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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1318847 |
審判番号 | 不服2015-13068 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-09 |
確定日 | 2016-08-30 |
事件の表示 | 特願2013-155463「多層ディスクに情報を記録する方法および記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日出願公開、特開2013-235647〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年10月12日(パリ条約による優先権主張 国際事務局受理 2003年10月13日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特願2006-530990号の一部を平成23年9月12日に新たな出願とした特願2011-198065号の一部を平成25年7月26日に新たな出願としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。 上申書 :平成25年 8月 8日 拒絶理由通知 :平成26年 3月10日(起案日) 意見書 :平成26年10月 3日 手続補正 :平成26年10月 3日 拒絶査定 :平成27年 3月 4日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成27年 7月 9日 理由補充 :平成27年 8月20日 2.本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成26年10月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 少なくとも2つの情報層を含み、該情報層の各々が内側制御情報領域とユーザー情報領域と外側制御情報領域とを含んでいる多層光記録担体上に、情報を記録する方法であって、 前記少なくとも2つの情報層のうち第1の情報層の前記ユーザー情報領域に、ユーザー情報を表す情報パターンを書き込む第1の記録工程と、 前記第1の記録工程の後に、前記少なくとも2つの情報層のうち第2の情報層の前記ユーザー情報領域に、ユーザー情報を表す情報パターンを書き込む第2の記録工程と、 前記第2の記録工程の後に、前記第1の情報層と前記第2の情報層との前記内側制御情報領域および前記外側制御情報領域に、制御情報を表す情報パターンを書き込む仕上げ工程とを含み、 前記第2の記録工程より前に、前記第2の情報層の前記内側制御情報領域と前記外側制御情報領域との少なくとも一方に、制御情報の少なくとも1つのECCブロックを表す情報パターンを書き込む開始工程をさらに含み、前記制御情報を表す情報パターンは前記第2の情報層の前記ユーザー情報領域に隣接して書き込まれ、オールゼロからなるダミーデータを有することを特徴とする方法。」 3.先願明細書等 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の特許出願であって、本願の優先権主張の日後に公開された特願2003-294261号(平成15年8月18日出願、特開2005-63589号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 本発明は、複数の情報記録層を含む記録媒体に対応する記録装置、記録方法に関するものである。」 (2)「【0011】 そこで本発明は、記録可能タイプであって、多層とされた記録層を有する記録媒体について、ユーザーデータの記録動作の途中に記録層移行が行われた場合でも、再生動作に支障がないようにすることを目的とする。」 (3)「【0017】 1.記録層のエリア構造 本実施の形態では、大容量ディスク記録媒体としてDVD(Digital Versatile Disc)を例に挙げ、また後述するディスクドライブ装置は、DVDとしてのディスクに対して記録再生を行う装置とする。 DVD方式のディスクにおいて、記録可能タイプとしては、DVD+R、DVD-R、DVD-RW、DVD-RW、DVD-RAMなどの複数の規格が存在する。ここでは、ライトワンスメディアであるDVD+R及びリライタブルディスクであるDVD+RWを例に挙げて説明していく。」 (4)「【0020】 インフォメーションゾーンは主に以下の5つの領域から構成される。 [1]インナードライブエリア [2]リードインゾーン(リードインエリアともいう) [3]データゾーン(データエリアともいう) [4]リードアウトゾーン(リードアウトエリアともいう) [5]アウタードライブエリア」 (5)「【0022】 フィジカルセクターナンバ(PSN:物理セクターナンバ)は、ディスク上の絶対位置情報として付与されている。 図示するように、例えばディスク内周側から外周側に掛けてフィジカルセクターナンバの値は増加されていく。DVD+R、DVD+RWの場合、PSN=2FFFFh(hを付した数値は16進表現)がリードインゾーンの終端とされ、PSN=30000hからデータゾーンが開始される。 データゾーンは、基本的にはユーザーデータの書込が行われる領域であり、またリードインゾーンは、管理情報の書込が行われる。またリードアウトゾーンは例えば再生専用ディスクとの互換維持などの目的からダミーデータの書込が行われるが、DVD+RWの場合など、リードインゾーンと略同内容の管理情報が記録される場合もある。」 (6)「【0027】 DVD+R、DVD+RWにおいては、リードインに書き込まれる管理情報としては図2のような構造のデータを備える。 図2ではリードインゾーン内の管理情報として構造について、そのアドレス位置を先頭PSNで示すと共に、データサイズをセクター数で示している。 リードインゾーン内はリザーブ(未定義)とされる領域を除いて、図示するように、イニシャルゾーン(Initial Zone)、インナーディスクテストゾーン(Inner Disc Test Zone)、インナードライブテストゾーン(Inner Drive Test Zone Layer0)、ガードゾーン1(Guard Zone 1)、インナーディスクアイデェンティフィケーションゾーン(Inner Disc Identification Zone)、リファレンスコードゾーン(Reference Code Zone)、バッファゾーン1(Buffer Zone 1),コントロールデータゾーン(Control Data Zone)、バッファゾーン2(Buffer Zone 2)が形成される。」 (7)「【0031】 図4(a)に示すパラレルトラックパスの場合、レイヤ0、1ともに、内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成される。 そしてデータの記録はレイヤ0の内周のStart PSN(=30000h)から始まりレイヤ0のデータエリアの最終であるEnd PSN(0)まで記録される。その、続きはレイヤ1の内周側のStart PSN(=30000h)から外周側のEnd PSN(1)までという記録順序で記録が行われる。 論理ブロックアドレスLBAは、図4(b)に示すように、レイヤ0の内周側から外周側まで、さらにレイヤ1の内周側から外周側までという方向性で、順番に連続に割り振られる。 【0032】 次に、オポジットトラックパスの場合を図5に示す。オポジットトラックパスとされるディスクでは、レイヤ0の内周から始まりレイヤ0の終わりまで記録した後に、レイヤ1の外周から内周へ向かう記録順序となる。 図5(a)に示すように、オポジットトラックパスの場合、レイヤ0では内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、ミドルエリアが形成される。またレイヤ1では外周側から内周側にかけて、ミドルエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成される。 そしてデータの記録はレイヤ0の内周のStart PSN(=30000h)から始まりレイヤ0のデータエリアの最終であるEnd PSN(0)まで記録される。その続きはレイヤ1のデータエリアの外周側(反転End PSN(0))から内周側のEnd PSN(1)までという記録順序となる。 論理ブロックアドレスLBAは、図5(b)に示すように、レイヤ0の内周側から外周側まで連続に割り振られた後、レイヤ1では折り返すように外周側から内周側までという方向性で、順番に連続に割り振られる。 【0033】 このようにパラレルトラックパスとオポジットトラックパスでは、データの物理的な格納方法(順番)の違いがある。 また、オポジットトラックパスの場合、層間折り返し部分より外周にはミドルエリアが付加される。これは次の理由による。オポジットトラックパスの場合は、レイヤ0にリードインエリアが形成され、レイヤ1にリードアウトエリアが形成される。このためデータエリアの外周側には、リードインエリア/リードアウトエリアが形成されない。一方で、再生専用装置ではディスク盤面に記録したピットを読むので、ピットの無い領域ではサーボもかからずデータを安定して読み出す事ができない。その為にガードとなる領域が必要になる。この必要性から、外周側にミドルエリアが形成され、例えばダミーデータが記録されて、リードアウトエリアと同様の機能が持たされるものとしている。」 (8)「【0047】 4.ユーザーデータ記録処理例I 上記ディスクドライブ装置による2層ディスクに対するユーザデータの記録処理例を説明する。 なお、ディスク1に対しては、ユーザーデータの記録後においてクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、リードイン、リードアウト、ミドルエリアが適正に形成され、再生互換性が得られることを先に述べた。 また、2層ディスクへのユーザーデータの記録を行った場合で、クローズ(ファイナライズ)が行われていない時点では、レイヤ1の再生が適正に行えないことを、本発明が解決しようとする課題において説明した。 以下説明する本例の記録処理では、2層ディスク1に対して、ユーザーデータの記録動作の途中に記録層移行が行われた場合に、クローズ(ファイナライズ)が行われる前でも、その再生動作に支障がないようにするものである。 【0048】 図7によりユーザーデータの記録の際のコントローラ12の処理を示し、またその動作の様子を図8を参照して説明する。なお図8では、ディスク1がオポジットトラックパスのディスクである場合の例としている。 図7において、ステップF101では、コントローラ12はユーザーデータ記録処理を開始させる。 なお、一連のユーザーデータ記録を開始するにあたっては、所定サイズのバッファ領域(ガード領域)の形成のために例えばダミーデータの記録を行い、それに続いて実際のユーザーデータ記録が開始される。 ユーザーデータの記録開始後は、ステップF102で、記録層の移行を行うか否かを判断する。例えばコントローラ12は、レイヤ0においてユーザーデータの記録を開始した後において、記録が進行し、レイヤ0におけるユーザーデータの記録可能な最大アドレスに達した際に、レイヤ1への移行を行うと判断する。また、最大アドレスに達しなくても、記録処理を実行させるアプリケーションもしくはホスト機器からの指示、或いは所定の 動作プログラムに応じては、レイヤ1への移行を行うこともある。 また、ステップF103では、ユーザーデータの書込が終了したか否かを監視している。 レイヤ0の或るアドレスからユーザーデータの記録を開始した後、レイヤ移行が無いままステップF103で書込終了と判断されたら、ステップF108で書込動作を終了させる処理を行い、一連のユーザーデータの記録処理を終了させる。この場合、レイヤ0内でホスト機器から指示されたユーザーデータの記録を完了した場合である。またレイヤ1の或るアドレスからユーザーデータの記録を開始し、その後ステップF103で書込終了と判断された場合も同様であり、この場合、レイヤ1内でホスト機器から指示されたユーザーデータの記録を完了した場合となる。 【0049】 レイヤ0でのユーザーデータの記録を実行している過程において、ステップF102でレイヤ1への移行を行うこととなった場合は、ステップF104に進み、一旦ユーザーデータの記録動作を中断させる。そしてステップF105で、移行先のレイヤ1においてガードブロックが形成されているか否かを判断する。例えばレイヤ1にフォーカスジャンプを行い、ユーザーデータの記録を再開する位置の直前の領域を再生して、そこが記録済領域であるか否かを判別する。 通常はこの時点ではガードブロックは形成されていないため、ステップF106に進んでガードブロック形成処理を行う。例えばレイヤ1においてユーザーデータの記録を再開するアドレスの直前の所定範囲の領域にダミーデータの記録を実行させ、ガードブロックとする。 そしてガードブロックの記録処理がユーザーデータの記録再開するアドレスに達したら、ステップF107において、そのアドレスからユーザーデータの記録を再開させる。 ユーザーデータの記録再開後は、ステップF102,F103の監視処理に戻り、2層ディスクの場合はさらなるレイヤの移行はないため、ある時点でステップF103でユーザーデータの書込終了と判断されて、ステップF108で書込動作を終了させて処理を終える。 なお、後述するが3層以上の記録層を有するディスクも考えられ、その場合は、レイヤ移行後も、さらにステップF102でレイヤ移行を行うとされる場合も考えられる。その場合は同様にステップF104?F107の処理が行われる。」 (9)「【0053】 なお、上記のようにレイヤ1でのユーザーデータの記録に先立って記録されたガードブロックGBは、その後のクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、図5に示したミドルエリアの一部となる。」 (10)「【0062】 図12はパラレルトラックパスの場合を示している。 図12(a)は、例えばアドレスAd21はレイヤ0のデータゾーンの先頭、アドレスAd24はレイヤ1でのデータゾーンの先頭であるとする。 レイヤ0においてはデータゾーンの先頭であるアドレスAd21からアドレスAd22の範囲にユーザーデータDA1?DA7が記録される。そして残りのデータDA8は、レイヤ1に移行して、そのデータゾーンの先頭(アドレスAd24)からアドレスAd25の範囲に記録されるとする。 この場合、上記図7又は図9の処理でガードブロックGBが記録されるのは、アドレスAd24の直前の領域(Ad23?Ad24)となる。なお、パラレルトラックパスの場合、レイヤ1においてデータゾーンの先頭より内周側はリードインゾーンとなる。このためアドレスAd24の直前の領域(Ad23?Ad24)とは、例えば図2のバッファゾーン2としての領域であればよい。」 (11)「【0064】 図13は記録層が3層のオポジットトラックパスのディスクの例を示している。 図13(a)では、ユーザーデータDA1?DA16を記録する場合であり、図示するように、まずレイヤ0において内周側から外周側にデータDA1?DA6が記録され、続いてレイヤ1では外周側から内周側に向かってデータDA7?DA12が記録され、さらにレイヤ2では内周側から外周側に向かってデータDA13?DA16が記録された場合を示している。 この場合、上記図7又は図9の処理でガードブロックGBが形成されるのは、レイヤ1におけるユーザーデータDA7より外周側となる所定範囲の領域と、レイヤ2においてユーザーデータDA13より内周側となる所定範囲の領域となる。 図13(b)は、ユーザーデータDA1?DA7を記録する場合であり、特にレイヤ1の途中から記録が開始された場合である。この場合、レイヤ1では外周側から内周側に向かってデータDA1?DA4が記録され、層間移行して後レイヤ2では内周側から外周側に向かってデータDA5?DA7が記録された状態を示している。 この場合、上記図7又は図9の処理でガードブロックGBが形成されるのは、レイヤ2においてユーザーデータDA5より内周側となる所定範囲の領域となる。 即ち3層ディスクの場合も、ユーザーデータ記録の際に層間移行が発生したら、その移行先のレイヤにおいてユーザーデータ記録開始位置に先立つ領域にガードブロックGBが形成されればよいものである。 3層のパラレルトラックパスの場合、さらには4層以上の記録層のディスク(オポジットトラックパス/パラレルトラックパス)の場合も、考え方は同様である。 【0065】 以上、実施の形態としての処理例や、ガードブロックGBの形成の各種例を説明してきたが、本発明としての変形例や適用例はさらに各種考えられる。 まずDVD方式の2層の記録可能タイプのディスクとしてDVD+R、DVD+RWを例に挙げて述べたが、もちろん同様にDVD-R、DVD-RW、DVD-RAMなどとしての複数記録層のディスクについても、上述のようにユーザーデータ記録過程での層間移行に対応してガードブロックGBを形成することが好適である。 また、DVD方式のディスクに限らず、CD方式、ブルーレイディスク方式など、他の種のディスク、さらにはディスク以外のメディアでも、複数記録層の記録媒体として、本発明は有用である。」 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)先願明細書等には、複数の情報記録層を含む記録媒体(DVD方式のディスク)に対応する記録方法が記載されている(摘示事項(1)、(3)。 (b)パラレルトラックパスの場合、レイヤ0、1ともに、内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成される(摘示事項(7))。 (c)オポジットトラックパスの場合、レイヤ0では内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、ミドルエリアが形成される。またレイヤ1では外周側から内周側にかけて、ミドルエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成される(摘示事項(7))。 (d)データエリアは、基本的にはユーザーデータの書込が行われる領域であり、またリードインエリアは、管理情報の書込が行われる。またリードアウトエリアは例えば再生専用ディスクとの互換維持などの目的からダミーデータの書込が行われる(摘示事項(4)、(5))。オポジットトラックパスの場合、外周側にミドルエリアが形成され、例えばダミーデータが記録されて、リードアウトエリアと同様の機能が持たされるものとしている(摘示事項(7))。 (e)オポジットトラックパスのディスクである場合、レイヤ0でのユーザーデータの記録を実行している過程において、レイヤ1への移行を行うこととなった場合は、一旦ユーザーデータの記録動作を中断させる。レイヤ1においてユーザーデータの記録を再開するアドレスの直前の所定範囲の領域にダミーデータの記録を実行させ、ガードブロックとする。ガードブロックの記録処理がユーザーデータの記録再開するアドレスに達したら、そのアドレスからユーザーデータの記録を再開させる(摘示事項(8))。 (f)レイヤ1でのユーザーデータの記録に先立って記録されたガードブロックは、その後のクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、ミドルエリアの一部となる(摘示事項(9))。 (g)パラレルトラックパスのディスクである場合、ガードブロックが記録されるのは、レイヤ1においてデータエリアの先頭の直前の領域であるリードインエリアのバッファゾーン2としての領域である(摘示事項(6)、(10))。 (h)ディスクに対しては、ユーザーデータの記録後においてクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、リードイン、リードアウト、ミドルエリアが適正に形成される(摘示事項(8))。 以上を総合勘案すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。 「パラレルトラックパスの場合、レイヤ0、1ともに、内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成され、 オポジットトラックパスの場合、レイヤ0では内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、ミドルエリアが形成され、レイヤ1では外周側から内周側にかけて、ミドルエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成され、 データエリアは、ユーザーデータの書込が行われる領域であり、リードインエリアは、管理情報の書込が行われる領域であり、リードアウトエリア、ミドルエリアはダミーデータの書込が行われる領域であるDVD方式のディスクに対応する記録方法であって、 オポジットトラックパスのディスクである場合、レイヤ0でのユーザーデータの記録を実行している過程において、レイヤ1への移行を行うこととなった場合は、一旦ユーザーデータの記録動作を中断させ、 レイヤ1においてユーザーデータの記録を再開するアドレスの直前の所定範囲の領域にダミーデータの記録を実行させ、ガードブロックとし、 ガードブロックの記録処理がユーザーデータの記録再開するアドレスに達したら、そのアドレスからユーザーデータの記録を再開させ、 レイヤ1でのユーザーデータの記録に先立って記録されたガードブロックは、その後のクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、ミドルエリアの一部となり、 パラレルトラックパスのディスクである場合、ガードブロックが記録されるのは、レイヤ1においてデータエリアの先頭の直前の領域であるリードインエリアのバッファゾーン2としての領域であり、 ディスクに対しては、ユーザーデータの記録後においてクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、リードイン、リードアウト、ミドルエリアが適正に形成される方法。」 4.対比 そこで、本願発明と先願発明とを対比する。 (1)情報を記録する方法 一般には、制御情報領域のほとんどは、たとえばオールゼロのようなダミーデータで満たされることとなる。しかしながら一般には同時に、制御情報領域(とりわけリードイン領域)の一部は、ディスクを識別する制御情報(たとえば、物理フォーマット情報や、ディスク製造情報)で満たされる(本願明細書【0006】)。 先願発明において、パラレルトラックパスの場合、レイヤ0、1ともに、内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成され、データエリアは、ユーザーデータの書込が行われる領域であり、リードインエリアは、管理情報の書込が行われる領域であり、リードアウトエリアはダミーデータの書込が行われる領域であるから、先願発明の「リードインエリア」、「データエリア」、「リードアウトエリア」は、それぞれ、「内側制御情報領域」、「ユーザー情報領域」、「外側制御情報領域」といえる。 先願発明において、オポジットトラックパスの場合、レイヤ0では内周側から外周側にかけてリードインエリア、データエリア、ミドルエリアが形成され、レイヤ1では外周側から内周側にかけて、ミドルエリア、データエリア、リードアウトエリアが形成され、データエリアは、ユーザーデータの書込が行われる領域であり、リードインエリアは、管理情報の書込が行われる領域であり、リードアウトエリア、ミドルエリアはダミーデータの書込が行われる領域であるから、先願発明の「リードインエリア」及び「リードアウトエリア」、「データエリア」、「ミドルエリア」は、それぞれ、「内側制御情報領域」、「ユーザー情報領域」、「外側制御情報領域」といえる。 したがって、本願発明と先願発明とは、「少なくとも2つの情報層を含み、該情報層の各々が内側制御情報領域とユーザー情報領域と外側制御情報領域とを含んでいる多層光記録担体上に、情報を記録する方法」である点で共通する。 (2)第1の記録工程 先願発明は、レイヤ0でのユーザーデータの記録を実行するものであるから、本願発明と先願発明とは、「前記少なくとも2つの情報層のうち第1の情報層の前記ユーザー情報領域に、ユーザー情報を表す情報パターンを書き込む第1の記録工程」を含む点で共通する。 (3)第2の記録工程 先願発明は、レイヤ0でのユーザーデータの記録を実行している過程において、レイヤ1への移行を行うこととなった場合は、一旦ユーザーデータの記録動作を中断させ、レイヤ1においてユーザーデータの記録を再開するアドレスからユーザーデータの記録を再開させるものであるから、本願発明と先願発明とは、「前記第1の記録工程の後に、前記少なくとも2つの情報層のうち第2の情報層の前記ユーザー情報領域に、ユーザー情報を表す情報パターンを書き込む第2の記録工程」を含む点で共通する。 (4)仕上げ工程 先願発明は、ディスクに対しては、ユーザーデータの記録後においてクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、リードイン、リードアウト、ミドルエリアが適正に形成されるものであるから、本願発明と先願発明とは、「前記第2の記録工程の後に、前記第1の情報層と前記第2の情報層との前記内側制御情報領域および前記外側制御情報領域に、制御情報を表す情報パターンを書き込む仕上げ工程」を含む点で共通する。 (5)開始工程 先願発明は、レイヤ1においてユーザーデータの記録を再開するアドレスの直前の所定範囲の領域にダミーデータの記録を実行させ、ガードブロックとするものである。オポジットトラックパスのディスクである場合、レイヤ1でのユーザーデータの記録に先立って記録されたガードブロックは、その後のクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、ミドルエリアの一部となる。パラレルトラックパスのディスクである場合、ガードブロックが記録されるのは、レイヤ1においてデータエリアの先頭の直前の領域であるリードインエリアのバッファゾーン2としての領域である。 したがって、本願発明と先願発明とは、「前記第2の記録工程より前に、前記第2の情報層の前記内側制御情報領域と前記外側制御情報領域との少なくとも一方に、制御情報を表す情報パターンを書き込む開始工程をさらに含み、前記制御情報を表す情報パターンは前記第2の情報層の前記ユーザー情報領域に隣接して書き込まれ、ダミーデータを有する」点で共通する。 もっとも、「開始工程において書き込まれる制御情報を表す情報パターン」について、本願発明は、制御情報「の少なくとも1つのECCブロック」を表す情報パターンであるのに対し、先願発明は、明示的な特定がない点、及び、「開始工程において書き込まれる制御情報を表す情報パターンが有するダミーデータ」について、本願発明は、「オールゼロからなる」ダミーデータであるのに対し、先願発明は、明示的な特定がない点で相違する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「少なくとも2つの情報層を含み、該情報層の各々が内側制御情報領域とユーザー情報領域と外側制御情報領域とを含んでいる多層光記録担体上に、情報を記録する方法であって、 前記少なくとも2つの情報層のうち第1の情報層の前記ユーザー情報領域に、ユーザー情報を表す情報パターンを書き込む第1の記録工程と、 前記第1の記録工程の後に、前記少なくとも2つの情報層のうち第2の情報層の前記ユーザー情報領域に、ユーザー情報を表す情報パターンを書き込む第2の記録工程と、 前記第2の記録工程の後に、前記第1の情報層と前記第2の情報層との前記内側制御情報領域および前記外側制御情報領域に、制御情報を表す情報パターンを書き込む仕上げ工程とを含み、 前記第2の記録工程より前に、前記第2の情報層の前記内側制御情報領域と前記外側制御情報領域との少なくとも一方に、制御情報を表す情報パターンを書き込む開始工程をさらに含み、前記制御情報を表す情報パターンは前記第2の情報層の前記ユーザー情報領域に隣接して書き込まれ、ダミーデータを有することを特徴とする方法。」の点。 そして、次の点で一応相違する。 <一応の相違点> (1)「開始工程において書き込まれる制御情報を表す情報パターン」について、本願発明は、制御情報「の少なくとも1つのECCブロック」を表す情報パターンであるのに対し、先願発明は、明示的な特定がない点。 (2)「開始工程において書き込まれる制御情報を表す情報パターンが有するダミーデータ」について、本願発明は、「オールゼロからなる」ダミーデータであるのに対し、先願発明は、明示的な特定がない点。 5.判断 そこで、上記一応の相違点について検討する。 一応の相違点(1)について DVD-再生専用ディスクの規格であるJIS X 6241(平成9年10月31日、原査定の拒絶の理由に引用)若しくはECMA-267(1997年12月、原査定の拒絶の理由に引用)の第4章データフォーマットの15.概要には、主データは、ディスクに記録する前に、データフレーム、スクランブルドフレーム、ECCブロック、記録フレーム、物理セクタの順に変換し、フォーマットを行うことが記載され、同第5章情報ゾーンのフォーマットの26.リードインゾーンの26.4バッファゾーン2には、このゾーンは、32(当審注:JIS X 6241の「30」は誤りで正しくはECMA-267の「32」)ECCブロックからなる512物理セクタで構成し、このゾーンでの物理セクタとして最終的に記録したデータフレームの主データは、(00)に設定することが記載され、また、同27.ミドルゾーンには、ミドルゾーンでの物理セクタとして最終的に記録するデータフレームの主データは、(00)に設定することが記載されている。 また、DVD-レコーダブルディスクの規格であるJIS X 6245(平成11年12月31日)若しくはECMA-279(1998年12月、原査定の拒絶の理由に引用)の第4章データフォーマットの15.概要、同第5章情報ゾーンのフォーマットの25.1リードインゾーンの25.1.4バッファゾーン2にも同様の記載がある。 そして、先願発明は、「DVD方式のディスクに対応する記録方法」であるから、上記各規格に従う。オポジットトラックパスのディスクである場合、レイヤ1でのユーザーデータの記録に先立って記録されたガードブロックは、その後のクローズ(ファイナライズ)処理が行われることによって、ミドルエリアの一部となり、パラレルトラックパスのディスクである場合、ガードブロックが記録されるのは、レイヤ1においてデータエリアの先頭の直前の領域であるリードインエリアのバッファゾーン2としての領域であるから、先願発明の「ガードブロック」は、ECCブロックからなる。 JIS X 6245若しくはECMA-279の第4章データフォーマットの23.リンキング方式には、記録は、ECCブロックの第1の物理セクタの第2同期フレームの82番目?87番目の間のバイトで開始し、ECCブロックの第1の物理セクタの第2同期フレームの86番目のバイトで終了することが記載されている。すなわち、データはECCブロック単位に記録される。 したがって、先願発明の「ガードブロック」は、少なくとも1つのECCブロックからなる。 よって、一応の相違点(1)は、実質的な相違点ではない。 一応の相違点(2)について 上述したように、JIS X 6241若しくはECMA-267の第5章情報ゾーンのフォーマットの26.リードインゾーンの26.4バッファゾーン2には、このゾーンは、32ECCブロックからなる512物理セクタで構成し、このゾーンでの物理セクタとして最終的に記録したデータフレームの主データは、(00)に設定することが記載され、また、同27.ミドルゾーンには、ミドルゾーンでの物理セクタとして最終的に記録するデータフレームの主データは、(00)に設定することが記載されている。 また、JIS X 6245若しくはECMA-279の第5章情報ゾーンのフォーマットの25.1リードインゾーンの25.1.4バッファゾーン2にも同様の記載がある。 したがって、先願発明の「ガードブロック」の「ダミーデータ」は、オールゼロからなる。 よって、一応の相違点(2)も、実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明は、先願発明と実質的に同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先権主張の日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-04-05 |
結審通知日 | 2016-04-07 |
審決日 | 2016-04-19 |
出願番号 | 特願2013-155463(P2013-155463) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(G11B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ゆずりは 広行 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 井上 信一 |
発明の名称 | 多層ディスクに情報を記録する方法および記録装置 |
代理人 | 矢ヶ部 喜行 |
代理人 | 津軽 進 |
代理人 | 笛田 秀仙 |