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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1317776
審判番号 不服2014-24914  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-05 
確定日 2016-08-04 
事件の表示 特願2012-183923「波長可変フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-247800〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年6月27日に出願した特願2005-187191号(以下「原出願」という。)の一部を平成22年5月28日に新たな特許出願とした特願2010-122414号の一部を平成23年8月3日に新たな特許出願した特願2011-170020号の一部を平成24年7月6日に新たな特許出願とした特願2012-152201号の一部をさらに平成24年8月23日に新たな特許出願としたものであって、同年9月24日に手続補正(自発)がなされ、平成26年1月6日付け拒絶理由通知に対して、同年3月13日に意見書の提出がなされたが、同年9月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年12月5日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年12月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[補正却下の決定の理由]
1 補正内容
本件補正は、特許請求の範囲についてするものであり、その特許請求の範囲の請求項1については、
本件補正前(平成24年9月24日付け手続補正後のもの)に、
「可動部と前記可動部に設けられた第1の反射膜とを有する第1の基板と、
第2の反射膜が設けられた第2の基板と、
前記第2の基板に設けられ、第1のギャップを隔てて前記第1の基板に対向する検出電極と、
前記第2の基板に設けられ、前記第1のギャップより小さいギャップである第2のギャップを隔てて前記第1の基板に対向する駆動電極と、を有し、
前記可動部を記第2の基板に対して変位させ、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間に入射した光を干渉させる
ことを特徴とする波長可変フィルタ。」とあったものを、

「可動部と前記可動部に設けられた第1の反射膜とを有する第1の基板と、
第2の反射膜が設けられた第2の基板と、
前記第2の基板に設けられ、第1のギャップを隔てて前記第1の基板に対向する検出電極と、
前記第2の基板に設けられ、前記第1のギャップより小さいギャップである第2のギャップを隔てて前記第1の基板に対向する駆動電極と、を有し、
前記第2の基板は、第1辺と、前記第1辺に交差する第2辺と、を有し、
前記駆動電極は、前記第1辺と前記第2辺とが交差する位置に向かうように引き出され、
前記可動部を記第2の基板に対して変位させ、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間に入射した光を干渉させることを特徴とする波長可変フィルタ。」と補正する内容を含むものである(下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)。

2 補正目的
(1)上記「1」の補正内容は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な「第2の基板」について、交差する二つの辺を有することを特定するととに、「駆動電極」について、引き出し方向を特定するものであって、その補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認められる。

(2)よって、本件補正後の請求項1についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められ、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)引用文献に記載の事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願前に頒布された刊行物である特開2005-99206号公報(平成17年4月14日公開。以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(ア)「【請求項2】
光透過性を有し、可動部を有する第1の基板と、
光透過性を有し、前記第1の基板に対向する第2の基板と、
前記第2の基板に設けられた第1のギャップおよび第2のギャップと、
前記可動部と前記第2の基板との間において、前記第2のギャップを介して干渉を生じさせる干渉部と、
前記第1のギャップを利用し、前記可動部を前記第2の基板に対して変位させることにより、前記第2のギャップの間隔を変更する駆動部とを備えることを特徴とする波長可変フィルタ。
【請求項3】
前記第2の基板は、前記可動部と対向する面に、前記第1のギャップに対応する第1の凹部と、前記第2のギャップに対応し、前記第1の凹部より深さが深い第2の凹部とを有する請求項2に記載の波長可変フィルタ。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の波長可変フィルタを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の波長可変フィルタの実施形態を示す、図2のA-A線での断面図、図2は、図1における波長可変フィルタの平面図である。また、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0021】
図1に示すように、波長可変フィルタ1は、第1の基板3と、第1の基板3に対向するベース基板2と、これら第1の基板3と、ベース基板2との間に設けられた第1のギャップ21および第2のギャップ22とを有している。
第1の基板3は、中央部に配置された、可動部31と、可動部31を変位(移動)可能に支持する支持部32と、可動部31に通電を行う通電部33とを有している。
【0022】
この第1の基板3は、導電性および光透過性を有している。また、第1の基板3は、シリコン(Si)で構成されている。これにより、可動部31と、支持部32と、通電部33とを一体的に形成することができる。
ベース基板2は、第1の凹部211および第2の凹部221を有するベース本体(第2の基板)20と、駆動電極23と、導電層231と、光入射部(光透過部)24と、反射防止膜100と、第2の反射膜210とを備えている。
……(省略)……
【0025】
ベース本体20の、可動部31と対向する面に、第1の凹部211と、第1の凹部211より深さが深い第2の凹部221とが設けられている。
また、第1の凹部211は、第2の凹部221の外側に、第2の凹部221に連続して設けられている。
この第1の凹部211の外形形状は、後述する可動部31の外形形状に対応し、第1の凹部211の寸法(外形寸法)は、可動部31より少し大きく設定されている。」

(ウ)「【0030】
図2中の中央付近には、弾性(可撓性)を有する4つの支持部32が、それぞれ可動部31と通電部33とに一体的に形成されている。
この支持部32は、可動部31の外周側面に、等角度間隔に90°間隔おきに設けられている。可動部31は、図1中上下方向に自由に移動することができる。
なお、支持部32の数は必ずしも4つに限定されず、例えば、2つ、3つ、または、5つ以上でもよい。また、支持部32の形状は、図示のものに限定されない。
【0031】
第1の基板3は、通電部33において、ベース基板2と接合されている。
通電部33は、支持部32を介して、可動部31に接続されている。
光入射部24は、ベース本体20の下面に設けられており、この光透過部24から、波長可変フィルタ1に光が入射されるようになっている。また、光入射部24の表面には反射防止膜100が設けられている。
【0032】
また、第2の凹部221の表面には、第2の反射膜210が設けられている。
また、第1の凹部211の上面には、駆動電極23が設けられ、駆動電極23からベース本体20の端面に渡って、層状(膜状)をなす導電層231が設けられている。
また、駆動電極23および導電層231の上面には、第2の反射膜210が設けられている。
……(省略)……
【0036】
駆動電極23と、第1のギャップ21と、可動部31の外周部とで、クーロン力によって駆動する方式の駆動部(アクチュエータ)の主要部が構成される。
本実施形態の第1の反射膜200および第2の反射膜210は、絶縁性を有している。
すなわち、第1の反射膜200および第2の反射膜210は、絶縁膜を兼ねる。
これにより、第1の反射膜200は、駆動電極23と、可動部31とのショートを防ぐことができる。」

(エ)「【0038】
次に、本発明の波長可変フィルタの動作(作用)について図7を用いて説明する。
図7に示すように、光源300から出射された光Lは、ベース基板2の下面に設けられた光入射部24から入射する。すなわち、光Lは、反射防止膜100、ベース基板20および第2の反射膜210を透過し、第2のギャップ22に入射する。
入射した光は、第1の反射膜200と第2の反射膜210との間において、反射を繰り返す(干渉を発生する)。この際、第1の反射膜200および第2の反射膜210により、光Lの損失を抑えることができる。
【0039】
前記光Lの干渉の結果、距離xに対応した所定の波長の光(干渉光)は、第1の反射膜200、可動部31、反射防止膜100を透過し、可動部31の上面から出射する。
この波長可変フィルタ1は、種々の目的で使用することができ、例えば、所定の周波数に対応する光の強度を測定するための装置に用いた場合、それを容易に測定することができる。」

(オ)上記(イ)及び(ウ)で引用する図1及び図2は、以下のものである。
図1


図2


(カ)上記(エ)で引用する図7は、以下のものである。


イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記ア(ア)の記載によれば、引用文献1には、
「光透過性を有し、可動部を有する第1の基板と、
光透過性を有し、前記第1の基板に対向する第2の基板と、
前記第2の基板に設けられた第1のギャップおよび第2のギャップと、
前記可動部と前記第2の基板との間において、前記第2のギャップを介して干渉を生じさせる干渉部と、
前記第1のギャップを利用し、前記可動部を前記第2の基板に対して変位させることにより、前記第2のギャップの間隔を変更する駆動部とを備え、
前記第2の基板は、前記可動部と対向する面に、前記第1のギャップに対応する第1の凹部と、前記第2のギャップに対応し、前記第1の凹部より深さが深い第2の凹部とを有する、波長可変フィルタ。」が記載されているものと認められる。

(イ)上記ア(イ)及び(ウ)の記載を踏まえて、図1及び図2を見ると、以下のことが理解できる。
a 上記アの「第2の基板」は、平面視で矩形の基板であってもよいこと。

b 上記アの「駆動部」は、
例えば、「第2の基板の第1の凹部の上面に設けられた駆動電極と、第1のギャップと、可動部の外周部とで主要部が構成される」ものであってもよいこと。

(ウ)上記ア(エ)の記載を踏まえて、図7を見ると、
上記アの「干渉部」は、
例えば、「可動部の第2の凹部に対応する面に第1の反射膜を有し、第2の基板の可動部と対向する第2の凹部の表面に第2の反射膜を有する」ものであってもよいものと認められる。

(エ)以上のことから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「光透過性を有し、可動部を有する第1の基板と、
光透過性を有し、前記第1の基板に対向する平面視で矩形の第2の基板と、
前記第2の基板に設けられた第1のギャップおよび第2のギャップと、
前記可動部と前記第2の基板との間において、前記第2のギャップを介して干渉を生じさせる干渉部と、
前記第1のギャップを利用し、前記可動部を前記第2の基板に対して変位させることにより、前記第2のギャップの間隔を変更する駆動部とを備え、
前記第2の基板は、
前記可動部と対向する面に、前記第1のギャップに対応する第1の凹部と、前記第2のギャップに対応し、前記第1の凹部より深さが深い第2の凹部とを有し、
前記干渉部は、
前記可動部の前記第2の凹部に対応する面に第1の反射膜を有し、前記第2の基板の可動部と対向する第2の凹部の表面に第2の反射膜を有し、
前記駆動部は、
前記第2の基板の前記第1の凹部の上面に設けられた駆動電極と、前記第1のギャップと、前記可動部の外周部とで主要部が構成される、
波長可変フィルタ。」

ウ 同様に、原査定の拒絶の理由に引用され、原出願前に頒布された刊行物である特開平1-94312号公報(平成1年4月13日公開。以下「引用文献2」という。)には、図とともに以下の記載がある。

(ア)「<従来の技術とその問題点>
光の波長を選択・分離あるいは識別するための分光装置としては、……その用途はかなり限定されたものとなっていた。
分光装置としては、そのほかに、ファブリーペロー干渉計が知られている。……しかしながら、以下に述べる問題点のため、特殊な光学計測の分野以外において、ファブリーペロー干渉計が用いられることはなかった。
……ファブリーペロー干渉計においては、2枚の反射鏡間隔を制御することにより選択波長を設定するが、その反射鏡間隔は光の波長よりはるかに高精度に設定され、かつまた安定でなければならない。……
本発明は、ファブリーペロー型可変干渉装置において、選択波長の精度を確保し、不安定性を除去することを目的としている。」(第2頁左上欄ないし同頁左下欄)

(イ)「<発明を解決するための手段>
本発明は、可変干渉装置の選択波長を高精度に設定しまた安定化するために、ファブリーペロー干渉装置を構成する第1及び第2の基板の各々に、互いに対向する電極を形成し、その2つの電極間の静電容量を検出する。これによって、2つの基板間の空隙、すなわち干渉光路長を静電容量として測定することができる。この静電容量値が設定値に等しくなる様に干渉光路長をフィードバック制御することにより、選択波長を精度よく設定し安定に保つことが可能となる。」(第2頁左下欄ないし同頁右下欄)

(ウ)「<実施例1>
以下、本発明を実施例に基いて詳細に説明する。第1図は本発明の第1の実施例に係る可変干渉装置の構成図である。図中点線に囲まれた領域は、ファブリーペロー干渉部1の断面図であり、これは、ガラス等の透光性基板10,20に、使用スペクトル範囲内で高反射率を有するAg,Ni,Co,Ti,Au,Cu,Al,W等の半透光性反射膜11,21及びAg,Al等の各種導電材料よりなる電極15,25を真空蒸着法、スパッタ法あるいはCVD法等の薄膜形成技術によって形成し、2枚の基板10,20を互いの反射膜が対向する様に固定したものである。その固定手段はホルダー35によってなされるが、両基板の間隔が変えられる様ホルダー35と基板20との間に圧電素子85が挿入されている。この圧電素子は、両面に電極86,87を有し、その両電極間に印加される電圧に応じて伸縮し、基板10,20の間隔をその平行性を保ちながら変化させる。」(第2頁右下欄ないし第3頁左上欄)

(エ)「なお、本実施例において、反射膜と電極とを一体化することもできる。第6図は本実施例におけるファブリーペロー干渉部2の変形例であって、13,23は反射膜兼電極であり、銀、アルミニウム、金等の蒸着薄膜より成る。この構造は、作製プロセスをさらに単純なものとする等の利点を有する。」(第4頁右下欄)

(オ)「<発明の効果>
以上詳説した如く、本発明に係るファブリーペロー型可変干渉装置は、その選択波長を高精度化、安定化するため干渉部を構成する2つの基板に電極を配設して両電極間静電容量を検出し、その値が設定値に達する様に変位機構をフィードバック動作させている。その結果、選択波長が極めて効果的に高精度化、安定化されることが認められた。
ファブリーペロー干渉部は、極めて狭い空隙部を有する構造となっているため、その空隙部をコンデンサのギャップとしても利用することができる。従って静電容量を用いた安定化法は、ファブリーペロー干渉との両立性において極めて優れている。特に反射膜と電極とを一体化した場合には、ファブリーペロー干渉部の製造工程を全く増やすことなく静電容量検出とそれによる制御を実現することができる。」(第5頁左上欄ないし同頁右上欄)

(カ)上記(ウ)で引用する第1図は、以下のものである。


エ 引用文献2に記載された技術事項
上記ウより、引用文献2には、下記の技術事項(以下「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「ファブリーペロー干渉装置を構成する第1及び第2の基板の各々に、互いに対向する反射膜及び電極を形成し、その2つの電極間の静電容量を検出し、この静電容量値が設定値に等しくなる様に干渉光路長をフィードバック制御することにより、選択波長を精度よく設定し安定に保つことが可能となること。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「可動部」は、本願補正発明の「可動部」に相当する。そして、引用発明の「可動部」は、「第2の凹部に対応する面に第1の反射膜を有」するものである。
してみると、引用発明の「光透過性を有し、可動部を有する第1の基板」は、本願補正発明の「可動部と前記可動部に設けられた第1の反射膜とを有する第1の基板」に相当する。

イ 引用発明の「第2の基板」は、「可動部と対向する第2の凹部の表面に第2の反射膜を有」するものである。
してみると、引用発明の「光透過性を有し、前記第1の基板に対向する平面視で矩形の第2の基板」は、本願補正発明の「第2の反射膜が設けられた第2の基板」に相当する。

ウ(ア)引用発明の「第1の凹部」及び「第2の凹部」は、第2の基板の、可動部と対向する面に設けられたものであって、「第1の凹部」は第1のギャップに、「第2の凹部」は第2のギャップに対応し、その「第2の凹部」は「第1の凹部より深さが深い」ことから、「第2のギャップ」は「第1のギャップ」よりも大きいことは、明らかである。

(イ)引用発明の「駆動電極」は、第2の基板の(第1のギャップに対応する)第1の凹部の上面に設けられているから、可動部とは第1のギャップを隔てて対向、つまり、「第2のギャップ」よりも小さな「第1のギャップ」を隔てて可動部と対向することになる。

(ウ)してみると、引用発明は、本願補正発明の「前記第2の基板に設けられ、前記第1のギャップより小さいギャップである第2のギャップを隔てて前記第1の基板に対向する駆動電極と、を有し」との発明特定事項を備えている。

エ 引用発明の「第2の基板」は、平面視で矩形であるから、交差する二つの辺を有している。
してみると、引用発明は、本願補正発明の「前記第2の基板は、第1辺と、前記第1辺に交差する第2辺と、を有し、」との発明特定事項を備えている。

オ 引用発明は、「第2のギャップを介して干渉を生じさせる干渉部」及び「可動部を前記第2の基板に対して変位させることにより、前記第2のギャップの間隔を変更する駆動部」とを備え、干渉部は「第1の反射膜」及び「第2の反射膜」を有するものであるから、「可動部」を変位させ、「第1の反射膜」と「第2の反射膜」との間に入射した光を干渉させるものであることは、当業者にとって明らかである。
してみると、引用発明は、本願補正発明の「可動部を記第2の基板に対して変位させ、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間に入射した光を干渉させる」との発明特定事項を備えている。

カ 引用発明の「波長可変フィルタ」は、本願補正発明の「波長可変フィルタ」に相当する。

キ してみると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「可動部と前記可動部に設けられた第1の反射膜とを有する第1の基板と、
第2の反射膜が設けられた第2の基板と、
前記第2の基板に設けられ、前記第1のギャップより小さいギャップである第2のギャップを隔てて前記第1の基板に対向する駆動電極と、を有し、
前記第2の基板は、第1辺と、前記第1辺に交差する第2辺と、を有し、
前記可動部を記第2の基板に対して変位させ、前記第1の反射膜と前記第2の反射膜との間に入射した光を干渉させる、波長可変フィルタ。」

ク 一方で、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は、「第2の基板に設けられ、(大きな)第1のギャップを隔てて前記第1の基板に対向する検出電極」を有しているのに対して、
引用発明は、検出電極を有していない点。

<相違点2>
駆動電極に関して、
本願補正発明は、「(第2の基板の)前記第1辺と前記第2辺とが交差する位置に向かうように引き出される」のに対して、
引用発明は、そのような方向に引き出されているのか不明である点。

(3)判断
ア 上記<相違点1>について検討する。
(ア)引用発明の「波長可変フィルタ」は、いわゆる、ファブリーペロー干渉装置であって、二つの反射膜の間隔(第2のギャップ)を精度よく設定する必要のあることは、当業者にとって自明であるところ、引用文献2に、上記「引用文献2に記載の技術事項」が記載されていることから、引用発明の「波長可変フィルタ」においても、二つの反射膜の間隔(第2のギャップ)を精度よく設定するために、引用発明のにおいて、第1及び第2の基板の各々に、互いに対向する反射膜及び電極を形成すること、具体的には、「第2の基板」については、「可動部と対向する第2の凹部」の表面に「第2の反射膜」に加えて「(検出)電極」を形成し、静電容量を検出するようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)上記(ア)のようにした引用発明の「(第2のギャップに対応する)第2の凹部」には、「第2の反射膜」に加えて「(検出)電極」が形成され、それらは、第1のギャップよりも大きい第2のギャップを隔てて「第1の基板」と対向することになる。

(ウ)してみると、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者が「引用文献2に記載の技術事項」に基づいて容易になし得たことである。

イ 上記<相違点2>について検討する。
(ア)引用発明の「波長可変フィルタ」において、「駆動電極」と外部電源とを電気的に接続する必要のあることは、当業者にとって明らかであるところ、引用発明の「第2の基板」は、平面視で矩形の基板であることから、外部電源と接続する位置を矩形の四隅の一つとし、「駆動電極」の一部を、その四隅の位置まで延長させることは、適宜なし得た設計事項である(必要ならば、例えば、特開2004-354442号公報(【0010】ないし【0012】、図1を参照。)、特開2002-221673号公報(【0009】ないし【0013】、図1を参照。)、特表2001-525075号公報(第8頁下から3行ないし第9頁第2行、図8を参照。)及び特開昭63-501600号公報(第2頁右下欄下から2行ないし第3頁左上欄第3行、図2を参照。)を参照。)。

(イ)上記(ア)のようにした引用発明の「駆動電極」は、二つの辺が交差する位置に向かうように引き出されることになる。

(ウ)してみると、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

ウ 効果
本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用文献2に記載の技術事項から予測し得る範囲内のものである。

(4)独立特許要件についてのまとめ
本願補正発明は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定の理由のむすび
上記「3」のとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例

によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」にて本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献
引用文献及びその記載事項は、前記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、前記「第2 2(1)及び(2)」に記載したとおり、本願発明を限定したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3」で検討したとおり、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-06 
結審通知日 2016-06-07 
審決日 2016-06-20 
出願番号 特願2012-183923(P2012-183923)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 波長可変フィルタ  
代理人 西田 圭介  
代理人 渡辺 和昭  

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