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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 一部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1318064
異議申立番号 異議2015-700225  
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-27 
確定日 2016-08-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5726428号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5726428号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5726428号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成22年3月23日に特許出願され、平成27年4月10日に特許の設定登録がされ、同年6月3日に特許公報が発行され、同年7月9日に訂正審判の請求がなされ、同年9月8日付けで「訂正を認める」旨の審決がなされ、同年11月27日にその特許に対し、特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社により特許異議の申立てがなされ、同年12月25日に訂正審決の公報が発行され、当審により、平成28年3月4日付けで取消理由が通知され、それに対し特許権者から意見書の提出はなされなかったものである。

第2 本件特許発明
平成27年7月9日の訂正審判の請求について、平成27年9月8日付けで「訂正を認める」旨の審決がなされた。そして、平成27年7月9日の訂正審判の請求は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に関する次の訂正を含むものである。
1 訂正事項1(請求項1に係る訂正事項)
請求項1に「前記処理回路は、前記定期割込処理において、・・・、前記制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されているか、及び前記制御情報送信手段が前記制御情報の送信中であるか、を判定する送信状況判定手段と、前記送信状況判定手段により前記制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されている旨、前記制御情報送信手段が前記制御情報の送信中である旨の少なくとも一方が判定された場合に、」とあるのを、「前記処理回路は、前記定期割込処理において、・・・、前記制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されているか、及び前記通信回路が前記制御情報の送信中であるか、を判定する送信状況判定手段と、前記送信状況判定手段により前記制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されている旨、前記通信回路が前記制御情報の送信中である旨の少なくとも一方が判定された場合に、」と訂正する(下線部は訂正箇所を示す。以下同様。)。

2 訂正事項2(請求項1に係る訂正事項)
請求項1に請求項1に「前記処理回路は、前記定期割込処理において、・・・、該定期割込処理の実行中において前記第2の制御情報生成手段による前記第2の制御情報の前記制御情報格納手段への格納を禁止する制御情報格納禁止手段と、」とあるのを、「前記処理回路は、前記定期割込処理において、・・・、該定期割込処理の実行中において前記第2の制御情報の前記制御情報格納手段への格納を禁止する制御情報格納禁止手段と、」と訂正するものである。

そして、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、本件特許異議の申立の後に発行された訂正審決の公報によると、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A?Jは、請求人の特許異議申立書における本件特許の請求項1の分説に従い、当審にて付与。)。

「A 所定の遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 遊技の進行制御を行うとともに、制御情報を送信する遊技制御手段と、
C 前記遊技制御手段から受信した制御情報に基づいて演出の制御を行う演出制御手段と、
を備え、
D 前記遊技制御手段は、
予め決められた順番で処理を実行する基本処理を行う基本処理手段と、一定時間間隔毎に前記基本処理に割り込んで処理を実行する定期割込処理を行う定期割込処理手段と、を含む処理回路と、
E 前記制御情報を格納可能な制御情報格納手段を含む通信回路と、
を含み、
F 前記処理回路は、
前記基本処理において、遊技の進行に応じて複数個で意味を成す第1の制御情報を生成し、前記制御情報格納手段に該第1の制御情報を1個づつ送信順に格納する処理を行い、
G 前記定期割込処理において、遊技の進行とは関係なく生じる事象に応じて第2の制御情報を生成し、前記制御情報格納手段に格納する処理を行い、
H 前記通信回路は、前記制御情報格納手段に格納された制御情報を、該制御情報が格納された順番で前記処理回路による前記基本処理及び前記定期割込処理を停止させることなく並行して前記演出制御手段に対して送信するものであり、
I 前記処理回路は、
前記定期割込処理において、該定期割込処理の開始後、前記制御情報格納手段に格納された一の制御情報の送信に要する時間よりも短い時間が経過するよりも前に、前記制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されているか、及び前記通信回路が前記制御情報の送信中であるか、を判定する送信状況判定手段と、

J 前記送信状況判定手段により前記制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されている旨、前記通信回路が前記制御情報の送信中である旨の少なくとも一方が判定された場合に、該定期割込処理の実行中において前記第2の制御情報の前記制御情報格納手段への格納を禁止する制御情報格納禁止手段と、
をさらに含む
ことを特徴とする遊技機。」

第3 特許異議申立理由の概要
(1)特許異議申立人は、請求項1に係る特許について、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2号証を提出し、本件特許に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項3号に規定する発明に該当し、あるいは、甲第1、2号証を基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、本件特許を取り消すべきものである旨主張している(以下「理由A」という。)。
(2)また、特許異議申立人は、請求項1に係る特許について、請求項1の「前記制御情報送信手段」、「前記第2の制御情報生成手段」という記載は明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(以下「理由B」という。)。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2009-195293号公報
甲第2号証:特開2008-54986号公報

第4 取消理由の概要
当審において、請求項1に係る特許に対して通知した取消理由は、次のとおりである。
本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載について、「前記制御情報格納手段」、「前記第2の制御情報生成手段」という記載があるが、特許異議申立人が主張するように、この記載より前の箇所に「制御情報格納手段」、「第2の制御情報生成手段」という記載がなく、該手段がどのような手段であるのか特定されていないために特許請求の範囲の記載が不明瞭であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとした。

第5 特許異議申立理由(含む取消理由)についての当審による判断
1 理由Aについて
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2009-195293号公報)には、以下のように記載されている。(下線は当審で付与した。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技を統括的に制御する遊技制御装置から従属制御装置に制御指令データを送信し、この制御指令データに基づいて従属制御装置が演出装置を制御する、例えば、パチンコ機などの遊技機に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、制御指令データは、遊技の進行に応じて発生するものであり、特に規則性があるわけではないので、1回のタイマ割り込み処理で複数の制御指令データが生成されることもある。
例えば、1回のタイマ割り込み処理において、始動口入賞と変動開始のタイミングが重なった場合には、始動口入賞に伴い表示装置の保留表示を1加算する制御指令データ、表示装置において変動表示ゲームを開始させる制御指令データ、変動表示ゲームにおいて導出する図柄を指定する制御指令データ、変動表示ゲームの開始に伴い表示装置の保留表示を1減算する制御指令データ等が生成される。
このような場合でも、従属制御装置では一つの制御指令データを受信する毎に演出制御が実行されるため、遊技制御装置において1回のタイマ割り込み処理で生成されたにも拘わらず、従属制御装置における演出制御は遅れて実行される(タイムラグが生じる)こととなる。つまり、1回のタイマ割り込み処理で、例えば4つの制御指令データが生成されると、これらの制御指令データが全て従属制御装置に送信されて実行されるまでには、ほぼ4回分のタイマ割り込み処理に相当する時間を要することとなる。
【0005】
このように、遊技制御装置による遊技制御に対して従属制御装置による演出制御が遅れて実行されるのは、遊技を適正に進行させる上で望ましくない。
本発明は、遊技を統括的に制御する遊技制御装置から従属制御装置に制御指令データを送信し、この制御指令データに基づいて従属制御装置が演出装置を制御する遊技機であって、制御指令データの送信処理を合理的に行うことができる遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
遊技を統括的に制御する遊技制御装置と、
この遊技制御装置からの制御指令データに基づいて演出装置を制御する従属制御装置と、を備えた遊技機において、
前記遊技制御装置は、
前記制御指令データを格納するとともに、送信許可状態において、前記遊技制御装置から前記従属制御装置へ向かう方向に、前記格納された制御指令データを1ビットずつ順次送信する送信データ格納手段(送信データレジスタ354)を有し、前記従属制御装置への制御指令データの送信を実行する制御指令送信手段(シリアル通信回路35)を含んで構成され、
所定の制御処理を実現するために所定の間隔で割り込み処理を繰り返し実行し、該繰り返し実行される割り込み処理において前記従属制御装置に対する1又は複数の制御指令データを生成し、
1回の割り込み処理で生成された一連の制御指令データを全て前記送信データ格納手段に格納した後で、前記制御指令送信手段を送信許可状態とし(送信制御レジスタ352の送信イネーブルを送信許可に設定)、前記一連の制御指令データを連続して送信し、
前記従属制御装置は、
連続して受信された一連の制御指令データを処理単位として演出装置を制御する
ことを特徴とする。」

ウ 「【0012】
本発明によれば、制御指令データの送信処理を合理的に行うことにより、遊技制御装置による遊技制御に対して従属制御装置による演出制御が遅れて実行されるのを回避できるので、遊技を適正に進行させることができる。」

エ 「【0032】
図2は、遊技機100の制御系統全体のブロック図である。
図2に示すように、遊技機100は、遊技を統括的に制御する遊技制御装置30と、この遊技制御装置30からの制御指令に基づいて演出装置(表示装置27、スピーカ145、157、装飾発光装置28等の各種電気的装置)を制御する従属制御装置(表示制御装置40、音制御装置60、装飾制御装置70)と、を備えている。
【0033】
遊技制御装置30は、CPU31、ROM32、RAM33、割り込みコントローラ34、シリアル通信回路35、入出力I/F36等を備える遊技用ワンチップマイコンにより構成される。
CPU31は、制御部、演算部を備え、演算制御を行う他、特図変動表示ゲームの大当たり判定用乱数値などの各種乱数値などを生成する。例えば、ROM32に記憶されている制御プログラムを実行することにより、後述するメイン処理やタイマ割り込み処理を行う。
ROM32には、遊技上の制御プログラムや制御データが書き込まれている他、上述の各種乱数値に対応して、特図変動表示ゲームの大当たり発生を判定するための特図変動表示ゲームの大当たり判定値、変動パターン(リーチアクションの種類などの実行態様)の判定値などが記憶されている。
RAM33は、普通変動入賞装置7に設けられた始動口SW7dのオン信号などを記憶する記憶領域や、前記各種乱数値の記憶領域、並びに、CPU31の作業領域等を備えている。
・・・
【0035】
シリアル通信回路35は、例えば、シリアル通信を実現する非同期シリアル通信機能(UART機能)を有し、従属制御装置としての表示制御装置40に、遊技制御装置30で生成された制御指令データを送信する。
すなわち、遊技制御装置30は、従属制御装置(表示制御装置40)への制御指令データの送信を実行する制御指令送信手段(シリアル通信回路35)を含んで構成されている。このシリアル通信回路35の詳細については後述する。
・・・
【0037】
表示制御装置40は、CPU41、ROM42、RAM43、グラフィックプロセッサ(GDP:Graphic Display Processor)44、シリアル通信回路45、入出力I/F46、画像ROM47等を備えて構成される。
CPU41は、遊技制御装置30から送信された制御指令データに基づいて、表示装置27における演出等を制御する。例えば、CPU41は、シリアル通信回路45で受信した制御指令データを解析し、制御指令データが特図の変動表示に関するものであれば、それに含まれる結果態様や変動時間の情報に基づいて、変動表示の内容を決定する。そして、その変動表示を実現する表示データ(表示する図柄のコードや表示位置データやスクロールなどのコマンド等からなるデータ)を生成する。生成された表示データは、RAM43に格納される。
ROM42には、制御用プログラムや固定データが記憶されている。
RAM43は、遊技制御装置30から送信された制御指令データの記憶領域、CPU41により生成された表示データの記憶領域、並びにCPU41の作業領域等を備えている。
・・・
【0039】
シリアル通信回路45は、例えば、シリアル通信を実現する非同期シリアル通信機能(UART機能)を有し、遊技制御装置30から送信された制御指令データを受信する。
すなわち、従属制御装置としての表示制御装置40は、遊技制御装置30から送信された制御指令データの受信を実行する制御指令受信手段(シリアル通信回路45)を含んで構成されている。このシリアル通信回路45の詳細については後述する。」

オ 「【0046】
上述したCPU31による各種処理は、所定の間隔で実行されるタイマ割り込み処理において行われる。また、タイマ割り込み処理では、従属制御装置(表示制御装置40、音制御装置60、装飾制御装置70)に対する1又は複数の制御指令データが生成される。そして、生成された制御指令データは、シリアル通信回路35によってシリアル通信で表示制御装置40に送信される。なお、遊技制御装置30と表示制御装置40との間の通信は、遊技制御装置30から表示制御装置40へのみデータを送信可能な単方向通信とされる。
・・・
【0048】
図3は、遊技制御装置30におけるシリアル通信回路35の送信部の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、シリアル通信回路35は、送信シリアルチャンネル設定レジスタ351、送信データステータスレジスタ353、送信制御レジスタ352、送信データレジスタ354(送信データバッファレジスタ354a、送信データシフトレジスタ354b)、ボーレート生成回路355を含んで構成される。」

カ 「【0053】
図3において、送信データステータスレジスタ353は、送信データレジスタ354の状態を示すレジスタである。CPU31は、送信データステータスレジスタ353の設定値によって、送信データレジスタ354の状態を確認することができる。
図6に、送信データステータスレジスタ353の構成例を示す。図6に示すように、送信データステータスレジスタ353は、例えば8ビットで構成され、ビット0?5、7はすべて読み出し専用とされる。なお、本実施形態では送信データステータスレジスタ353のビット6は未使用としているため、図6では省略している。
【0054】
送信データステータスレジスタ353において、ビット0?5には、送信データの残量を示す値が設定される。例えば、ビット0?5に“00h”(16進数の“0”)が設定されていると送信データがないことを示し、“01h”が設定されていると送信データが1バイト残っていることを示し、“20h”が設定されていると送信データが32バイト残っていることを示す。ビット7には、送信データレジスタ354におけるデータの送信状態を示す値が設定される。ビット7に“1”が設定されているとデータを送信していない状態であることを示し、“0”が設定されているとデータを送信している状態であることを示す。
【0055】
図3において、送信データレジスタ354は、シリアル通信回路35が送信するデータを格納するレジスタである。送信データレジスタ354は、例えば、1段の送信データシフトレジスタ354aと、31段の送信データバッファレジスタ354bで構成される。
図7に、送信データレジスタ354(1段分)の構成例を示す。図7に示すように、1段の送信データレジスタ354は、例えば8ビットで構成され、ビット0?7はすべて書き込み専用とされる。
【0056】
この送信データレジスタ354には、タイマ割り込み処理で生成される制御指令データが格納され、送信制御レジスタのビット4に“1”(送信許可)が設定されていれば、格納された制御指令データは自動的に表示制御装置40に送信される。
制御指令データは、例えば、1バイトのモードデータと1バイトのアクションデータの2バイトで構成されるので、2段の送信データレジスタ354に1つの制御指令データが格納されることとなる。そして、本実施形態では、送信データレジスタ354を32段で構成しているので、1回のタイマ割り込み処理で最大16の制御指令データが生成される場合、これをすべて送信データレジスタ354に格納することができる。
・・・
【0058】
シリアル通信回路35では、送信許可の設定(送信制御レジスタ352のビット4を“1”)がなされた後、送信するデータを送信データレジスタ354(送信データバッファレジスタ354b)に書き込む、又は、送信するデータを送信データレジスタ354に書き込んだ後、送信許可の設定がなされると、自動的に送信が開始される。送信が開始されると、送信データバッファレジスタ354bのデータが送信データシフトレジスタ354aに転送され、送信データシフトレジスタ354aからシリアル変換されて、最下位ビット(ビット0)から1ビットずつ順次出力される。そして、データの送信が完了すると送信データシフトレジスタ354aは空になるので、送信データバッファレジスタ354bに書き込まれている次のデータが送信データシフトレジスタ354aに転送され、出力される。
したがって、シリアル通信回路35では、送信データレジスタ354(送信データシフトレジスタ354a、送信データバッファレジスタ354b)に書き込まれたデータ(制御指令データ)が、表示制御装置40に1ビットずつ順次送信されることとなる。
・・・
【0060】
これにより、従来のパラレル通信では必須とされていたタイマ割り込み処理における制御指令データの送信処理を省略できるので、CPU31の負担を軽減することができる。
また、シリアル通信とすることで、制御指令データを送信するための配線本数を比較的少なくすることができる。
また、遊技制御装置30と表示制御装置40との間の通信は、遊技制御装置30から表示制御装置40へのみデータを送信可能な単方向通信とされ、遊技制御装置30にデータは入力されないので、不正が行われるのを防止できる。」

キ 「【0079】
次に、遊技制御装置30における遊技制御について説明する。この遊技制御は、主にメイン処理と、所定時間ごと(例えば、2msecごと)に行われるタイマ割り込み処理とからなる。
図16、17は、遊技制御装置30におけるメイン処理の一例を示すフローチャートである。このメイン処理は、遊技制御装置30のCPU31が、起動直後に、ROM32に記憶されているメイン処理プログラムを読み出して実行することにより実現される。
図16に示すように、メイン処理では、初期設定処理(ステップS101?S107)、停電発生時の状態へ復帰するための処理(ステップS108?S115)、電源投入時(異常電源遮断時を含む)の処理(ステップS116?S119)、メインループの処理(ステップS120?S124)、停電発生時の処理(ステップS125?S130)が行われる。」

ク 「【0088】
停電復旧時の処理では、まず、RAM33に停電復旧時の初期値を設定する処理(ステップS112)を行う。次いで、遊技枠(前面枠120、クリア部材保持枠140)の状態に係る領域をクリアする処理(ステップS113)、遊技状態表示LED1、2をクリアする処理(ステップS114)を行った後、停電復旧コマンドを送信する処理(ステップS115)を行う。ここで、遊技状態表示LED1、2は、表示器17の一部を構成するものであり、前面枠120やクリア部材保持枠140の開放状態を報知するものである。なお、ステップS115で生成された停電復旧コマンド(制御指令データ)は、送信データレジスタ354に格納され、順次、表示制御装置40に送信される。
【0089】
一方、電源投入時の処理では、まず、使用するRAM33をクリアする処理(ステップS116)を行い、RAM33に電源投入時の初期値をセーブする処理(ステップS117)を行う。次いで、機種指定コマンドを送信する処理(ステップS118)、電源投入コマンドを送信する処理(ステップS119)を行う。なお、ステップS118で生成された機種指定コマンド(制御指令データ)、ステップS119で生成された電源投入コマンド(制御指令データ)は、送信データレジスタ354に格納され、順次、表示制御装置40に送信される。」

ケ 「【0093】
(第1実施形態)
図18は、遊技制御装置30におけるタイマ割り込み処理の一例を示すフローチャートである。第1実施形態では、タイマ割り込み処理で生成された制御指令データを、次のタイマ割り込み処理が開始されるまでに送信するようにしている。
タイマ割り込み処理は、メイン処理の実行中、具体的には図17のステップS121?124のメインループ処理において割り込みが許可されているときに、割り込みタイマ(CTC)により発生するタイマ割り込み要求に基づいて実行される。」

コ 「【0110】
図19は、第1実施形態のタイマ割り込み処理における制御指令データの生成状態、及びシリアル通信回路35の送信状態について示す説明図である。
図19に示すように、タイマ割り込み処理が開始されると、シリアル通信回路35は送信禁止状態とされ、その間に制御指令データ(例えば、D1)が生成される。そして、生成された制御指令データD1が全て送信データレジスタ354に格納されると、シリアル通信回路35は送信許可状態とされ、格納された制御指令データD1を送信する。制御指令データD1の送信が完了すると、送信は可能であるが、送信するデータがない状態となる。
【0111】
このように、第1実施形態では、遊技制御装置30は、所定の制御処理を実現するために所定の間隔でタイマ割り込み処理を繰り返し実行し、該繰り返し実行されるタイマ割り込み処理において表示制御装置(従属制御装置)40に対する1又は複数の制御指令データを生成する。
そして、シリアル通信回路(制御指令送信手段)35により1又は複数の制御指令データを表示制御装置40に送信するときに、1回のタイマ割り込み処理で生成された一連の制御指令データを全て送信データレジスタ354に格納した後で、シリアル通信回路35を送信許可状態として、一連の制御指令データを連続して送信する。」

サ 「【0115】
(第2実施形態)
図20は、遊技制御装置30におけるタイマ割り込み処理の他の一例を示すフローチャートである。第2実施形態では、タイマ割り込み処理で生成された制御指令データを、次のタイマ割り込み処理において制御指令データを生成する前段で送信するようにしている。
なお、ステップS303?315については、第1実施形態とほぼ同じなので、簡略化して説明する。
タイマ割り込み処理は、メイン処理の実行中、具体的には図17のステップS121?124のメインループ処理において割り込みが許可されているときに、割り込みタイマ(CTC)により発生するタイマ割り込み要求に基づいて実行される。
【0116】
ステップS301では、シリアル通信回路35の送信制御レジスタ352のビット4に“1”を設定し、送信許可状態とする。すると、前回のタイマ割り込み処理で生成され送信データレジスタ354に格納された制御指令データが、表示制御装置40に送信される。
ステップS302では、送信データレジスタ354に格納されている全ての制御指令データを送信したか判定する。そして、送信データレジスタ354に格納されている全ての制御指令データを送信したと判定すると、ステップS303に移行する。CPU31は、送信データステータスレジスタ353の設定値によって、送信データレジスタ354の状態を確認することができる。
ステップS303では、シリアル通信回路35の送信制御レジスタ352のビット4に“0”を設定し、送信禁止状態とする。」

シ 「【0121】
このエラー監視処理において、エラーの発生が検出された場合には、演出装置(表示装置27、スピーカ145、157、装飾発光装置28)によりエラーが発生していること
を報知するための制御指令データを生成する。そして、生成された制御指令データを、シリアル通信回路35の送信データレジスタ354(送信データバッファレジスタ354b)に設定する。このとき、シリアル通信回路35は送信禁止状態とされているので、この制御指令データは、すぐには送信されず、送信データバッファレジスタ354bに保持される。
【0122】
ステップS311では、特図変動表示ゲーム及び普図変動表示ゲームに関する処理(特図/普図ゲーム処理)を行う。
この特図ゲーム処理により、特図変動ゲームに応じて演出装置(例えば、表示装置27等)を制御するための制御指令データが生成される。そして、生成された制御指令データを、シリアル通信回路35の送信データレジスタ354(送信データバッファレジスタ354b)に設定する。この制御指令データは、ステップS310で設定されたエラーを報知するための制御指令データに続いて、送信データバッファレジスタ354bに保持される。
ステップS311において、普図ゲーム処理では、ゲートSW4aからの検出信号の入力に基づいて、普図変動表示ゲームに関する処理全体の制御、普図の表示の設定を行う。」

ス 上記ア?シの記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。a1?f1、h1は、本件特許の請求項1の分説(A?J)に対応させて、当審にて付与。以下同様。)

「a1 遊技制御を行う遊技機100であって、
b1 遊技を統括的に制御し、制御指令を送信する遊技制御装置30と、
c1 遊技制御装置30からの制御指令に基づいて演出装置を制御する従属制御装置(表示制御装置40、音制御装置60、装飾制御装置70)と、を備え、

d1 遊技制御装置30における遊技制御は、主にメイン処理と、所定時間ごとに行われるタイマ割り込み処理とからなり、メイン処理では、初期設定処理(ステップS101?S107)、停電発生時の状態へ復帰するための処理(ステップS108?S115)、電源投入時(異常電源遮断時を含む)の処理(ステップS116?S119)、メインループの処理(ステップS120?S124)、停電発生時の処理(ステップS125?S130)が行われ、タイマ割り込み処理では、所定の間隔で実行されるタイマ割り込み処理において各種処理を行い、

e1 遊技制御装置30は、制御指令データを格納する送信データ格納手段(送信データレジスタ354)を含んで構成されるシリアル通信回路35を備え、

f1 遊技制御装置30は、1回のタイマ割り込み処理で生成された、従属制御装置(表示制御装置40、音制御装置60、装飾制御装置70)に対する1バイトのモードデータと1バイトのアクションデータの2バイトで構成される一連の制御指令データを全て送信データレジスタ354に格納し、

h1 シリアル通信回路35を送信許可状態として、送信データレジスタ354に格納された一連の制御指令データを連続して送信する遊技機。」

(2)甲第2号証の記載事項
甲第2号証(特開2008-54986号公報)には、以下のように記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々が識別可能な複数種類の図柄を変動表示可能な可変表示装置の表示結果に応じて所定の入賞が発生可能なスロットマシンに関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたスロットマシンでは、電断検出信号の割込入力端子への入力が検出された後、直ちに割込処理が実行されて、電断検出信号が通常入力端子にも入力されているかが確認されて電断処理が行われるので、電断検出信号を検出した後、電断検出信号を再度確認するまでの時間間隔が非常に短いものとされている。
【0008】
一方、静電気などで発生したノイズには継続時間が長くなるものがあり、特許文献1に記載されたスロットマシンにおいては、これら継続時間の長いノイズが発生して電断検出信号が検出されたときに、ノイズが消失する前に電断検出信号が再度確認されることで、電断が発生したと誤判定されて電断処理が行われてしまうという不具合が生じてしまう虞があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、電断が検出された際に、電断復旧時に電断前の制御状態に復帰させるための電断処理を行うスロットマシンにおいて、電断を誤って検出した際に、誤って電断処理が行われてしまうことを防止できるスロットマシンを提供することを目的とする。」

ウ 「【0078】
まず、電断検出回路48は、+25Vの直流電圧(以下電源監視用電圧と称す)が+18V以下となったとき(ta1)に電圧低下信号をメイン制御部41に対して出力する。電圧低下信号が入力された際にCPU41aが設定変更処理やゲーム処理の実行中であればゲーム処理に割り込んで電断割込処理が実行される。また、タイマ割込処理の要求(割込3)と同時に電圧低下信号が入力された場合にはタイマ割込処理よりも電断割込処理を優先して電断割込処理が実行される。また、CPU41aがタイマ割込処理の実行中に電圧低下信号が入力された場合には実行中のタイマ割込処理が終了した時点で電断割込処理が実行される(ta2)。CPU41aは、電断割込処理の実行に基づいて電断フラグをセットする。」

エ 「【0100】
CPU41aは、リセット回路49からリセット信号が入力されると、図7のフローチャートに示す起動処理を行う。尚、リセット信号は、電源投入時及びメイン制御部41の動作が停滞した場合に出力される信号であるので、起動処理は、電源投入に伴うCPU41aの起動時及びCPU41aの不具合に伴う再起動時に行われる処理である。」

オ 「【0117】
図10は、CPU41aが実行するゲーム処理の制御内容を示すフローチャートである。
【0118】
ゲーム処理では、BET処理(Sd1)、内部抽選処理(Sd2)、リール回転処理(Sd3)、入賞判定処理(Sd4)、払出処理(Sd5)、ゲーム終了時処理(Sd6)を順に実行し、ゲーム終了時処理が終了すると、再びBET処理に戻る。」

カ 「【0134】
図13及び図14は、CPU41aが割込3の発生に応じて、すなわち0.56msの間隔で起動処理やゲーム処理に割り込んで実行するタイマ割込処理の制御内容を示すフローチャートである。
【0135】
タイマ割込処理においては、まず、割込を禁止する(Sn1)。すなわち、タイマ割込処理の実行中に他の割込処理が実行されることを禁止する。そして、使用中のレジスタをスタック領域に退避する(Sn2)。
【0136】
そして、まず電断判定処理を実施する(Sn3)。電断判定処理については後述する。
【0137】
次いで、4種類のタイマ割込1?4から当該タイマ割込処理において実行すべきタイマ割込を識別するための分岐用カウンタを1進める(Sn4)。Sn4のステップでは、分岐用カウンタ値が0?2の場合に1が加算され、カウンタ値が3の場合に0に更新される。すなわち分岐用カウンタ値は、タイマ割込処理が実行される毎に、0→1→2→3→0・・・の順番でループする。
・・・
【0140】
また、Sn7のステップにおいてタイマ割込2の場合には、各種表示器をダイナミック点灯させるLEDダイナミック表示処理(Sn11)、各種LED等の点灯信号等のデータを出力ポートへ出力する制御信号等出力処理(Sn12)、各種ソフトウェア乱数を更新する乱数更新処理(Sn13)、各種時間カウンタを更新する時間カウンタ更新処理(Sn14)、コマンドキューに格納されたコマンドを演出制御基板90に対して送信するコマンド送信処理(Sn15)、外部出力信号を更新する外部出力信号更新処理(Sn16)を順次実行した後、Sn2においてスタック領域に退避したレジスタを復帰し(Sn21)、Sn1のステップにおいて禁止した割込を許可して(Sn22)、割込前の処理に戻る。」

キ 上記ア?カの記載事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。a2、d2、g2、j2は、本件特許の請求項1の分説(A、D、G、J)に対応させて、当審にて付与。以下同様。)

「a2 CPU41aを備えたスロットマシンであって、
d2 CPU41aは、
起動処理、ゲーム処理、及び、タイマ割込処理を実行し、
ゲーム処理は、BET処理(Sd1)、内部抽選処理(Sd2)、リール回転処理(Sd3)、入賞判定処理(Sd4)、払出処理(Sd5)、ゲーム終了時処理(Sd6)を順に実行し、
タイマ割込処理は、0.56msの間隔で起動処理やゲーム処理に割り込んで実行するタイマ割込処理を実行し、

g2 タイマ割込処理において、
コマンドキューに格納されたコマンドを演出制御基板90に対して送信するコマンド送信処理を順次実行し、
j2 タイマ割込処理の実行中に他の割込処理が実行されることを禁止し(Sn1)、使用中のレジスタをスタック領域に退避する(Sn2)、
スロットマシン。」

(3)対比
本件特許発明と甲1発明を対比する。
本件特許発明のA?C、Eについて以下のとおり対比する。
(a)甲1発明における「a1 遊技制御を行う遊技機100」は、本件特許発明の「A 所定の遊技を行うことが可能な遊技機」に相当する。

(b)甲1発明における「b1 遊技を統括的に制御し、制御指令を送信する遊技制御装置30」は、遊技を統括的に制御することにより、遊技を進行させるものであり、また、従属制御装置(表示制御装置40、音制御装置60、装飾制御装置70)へ制御指令を送信するものであるから、本件特許発明の「B 遊技の進行制御を行うとともに、制御情報を送信する遊技制御手段」に相当する。

(c)甲1発明における「c1 遊技制御装置30からの制御指令に基づいて演出装置を制御する従属制御装置(表示制御装置40、音制御装置60、装飾制御装置70)」は、表示制御、音制御、装飾制御により演出制御を行うものであるから、本件特許発明の「C 遊技制御手段から受信した制御情報に基づいて演出の制御を行う演出制御手段」に相当する。

(e)甲1発明における「e1 制御指令データを格納する送信データ格納手段(送信データレジスタ354)を含んで構成されるシリアル通信回路35」は、本件特許発明の「E 制御情報を格納可能な制御情報格納手段を含む通信回路」に相当する。

上記(a)?(c)、(e)より、本件特許発明と甲1発明とは、
「A 所定の遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 遊技の進行制御を行うとともに、制御情報を送信する遊技制御手段と、
C 前記遊技制御手段から受信した制御情報に基づいて演出の制御を行う演出制御手段と、
を備え、
前記遊技制御手段は、
E 前記制御情報を格納可能な制御情報格納手段を含む通信回路と、
を含む
遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明は、「予め決められた順番で処理を実行する基本処理を行う基本処理手段と、一定時間間隔毎に前記基本処理に割り込んで処理を実行する定期割込処理を行う定期割込処理手段と、を含む処理回路」を含む「遊技制御手段」を備えるのに対して、
甲1発明は、メイン処理と、タイマ割り込み処理とからなる遊技制御を行う遊技制御装置30を備えるが、本件特許発明の基本処理手段と、定期割込処理手段と、を含む処理回路を備えない点。

[相違点2]
本件特許発明は、「基本処理において、遊技の進行に応じて複数個で意味を成す第1の制御情報を生成し、制御情報格納手段に該第1の制御情報を1個づつ送信順に格納する処理を行い、定期割込処理において、遊技の進行とは関係なく生じる事象に応じて第2の制御情報を生成し、制御情報格納手段に格納する処理を行」う「処理回路」を備えるのに対して、
甲1発明は、「1回のタイマ割り込み処理で生成された、従属制御装置(表示制御装置40、音制御装置60、装飾制御装置70)に対する1バイトのモードデータと1バイトのアクションデータの2バイトで構成される一連の制御指令データを全て送信データレジスタ354に格納」する「遊技制御装置30」を備えるが、本件特許発明の基本処理、及び、定期割込処理を行う「処理回路」を備えない点。

[相違点3]
本件特許発明は、「通信回路は、制御情報格納手段に格納された制御情報を、該制御情報が格納された順番で処理回路による基本処理及び定期割込処理を停止させることなく並行して演出制御手段に対して送信するものであ」るが、
甲1発明は、本件特許発明の基本処理、及び、定期割込処理を行う「処理回路」を備えないため、本件特許発明の上記構成を備えない点。

[相違点4]
本件特許発明は、処理回路が、「定期割込処理において、該定期割込処理の開始後、制御情報格納手段に格納された一の制御情報の送信に要する時間よりも短い時間が経過するよりも前に、制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されているか、及び前記通信回路が制御情報の送信中であるか、を判定する送信状況判定手段と、送信状況判定手段により制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されている旨、前記通信回路が前記制御情報の送信中である旨の少なくとも一方が判定された場合に、該定期割込処理の実行中において前記第2の制御情報の前記制御情報格納手段への格納を禁止する制御情報格納禁止手段とをさらに含む」のに対して、
甲1発明は、当該発明特定事項を備えない点。

(4)当審による判断
事案の内容に鑑み、まず、相違点4から検討する。
甲2発明は、「タイマ割込処理において、コマンドキューに格納されたコマンドを演出制御基板90に対して送信するコマンド送信処理を順次実行し、タイマ割込処理の実行中に他の割込処理が実行されることを禁止し、使用中のレジスタをスタック領域に退避する」ものである。

そして、特許異議申立人は、甲第2号証には、「i’タイマ割り込み処理に際し、制御情報の送信に要する時間よりも短い時間が経過するよりも前に電断判定処理を行うステップステップSn3の処理」、及び、「j’タイマ割込処理の実行中に他の割込処理が実行されることを禁止し、使用中のレジスタをスタック領域に退避するSn2の処理」を行うことが記載されている旨主張する。
しかしながら、特許異議申立人が甲第2号証に記載されているとする上記構成i’は、判定処理の対象が電断処理として特定されている点で本件特許発明と異なるものである。そして、上記構成i’は、制御情報の送信状況を判定するものでないうえに、判定された送信状況に応じて、第2の制御情報の前記制御情報格納手段への格納を禁止するものでもない。
したがって、甲第2号証には、上記相違点4に係る本件特許発明の「タイマ割込処理」が、本件特許発明の「定期割込処理において、該定期割込処理の開始後、制御情報格納手段に格納された一の制御情報の送信に要する時間よりも短い時間が経過するよりも前に、制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されているか、及び前記通信回路が制御情報の送信中であるか、を判定する送信状況判定手段」、及び、「送信状況判定手段により制御情報格納手段に未送信の制御情報が格納されている旨、前記通信回路が前記制御情報の送信中である旨の少なくとも一方が判定された場合に、該定期割込処理の実行中において前記第2の制御情報の前記制御情報格納手段への格納を禁止する制御情報格納禁止手段」を含む構成は記載も示唆もされていない。
また、本件特許発明は、上記相違点4に係る構成を備えることにより、「制御情報の送信を遊技の進行制御とは独立して行う遊技機において、遊技制御手段が段階的に処理を行う基本処理と基本処理に定期的に割り込んで行う定期割込処理の双方で制御情報を送信する場合でも、演出制御手段が受信したコマンドを正常に特定することができる遊技機を提供する」という課題を解決するものである。
よって、本件特許発明は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に甲2発明を適用しても、上記相違点4に係る本件特許発明の構成に到達することはできない。

(5)小括
そして、本件特許発明は、上記(4)において検討したとおり、甲1発明、甲2発明から、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、相違点1?3について検討するまでもなく、本件特許発明は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、特許異議申立人が提出した証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。

2 理由Bについて
本件特許異議の申立は、平成27年11月27日になされたが、本件に係る訂正審判の請求は、本件特許異議の申立前の同年7月9日になされ、同年9月8日付けで「訂正を認める」旨の審決(訂正2015-390077号)がなされたものである。
そして、上記訂正審判の請求の内容は、請求項1に関して、訂正前の「前記制御情報格納手段」を「前記通信回路」とし、「前記第2の制御情報生成手段」という記載を削除するものである。
また、上記「訂正を認める」旨の審決は、請求項1に関して、審査段階における平成26年6月26日付け手続補正書の「制御情報格納手段」を「制御情報格納手段を含む通信回路」とする補正に整合させるために「前記制御情報格納手段」を「前記通信回路」とする訂正を認めると共に、「前記第2の制御情報生成手段」という記載を削除する訂正を認めたものである。
このように、特許異議申立人が主張する理由Bは、本来、本件特許異議の申立時には既に存在しないものであった。
また、当審による取消理由により通知した理由は、当該訂正により、既に解消されていた。
よって、特許異議申立人の記載不備に関する主張によっては、請求項1に係る特許を取り消すことができない。

第6 むすび
以上のことから、上記取消理由、並びに、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-07-28 
出願番号 特願2010-66909(P2010-66909)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (A63F)
P 1 652・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鶴岡 直樹  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 山崎 仁之
長崎 洋一
登録日 2015-04-10 
登録番号 特許第5726428号(P5726428)
権利者 株式会社三共
発明の名称 遊技機  
代理人 溝渕 良一  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 重信 和男  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 石川 好文  

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