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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1318415
審判番号 不服2015-7039  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-15 
確定日 2016-08-17 
事件の表示 特願2012-532541「ドキュメント」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月14日国際公開,WO2011/042349,平成25年 3月 4日国内公表,特表2013-507676〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2010年9月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年10月9日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって,
平成24年3月27日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成25年9月18日付けで審査請求がなされると共に手続補正がなされ,平成26年4月25日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成26年6月12日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成26年12月24日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成27年1月6日),これに対して平成27年4月15日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成27年8月28日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成27年12月2日付けで上申書の提出があったものである。

第2.平成27年4月15日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年4月15日付け手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容
平成27年4月15日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成26年6月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
積層されている複数のドキュメント層から構成されているドキュメント本体を備えるドキュメントであって,
前記複数のドキュメント層のうち第1の層は,評価部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第3の層は,第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有しており,
前記評価部は,少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されていて,前記第1の取得部および前記第2の取得部から少なくとも前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータを受信し,
前記評価部は,前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行って,前記評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化し,
前記ドキュメントは,
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え,
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え,
前記評価部は,前記第1の基準データおよび前記第1のバイオメトリクスデータに基づいて第1の信頼値が決定され,前記第2の基準データおよび前記第2のバイオメトリクスデータに基づいて第2の信頼値が決定されるように構成され,
前記評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値が入力される計算処理の結果が第2のしきい値を超えている場合に前記機能がアクティブ化されるように構成されている
ドキュメント。
【請求項2】
前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータは,異なる種類のバイオメトリクスデータである請求項1に記載のドキュメント。
【請求項3】
前記第1のバイオメトリクスデータまたは前記第2のバイオメトリクスデータは,指紋データ,虹彩スキャンデータ,顔バイオメトリクスデータ及び遺伝子データから選択されるバイオメトリクスデータのうち1つである請求項2に記載のドキュメント。
【請求項4】
前記遺伝子データは,DNA配列データである請求項3に記載のドキュメント。
【請求項5】
前記評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値のうち一方が第1のしきい値を超えると,前記機能がアクティブ化されるように構成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項6】
前記計算処理は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値の線形結合である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項7】
機密データを格納する電子メモリと,前記機密データを出力するインターフェースと を備え,
前記機能は,前記機密データへの読出アクセスの実行であり,
前記評価部は,前記機密データを保護するための暗号処理を実行するように構成され, 前記インターフェースを介して前記機密データを出力するために必要な要件は,前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータが予め定められた基準を満たしていることであり,満たしているか否かは前記評価で確認される請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項8】
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第4の層は,表示デバイスを有しており,前記評価部が前記表示デバイスを制御できるように,前記表示デバイスは前記評価部に接続されている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項9】
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第4の層は,表示デバイスを有しており,前記評価部が前記表示デバイスを制御できるように,前記表示デバイスは前記評価部に接続されており,
前記評価部は,前記機能がアクティブ化された後に前記機密データの少なくとも一部を表示するように前記表示デバイスが制御されるように,構成されている請求項7に記載のドキュメント。
【請求項10】
少なくとも前記評価部の電源に電気エネルギーを誘導結合するための手段を備える請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項11】
前記第1の取得部は,電子カメラとして構成されている請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項12】
制御可能な光学レンズ素子を含む体積ホログラムを備えており,
前記体積ホログラムは,前記電子カメラの光路に配設されており,前記体積ホログラムは,前記評価部によって制御される請求項11に記載のドキュメント。
【請求項13】
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第5の層は,光学セキュリティフィーチャを含む
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のドキュメント。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,
「 【請求項1】
積層されている複数のドキュメント層から構成されているドキュメント本体を備えるドキュメントであって,
前記複数のドキュメント層のうち第1の層は,評価部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第3の層は,第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有しており,
前記評価部は,少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されていて,前記第1の取得部および前記第2の取得部から少なくとも前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータを受信し,
前記評価部は,前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行って,前記評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化し,
前記ドキュメントは,
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え,
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え,
前記評価部は,前記第1の基準データおよび前記第1のバイオメトリクスデータに基づいて第1の信頼値が決定され,前記第2の基準データおよび前記第2のバイオメトリクスデータに基づいて第2の信頼値が決定されるように構成され,
前記評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えている場合または前記第1の信頼値および前記第2の信頼値の両方が第2のしきい値を超えている場合に,前記機能がアクティブ化されるように構成され,
前記第2のしきい値は,前記第1のしきい値未満である
ドキュメント。
【請求項2】
前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータは,異なる種類のバイオメトリクスデータである請求項1に記載のドキュメント。
【請求項3】
前記第1のバイオメトリクスデータまたは前記第2のバイオメトリクスデータは,指紋データ,虹彩スキャンデータ,顔バイオメトリクスデータ及び遺伝子データから選択されるバイオメトリクスデータのうち1つである請求項2に記載のドキュメント。
【請求項4】
前記遺伝子データは,DNA配列データである請求項3に記載のドキュメント。
【請求項5】
機密データを格納する電子メモリと,前記機密データを出力するインターフェースと を備え,
前記機能は,前記機密データへの読出アクセスの実行であり,
前記評価部は,前記機密データを保護するための暗号処理を実行するように構成され, 前記インターフェースを介して前記機密データを出力するために必要な要件は,前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータが予め定められた基準を満たしていることであり,満たしているか否かは前記評価で確認される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項6】
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第4の層は,表示デバイスを有しており,前記評価部が前記表示デバイスを制御できるように,前記表示デバイスは前記評価部に接続されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項7】
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第4の層は,表示デバイスを有しており,前記評価部が前記表示デバイスを制御できるように,前記表示デバイスは前記評価部に接続されており,
前記評価部は,前記機能がアクティブ化された後に前記機密データの少なくとも一部を表示するように前記表示デバイスが制御されるように,構成されている請求項5に記載のドキュメント。
【請求項8】
少なくとも前記評価部の電源に電気エネルギーを誘導結合するための手段を備える請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項9】
前記第1の取得部は,電子カメラとして構成されている請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のドキュメント。
【請求項10】
制御可能な光学レンズ素子を含む体積ホログラムを備えており,
前記体積ホログラムは,前記電子カメラの光路に配設されており,前記体積ホログラムは,前記評価部によって制御される請求項9に記載のドキュメント。
【請求項11】
前記複数のドキュメント層のうち少なくとも第5の層は,光学セキュリティフィーチャを含む
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のドキュメント。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
本件手続補正は,補正前の請求項1に,補正前の請求項5に記載された内容を加え,更に,その内容を,平成24年3月27日付けで提出された明細書の翻訳文(以下,これを,「当初明細書」という)の段落【0044】に記載された事項に基づいて,限定事項を加えたものであるから,本件手続補正は,当初明細書の記載の範囲内でなされたものであることは明らかである。
よって,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものである。
そして,本件手続補正は,補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「評価部」の機能を限定することを目的とするものであることは,明らかであるから,
よって,本件手続補正は,特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第5項の規定を満たすものである。
そこで,本件手続補正が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,以下に検討する。

(1)補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,これを「本件補正発明」という)は,上記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。

「積層されている複数のドキュメント層から構成されているドキュメント本体を備えるドキュメントであって,
前記複数のドキュメント層のうち第1の層は,評価部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第3の層は,第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有しており,
前記評価部は,少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されていて,前記第1の取得部および前記第2の取得部から少なくとも前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータを受信し,
前記評価部は,前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行って,前記評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化し,
前記ドキュメントは,
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え,
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え,
前記評価部は,前記第1の基準データおよび前記第1のバイオメトリクスデータに基づいて第1の信頼値が決定され,前記第2の基準データおよび前記第2のバイオメトリクスデータに基づいて第2の信頼値が決定されるように構成され,
前記評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えている場合または前記第1の信頼値および前記第2の信頼値の両方が第2のしきい値を超えている場合に,前記機能がアクティブ化されるように構成され,
前記第2のしきい値は,前記第1のしきい値未満である
ドキュメント。」

(2)引用刊行物に記載の事項
ア.原審が,平成26年4月25日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用した,本願の第1国出願時点で既に公知である,米国特許出願公開第2009/0145972号明細書(2009年6月11日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「[0054] Referring to FIG.1, a payment processor card embodiment 100 for conducting financial transactions is illustrated. The card 100 is provided with individual components so financial transactions may be accomplished in a safe, secure, and convenient process. A serial number 102 is provided on the card 100, wherein the serial number is a unique identifier for the card 100. The serial number 102, in the illustrated embodiment, is a series of numbers that are unique to the card 100. Although illustrated as having a series of numbers, letters or a combination of numbers, letters and symbols, for example, may be used to identify one card 100 from different cards. The serial number 102 is imprinted in the body of the card 100 in the illustrated embodiment. The card 100 has a front face 104 that illustrates the serial number 102. The front face 104 of the card 100 is also configured with a name section 108 and an expiration date section 110. Although listed as an expiration date section 110, an issue date for the card 100 may also be included. The face of the card may also be configured with a biometric information input sensor/detector 106 positioned on the card 100. The biometric information input sensor/detector 106 is connected to (or may be a component of) the biometric verification system 209, the power source 302 and the communication element (e.g. active magnetic strip) 200.」(下線は,当審にて,説明の都合上,附加したものである。以下,同じ。)
([0054] 図1を参照すると,金融取引を行うための,支払処理機カードの実施例100が説明されている。カード100はそのために,金融取引が,安全に,機密が守られて,そして,使いやすいプロセスにおいて,成し遂げられるよう,個々の要素を与えられている。シリアルナンバ102は,カード100に備えられ,そこで,シリアルナンバは,カード100のための一意識別子である。実施例のおいて説明されている,シリアルナンバ102は,カード100に固有である,一連の数字である。一連の数字を有することとして説明したが,異なるカードから,1つのカード100を識別するために,例として,文字,或いは,数字の組合せ,文字とシンボルが用いられ得る。シリアルナンバ102は,説明されている実施例において,カード100の本体に刻印されている。カード100は,シリアルナンバ102が入れられた表面を有している。カード100の表面は,また,名前領域108と,有効期限領域110とが設定されている。有効期限領域110としてリストされているが,カード100の発行日も,また,含まれ得る。カードの表面は,また,カード100上に配置された,生体情報入力センサ/検出器106と共に構成され得る。生体情報入力センサ/検出器106は,生体認証システム209,電源302,そして,通信要素(例えば,動的磁気ストリップ)200と接続される(或いは,それらの構成要素であり得る。<当審にて訳出。以下,同じ。>)

B.「[0057] The back surface 202 may also be configured with a biometric information input sensor/detector 106 positioned on the card 100. The biometric information input sensor/detector 106 is connected to (or may be a component of) the biometric verification system 209 and/ or the communication element (e.g. active magnetic strip) 200. The card 100 may also have a contactless radio frequency unit 216 and a logic processor 218 on the card 100.
[0058] Referring to FIG. 3, a section 300 illustrating the components of the card 100 is presented. In the illustrated embodiment, a power source 302 is connected to a biometric information input sensor/detector 106 that in turn is connected to a logic processor (e.g. chip) 218. The power source 302 is configured to supply electrical power to the other components of the section 300 When necessary. The biometric information input sensor/detector 106 is configured such that a person bearing the card 100 may input biometric information into the processor 218 through the biometric information input sensor/detector 106. The individual sensors or detectors may receive power from the power source 302. Once biometric information are entered into the into the processor 218(当審注;“entered into the processor 218”の誤記である), an internal check is performed between a unlocking biometric information combination that is stored in the processor 218 and the biometric information that are entered and stored and analyzed on the biometric information verification system 209. If the internal check performed indicates that the biometric information input in the biometric information verification system 209 is the same as the unlocking biometric information combination that is stored in the processor 218, then the processor 218 allows power to flow from the power source 302 to the active magnetic strip 200. The active magnetic strip 200 is then electrically powered for a pre-determined amount of time and then de-energized. During the time the magnetic strip 200 is activated, the magnetic strip 200 may be read by a conventional magnetic strip reader.」
([0057] 裏面202もまた,カード100上に配置された,生体情報入力センサ/検出器106と共に構成され得る。生体情報入力センサ/検出器106は,生体認証システム209,及び/又は,通信要素(例えば,アクティブ磁気ストリップ)200と接続される(或いは,生体認証システム209の,及び/又は,通信要素(例えば,動的磁気ストリップ)200の構成要素であり得る)。カード100は,また,カード100上に,非接触の,無線通信ユニット216と,論理プロセッサ218とを有し得る。
[0058] 図3を参照すると,カード100の構成要素を説明する部分300が示されている。説明された実施例において,電源302は,生体情報入力センサ/検出器106に接続され,次に,論理プロセッサ(例えば,チップ)218に接続される。電源302は,必要なときに,部分300の他の構成要素に,電力を供給するために構成されている。生体情報入力センサ/検出器106は,カード100を有する人が,生体情報入力センサ/検出器106を介して,プロセッサ218に,生体情報を入力し得るよう構成されている。個々のセンサ,或いは,検出器は,電源302から,電源の供給を受け取り得る。生体情報が,プロセッサ218に入力された時点で,プロセッサ218内に格納されている,解錠するための生体情報の組合せと,生体情報認証システム209上に入力され,格納され,解析される,生体情報との間で,内部チェックが実行される。もし,内部チェックが,生体情報認証システム209内の生体情報入力が,プロセッサ218内に格納されている,解錠するための生体情報の組合せと同一であることを指し示せば,そのとき,プロセッサ218は,電源302から,アクティブ磁気ストリップ200へ,電力を流すことを許可する。アクティブ磁気ストリップ200は,そのとき,所定の時間,電動し,そして,電源が切られる。磁気ストリップ200が,起動している時間の間,磁気ストリップ200は,従来型の磁気ストリップ読取器によって,読み取られ得る。)

C.「[0061] The power source 302 may be positioned on any layer of the card 100 as well as any position along the body of the card 100. The biometric input sensor/detector 106 may also be configured underneath the front surface 106, as a non-limiting example.
[0062] The biometric input sensor/detector 106 may be positioned along any section of the card 100 as a surface feature of the card 100 or may be internally positioned within the card 100. In an exemplary embodiment of the invention, when the sensor pad is located within the body of the card 100, a plastic surface may be placed over the top of biometric input sensor/detector from abrasion during use of the card 100. The biometric input sensor/detector 106 is also connected to the processor 218 such that when activated, the system 209 may accept and verify biometric information related to a bearer of the card 100. To this end, the biometric input sensor/detector 106 may be connected to a separate processor 218, or may have the processor placed within the biometric verification system 209 or input sensor/detector apparatus that will verify both pad information and biometric information.」
([0061] 電源302は,カードの本体に沿っての配置と同じように,カード100の任意の層に配置され得る。生体情報入力センサ/検出器106は,また,限定されない例として,表面の106の表層下に構成される。
[0062] 生体情報入力センサ/検出器106は,カード100の表面機構として,カード100の任意の部分にそって配置され得るか,或いは,カード100の内部に配置され得る。本発明の実施例において,センサ・パッドが,カード100の本体内に設置されたときは,カード100の使用の間の摩擦のために,生体情報入力センサ/検出器の上端は,プラスティックの表面で覆われる。生体情報入力センサ/検出器106は,また,起動したときなどに,プロセッサ218に接続され,システム209は,カード100の持参者に関連した生体情報を,受け取って,認証する。このために,生体情報入力センサ/検出器106は,独立したプロセッサ218に接続され得るか,或いは,生体認証システム209内,或いは,パッドの情報と,生体情報の両方を認証するであろう,入力センサ/検出器装置内に配置されたプロセッサを有し得る。)

D.「



E.「



F.「



イ.原審拒絶理由に引用された,本願の第1国出願時点で既に公知である,特開2002-230553号公報(2002年8月16日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に次の事項が記載されている。

G.「【0015】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて説明する。図1は,本発明の第1の実施の形態の,複数の生体情報を用いた個人認証装置の基本構成を示すブロック図である。図1において,生体情報1入力手段1は認証に必要な指紋,虹彩,声紋,顔,掌型,サイン等の生体情報のうちいずれか1つの情報を取得する。生体情報2入力手段2は認証に必要な生体情報のうち生体情報1入力手段1で入力した以外の生体情報を取得する。
【0016】生体情報1照合手段3は,生体情報1入力手段1で取得した生体情報から照合に必要な特徴量を抽出し,あらかじめ登録済みの生体情報1登録データ6との照合を行って類似度を計算する。生体情報2照合手段4は,生体情報2入力手段2で取得した生体情報から照合に必要な特徴量を抽出し,あらかじめ登録済みの生体情報2登録データ7との照合を行って類似度を計算する。複合判定手段5は,生体情報1照合手段3および生体情報2照合手段4で計算された類似度を用いて総合的に本人認証の判定を行う。複合判定手段5の動作について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】図3は,他人受入率および本人拒否率を共に小さくするしきい値設定をしたときの識別境界の設定例を示す図である。図3の横軸は生体情報1の類似度,縦軸は生体情報2の類似度であり,2次元類似度平面である。一般的に,単独認証の他人類似度分布は類似度の低い値を平均とした正規分布となり,本人類似度分布は類似度の高い値を平均とした正規分布となる傾向がある。
【0018】生体情報1の他人類似度分布と本人類似度分布の交点をa_(0) ,生体情報2の他人類似度分布と本人類似度分布の交点をb_(0)とする。2次元類似度平面において,(a_(0) ,b_(0))を中心にして,(他人受入率)+(本人拒否率)が最小となる直線を数値計算で求め,しきい値として設定する。この直線より高い領域は"本人",低い領域は"他人"と判定する。
【0019】これにより,生体情報単独による認証と比較して,他人受入率および本人拒否率共に低くすることができ,セキュリティおよび利便性重視のシステムが構築できる。また,このしきい値直線を左に平行移動させれば高利便性のシステムに,右に平行移動させれば高セキュリティのシステムが構築可能である。
【0020】図4は,一方の認証不可能のハンディを補うしきい値設定をしたときの識別境界の設定例を示す図である。生体特徴がもともと少ない人や,体調や環境の変化により一方の認証が不可能な場合がある。このような場合に対応するため,一方の照合において類似度が低くても,他方の照合において類似度がある一定のしきい値以上ならば"本人"と判定する。
【0021】図4に示すようにしきい値設定した場合,生体情報1の類似度が低くても,生体情報2の類似度がしきい値b_(1)以上ならば"本人"と判定し,一方のハンディを補うことが可能である。したがって,生体情報1についてハンディを有する者であっても,生体情報2の類似度を用いて本人判定が可能となる。
【0022】以上のように,本発明の第1の実施の形態の個人認証装置は,複合判定手段として,第1の生体情報と第2の生体情報の類似度分布に応じて,本人と他人を判断するしきい値設定を行うことにより,他人を誤って本人と判定する確率(他人受入率)と本人を誤って他人と判定する確率(本人拒否率)とを共に低くして高精度に認証することが可能な,セキュリティと利便性共に十分優れた個人認証装置を実現することができる。
【0023】また,複合判定手段として,一方の生体情報の類似度が低い場合でも他方の類似度が高い場合に本人と判定することにより,単独の生体情報を用いる認証の場合に認証不可能とされるハンディを有する使用者でも使用可能な個人認証装置を実現することができる。」

H.「



I.「



(3)引用刊行物に記載の発明
ア.上記Aの「 The face of the card may also be configured with a biometric information input sensor/detector 106 positioned on the card 100.(カードの表面は,また,カード100上に配置された,生体情報入力センサ/検出器106と共に構成され得る。)」という記載から,引用刊行物1は,
“カードの表面に,生体情報入力センサ/検出器が存在する”
態様を有することが読み取れ,
上記Bの「The back surface 202 may also be configured with a biometric information input sensor/detector 106 positioned on the card 100.(裏面202もまた,カード100上に配置された,生体情報入力センサ/検出器106と共に構成され得る。)」という記載から,引用刊行物1は,
“カードの裏面に,生体情報入力センサ/検出器が存在する”
態様を有することが読み取れる。
そして,同じく,上記Bの「The individual sensors or detectors may receive power from the power source 302.(個々のセンサ,或いは,検出器は,電源302から,電源の供給を受け取り得る。)」という記載から,引用刊行物1は,
“複数の生体情報入力センサ/検出器を有する”態様を含むことが読み取れるので,上記に引用の引用刊行物1の記載内容から,引用刊行物1は,
“カードの表面および裏面に,生体情報入力センサ/検出器を有する”
態様を含むものであることが読み取れる。

イ.上記Aの「 The biometric information input sensor/detector 106 is connected to (or may be a component of) the biometric verification system 209, the power source 302 and the communication element (e.g. active magnetic strip) 200.(生体情報入力センサ/検出器106は,生体認証システム209,電源,そして,通信要素(例えば,動的磁気ストリップ)200と接続される(或いは,それらの構成要素であり得る。)」という記載,及び,上記Bの「The biometric information input sensor/detector 106 is connected to・・・the biometric verification system 209 and/ or the communication element (e.g. active magnetic strip) 200.(生体情報入力センサ/検出器106は,生体認証システム209,及び/又は,通信要素(例えば,アクティブ磁気ストリップ)200と接続される)」という記載から,引用刊行物1においては,
“生体情報認証システムが,生体情報入力センサ/検出器,及び,電源に接続されている”
ことが読み取れる。

ウ.上記Cの「The power source 302 may be positioned on any layer of the card 100 as well as any position along the body of the card 100. The biometric input sensor/detector 106 may also be configured underneath the front surface 106, as a non-limiting example.(電源302は,カードの本体に沿っての配置と同じように,カード100の任意の層に配置され得る。生体情報入力センサ/検出器106は,また,限定されない例として,表面の106の表層下に構成される。)」という記載と,上記ア.において検討した事項から,引用刊行物1は,
“カードが複数の層によって形成され,表面の表層,或いは,前記表層下,及び,裏面の表層に生体情報入力センサ/検出器が配置されると共に,他の層に電源が配置される”
態様を含むものであることが読み取れる。

エ.上記イ.において検討した事項と,上記ウ.において検討した事項から,引用刊行物1は,
“生体認証システムが,電源同じ層に配置される”
態様を含むものであることが読み取れ,上記D,及び,上記Eにおいて引用したFIGURE.1,FIGURE.2に示されている事項から,「生体認証システム」が存在する「層」は,「カード」の表面,及び,「カード」の裏面でないことは明らかであるから,上記イ.において検討した事項を踏まえると,引用刊行物1においては,
“生体情報認証システムは,カードの表面層,及び,裏面層以外の層に配置され,生体情報入力センサ/検出器に接続される”
ものであることが読み取れる。

オ.上記Bの「The biometric information input sensor/detector 106 is configured such that a person bearing the card 100 may input biometric information into the processor 218 through the biometric information input sensor/detector 106. (生体情報入力センサ/検出器106は,カード100を有する人が,生体情報入力センサ/検出器106を介して,プロセッサ218に,生体情報を入力し得るよう構成されている。)」という記載,同じく,上記Bの「Once biometric information are entered into the into the processor 218(当審注;“entered into the processor 218”の誤記である), an internal check is performed between a unlocking biometric information combination that is stored in the processor 218 and the biometric information that are entered and stored and analyzed on the biometric information verification system 209.(生体情報が,プロセッサ218に入力された時点で,プロセッサ218内に格納されている,解錠するための生体情報の組合せと,生体情報認証システム209上に入力され,格納され,解析される,生体情報との間で,内部チェックが実行される。)」という記載,及び,上記Cの「The biometric input sensor/detector 106 is also connected to the processor 218 such that when activated, the system 209 may accept and verify biometric information related to a bearer of the card 100.(生体情報入力センサ/検出器106は,また,起動したときなどに,プロセッサ218に接続され,システム209は,カード100の持参者に関連した生体情報を,受け取って,認証する。)」という記載から,引用刊行物1において,
“生体情報入力センサ/検出器は,生体情報の入力を受け付け,生体情報認証システムは,生体情報入力センサ/検出器から,生体情報を受信して,認証する”
ものであることが読み取れる。

カ.上記Bの「The card 100 may also have a contactless radio frequency unit 216 and a logic processor 218 on the card 100.(カード100は,また,カード100上に,非接触の,無線通信ユニット216と,論理プロセッサ218とを有し得る。)」という記載,同じく,上記Bの「a power source 302 is connected to a biometric information input sensor/detector 106 that in turn is connected to a logic processor (e.g. chip) 218.(電源302は,生体情報入力センサ/検出器106に接続され,次に,論理プロセッサ(例えば,チップ)218に接続される。)」という記載,及び,同じく,上記Bの「If the internal check performed indicates that the biometric information input in the biometric information verification system 209 is the same as the unlocking biometric information combination that is stored in the processor 218, then the processor 218 allows power to flow from the power source 302 to the active magnetic strip 200.(もし,内部チェックが,生体情報認証システム209内の生体情報入力が,プロセッサ218内に格納されている,解錠するための生体情報の組合せと同一であることを指し示せば,そのとき,プロセッサ218は,電源302から,アクティブ磁気ストリップ200へ,電力を流すことを許可する。)」という記載から,「解錠するための生体情報の組合せ」は,「カード100」内に格納されているものであり,該「解錠するための生体情報の組合せ」と,「生体情報認証システム」に入力された「生体情報」とが一致した場合に,「プロセッサ218」が,「電流を流すことを許可する」ということは,“カードの機能を有効にする”ことに他ならないから,上記引用の上記Bの記載内容から,引用刊行物1においては,
“生体情報認証システムに入力された生体情報と,カード内に格納されている,カードの機能を有効にするための生体情報の組合せとが一致した場合に,前記カードの機能が有効にされる”
ものであることが読み取れる。

キ.以上ア.?カ.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明1」という)が記載されているものと認める。

カードが複数の層によって形成され,表面の表層,或いは,前記表層下,及び,裏面の表層に生体情報入力センサ/検出器が配置されると共に,他の層に電源が配置され,
生体情報認証システムは,カードの表面層,及び,裏面層以外の層に配置され,生体情報入力センサ/検出器に接続され,
前記生体情報入力センサ/検出器は,生体情報の入力を受け付け,
前記生体情報認証システムは,前記生体情報入力センサ/検出器から,前記生体情報を受信して,認証し,
前記生体情報認証システムに入力された前記生体情報と,前記カード内に格納されている,前記カードの機能を有効にするための生体情報の組合せとが一致した場合に,前記カードの機能が有効にされる,カード。

ク.上記Gに引用した引用刊行物2の「図1は,本発明の第1の実施の形態の,複数の生体情報を用いた個人認証装置の基本構成を示すブロック図である。図1において,生体情報1入力手段1は認証に必要な指紋,虹彩,声紋,顔,掌型,サイン等の生体情報のうちいずれか1つの情報を取得する。生体情報2入力手段2は認証に必要な生体情報のうち生体情報1入力手段1で入力した以外の生体情報を取得する。」という記載から,
引用刊行物2には,
“「個人認証装置」において,「生体情報1入力手段」,及び,「生体情報2入力手段」の2つの“生体情報入力手段”から,異なる種類の「生体情報1」,及び,「生体情報2」を取得する”技術に関して記載されていることが読み取れる。

ケ.上記Gに引用した引用刊行物2の「生体情報1照合手段3は,生体情報1入力手段1で取得した生体情報から照合に必要な特徴量を抽出し,あらかじめ登録済みの生体情報1登録データ6との照合を行って類似度を計算する。生体情報2照合手段4は,生体情報2入力手段2で取得した生体情報から照合に必要な特徴量を抽出し,あらかじめ登録済みの生体情報2登録データ7との照合を行って類似度を計算する。複合判定手段5は,生体情報1照合手段3および生体情報2照合手段4で計算された類似度を用いて総合的に本人認証の判定を行う。」という記載と,上記Iに引用した,【図3】に開示された内容から,
引用刊行物2においては,
“「生体情報1」から,「あらかじめ登録済みの生体情報1登録データ」との照合を行って,「生体情報1類似度」を計算し,同じく,「生体情報2」から,「あらかじめ登録済みの生体情報2登録データ」との照合を行って,「「生体情報2類似度」を計算し,「総合判定手段」において,「生体情報1類似度」,及び,「生体情報2類似度」を用いて,「総合的に本人認証の判定を行う」”ことが読み取る。

コ.上記Gに引用した引用刊行物2の「生体情報1の他人類似度分布と本人類似度分布の交点をa_(0) ,生体情報2の他人類似度分布と本人類似度分布の交点をb_(0)とする。2次元類似度平面において,(a_(0) ,b_(0))を中心にして,(他人受入率)+(本人拒否率)が最小となる直線を数値計算で求め,しきい値として設定する。この直線より高い領域は"本人",低い領域は"他人"と判定する。」という記載と,上記Iに引用した,【図3】に開示された内容から,
引用刊行物2においては,
“生体情報1類似度>a_(0),及び,生体情報2類似度>b_(0)である時,本人であると判定する”ものであることが読み取れる。

サ.上記Gに引用した引用刊行物2の「一方の照合において類似度が低くても,他方の照合において類似度がある一定のしきい値以上ならば"本人"と判定する」という記載,及び,同じく,上記Gに引用した引用刊行物2の「図4に示すようにしきい値設定した場合,生体情報1の類似度が低くても,生体情報2の類似度がしきい値b_(1)以上ならば"本人"と判定し,一方のハンディを補うことが可能である。」という記載と,上記Iに引用した,【図4】に開示された内容から,
引用刊行物2においては,
“生体情報2類似度のしきい値を,b_(1)と設定した場合は,生体情報2類似度>b_(1)であれば,本人であると判定する”ものであることが読み取れ,
また,上記Iに引用した引用刊行物2の【図4】によれば,上記Gに引用した引用刊行物2の「しきい値として設定」された,「2次元類似度平面において,(a_(0) ,b_(0))を中心にして,(他人受入率)+(本人拒否率)が最小となる直線」と,「生体情報1類似度」を示す横軸との交点をa_(1)としたとき,「生体情報1類似度」>a_(1)であれば,「生体情報2類似度」がしきい値より小さい場合であっても,本人であると判定されるものであることが読み取れる。
このことから,引用刊行物2においては,
“しきい値として設定された,2次元類似度平面において,(a_(0) ,b_(0))を中心にして,(他人受入率)+(本人拒否率)が最小となる直線と,生体情報1類似度を示す横軸との交点をa_(1)としたとき,生体情報1類似度>a_(1)であれば,本人であると判定する”構成を採用し得ることは明らかである。

シ.以上において検討した事項から,引用刊行物2には,次の発明(以下,これを「引用発明2」という)が記載されていると認める。

個人認証装置において,生体情報1入力手段,及び,生体情報2入力手段の2つの生体情報入力手段から,異なる種類の生体情報1,及び,生体情報2を取得し,
前記生体情報1から,あらかじめ登録済みの生体情報1登録データとの照合を行って,生体情報1類似度を計算し,同じく,前記生体情報2から,あらかじめ登録済みの生体情報2登録データとの照合を行って,生体情報2類似度を計算し,
総合判定手段において,生体情報1類似度,及び,生体情報2類似度を用いて,総合的に本人認証の判定を行うものであって,
前記総合的な本人認証の判定は,
生体情報1類似度>a_(0),及び,生体情報2類似度>b_(0)である時,本人であると判定するか,或いは,生体情報2類似度のしきい値を,b_(1)と設定した場合は,生体情報2類似度>b_(1)であれば,本人であると判定するか,しきい値として設定された,2次元類似度平面において,(a_(0) ,b_(0))を中心にして,(他人受入率)+(本人拒否率)が最小となる直線と,生体情報1類似度を示す横軸との交点をa_(1)としたとき,生体情報1類似度>a_(1)であれば,本人であると判定するかの何れかによるものである,
個人認証装置。

(4)本件補正発明と引用発明1との対比
ア.引用発明1における「カード」は,「複数の層によって形成」されているので,本件補正発明における「ドキュメント」とは,
“積層されている複数の層から構成されている本体を有する構造体”である点で共通し,
引用発明1のおける「生体情報」が,本件補正発明における「バイオメトリクスデータ」に相当し,引用発明における「表面の表層」に配置された「生体情報入力センサ/検出器」,及び,「裏面の表層」に配置された「生体情報入力センサ/検出器」は,共に,「生体情報」の入力を受け付けるもの,即ち,「生体情報」を取得するものであるから,
引用発明1における「表面の表層,或いは,前記表層下」に配置された「生体情報入力センサ/検出器」,及び,「裏面の表層」に配置された「生体情報入力センサ/検出器」と, 本件補正発明における「複数のドキュメント層のうち第2の層」が有する「第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部」,及び,「複数のドキュメント層のうち第3の層」が有する「第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部」とは,それぞれ,
“複数の層のうち第2の層”が有する「第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部」と,
“複数の層のうち第3の層”が有する「第2のバイオメトリクスデータを収集するための第2の取得部」である点で共通し,
引用発明1における「生体情報認証システム」は,入力された「生体情報」が,所定の条件を満たすかを認証するのも,即ち,該「生体情報」に対する「評価」を行うものであることは明らかであり,引用発明における2つの「生体情報入力センサ/検出器」とは,別の層に配置されているものであるから,
本件補正発明における「複数のドキュメント層のうち第1の層」に存在する「評価部」とは,
“複数の層のうち第1の層”が有する“評価手段”である点で共通するので,
引用発明1における,
「カードが複数の層によって形成され,表面の表層,或いは,前記表層下,及び,裏面の表層に生体情報入力センサ/検出器が配置されると共に,他の層に電源が配置され,
生体情報認証システムは,カードの表面層,及び,裏面層以外の層に配置され」ることと,
本件補正発明における,
「積層されている複数のドキュメント層から構成されているドキュメント本体を備えるドキュメントであって,
前記複数のドキュメント層のうち第1の層は,評価部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第3の層は,第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有して」いることとは,
“積層されている複数の層から構成されている本体を有する構造体であって,
前記複数の層のうち第1の層は,評価手段を有しており,
前記複数の層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数の層のうち第3の層は,2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有して”いる点で共通する。

イ.引用発明1における「生体情報認証システム」は,「生体情報入力センサ/検出器に接続され」ているので,
本件補正発明における「前記評価部は,少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されて」いることと,
“評価手段は,少なくとも第1の取得部および第2の取得部に接続されている”点で共通する。

ウ.引用発明1において,「生体情報認証システムは,前記生体情報入力センサ/検出器から,前記生体情報を受信して」いるので,
本件補正発明における「前記第1の取得部および前記第2の取得部から少なくとも前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータを受信」することと,
“取得部からバイオメトリクスデータを受信する”点で共通する。

エ.引用発明1においては,「生体情報認証システム」が,「生体情報」の「認証」を行っているので,
本件補正発明における「評価部は,前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行」うことと,
“評価手段は,取得部から供給されるバイオメトリクスデータについて評価を行う”点で共通する。

オ.引用発明1においては,「入力された前記生体情報と,前記カード内に格納されている,前記カードの機能を有効にするための生体情報の組合せとが一致した場合に,前記カードの機能が有効にされる」ものであるから,“評価の結果に基づいて,カードの機能が有効にされる”ものであって,「機能が有効にされる」ことは,即ち,“機能がアクティブになる”ことに他ならないので,
本件補正発明における「評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化」することと,
“評価の結果に基づいて構造体の機能をアクティブ化”する点で共通する。

カ.引用発明1において,「カード内に格納されている,前記カードの機能を有効にするための生体情報の組合せ」は,“生体情報認証システムに入力された前記生体情報”と比較することで,該“入力された生体情報”を認証するために用いるものであるから,該“入力された生体情報”の正当性を判断するための「基準データ」と言い得るものである。
そして,引用発明1においては,この「基準データ」である,「カードの機能を有効にするための生体情報の組合せ」が,「カード内に格納されている」のであるから,該「カード」には,該「カードの機能を有効にするための生体情報の組合せ」を格納するための「記憶領域」が存在することは明らかである。
よって,引用発明1における「前記カード内に格納されている,前記カードの機能を有効にするための生体情報の組合せ」と,
本件補正発明における,
「前記ドキュメントは,
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え,
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え」ることとは,
“構造体は,バイオメトリクスデータ用の基準データを格納するメモリ領域を備える”点で共通する。

キ.以上ア.?カ.において検討した事項から,本件補正発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
積層されている複数の層から構成されている本体を有する構造体であって,
前記複数の層のうち第1の層は,評価手段を有しており,
前記複数の層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数の層のうち第3の層は,第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有しており,
前記評価手段は,少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されていて,前記取得部からバイオメトリクスデータを受信し,
前記評価手段は,前記取得部から供給される前記バイオメトリクスデータについて評価を行って,前記評価の結果に基づいて前記構造体の機能をアクティブ化し,
前記構造体は,バイオメトリクスデータ用の基準データを格納するメモリ領域を備える
構造体。

[相違点1]
“複数の層”,及び,“構造体”に関して,
本件補正発明においては,“複数の層”は,「複数のドキュメント層」であり,「構造体」は,「ドキュメント」であるのに対して,
引用発明1においては,“複数の層”は,「カード」を形成する「層」であり,“構造体”は,「カード」である点。

[相違点2]
“複数の層のうち第1の層は,評価手段を有して”いる点に関して,
本件補正発明においては,“評価手段”は,「評価部」であるのに対して,
引用発明1においては,“評価手段”は,「生体情報認証システム」である点。

[相違点3]
“取得部からバイオメトリクスデータを受信”する点に関して,
本件補正発明においては,「評価部」が,“第1の取得部および第2の取得部から少なくとも第1のバイオメトリクスデータおよび第2のバイオメトリクスデータを受信」するものであるのに対して,
引用発明1においては,“生体情報認証システムは,生体情報入力センサ/検出器から,生体情報を受信”するものであって,“表面の表層,或いは,前記表層下に配置された生体情報入力センサ/検出器”,及び,“裏面の表層に配置された生体情報入力センサ/検出器”の両方から「生体情報」を受信する点については,特に言及されていない点。

[相違点4]
“評価手段は,前記取得部から供給される前記バイオメトリクスデータについて評価を行”う点に関して,
本件補正発明においては,「評価部は,前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行」うものであるのに対して,
引用発明1においては,「生体情報認証システムは,前記生体情報入力センサ/検出器から,前記生体情報を受信して,認証」するものであって,“表面の表層,或いは,前記表層下に配置された生体情報入力センサ/検出器”,及び,“裏面の表層に配置された生体情報入力センサ/検出器”の両方が,それぞれ,受信した「生体情報」について評価を行うことについては,特に言及されていない点。

[相違点5]
“評価の結果に基づいて前記構造体の機能をアクティブ化”する点に関して,
本件補正発明においては,「評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化」するものであるのに対して,
引用発明1においては,認証の結果に基づいて,「カードの機能が有効にされる」ものである点。

[相違点6]
“構造体は,バイオメトリクスデータ用の基準データを格納するメモリ領域を備える”点に関して,
本件補正発明においては,
「ドキュメントは,
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え,
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え」るものであるのに対して,
引用発明1においては,「カード内に格納されている」のは,「カードの機能を有効にするための生体情報の組合せ」である点。

[相違点7]
本件補正発明においては,
「評価部は,前記第1の基準データおよび前記第1のバイオメトリクスデータに基づいて第1の信頼値が決定され,前記第2の基準データおよび前記第2のバイオメトリクスデータに基づいて第2の信頼値が決定されるように構成され,
前記評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えている場合または前記第1の信頼値および前記第2の信頼値の両方が第2のしきい値を超えている場合に,前記機能がアクティブ化されるように構成され,
前記第2のしきい値は,前記第1のしきい値未満である」のに対して,
引用発明1においては,「生体情報認証システムに入力された前記生体情報と,前記カード内に格納されている,前記カードの機能を有効にするための生体情報の組合せとが一致した場合に,前記カードの機能が有効にされる」ものである点。

(5)相違点についての当審の判断
ア.[相違点1],及び,[相違点5]に関して,
上記「(4)本件補正発明と引用発明との対比」において検討したとおり,本件補正発明における「ドキュメント」と,引用発明における「カード」とは,用語の違いを除けば,ほぼ,同等の“ハードウェア構成”を有している。
日本語において,一般的に,「ドキュメント」とは,「記録,文書,文献」を意味するものであり(久松潜一,林大,坂倉篤義監修「国語辞典」講談社各術文庫 昭和54年2月10日 第1刷発行)であるところ,本件補正発明における「ドキュメント」は,上記においても言及したとおり,その構成から,“ハードウェア”であると認められるので,本件補正発明における「ドキュメント」が,通常の意味での「ドキュメント」とは異なるものであることは明らかである。
そこで,本件補正発明における「ドキュメント」という用語の定義について,本願明細書の発明の詳細な説明を参照すると,

「【0005】
本発明の実施形態に係るドキュメントは,高価値のドキュメントまたはセキュリティドキュメントであり,例えば,身分証明(ID)カード,パスポート,運転免許証あるいは社員IDカード等のIDドキュメントであるか,または,例えば,銀行券,クレジットカード等の支払い手段であるか,または,例えば,入場券,受託書,査証等の別の信任状である。ドキュメントは,紙および/またはプラスチックで出来ている。具体的には,ドキュメントは,本またはカードとして構成することができる。または,ドキュメントはスマートカードであってよい。
【0006】
本発明の実施形態に係るドキュメントは,積層されている複数のドキュメント層で構成されているドキュメント本体を備える。各ドキュメント層は,プラスチックまたは紙で形成することができる。例えば,各ドキュメント層はそれぞれ,形状およびサイズが略同じであるので,積層することによって,例えば,カード形状のドキュメント本体が形成される。このため,ドキュメント層は,互いに重ねるとしてよい。」

「【0010】
本発明の一実施形態によると,評価部は,いわゆる「カード一致」プロセスを実行するように構成されている。このため,ドキュメントは,第1のバイオメトリクスデータに対する第1の基準データを格納する第1のメモリ領域と,第2のバイオメトリクスデータに対する第2の基準データを格納する第2のメモリ領域とを備える。第1の基準データは,第1のバイオメトリクスデータに対して「カード一致」プロセスを実行するために利用され,第2の基準データは,第2のバイオメトリクスデータに対して「カード一致」プロセスを実行するために利用される。「カード一致」プロセスは,いずれの場合も評価部によって実行される。」

と記載されていて,上記引用の本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】,【0006】,及び,【0010】に記載された内容から,本件補正発明における,“ハードウェア”としての「ドキュメント」とは,「カード」と同等なものであると言える。
したがって,本件補正発明における「ドキュメント」と,引用発明における「カード」とは,“ハードウェア”としては,ほぼ同等なものであって,格別の相違はない。
よって,[相違点1],及び,[相違点5]は,格別のものではない。

イ.[相違点2]?[相違点4],[相違点6],及び,[相違点7]について
引用発明2にあるとおり,「生体情報1類似度>a_(0),及び,生体情報2類似度>b_(0)である時,本人であると判定するか,或いは,生体情報2類似度のしきい値を,b_(1)と設定した場合は,生体情報2類似度>b_(1)であれば,本人であると判定するか,しきい値として設定された,2次元類似度平面において,(a_(0) ,b_(0))を中心にして,(他人受入率)+(本人拒否率)が最小となる直線と,生体情報1類似度との交点をa_(1)としたとき,生体情報1類似度>a_(1)であれば,本人であると判定する」と判定していることから,個人認証を行う際に,2つの“生体情報入力手段”から,異なる2つの「生体情報」の入力を受け付け,該2つの「生体情報」のそれぞれについて,何れか一方が,それぞれの「生体情報」に設定されている“第1のしきい値”を超えている場合に,本人であると判定し,該2の「生体情報」の両方が,それぞれの「生体情報」に設定されている“第1のしきい値”を超えない場合であっても,該2つの「生体情報」が,該2つの「生体情報」のそれぞれに設定されている,“第1のしきい値”より低い,“第2のしきい値”を同時に超える場合に,本人であると判定するような「個人認証装置」は,本願の第1国出願前に,当業者に知られた技術事項であって,引用発明1において,認証に用いる「生体情報の組合せ」が,「カード」内に格納されて,また,引用発明2においても,「本人認証の判定」にために,「あらかじめ登録済みの生体情報1登録データ」,及び,「あらかじめ登録済みの生体情報1登録データ生体情報2登録データ」を用いていることから,本人認証に用いる“照合用のデータ”が,引用発明1においては,「カード」内,引用発明2においては,「個人認証装置」内に格納されていることは明らかであり,該“照合用のデータ”を格納する際に“メモリ”を用いること,複数のデータが存在する場合に,該データを,該“メモリの異なる領域”に格納するようなことは,本願の第1国出願前に,当業者には周知の技術事項に過ぎない。
そして,引用発明1と,引用発明2とは,共に,「生体情報」を用いた,“本人確認のための装置”に関するものであるから,引用発明1における“表面の表層,或いは,前記表層下,及び,裏面の表層に配置された生体情報入力センサ/検出器”,それぞれから入力される「生体情報」を,該“本人確認のための装置”内の“メモリの異なる領域”に格納されている2つの“照合用のデータ”を用いて,引用発明2における,入力された2つの「生体情報」のそれぞれに設定されている,“第1のしきい値”,及び,“第2のしきい値”に基づいて,本人であるかの判定を行う手法を導入することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点2]?[相違点4],[相違点6],及び,[相違点7]は,格別のものではない。

ウ.以上ア.,及び,イ.において検討したとおり,[相違点1]?[相違点7]はいずれも格別のものではなく,そして,本件補正発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
よって,本件補正発明は,引用発明1,及び,引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
平成27年4月15日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成26年6月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,上記「第2.平成27年4月15日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1として引用した,次の記載のとおりのものである。

「積層されている複数のドキュメント層から構成されているドキュメント本体を備えるドキュメントであって,
前記複数のドキュメント層のうち第1の層は,評価部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数のドキュメント層のうち第3の層は,第2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有しており,
前記評価部は,少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されていて,前記第1の取得部および前記第2の取得部から少なくとも前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータを受信し,
前記評価部は,前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行って,前記評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化し,
前記ドキュメントは,
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え,
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え,
前記評価部は,前記第1の基準データおよび前記第1のバイオメトリクスデータに基づいて第1の信頼値が決定され,前記第2の基準データおよび前記第2のバイオメトリクスデータに基づいて第2の信頼値が決定されるように構成され,
前記評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値が入力される計算処理の結果が第2のしきい値を超えている場合に前記機能がアクティブ化されるように構成されている
ドキュメント。」

第4.引用刊行物に記載の発明
上記「(2)引用刊行物に記載の事項」において,引用刊行物1として引用した,米国特許出願公開第2009/0145972号明細書(2009年6月11日公開)には,上記「(3)引用刊行物に記載の発明」において,引用発明1として認定した発明が記載されており,同じく,上記「(2)引用刊行物に記載の事項」において,引用刊行物2として引用した,特開2002-230553号公報(2002年8月16日公開)には,上記「(3)引用刊行物に記載の発明」において,引用発明2として認定した発明が記載されている。

第5.本願発明と引用発明1との対比
本願発明は,上記「第2.平成27年4月15日付けの手続補正の却下の決定」において検討した本件補正発明における,
「評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値のうち少なくとも1つが第1のしきい値を超えている場合または前記第1の信頼値および前記第2の信頼値の両方が第2のしきい値を超えている場合に,前記機能がアクティブ化されるように構成され,前記第2のしきい値は,前記第1のしきい値未満である」,
という評価部の構成を,
「評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値が入力される計算処理の結果が第2のしきい値を超えている場合に前記機能がアクティブ化されるように構成されている」,
としたものであるから,本願発明と,引用発明1との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
積層されている複数の層から構成されている本体を有する構造体であって,
前記複数の層のうち第1の層は,評価手段を有しており,
前記複数の層のうち第2の層は,第1のバイオメトリクスデータを収集するための第1の取得部を有しており,
前記複数の層のうち第3の層は,2のバイオメトリクスデータを収集する第2の取得部を有しており,
前記評価手段は,少なくとも前記第1の取得部および前記第2の取得部に接続されていて,前記取得部からバイオメトリクスデータを受信し,
前記評価手段は,前記取得部から供給される前記バイオメトリクスデータについて評価を行って,前記評価の結果に基づいて前記構造体の機能をアクティブ化し,
前記構造体は,バイオメトリクスデータ用の基準データを格納するメモリ領域を備える
構造体。

[相違点a]
“複数の層”,及び,“構造体”に関して,
本願発明においては,“複数の層”は,「複数のドキュメント層」であり,「構造体」は,「ドキュメント」であるのに対して,
引用発明1においては,“複数の層”は,「カード」を形成する「層」であり,“構造体”は,「カード」である点。

[相違点b]
“複数の層のうち第1の層は,評価手段を有して”いる点に関して,
本願発明においては,“評価手段”は,「評価部」であるのに対して,
引用発明1においては,“評価手段”は,「生体情報認証システム」である点。

[相違点c]
“取得部からバイオメトリクスデータを受信”する点に関して,
本願発明においては,「評価部」が,“第1の取得部および第2の取得部から少なくとも第1のバイオメトリクスデータおよび第2のバイオメトリクスデータを受信」するものであるのに対して,
引用発明1においては,“生体情報認証システムは,生体情報入力センサ/検出器から,生体情報を受信”するものであって,“表面の表層,或いは,前記表層下に配置された生体情報入力センサ/検出器”,及び,“裏面の表層に配置された生体情報入力センサ/検出器”の両方から「生体情報」を受信する点については,特に言及されていない点。

[相違点d]
“評価手段は,前記取得部から供給される前記バイオメトリクスデータについて評価を行”う点に関して,
本願発明においては,「評価部は,前記第1の取得部および前記第2の取得部から供給される前記第1のバイオメトリクスデータおよび前記第2のバイオメトリクスデータについて評価を行」うものであるのに対して,
引用発明1においては,「生体情報認証システムは,前記生体情報入力センサ/検出器から,前記生体情報を受信して,認証」するものであって,“表面の表層,或いは,前記表層下に配置された生体情報入力センサ/検出器”,及び,“裏面の表層に配置された生体情報入力センサ/検出器”の両方が,それぞれ,受信した「生体情報」について評価を行うことについては,特に言及されていない点。

[相違点e]
“評価の結果に基づいて前記構造体の機能をアクティブ化”する点に関して,
本願発明においては,「評価の結果に基づいて前記ドキュメントの機能をアクティブ化」するものであるのに対して,
引用発明1においては,認証の結果に基づいて,「カードの機能が有効にされる」ものである点。

[相違点f]
“構造体は,バイオメトリクスデータ用の基準データを格納するメモリ領域を備える”点に関して,
本願発明においては,
「ドキュメントは,
前記第1のバイオメトリクスデータ用の第1の基準データを格納する第1のメモリ領域を備え,
前記第2のバイオメトリクスデータ用の第2の基準データを格納する第2のメモリ領域を備え」るものであるのに対して,
引用発明1においては,「カード内に格納されている」のは,「カードの機能を有効にするための生体情報の組合せ」である点。

[相違点g]
本願発明においては,
「評価部は,前記第1の基準データおよび前記第1のバイオメトリクスデータに基づいて第1の信頼値が決定され,前記第2の基準データおよび前記第2のバイオメトリクスデータに基づいて第2の信頼値が決定されるように構成され,
前記評価部は,前記第1の信頼値および前記第2の信頼値が入力される計算処理の結果が第2のしきい値を超えている場合に前記機能がアクティブ化されるように構成されている」のに対して,
引用発明1においては,「生体情報認証システムに入力された前記生体情報と,前記カード内に格納されている,前記カードの機能を有効にするための生体情報の組合せとが一致した場合に,前記カードの機能が有効にされる」ものである点。

第6.相違点についての当審の判断
1.[相違点a]?[相違点f]について
本願発明と,引用発明1との[相違点a]?[相違点f]は,本件補正発明と,引用発明との[相違点1]?[相違点6]と同じものであるから,上記「第2.平成27年4月15日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(5)相違点についての当審の判断」において検討したとおり,格別のものではない。

2.[相違点g]について
上記「第2.平成27年4月15日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における「(5)相違点についての当審の判断」のイ.において検討したとおり,引用発明2には,個人認証を行う際に,2つの“生体情報入力手段”から,異なる2つの「生体情報」の入力を受け付け,該2つの「生体情報」が,該2つの「生体情報」のそれぞれに設定されている,“第1のしきい値”より低い,“第2のしきい値”を同時に超える場合に,本人であると判定するような「個人認証装置」が開示されていて,引用発明1も,引用発明2も,共に,「生体情報」を用いた,「個人認証装置」に関するものであるから,引用発明1における2つの「生体情報入力センサ/検出器」からに入力される「生体情報」を用いた“認証処理”に,上記指摘の引用発明2の処理系を導入することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点g]は,格別のものではない。

3.以上1.,及び,2.において検討したとおり,[相違点a]?[相違点g]はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-16 
結審通知日 2016-03-22 
審決日 2016-04-05 
出願番号 特願2012-532541(P2012-532541)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 正典  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 戸島 弘詩
石井 茂和
発明の名称 ドキュメント  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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