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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61C
管理番号 1317488
審判番号 不服2015-14205  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-29 
確定日 2016-07-25 
事件の表示 特願2010-148623号「インプラント螺子および人工歯根および人工関節固定ボルト」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月19日出願公開、特開2012-10835号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月30日に出願したものであって、平成26年2月10日付けで拒絶理由が通知され、同年4月4日に手続補正書が提出され、さらに、同年12月25日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月4日に手続補正書が提出されたが、同年4月28日付けで該補正を却下する決定がされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正について
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の発明
(1)本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
哺乳類の体内骨部(1)に螺着されるインプラント螺子(10)であって、
前記螺子(10)の側面(2)は少なくともネジ山部(20)とネジ谷部(21)とを有し、
前記ネジ谷部(21)は円弧状に形成されており、
前記ネジ谷部(21)の谷底に円弧状の溝部(22)を設け、
半円弧の溝部(22)の直径を溝幅(62)とし、
ネジ谷部(21)と溝部(22)は同期し、溝部(22)の溝底を前記ネジ谷部(21)の谷底とし、
前記ネジ谷部(21)の谷底点から両隣のネジ山部(20)頂点それぞれに引いた直線の作成する角度が鈍角となる
ことを特徴とするインプラント螺子。」
と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す。)

そうすると、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「溝部(22)」について「半円弧の溝部(22)の直径を溝幅(62)とし」と「溝部(22)の溝底を前記ネジ谷部(21)の谷底とし」との限定(以下、「限定1」という。)を加えるとともに、「ネジ谷部(21)」について「前記ネジ谷部(21)の谷底点から両隣のネジ山部(20)頂点それぞれに引いた直線の作成する角度が鈍角となる」との限定(以下、「限定2」という。)を加えるものである。

(2)次に、限定1及び限定2に係る補正が願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものかどうかについて検討する。
本件出願明細書の段落【0020】に「・・・・・ 図6は実施例1のインプラント螺子側面の拡大断面図である。採寸結果は、以下の通りである。
『ネジピッチ(ネジ山部20とネジ谷部21を形成する)』6は、0.9mmである(0.6?1.0mmにしてもよい)。『ネジ山の高さ』60は、0.3mmである(0.2?0.4mmにしてもよい)。『溝部22の深さ』61は、0.1mmである(0.05?0.15mmにしてもよい)。『溝部22の溝幅』62は、0.2mmである(0.1?0.3mmにしてもよい)。・・・・・ このような寸法で形成したインプラント螺子10は、溝部22を有することから、『ネジ山部20とネジ谷部21のみからなるインプラント螺子』と比較して、接触面積を12.1%増加させることができた。」と記載されている。
先ず、限定1を検討するに、本件出願明細書に明記されていないものの、図6からみて「溝部22」の断面形状に「半円弧状」が含まれていると解するのが相当であり、「溝部22の深さ61は0.1mm」と「溝部22の溝幅62は、0.2mm」は、上記限定の「半円弧の溝部(22)の直径を溝幅(62)とし」を意味しているといえる。そして、「半円弧」とすることにより応力集中が小さくなることも技術常識である。また、「溝部(22)」は「ネジ谷部(21)」の一部であるといえるから、図6からみて、「溝部(22)の溝底」(審決注:「溝部22の深さ」61と「溝部22の溝幅」62とで示される溝部22における、溝幅方向の中間の位置。)が「ネジ谷部(21)の谷底」となることは、明らかである。
そうすると、限定1の技術事項は、本件出願明細書に「半円弧」なる用語が明記されていないものの、当業者において技術常識の範囲内の事項であって、限定1により新たな技術的事項が追加されているとまでいえない。

次に、限定2を検討するに、本件出願明細書の段落【0020】の「ネジピッチ6は0.6?1.0mm」および「ネジ山の高さ60は0.2?0.4mm」は、上記限定の「前記ネジ谷部(21)の谷底点から両隣のネジ山部(20)頂点それぞれに引いた直線の作成する角度」が約74°?約134°であることを意味し、上記「約74°?約134°」には「90°?134°」が含まれており、「鈍角」は「90°より大きい角度」であって該「90°?134°」の上位概念であるものの、該「90°?134°」の範囲を「鈍角」と記載することも、一般的であるといえる。
一方、例えば、特公昭53-29780号公報に「第3図aと第4図a、第5図aによりねじ山の一つに集中荷重Pが作用する場合のねじ谷底に生じる応力σ_(b)・p/Pを比較すると、その最大値は現用ISOメートルねじの4.35に比し、本発明では3.73(第4図a)、1.41(第5図a)と小さく、疲れに対し極めて有利となっている。さらに、第3図bと第4図b、第5図bにより無限遠方で一様に引張つた場合のねじ谷底に生じる応力σ_(t)/σ_(mean)を比較すると、その最大値は現用ISOメートルねじの2.37に比し、本発明では1.80(第4図b)、1.83(第5図b)と小さく、疲れに対し極めて有利となっている。」と記載されている(2頁4欄1?12行)ことからみて、「ネジ谷部の谷底点から両隣のネジ山部頂点それぞれに引いた直線の作成する角度が鈍角となる」ことにより応力集中が小さくなることは、当業者において技術常識であるといえる。したがって、上記「約74°?約134°」を「90°?134°」、すなわち、「鈍角」と限定により、新たな技術的意義を奏することはないというべきである。
そうすると、限定2の技術事項は、本件出願明細書に「鈍角」なる用語が明記されていないものの、当業者において技術常識の範囲内の事項であって、限定2により新たな技術的事項が追加されているとまでいえない。

(3)してみると、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、特許法第17条の2第3項の要件を満たし、また、同法第17条の2第4項の要件を満たすことは明らかである。そして、同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することも、明らかである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用文献およびその記載事項
(1)本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ、原査定の拒絶の理由に引用された文献である国際公開第2010/006740号(平成22年1月21日国際公開、以下「引用文献1」という。)には、「 COMPACT DENTAL IMPLANT(日本語訳:小型歯科用インプラント)」について、第1?3図とともに次の事項が記載されている。(日本語訳として、対応する特表2011-527917号の記載を参照して合議体が作成したものを付記する。また、下線は当審にて付与したものである。)

(1-ア)
「[0001] The present invention generally relates to dental restoration and more specifically, to dental implants. [0002] Implant dentistry involves the restoration of one or more teeth in a patient's mouth using artificial components. Such artificial components typically include a dental implant and a prosthetic tooth, an abutment (single or multi-unit) and or a bridge or arch that is secured to the dental implant.」(日本語訳:【0001】本発明は、一般的に歯科修復に関し、より詳細には歯科用インプラントに関する。【0002】インプラント歯科学は、人工要素を使用する患者の口内の一つ以上の歯の修復を含む。かかる人工要素は典型的には、歯科用インプラント、及び歯科用インプラントに固定される補綴歯、アバットメント(単一またはマルチユニット)及び/またはブリッジまたはアーチを含む。)

(1-イ)
「[0003] The dental implant is typically fabricated from pure titanium or a titanium alloy. The dental implant typically includes a body portion and a collar. The body portion is configured to extend into and osseointegrate with the alveolar bone. The top surface of the collar typically lies flush with the crest of the jawbone bone. The abutment (e.g., a final abutment) typically lies on the top surface and extends through the soft tissue, which lies above the alveolar bone. Recently, some dental implants have collars that extend above the crest of the jawbone and entirely through the soft tissue.」(日本語訳:【0003】歯科用インプラントは典型的には純チタンまたはチタン合金から作られる。歯科用インプラントは典型的には本体部分及びカラーを含む。本体部分は、歯槽骨中に延びかつそれとオッセオインテグレートするように構成されている。カラーの上部表面は典型的には顎骨の稜と同一平面に置かれる。アバットメント(例えば最終アバットメント)は典型的には、上部表面上に置かれ、歯槽骨の上にある軟組織を通って延びる。最近、幾つかの歯科用インプラントは、顎骨の稜の上にかつ軟組織を完全に通って延びるカラーを持つ。)

(1-ウ)
「[0007] Accordingly, one embodiment comprises a dental implant for supporting a dental prosthesis that includes a body comprising an outer surface, an apical end, a coronal end, a threaded portion and a longitudinal axis. The coronal end of the body comprises a collar. The threaded portion comprises a coronal portion configured to engage cortical bone and an apical portion configured to engage cancellous bone. The threaded portion further includes at least one thread extending from a root surface, the at least one thread comprising a coronal flank, an apical flank, and a thread face that defines a length extending between the coronal flank and apical flank. The length of the thread face is smaller in the apical portion than the coronal portion of the thread and the thread has a thread depth d3 in the coronal portion of the thread that is less than a thread depth d4 in the apical portion of the thread and the coronal flank and the apical flank of the thread in the coronal portion form an angle that greater than an angle formed by the coronal flank and the apical flank of the thread.」(日本語訳:【0007】従って、一実施態様は、外表面、頂端、冠状端、ねじ付き部及び縦軸を含む本体を含む歯科用補綴物を支持するための歯科用インプラントを含む。本体の冠状端はカラーを含む。ねじ付き部は、皮質骨と係合するように構成された冠状部、及び海綿骨と係合するように構成された頂端部を含む。ねじ付き部はさらに、歯根表面から延びる少なくとも一つのねじを含み、この少なくとも一つのねじは冠状側フランク、頂端側フランク、及び冠状側フランクと頂端側フランクの間に延びる長さを規定するねじ面を含む。ねじ面の長さはねじの冠状部より頂端部で小さく、ねじ山はねじ山の冠状部でねじの頂端部のねじ山深さd4より小さいねじ山深さd3を持ち、冠状部のねじの冠状側フランクと頂端側フランクはねじの冠状側フランクと頂端側フランクにより形成された角度より大きい角度を形成する。)

(1-エ)
「[0032] As will be explained below, although the illustrated embodiment includes a pair of threads 38 that each extends helically around the implant 20, modified embodiments may include more or less threads. In addition, as explained below, a surface formed by faces 58 of the threads 38 and/or the root surface 40 can be generally conical or taper inwardly in the apical direction. In some embodiments, the surface formed by faces 58 of the threads 38 and/or the root surface 40 comprises at least two different tapers, as explained below. However, in other embodiments, the surface formed by faces 58 of the threads 38 and/or the root surface 40 can be substantially cylindrical or otherwise shaped. The implant 20 may be made of titanium, although other materials may be used, such as various types of ceramics, plastics or composites.」(日本語訳:【0032】以下に説明されるように、示された実施態様は、インプラント20の周りにそれぞれが螺旋状に延びる一対のねじ山38を含むが、修正された実施態様はより多いまたはより少ないねじ山を含むことができる。加えて、以下に説明されるように、ねじ山38の面58により形成される表面及び/または歯根表面40は一般的に円錐形であるかまたは頂端方向に内向きに先細りとなることができる。ある実施態様では、ねじ山38の面58及び/または歯根表面40により形成される表面は以下に説明されるように、少なくとも二つの異なる逓減度を含む。しかし、他の実施態様では、ねじ山38の面58及び/または歯根表面40により形成される表面は実質的に円筒状であるかまたは別の形状であることができる。インプラント20はチタンから作られることができるが、種々のタイプのセラミック、プラスチックまたは複合体のような他の材料も使用することができる。)

(1-オ)
「[0045] As illustrated in FIG. 1A, FIG. 1E and FIG. 1F, in one embodiment the threaded portion 34 also comprises grooves 50 that are located on the implant body 32 between each pair of threads 38 in the apical portion 28 of the implant 20. In some embodiments, the grooves 50 can be located on the apical flank 54 of the threads in the coronal portion 26 of the implant 20. The groove 50 between the threads 38 can also extend into the coronal portion 26 while the groove 50 on the apical flank 54 can extend into the apical portion 28.
[0046] In general, the grooves 50 extend in a generally helical pattern. In the illustrated embodiment which has two grooves 50, each groove 50 is substantially continuous. However, in modified embodiments, one or both grooves 50 can be formed to be non-continuous. For example, the grooves 50 can be formed from a series of shorter grooves, dimples, or indentations that together form a generally helical pattern. However, continuous grooves can advantageously promote bone attachment as growth as it has been observed that bone tissue likes to grow along continuous channels.」(日本語訳:【0045】図1A、1E及び1Fに示されるように、一実施態様では、ねじ付き部34はまた、インプラント20の頂端部28の各対のねじ山間のインプラント本体32上に設けられた溝50を含む。ある実施態様では、溝50はインプラント20の冠状部26のねじ山の頂端側フランク54上に設けられることができる。ねじ山38間の溝50はまた、冠状部26中に延びることができるが、一方、頂端側フランク54上の溝50は頂端部28中に延びることができる。
【0046】一般的に、溝50は略螺旋パターンで延びる。二つの溝50を持つ示された実施態様では、それぞれの溝50は実質的に連続している。しかし、変更された実施態様では、一つまたは両方の溝50は非連続であるように形成されることができる。例えば、溝50は、略螺旋パターンを一緒に形成する一連の短い溝、くぼみ、またはへこみから形成されることができる。しかし、骨組織が連続導管に沿って成長しやすいことが観察されたように成長して連続溝が骨付着を有利に促進することができる。)

(1-カ)
「[0047] As illustrated in FIG. 1E and FIG. 1F 1 the grooves 50 have a cross-sectional shape that tapers inwardly to a rounded bottom portion. In the context of grooves 50, an inward taper refers to a generally v-shaped cross-section, where the top portion of the groove 50 is wider than the bottom portion, and an outward taper refers to a generally inverted v-shaped cross-section, where the top portion of the groove 50 is narrower than the bottom portion. In some embodiments, the groove 50 may not taper or may taper outwardly. In other embodiments, the bottom portion of the groove 50 may not be rounded, and instead, may be flat or a point. In some embodiments, the top portion of the groove 50 is between about 0.025 mm to about 0.4 mm wide, or between about 0.05 mm to 0.2 mm wide, or about 0.1 mm wide. In some embodiments, the rounded bottom portion has a radius of curvature between about 0.01 mm to 0.06 mm, or between about 0.015 mm to 0.045 mm, or about 0.03 mm. In some embodiments, the groove 50 is between about 0.02 mm to 0.2 mm deep, or about 0.04 to 0.14 mm deep, or about 0.07 mm deep.
[0048] With continued reference to FIG. 1A, FIG. 1E and FIG. 1F, the grooves 50 are located on the dental implant 20 to, e.g. provide additional surfaces for osseointegration. The grooves 50 can begin at the apical end 24 of the dental implant 20 and can be formed between the pair of threads 38 on the outer surface 35 of the apical portion 28 of the implant body 32. The grooves 50, in the illustrated embodiment, can extend toward the coronal end 22 of the implant 20 over a substantial portion of the apical portion 28. In the coronal portion 26, grooves 50 can extend on the apical face 54 of the threads 38. In modified embodiments, the grooves 50 in the coronal portion 26 can extend on the face 58 and/or coronal portion 56 of the threads 38 in addition to or in the alternative to the illustrated arrangement. In a similar manner, the grooves in the apical portion 28 can be on the face 58, apical portion 58, and/or coronal portion 56 of the threads. As mentioned above, the grooves 50 between the pair of threads 38 can overlap axial with the grooves formed on the apical face 54 of the threads 38 such that a portion of the implant 20 includes both grooves 50.」(日本語訳:【0047】図1Eと1Fに示したように、溝50は、丸い底部の方に内向きに先細りとなる断面形状を持つ。溝50の文脈において、内向きに先細りは、略v-形状断面を指し、そこでは溝50の頂部は底部より幅広であり、外向きに先細りは、略逆v-形状断面を指し、そこでは溝50の頂部は底部より狭い。ある実施態様では、溝50は先細りでなくまたは外向きに先細りとなることができる。他の実施態様では、溝50の底部は丸くなく、代わりに平坦または尖頭であることができる。ある実施態様では、溝50の頂部は約0.025mm?約0.4mm幅、または約0.05mm?0.2mm幅、または約0.1mm幅である。ある実施態様では、丸い底部は約0.01mm?0.06mm、または約0.015mm?0.045mm、または約0.03mmの曲率半径を持つ。ある実施態様では、溝50は約0.02?0.2mmの深さ、または約0.04?0.14mmの深さ、または約0.07mmの深さである。
【0048】図1A、1E及び1Fを続けて参照すると、溝50は、例えばオッセオインテグレーションのための追加の表面を提供するために歯科用インプラント20上に設けられる。溝50は、歯科用インプラント20の頂端24で始まることができ、インプラント本体32の頂端部28の外面35上の一対のねじ山38間に形成されることができる。示された実施態様では、溝50は頂端部28の実質的部分に渡ってインプラント20の冠状端22に向けて延びることができる。冠状部26では、溝50はねじ山38の頂端側面54上に延びることができる。変更された実施態様では、冠状部26の溝50は、示された配置に加えてまたはそれに代えてねじ山38の面58及び/または冠状側部56上に延びることができる。同様な実施態様では、頂端部28の溝は、ねじ山の面58、頂端側部54及び/または冠状側部56上にあることができる。上述のように、一対のねじ山38間の溝50は、インプラント20の一部が両方の溝50を含むようにねじ山38の頂端側部54上に形成された溝と軸的に重複することができる。)

(1-キ)
Fig.1E及び、Fig.1Fの記載から、ネジの断面において、溝50がネジ山38間の谷部分に設けられていることが窺える。

3 当審の判断
(以下の引用文献1の記載事項については、上記日本語訳を使用する。)

(1)引用発明
ア 上記記載事項(1-ア)の「【0002】インプラント歯科学は、人工要素を使用する患者の口内の一つ以上の歯の修復を含む。」、同(1-ウ)の「【0007】従って、一実施態様は、外表面、頂端、冠状端、ねじ付き部及び縦軸を含む本体を含む歯科用補綴物を支持するための歯科用インプラントを含む。」および図1からみて、引用文献1には「患者の口内骨部に螺着される歯科用インプラントねじ」が記載されているといえる。

イ 上記記載事項(1-エ)の「【0032】以下に説明されるように、示された実施態様は、インプラント20の周りにそれぞれが螺旋状に延びる一対のねじ山38を含むが、修正された実施態様はより多いまたはより少ないねじ山を含むことができる。」および図1Eからみて、引用文献1には「インプラントねじの側面は少なくともねじ山とねじ山間を有」することが記載されているといえる。

ウ 上記記載事項(1-オ)の「ねじ付き部34はまた、インプラント20の頂端部28の各対のねじ山間のインプラント本体32上に設けられた溝50を含む。」、同(1-カ)の「【0047】図1Eと1Fに示したように、溝50は、丸い底部の方に内向きに先細りとなる断面形状を持つ。・・・・・丸い底部は約0.01mm?0.06mm、または約0.015mm?0.045mm、または約0.03mmの曲率半径を持つ。」および図1E、Fからみて、引用文献1には「ねじ山間のインプラント本体上に底部が円弧状の溝を設け」ることが記載されているといえる。

エ 上記記載事項(1-オ)の「【0045】・・・・・ねじ山38間の溝50」との記載、「【0046】一般的に、溝50は略螺旋パターンで延びる。」との記載及び上記図示内容(1-キ)を総合して、引用文献1には「ねじ山と溝は同期し、溝の溝底をねじ山間の谷底とする」ことが記載されているといえる。

オ そして、上記記載事項(1-ア)?(1-カ)、上記図示内容(1-キ)及び上記認定事項ア?エを総合すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。

「患者の口内骨部に螺着される歯科用インプラントねじであって、
前記ねじの側面は少なくともねじ山とねじ山間を有し、
前記ねじ山間のインプラント本体上に底部が円弧状の溝を設け、
前記ねじ山と前記溝は同期し、前記溝の溝底を前記ねじ山間の谷底とする
歯科用インプラントねじ。」(以下「引用発明」という。)

(2)対比
補正発明と引用発明とを比較すると、
ア 「患者」が「人」であること意味し、「人」が「哺乳類」の一種であるであることは明らかであるといえるから、引用発明の「患者」は、補正発明の「哺乳類」に相当するといえる。

イ 「口内骨部」は「体内骨部」の一部であるといえるから、引用発明の「口内骨部に螺着される歯科用インプラントねじ」は、補正発明の「体内骨部に螺着されるインプラント螺子」に相当するといえる。

ウ 引用発明の「「ねじ山」および「ねじ山間」は、その機能・構造からみて、それぞれ、補正発明の「ネジ山部」および「ネジ谷部」に相当することは、明らかである。

エ 「円弧状の溝部」において、その「底部が円弧状」であることは、明らかである。そうすると、引用発明の「底部が円弧状の溝」と補正発明の「円弧状の溝部」とは、「底部が円弧状の溝部」点で、共通するといえる。

そうすると、両者は、
(一致点)
「哺乳類の体内骨部に螺着されるインプラント螺子であって、
前記螺子の側面は少なくともネジ山部とネジ谷部とを有し、
前記ネジ谷部の谷底に底部が円弧状の溝部を設け、
ネジ谷部と溝部は同期し、溝部の溝底を前記ネジ谷部の谷底とする
インプラント螺子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「ネジ谷部」は、補正発明では「円弧状に形成されて」いるのに対して、引用発明ではそのような構成かどうか明らかではない点。

(相違点2)
「溝部」は、補正発明では溝部の底部のみでなくその全体が「円弧状」であるとともに「半円弧の溝部(22)の直径を溝幅(62)とし」ているのに対して、引用発明ではそのような構成であるかどうか不明である点。

(相違点3)
「ネジ谷部とネジ山部」について、補正発明では「前記ネジ谷部(21)の谷底点から両隣のネジ山部(20)頂点それぞれに引いた直線の作成する角度が鈍角となる」であるのに対して、引用発明ではそのような構成ではない点。

(3)相違点1について
本件出願前に頒布された刊行物である特公昭52-9955号公報に「1は本発明根インプラントの上面、2は側面、3は下面を示す。上面1の中央にはヘッド4が立設する。・・・・・側面2には円周角が鈍角の円弧状断面を示す丸味の山21及び谷22を有するねじ切りが筒体の上面1から下面3にかけて行われると共に谷巾a及び谷底深さbを大きくとる。・・・・・更に咬交圧がかかつてもラセン状のねじ山及び谷が円周角が鈍角となるような円弧状丸味を帯びていること・・・・・から咬交圧力が一点にかかることなく分散するので骨に対する刺戟が少ない」と記載されている(1頁2欄11?36行。第3図参照。)ことからみて、「歯科用根インプラントにおいて、側面に円弧状断面を示す丸味の谷を有するねじを設ける」ことは本件出願前周知の事項であるといえる。また、該周知の事項について、原審の拒絶理由にて引用された特開2005-270682号公報の図4あるいは同韓国公開特許第2002-0070119号公報の図2、3にも、「円弧状に形成されたネジ谷部」が例示されているといえる。
してみると、引用発明において、上記周知の技術を適用して、相違点1における補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項である。

(4)相違点2について
上記記載事項(1-カ)の「【0047】図1Eと1Fに示したように、溝50は、丸い底部の方に内向きに先細りとなる断面形状を持つ。・・・・・ある実施態様では、丸い底部は約0.01mm?0.06mm、または約0.015mm?0.045mm、または約0.03mmの曲率半径を持つ。・・・・・【0048】図1A、1E及び1Fを続けて参照すると、溝50は、例えばオッセオインテグレーションのための追加の表面を提供するために歯科用インプラント20上に設けられる。」からみて、引用発明の「溝」は、「底部が円弧状」のものだけでなく、「半円弧」に類似のものも含んでいると解され、また、表面積を増加して骨との接合強度を高める点において、両者において格別顕著な相違があるともいえない。
そして、引用発明において、その「底部が円弧状の溝」を半円弧にした場合には、その「直径」が「溝幅」となるのは自明な事項である。
そうすると、引用発明において、相違点2における補正発明の構成とすることは、当業者ならは必要に応じて適宜選択し得る単なる設計的事項にすぎない。

(5)相違点3について
上記「第2 本件補正について 1 補正後の発明 (2)」において述べたように、「ネジ谷部の谷底点から両隣のネジ山部頂点それぞれに引いた直線の作成する角度が鈍角となる」ことにより応力集中が小さくなることは、当業者において技術常識であるといえる。すなわち、「ネジの分野において、応力集中が小さくなるように、ネジ谷部の谷底点から両隣のネジ山部頂点それぞれに引いた直線の作成する角度が鈍角となるようにする」ことは、本件出願前において技術常識であり、引用発明の「歯科用インプラントねじ」および補正発明の「インプラント螺子」も「ネジ」の一種であり、応力集中に関する課題は「インプラント螺子」特有のものではなく、一般的な「ネジ」と共通しており、技術的に何ら差異はない。
そうすると、引用発明において、応力集中を小さくするという一般的な課題のために、その「ねじ山とねじ山間」に上記技術常識を適用することは、当業者において十分動機付けがあり、何ら阻害要因も存在しないといえる。
してみると、引用発明において、上記技術常識を適用して、相違点3における補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項である。

(6)効果について
本件出願明細書に記載された相違点1?3による効果は、引用文献1の記載、周知の事項および技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

(7)したがって、補正発明は、引用発明、周知の事項および技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成26年4月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されたものであると認められ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりである。なお、平成27年3月4日付け手続補正は、原審において、補正を却下する決定がなされている。

「【請求項1】
哺乳類の体内骨部(1)に螺着されるインプラント螺子(10)であって、
前記螺子(10)の側面(2)は少なくともネジ山部(20)とネジ谷部(21)とを有し、
前記ネジ谷部(21)は円弧状に形成されており、
前記ネジ谷部(21)の谷底に円弧状の溝部(22)を設け、
ネジ谷部(21)と溝部(22)は同期する
ことを特徴とするインプラント螺子。」
(以下「本願発明」という。)

2 引用文献およびその記載事項
原審の拒絶の理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされた引用文献1およびその記載事項は、上記「第2 2 引用刊行物およびその記載事項」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の特定事項である「溝幅(62)」および「ネジ谷部(21)」について、それぞれ、「半円弧の溝部(22)の直径を溝幅(62)とし」および「前記ネジ谷部(21)の谷底点から両隣のネジ山部(20)頂点それぞれに引いた直線の作成する角度が鈍角となる」との限定を除いたものである。
そして、本願発明の構成を全て備えた補正発明が、上記「第2 3 当審の判断」にて検討したとおり、引用発明、周知の事項および技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知の事項および技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-05-31 
結審通知日 2016-06-01 
審決日 2016-06-14 
出願番号 特願2010-148623(P2010-148623)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61C)
P 1 8・ 121- Z (A61C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中屋 裕一郎北村 英隆  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 高木 彰
熊倉 強
発明の名称 インプラント螺子および人工歯根および人工関節固定ボルト  
代理人 辻本 一義  
代理人 丸山 英之  
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