内容に関係なく、例えば着信音などにより着信があった旨をユーザに通知することになる。 【0044】一方、全面許可でないならば(ステップS13のNo)、CPU11は、まず、当該スケジュールの重要度レベルが全面禁止、つまり、重要度レベル「5」になっているか否かをチェックする(ステップS14)。全面禁止になっているならば(ステップS14のYes)、CPU11は上記図2の通知設定項目42に設定された通知方法に基づいて通知制御部25を制御することにより、スケジュール優先の通知を行う(ステップS17)。 【0045】このように、スケジュールの重要度レベルが全面禁止の場合には、現在のスケジュールを最優先とし、例えばユーザ通知を全面禁止(通知しない)とするなどの対応処理を行うことになる。」(5頁) ヘ「【0051】このようなスケジュール内容と関連付けた通知制御による具体的な効果としては、例えば毎日ほぼ決まった時間帯に通勤をしている場合に、スケジュール上にその通勤時間帯を登録しておけば、自動的にマナーモードなどに切替えが行われる。これにより、その都度モードを切り替えるといった操作の煩わしさや、切り替え忘れなどを防ぐことができる。」(6頁) 同じく原審の拒絶査定で引用された特開2001-45570号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ト「【0003】この種の携帯電話装置は、ユーザがドライブモード機能を設定するためのキーの操作を行うと、ドライブモード設定モードを実行モードとして動作するようになり、これにより、着信を自動的に拒否すると共に、運転中にあることを発信者に自動的に通知することが可能になり、運転に支障を来すことを未然に回避することが可能になる。また、ユーザがマナーモード機能を設定するためのキーの操作を行うと、マナーモード設定モードを実行モードとして動作するようになり、これにより、マイクロホンの感度を自動的に高めたり、着信をバイブレータにより知らせるバイブレータ着信に自動的に切替えることが可能になり、人混みの中に居る場合であっても、周囲への迷惑を抑えて通話することが可能になる。」(2頁) チ「【0032】また、ユーザは、他の所定のキーの操作を行うことにより、「マナーモード自動切替機能」を有効に指定することが可能になっており、制御部2は、「マナーモード自動切替機能」が有効に指定されているときには、時計部8から与えられる時刻信号・時間信号および移動速度検出部10から与えられる移動速度検出信号のうちのいずれかの信号に基づいて、上記したマナーモード機能を設定・解除するようになっている。 【0033】次に、上記した構成の作用について、図1および図2を参照して説明する。まず、図1は、制御部2がドライブモード機能を設定する処理を示している。尚、ここでは、制御部2がドライブモード機能を解除しているドライブモード解除モードを実行モードとして動作していることを前提とする。 【0034】制御部2は、何らかのキーの操作が行われたか否かを判定し(ステップS1)、自動切替機能が有効に指定されているか否かを判定し(ステップS2)、自動切替機能が有効に指定されているときには、設定時刻(本発明でいう所定時刻)が指定されているか否かを判定し(ステップS3)、携帯電話装置1が車載アダプタに対して装着されたか否かを判定し(ステップS4)、携帯電話装置1の移動速度が所定速度以上になったか否か判定する(ステップS5)。 【0035】さて、ここで、制御部2は、何らかのキーの操作が行われると、ステップS1において「YES」と判定し、キーの操作がドライブモード機能を設定するためのものであるか否かを判定する(ステップS6)。そして、制御部2は、キーの操作がドライブモード機能を設定するためのものである場合には、ステップS6において「YES」と判定し、ドライブモード解除モードから、ドライブモード機能を設定するドライブモード設定モードに切替え、これ以降、ドライブモード設定モードを実行モードとして動作する(ステップS7)。 【0036】また、制御部2は、自動切替機能が有効に指定されており、設定時刻が指定されていると、ステップS3において「YES」と判定し、設定時刻になったか否かを判定する(ステップS8)。そして、制御部2は、設定時刻になると、ステップS8において「YES」と判定し、ドライブモード解除モードから、ドライブモード機能を設定するドライブモード設定モードに切替え、これ以降、ドライブモード設定モードを実行モードとして動作する(ステップS7)。」(5頁) 原審の拒絶理由に引用された特開2001-251395号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 リ「【0025】(実施形態1)図1は、本発明の第1の実施形態の携帯電話機の概略構成を示すブロック図である。この携帯電話機の主な構成は、アンテナ1、無線送受信部2、制御部3、記憶部4、設定・入力部5、表示部6からなる。無線送受信部2は、アンテナ1を介して送受信される無線信号の変調・復調を行う。設定・入力部5は、当該携帯電話機に設けられているいくつかの入力用ボタンにより構成されるものであって、後述するスケジュールおよび動作モードの設定入力を行う部分である。記憶部4は、送受信情報、スケジュール情報および動作モード設定情報など本携帯電話機で扱われる種々の情報を記憶する。また、それらの情報は表示部6に表示することができる。 【0026】制御部3は、例えばマイクロコンピュータより構成されるものであって、無線通信に必要なデータの処理、記憶部4における記憶動作、表示部6における表示動作などの制御を行う他、種々の機能を備えている。その主な機能部は、スケジュール機能部31、動作モード機能部32、時計機能部33からなる。 【0027】スケジュール機能部31は、電子手帳などで良く知られているスケジュール機能を有するものであって、一日または数日間のスケジュールの作成が可能である。このスケジュールには、スケジュール項目の他に着信音オフモード(マナーモード)や留守番電話モード等の当該携帯電話機に予め設けられている種々の動作モードを指定するための項目が設けられており、スケジュール項目または設定時間帯ごとに任意に動作モードを指定することができる。図2に、スケジュールの一例を示す。このスケジュールによれば、設定時間、スケジュール項目、動作モードの3つをそれぞれ任意に設定することができる。 【0028】時計機能部33は、実時間データを発生するもので、この実時間データに基づいて現在の時刻を知ることができる。動作モード機能部32は、着信音オフモードや留守番電話モード等の種々の動作モードを実行する部分であって、所定のボタン入力により指定される動作モードを実行したり、上記スケジュール中に指定されている動作モードを実行したりする。スケジュール中の動作モードを実行する場合は、時計機能部33が発生する実時間データに基づいて、現在の時刻に設定されている動作モードが実行される。なお、ボタン入力により指定される動作モードとスケジュール中に指定されている動作モードとが競合する場合は、いずれか一方を優先するようにすればよく、ここでは、動作モード機能部32がスケジュール中に指定されている動作モードを優先して実行するように構成されている。 【0029】次に、この携帯電話機の制御部3による動作モード移行の具体的な動作を図3を参照して説明する。図3は、動作モード移行処理の一手順を示す図である。 【0030】まず、スケジュール開始かどうかが判断され(ステップS10)、スケジュール開始であれば、続いて該当時刻になったか否かが判断される(ステップS11)。該当時刻になった場合は、続いて現在設定されている動作モードからスケジュール中に指定されている動作モードへの移行を実行する(ステップS12)。通常、スケジュール開始前は、通常モード(着信音オン)に設定されるため、ステップS12では、通常モードから他の動作モードへ移行されることになる。なお、移行前の動作モードと移行しようとする動作モードが同じ場合は、移行前の動作モードがそのまま維持されることになる。 【0031】動作モードが移行されると、続いて、次該当時刻になったか否かが判断される(ステップS13)。次該当時刻になった場合は、続いて現在設定されている動作モードからスケジュール中に指定されている動作モードへの移行を実行し(ステップS14)、再びステップS13へ戻る。次該当時刻がない場合は、スケジュール終了かどうかが判断され(ステップS10)、スケジュール終了でなければ再度ステップS13へ戻り、スケジュール終了であれば動作モード移行処理を終了する。 【0032】以上の動作モードの移行を具体的に示したものが図4である。まず、スケジュールaの開始時刻T1になると、指定されている動作モードA(通常モード)に移行される。動作モードA(通常モード)移行後、所定の時間が経過してスケジュールbの開始時刻T2(この時刻は、スケジュールaの終了時刻でもある。)になると、動作モードA(通常モード)から指定されている動作モードB(マナーモード)に移行される。動作モードB(マナーモード)移行後、所定の時間が経過してスケジュールcの開始時刻T3(この時刻は、スケジュールbの終了時刻でもある。)になると、動作モードB(マナーモード)から指定されている動作モードC(留守番電話モード)に移行される。」(4頁) 上記周知例1?3には、スケジュールに応じて動作モードを変更する携帯電話端末装置に関する技術が記載されており、上記チの【0034】、【0036】に関し、設定時刻が記憶手段に格納されること、また、上記ホの【0041】、上記ヘの【0051】、上記チの【0036】、上記リの【0028】?【0032】に関し、設定、登録される時刻が到来しているか否かを判断するために現在時間との比較、決定の処理を行うことは、技術常識に照らして明らかである。 そして、「ドライブモード」、「マナーモード」等の「着信音」を鳴らさない、あるいは「着信拒否」を行うといった状態にすることは、機能の有効性の変更と言えることを考慮すると、上記ロ?リの記載によれば、携帯電話端末装置において、「1つ以上の時間区間を示す期間制限情報を格納するメモリを備え、現在時間が前記1つ以上の時間区間に含まれるかどうか決定するために前記現在時間を前記期間制限情報と比較することができ、前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて、モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する」こと(以下、「周知技術」という。)は、周知である。 3.対比 本願発明を引用発明と対比すると、 a 引用発明の「携帯電話端末装置」は、本願発明の「モバイルデバイス」に含まれる。 また、「振動」は「動き」の態様の1つであるから、引用発明の「振動を検出する振動検出部」は、本願発明の「動きを検知するように構成された」「動きセンサ」に含まれる。 そうすると、引用発明の「携帯電話端末装置の振動を検出する振動検出部」は、本願発明の「モバイルデバイスの動きを検知するように構成された1つ以上の動きセンサ」に含まれる。 b 引用発明の「機能を停止すること」は、本願発明の「機能のデバイス制御」に含まれる。 また、引用発明では、「検出された振動」が「エンジン振動」であると判定された場合に、「携帯電話端末装置の本来の機能を停止する」から、「検出された振動」が「エンジン振動」であるか否かを判定することは、「検出された振動」が「携帯電話端末装置の本来の機能を停止する」制御が開始されることになっていることを示すかどうか決定することと言える。 ここで、本願明細書の翻訳文の段落【0045】の記載によれば、「ここに使用される用語「制御論理」は、(機能性が、プロセッサを使用して実行される機械可読媒体上に格納された命令によってインプリメントされる)ソフトウェア、(機能性が、(論理ゲートのような)回路類を使用してインプリメントされ、回路類が特別の入力のための特別の出力を提供するように構成される)ハードウェア、および(機能性が、再プログラム可能な回路類を使用してインプリメントされる)に適合し、さらにソフトウェア、ハードウェアおよびファームウェアの1つ以上の組合せに適合する。」とされていることを考慮すると、引用発明の「システム制御部のエンジン振動検出判定手段」は、本願発明の「制御理論」に含まれる。 そうすると、上記aの検討を踏まえれば、引用発明の「携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止させることとなっているエンジン振動であるか否かを判定するシステム制御部のエンジン振動検出判定手段」は、本願発明の「前記モバイルデバイスの検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示すかどうか決定する制御論理」に含まれる。 c 引用発明の「機能を停止すること」は、上記bで検討した、本願発明の「機能のデバイス制御」であって、「機能の有効性を変更する」ことに含まれる。 そうすると、上記bの検討を踏まえれば、引用発明の「携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止させることとなっているエンジン振動であると判定された場合に、携帯電話端末装置の本来の機能を停止するシステム制御部の制御手段」は、本願発明の「移動局の検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示す場合に、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する制御論理」に含まれる。 d 上記b及びcの検討を踏まえれば、引用発明の「携帯電話端末装置の本来の機能を停止することは、携帯電話端末装置の検出された振動が、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することとなっているエンジン振動であることを示すことに応じて、携帯電話端末装置の本来の機能を停止することを備える」ことと、本願発明の「前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することは、前記移動局の検知された前記動きが前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が始められることになっていることを示すこと、および前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することを備える」こととは、「前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することは、前記移動局の検知された前記動きが前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が始められることになっていることを示すことに少なくとも部分的に応じて、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することを備える」点で共通する。 以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「 モバイルデバイスの動きを検知するように構成された1つ以上の動きセンサと、 前記モバイルデバイスの検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示すかどうか決定する制御論理と、 移動局の検知された前記動きが、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が開始されることになっていることを示す場合に、前記モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する制御論理と、 前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することは、 前記移動局の検知された前記動きが前記モバイルデバイスの1つ以上の機能のデバイス制御が始められることになっていることを示すことに少なくとも部分的に応じて、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更することを備える モバイルデバイス。」 (相違点) 一致点の「前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更すること」に関し、本願発明では、「デバイス制御が開始され得る1つ以上の時間区間を示す期間制限情報を格納するメモリと、を備え、 前記制御論理はさらに、現在時間が前記1つ以上の時間区間に含まれるかどうか決定するために前記現在時間を前記期間制限情報と比較することができ」、「前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更する」ものであるのに対し、引用発明では、「前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて」行うものであることについて明示されていない点。 4.検討 上記相違点について検討すると、上記「2.引用発明、周知技術」の項中の「(2)周知技術」の項で述べたように、携帯電話端末装置において、「1つ以上の時間区間を示す期間制限情報を格納するメモリを備え、現在時間が前記1つ以上の時間区間に含まれるかどうか決定するために前記現在時間を前記期間制限情報と比較することができ、前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて、モバイルデバイスの1つ以上の機能の有効性を変更する」ことは周知技術である。 そうすると、引用発明の「機能を停止させる制御」の条件として、エンジン振動の検出に加え、上記周知技術の「前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていること」を採用し、本願発明のように、「1つ以上の時間区間を示す期間制限情報を格納するメモリを備え、現在時間が前記1つ以上の時間区間に含まれるかどうか決定するために前記現在時間を前記期間制限情報と比較することができ、前記現在時間が1つ以上の時間区間に含まれていることに少なくとも部分的に応じて、前記モバイルデバイスの前記1つ以上の機能の前記有効性を変更する」ようにすることは格別困難な事項とは言えない。 そして、本願発明が奏する効果も引用発明及び周知技術から容易に予測できる範囲内のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-16 |
結審通知日 | 2016-02-23 |
審決日 | 2016-03-08 |
出願番号 | 特願2013-123579(P2013-123579) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 町井 義亮、松平 英 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
坂本 聡生 山本 章裕 |
発明の名称 | 移動局の制御操作のためのシステムおよび方法 |
代理人 | 奥村 元宏 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 井関 守三 |