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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G08G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G |
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管理番号 | 1317885 |
審判番号 | 不服2015-15009 |
総通号数 | 201 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-10 |
確定日 | 2016-08-12 |
事件の表示 | 特願2014- 3359「車両制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 1日出願公開,特開2014- 78271〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成17年 8月19日に出願した特願2005-238746号(以下,「原出願」という。)の一部を平成22年 4月30日に新たな特許出願(特願2010-105381号)とし,その一部を平成23年 8月12日に新たな特許出願(特願2011-176868号)とし,その一部を平成24年 2月17日に新たな特許出願(特願2012-32926号)とし,その一部を同年 4月13日に新たな特許出願(特願2012-92276号)とし,その一部を平成26年 1月10日に新たな特許出願としたものであって,平成26年10月15日付けで拒絶理由が通知され,同年12月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成27年 4月30日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し,同年 8月10日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に手続補正がなされたものである。 第2.平成27年 8月10日付けの手続補正についての却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成27年 8月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1.本願補正発明 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次に示す《補正前》の記載から,次に示す《補正後》の記載に補正された。 《補正前》 車両に用いられる車両制御装置であって, 車両の周囲の状況を検出する状況検出手段と, 情報を表示可能な表示手段と, 前記状況検出手段の検出結果に基づき,他車両の挙動を検出する他車両検出手段と, 前記他車両検出手段により検出される他車両の挙動の情報を用いて,自車両が他車両との衝突を回避不能か否かを判定する衝突判定手段と, 前記衝突判定手段の判断結果に基き,自車両の動作を制御する車両制御手段と, 前記状況検出手段の検出結果に基づき,自車両の周囲の状況を前記表示手段に表示するための画像データを生成する画像生成手段と, 前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を,前記表示手段に表示させる表示制御手段と, を備え,前記表示制御手段にて,前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を前記表示手段に表示させながら,前記車両制御手段にて自車両の動作を制御するように構成されていることを特徴とする車両制御装置。 《補正後》 車両に用いられる車両制御装置であって, 車両の周囲の状況を検出する状況検出手段と, 情報を表示可能な表示手段と, 前記状況検出手段の検出結果に基づき,他車両の挙動を検出する他車両検出手段と, 前記他車両検出手段により検出される他車両の挙動の情報を用いて,自車両が他車両と の衝突を回避不能か否かを判定する衝突判定手段と, 前記衝突判定手段の判断結果に基き,自車両のブレーキを制御する車両制御手段と, 前記状況検出手段の検出結果に基づき,自車両の周囲の状況を前記表示手段に表示するための画像データを生成する画像生成手段と, 前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を,前記表示手段に表示させる表示制御手段と, を備え,前記衝突判定手段により前記他車両との衝突が回避不能と判定されると,前記車両制御手段にて自車両のブレーキを制御するように構成されていることを特徴とする車両制御装置。 (下線は,補正箇所に対して当審が付したものである。) 2.目的要件について 本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「前記表示制御手段にて,前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を前記表示手段に表示させながら,前記車両制御手段にて自車両の動作を制御するように構成されていること」を「前記衝突判定手段により前記他車両との衝突が回避不能と判定されると,前記車両制御手段にて自車両のブレーキを制御するように構成されていること」とする補正を含むものであるが,この補正は,「前記表示制御手段にて,前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を前記表示手段に表示させながら,」という発明特定事項の一部を削除するものであり,特許請求の範囲を減縮する補正に該当しないから,この補正は,特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 また,この補正は,請求項の削除,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものはないこと明らかである。 そうすると,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件 本件補正が,請求人が審判請求書において主張するように特許請求の範囲の減縮の趣旨のものと扱ったとして,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)についても以下に検討しておく。 (1)引用例及びその記載事項 ア.原査定の拒絶の理由に引用された,本願の原出願前に頒布された刊行物である特開2005-208849号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「車両用衝突推定装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載または示されている(下線部は,当審において付与した。)。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は,車両に搭載され,進路上の障害物を検知して,障害物との衝突可能性を推定する車両用衝突推定装置に関する。」 ・「【0004】 そこで本発明は,実際の車両挙動に則して判定精度を向上させた車両用衝突推定装置を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 上記課題を解決するため,本発明に係る車両用衝突推定装置は,車両の進路上の物体を検出する物体検出手段と,自車と検出した物体との衝突可能性を判定する衝突可能性判定手段とを備える車両用衝突推定装置において,検出した物体自体が横方向への衝突回避動作を行う可能性を判定する回避可能性判定手段をさらに備え,衝突可能性判定手段は,判定した衝突回避動作を行う可能性と自車両の衝突回避動作を考慮して衝突可能性の判定を行うことを特徴とする。 【0006】 本発明に係る車両用衝突推定装置は,衝突可能性が高い,つまり,不可避に近い場合を判定する。そのために,自車両が衝突回避動作をとるだけでなく,対向車を含む障害物についても可能ならば衝突回避動作をとることを前提として,障害物が横方向に衝突回避動作をとる可能性を判定し,相互に衝突を回避する軌跡を走行した場合の衝突可能性を判定する。 【0007】 この回避可能性判定手段は,検出した物体の進行方向・速度に基づいて判定を行うことが好ましい。具体的には,先行車または静止物への自車の追突か,対向車との正面衝突かに応じて相手側の回避可能性を判定する。 【発明の効果】 【0008】 衝突回避動作を考慮して衝突可能性を判定することで,衝突を回避できる可能性が高い場合でも衝突の可能性が高いと判定する誤判定を減らすことができる。このため,正確な判定を行うことができる。 【0009】 検出した物体の進行方向・速度に基づいて判定を行うことで,ロジックを単純化しつつ,物体の横方向への衝突回避可能性について正確な判定を行うことができる。このため,正確な衝突可能性判定を行うことができる。」 ・「【0011】 図1は,本発明に係る車両用衝突推定装置を搭載した車両を示す概略構成図であり,図2は,この車両用衝突推定装置3を含む車両制御装置2のブロック構成図である。車両1に搭載されている車両制御装置2は,装置全体の制御を行う制御ECU20と,車両前方を電波によりスキャンして障害物を検出する第1の物体検出手段であるミリ波レーダ21と,前方画像を取得して画像認識によって障害物を検出する第2の物体検出手段である画像認識手段22と,衝突時における乗員への危険を軽減する危険軽減手段としてのシートベルト装置23,エアバッグ装置24,ブレーキ装置25,自動操舵装置26,歩行者保護装置27を備えている。」 ・「【0017】 本発明に係る車両用衝突推定装置3は,ミリ波レーダ21と,画像認識手段22と,衝突判定部201によって構成され,ミリ波レーダ21の障害物検出結果と,画像認識手段22の障害物検出結果を基にして衝突判定部201は,障害物と自車との衝突可能性を推定し,制御ECU20は推定した衝突可能性を基にして障害物との衝突回避,衝突衝撃軽減制御等を行う。 【0018】 図3は,この車両制御装置2の衝突可能性推定動作を説明するフローチャートである。この制御は,車両の電源がオンにされてから,オフにされるまでの間,制御ECU20によって所定のタイミングで繰り返し実行される。 【0019】 まず,ミリ波レーダ21による障害物候補の検出結果と,画像認識手段22による障害物候補の検出結果をそれぞれ読み込む(ステップS1,S3)。ミリ波レーダ21は,電波を水平方向にスキャンしながら車両1の前方へと照射し,前方車両等の障害物表面で反射された電波を受信し,受信信号の周波数変化から障害物候補の有無,障害物候補との方位・距離,相対速度等を求め,検出結果として出力する。画像認識手段22は,画像処理ECU222がカメラ221が撮像した画像内からエッジ抽出やパターン認識処理等によって障害物候補を抽出する。カメラ221にステレオカメラを採用した場合は,左右の取得画像中における対象物位置の違いを基にして三角測量方式により障害物候補との距離および方位(または空間位置)を求め,前のフレーム時に求めた距離に対する変化量から相対速度を求める。ステレオカメラを採用しない場合,画像中の対象物の位置を基にして距離または空間位置推定を行うとよい。 【0020】 衝突判定部201は,ミリ波レーダ21による障害物候補の検出結果と,画像認識手段22による障害物候補の検出結果を照合して障害物を特定する(ステップS5)。ここで,ミリ波レーダ21,画像認識手段22の両方で検出した障害物候補(フュージョン物標)と,ミリ波レーダ21,画像認識手段22の一方でしか検出できなかった障害物候補(単独ミリ波物標,または,単独画像物標)については,それが区別できる状態で位置・距離・速度・大きさの情報とともに障害物候補を格納する配列内へと格納される。以下,検出した障害物の個数をnallとする。ここでいう障害物の速度とは,自車両と障害物との相対速度ではなく,障害物自体の絶対速度であり,自車両の前進方向を正,逆方向を負として表す。 【0021】 次に,障害物が検出されたか否か,つまり,nallが0より大きいか否かを判定する(ステップS7)。障害物が検出されなかったnall=0の場合には,衝突推定を行う必要がないため,その後の処理をスキップして処理を終了する。障害物が1個でも存在する場合には,変数nに1をセットして(ステップS9),各障害物について衝突判定を行うループ処理に入る。 【0022】 まず,検出した障害物について幅情報を有しているか否かを判定する(ステップS11)。障害物の幅についての情報が得られるのは,画像認識によって障害物を判定できたフュージョン物標および単独画像物標の場合である。ミリ波レーダ21は,対象物の高反射性の部分(車両のナンバープレート等)からの反射波から対象物を捕捉するため,対象物全体の幅を正確に認識するのが不得手であり,幅情報は正確に得にくいからである。 【0023】 幅情報を有していると判定した場合には,ステップS13へと移行し,障害物自体の速度Vpをしきい値Vthと比較する。ここで,Vthは負の低速度であり,例えば,-5km/hに設定されている。 【0024】 VpがVthより大きい場合には,障害物は低速度の静止物(歩行者を含む。)か自車と同方向に進行している先行車であると推定される。この場合は,さらに,Vpと自車の車速VSとを比較する(ステップS15)。VpがVS以上の場合には,障害物に現在より接近することはないため,衝突を判定する必要はない。そこで,ステップS17へと移行し,この障害物とは衝突する可能性はないと判定し,全障害物について衝突推定が終了したか否かをチェックする(ステップS91)。衝突推定が終了した場合には,処理を終了し,衝突推定が終了していない場合にはnに1を加算して(ステップS93),ステップS11へと戻り,ループ処理を続行する。 【0025】 ステップS15で,VpがVS未満と判定された場合には,自車が障害物に近づきつつあることを意味する。ここで,障害物が固定されている静止物の場合は,そもそも衝突回避動作を行うことができず,可動物(車両や人,自転車等)である場合でも緊急に衝突回避動作を行うことは困難と予想される。また,比較的高速で動いている先行車の場合であっても,その運転者は通常,後方車両の運転者は自車に追突しないよう適切な運転を行っているものと期待しているのであり,先行車側に積極的な回避行動を期待することはできない。 【0026】 そこで,この場合は,幅情報を利用しつつ,障害物が現在の進路を維持するものとみて衝突進路推定を行う。図4,図5はこの場合の衝突進路推定処理を説明する図である。ここでは,先行車への追突判定を例に説明する。図4に示されるように,先行車と自車の進路ベクトルは平行であるとし,それぞれの速度をVp,VSとする。ここで,自車の進路方向をY軸とし,これに直交する方向をX軸とする(図5参照)。そして,先行車両の現在位置の位置座標を(0,y)とし,自車両の現在位置の位置座標を(x,0)とする。ここでは,自車両の進行方向の車両中心軸が先行車両の進行方向の車両中心軸よりxだけ右側にずれているものとする。そして,自車幅をWs,先行車(障害物)の幅をWpとする。 【0027】 この状態から,自車両は現在の速度で右側(自車中心が障害物の中心軸から離れる方向,中心軸が合致する場合は,右側を優先)へと舵を切ることで追突を回避する行動をとるものとし,先行車は現在の速度を維持して前進を続けるものとする。ここで,簡便化のため,自車両を直径Wa=(Ws+Wp)の円とし,先行車を直径0の点として取り扱う。そして,回避操舵においては,操舵回避時の最大横Gとして設定したGmaxで操舵を行うものとする。 【0028】 具体的には,まず,仮定した自車両の円の直径Waを求める(ステップS21)。Wa/2を|x|と比較し(ステップS23),|x|がWa/2より大きい場合には,障害物と接触することなく通過可能であると判定してステップS17へと移行する。一方,|x|が小さい場合には,接触の可能性があるため,回避軌跡の計算を行う。まず,横GがGmaxの状態で回避行動をとるときの軌跡が描く円弧の半径Rsを求める(ステップS25)。このRsは,Rs=Vs^(2)/Gmaxで表される。続いて,この軌跡上をたどる自車両の円の外縁がY軸と一致する位置を求めるため,この位置と現在位置の軌跡円中心からの角度θsを求める(ステップS27)。ここで,この位置における車両中心のx座標は,車両円の半径にあたるWa/2であり,現在位置からのX軸方向の移動距離は(Wa/2-x )となることから,θs=acos{(Rs-Wa/2+x)/Rs}である。 【0029】 次に,この位置の現在位置からの前方距離(y座標に相当。)Dを求める(ステップS29)。D=Rs×sinθsである。続いて,この位置に到達するまでに要する時間tを求める(ステップS31)。自車両の車速Vsを維持するとすると,この位置までの円弧の長さはRs×θsで表せるから,所要時間tは,t=Rs×θs/Vsとなる。 【0030】 次に,先行車Pが現在速度Vpを維持した場合にt時間後にこの位置へ到達する場合の限界初期位置y_(2)を求める(ステップS33)。ここで,y_(2)=D-Vp×tとなる。次に,制動回避限界距離y_(B)を求める(ステップS35)。y_(B)は,自車両を停止または先行車の速度と一致させるのに必要な距離であり,自車速度Vsから求めることができる。次に,先行車の初期位置yをこうして求めたy_(B),y_(2)と比較する(ステップS37)。先行車の初期位置yがy_(B),y_(2)のいずれよりも小さい場合には,衝突を回避することが困難であるとして,衝突可能性が高いと見て,当該障害物について衝突可能性ありと設定し(ステップS39),ステップS91へと移行する。一方,先行車の初期位置がy_(B),y_(2)のいずれかより大きい場合には,回避動作によって衝突を回避しうる可能性が高いと見て,衝突可能性なしと設定し(ステップS41),ステップS91へと移行する。 【0031】 一方,ステップS13でVpがVthより小さいと判定した場合には,障害物は自車方向に向かってきている対向車である可能性が高い。この場合は,対向車側の運転者も自車を認識しており,回避操舵を行うことを期待しうる。そこで,この場合は,幅情報を利用して障害物,自車ともに回避行動をとるものとして衝突進路推定を行う。図6,図7は,この場合の衝突進路推定処理を説明する図である。図6に示されるように,対向車と自車の進路ベクトルは平行であるとし,それぞれの速度をVp,VSとする(ここで,Vp,VSとも正である)。図5の場合と同様に,自車の進路方向をY軸とし,これに直交する方向をX軸とする(図7参照)。そして,図5の場合と同様に,対向車両の現在位置の位置座標を(0,y)とし,自車両の現在位置の位置座標を(x,0)とする。ここでは,自車両の進行方向の車両中心軸が対向車両の進行方向の車両中心軸よりxだけ右側にずれているものとする。そして,自車幅をWs,対向車の幅をWpとする。 【0032】 この状態から,自車両,対向車ともに現在の速度で右側(自車中心が相手車両の中心軸から離れる方向,中心軸が合致する場合は右側を優先)へと舵を切ることで追突を回避する行動をとるものとする。ここで,簡便化のため,自車両を直径Wa=(Ws+Wp)の円とし,対向車を直径0の点として取り扱う。そして,回避操舵においては,操舵回避時の最大横Gとして設定したGmaxで操舵を行うものとする。 【0033】 具体的には,まず,仮定した自車両の円の直径Waを求める(ステップS51)。Wa/2を|x|と比較し(ステップS53),|x|がWa/2より大きい場合には,対向車と接触することなくすれ違うことが可能であると判定してステップS17へと移行する。一方,|x|が小さい場合には,接触の可能性があるため,回避軌跡の計算を行う。 【0034】 まず,ステップS25と同様に,横GがGmaxの状態で回避行動をとるときの自車両の軌跡が描く円弧の半径Rsを求める(ステップS55)。同様に,横GがGmaxの状態で回避行動をとるときの対向車の軌跡が描く円弧の半径Rpを求める(ステップS57)。このRpは,Rp=Vp^(2)/Gmaxで表される。 【0035】 続いて,自車両と対向車のy座標が一致した際に両者のX軸方向の距離がWaとなる対向車の現在位置y_(4)を求める(ステップS59,S61)。ここで,自車両軌跡,対向車両軌跡上でy座標が一致する時刻をt時刻後とし,そこに至るまでの移動角度をそれぞれθs,θpとすると,以下の式が成り立つ。 【0036】 【数1】 (省略) 【0037】 この式からθs,θp,tを求め(ステップS59),y4は,y_(4)=Rs×sinθs+Rp×sinθpから求めることができる(ステップS61)。ステップS59の解の計算は例えば,tを変化させながら当てはまるtを探索的に解く手法のほか,代表的な解を予め求めてテーブル化しておき,制御ECU20のROM内に格納しておき,それを補完して求めてもよい。 【0038】 次に,対向車の初期位置yをこうして求めたy_(4)と比較する(ステップS63)。対向車の初期位置yがy_(4)よりも小さい場合には,衝突を回避することが困難であり,衝突可能性が高いと見て,当該対向車について衝突可能性ありと設定し(ステップS65),ステップS91へと移行する。一方,対向車の初期位置がy_(4)より大きい場合には,回避動作によって衝突を回避しうる可能性が高いと見て,衝突可能性なしと設定し(ステップS67),ステップS91へと移行する。」 ・「【0043】 以上の推定処理の結果,衝突可能性が高いと判定した場合には,各衝突衝撃軽減手段を制御して所定の衝突衝撃軽減動作を行わせることで,乗員および歩行者・衝突車両の乗員の衝突による衝撃を低減する。 【0044】 衝突衝撃軽減制御としては,まず,ブレーキ装置25の制御として,ブレーキアクチュエータ250を作動させて各ホイールシリンダ251へ制動油圧を付与して自動的に制動を行い,減速する自動制動制御がある。あるいは,ブレーキスイッチ54がオンになったら,通常の場合よりもアシスト油圧を大きく設定することにより,運転者のブレーキペダル踏み込みに対する応答特性を向上させ,より速やかな減速を可能とするプリクラッシュブレーキアシスト制御を行ってもよい。これにより,衝突時の自車の速度を低下させることで,衝突衝撃を低減させる。」 ・「【0047】 自動操舵装置26においては,適切な操舵により障害物との衝突回避・軽減が可能であると判定した場合には,ステアリング制御装置260がアシストモータ261を制御して,必要な操舵力を付与して障害物との衝突を回避もしくは軽減する方向へと舵を切り,障害物との衝突を回避または衝突のショックを軽減する。」 ・段落【0005】?【0007】,【0017】?【0031】,【0038】等の記載事項からみて,ミリ波レーダ21と,画像認識手段22の障害物検出結果を基にして,先行車又は対向車の挙動を検出する他車両検出手段と,前記他車両検出手段により検出される他車両の挙動情報を用いて,自車と他車両との衝突可能性が高いと判定する車両用衝突推定装置が理解できる。 そうすると,これらの事項に基づいて,本願補正発明の表現に倣って整理すると,刊行物1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「車両1に搭載されている車両制御装置2であって, 車両前方を電波によりスキャンして障害物を検出するミリ波レーダ21と,前方画像を取得して画像認識によって障害物を検出する画像認識手段22と, 前記ミリ波レーダ21と,前記画像認識手段22の障害物検出結果を基にして,先行車又は対向車の挙動を検出する他車両検出手段と,前記他車両検出手段により検出される他車両の挙動情報を用いて,自車両と他車両との衝突可能性が高いと判定する車両用衝突推定装置と, 前記車両用衝突推定装置の推定処理の結果,自車両のブレーキ装置25を制御するブレーキアクチュエータ250と, を備え,前記車両用衝突推定装置により自車両と他車両との衝突可能性が高いと判定されると,前記ブレーキアクチュエータ250にて自車両のブレーキ装置25を制御する自動減速制御を行う, 車両制御装置2」 イ.原査定の拒絶の理由に引用された,本願の原出願前に頒布された刊行物である特開2005-222325号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「車両用運転支援装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は,概して,車車間通信を利用して自車両走行情報の送信及び他車両走行情報の受信を行い,自車両と他車両の交錯可能性を判定する車両用運転支援装置に係り,特に,自車両走行情報のうち自車両行動予測については運転者に確認・選択を求めた上で送信する車両用運転支援装置に関する。」 ・「【0037】 本実施例では,通信利用システム110として,特に,アンテナ102及び送受信機101を介して他車両から受信された他車両走行情報と自車両走行情報とに基づいて,自車両と他車両との交錯可能性を判定するシステムと,交錯可能性が高い場合に衝突回避措置を実行する衝突防止システムとを備えるものとする。 【0038】 本実施例に係る衝突防止システムは,自車両と交錯する可能性のある他車両の存在について運転者に情報及び/又は警報を提供する。この情報及び/又は警報は,ナビゲーション・システムのディスプレイ上やインストゥルメント・パネル上に視覚的に提供されてもよく,ホログラム虚像としてフロント・ウィンドウ上に視覚的に提供されてもよく,スピーカから音声として聴覚的に提供されてよく,これらを適宜組み合わせて提供されてもよい。情報が提供されるタイミングは任意に設定することができ,例えば交差点の手前150メートルなどのように設定することができる。同様に,提供される情報の具体的内容及び提供方法も任意である。 【0039】 いずれの場合であっても,交錯可能性が高いほど運転者への注意喚起の程度が大きくなるように段階的な情報内容及び情報提供方法が設定されることが好ましい。また,警告を行っても対応策が行われない場合には,制御介入を行うものとしてもよい。」 (2)発明の対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「車両1」は前者の「車両」に相当し,以下同様に,「車両制御装置2」は「車両制御装置」に,「ミリ波レーダ21」及び「画像認識装置22」は「状況検出手段」に,「先行車又は対向車」は「他車両」に,「車両用衝突推定装置」は「衝突判定手段」に,「推定処理の結果」は「判断結果」に,「ブレーキ装置25」は「ブレーキ」に,「ブレーキアクチュエータ250」は「車両制御手段」に,それぞれ相当する。 後者の「車両1に搭載されている車両制御装置2」は前者の「車両に用いられる車両制御装置」に相当し,後者の「車両前方を電波によりスキャンして障害物を検出するミリ波レーダ21と,前方画像を取得して画像認識によって障害物を検出する画像認識手段22」は前者の「車両の周囲の状況を検出する状況検出手段」に相当する。 後者の「前記ミリ波レーダ21と,前記画像認識手段22の障害物検出結果を基にして,先行車又は対向車の挙動を検出する他車両検出手段」は前者の「前記状況検出手段の検出結果に基づき,他車両の挙動を検出する他車両検出手段」に相当する。 後者の「自車両と他車両との衝突可能性が高いと判定する車両用衝突推定装置」と前者の「自車両が他車両との衝突を回避不能か否かを判定する衝突判定手段」とは,「自車両が他車両との衝突可能性について判定する衝突判定手段」において共通する。 後者の「前記車両用衝突推定装置の推定処理の結果,自車両のブレーキ装置25を制御するブレーキアクチュエータ250」は前者の「前記衝突判定手段の判断結果に基き,自車両のブレーキを制御する車両制御手段」に相当する。 後者の「前記車両用衝突推定装置により自車両と他車両との衝突可能性が高いと判定されると,前記ブレーキアクチュエータ250にて自車両のブレーキ装置25を制御する自動減速制御を行う」ことと,前者の「前記衝突判定手段により前記他車両との衝突が回避不能と判定されると,前記車両制御手段にて自車両のブレーキを制御するように構成されている」こととは,「前記衝突判定手段により前記他車両との衝突可能性が高いと判定されると,前記車両制御手段にて自車両のブレーキを制御するように構成されている」ことにおいて共通する。 そうすると,両者は, 「車両に用いられる車両制御装置であって, 車両の周囲の状況を検出する状況検出手段と, 前記状況検出手段の検出結果に基づき,他車両の挙動を検出する他車両検出手段と, 前記他車両検出手段により検出される他車両の挙動情報を用いて,自車両が他車両との衝突可能性について判定する衝突判定手段と, 前記衝突判定手段の判断結果に基き,自車両のブレーキを制御する車両制御手段と, を備え,前記衝突判定手段により前記他車両との衝突可能性が高いと判定されると,前記車両制御手段にて自車両のブレーキを制御するように構成されている, 車両制御装置。」 の点で一致し,以下の各点で相違する。 <相違点1> 自車両と他車両との衝突可能性について判定する衝突判定手段に関して,本願補正発明では,「衝突を回避可能か否か」を判定するのに対して,引用発明では,「衝突可能性が高い」場合を判定する点。 <相違点2> 本願補正発明では,「情報を表示可能な表示手段と,」「前記状況検出手段の検出結果に基づき,自車両の周囲の状況を前記表示手段に表示するための画像データを生成する画像生成手段と,前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を,前記表示手段に表示させる表示制御手段と,を備え」るものであるのに対して,引用発明は,そのように特定されたものではない点。 (3)相違点の検討 <相違点1について> 刊行物1は,衝突可能性が高い場合として,衝突を回避することが困難である場合(段落【0030】参照。)や不可避に近い場合(段落【0006】参照。)を開示している。 また,刊行物1には,衝突可能性が高い場合に衝突衝撃軽減動作を行わせることも記載されており(段落【0043】参照。),これは,自車と他車両との衝突可能性が高くて衝突が不可避の場合に衝突した際の対応を講じたものとも評し得るものである。 そうしてみると,引用発明において,衝突可能性が高い場合の判定を自車両が他車両の衝突を回避不能か否かを判定するものとすることは,当業者にとって格別の創作能力を要さずなし得た事項である。 <相違点2について> 刊行物2には,自車両と他車両の交錯(衝突)可能性を判定して,交錯可能性が高い場合に衝突回避措置を実行する衝突防止システムを備えた車両用運転支援装置において,自車両と交錯する可能性のある他車両の存在(自車両の周囲の状況)について運転者に情報及び警報を提供するために,ホログラム虚像(画像データを生成)をフロントウインドウ(情報を表示可能な表示手段)に視覚的に提供する衝突防止システム(表示手段に表示させる表示制御手段)が記載されている。 そして,引用発明とこの刊行物2に記載された事項とは,自車両と他車両の衝突可能性を判定して,衝突可能性が高い場合に危険を軽減しようとする車両制御装置である点で軌を一としているから,引用発明において,刊行物2に記載された事項を考慮して,相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願補正発明の効果について検討しても,引用発明,刊行物2に記載された事項からみて格別顕著なものがもたらされるものではない。 以上を総合すると,上記相違点にかかわらず,本願補正発明は,引用発明,刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 したがって,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.小括 以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定,並びに,同じく改正前の同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 上記のとおり本件補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年12月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,上記第2.1.《補正前》に記載されたとおりのものと認められる。 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項及び引用発明は前記第2.3.(1)ア.イ.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「自車両のブレーキ装置25を制御する」態様は本願発明の「自車両の動作を制御する」態様に相当し,その余の点は,前記第2.3.(2)で検討した対比と同様であるから,両者は, 「車両に用いられる車両制御装置であって, 車両の周囲の状況を検出する状況検出手段と, 前記状況検出手段の検出結果に基づき,他車両の挙動を検出する他車両検出手段と,前記他車両検出手段により検出される他車両の挙動情報を用いて,自車両が他車両との衝突可能性について判定する衝突判定手段と, 前記衝突判定手段の判断結果に基き,自車両の動作を制御する車両制御手段と, を備え,前記車両制御手段にて自車両の動作を制御するように構成されている, 車両制御装置。」 の点で一致し,以下の各点で相違する。 <相違点1’> 自車両と他車両との衝突可能性について判定する衝突判定手段に関して,本願発明では,「衝突を回避可能か否か」を判定するのに対して,引用発明では,「衝突可能性が高い」場合を判定する点。 <相違点2’> 本願発明では,「情報を表示可能な表示手段と,」「前記状況検出手段の検出結果に基づき,自車両の周囲の状況を前記表示手段に表示するための画像データを生成する画像生成手段と,前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を,前記表示手段に表示させる表示制御手段と,を備え」るものであるのに対して,引用発明は,そのように特定されたものでない点。 <相違点3’> 本願発明では,「前記表示制御手段にて,前記画像生成手段が生成した画像データが表す情報を前記表示手段に表示させながら,」前記車両制御手段にて自車両の動作を制御するように構成されているのに対して,引用発明では,そのように特定されていない点。 上記相違点について検討する。 上記<相違点1’><相違点2’>については,第2の3.(3)の<相違点1について><相違点2について>において,それぞれ検討したのと同様である。 <相違点3’について> 刊行物2の段落【0039】に「交錯可能性が高いほど運転者への注意喚起の程度が大きくなるように段階的な情報内容及び情報提供方法が設定されることが好ましい。また,警告を行っても対応策が行われない場合には,制御介入を行うものとしてもよい。」と記載されていることから,刊行物2に記載された事項は,「自車両と交錯する可能性のある他車両の存在(自車両の周囲の状況)について運転者に情報及び警報を提供するために,ホログラム虚像(画像データを生成)としてフロントウインドウ(情報を表示可能な表示手段)に視覚的に提供する衝突防止システム(表示手段に表示させる表示制御手段)」による表示をさせながら,制御介入(自車両の動作の制御)を行うことを妨げるものではない。 また,障害物等の検出時にヘッドアップディスプレイ(表示手段)への表示と自動制動等の車両制御を併せて行うこと自体は,本願の原出願時において当業者にとって周知の事項である(必要あれば,特開2002-19491号公報の段落【0029】,【0032】,【0038】,【0189】,特開2003-291688号公報の段落【0035】?【0037】,【0040】?【0047】,図8を参照のこと。) したがって,引用発明において相違点3’に係る本願発明の構成を採用することも,刊行物2に記載された事項及び上記周知の事項を考慮すれば,当業者が適宜なし得たことである。 そして,本願発明の効果について検討しても,引用発明,刊行物2に記載された事項及び上記周知の事項からみて格別顕著なものがもたらされるものではない。 以上を総合すると,上記相違点にかかわらず,本願発明は,引用発明,刊行物2に記載された事項及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-06-10 |
結審通知日 | 2016-06-14 |
審決日 | 2016-06-27 |
出願番号 | 特願2014-3359(P2014-3359) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G08G)
P 1 8・ 121- Z (G08G) P 1 8・ 121- Z (G08G) P 1 8・ 57- Z (G08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 貴俊 |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 前田 浩 |
発明の名称 | 車両制御装置 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |