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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1318839
審判番号 不服2015-9102  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-15 
確定日 2016-09-01 
事件の表示 特願2013-549317「異方導電性フィルム付き半導体チップ、異方導電性フィルム付き半導体ウェハ、及び半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日国際公開、WO2013/089199〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)12月13日(国内優先権主張 2011年12月16日)を国際出願日とする出願であって、平成26年4月23日付けで審査請求がなされ、同年11月11日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年1月15日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年2月10日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成27年5月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。


第2 平成27年5月15日付けの手続補正についての却下の決定

[補正却下の結論]
平成27年5月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成27年5月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)

【請求項1】
片面に複数の回路電極を有する半導体チップと、該回路電極を覆う異方導電性フィルムとを有する異方導電性フィルム付き半導体チップであって、該異方導電性フィルムは、絶縁性樹脂成分と導電性粒子とを含み、該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在し、該異方導電性フィルムが、該回路電極を覆う絶縁性接着剤層と導電性粒子層とを有し、前記絶縁性接着剤層は熱硬化性樹脂を含有し、そして該導電性粒子層では、熱可塑性樹脂を含有する絶縁性樹脂中に該導電性粒子が略平面状に1層分散配列していることを特徴とする、前記異方導電性フィルム付き半導体チップ。
・・・ < 中 略 > ・・・
【請求項15】
片面に複数の回路電極を有する半導体ウェハと、該回路電極を覆う異方導電性フィルムとを有する異方導電性フィルム付き半導体ウェハであって、該異方導電性フィルムは、絶縁性樹脂成分と導電性粒子とを含み、該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在し、該異方導電性フィルムが、該回路電極を覆う絶縁性接着剤層と導電性粒子層とを有し、前記絶縁性接着剤層は熱硬化性樹脂を含有し、そして該導電性粒子層では、熱可塑性樹脂を含有する絶縁性樹脂中に前記導電性粒子が略平面状に1層分散配列していることを特徴とする、前記異方導電性フィルム付き半導体ウェハ。
・・・ < 後 略 > ・・・

(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

【請求項1】
片面に複数の回路電極を有する半導体チップと、該回路電極を覆う異方導電性フィルムとを有する異方導電性フィルム付き半導体チップであって、該異方導電性フィルムは、絶縁性樹脂成分と導電性粒子とを含み、該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在し、該異方導電性フィルムが、該回路電極を覆う絶縁性接着剤層と導電性粒子層とを有し、そして該導電性粒子層では、絶縁性樹脂中に該導電性粒子が略平面状に1層分散配列していることを特徴とする、前記異方導電性フィルム付き半導体チップ。
・・・ < 中 略 > ・・・
【請求項15】
片面に複数の回路電極を有する半導体ウェハと、該回路電極を覆う異方導電性フィルムとを有する異方導電性フィルム付き半導体ウェハであって、該異方導電性フィルムは、絶縁性樹脂成分と導電性粒子とを含み、該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在し、該異方導電性フィルムが、該回路電極を覆う絶縁性接着剤層と導電性粒子層とを有し、そして該導電性粒子層では、絶縁性樹脂中に前記導電性粒子が略平面状に1層分散配列していることを特徴とする、前記異方導電性フィルム付き半導体ウェハ。
・・・ < 後 略 > ・・・

2 補正の適否について
(1)補正の目的について
補正後の請求項1,15に係る発明は、補正前の請求項1,15に係る発明に対応し、補正後の請求項1,15に係る発明は、補正前の請求項1,15に係る発明に次の補正がなされたものである。

(a)補正前の請求項1および15に対して、補正後の請求項1および15において、「前記絶縁性接着剤層は熱硬化性樹脂を含有し、」を加える補正。

補正事項(a)について検討すると、補正事項(a)により補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認めら得るから、補正事項(a)は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項(a)は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項(a)は、補正前の「絶縁性接着層」について、「前記絶縁性接着剤層は熱硬化性樹脂を含有」するとの限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項(a)は、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり、また、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(b)補正前の請求項1および15に対して、補正後の請求項1および15において、「熱可塑性樹脂を含有する」を加える補正。

補正事項(b)について検討すると、補正事項(b)により補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認めら得るから、補正事項(b)は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項(b)は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項(b)は、補正前の「導電性粒子層」について、「熱可塑性樹脂を含有する」との限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項(b)は、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかであり、また、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(c)小括
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、特許法第17条の2第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。


そこで、補正後の請求項に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)独立特許要件について
補正後の請求項15に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記[理由]1の「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」の請求項15に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(a)各引用例について
(a-1)引用例1の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2009-16133号公報(以下,「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)

(ア)「【0016】
(異方性導電膜)
本発明の異方性導電膜は、絶縁層と、導電性粒子含有層とを少なくとも有してなり、ベースフィルムを有していてもよく、更にその他の層を有していてもよい。
【0017】
ここで、本発明の異方性導電膜の一例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の異方性導電膜の一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、本発明の異方性導電膜は、導電性粒子含有層10と、導電性粒子含有層10上に積層された絶縁層20とを有してなる。
絶縁層20は、絶縁性樹脂組成物22で形成されてなる。
導電性粒子含有層10は、光及び熱硬化性樹脂組成物12と導電性粒子14とを含んでおり、導電性粒子14は、絶縁層20側の界面に単層配列している。また、導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14の存在する側から導電性粒子14が存在しない側にかけて、硬化度が漸次低くなっており、即ち、硬化度が傾斜しており、硬化度の高い領域では、導電性粒子14が絶縁層20側の界面に単層配列した状態で固定されている。一方、導電性粒子含有層10における導電性粒子14が存在しない側は、硬化度が低い状態乃至未硬化状態であり、光及び熱硬化性樹脂組成物12が接着性を有する。
なお、前記未硬化状態とは、硬化が完全に行われておらず、押圧力を付与すると、樹脂が流動性を示す状態を意味する。」

(イ)「【0046】
-使用例-
本発明の前記異方性導電膜の使用例として、例えば、液晶画面制御用ICチップとITOガラス基板との接合体への適用例を、以下に図面を用いて説明する。
図4Aに示すように、ITOガラス基板40におけるITO電極42側に、異方性導電膜における導電性粒子含有層10を接触させ、液晶画面制御用ICチップ30におけるバンプ32側に、絶縁層20を接触させるように、図1に示す異方性導電膜を配置して仮圧着する。そして、図4Bに示すように、熱及び圧力によりこれらを圧着すると、絶縁層20における樹脂は、流動性を有するため、バンプ32に押しのけられた状態にて熱硬化する。導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14が存在する側は、硬化度が高く、導電性粒子14が固定されているので、導電性粒子14が流動することなく、高い捕捉率でバンプ32に捕捉される。一方、導電性粒子含有層10の導電性粒子14が存在しない側に向かって、硬化度が漸次低くなっているので、導電性粒子14が存在しない側の樹脂は、バンプ32からの押圧力により流動し排除され、ITO電極42と導電性粒子14との接触を妨げない状態にて熱硬化する。以上により、液晶表示用ICチップ30とITOガラス基板40との接合体が形成され、導電性粒子14を介してバンプ32とITO電極42との導通が図られる。」

(ウ)「【0065】
(実施例1)
・・・ < 中 略 > ・・・
【0068】
<絶縁層(NCF層)積層工程>
下記表2に示す組成に基づいて、絶縁層形成用溶液を調製した。

得られた絶縁層形成用溶液を、バーコーターを用いて剥離PETシートS4上に塗布し、60℃で10分間乾燥させて溶剤を揮発させることにより、厚み10μmのフィルムB(絶縁層200)を得た(図5G参照)。
・・・ < 中 略 > ・・・
【0070】
(実施例2)
-異方性導電膜の製造-
実施例1において、前記導電性粒子含有層形成工程を、下記方法により行った以外は、実施例1と同様にして、異方性導電膜を製造した。
【0071】
<導電性粒子含有層(ACF層)形成工程>
下記表3に示す組成に基づいて、導電性粒子含有層形成用溶液を調製した。

得られた導電性粒子含有層形成用溶液を、バーコーターを用いて剥離PETシートS6上に塗布し、60℃のオーブン中で10分間加熱して溶剤を揮発させ、厚み5μmのフィルムA(導電性粒子含有層120)を得た(図6A参照)。得られたフィルムAの表面は、タック性を有していた。
【0072】
フィルムAにおける導電性粒子Pが存在する側の面に、透明剥離PETシートS7をラミネートする一方、反対側の面の剥離PETシートS6を剥離した。そして、UV照射機(「キュアマックス」;大宮化成製)を用いて紫外線を13mW/cm2の照射量で1分間にわたって、透明剥離PETシートS7側から、フィルムAに対して照射した(図6B参照)。
その結果、透明剥離PETシートS7を剥離すると、紫外線の照射前には、導電性粒子含有層120の両面がタック性を有していたが、紫外線の照射後には、導電性粒子含有層120における導電性粒子Pが存在する側の面のみ、タック性が消失していたことが確認された。
【0073】
その後、実施例1と同様にして、絶縁層200を形成し、導電性粒子含有層120に積層して、異方性導電膜を得た(図6C参照)。」

上記(ア)?(ウ)の記載を参照すると、次のことがいえる。

(あ)上記(ア)の記載から、引用例1に記載された発明は、異方性導電膜の発明であって、導電性粒子含有層10と、導電性粒子含有層10上に積層された絶縁層20とを有し、絶縁層20は、絶縁性樹脂組成物22で形成され、導電性粒子含有層10は、光及び熱硬化性樹脂組成物12と導電性粒子14とを含んでおり、導電性粒子14は、絶縁層20側の界面に単層配列していることがわかる。
(い)上記(イ)の記載から、引用例1に記載された発明は、ITOガラス基板40におけるITO電極42側に、異方性導電膜における導電性粒子含有層10を接触させ、液晶画面制御用ICチップ30におけるバンプ32側に、絶縁層20を接触させるように、異方性導電膜を配置して仮圧着し、熱及び圧力によりこれらを圧着すると、絶縁層20における樹脂は、流動性を有するため、バンプ32に押しのけられた状態にて熱硬化し、導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14が存在する側は、硬化度が高く、導電性粒子14が固定されているので、導電性粒子14が流動することなく、高い捕捉率でバンプ32に捕捉されることがわかる。
(う)上記(ウ)の記載から、引用例1に記載された発明の異方性導電膜は、絶縁層200にエポキシ樹脂を含有し(表2)、導電性粒子含有層120にフェノキシ樹脂を含有する(表3)ことがわかる。

上記(あ)?(う)の事項を踏まえると、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。

異方性導電膜であって、
該異方性導電膜は、絶縁性樹脂組成物22と導電性粒子14とを含み、
該異方性導電膜は、導電性粒子含有層10と導電性粒子含有層10上に積層された絶縁層20とを有し、
液晶画面制御用ICチップ30におけるバンプ32側に、絶縁層20を接触させるように、異方性導電膜を配置し、熱及び圧力により圧着すると、絶縁層20における樹脂は、流動性を有するため、バンプ32に押しのけられた状態にて熱硬化し、導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14が存在する側は、硬化度が高く、導電性粒子14が固定されているので、導電性粒子14が流動することなく、高い捕捉率でバンプ32に捕捉され、
絶縁層20はエポキシ樹脂を含有し、
導電性粒子含有層10はフェノキシ樹脂を含有するとともに導電性粒子14を絶縁層20側の界面に単層配列していることを特徴とする
異方性導電膜。

(a-2)引用例2の記載について
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2009-27173号公報(以下,「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)

(エ)「【0002】
電子パッケージ技術は、半導体素子から最終製品に至るまでの全ての工程を包含する非常に広範囲かつ多様なシステム製造技術であって、殊に電子製品の足並みの早い発展速度に合わせる機器の小型化、軽量化、高性能化を具現することにおいて非常に重要な技術である。また、最終電子製品の性能、サイズ、価格および信頼性などが決定される非常に重要な技術である。特に、電気的高性能、極小型/高密度、低電力、多機能、超高速信号処理、その上、半永久的信頼性をも追求する工程にある最近の電子製品における極小型パッケージの部品は、コンピューター、情報通信、移動通信、高級家電製品などの必須の部品である。この中、チップを基板に実装する技術の1つであるフリップチップ(Flip Chip)技術は、現在スマートカード(Smart Cards)、LCD、PDPなどのディスプレイパッケージング(Display Packaging)、コンピューター、携帯用電話機、通信システムなどにその活用範囲が広くなっている。
・・・ < 中 略 > ・・・
【0005】
非はんだフリップチップの代表的な技術は、ACAを利用するフリップチップ技術である。既存のACAを利用したフリップチップ技術は、基板上にACA材料を塗布或は仮接着して、チップと基板を整列(align)させた後、最終的に熱と圧力を加えてフリップチップパッケージを完成させる工程でなっている。しかし、このような工程は、フィルムの形成やそれぞれの基板ごとにACA材料の塗布や仮接着するなど長い工程時間を要する。
・・・ < 中 略 > ・・・
【0008】
異方性導電接着剤(ACA)は、その形態によって大別するとき、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film、以下、ACFと略記する)と、異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste、以下、ACPと略記する)とに分けられる。また、その内部に導電粒子(conductive particle)を含むかの可否によってACAとNCAに分けられる。つまり、電子パッケージングに使用される接着剤は、ACF、ACP、NCF(非導電性フィルム:Non-Conductive Film)、NCP(非導電性ペースト:Non-Conductive Paste)の4つに分けられる。」

(オ)「【0013】
S.H.Shiなどは、はんだバンプが形成されたウエハー上にはんだフラックス機能を含むアンダーフィル材料を塗布した後、各チップをダイシングして既存のSMTアセンブリー装置を利用して基板に整列させ、既存のはんだリフロー法で接続させた後、アンダーフィル材料をチップと基板との間に差し込める工程を簡素化した方法を提供する。また、特許文献3はACFを利用する場合、離型紙フィルムの上にコーティングした後、熱と圧力を加えるラミネーション工程方法を利用してウエハー上に転写する工程方法を提供し、ACPを利用する場合、スプレー(spray)、ドクターブレード(doctor blade)、または、メニスカス(meniscus)法によってウエハー上に塗布する工程方法を提供する。したがって、フィルム形態を使用する場合、ウエハーの上部にフィルムを位置させ、熱と圧力を加えるラミネーション工程と離型紙を除去する工程が必要であり、このとき、平坦ではないウエハーの表面にフィルム形態のACAまたはNCAを付着させる場合、シャドー効果が現われ易い問題がある。一方、ペースト状を使用する場合、コーティング層の厚さを調節することに難しい問題がある。また、単一のACA層を使用することになるので、熱と圧力を加えるラミネート工程中に、望まない電気的通電が発生する問題がある。」

(え)上記(エ)(オ)の記載によれば、引用例2には、次の事項が記載されているといえる。

チップに基板を実装する技術である非はんだフリップにおいて、ウエハーの上部に異方性導電フィルム(ACF)を位置させ、熱と圧力を加えるラミネーション工程と剥離紙を除去する工程を行って、異方性導電フィルム付きウエハーを製造する。

(b)対比
(b-1)本願発明と引用例1発明とを対比する。
(ア)引用例1発明の「異方性導電膜」「絶縁性樹脂組成物22」「導電性粒子14」「絶縁層20」「導電性粒子含有層10」は、それぞれ本件補正発明の「異方導電性フィルム」「絶縁性樹脂」「導電性粒子」「絶縁性接着剤層」「導電性粒子層」に相当する。
(イ)「エポキシ樹脂」および「フェノキシ樹脂」は、それぞれ熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂として周知の樹脂であるから、引用例1発明の「エポキシ樹脂」および「フェノキシ樹脂」は、それぞれ本件補正発明の「熱硬化性樹脂」および「熱可塑性樹脂」に相当する。
(ウ)そして、引用例1発明の導電性粒子含有層10は、導電性粒子14を絶縁層20側の界面に単層配列しているから、引用例1発明は、本件補正発明の「該導電性粒子層では、熱可塑性樹脂を含有する絶縁性樹脂中に前記導電性粒子が略平面状に1層分散配列していること」と同様の構成を有していると認められる。

(b-2)以上(ア)?(ウ)のことから、本件補正発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「絶縁性樹脂成分と導電性粒子とを含み、
絶縁性接着剤層と導電性粒子層とを有し、
前記絶縁性接着剤層は熱硬化性樹脂を含有し、
そして該導電性粒子層では、熱可塑性樹脂を含有する絶縁性樹脂中に前記導電性粒子が略平面状に1層分散配列していることを特徴とする、
異方導電性フィルム。」

[相違点1]
本件補正発明は、「片面に複数の回路電極を有する半導体ウェハと、該回路電極を覆う異方導電性フィルムとを有する異方導電性フィルム付き半導体ウェハ」であるのに対して、引用例1発明は、「異方導電性フィルム付き半導体ウェハ」について記載されていない点。

[相違点2]
本件補正発明は、「該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在し」ているのに対して、引用例1発明は対応する記載を有していない点。

[相違点3]
本件補正発明は、「異方導電性フィルム」の「絶縁性接着剤層と導電性粒子層」が、「該回路電極を覆」っているのに対して、引用例1発明は対応する記載を有していない点。

(c)当審の判断
上記相違点について検討する。

(c-1)[相違点1]および[相違点3]について
引用例2に記載されているように、「ウエハーの上部に異方性導電フィルム(ACF)を位置させ、熱と圧力を加えるラミネーション工程と剥離紙を除去する工程を行って、異方性導電フィルム付きウエハーを製造する」ことは公知の技術である。
そして、ウエハーの上部に複数の回路電極を有することは周知の構成であり、引用例2記載の公知技術では、ウエハーの上部に異方性導電フィルム(ACF)をラミネーションしているから、「片面に複数の回路電極を有する半導体ウェハと、該回路電極を覆う異方導電性フィルムとを有する異方導電性フィルム付き半導体ウェハ」は、公知の構成である。
そして、引用例1発明の「異方性導電膜」を該公知の構成に適用し、本件補正発明と同様の構成にすることは当業者が適宜為し得る事項である。
また、その際、ウエハーの上部に異方導電性フィルム(ACF)をラミネーションしているから、「異方導電性フィルム」の「絶縁性接着剤層と導電性粒子層」が、「該回路電極を覆」っていることは明らかである。

(c-2)[相違点2]について
引用例1発明は、「導電性粒子含有層10はフェノキシ樹脂を含有するとともに導電性粒子14を絶縁層20側の界面に単層配列している」とともに、「液晶画面制御用ICチップ30におけるバンプ32側に、絶縁層20を接触させるように、異方性導電膜を配置し、熱及び圧力により圧着すると、絶縁層20における樹脂は、流動性を有するため、バンプ32に押しのけられた状態にて熱硬化し、導電性粒子含有層10の厚み方向において、導電性粒子14が存在する側は、硬化度が高く、導電性粒子14が固定されているので、導電性粒子14が流動することなく、高い捕捉率でバンプ32に捕捉され、」るから、引用例1発明を引用例2に記載された公知技術に適用した際に、「導電性粒子14」(本件補正発明の「導電性粒子」に相当する。)を「バンプ32」(本件補正発明の「回路電極」に相当する。)に捕捉させるためには、「導電性粒子14」が「バンプ32」の高さよりウエハと反対の側(本件補正発明の「該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側」に相当する。)に存在することは明らかである。
また、引用例1発明の「導電性粒子14」は単層配列していることから、一部の「導電性粒子14」が、上記「バンプ32」の高さよりウエハ側に位置した場合、その粒子は「バンプ32」に捕捉されないことを考慮すると、「導電性粒子14」は、上記「バンプ32」の高さよりウエハと反対の側に存在することも明らかである。
そして、引用例1発明において「該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在し」との数値的限定はないものの、上記の通り、「導電性粒子14」は上記「バンプ32」の高さよりウエハと反対の側に存在するから、60%以上が存在することは、当業者には明らかであると認められる。
したがって、「該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在」することは、引用例1発明に引用例2記載の公知技術を採用した際に、当然なされた構成であると認められる。

(c-3)小括
そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は,引用例1発明及び公知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用例1発明及び引用例2記載の公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(d)独立特許要件についての結論
したがって、本件補正発明は、引用例1発明及び引用例2記載の公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
「2 補正の適否について」で検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 補正却下の決定を踏まえた検討

(1)本願発明
平成27年5月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項15に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年1月15日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「片面に複数の回路電極を有する半導体ウェハと、該回路電極を覆う異方導電性フィルムとを有する異方導電性フィルム付き半導体ウェハであって、該異方導電性フィルムは、絶縁性樹脂成分と導電性粒子とを含み、該異方導電性フィルムに含まれる全導電性粒子数の60%以上が、該回路電極の平均高さよりも該異方導電性フィルムの表面側に存在し、該異方導電性フィルムが、該回路電極を覆う絶縁性接着剤層と導電性粒子層とを有し、そして該導電性粒子層では、絶縁性樹脂中に前記導電性粒子が略平面状に1層分散配列していることを特徴とする、前記異方導電性フィルム付き半導体ウェハ。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1および2には、上記「第2 [理由]2(2)(a)」に記載したとおりの事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から,上記「第2 [理由]2(1)」に記載した補正事項(a)および(b)に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 [理由]2(2)」に記載したとおり、引用例1発明及び引用例2記載の公知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および引用例2記載の公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および引用例2記載の公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-28 
結審通知日 2016-07-05 
審決日 2016-07-21 
出願番号 特願2013-549317(P2013-549317)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼須 甲斐  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
小田 浩
発明の名称 異方導電性フィルム付き半導体チップ、異方導電性フィルム付き半導体ウェハ、及び半導体装置  
代理人 古賀 哲次  
代理人 中村 和広  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 齋藤 都子  
代理人 三間 俊介  
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