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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04Q 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04Q |
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管理番号 | 1318888 |
審判番号 | 不服2015-21091 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-27 |
確定日 | 2016-09-27 |
事件の表示 | 特願2011-127279「無線通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月27日出願公開、特開2012-256959、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年6月7日の出願であって、平成27年1月9日付けで拒絶理由が通知され、同年3月19日付けで手続補正がされ、同年8月24日付けで拒絶査定がされ、その後、同年11月27日付けで、拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正がされたものであって、平成28年1月21日付けで審査官により前置報告書が作成され、平成28年5月20日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年7月15日付けで手続補正がされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、平成28年7月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 第1の直流電圧を供給可能な電池部と、 無線通信アンテナと、 前記無線通信アンテナを介して外部の端末に通信データを送信する無線通信モジュールと、 前記無線通信アンテナを介して受信される電磁波から特定の周波数帯域の電磁波を抽出するフィルタ部と、 前記フィルタ部とは独立して、前記無線通信アンテナを介して受信される電磁波を直流電圧に変換する整流部と、 前記整流部から出力される直流電圧で作動し、前記フィルタ部が出力する特定の周波数帯域の電磁波を用いて送信される識別子を復調する復調部と、 前記整流部から出力される直流電圧が所定の電圧値以上で、かつ前記復調部で復調された識別子が所定の識別子である場合に、起動信号を生成して出力する起動部と、 前記起動部から前記起動信号が出力された場合、前記電池部から前記無線通信モジュールに前記第1の直流電圧を供給させるよう制御する制御部と、 を有する ことを特徴とする無線通信端末。」 3.原審の拒絶理由 (1)原審の拒絶理由通知の概要 原審において、平成27年1月9日付けで通知された拒絶理由(以下、「原審拒絶理由」という。)の概要は以下のとおりである。 「1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ・・(省略)・・ 2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-2(文献1-2参照) 文献1には、RFID回路が出力する電力によりスイッチをオンしバッテリーからデータ回路に電源を供給し、データ回路の無線送受信回路からセンサにより取得し大容量メモリに保存した情報を送信すること(0028-0031)が記載されている。 文献1記載の発明がRFID回路で直流電圧が所定の値以上になったかを判定してスイッチをオンしているか明らかでないが、文献2には、所定の電圧レベルに達していることを示す信号を制御部に与えること(0037)が記載されているから、文献1記載の発明において、RFID回路の出力する直流電圧が所定の値以上になった場合に信号を出力しスイッチをオンすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ・請求項3(文献1-2参照) 文献1には、RFID回路は特定の周波数の電波を受けること(0007)が記載されているから、特定の周波数以外で誤動作しないようフィルタリングすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ・請求項4-7(文献1-2参照) 文献1には、IDを照合すること(0008)が記載されている。 ・請求項8-9(文献1-4参照) 文献1記載の発明は、センサにより取得した情報を無線送受信回路から送信する発明であるから、センサとして、文献3の体内のセンサ(0012、0017-0018等)や文献4の体表(体外)のセンサ(0016等)と組合わせることは、当業者が容易に想到し得たことである。 拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。 引用文献等一覧 1.特開2007-193566号公報 2.特開2002-014072号公報 3.特開2003-144417号公報 4.特開2008-200110号公報 」 (2)原審の拒絶査定の備考の概要 平成27年8月24日付けの拒絶査定の備考の概要は以下のとおりである。 「備考 ●理由2(特許法第29条第2項)について ・請求項 1,2 ・引用文献等 1,2 出願人は、意見書において、引用文献1に記載の技術では、内部にバッテリを保有するタイマを使用するものであるから、「前記第1の直流電圧のみが無線通信端末の駆動に用いられる」との構成を有しておらず、「電池部の消耗を最低限に抑えることができる」という本願特有の効果を得ることができないことから、請求項1に記載の発明は、特許法第29条第2項の規定に該当しない旨を主張している。 確かに、引用文献1の、実施の形態5.に記載される発明では、内部にバッテリを保有するタイマを使用するものであるから、IDタグは、第1の直流電圧のみを駆動に用いるものではない。 しかしながら、実施の形態5.に記載される発明におけるタイマは、定期的にセンサによりデータの取得を可能とするために設けられた構成であって、このような構成を必要としない、実施の形態1-4に記載される発明では、タイマを利用しないものであるから、引用文献1には、バッテリ4からのみ電源を供給する構成についても記載されているものである。 してみると、出願人が相違点として主張する上記の構成は、引用文献1に記載されたものであるから、出願人の主張は採用できない。 ・請求項 3 ・引用文献等 1,2 引用文献1には、RFID回路は特定の周波数の電波を受けること(0007)が記載されているから、特定の周波数以外で誤動作しないようフィルタリングすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ・請求項 4-7 ・引用文献等 1,2 引用文献1には、IDを照合すること(0008)が記載されている。 ・請求項 8,9 ・引用文献等 1-4 引用文献1の、実施形態2.には、センサにより取得した情報を無線送受信回路から送信する発明についても記載されており、センサとして、文献3の体内のセンサ(0012、0017-0018等)や文献4の体表(体外)のセンサ(0016等)と組合わせることは、当業者が容易に想到し得たことである。 <引用文献等一覧> 1.特開2007-193566号公報 2.特開2002-014072号公報 3.特開2003-144417号公報 4.特開2008-200110号公報 」 (3)原審の拒絶理由についての当審の判断 ア.引用発明 (引用発明1) 原審拒絶理由で引用した引用文献1(以下、「引用例1」という。)には、「RFIDシステム」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、RFID(RadioFrequency Identification)装置であるIDタグと携帯端末との間において、無線により大容量のデータの送受信を行えるRFIDシステムに関するものである。」(2頁) (イ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0007】 以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態について説明する。 なお、各図間において、同一符合は、同一あるいは相当のものであることを表す。 実施の形態1. 図1は、この発明の実施の形態1に係わるRFIDシステムの構成を示す図である。 図に示すように、本実施の形態によるRFIDシステムは、IDタグ1と携帯端末6とで構成される。 IDタグ1は、RFID回路2、データ回路3、バッテリ4およびスイッチ5とで構成されている。 なお、IDタグ1は一般的には札状のものであるが、大容量のバッテリを搭載するために装置状(箱体状)のものを採用する場合もあり、本発明においては、「IDタグ」は札状および装置状のいずれの場合の形状も含むものとする。 RFID回路2は、アンテナ(RFID用アンテナ)21、メモリ(RFID用メモリ)22およびID照合回路23で構成されている。 ここで、アンテナ21は、外部(例えば、携帯端末)から特定の周波数の電波を受けて電力を生じさせてRFID回路2に電源を供給すると共に、携帯端末6との間でデータの授受を行うためのものである。 また、メモリ22は、固有のID(例えば、特定の携帯端末を認識するためのID)およびある程度の量のデータを記憶するものであって、ROMあるいはフラッシュメモリもしくはそれらの組合せでできている。 【0008】 ID照合回路23は、RFID用アンテナ21が外部の携帯端末6から受信するIDとRFID用メモリ22に予め記憶されているIDを照合する。 スイッチ5はID照合回路23の照合結果に基づいてオン/オフされるものであって、携帯端末6から受信するIDとメモリ22に予め記憶されているIDとが一致するとID照合回路23が判定すると、スイッチ5はID照合回路23によってオンされ、バッテリ4からデータ回路3への電源供給が制御される。 また、スイッチ5は、後述するように、CPU31からの指示によってもオン/オフ制御される。 なお、図1では、スイッチ5は個別のメカ構造のものが示されているが、FETなどの半導体素子であってもよいことは言うまでもない。 また、ID照合回路23などの回路と一体的に形成されていてもよい。 【0009】 データ回路3は、携帯端末6から送信されるデータを記憶する大容量メモリ32、無線用アンテナ34を介して携帯端末6との間で無線によりデータの送受信を行う無線送受信回路33、携帯端末6から無線送受信回路33が受信する受信データを大容量メモリ32へ記憶する処理あるいは大容量メモリ32に記憶されているデータを無線送受信回路33によって携帯端末6に送信する処理を行うと共に、これらのデータ処理が終了するとスイッチ5をオフにするCPU31を有している。 なお、IDタグ1のデータ回路3と携帯端末6との間のデータの送受信は、例えば携帯電話、PHS、無線LAN、Bluetooth、ZigBee、UWB、微弱電波などの無線通信により行われる。 【0010】 図2は、本実施の形態によるRFIDシステムの動作を説明するためのフローチャートである。 図2に基づいて、本実施の形態によるRFIDシステムの動作を具体的に説明する。 IDタグ1は、主に作業員の手から離れたところにあり、具体的には工場内の現場に設置してあるポンプなどの機器・設備などに貼り付けられている。 当然ながら工場以外の事務所・店舗・病院などでも、現場の設備に大容量のデータを保持させたい場合には使用できる。 作業員が、現場のポンプの情報を、読み取りあるいは書き込みする必要のある場合は、まず、所持している携帯端末6のRFIDリーダ・ライタ63およびそのアンテナ64の部分をタグ1のRFID回路2のRFID用アンテナ21に近づけ、RFID用アンテナ21を励磁する。(ステップS101) 【0011】 RFID用アンテナ21の励磁により、RFID用メモリ22およびID照合回路23を含むRFID回路2に電流が流れ、RFID用メモリ22内に記憶されているIDと携帯端末6のメモリ62内に記憶されているIDとの照合が行われる。(ステップS102) ID照合回路23による照合結果(ステップS103)により、携帯端末6から送られてきたIDとRFID用メモリ22内に記憶されているIDとが一致しないと判定した場合は、IDが異なることを携帯端末6上に表示する。(ステップS104) また、ID照合回路23による照合結果により、携帯端末6から送られてきたIDとRFID用メモリ22内に記憶されているIDとが一致すると判定した場合は、ID照合回路23はスイッチ5をオンさせ、バッテリ4からデータ回路3に電源を供給し、データ回路3を動作させる。(ステップS105) 【0012】 データ回路3が動作すると、携帯端末6の無線送受信回路65およびアンテナ66と、IDタグ1のデータ回路3内の無線送受信回路33とアンテナ34の間で無線通信回路が確立され、必要なデータの授受(送受信)がおこなわれる。(ステップS106) そして、授受したデータが、データ回路3の大容量メモリ32あるいは携帯端末6のメモリ62に記憶される。 即ち、必要なデータが、データ回路3の大容量メモリ32と携帯端末6のメモリ62間で授受(送受信)される。(ステップS107) データの授受が完了すると、CPU31によりバッテリ4とデータ回路3との間のスイッチ5が切断される。(ステップS108) なお、ID照合回路23の照合結果によって、携帯端末6から送られてきたIDとRFID用メモリ22内に記憶されているIDとが一致しないと判定した場合は、データ回路3を動作させる必要がなく、スイッチ5はオフのままであり、データ回路3は動作しない。」(4?5頁) (ウ)「【0028】 実施の形態5. 図6は、この発明の実施の形態4に係わるRFIDシステムの構成を示す図である。 図において、3dは本実施の形態におけるデータ回路である。 前述の実施の形態2では、作業員が携帯端末6をIDタグ1に近づけることにより、センサ35から自動でデータを取得し、取得したデータを携帯端末6に伝送したが、本実施の形態では、データ回路3dにボタン型など小型のバッテリを持って連続駆動するタイマ38を組み込むことによって、定期的にセンサ35によりデータ取得をすることができるようにしたものである。 【0029】 通常時は、RFID回路2およびデータ回路3dには電流が流れておらず、スイッチ5もオフの状態にある。 タイマ38は内部にバッテリを保有しているため、設定した時間が経過すると、スイッチ5をオンの状態にする。 スイッチ5がオンとなり、バッテリ4とデータ回路3dが接続され、データ回路3dに電源が供給されることにより、センサ35で情報を取得し、取得した情報を大容量メモリ32に保存する。 大容量メモリ32へのデータ保存が終了すると、CPU31からの指示によりスイッチ5をオフの状態にする。 【0030】 作業員が携帯端末6をIDタグ1に近づけると、アンテナ21に誘導される電力によりRFID回路2に電源が供給され、スイッチ5がオンになり、バッテリ4からデータ回路3dに電源が供給される。 データ回路3dの無線送受信回路33およびそのアンテナ34と、携帯端末6上の無線送受信回路65とそのアンテナ66を経由して、大容量メモリ32に保存されている情報が携帯端末6のメモリ62に伝送される。 【0031】 このように、本実施の形態によれば、実施の形態2によるRFIDシステムにおいて、更に、データ回路3dにタイマ38を備え、定期的にセンサ35により外部の設備・機器の情報を取得できるようにしているので、実施の形態2の効果に加えて、携帯端末6から定期的に外部の設備・機器のデータ(情報)を収集することが可能になり、収集したデータを大容量メモリ32に自動的に保存することもできる。」(8?9頁) 引用例1の上記摘記事項(ア)?(ウ)の各記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 a.上記摘記事項(イ)の【0007】の「IDタグ1は、RFID回路2、データ回路3、バッテリ4およびスイッチ5とで構成されている。」の記載より、「バッテリと」、「を備え、」た「IDタグ。」といえる。 b.上記摘記事項(イ)の【0009】の「無線用アンテナ34を介して携帯端末6との間で無線によりデータの送受信を行う無線送受信回路33」と図1の記載より、「前記無線用アンテナを介して携帯端末との間でデータの送受信を行うデータ回路と、」といえる。 c.上記摘記事項(イ)の【0007】の「ここでアンテナ21は、外部(例えば、携帯端末)から特定の周波数の電波を受けて電力を生じさせてRFID回路2に電源を供給すると共に、携帯端末6との間でデータの授受を行うためのものである。」の記載より、「RFID用アンテナを介して特定の周波数の電波を受けて電力を生じさせてRFID回路に電源を供給し、」といえる。 d.上記摘記事項(イ)の【0008】の「ID照合回路23は、RFID用アンテナ21が外部の携帯端末6から受信するIDとRFID用メモリ22に予め記憶されているIDを照合する。スイッチ5はID照合回路23の照合結果に基づいてオン/オフされるものであって、携帯端末6から受信するIDとメモリ22に予め記憶されているIDとが一致するとID照合回路23が判定すると、スイッチ5はID照合回路23によってオンされ、バッテリ4からデータ回路3への電源供給が制御される。」の記載より、「前記特定の周波数の電波で受信するIDと予め記憶されているIDとが一致すると、スイッチをオンするID照合回路とを備え、」、「ID照合回路がスイッチをオンにした場合、前記バッテリから前記データ回路にバッテリから電源供給が制御される」といえる。 以上、a.?d.を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 (引用発明1) 「バッテリと、 無線用アンテナと、 前記無線用アンテナを介して携帯端末との間でデータの送受信を行うデータ回路と、 RFID用アンテナを介して特定の周波数の電波を受けて電力を生じさせてRFID回路に電源を供給し、 前記特定の周波数の電波で受信するIDと予め記憶されているIDとが一致すると、スイッチをオンするID照合回路とを備え、 前記ID照合回路がスイッチをオンにした場合、前記バッテリから前記データ回路にバッテリから電源供給が制御されるIDタグ。」 (引用発明2) 原審拒絶理由で引用した引用文献2(以下、「引用例2」という。)には、「集積化センサ素子及びこれを用いた計測システム」(発明の名称)に関して、図面とともに、「【0030】アンテナ部10は、外部装置に検出結果を送信する一方、外部装置からマイクロ波などで供給されるエネルギを受け取る。アンテナ部10を介して供給されたエネルギは、整流部1、レギュレータ部2、CLK抽出部3及び電圧検出部4で、当該集積化センサ素子の各部を作動させるのに必要な電流、電圧あるいはクロック信号に変換される。」と、「【0036】この集積化センサ素子Aには、外部装置(図示の例の場合、読取り装置B)からエネルギが供給される。集積化センサ素子Aのアンテナ部10と読取り装置Bのアンテナ部16との間における、検出結果及びエネルギの送受には、電磁波が利用される。CLK抽出部3は、受信された電磁波からクロック信号を抽出する。制御部7は,このクロック信号に基づいて動作する。」と、「【0037】アンテナ部10を介して供給されたエネルギは、整流部1で整流され、レギュレータ部2で電圧が調整される。こうして整流された直流電流は、各部を動作させる電源となる。電圧検出部4は、所定の電圧レベルに達していることを示す信号を制御部7に与え、制御部7が動作可能な状態にのみ動作するようにしている。」との各記載より、「アンテナ部を介して供給された電磁波による電流を、整流部で整流して電源とすること。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 (引用発明3) 原審拒絶理由で引用した引用文献3(以下、「引用例3」という。)には、【0025】より、「アンテナで受信したRF信号を直流電圧に整流して、電源とすること。」(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。 (引用発明4) 原審拒絶理由で引用した引用文献4(以下、「引用例4」という。)には、「【0038】誘導コイル144は、医用テレメータ送信機100の本体が、充電器140の本体に形成されたホルダまたはクレードルに載置されたときに、医用テレメータ送信機100の誘導コイル112との相互誘導により、誘導コイル112に誘導電圧信号を生じさせる。なお、この誘導電圧信号は、入力された発振信号に対応する周波数を有する。」と、「【0023】受信部または抽出部としてのフィルタ114は、誘導コイル112から供給された誘導電圧信号に対してフィルタリングを行うことにより、誘導電圧信号を、充電用の発振信号と、変調外部機器データとに分波する。充電用の発振信号は充電制御回路122に供給され、変調外部機器データは復調回路116に供給される。なお、変調外部機器データは、変調を施された外部機器データを意味する。外部機器データの定義については後述する。」との各記載と図1より、「誘導コイルから受信した信号をフィルタを介して、充電制御回路と、復調回路とに供給すること。」(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。 イ.対比・判断 本願発明と引用発明1とを対比する。 f.引用発明1の「バッテリ」は、「直流電圧をデータ回路に供給する」ことは明らかであるから、本願発明の「第1の直流電圧を供給可能な電池部」に相当する。 g.引用発明1の「無線用アンテナ」は、本願発明の「無線通信アンテナ」に相当する。 h.引用発明1の「携帯端末」は、「IDタグ」とは異なる別の端末であって、外部にあるといえるから、本願発明の「外部の端末」に相当する。 i.引用発明1の「データ回路」は、「携帯端末」にデータを送信するものなので、本願発明の「無線通信モジュール」に相当する。 j.引用発明1の「RFID用アンテナを介して特定の周波数の電波を受けて電力を生じさせてRFID回路に電源を供給し、」と、本願発明の「前記無線通信アンテナを介して受信される電磁波を直流電圧に変換する整流部と、」とは、以下の相違点を除いて、「アンテナを介して受信される電磁波から電力を得る電力発生手段」という点で一致する。 k.引用発明1の「ID」は、本願発明の「識別子」に相当する。 l.引用発明1の「ID照合回路」は、「前記特定の周波数の電波で受信するID」を復調する手段を有することは明らかであるから、本願発明の「復調部」に相当する。 m.引用発明1の「スイッチ」は、オンにすることで、前記バッテリから前記データ回路にバッテリから電源供給が制御されるものなので、本願発明の「制御部」に相当する。 n.上記k.?m.の検討を踏まえると、引用発明1の「前記特定の周波数の電波で受信するIDと予め記憶されているIDとが一致すると、スイッチをオンするID照合回路とを備え、ID照合回路がスイッチをオンにした場合、前記バッテリから前記データ回路にバッテリから電源供給が制御される」と、本願発明の「前記整流部から出力される直流電圧が所定の電圧値以上で、かつ前記復調部で復調された識別子が所定の識別子である場合に、起動信号を生成して出力する起動部と、前記起動部から前記起動信号が出力された場合、前記電池部から前記無線通信モジュールに前記第1の直流電圧を供給させるよう制御する」とは、以下の相違点を除いて、「前記電力発生手段から得られる電力で作動し、かつ前記復調部で復調された識別子が所定の識別子である場合に、起動信号を生成して出力する起動手段と、前記起動部から前記起動信号が出力された場合、前記電池部から前記無線通信モジュールに前記第1の直流電圧を供給させるよう制御する」点で共通する。 (一致点) 「第1の直流電圧を供給可能な電池部と、 無線通信アンテナと、 前記無線通信アンテナを介して外部の端末に通信データを送信する無線通信モジュールと、 アンテナを介して受信される電磁波から電力を得る電力発生手段と、 前記電力発生手段から得られる電力で作動し、特定の周波数帯域の電磁波を用いて送信される識別子を復調する復調部と、 前記電力発生手段から得られる電力で作動し、前記復調部で復調された識別子が所定の識別子である場合を含む所定の条件が満たされた場合に、起動信号を生成して出力する起動手段と、 前記起動部から前記起動信号が出力された場合、前記電池部から前記無線通信モジュールに前記第1の直流電圧を供給させるよう制御する制御部と、 を有する ことを特徴とする無線通信端末。」 (相違点1) 一致点の「アンテナを介して受信される電磁波から受信される電磁波から電力を得る電力発生手段」の「アンテナ」について、本願発明が「前記無線通信アンテナ」であるのに対して、引用発明は「RFID用アンテナ」であって、「前記無線用アンテナを介して携帯端末との間でデータの送受信を行うデータ回路」における、「前記無線用アンテナ」とは異なる点。 (相違点2)本願発明が「前記無線通信アンテナを介して受信される電磁波から特定の周波数帯域の電磁波を抽出するフィルタ部」を有し、「フィルタ部」から「復調部」に出力されるが、「フィルタ部」と「整流部」とは「独立して」いるのに対して、引用発明1はそのような構成を有しない点。 (相違点3)一致点の「受信される電磁波から電力を得る電力発生手段」について、本願発明が、「受信される電磁波を直流電圧に変換する整流部」であるのに対して、引用発明1は、受信される電磁波を直流電圧に変換することについて明記されていない点。 (相違点4)一致点の「前記復調部で復調された識別子が所定の識別子である場合を含む所定の条件が満たされた場合」について、本願発明が、更に、「前記整流部から出力される直流電圧が所定の電圧値以上で」を条件とするのに対して、引用発明1は、そのような更なる条件を有さない点。 事案に鑑み、まず、(相違点2)について検討する。 本願発明の(相違点2)に係る構成について、本願明細書段落【0049】の「無線センシング端末の起動信号出力部93は、フィルタ部331を備 えることにより、データ要求信号およびID変調信号を送信するために用いられる電磁波の周波数帯域外の干渉信号や電磁波などを抑圧した上で、ID変調信号を復調することができる。」及び、同段落【0051】の「また、無線センシング端末の起動信号出力部93は、アンテナ18と整流部131との間にはフィルタ部331を設けていないため、データ収集端末以外から送信される干渉信号や電磁波などを含めた電磁波を整流して直流電圧に変換することができ、より多くの直流電圧を起動部132とID復調部531とに供給することができる。」との作用効果についての記載がある。 他方、「3(3)原審の拒絶理由についての当審の判断」の項で記載したように、「アンテナ部を介して供給された電磁波による電流を、整流部で整流して電源とすること。」(引用発明2、引用発明3も同様。)、「誘導コイルから受信した信号をフィルタを介して、充電制御回路と、復調回路とに供給すること。」(引用発明4)は、公知技術である。 これらの公知の技術を引用発明1に適用することにより、引用発明1の「アンテナを介して特定の周波数の電波」を、「フィルタ」を介して、「電力を生じさせる」手段と、「ID照合回路」とに供給するとともに、「電力を生じさせる」手段に「整流部」を用いることまでは、導き出すことができても、「特定の周波数の電波」が「フィルタ」を介さずに「整流部」に入力する構成を導き出すことはできず、この点に係る構成によって、上記本願明細書に記載された作用効果を奏するものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用文献1?引用文献4に基づいて容易に想到し得たとはいえない。 ウ.小括 以上のとおり、本願発明は原審拒絶理由で引用した引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たということはできない。 4.当審の拒絶理由 (1)当審の拒絶理由の概要 平成28年5月20日付けで当審において通知された拒絶理由は、「本件出願は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第1項に規定する要件を満たしていない。」ことを拒絶の理由とするものである。 (2)当審の拒絶理由についての判断 平成28年7月15日付けの手続補正により、特許請求の範囲の記載の不備は解消された。これにより、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。 したがって、当審拒絶理由は解消された。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、原査定の理由によって拒絶することができない。 また、他に本願発明を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-09-12 |
出願番号 | 特願2011-127279(P2011-127279) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H04Q)
P 1 8・ 121- WY (H04Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 永井 啓司、小林 勝広 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
山中 実 林 毅 |
発明の名称 | 無線通信端末 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 高柴 忠夫 |
代理人 | 鈴木 史朗 |
代理人 | 橋本 宏之 |